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エジプトのデモと永田洋子の死。の巻 雨宮処凛
http://www.asyura2.com/11/senkyo106/msg/892.html
投稿者 ダイナモ 日時 2011 年 2 月 09 日 18:37:33: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.magazine9.jp/karin/110209/


 2月5日、私はエジプト大使館前にいた。とにかくすごいことになっているエジプトの様子をテレビなどで見ていていてもたってもいられなくなり、急遽開催された「ムバラク政権打倒」を訴える民衆への弾圧を許さない、という緊急行動に参加したのだ。この行動には日本に住むチュニジアの人も参加し、ムバラク退陣を訴え、エジプトで立ち上がった人々に「連帯」をアピール。また、同日同時刻には日本に留学中のエジプト人学生たちがデモを開催。恵比寿〜渋谷のコースで開催されたデモには、200人ほどが集まったという。

 そんな2月5日、「政治の季節」を代表するような人が生涯を終えた。それは連合赤軍の永田洋子死刑囚。65歳。

 この連載を読んでいる中に、連合赤軍について詳しく知っているという人はどれくらいいるだろう。75年生まれの私も、72年に起きた連合赤軍事件について当然リアルタイムでは知りようがない。しかし、14人が犠牲となったこの事件には以前から関心があり、昨年末も「週刊金曜日」に「70年代の光と影 連合赤軍事件 社会への回路が閉じられて『生きづらさ』につながった」というタイトルの長い原稿を書いた。

 連合赤軍がこの国に存在したのは71〜72年。「革命」を目指した若者たちが「あさま山荘」に立てこもり、10日間にわたって警官と銃撃戦を繰り広げた様子を「昭和を振り返る」系のテレビなどで見た人も多いだろう。そんな連合赤軍は、あさま山荘に立てこもる前、山岳地帯にアジトを作り、「総括」の名のもとに仲間に自己批判を迫ってリンチを加え、次々と殺害。逮捕後に続々と死体が掘り起こされ、世間を震撼させた。そんな連合赤軍の委員長の森恒夫は拘置所で自殺。そして13人の殺人罪、1人の傷害致死罪に問われた副委員長こそが5日に亡くなった永田洋子なのである。

 永田洋子が亡くなる3日前の2月2日、はからずも私は連合赤軍について語っていた。それは東京新聞からエジプトのデモについて取材を受けた時のこと(東京新聞11/2/3)。取材のテーマは、なぜ、チュニジアやエジプトのみならず、フランスでは年金制度改革に対して若者が立ち上がって百万人規模のデモになったり、イギリスでは学費値上げに対して学生たちが立ち上がっているのに、日本ではそのような状況は見られないのか、というようなことだった。

 その時にまず頭に浮かんだのが、連合赤軍事件のことだった。というか、エジプトのデモに限らず「なぜ、今の日本の若者たちが立ち上がらないのか」という質問を投げかけられるたび、必ず頭に浮かぶのはあの陰惨な「同志殺し」事件である。「革命戦士としての自覚が足りない」とか、そんな理由で次々と壮絶なリンチに遭い、仲間と信じた相手に殺されていった40年前の若者たち。殺された中には妊娠中の女性もいたし、兄弟や恋人への殺害に加担するという状況もあった。そんな同志殺し事件は、世間が「政治運動」にドン引きするには十分すぎるインパクトを与えたはずだし、運動には壊滅的な打撃を与えただろう。

 そんな連合赤軍事件後に私は生まれた。「政治の季節」は去り、世の中が「消費」一色に染まっていく中で育った私は、常にうっすらと「若者に政治が禁止される」ような空気を感じてもいた。何か、「若者が政治的なことを考えたりやらかしたりするとロクなことにならない」というような拒絶感。そんな空気は確実に漂っていたし、今もある。

 そんな「大人」たちによる拒絶感は、日本社会があの事件のトラウマから立ち直っていない証なのかもしれない。しかし、事件後に生まれた私には、なぜ「若者に政治が禁止」されているような空気が存在するのかわからなかった。どうして「社会」や「政治」に疑問を感じて口に出しただけで「危険人物」扱いされるのかわからなかった。そのことを説明してくれる人などいなかった。

 そうして20代の頃、連合赤軍事件について詳しく知った。その時、私は自分が感じてきた「空気」の理由がやっとわかった気がした。同時に、自身が長らく感じてきた「生きづらさ」の理由もほんの少し、わかった気がした。

 一見唐突だが、私は連合赤軍事件を、今に続く「生きづらさ」に直結する問題として捉えている。

 その理由は、「政治が禁止される」ような空気の中で育った連合赤軍後の世代の多くは、あらかじめ社会への回路を切断されているからだ。

 そんな中で、何が起こるか。

 自らの身に起きる不条理は、それがどんな背景があるにせよ、すべてごくごく個人的な問題となる。最初から社会と関連づけて考えることが禁じられ、「社会のせいにするな」と言われているので、すべての矛盾は自らの責任だ。「自己責任」なんて言葉が登場するずっと前から、運動アレルギーの空気が常態となった世の中で育った「連赤後」世代は、負えない責任まで自らの責任として背負わされてきた。それが当たり前のことだった。

 学校でいじめに遭えば自らを責め、競争に勝てなければ努力が足りないのだと猛省し、就職戦線で勝ち残れなければ自らの不甲斐なさに心を病み。その背景にある「社会」の問題に迫る回路が切断されているのだから責めるべきは自分しかいない。無責任な「大人」は「若者はもっと怒れ」などとけしかけるものの、社会や政治から切り離された若者たちは怒れば怒るほど、その矛先を自分に向けるしかない。怒りが自分に向いた結果が、長期にわたるひきこもりであり、自傷行為であり、身近な親に怒りを向ける家庭内暴力であり、最悪の場合は自殺だろう。

 あらかじめ「社会」と分断されているのだからデモなど起こりようがない。連合赤軍事件など知らなくたって、若者の多くはこの国を覆う空気には恐ろしく敏感だ。もちろん、それでも行動を起こしている若者はいる。しかし、やはり今のところ少数だ。

 連合赤軍事件は、14人の命を奪った。

 しかし、社会への回路を閉ざされ、自らを責めるしかない現代の若者たちの心のあり方と関連づけて考えると、犠牲者の数は遥かにそれを上回るかもしれない、と言ったら言い過ぎだろうか。

 08年、韓国では若者たちによって「キャンドルデモ」が盛り上がった。なぜ、韓国の若者たちは日本の若者と違って立ち上がれるのか。そう聞いた私に韓国の40代くらいの男性はこう言った。

 「韓国では、連合赤軍のような悲惨な事件がなかったので、運動に対するアレルギーが日本に比べればずっと少ないからでしょう」

 韓国の人にそこを指摘されると思わなかったので驚きつつも、納得した。

 そんな連合赤軍の象徴、永田洋子の死。あの事件を通して考えるべきことは、あまりにもたくさんある。
 

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コメント
 
01. 2011年2月09日 19:26:41: lolwkAL1EM
未熟な者たちが、未熟なことをしようとするから、
こういう内部で制裁、殺害が、起こるのだ。

武器を持つ者には、高度な倫理観が必要なのだ。

それ以外は、チンピラクラスなのです。

世界の紛争地域の軍人たちでも、上官がしっかり管理していないと、
目を盗んで、殺害、窃盗、強姦をするのは、当たり前なのだ。

エジプトのデモも、時間が長くなってきたら、必ず武器を持つ軍隊が出動する。
命令に従わない武器を持たない庶民は、殺され、解散させられる可能性が高い。

革命は、銃口から始まる、毛沢東の意見は至極妥当なのだ。

武器なき革命は、ほとんど失敗する。
故に、軍を支配する者が、成功の確率は高いのだ。
警察レベルの装備では、寝言にしかすぎないのだ。


02. 2011年2月09日 19:33:16: lolwkAL1EM
天安門事件で、ケ小平氏が採った軍事策は統治者の教科書道理なのだ。

戦車で轢き殺せ、これでいいのです。銃殺せよ。

よって、反政治勢力は、壊滅させられた。

統治に善悪はないのです。誰が権力を持ち統治するのか、
これのみが、重要なのです。

民主国家は、世界では少ないのです。


03. 2011年2月09日 19:41:49: o98sJ4eKUs
幼稚な日本人ならではの事件と言えるけれど

これは本当に自然発生的な事件かね?


04. 2011年2月09日 20:22:39: xDSRSBQsrs
イラク日本人人質事件で人質が自己責任の名の下でのバッシングされたのが大きいと思う。
自己責任を連呼する連中が連合赤軍の伝統を引き継いだのかもしれない。
なんでも自己責任なら、国民は国家財政なんか気にする必要はないわけだが、自分の生活より国家財政を心配し消費税増税を希うよう強いる清貧の空気が気分悪い。
今思えば小泉政権時代の自己責任論はかわいいもんだ。今はそれに増税論が加わって、それらが財政危機の名の下で表裏一体化してしまっている。
連合赤軍、菅政権、官僚支配、これらを一言で言うならシバキ主義。
それは日本の伝統的お家芸で、それを打ち破るには「脱官僚支配」「自立と共生」「国民の生活が第一」を掲げる小沢を指導者とする以外道はない。
小沢一人に頼るのはどうかという意見もあるが、日本は民主化してなかったのがわかったのだから、強力な指導者が必要なのは当たり前。

05. ピラニア帝国軍 2011年2月14日 20:36:32: Txz1Abok.kLDs : gJAGzPZOoE
>あの事件を通して考えるべきことは、あまりにもたくさんある。
そうですね。「あさま山荘事件」は、ぼくが中学生の時の事件でした。その時は事件そのものが強烈すぎて、「あさま山荘事件」の前に銃砲店が襲われたり、警察によって山狩りが行われていたことを、この40年、全く忘れていました。山岳ベース事件も悪い狂犬のような連中が鬼ババアをトップに持ったために共食いをしたぐらいの認識でしかなく、そのまま今日まできてしまった。
 でも、今、ネットで幾らか調べてみると、よど号ハイジャック事件もロッド空港乱射事件も、「あさま山荘事件」も、赤軍の設立から分派してきた武装行動であることが分かります。非常に大きなテロの種まきが40年前にあって、それぞれ樹木に育ち、異なった形で「狂った果実」を付けた。今、それら樹木は次々枯れようとしているわけで、今、ぼくらはその状況を見ているわけです。オウム真理教事件と並んで戦後日本の暗黒史に、ぼくらは立ち会っているのだと思います。

06. ピラニア帝国軍 2011年2月14日 21:01:02: Txz1Abok.kLDs : gJAGzPZOoE
今、「連合赤軍物語」(山本重樹著 徳間書店)を読んでいるのですが、巻末の解説で鈴木邦夫さんが面白いことを書いています。この事件から「革命」という言葉は「悪」になった。しかし、若者が「革命」や「夢」を語らなくなったら若者ではない。だから、「連合赤軍事件」は日本の若者を殺した、と。
 ぼくも同感です。事実、あの事件のあと、健全な学生運動も市民運動も育たなくなった。911事件のあと、ブッシュがイラク攻撃をすると知って、気でも狂ったかと思いましたが、アメリカで50万人のデモが動員されたのに、日本では反対運動が盛り上がりを欠きました。東京のデモは1万人でしかなかった。結局、小泉はブッシュのポチ犬に徹し、イラクでは15万の市民が命を落とし、米兵も1万人近く死んでいます。手を失ったり足を失った重傷者を含めたら、犠牲者はどれほどになるのでしょう。でも、自分の手がイラク人の血に染まっていると自覚している日本人は、まずいない。世界の治安は米軍にまかせ、日本は盲従していればいいぐらいの感覚でしかない人が大多数ではないでしょうか。

07. ピラニア帝国軍 2011年2月14日 21:47:17: Txz1Abok.kLDs : gJAGzPZOoE
 永田洋子のことですが、27歳で逮捕されたときの永田は確かに魔物のような存在で、死刑が宣告されたこともやむを得ないと思いますが、その後、脳腫瘍の手術を受けたり、寝たきりになったりして、脳萎縮・認知症の発症で自分が誰かもわからない老人になって死んだ、そのことを考えないと、ただ「国のカネを使って生かしておいたのはけしからん」式の発言は大衆的デマゴーグと同じになってしまい、意味がないと思うのです。ところが、この手の発言は案外に多く、佐々淳行なども、同じような無知な発言をしています。佐々の爺もヤキが回ったな。
 永田洋子が相当に具合が悪く、寝たきりの認知症になっていることはネット情報で知っていたし、そこまで状況が悪いと、もう幾らも生きられないことも分かっていた。その状態の永田洋子は、もう、ぼくらが知っている永田洋子ではないですよね。
 で、葬儀や墓はどうなるのでしょうかね?遺体の宅下げはあったのかな?

08. ピラニア帝国軍 2011年2月14日 22:14:34: Txz1Abok.kLDs : gJAGzPZOoE
誰かが「永田洋子伝」を書いてやらないと、幾らなんでもかわいそうだと思うのです。つまり、27歳までの永田は前半生でしかない。後半生も含めての一生ですよね。それに、親兄弟だっているのでしょうから、その人たちは永田をどう見て、接してきたのか?
 その最後は、良い状態なら拘置所内の医務院で介護つきの死ですけど、悪い状態なら独房で大小便垂れ流し、嘔吐繰り返し、カビだらけの畳の上の死ですよね。
 むろん、日本史の「悪人列伝」に入る永田ですけど、人生の前半だけで評価して語るのはかわいそうだ。

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