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126.苦境に立つテレビ(3):視聴者離れ?  (2010年4月24日記載)
http://www.asyura2.com/11/hihyo12/msg/632.html
投稿者 taked4700 日時 2012 年 2 月 01 日 14:56:43: 9XFNe/BiX575U
 

(回答先: 123.苦境に立つテレビ業界(2):放送業界とテレビ業界  (2010年2月13日記載) 投稿者 taked4700 日時 2012 年 2 月 01 日 14:48:57)

図はNHKニュースウォッチ9の視聴率、2007年のものです。

リンク元には数多くの図版が載っています。

http://www.geocities.jp/yamamrhr/HP123zu3-2.jpg

126.苦境に立つテレビ(3):視聴者離れ?  (2010年4月24日記載)

 前回までは、テレビの状況について、民放とNHKに分けて4回にわたり、いくつかの問題点を指摘してきた。
 今回は、視点を変えて、「視聴者離れ」という観点から分析する。
 民放の経営が苦しくなった最大の原因は、広告収入が激減した事であり、その原因はスポンサーが広告の効果に疑問を持ち始めた事である。広告効果が疑問視された背景には、インターネットと携帯電話の普及で、広告媒体が多様化した、と言う事と、その結果として、テレビを見る人が減ってきた、という事情がある。
 そこで、今回は、テレビが視聴者から見離されているのかどうか、を分析する事とした。

 今回のコラムに用いたデータ等は、最後の参考文献に記載した書籍やURLから引用した。

1.テレビ視聴時間の推移:

 まず最初に、各人が一日のうちで何分くらいテレビを視聴しているのか、その推移を見てみよう。テレビ視聴については、様々な調査データが発表されている。

1−1.NHK「国民生活時間調査」の結果から(図1-1):
図1-1 テレビ視聴時間の推移−1 (NHK国民時間調査から)

 NHK放送文化研究所は、5年毎に「国民生活時間調査」を実施し、それを発表している。その結果からテレビ視聴時間の平均値の推移をみてみよう。
 右の図1-1に1965年から2005年までの5年毎・曜日毎の平均値の推移を示す。
 注:調査方法:
 @)1960年と1965年は、面接法でアフターコード方式。
 A)1970年から1995年までは、配布回収法でアフターコード方式。
 B)1995年以降は、配布回収法でプリコード方式。
 C)1995年は、調査方法を変えて2回行われた。

 @図1-1を見て、まず気がつくのは、1960年から1965年にかけて急上昇している事だ。これは、テレビの普及状況を反映してる。1960年頃、テレビは庶民にとっては高嶺の花であった。池田首相(当時)が、「所得倍増計画」を打ち上げて、翌年(1961年)から10年計画で、国民所得を倍にする、と宣言し、大方のマスコミから冷笑された時代であった。
 Aマスコミが馬鹿にした「所得倍増計画」は、時代の流れとうまくマッチして、予想以上の成果を上げ、国民所得は10年を待たないで倍増し、高値の花であったテレビは、「三種の神器」の中心になり、庶民はどんどん、テレビを購入した。この結果、テレビの視聴時間は、1970年代には、平日でも3時間を超すようになった。テレビ視聴時間増大の背景には以下の要因が考えられる(参考文献4.「テレビと日本人」)。
  @)高度経済成長、皇太子成婚、東京オリンピック、などにより、テレビが爆発的に普及した。
  A)放送時間の拡大、「ながら視聴」・「家族視聴」の誕生により、テレビが人々の生活時間の多くの部分に侵入してきた。
 B順調に増え続けたテレビ視聴時間は1970年代後半から減少し始める。その背景としては、以下の要因があげられている(参考文献4.「テレビと日本人」)。
  @)娯楽番組がマンネリ化してきて、視聴者に飽きられるようになった。
  A)ロス疑惑、豊田商事事件等、報道の在り方を巡って批判が増大した。
  B)石油ショックから立ち直り、家の中でテレビを見ているより、外でのレジャーに目が向き始めた。
 C1980年代後半から、テレビ視聴時間は再び増大に転じ、平日でも3時間20分くらい、日曜日には4時間以上となった。その背景としては、以下の要因が考えられる(参考文献4.「テレビと日本人」)。
  @)週休二日制の普及により自由時間が増加した。
  A)平均寿命の増加により、テレビを長時間視聴する高齢者が増えた。
  B)生まれた時からテレビが存在していた世代が大人になり始め、テレビを視聴する事が生活の一部となっている世代が誕生してきた。
 Dテレビ視聴時間の増大傾向は、調査方法が変わった1995年以降も続いているが、日本経済の停滞による「巣籠り症候群」の影響とも考えられる。
 E上記でみるように、NHK放送文化研究所による「国民生活時間調査」からは、国民の「テレビ離れ」の状況は見えてこない。

 注: NHK放送文化研究所の「2005年 国民生活時間調査報告書」については右をクリック: 2005年 国民生活時間調査報告書

1−2.NHK「全国個人視聴率調査」の結果から(図1-2):

 NHK放送文化研究所は、5年毎の「国民生活時間調査」とは別に、毎年、全国個人視聴率調査を行っている。1976年以降、毎年の、1週間の平均値の推移を下の図1-2に示す。
図1-2 テレビ視聴時間の推移−2 (NHK全国個人視聴率調査から)

 各年毎のデータは赤の折れ線で示し、データも表示している。黒の点線は、データは記載していないが、2年移動平均のデータであり、大きなトレンドを示すために表示した。

 @1976年から1985年にかけて、多少の凸凹はあるものの、テレビ視聴時間は減少しており、国民のテレビ離れの傾向がみてとれる。これは、図1-1と同じである。
 A1986年以降2001年まで、テレビ視聴時間は増大に転じる。この15年間は、テレビが復権した期間である、と言えるであろう。
 B2002年以降、テレビ視聴時間は、ほぼ横ばい傾向と言えるであろう。したがって、ここまでのデータからも、国民のテレビ離れ、という状況は見えてこない。

1−3.博報堂「メディア定点調査」の結果から(図1-3):
図1-3 テレビ視聴時間の推移−3 (博報堂「メディア定点調査」から)

 博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所は、2005年から毎年、生活者のメディア接触状況を分析するために、東京都、大阪府、高知県の3地区で「メディア定点調査」を実施している。その東京都での調査結果(1日の間に、それぞれのメディアと接触している時間)を右の図1-3に示す。
 図1-3のテレビとの接触状況と、図1-1、図1-2の視聴時間とを比べると、時間がほぼ半分二なっている事がわかる。ここでは、絶対時間の長短ではなく、トレンドを分析の対象とする。

 @テレビとの接触時間は、2005年から2006年にかけて増加した後、2007年、2008年と2年連続して減少した。しかし、2009年には若干上昇した。
 Aこのデータを見る限りでは、テレビ視聴時間は減少しており、テレビ離れが起きつつあるのかな、という感じではある。ただ、他のメディアをみると、以下の事が言える。
  @)着実に伸びているのがインターネットとの接触時間である。2005年と2009年のデータを比べると、「携帯からインターネット」は8.3分から18.1分と倍増した。また、「PCからインターネット」は、伸び率は小さいものの、10分以上増加している。
  A)ラジオと新聞への接触時間は、2005年から2009年にかけて、両者とも減少している。
  B)雑誌との接触時間は2005年から2009年まで若干減ってはいるものの、変動は少ない。
 B博報堂のデータを、2006年から2009年まで、という時間軸でみると、以下の事が言える。
  @)接触時間が増えたもの: 「PCからインターネット」、「携帯からインターネット」
  A)接触時間が減ったもの: テレビ、ラジオ、新聞、雑誌。
 Cつまり、2006年から2009年まで、メディアとの接触時間が若干減少したが、その中で既存の四大メディアは、すべて接触時間を減らしている。その一方で増えたのが、インターネットへの接触時間であり、今後のメディアの動向はインターネット抜きでは語れない時代に突入した、と言えるであろう。

1−4.NHK「日本人とテレビ 2005」の結果から(図1-4):
図1-4 テレビ視聴時間の推移−4 (NHK「日本人とテレビ 2005」から)

 NHK放送文化研究所は、テレビ視聴行動や視聴意識の長期的な変化をとれ得るために、1985年から5年ごとに「日本人とテレビ」という調査を実施し発表している。最新の調査結果に基づいて、テレビの視聴時間の推移を右の図1-4に示す。(「日本人とテレビ 2005」については、右をクリック: 日本人とテレビ2005
 図1-4のデータは、視聴時間の平均値ではなく、1日に何時間テレビを視聴しているかの分布を示している。

 @「テレビをほとんど見ない人」は、常に4%以下であり、極めて少ない。。
 A「テレビを1時間くらいしか見ない人」と「テレビを2時間見る人」とは、1985年から2005年にかけて、ともに減少している(16%⇒13%、27%⇒24%)。
 B「テレビを3時間見る人」、「4時間見る人」、「5時間見る人」、および、「6時間以上見る人」は、1985年から2005年にかけて、いずれも増加している(22%⇒24%、13%⇒14%、10%⇒11%、9%⇒12%)。
 Cとくに、6時間以上テレビを見る人の割合が2000年以降急増しているのが特徴的である。。
 Dこのようなデータをみると、「視聴者のテレビ離れ」とは逆に、テレビを長時間見る人が増えている、という事がわかる。この背景には、高齢化社会という現実がある。次項の分析で詳細を述べるが、70歳以上の高齢者は長時間テレビを見ているようなのだ。

 ここまで4種類のデータで、テレビ視聴時間の推移を見てきたが、これらを見る限り、「テレビ離れ」という心配はないように思える。そこで、次に、性別、年齢別に視聴時間の推移を分析してみよう。

2.年齢別性別のテレビ視聴時間の推移:

 第1項でみるように、国民全体を一つにまとめてみる限りでは、「テレビ離れ」が起きているとは言い難い、と言う事がわかった。そこで、年齢別性別にテレビ視聴時間を見た場合、どうなるのかをここで分析してみよう。

2−1.NHK「日本人の生活時間1995」の結果から(図2-1、図2-2):
図2-1 男性の年代別テレビ視聴時間の推移−1
 (NHK「日本人の生活時間1995」から)
図2-2 女性の年代別テレビ視聴時間の推移−1
 (NHK「日本人の生活時間1995」から)

 まず、最初に過去のトレンドをみるために、NHK放送文化研究所が発表した「日本人の生活時間1995」のデータを見てみよう。1975年から1995年までの10年毎の男性、女性、年代別に発表された推移データを以下で分析する。

(1)男性の年代別テレビ視聴時間(図2-1):

 男性の年代別の推移データを右の図2-1に示す。図2-1と、図1-1、図1-2とを比べながら、どんな事がわかるかをみてみよう。

 @70歳男性のデータ以外では、図2-1が示しているトレンドは、図1-1、図1-2とのトレンドと同じである。つまり、70歳の男性以外のテレビの視聴時間は1975年から1985年にかけて減少したが、1995年には再び上昇した。しかし、70歳男性の場合は、1975年から1985年にかけてテレビ視聴時間は増加し、1995年にはさらに増加している。
 A年齢データを細かく見ると、16歳と30歳、70歳の男性では、1995年のテレビ視聴時間が1975年のデータを上回っているが、それ以外の年代(10歳、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳)では、1995年のテレビ視聴時間が1975年のデータを下回っている。
 B図1-1では、1995年のテレビ視聴時間が1975年のデータを上回っている。しかし、図2-1に示すように、年代別にみると、上回っている年代はすくない。しかし、16歳と70歳では、その差が極めて大きいために、全体のテレビ視聴時間が増えたのか、と思わせる。
 (16歳: 1975年は141時間、1995年は180時間で、39時間の増加。
  70歳: 1975年は264時間、1995年は311時間で、47時間の増加)
 Cつまり、男性の場合には、16歳と70歳という二つの年代だけが1995年にテレビ視聴時間を大きく増やし、それが全体を押し上げた、と言える。それでは、女性はどうなのかを、次に見てみよう。

(2)女性の年代別テレビ視聴時間(図2-2):

 女性の年代別の推移データを右の図2-2に示す。男性の場合と同じように、図2-2と、図1-1、図1-2とを比べながら、どんな事がわかるかをみてみよう。

 @女性の場合、60歳、70歳の二つの年代のテレビ視聴時間は、1975年から1985年、1995年と連続して上昇している(ただし、70歳女性では、1975年と1985年のテレビ視聴時間は同じである)。
 Aそして、年齢別データを細かく見ると、1975年と1995年のテレビ視聴時間を比べた場合、40歳・50歳・60歳・70歳、と年齢の高い層では1995年のほうが長い。ただし、40歳・50歳では長いとは言ってもほんのわずかである。
 B20歳・30歳女性の場合、1995年のテレビ視聴時間は、1985年よりも増えたとはいっても、1975年と比べると大きく減少している。そして、10歳・16歳女性の場合には、1975年と1995年のテレビ視聴時間は同じである。
 Cこうした事から、図1-1にあるように、全国民平均の1995年のテレビ視聴時間が1975年よりは長いのは、女性の高齢者の視聴時間が増大したからであって、若年層は、むしろ減っている、と言う事がわかる。
 Dつまり、図2-1と図2-2からは、1975年と1995年を比べた場合、高齢者のテレビ視聴時間は伸びているが、それ以外の層では、横ばい、または、減少気味である、という結論が引き出せる。(ただし、16歳男性だけは、高齢者と同じ傾向を示している)。

(3)年代別テレビ視聴時間からわかる事:

 図2-1と図2-2から以下の事がわかる。

 @男性の場合、60歳・70歳のテレビ視聴時間は、50歳以下のテレビ視聴時間より、極めて長い。
 A女性の場合も、年齢が高くなるにつれて、テレビの視聴時間は長くなっている。
 B1975年から1995年にかけて、テレビを良く見ていたのは、高齢者であり、若者はそれほどテレビをみていなかった。
 Cそして、70歳の男性、50歳・60歳・70歳の女性は、1995年には1975年よりも長くテレビを見るようになった。
 Dつまり、テレビは高齢者が見るものであり、若者はあまり見ていなかったのである。

2−2.NHK「国民生活時間調査2005」の結果から:

 次に、最近のトレンドををみてみよう。前出のNHK放送文化研究所が発表した「2005年 国民生活時間報告書」には、性別、年代別のテレビ視聴時間の推移も記載されている。その報告書に基づいて、1995年から2005年までの5年毎の「男性、女性、年代別のテレビ視聴時間データ」を以下で分析する。

2−2−1.平日のテレビ視聴時間の推移(図2-3、図2-4)

 まず最初に平日の男性、女性、年代別のテレビ視聴時間の推移をみてみよう。
図2-3 男性の年代別テレビ視聴時間の推移−2(平日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)
図2-4 女性の年代別テレビ視聴時間の推移−2(平日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)

(1)男性の年代別テレビ視聴時間(図2-3):

 右の図2−3に平日の男性の年代別テレビ視聴時間の推移を示す。

 @図2−3を一覧してわかる事は、50歳以下の男性と、60歳以上の男性では、大きな差があるということである。50歳以下のテレビ視聴時間は2時間〜3時間であるのに対し、60代で4時間以上、70歳以上では5時間を超えている。。
 A1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代・50代・60代: 2000年には1995年よりは減ったが、2005年には増加した。しかし、1995年のレベルまでは増えていない。
  A)20代・30代・40代: 1995年から2000年にかけて、減少または横ばいであったが、そして2005年にはさらに減少した。
  B)70歳以上: 2000年に増えた後、2005年に減少したが、1995年のレベルよりは長い。
 B1995年と2005年の比較でみると、70歳以上の男性を除けば、すべての年代で、テレビの視聴時間は減っている。70歳以上の男性でも2000年と比べると、テレビの視聴時間は減っている。
 Cつまり、男性の場合、平日のテレビ視聴時間は、すべての年代で減少傾向に入っている、とみなす事が出来るのである。とくに、20代と30代のテレビ視聴時間は、1995年・2000年・2005年と連続して減少している
 D。

(2)女性の年代別テレビ視聴時間(図2-4):

 右の図2−4に平日の女性の年代別テレビ視聴時間の推移を示す。

 @図2-4を見ると、女性の場合は、50代を境とした大きな隔絶はないが、男性と同じように、年齢を重ねるにつれて、テレビの視聴時間が長くなっている、という事がわかる。そして、男性と女性を比べると、60代までは、すべての年代で女性のほうが男性よりは長くテレビを見ている、と言える。
 A1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代・40代: 2000年に増えた後、2005年に減少したが、1995年のレベルよりは長い。
  A)20代・50代: 2000年に増えてから、2005年には1995年のレベル以下まで減少した。
  B)30代・60代: 1995年・2000年・2005年と連続して減少している。
  C)70歳以上: 2000年には減少したが、2005年には1995年を上回るレベルまで増加している。。
 B1995年のテレビ視聴時間と2005年を比べると、10代と70代では増えているが、その他の年代では減少している。10代の増加もわずか1分であるから、その意味では、女性の場合も男性と同じく、70歳以上だけが、テレビの視聴時間を増やしている、と言う事が出来るであろう。
 Cつまり、女性の場合には、60代以下では、テレビの視聴時間は減少傾向にあるが、70歳以上の女性は、テレビの視聴時間が増えている、と言える。

(3)平日の年代別テレビ視聴時間からわかる事::

 @年齢を重ねるとともにテレビの視聴時間は増えている。とくに男性の場合は、定年退職する60台以上で大きく増えている。
 Aテレビの視聴時間のトレンドを見ると、男女を問わず、60代までは、テレビの視聴時間は減少傾向にある、と思われるので、平日のテレビ離れは、かなり進んでいるように思われる。ただ、70歳以上には、この傾向は見られない、逆に、70歳以上の女性は、よくテレビをみるようになった。
 B平日、50代以下の男性は、(仕事が忙しいためと思われるが)、テレビをあまり見ない。しかし、60台になると、(退職して自由時間が増えたためと思われるが)、急にテレビを良く見るようになる。
 C女性の場合も、若い年代ではテレビはあまり見ないが、60代以上はテレビを良く見る。

2−2−2.土曜日のテレビ視聴時間の推移(図2-5、図2-6)

 次に土曜日の男性、女性、年代別のテレビ視聴時間の推移をみてみよう。
図2-5 男性の年代別テレビ視聴時間の推移−3(土曜日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)
図2-6 女性の年代別テレビ視聴時間の推移−3(土曜日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)

(1)男性の年代別テレビ視聴時間(図2-5):

 右の図2−5に土曜日の男性の年代別テレビ視聴時間の推移を示す。

 @図2−3と比べてみると、すべての年代でテレビ視聴時間が長くなっている。これは、週休二日制が一般的になり、男性も土曜日は自由時間が多くなった結果と思われる。その中でも、10代の増加が著しい(平日は2時間強であったのが、土曜日には3時間弱となり、2005年年には3時間半に迫っている)。
 A1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代・40代・50代・70歳以上: 2000年には減少または横ばいであったが、2005年には1995年を上回って増加している。とくに、10代と70歳以上は、1995年と2005年では、30分以上増えている。
  A)20代: この年代だけが、テレビ視聴時間を着実に増やしている。
  B)30代・60代: この二つの年代男性は、20代男性とは逆に、テレビ視聴時間を減らしている。30代・60代男性だけが、なぜテレビ視聴時間を減らしたのか、興味あるところではあるが、この調査だけでは、その原因がわからない。
 B年代ごとのテレビ視聴時間を比較すると、20代から70歳以上まで、年齢を重ねるごとに、テレビ視聴時間が増加している。

(2)女性の年代別テレビ視聴時間(図2-6):

 右の図2−6に土曜日の女性の年代別テレビ視聴時間の推移を示す。

 @図2−4と図2−6を比べると、テレビ視聴時間は増えてはいるが、男性ほど増えてはいない事がわかる(年代によっては、減少している年もある)。
 A1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代: テレビの視聴時間が年々減少している。
  A)20代: 2000年には1995年よりは減ったが、2005年には増加した。しかし、1995年のレベルまでは増えていない。
  B)30代: 10代とは逆に、テレビ視聴時間が着実に増えている。
  C)40代・50代・60代・70歳以上: 2000年には減少したが、2005年には増加し、1995年のレベルを上回った。
 B30代を比べると、男性と女性ではまったく逆のトレンドとなっている(男性は減っているのに、女性は増えている)。これもまた、興味をひく問題ではある。
 C1995年と2005年を比べてみると、10代・20代では減少しているが、30代以上では増加している。つまり、若者はテレビ離れしつつあるが、中・高齢者は、逆にテレビを良く見るようになっている、と言える。

(3)土曜日の年代別テレビ視聴時間からわかる事::

 @平日と比べると、男性のテレビ視聴時間が大幅に増えている。これは、週休二日制のおかげで自由時間が増えたためと思われる。
 A20代以上では、男女ともに、年代を重ねるごとに、テレビ視聴時間が長い。つまり、土曜日でも、高齢になるほど、テレビを良く見ている。
 B2005年には、男女ともに、70歳以上のテレビ視聴時間の増加が著しい。
 C男性の場合は30代と60代、女性の場合には10代と20代に、テレビ離れの傾向が見て取れる。
 D土曜日も、テレビをよくみるのは高齢者であって、若者はあまりテレビを見ていないし、テレビ離れが起きている、と思われる。

2−2−3.日曜日のテレビ視聴時間の推移(図2-7、図2-8)

 最後に日曜日の男性、女性、年代別のテレビ視聴時間の推移をみてみよう。
図2-7 男性の年代別テレビ視聴時間の推移−4(日曜日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)
図2-8 女性の年代別テレビ視聴時間の推移−4(日曜日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)

(1)男性の年代別テレビ視聴時間(図2-7):

 右の図2−7に日曜日の男性の年代別テレビ視聴時間の推移を示す。

 @日曜日のテレビ視聴時間は、一部の例外を覗いて、土曜日よりも増えている。一部の例外の中でも、極めて特徴的なのが、2005年における10代・20代の激減である(1995年と2000年を比べると、10代で42分、20代で63分も減少している)。
 A1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代・20代・30代: テレビの視聴時間が年々減少している。10代・20代については既に述べたが、30代でも1995年と2005年とで、34分の減少である。
  A)40代: 2000年に増えてから2005年には1995年のレベル以下まで減少した。
  B)50代: 10代・20代・30代とは逆に、年々テレビ視聴時間が増加している。
  C)60代: 2000年に増えた後、2005年に減少したが、1995年のレベルよりは長い。
  D)70歳以上: 2000年に減少した後、2005年に増加し、1995年のレベルを上回った。
 B2005年のデータだけを見ると、10代・20代は3時間未満、30代・40代は4時間未満、50代以上は5時間以上、ということで、高齢者の男性ほどテレビを長く見ている、と言う実態がみてとれる。
 Cさらに、10代から40代の場合、2005年のテレビ視聴時間は1995年より短く、若い男性は「テレビ離れ」しつつある、と言えるであろう。

(2)女性の年代別テレビ視聴時間(図2-8):

 右の図2−8に日曜日の女性の年代別テレビ視聴時間の推移を示す。

 @土曜日のデータ(図2-6)と比べると、女性の場合は日曜日でもそれほど大きな変化は見られない。ただし、20代の女性が2005年にテレビ視聴時間を急減させている。
 A1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代・50代: 2000年に増えてから2005年には1995年のレベル近辺まで減少した。
  A)20代・40代: 1995年から2000年にかけて、横ばいまたは減少したが、2005年にはさらに減少した。
  B)30代: 2000年に減少した後、2005年に増加し、1995年のレベルを上回った。
  C)60代・70歳以上: 1995年から2005年にかけて、年々テレビ視聴時間が増加している。
 B2005年のテレビ視聴時間が、1995年や2000年を上回ったのは、60代・70歳以上のみであり、高齢者の女性は、日曜日に長くテレビをみるようになった。
 C女性の場合にも、10代から40代は、1995年と2005年を比べた場合、テレビ離れの傾向が見て取れる。

(3)日曜日の年代別テレビ視聴時間からわかる事:

 @10代・20代・30代の男性と、20代の女性のテレビ視聴時間が、1995年に比べ、2005年には激減した。これらの年代では、テレビ離れが起きている、と言えるであろう。
 A50代男性と、60代・70歳以上の女性のテレビ視聴時間は、年々、着実に増加した。
 B総体的に、日曜日でも、高齢になるほど、テレビを良く見ているが、若者はあまり、テレビを見ないし、テレビ離れが起きているようである。。

2−3.NHK「日本人の生活時間1995」の結果と、NHK「国民生活時間調査2005」の結果から言える事:

 「日本人の生活時間1995」と「国民生活時間調査2005」とは、連続した調査ではないが、テレビ視聴時間のトレンドを見る上では参考になるので、それらの調査を合わせて見て取れる傾向を以下にまとめる。

 @テレビをよくみるのは高齢者であって、若者はあまり見ていない。つまり、テレビ視聴時間に限って言うと「高高若低」と言える。
 A若者は、高齢者ほどテレビを良く見ないばかりでなく、「テレビ離れ」と言える現象が見て取れる。
 B一方、高齢者は、「テレビ離れ」とは逆に「テレビ依存」とも言えるくらいテレビを良く見るようになっている。とくに、70歳以上の高齢者にはこの傾向が著しい。
 Cこうした、若者の「テレビ離れ」と、高齢者の「テレビ依存」とがあいまって、第1項でみたように、国民全体の平均値で言うと、テレビ離れは起きていない、と言う結果が得られるのであろう。
 D日曜日における10代・20代の男女のテレビ離れの傾向は著しいものがある、と言える。

2−4.博報堂「メディア定点調査」の結果から:
図2-9 男性の年代別メディア接触時間の推移
 (博報堂「メディア定点調査」から)
図2-10 女性の年代別メディア接触時間の推移
 (博報堂「メディア定点調査」から)

 年齢別、性別の最近のトレンドを見るために、第1項でも取り上げた“博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所”が実施している「メディア定点調査」の東京地区での状況を分析する。トレンドをみるために、2005年と2009年の3種類のデータを比較する。その3種類とは、「メディア全体との接触時間」、「テレビとの接触時間」、「インターネットとの接触時間」(PCからインターネット、携帯電話からインターネットの両者を足し合わせたもの)である。。

2−4−1.メディア全体との接触時間の推移(図2-9、図2-10):

 第1−3項と図1-3に示すように、「メディア定点調査」ではテレビだけではなく、ラジオ・新聞・雑誌・インターネット(PCから、携帯電話から)との接触時間も調査している。その全体の接触時間は、2005年と2009年にかけて、東京地区で、312.4分から323.9分へとわずかに増えている(図1-3参照)。それが、男性・女性、年代別ではどのように推移したのかを下記で分析してみよう。
 注: 年代別では、10代から60代までであって、70歳以上は分析の対象に入っていない。

(1)男性のメディア全体との接触時間の推移(図2−9):

 右の図2−9に男性の年代別メディア接触時間の推移を示す。

 @図2-9をみると、20代男性がメディア接触時間を大きく減らしている(347.8分から294.6分へ、約1時間も現象)、と言う事である。。
 A同じ若者でも、10代の男性のメディア接触時間は、316.4分から323.1分へと、わずかではあるが(6.7分)、増えている。。
 B一方、中高年とも言える30代・40代・50代の男性のメディア接触時間は、いずれも大きく増えている(40〜55分くらい)。
 C60代の高齢者のメディア接触時間も増えてはいるが、25分くらいであり、中高年グループほどの増加ではない。

(2)女性のメディア全体との接触時間の推移(図2−10):

 右の図2−10に女性の年代別メディア接触時間の推移を示す。

 @図2-10をみると、10代と40代の女性が、メディア接触時間を大きく増やしている事がわかる。とくに、10代の女性の場合は、1時間以上(71.8分)も接触時間が増えている。
 A20代の女性も、わずかではあるが(6.4分)、メディア接触時間が増えている。
 B一方、30代と40代女性のメディア接触時間は、20分以上減少している。
 C60代女性の場合も、わずかではあるが(7.5分)、メディア接触時間は減少している。

(3)年代別メディア全体との接触時間の推移について:

 上記の分析を、メディア接触時間の増減で分類すれば、以下の通りとなる。

 @2005年から2009年にかけてメディア接触時間が増えた年代と性別(カッコ内は増加時間):
  @) 10代女性(71.8分)、
  A) 50代男性(55.5分)、
  B) 40代男性(43.6分)、
  C) 40代女性と30代男性(40.4分)、
  D) 60代男性(25.4分)、
  E) 10代男性(6.7分)、
  F)20代女性(6.4分)。
 A2005年から2009年にかけてメディア接触時間が減少した年代と性別(カッコ内は減少時間):
  @) 20代男性(53.2分)、
  A) 50代女性(23.5分)、
  B) 30代女性(20.4分)、
  C) 60代女性(7.5分)。
 B大まかにいえば、男性のメディア接触時間は増えたが、女性は、増減トントンでほぼ横ばい、ということであろうか。
図2-11 男性の年代別テレビ接触時間の推移
 (博報堂「メディア定点調査」から)
図2-12 女性の年代別テレビ接触時間の推移
 (博報堂「メディア定点調査」から)

2−4−2.テレビとの接触時間の推移(図2-11、図2-12):

 次に、テレビとの接触時間が、東京地区の男性・女性、年代別で、2005年と2009年にかけてどのように推移したかを下記で分析してみよう。

(1)男性のテレビ接触時間の推移(図2−11):

 右の図2−11に男性の年代別テレビ接触時間の推移を示す。

 @10代・20代・40代の男性のテレビ接触時間は、2009年には2005年よりも減少している。
 A20代の男性は、メディア接触時間も減少していたので、ある程度、納得はゆくが、10代・40代の男性は、メディア接触時間が増えているにも関わらず、テレビ接触時間が減っている、というのは、明らかにテレビ離れが起きている、と言えるであろう。
 B30代・50代・60代の男性は、わずかではあるが、テレビ接触時間を増やしている。しかし、この増加時間は、メディア接触時間の増加分と比べると、極めて小さく、テレビ依存が深まった、と言えるほどではない。
 Cつまり、総体的にみて、40代以下の男性は、30代を除き、テレビ離れの兆候がある、と言えそうである。とくに、20代男性のテレビ離れの傾向は著しい。

(2)女性のテレビ接触時間の推移(図2−12):

 右の図2−12に女性の年代別テレビ接触時間の推移を示す。

 @男性の場合とは対照的に、10代・20代・40代の女性は、2009年には2005年よりも、テレビ接触時間を増やしている。
 Aさらに、60代女性のテレビ接触時間も、増えている。ところが、60代女性のメディア接触時間は減っているから、60代女性は、テレビ依存が深まった、と言えるであろう。
 B一方、30代と50代の女性は、男性とは逆に、テレビ接触時間を減らしている。この年代の女性のメディア接触時間も減っており、メディア離れ、テレビ離れの傾向がある、と言えるであろう。
 Cつまり、女性の場合、10代・20代の若者と60代の高齢者は、テレビ依存の傾向がある。
 Dその一方で、30代・50代女性にはメディア離れ、テレビ離れの兆候が出てきている。

(3)年代別テレビ接触時間の推移について:

 上記の分析を、テレビ接触時間の増減で分類すれば、以下の通りとなる。

 @2005年から2009年にかけてテレビ接触時間が増えた年代と性別(カッコ内は増加時間):  @)10代女性(19.3分)、
  A)60代女性(15.6分)、
  B)20代女性(15.1分)、
  C)50代男性(11.0分)
  D)40代女性(5.6分)
  E)30代男性(4.9分)、
  F)60代男性(4.3分)。
 A2005年から2009年にかけてテレビ接触時間が減少した年代と性別(カッコ内は減少時間):
  @)20代男性(28.5分)、
  A)50代女性(10.1分)、
  B)10代男性(8.8分)、
  C)40代男性(4.2分)、
  D)30代女性(3.5分)。
 B大まかにいえば、女性のテレビ接触時間は増加傾向にあるが、男性のテレビ接触時間は、トントンに近い、と言える。
 C「メディア定点調査」でも、男女を問わず、高齢者ほど、テレビ接触時間が長い、と言う傾向が見て取れる。

図2-13 男性の年代別インターネット接触時間の推移
 (博報堂「メディア定点調査」から
図2-14 女性の年代別インターネット接触時間の推移
 (博報堂「メディア定点調査」から

2−4−3.インターネットとの接触時間の推移(図2-13、図2-14):

  第1−3項と図1-3に示したに、「メディア定点調査」によれば、インターネット接触時間は年々増加している。そこで、テレビ離れをして、インターネット接触に移行しているのかをみるために、インターネットとの接触時間が、東京地区の男性・女性、年代別で、2005年と2009年にかけてどのように推移したかを下記で分析してみよう。

(1)男性のインターネット接触時間の推移(図2−13):

 右の図2−13に男性の年代別インターネット接触時間の推移を示す。

 @図2-13を見ればわかるように、2005年と2009年を比べた場合、すべての年代で、2009年のインターネット接触時間は増えている。
 Aとくに、30代・40代・50代の男性の場合は、30分以上も接触時間が増えており、60歳男性でも、21.1分の増加である。
 Bつまり、男性の場合は、高齢者がインターネット接触時間を増やしている、と言う特徴がみてとれる。
 C若者でも、20代男性の場合、2009年のインターネット接触時間(142.0分)は、ついに、テレビ接触時間(110.9分)を30分以上、上回ってしまった。
 D10代男性の場合も、2009年のインターネット接触時間(128.5分)は、テレビ接触時間(146.6 分)に近づいている。
 Eしたがって、男性の場合は、テレビよりもインターネットという流れが生まれている、と思える。

(2)女性のインターネット接触時間の推移(図2−14):

 右の図2−14に女性の年代別インターネット接触時間の推移を示す。

 @女性の場合でも、2005年と2009年を比べた場合、すべての年代で、2009年のインターネット接触時間は増えている。
 Aとくに、10代女性のインターネット接触時間は41.7分、40代女性では25.5分も増加している。そして、2009年の10代の女性のインターネット接触時間(169.5分)は、テレビ接触時間(170.0分)とほぼ同じである。
 B20代・30代・50代・60代の女性のインターネット接触時間も増えてはいるが、それほど大きくはない。
 C50代・60代女性のインターネット接触時間の増加は、10分未満であり、それほど増えたという感じはしないでもないが、元々の接触時間が短い事を思えば、女性高齢者もしだいにインターネットを利用するようになってきた、と言えるであろう。

(3)年代別インターネット接触時間の推移について:

 @上記の分析を、年代性別で、インターネット接触時間の増加順に並べれば、以下の通りとなる(カッコ内は増加時間)。
  @)10代女性(1時間11.7分)
  A)50代男性(34.9分)
  B)30代男性(31.3分)
  C)40代男性(30.3分)
  D)40代女性(25.5分)
  E)60代男性(21.1分)
  F)10代男性(16.0分)
  G)20代女性(15.0分)
  H)20代男性(11.1分)
  I)30代女性(8.3分)
  ⅺ)60代女性(7.6分)
  ⅻ)50代女性(6.6分)
 Aトップの10代女性の増加分は、2位の50代男性の増加分の倍近くであり、いかに大きく増加したかがわかる。その結果として、テレビ接触時間とほぼ同じになったわけである。
 B男性も女性も、年代を重ねるに従って、インターネット接触時間は少なくなっている(ただし、男性の場合は、20代が10代よりも多い)が、インターネット接触時間そのものは年代に関係なく、年々増加している。

2−4−4.博報堂「メディア定点調査」の結果から言える事:

上記までの分析をまとめると、博報堂の「メディア定点調査」から、東京地区については、以下の事が言える。

 @20代の男性を中心に、インターネットへの接触時間の増加具合からみて、若者と中年男女のテレビ離れが起きていると見られる。
 Aなぜならば、2005年と2009年の推移を、インターネット接触時間との比でみると、テレビ接触時間は年代性別によって増減があるのに、インターネット接触時間は年代性別を問わず増加している。このことは、テレビよりはインターネットへの関心が、年代性別を問わず高まっている、と言う事を示しており、相対的にテレビ離れが生じているとも言えるからである。
 Bテレビとインターネットとの比較でいえば、テレビは「高齢者」のためのメディア(高齢になるほど、テレビ接触時間が長くなる)、インターネットは「若者」向けのメディア(若者ほど、インターネット接触時間が長い)と言える。しかし、高齢者も次第にインターネット接触時間を増やしている。

 注: 博報堂「メディア定点調査」の2005年と2009年の性別年代別のデータは右をクリック: 博報堂「メディア定点調査」(性別)年代別

3.テレビ行為者率の推移:
図3-1 男性の年代別テレビ行為者率の推移(平日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)
図3-2 女性の年代別テレビ行為者率の推移(平日)
 (NHK「2005年 国民生活時間調査」から)

 テレビ離れを調べる別の指標に、「テレビ行為者率」がある。「テレビ行為者率」とは、1日に15分以上テレビを視聴した人の割合を示すものである。前に述べたNHK文化放送研究所の「国民生活時間調査2005」には、テレビ行為者率の推移も掲載されている。そこで、そのデータをもとに、テレビ離れの状況を分析する。
 テレビ行為者率のデータは、テレビ視聴時間のデータと同じく、平日、土曜日、日曜日の3種類がある。ここでは、平日のデータで分析する事とする。

3.1.男性の年代別テレビ行為者率の推移(図3-1):

 右の図3-1に男性の年代別テレビ行為者率の推移を示す。

 @図3-1を見ると、20代のテレビ行為者率が80%前後と、他の年代に比べて10%前後低い事がわかる。
 A30代以上の年代では、ほぼ年代が高くなるにつれてテレビ行為者率も高くなっている。
 B1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代・20代: 2000年には1995年よりは減ったが、2005年には増加した。しかし、1995年のレベルまでは増えていない。
  A)30代・40代: テレビ行為者率が年々減少している。
  B)50代・70歳以上: 横ばいとなった時もあるが、2005年には、1995年よりも減少している。
  C)60代: 2000年には1995年よりは減ったが、2005年には増加して、1995年のレベルに戻った。
 C1995年と2005年の比較でみると、60代を除き、全ての年代でテレビ行為者率は減少している。そして、60代でも横ばいである。つまり、男性の場合、テレビ行為者率でみる限り、テレビ離れが起きている、と言えそうである。

3.2.女性の年代別テレビ行為者率の推移(図3-2):

 右の図3-2に女性の年代別テレビ行為者率の推移を示す。

 @図3-2を見ると、女性の場合も20代のテレビ行為者率が最も低い事がわかる。
 A女性の場合は、50代・60代・70歳以上のテレビ接触率は、40代以下よりも高く、大体同じレベルである。
 B1995年から2005年までのトレンドを見てみると、以下のごとく年代ごとの特徴がみてとれる。
  @)10代・40代・60代: 2000年に増えたが、2005年には1995年のレベル以下まで減少した。
  A)20代・30代・50代: テレビ行為者率が年々減少している。
  B)70歳以上: 2000年には1995年よりは減ったが、2005年には増加した。しかし、1995年のレベルまでは増えていない。。
 C1995年と2005年の比較でみると、全ての年代でテレビ行為者率は減少している。つまり、女性の場合、テレビ行為者率でみる限り、テレビ離れが起きている、と言えるであろう。

(3)平日の年代別テレビ行為者率からわかる事:

 @性別にかかわらず、ほぼすべての年代で、テレビ行為者率は減少しており、テレビ離れの傾向が見て取れる。
 Aただし、高齢者(60代・70歳以上)に限ってみると、女性のテレビ行為者率は減少しているが、男性は横ばい気味であり、テレビ離れは起こっていないようある。
 Bテレビ行為者率からみても、10代を別として、「高高若低」の傾向がある、と言える。

4.NHKテレビ番組の性別年代別視聴率:

 ここまでの分析で、「テレビを良く見るのは高齢者であって、若者はそれほどみていない」、それどころか、「若者のテレビ離れが起きつつある」、といった事態が見えてきた。「高高若低」の状況を裏付ける意味で、NHKの番組で分析する。対象とする番組は、「朝の連続ドラマ」、「大河ドラマ」、「「クローズアップ現代」、「ニュースウォッチ9」の4本として、番組ごとに年代別視聴率を見てみよう。
 このデータは、参考文献 12(「放送研究と調査 SEPTEMBER 2007」)の“テレビ・ラジオ視聴の現況”から抜粋した。

 注: “テレビ・ラジオ視聴の現況”については右をクリック: “テレビ・ラジオ視聴の現況”

4−1.NHKの朝の連続ドラマの性別年代別視聴率(図4-1):

 まず、最初に、朝の連続ドラマの性別年代別視聴率を見てみよう。2006年の「純情きらり」と2007年の「どんど晴れ」で分析する。
 下の図4-1-1と図4-1-2に、性別年代別視聴率を示す。
図4-1 NHK 朝の連続ドラマの視聴率  (“テレビ・ラジオ視聴の現況”から)
図4-1-1 2006年 純情きらり 図4-1-2 2007年 どんど晴れ

 @図4-1-1と4-1-2からわかる事は、男性の場合、朝ドラを見るのは60代以上の高齢者であって、40代以下の男性は、ほとんど朝ドラを見ていない、ということである。
 A定年前の男性は、朝ドラの放送中は出勤途中か、あるいは、出勤の準備に忙しくて朝ドラを見ている暇がない、ということであろうか。そして、定年になると自由時間が増えるので、朝ドラを見るようになる、と言ったところなのであろう。
 B女性の場合は、30代まではあまり朝ドラを見ていない、働く女性が増えてきたという事情を反映しているのであろう。
 C年齢を重ねるほど、朝ドラを良く見るようになる、というのは男女に共通して言えるが、とくに、高齢女性ほど、朝ドラを良く見ている。
 Dつまり、NHKの朝ドラは、完全に「高高若低」であり、とくに、女性の高齢者が好んで見ている番組である、と言える。

4−2.NHKの日曜夜の大河ドラマの性別年代別視聴率(図4-2):

 次に、日曜夜の大河ドラマの性別年代別視聴率を見てみよう。2006年の「功名が辻」と2007年の「風林火山」で分析する。
 下の図4-2-1と図4-2-2に、性別年代別視聴率を示す。
図4-2 NHK 日曜夜の大河ドラマの視聴率  (“テレビ・ラジオ視聴の現況”から)
図4-2-1 2006年 功名が辻 (%) 図4-2-2 2007年 風林火山 (%)

 @大河ドラマの場合も、朝ドラほどではないが、若者の視聴率は低く、「高高若低」は明らかである。
 Aただ、番組の内容によって男女差が違ってくるのは興味をひかれる。
  @)2006年の「功名が辻」は、山内一豊の妻が主人公であり、そのせいか、女性の視聴率が男性の視聴率よりもおしなべて高い(20代と50代では男性の視聴率が高い)。
  A)一方、2007年の「風林火山」は、武田信玄の軍師「山本勘助」が主人公だったので、「功名が辻」とは逆に、男性の視聴率が女性の視聴率よりもおしなべて高い(20代と70歳以上では女性の視聴率が高い)。
 B70歳以上では、2006年・2007年ともに、女性のほうが男性の視聴率を上回っている。(2005年の「義経」でも、同じであり、70歳以上の世代では、女性のほうが男性よりも大河ドラマを良く見る、と言えるのであろう)。
 C朝ドラの場合と同じく、70歳女性の視聴率は、男女を問わず他の年代と比べてみ、一段と高い。

4−3.NHKの「クローズアップ現代」の性別年代別視聴率(図4-3):

 三番目に、比較的硬派番組と言えるNHKの「クローズアップ現代」の性別年代別視聴率を見てみよう。今までと同じく、2006年と2007年のデータで分析する。下の図4-3-1と図4-3-2に、性別年代別視聴率を示す。
図4-3 NHK 「クローズアップ現代」の視聴率  (“テレビ・ラジオ視聴の現況”から)
図4-3-1 2006年 (%) 図4-3-2 2007年 (%)


 @「クローズアップ現代」の場合、40代以下の男女にはほとんどみられていない。とくに、30代以下では、男女とも視聴率は1%以下であり、若者にはまったく人気が無い、と言える。
 A50代以上からは、年齢を重ねるにつれて、視聴率も飛躍的に高くなる。したがって、「クローズアップ現代」も、「高高若低」の典型例となっている。
 B「クローズアップ現代」は、現代の問題点を取り上げてドキュメンタリー風に解説する番組であり、若者にも見て欲しいと思える無いようであるが、放送時間が午後7時半からのため、働いている若者はテレビを見る時間がとれない、ということであろうか?

4−4.NHKの「ニュースウオッチ9」の性別年代別視聴率(図4-4):

 最後に、朝の連続ドラマの性別年代別視聴率を見てみよう。ここでも、2006年と2007年のデータで分析する。
 下の図4-4-1と図4-4-2に、性別年代別視聴率を示す。
図4-4 NHK 「ニュースウオッチ9」の視聴率  (“テレビ・ラジオ視聴の現況”から)
図4-4-1 2006年 (%) 図4-4-2 2007年 (%)


 @「ニュースウオッチ9」の場合も、夜9時からの放送にもかかわらず、若者はあまりみていない。20代以下の男女の視聴率は1%以下であり、30代でも4%以下である。
 A年代が高くなるにつれて、視聴率もどんどんと高くなっており、ここでも、「高高若低」の傾向がはっきりと見て取れる。
 B男女差でみると、すべての年代で、男性の視聴率が女性を上回っている(ただし、2006年の60台、2007年の70歳以上では、男女の視聴率は同じである)。

4−5.NHKテレビ番組の性別年代別視聴率から言える事:

 @ここで取り上げた4本の番組すべてが「高高若低」となっているが、取り上げなかった番組でも、データが示されている番組はすべて「高高若低」である(たとえば、プロ野球中継でも、「高高若低」である)、詳細は、“テレビ・ラジオ視聴の現況”を参照ください)。
 A民放の番組での年代別視聴率データがなかったので、NHKだけのデータにはなるが、いまや、テレビは完全に高齢者の「暇つぶし」の道具になっている、といえるのではなかろうか?
 B若者の場合には、暇つぶしの手段としてのメディア対象が多様化している。とくに、携帯電話やパソコン、それらを使ってのインターネット等が急速に普及しており、テレビ番組を見ないのであろう。

5.最後に:

 今回はテレビが視聴者から見離されつつある、という状況を様々なデータで分析してきた。その結果、「高高若低」とか、「若者のテレビ離れ」といった現象がみえてきた。それらをまとめると、以下のように言えるであろう。

 @テレビの視聴時間は、平均値でみるとほぼ横ばいである。しかし、それを年代別にみると、若者のテレビ視聴時間は減少しているが、高齢者のテレビ視聴時間は増えており、結果として横ばいになっている。
 Aテレビは、その意味で、高齢者の暇つぶしの格好の道具となってしまった、と言えるであろう。
 B若者は、テレビを見なくなった分(そして、今回は分析しなかったが、新聞を読まなくなった分)、携帯やパソコンからインターネットにアクセスするようになってきた。
 Cインターネットについては、高齢者も、年々、接触時間を増やしており、テレビと並んで重要な暇つぶしツールになりつつある(とくに男性の高齢者)。
 Dこのような状況をみると、テレビ(地上波テレビ)の広告媒体としての価値は、相対的に低下していく、というのもうなづける。とくに、インターネットには今後、ますます、追い上げられるであろう、と予測される。

 民放の番組について年代別視聴率のデータ分析は出来なかったが、NHKのデータから見た場合、若者にとって、テレビはもはや過去のものとなりつつあるようだ。しかし、テレビは、高齢者(とくに70歳以上の高齢者)にはかなり好まれており、接触時間も増えているし、視聴率も高い。その意味では、テレビは、いまや、高齢者向けのメディアになりつつある、と言えるだろう。

 このようなデータから言えるのは、テレビの広告収入は今後、減る事はあっても、増える事はないのではないか、と言う事であり、地上波テレビ局は今後、生き残りのために多角化戦略とか、他局との提携とかにより生き残り策を講じないと、消滅する局も出てくるであろう、と思われる。

 次回は、今回は分析できなかったテレビの見方とか、テレビの生活での位置づけと、といった面を分析してみたい。


参考文献: 1.「マスゴミ崩壊」、三橋 貴明、扶桑社
        2.「図説 日本のマスメディア」(第二版)、藤竹 暁、NHK Books
        3.「最新 放送メディア入門」、稲田 植輝、社会評論社
        4.「テレビと日本人」、田中 義久、小川 文弥 編、法政大学出版局
        5.「放送業界の動向とカラクリがよくわかる本」、中野 明、秀和システム
        6.「視聴者が動いた 巨大NHKがなくなる」、田原 茂行、草思社 
        7.「NHK 問われる公共放送」、松田 浩、岩波新書
         8.「電波利権」、池田信夫」、新潮新書
        9.NHK放送文化研究所
        10.「メディア定点調査」(メディア環境研究所)
       11.「放送の20世紀」、NHK放送文化研究所監修、NHK出版
        12.「放送研究と調査 SEPTEMBER 2007」、NHK出版 


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