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KSD汚職とアイム・ジャパンの外国人研修生問題(「労働運動研究」2001年3月号)
http://www.asyura2.com/11/lunchbreak48/msg/526.html
投稿者 めっちゃホリディ 日時 2011 年 7 月 04 日 08:00:36: ButNssLaEkEzg
 

http://www.asahi-net.or.jp/~hb1t-hcy/socialreview10.htm

 KSD汚職が、政界を揺るがす大きな政治問題となっている。2001年1月17日には、自民党の参議院議員小山孝雄代議士(1月29日に辞職)が、技能実習制度による実習生の滞在期間の延長にからみ、国会質問で前向きの答弁を引き出し、その成功報酬として2000万円を受け取ったとして受託収賄で逮捕された。また、1500万円受け取った額賀福志郎経済財政担当相は、辞任に追い込まれた。自民党の参院議員会長だった村上正邦氏ら大物の名前も上がっており、リクルート事件以来の一大汚職事件となった。

 KSD汚職事件は、ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)が引き起こした事件である。これまで明らかになっている問題は、技能実習制度に絡んだ問題とものつくり大学の問題である。ものつくり大学はKSDが企画したもので、国からどれだけ助成金を獲得できるかどうかは大きな問題であった。極めて直接的な利害が絡んでいただけに、事件としてはこちらの方が大きいといえよう。

 これまでに名前が上がった自民党の大物代議士は、村上正邦、額賀福志郎、亀井静香、などである。2月13日現在、まだ大物逮捕の報はないが、見返りを期待して特定の組織の利害のために動く自民党の組織的体質は、まさに構造的な問題といえるだろう。

 小山前代議士が逮捕された事件は、技能実習制度の延長問題である。KSDの傘下に外国人研修生受け入れ事業を行う財団法人中小企業国際人材育成事業団(アイム・ジャパン)という団体がある。すでに業務上横領の罪で起訴されているKSDの古関忠男前理事長は、アイム・ジャパンの理事長も兼務していた。いずれも辞職している。

 ここでは、アイム・ジャパンの研修生受け入れ事業がなぜ、こうした問題を引き起こしたのか、その構造的な問題はなにか。また問われている問題について提起したい。

人手不足解消のためにつくられた技能実習制度

 まず、技能実習制度の延長問題で小山前代議士が動いたことの評価だが。その前に外国人技能実習制度について概説しよう。技能実習制度というのは、1年間の研修が終了した後、評価試験を受け合格すると、事実上の就労である実習生になる。この就労できる制度が技能実習制度なのである。93年4月に実施された。

 バブル経済時には、深刻な人手不足となっており、特に製造業の中小企業や建設業の現場は人手の確保が極めてむずかしく、中には人手が確保できないために「労務倒産」する企業も少なからずあった。こうした中小企業の要望を受けて政府が外国人技能実習制度を創設したのである。

 外国人研修生は、「研修」ビザで入国するが、九九年度に「研修」ビザで入国した外国人は、約4万8000人である。このうち政府のODA予算などで研修を受ける研修生が約1万3000人、残りの3万5000人が民間系である。

 この民間系は、海外に進出している企業が、進出先の現地従業員を日本の工場などで研修を受けるようなケース(企業単独型)とアイム・ジャパンのような受け入れ団体や商工会議所、商工会などが受け入れ、企業に配置する団体監理型がある。

 この団体監理型は、90年に中小企業でも研修生を受け入れやすくするために、規制が緩和されたものである。99年度で約1万6000人がこの団体管理型で入国しているが、アイム・ジャパンはこのうち2275人を数え、ダントツのトップとなっている。

 研修生に対する職種の制限はない。在留資格「研修」に係わる基準省令によると「申請人(研修生)が住所を有する地域において修得することが不可能又は困難である技術、技能又は知識を修得しようとすること」となっている。つまり日本で研修する意味があるものであれば良い。実際に研修で在留資格を得ることができるかどうかは、法務省の裁量にゆだねられているし、困難なケースは少なくない。

 これに対し技能実習制度には職種の制限がある。現在、対象職種は59職種102作業である。厚生労働省が行う技能検定職種となっている103職種から49職種76作業が対象となった。さらに外国人研修生受け入れを支援する財団法人国際研修協力機構(略称JITCO)が認定する10職種26作業が加えられている。日本でこれらの職種の研修を受けた外国人だけが、技能実習制度に移行することができるのである。(技能実習で入国することはできない)

 なぜこうした職種の制限があるかというと、研修から実習に移る際に研修の成果をみる技能評価試験があり、これに合格することが要件となっているからである。技能実習制度は研修を踏まえ、さらに高い水準の技能を習得することが目的とされているので、公的な評価試験のシステムを持っている職種に限定されている。実際には、こうしたことは全くの建前で、実習に移っても大半が低い技能習得や単純作業に過ぎない。

 途上国がもっとも必要とする職種は、必ずしも対象になっていない。「技能移転」と「人材育成」といいながら、途上国のニーズではなく、日本側の都合で職種は決められてきたのである。いずれにしても技能実習制度で研修生を受け入れようとする団体は、研修生の受け入れは、これらの職種に限定されるのである。

 技能実習制度が実施された当時の滞在期間は、研修期間、実習期間とも1年で合わせて2年であった。ところが中小企業から「まだ半人前のところで帰国してしまう。技能習得をきちっとするためには3年(実習2年)にしてもらいたい」という要望が出ていた。そこで97年4月に3年延長となったのである。

3年延長に固執していたアイム・ジャパン


 さて、この3年の延長は小山前代議士がアイム・ジャパンの意向を受けて国会で質問をするなどして、実現したものなのだろうか。実は官庁はすでに3年延長の方針を持っており、小山前代議士の行動とあまり関係なかったのではないかという見方がある。もしそうならば、小山前代議士も古関前理事長も自分たちの成果と勝手に思いこんだだけ、ということになり、彼らはまったくばかげたことをしたということになる。

 95年12月に東京商工会議所は、3年延長の要望を法務省など関係各省に提出している。この要望を受けて法務、旧労働省は動き出したといわれている。しかし、その1カ月前に小山前代議士は国会で質問をしているのである。

 さらにアイム・ジャパン結成(91年12月)以前の90年7月にKSDと傘下のKSD豊明会は、「中小企業向け外国人研修生受け入れ機関設立構想案」を打ち出しているが、その中でも滞在期間は3年としているのである。彼らが非常に初期の段階から3年に固執していたこともまた事実なのである。

 なぜ、アイム・ジャパンが3年に執着したのかというと、滞在期間が延長されると1年当たり(1カ月当たりのと言い換えてもよい)のコストを下げることができるからである。研修生の受け入れ事業は、送り出し国での研修生の募集、事前研修、往復の渡航費などの諸経費がかかる。

 つまり、こうした諸経費を初期経費とし、滞在期間中の研修生に対するフォローなどの経費をランニングコストと見ると、後者は滞在期間が長くなった分だけ増加するが、前者は増えることはない。トータルとして単価は下がるのである。もちろん受け入れ企業からの収入は増加する。

 アイム・ジャパンの場合、受け入れ企業は研修生1人当たり月18万円支払うことになっている。このうち8万円が研修生に支払われる。残りの10万円がアイム・ジャパンに入るわけだが、この中から研修生の保険料、研修指導費のほかに、約4万7000円の「初期経費」を取っている。受け入れ企業はこの費用を1年間、アイム・ジャパンに支払うことになっている。

 実習生は、労働者ということになるので、賃金は受け入れ企業が直接実習生に支払う。受け入れ企業がアイム・ジャパンに支払う額が2年目(実習1年目)が7万円、3年目(実習2年目)が5万5000円である。実習生には2年目9万円、3年目10万円の最低保障をすることになっている。(この額も以前は10万円と11万円だった)

 アイム・ジャパンにしてみれば、3年延長は経営を安定させるうえで、この上ない援護策だったのである。しかし、この援護策はアイム・ジャパンだけに適用されたわけではない。現在、全国に約350の受け入れ団体があるが、すべての団体がこの恩恵を被ったのである。

 朝日新聞2001年1月17日付によると、アイム・ジャパンは3年に延長になったことによって、97年度に単年度黒字になったかのような報道がされているが、これは正しくない。確かにアイム・ジャパンは97年度に3280人と過去最高の研修生を受け入れている。これは3年に延長になったからではなく、バブル経済の崩壊以降、95,96年の一時的な景気回復のよる受け入れ企業の増加によるものである。

 3年延長は、97年4月に実施されたが、最初は数職種だけだった。大半の職種が3年延長になったのは、98年度末である。3年延長の恩恵は実質的に九八年度以降といえよう。ところが98年に入って急速に景気は後退、金融不安もあって中小企業は倒産するところが急増している。人手確保どころではなくなってしまったのである。

 アイム・ジャパンの98年度の実績は2096人と前年度比36%減となってしまった。受け入れ企業数でも30%減少している。不況がアイム・ジャパンを直撃したといえよう。しかし、前述したように3年延長によって単価は下がったので、その分は経営安定に寄与したのだろう。

 問題は、受け入れ企業数の減少による受け入れ人数の急減に直面し、受け入れ企業の確保のために、悪質な業者や極めて劣悪な労働環境の企業などにもどんどん研修生を派遣し始めたことである。これはおそらくアイム・ジャパンだけではないと思われるが、研修生・実習生の人権侵害や労働問題を増加させる背景になったと見られることである。こちらの方がはるかに深刻な問題であろう。


大量受け入れの“特権”

  
 実は、アイム・ジャパンにとって3年延長問題は、第2弾に過ぎない。実は第1弾があった。この第1弾の方がはるかに大きな問題である。それは、研修生の受け入れに際してアイム・ジャパンだけが“特権”を手に入れたことである。

 この“特権”とは何なのか。それは仕事の有無や職種にとらわれずに自由に現地で研修生を公募できるという“特権”である。なぜこれが可能になったのだろうか。

 研修生の受け入れは、法務省の省令では民間企業が海外から研修生を受け入れる場合、現地法人・合弁企業あるいは有力取引先に限定されている。ところが90年8月の法務省告示で、商工会議所、商工会のほか協同組合、公益法人などが、研修生の受け入れ団体となることを認められた。アイム・ジャパンはこのうちの公益法人として91年12月に設立された。

 法務省発行のパンフには研修生の要件として、次のように書かれている。
1、単純作業の研修ではないこと
2、18歳以上であり、研修終了後母国に帰り、前の職場に復職が約束されていること
3、現在の技術、技能のレベルを向上させるために、日本で研修を受けることが必要であること
なお、中小企業団体等による受け入れの場合には、さらに次の要件も満たすことが必要です。
4、研修生が現地国の国またはそれに準ずる機関から推薦をうけていること。
5、原則として日本で受ける研修と同種の業務に従事した経験を有すること

 この規制緩和のねらいは、海外に進出していない中小企業も研修生の受け入れが可能にすることであった。これを担保するものとして4と5の規定があった。

 これは、簡単にいうと本国で働いていた職種と同じ職種について日本で研修を受けること、さらに帰国後、復職することが求められているのである。つまり、旋盤工が日本で旋盤の技能を向上させるために研修を受け、帰国後に旋盤の仕事をするということである。研修制度は「技能移転」が目的なのだから極めて当然のことといえよう。

 アイム・ジャパン以外の受け入れ団体は、こうした職種の連続性という要件の中で、研修生を集めているのである。このため、アイム・ジャパン以外の受け入れ団体は、1年間に受け入れる研修生はせいぜい数百人なのである。

 アイム・ジャパンは、例外規定の適用を受けているのだが、それは5の規定である。この規定は90年8月の法務省令告示ではこうなっている。

九の四 ロ
申請人(研修生のこと)が本邦において修得しようとする技術、技能若しくは知識を要する業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は申請人が当該研修を受けることを必要とする特別の事情があること

 アイム・ジャパンは、告示の但し書きの「特別の事情」という例外規定の適用を受けているのである。この点について、法務省はアイム・ジャパンは、相手国政府(大臣クラス)との契約を交わしているので、高い公益性を確保していると判断したため、という。

 実習終了後、帰国したあとも問題となる。帰国後、インドネシアに進出している日系企業などを対象に集団面接などを行っているが、大半は就職できない。2000年4月時点でそれまでに帰国した約5000人の元実習生の就職率は38%に過ぎない。日本で習得した技能を生かそうにも、そのチャンスすらないのである。

 帰国後の就職については、インドネシア政府が責任を持って行うということになっているが、まったく実績が上がっていないのである。

 こうしてアイム・ジャパンは、「合法的」に研修生の以前の職種や帰国後の復帰に関係なく受け入れが可能になったのである。しかし、このやり方は途上国への技能移転という外国人研修制度や技能実習制度の本来の趣旨から逸脱しているのは明らかであろう。

しわ寄せはすべて研修生に

 アイム・ジャパンが手に入れたこの“特権”は、研修制度や技能実習制度の根幹を揺るがすものである。おそらくこの時に大物政治家を動かし、金を流したのであろう。村上代議士など何人かの名前も上がっている。しかし、残念ながらこの事件は時効なのである。

 古関前理事長は「アイム・ジャパンの事業は、KSDよりもうま味がある」と語っていたという。外国人研修生受け入れ事業は高い公益性を持った国際的な事業である。だからこそこの事業は株式会社ではできないのであり、利益追求が目的であってはならないのである。

 おそらく古関前理事長は、私腹を肥やすだけでなく政治家に資金を流す供給源として位置づけていたのであろう。自ら年間3000万円の所得を得ているし、約8100万円が人材育成費名目でアイム・ジャパンからKSDに流れている。金の使途は今後の捜査を待つ以外ない。

 関係者の話では、古関前理事長は職員に対し新規企業の開拓やすでに受け入れている企業に対しては増員させるための“営業”に力を入れていたという。受け入れ企業、受け入れ人数が増えれば増えるほど、収入が増える。“営業”にハッパをかけるのは、もうけ主義の「古関路線」にかなっているのかもしれない。

 こうしたアイム・ジャパンの姿勢の犠牲者は途上国からの研修生・実習生である。希望しない職種に回され、十分な研修も受けられず、しかも多くの人権侵害も受けている。

 「日本インドネシアNGOネットワーク」が、インドネシア人研修生・実習生を対象に行った調査では、希望した職を研修できた人はわずか10%である。また、研修によって技能習得していると感じているかどうかは28%にとどまっている。

 研修期間中の残業は禁止されているが、残業をさせながら残業代を払わない、産業廃棄物の仕分けをさせた、実習生から住居費を増額してピンハネしていたなど、悪質な事例は多い。しかも、研修生・実習生がアイム・ジャパンに訴えても、経営者の味方をするだけでまったく解決能力がない。

 アイム・ジャパンだけでなく、法務省が例外規定の適用を認めてしまったことも問題である。研修制度の規制緩和と技能実習制度の創設自体が、中小企業の労働力確保に過ぎなかったのだが、アイム・ジャパンへの例外規定の適用は、それをさらに拍車をかける役割を果たしているからである。

 今度、こうした点の解明を進めることが求められている。                
 

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