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経済学では否定されている「市場原理主義」
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投稿者 sci 日時 2011 年 10 月 24 日 08:00:01: 6WQSToHgoAVCQ
 

diamond.jp/articles/-/14532?page=2
藤沢数希

経済学では否定されている「市場原理主義」


「需要」と「供給」が出会い調整される「市場」について正しく知ることは、経済を語るうえで不可欠です。しかし、なぜか少なくない日本人が、「市場」という言葉に嫌悪感をいだいたり、果ては、まっとうな経済学を「市場原理主義」と結びつけて批判したりしています。

経済学が今日本を取り巻く問題に対してどのような答えを出しているのかを紹介していく本連載。今回は「市場」について一番大切なポイントを解説します。市場経済の申し子である外資系金融機関で活躍する著者が語るのは、意外にも「市場の失敗」をふまえた経済学のクールな結論です。
市場が失敗するのは「4つの場合」しかない

 経済学は市場がすべてを解決するとはまったくいっていません。むしろ市場が失敗する状況をさまざまな角度から分析するのが、最近の経済学ではとても活発な研究分野のうちのひとつです。そういう意味では、経済学は「市場原理主義」とはまったく違うものです。

 さて、じつは市場が失敗するケースというのは次の4つの場合しかないことがわかっています。

@規模の経済と独占企業
A外部不経済
B公共財の提供
C情報の非対称性
次のページ>> 規模の経済と独占企業 〜東電は正に「市場の失敗」例

@規模の経済と独占企業
〜東電は正に「市場の失敗」例

「規模の経済と独占企業」ですが、これは電話会社や電力会社のような企業を考えてみればいいでしょう。電話会社は最初に電話線を引きますし、電力会社も最初に電線を引かなければいけません。

 これは莫大な投資が必要ですが、いったんできてしまえば電話の利用者が2倍になろうと、供給する電力が2倍になろうとあまり追加コストはかかりません。

 よって、最初に電話線や電線を作ってしまった会社が規模の経済を最大限に利用して市場を独占してしまうことが可能です。こうやって新規参入がほとんど不可能になると、利用者はどんなに高い料金でも既存の会社の言い値を払わざるをえません。これでは消費者である国民の利益が大きく損なわれます。規模の経済が大きく働く産業では独占企業が生まれてしまうために、自由市場の競争にすべて任せるわけにはいきません。

 このような場合、独占を認めて、公益企業として政府が価格などを管理するという、半分国営のようにしてしまうのがひとつの方法です。日本の電力会社は地域独占が認められていて、半官半民の経営形態になっています。やはり競争がなく、コスト競争するインセンティブがないので世界的に電気料金が高いのが問題になっています。独占の弊害を防ぎ、かつ競争原理を導入する制度改革が待たれます。

 また、会社が大きくなればなるほど有利になる「規模の経済」が働くような産業では、企業合併などで1社が市場を独占してしまうと消費者の利益が大きく損なわれてしまうので、何らかの規制を作って常に複数の会社を競争させるようにしないといけません。よって世界の先進国では例外なく独占を禁止する法律があります。

 少し前に、アメリカでマイクロソフトが独占禁止法に抵触するかどうかというので、ずいぶんと話題になりました。アメリカの司法当局はマイクロソフトをOSのWindowsの会社と、ワードやエクセルなどのアプリケーションの会社に分割することを考えていたようです。

 しかしある企業が独占状態かどうかの判断は多くの場合、そう簡単には割りきれません。そして時に政治が深く介在してしまうことになります。最近ではやはりグーグルの検索エンジンが独占状態かどうかが議論されています。

 日本もNTTのような、独占に関しては微妙な元国営企業があり、ほんの少し規制が変わったり、独占禁止法の解釈によってものすごい金額の利害が発生してしまうので、さまざまな政治活動をさかんにしています。規制業種の企業が政治家や官僚ととても仲良くするのはこのためです。政府はこういう問題に関しては、一部の大企業ではなく、常に消費者の利益を考えてほしいものですね。
次のページ>> 外部不経済 〜地球温暖化は最大規模の外部不経済

A外部不経済
〜地球温暖化は最大規模の外部不経済

 次に「外部不経済」ですが、これは公害を思い浮かべてみればわかるでしょう。あるモノを作るのに最新の浄化設備を導入してまったく有害物質を出さずに作る会社と、何の環境対策もせずに公害をまき散らしながら作る会社が市場で競争したら、公害をまき散らす方が同じモノをより安い価格で提供できますから公害会社が競争に勝ってしまいます。

 しかしこういった会社は明らかに人々の利益に反します。このように競争市場の外で発生する経済問題を外部不経済といいます。外部不経済があって、会社や人の行動が、他の会社や他の人に迷惑をかける場合は、政府は的確に規制する必要があります。

 地球温暖化など、世界的に環境問題が注目されていますが、これはまさにグローバルに進展する外部不経済に、どうやって世界各国が取り組むかというむずかしい問題です。環境問題は今後ますます重要な国際的な課題になっていくでしょう。

 最近ではエコ利権というものまで生まれて、なんとか補助金を引き出そうという政治活動もさかんなようです。政府は特定の企業に補助金を出すのではなく、環境問題に関してもフェアな競争が行なわれるようなしくみを作らないといけないでしょう。
B公共財の提供
〜警察と軍隊が市場に任せられないワケ

 みっつ目の「公共財の提供」ですが、これは灯台とか、公園とか、警察のようなものを思い浮かべてもらえばわかるでしょう。こういったモノの共通点は何でしょうか?

 それはむずかしい言葉でいうと非競合性と非排除性です。

 非競合性とは複数の人が同時に使っても取り合わなくてもいいことです。たとえばアイスクリームはひとりの人が食べたら別の人は食べることができません。アイスクリームは競合性があるのです。ところが灯台は、多くの船や飛行機がみんな利用できますが、だからといって減るモノではありません。公園も多くの人が利用できます。警察があることにより町の治安はよくなりますが、この安全は町に住む多くの人が同時に享受できます。これが非競合性です。

 非排除性とは、簡単にいうと料金を払わない人にサービスを止めることができないことです。たとえば灯台ですが、誰もが使えますから利用者みんなから料金を取ろうとしても、抜け駆けして無料で使う人にサービスをストップすることができません。

 公園もそうです。有料の国立公園も確かにありますが、気楽に立ち寄れる公園では利用者から料金を取るのはむずかしいでしょう。警察の治安維持を有料にしても、やはり町の住民で料金を払わない人のところだけ治安を悪くすることはできません。

 このように非競合性と非排除性があるモノやサービスを公共財といい、市場による自由な競争では必ずしもうまくいかないことがわかっています。ただ乗りを防げないので民間企業がサービスを提供することがむずかしいので、公共財は税金で面倒を見た方が効率的なことが多いのです。軍隊などは典型的な公共財で、市場にまかせるわけにはいきませんね。
次のページ>> 情報の非対称性 〜2001年のノーベル経済学賞のテーマ

C情報の非対称性
〜2001年のノーベル経済学賞のテーマ

 最後の「情報の非対称性」とはなんでしょうか?これはモノやサービスを売る側が、買う側に対して圧倒的に多くの情報を持っていることです。このように情報が不公平な状態を非対称といいます。アカロフやスティグリッツはこの分野でノーベル経済学賞を取りました。アカロフの有名な中古自動車の分析をここで簡単に説明しましょう。

 中古自動車の売り手はその自動車にずっと乗っていたわけなので、当然さまざまな不具合や事故歴を知っています。しかしなるべく高く売りたいのでそういった不利な情報はできるだけ隠そうとします。中古自動車の買い手はちょっと試しに乗ってみるぐらいで買うかどうか決めなければならず、なかなか本当の情報がわかりません。すると買い手は常に事故歴などが隠されているということを想定して、値段をつけなければいけないことになります。

 その結果、中古自動車の買い取り価格は常に安すぎることになり、まともな中古自動車を売ろうとしている人が不利益をこうむります。逆にいうと、その値段でもいいと思っている悪い情報を隠している売り手が、積極的に不良車を売りさばこうとするでしょう。このように悪貨が良貨を駆逐してしまうのです。

 2008年の世界同時金融危機でも、複雑な金融商品はそれを売る金融機関と、それを買う投資家の間に大きな情報の非対称性があったといわれています。

 また、金融機関の内部でも大きなリスクを取り扱う現場のトレーダーと、経営者の間にやはり大きな情報の非対称性があり、儲かったら巨額のボーナスをもらえるけれども、損したらせいぜい会社をクビになるだけのトレーダーが、経営者があまり理解できない巨大なリスクを積極的に取ったことが原因のひとつだともいわれています。
次のページ>> 結論 政府の仕事は2つだけ!

結論 政府の仕事は2つだけ!

 このように市場は必ずしも万能ではありませんが、逆にいえばこの4つ以外のすべてにおいて、自由な市場による競争というのが、国民全体をより豊かにするための最高のシステムだということです。

 そして、自由市場経済に対する政府の役割とは、これらの市場の失敗を正していくことで、市場に恣意的に介入することではありません。そういった不必要な政府の介入は、社会全体の資源配分をゆがませ、国民全体の利益に反するものになります。

 また、ここで上げたような市場が失敗するケースは、自由市場が必ずしも最高のパフォーマンスを出せないといっているだけであり、政府管理の方が必ずうまくいくとはいっていません。多くの場合、市場の失敗より、政府の失敗の方がひどいものです。政府が経済を統制できると考えた、旧ソ連のような共産圏がどうなったかを思い出せば、政府がいかに非効率かわかるでしょう。

 もうひとつの政府の役割はセーフティネットを税金で作ることです。市場で自由な競争を行なえば、当然そこには勝つ人と負ける人が出てきます。失業してしまったとしても、次の職が見つかるまでの間の必要最低限の生活費を給付したりするセーフティネットが必要です。競争に負けた人がそのまま社会に復帰できなければ、それは社会全体にも大きな損失です。競争から滑り落ちた人をいったんセーフティネットで保護して、また、次の競争に参加させてあげるのです。

 病気や怪我で働けなくなってしまった人や、障害を持って生まれてきた人たちをサポートするのも政府の仕事でしょう。また、お金持ちの家庭の子どもも、貧乏な家庭の子どもも、等しくチャンスを与えられる必要があります。そのために必要なことは、すべての子どもに十分な教育機会を与えることです。機会平等、結果不平等が資本主義社会にとってもっとも重要な道徳であり倫理です。

 社会全体から薄く広く徴収した税金で、このような社会のセーフティネットを作ったり、すべての子どもたちへよい教育の機会を与えるのです。セーフティネットは社会で負担する保険ですし、すべての子ども達に教育機会を与えるのは社会のための投資です。

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コメント
 
01. 2011年10月24日 11:48:21: FUviF2HWlS
市場原理主義で個人が得た金は、単なるゲームのスコアに過ぎない。

国家がそのゲームのスコアを元に、国民の能力給を評価して、所得再分配をおこなうべきである。その所得再分配は、再分配の結果が、あらかじめ国民が決定しておいた所得分布関数に従うように、税と給付を決めるのである。

すなわち、国民の平均所得の平均値と格差を、民主主義により分配前に決めておく制度が、新しい日本型社会主義のありかたである。


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