テレ朝カイロ支局長ら３人、交通事故死 (1/2ページ)
2011.10.22 05:03
リビア中部シルトのカダフィ大佐が潜伏していた地区。テレビ朝日の野村能久カイロ支局長らクルーは同地に向かっていた　（ロイター）【フォト】

　テレビ朝日は２１日午後１０時半過ぎから、東京・六本木の同局で緊急会見を行い、同局のカイロ支局長、野村能久（のむら・よしひさ）さん（３７）ら４人が乗った車がリビア国内で取材中、首都トリポリと中部シルトの間で交通事故に遭い、野村さんと同乗者２人の計３人が死亡、１人が負傷したと発表した。野村さんは早稲田大で活躍した元ラガーマン。カダフィ大佐が死亡したリビア情勢の取材に当たっていた。

テレビ朝日によると、事故の一報は２１日午後５時ごろ、同局外報部に入ったという。

　取材の車には、野村支局長と同局カメラマン、力石大輔さん（２３）、エジプト人の女性助手、シャイマー・サミさん（３１）、リビア人男性でドライバー兼現地コーディネーターの４人が乗っていたが、野村さん、サミさん、ドライバーが死亡。力石さんは足をけがし、現場近くの病院に入院したが、軽傷だった。

　外報部に直接、連絡を入れたのは力石さんだった。事故を受け、テレビ朝日の社員がただちに現地へ向かった。事故当時、野村さんと力石さんは車の後部座席に乗っていたが、事故の詳細は不明。力石さんは「気が付いたら、病院のベッドの上にいた」と話したという。

　死亡した野村さんは２１日昼の番組に、国際電話による「生リポート」の形で出演。同日午後２時ごろにも会社と打ち合わせをしていた。その後に消息を絶った。事故発生後は救急車ではなく、現地の民間人が野村さんらを病院に運んだという。

　外務省にも死亡情報が入っており、エジプトの在カイロ日本大使館を通じて事実確認の関係や情報収集を急いでいる。

　リビアは最高指導者だったカダフィ大佐が２０日に死亡。反カダフィ派「国民評議会」が全土を掌握した。同局によると、野村さんらは、これらの取材のためカイロからトリポリに入り、カダフィ氏の出身地、シルトに陸路で向かっていた。

　野村さんは高知県出身。愛媛県松山市の私立、愛光高から早稲田大に入学。ラグビー部に所属し、ＦＷ第３列のＦＬとして、１９９６年度の関東大学対抗戦に出場。卒業後は同局勤務のかたわら、クラブチームの強豪タマリバクラブでも活動し、ラグビー日本一を決める日本選手権にも出場した。

　会見に出席したテレビ朝日の武隈喜一報道局長は「残念だ。大変申し訳ないと思っている」と無念の表情を浮かべた。同局社員の取材中の事故死は１９９１年６月、長崎・雲仙普賢岳の噴火で、記者１人が火砕流に巻き込まれて以来、２件目という。

（紙面から）

テレ朝記者ら３人、リビアで死亡＝取材移動中に交通事故―男性カメラマンもけが2011年10月22日1時6分

　テレビ朝日は２１日、リビア情勢を取材するため、同国内を移動中だった同社カイロ支局長の野村能久記者（３７）と同支局助手のエジプト人女性（３１）、リビア人の運転手兼コーディネーターの男性が死亡したことを明らかにした。同社カメラマンの力石大輔さん（２３）も足にけがをした。４人を搬送した現地の民間人は、病院側に「交通事故」と話したという。

　同社によると、野村記者らはエジプトから陸路海沿いの道でリビアに入国。４人で同国中部のシルトに向かっていた。事故後、４人はシルトから東約１９０キロの病院に運ばれた。力石さんは搬送先の病院で、野村記者ら３人の遺体を確認したという。

　野村記者はリビアの最高指導者カダフィ大佐の拘束情報を受け、２０日午後８時（日本時間）ごろ、カイロ支局から現地に行くことが決まった。同記者は２１日の昼ニュースでリビアから現地情勢をリポートし、同日午後２時ごろ、夕方のニュースについて、東京の同社外報部と打ち合わせをした後、同社と連絡が取れなくなった。

　同５時ごろ、現地の病院にいる力石さんからテレビ朝日に事故の連絡があった。力石さんは事故について「本当に記憶がない」と話した。気が付いたときには病院のベッドにいたといい、病院の医師から野村記者ら３人が亡くなったことを知らされた。　

［時事通信社］