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囲い込みとすみ分けの「蛸壺経済」体制: 野口悠紀雄の「震災復興とグローバル経済――日本の選択」 東洋経済オンライン
http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/821.html
投稿者 五月晴郎 日時 2011 年 10 月 28 日 13:04:48: ulZUCBWYQe7Lk
 

http://www.toyokeizai.net/business/column/detail/AC/49aecec8c902266dfb52fbde26d624c0/ @
http://www.toyokeizai.net/business/column/detail/AC/49aecec8c902266dfb52fbde26d624c0/page/2/ A
http://www.toyokeizai.net/business/column/detail/AC/49aecec8c902266dfb52fbde26d624c0/page/3/ B http://www.toyokeizai.net/business/column/detail/AC/49aecec8c902266dfb52fbde26d624c0/page/4/ C

掲題を下記のように転載投稿します。

=転載開始=

 携帯電話と初期のPCは、「囲い込みとすみ分け」の体制であったことを述べてきた。

 これは、「利用者・顧客を囲い込んで、市場を分割する。供給者はすみ分ける」というシステムだ。これを、「囲い込みとすみ分けの経済体制」と呼ぶことにしよう。

 わかりやすくいえば、いくつかの縦割りグループが併存する「蛸壺経済」である。これらの蛸壺は分業しているのではない。ある事業分野では、複数の蛸壺が同じ事業を行っている。

 これは、携帯電話以外の分野においても、日本経済で広く見られる現象だ。第2次世界大戦後の日本経済の基本的な構造は、こうしたものであるということができる。

 電力においては全国を9地域(沖縄を入れると10地域)に分割し、その中で電力会社が発送電を独占的に行う地域独占体制がとられている。この状況は、アメリカと比べると著しい違いだ。アメリカの電力事業者の状況は、表に示すとおりである。民間企業だけでも200の事業主体がある。地方公営の事業者数は、実に2000を超える(戦前の日本は今のアメリカと似た状況だった。戦時中に電力国有化が企図され、発電と送電を一手に行う「日本発送電」が設立されたのである)。

(図:アメリカにおける電気事業者上記URL@参照)

 顧客の囲い込みはより緩やかではあるものの、マスメディア(全国紙と系列テレビ局)、金融機関を中心とする系列、電鉄と不動産開発事業などにおいても、同様のすみ分け構造が見られる。製造業でいえば、自動車メーカーと系列部品メーカーが、強固な垂直統合企業グループを形成している。

 つまり、「ガラパゴス諸島」にたとえられる日本列島は、自由に動き回れる広場のような空間ではなく、大小の蛸壺が並んでいる場所なのだ。蛸壺から首を出して外を見たり、出歩いたりすることは可能だが、グループの構成員の生活の糧は、蛸壺においてしか得ることはできない(その意味では本物のガラパゴス諸島より不便な場所である)。

「囲い込みとすみ分け」を可能とする三つの条件

 もちろん、壺に入れてもらえない人もいる。彼らはポジティブにいえば「自由人」だが、その実体は「はぐれ者」ないし「部外者」だ。あるいは、「非正規労働者」と呼ばれる場合もある。

■「囲い込みとすみ分け」は、次の三つの条件下で可能になる。

 第一は、国内市場の規模が十分に大きいことだ。すなわち、分割された各市場が、採算のとれる経済活動を可能にするだけの大きさを持っていなければならない。

 第二の条件は、標準化やモジュール化を妨げる技術的要因があることだ。あるいは、新規参入を困難にする技術的・自然的制約が存在することである。そして、第三の条件は、技術が安定的であることだ。

 電力においては、この三つの条件が典型的に成立している。第一条件についていえば、各電力会社の管内は十分に大きい。第二条件として、周波数の違いが西と東を分けているし、島国であるために外国から送電線を引けないという事情がある。これは、ヨーロッパや北アメリカ大陸との大きな違いだ。そして、第三に、これまでは大きな技術変化はなかった(ただし、スマートグリッドという新しい技術は、大きな変化をもたらす潜在力を持っている)。

 そのほかの分野では、電力におけるほど「すみ分け」は安定的でない。だから、蛸壺間の競争は起きる。ただし、その場合の目標は利益ではなく、シェアになる。つまり、勢力圏の拡大が重要な課題だ。

 なお、右の三つの条件のすべてが必要条件というわけではない。事実、携帯電話の場合、第一条件は満たされているが、第二条件は満たされていない。携帯電話は、本来はPCと同じように互換性があるものだ。SIMロックは、互換性をなくすための人為的な手段である。

 また、それぞれの蛸壺の中も、決して均一ではない。派閥があり、部門間の対立があり、複数の専門家集団間の争いがある。だから、すみ分けは多層構造をなしている。ただし、部外者の立場からは、「企業グループ」という一つの蛸壺に見える。

 さらに、日本語がかかわってくると、「囲い込みとすみ分け」が生じやすくなる。外国との競争が起こりえないからである。この点は、マスメディアにおいて顕著に成立している条件だ。

■「競争は悪であり安定と秩序こそ重要」

 囲い込みとすみ分けのシステムにおいては、競争は悪として否定される。それを表すため、しばしば「過当競争」という言葉が使われる。

 競争否定を正当化するために用いられるのが、「安定と秩序」だ。その反面で、競争がもたらす発展可能性と効率化は無視される。

 電力の場合には、「安定的な電力供給」が金科玉条とされる。「停電が一切生じない電力供給は、地域独占によってこそ実現できる」との論理だ。スティーブン・キングの小説を読むと、メイン州の田舎町で、人々は裏庭に自家発電機を準備して、停電に備えている。こうした状況に比べれば、停電がない日本の電力事情がたいへん恵まれていることは間違いない。

 ただ問題は、そのために多大のコストを負担していることだ。日本の電気料金はアメリカのほぼ2倍である。これだけのコストを支払ってまで、「停電皆無」を実現することは必要なのだろうか? 複数の供給主体が存在する場合には、電力利用者がその判断をすることになる。しかし、地域独占下では、そうした選択を行うことはできない。

 すみ分けは供給者に過剰な利益をもたらす。競争があれば発生しえない「レント」(超過利潤)である。これは外部者には見えない。東京電力がどれだけ巨額のレントを享受していたかは、福島原発の事故で東電が生体解剖されることによって、初めて見えるようになってきた。

 現代日本の企業集団は江戸時代の藩に似ている。生活の糧は藩によって提供され、付き合いや行動範囲、昇進などは、藩の内部に限定されていた。だから、藩の論理が幕府の論理に優先した。こうしたメンタリティは忠臣蔵に見事に表われている(幕府が決めた規則に違反して処罰されたのに、幕府に抗議するのでなく、規則に背いて直接の復讐を行い、それが「忠義」とされている)。

 明治維新によって藩は解体されたが、長州閥、薩摩閥などの形で残った。経済の近代化が進むにつれてそうした勢力は消滅したが、それに代わって形成されたのが、旧財閥系企業を中心とする企業グループ体制だ。戦後の日本では、これに加えて電力会社や自動車メーカーを中心とする企業グループが形成された。

 囲い込みとすみ分けの安定した状態を破壊するのは技術である。PCの場合には、まさにそうした事態が発生した。スマートフォンは日本のすみ分け体制を壊そうとしている。スマートグリッドの進歩は、電力の地域独占体制を正当化する論理を破壊する可能性がある。

 1990年代以降の技術は、日本に不利に変わってきた。ITはその最たるものだ。それは、囲い込み・すみ分け文化とは親和性がないのである。だから、日本は対応できなかった。

 実は、そうした変化がIT以外の分野でも生じる可能性がある。

=転載終了=

   

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