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政党政治は生き残れるか 山口二郎
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投稿者 ダイナモ 日時 2011 年 3 月 22 日 20:35:05: mY9T/8MdR98ug
 

http://yamaguchijiro.com/


1 民主党政権の失敗と自民党の混沌

 民主党の欠陥、菅政権の問題については既に様々な指摘がある。しかし、現在の政治的混迷の原因を民主党の未熟さだけに求めるというのは近視眼的議論である。民主党を他の党に取り替えれば何とかなるという話ではないからである。自民党は一昨年の大敗の総括さえ自力でできず、政権奪還の路線議論もしていない。ただ民主党の自滅の反射的利益を得ているだけである。中央、地方のその他の新勢力も、既成政治の否定以外に語るべき中身を持っていない。今むしろ、日本における政党というものの存在が問われていると考えるべきである。

 民主党は自民党政治を否定するために戦ってきて、一応その目的を達したわけである。実体としての自民党を下野させることはできても、そもそも自民党的なるものとはなんだったのか。機能的な意味で自民党政治を否定するとはどんなことか、政権交代から1年半たっても民主党には分っていない。

 政党とはもともと市民社会の側の自発的な集団である。自由民権運動のときも、敗戦後新たに政党を立ち上げるときも、政党は社会における運動体として出発した。しかし、1955年に自由民主党ができ、半世紀もの間権力を担うことによってこの党は変質した。自民党は常に政権党であることを利用して、国家の資金を配分することで支持者を満足させ、政治に意欲を持つ行政官をリクルートし、党としての持続可能性を確保してきた。もちろん、多様な支持団体を持つという点で社会に根を持っていた。しかし、かつての農協や医師会の圧力活動に代表されるように、社会集団のエネルギーは既存の制度の枠内でより多くの利益を求めるという場合に動員された。

 民主党は1998年に当時の非自民勢力の結集によって現在に形になって以来、政権交代を第一義として戦ってきた。自民党の圧倒的な力を前に政権交代を起こすためには、社会の中に支持基盤を広げるという正攻法を取る余裕はなかった。民主党は小選挙区制が作った政党であった。自民党ではなく、特定のイデオロギーも持たない政治家が民主党の屋根の下に集まった。ともかく民主党が持続し、小選挙区における別の選択肢として存在したことによって、自民党が自壊したときに民意の受け皿となりえた。

 しかし、社会に根を持たないままで政権を取ったことで、民主党の統治能力には大きな限界が生じた。小沢幹事長の時代には、自民党と同じく、国家の資源を差配することによって政党としての生命力を獲得しようとした。しかし、これは民主党が否定した手法であり、新政権にはふさわしくないという批判を浴びた。しかも、脱官僚支配というスローガンの下、政権運営や政策立案に関して官僚の助けを借りないという姿勢を売り物にした。

 民主党が官僚に対抗して問題設定を行い、決定や決着を主導するためには、特定の問題について経験を重ね、鋭い問題提起で世論に対してインパクトを及ぼせるような社会団体と提携することが唯一のよりどころとなるはずであった。年越し派遣村の湯浅誠氏を内閣府参与に迎えたり、新しい公共というテーマで市民活動との提携を図ったりしたのはそうした戦略の表れであろう。しかし、政治主導という名の下で政権運営に関する様々な仕事を抱え込みすぎたため、政府に入った政治家は多忙となり、与党と政府との連携関係も政調の廃止によって破壊したため、民主党は社会団体との連携を構築することはできなかった。環境、子育て支援、就労支援など民主党が新機軸として打ち出そうとした政策分野で推進力を生み出すことができないまま、中途半端な政策が実現されたにとどまった。そして、子ども手当てや就労支援に代表されるように、世論はそうした政策転換の意義を理解しないままであった。

 民主党が社会の根を持たないということは、民主党政権の成熟をゆっくり見守ろうという根気のある支持者がいないということを意味する。むしろ、野党時代の民主党と付き合い、環境や子育て支援などの政策についてともに議論してきた市民運動の側には不満や幻滅が鬱積している。本来、最も応援してくれるはずの市民から背を向けられたのでは、民主党政権が長持ちするはずはない。

 もちろん、労組や部落解放同盟などの組織が衰弱した今、日本では社会運動の力は弱い。民主党政権と社会運動の連携といっても実感がわかないであろう。ここで言いたいのは、政策の量よりも質である。野党時代に市民活動ともに準備した議員立法を少しでも具体化し、政権交代によって政策転換を実現したという手ごたえを感じることができれば、政権交代が政治の変化につながる回路ができたであろう。

実際には、普通の人々はマニフェスト選挙で政策を注文した気になり、あとは政権に任せ切りで注文が来るのをいらいらしながら待っている。民主党では、政権に入った政治家は目の前の仕事を処理することで精一杯でものを考える余裕がなく、党に残った政治家は仕事がなくて欲求不満をかこつ。本来、民主党を押し上げて政策実現のパートナーとなるべき社会運動の側も政権の無力を冷ややかに見ている。これが政治空転の構図である。

2 政治は生き残れるのか 

結果から見れば、政権交代を起こしたからこそ、政治への希望が失われた。これから民主政治への希望を取り戻すことは大変困難な課題である。それこそ、悪いシナリオを書こうと思えばいくらでもできる。3月末に予算や予算関連法案が成立しないという事態になれば、政権崩壊もありうる。そうなると、誰が後継首相になっても早期の総選挙は避けられないであろう。しかし、自民党政権の復活を望む世論はないので、人々は投票先を求めてさまようことになる。

予算関連法案について野党からの協力を取り付けることができれば、連立の組み換えにつながるであろう。そうなると一時的に政権は安定するかもしれないが、民意と関係ないところで政権が動くことへの批判、不満が高まるに違いない。

早期の総選挙、連立の組み替えによる一時的安定、どちらにしても二大政党以外の政治勢力の台頭を促すであろう。その場合の第3勢力のイメージとしては、中央政界ではみんなの党、地方では橋下大阪府知事や河村名古屋市長などのイメージが浮かぶ。これらの勢力には共通した特徴がある。既成政治の否定を基調とするのは当然として、公共セクターの仕事に対する不信感を持った都市住民を支持基盤としている。そして、世の中の問題を単純化し、議会や公務員をたたくことによって問題が解決するという幻想を振りまいている。ローマ帝国における民衆支配の道具としてパンとサーカスが用いられたが、現代日本ではパンは減税、サーカスは議員や公務員に対するバッシングである。既成政党のだらしなさが、デマゴーグに道を開くという構図である。

地方レベルのデマゴーグに共通する特徴は、議論の否定である。彼らが唱える減税や自治制度の変更については様々な疑問があり、議会や関係者から批判が出てくるのが当然である。しかし、彼らは自分の政策の中身を改良することよりも、反対する者に対して殲滅戦を挑むことを次なる争点にして、メディアを煽り、人々の支持を取り付けようとする。こうした争点の移行を見ていると、何らかの政策を成就することよりも、政治的武闘あるいは演技にメディアと人々の注目を集め続けること自体が最大目標であることがわかる。

 日本では小泉政権が終わった頃から、社会の持続可能性が大きな危機に直面していることへの関心が高まり、世論も政治家の態度も少しずつ変わってきた。世の中にどの程度の不平等が存在することが許容されるかをめぐっては多少対立もあるが、人口の減少、若年層における家族形成の不全と就労自立の困難、地域社会の高齢化と紐帯の消滅などの現象が社会の持続可能性を脅かすという点では、かなり幅広い合意が存在するであろう。自民党や公明党も与党時代にはそうした社会の危機に対処する構想を準備していた。菅首相の言う税と社会保障の一体改革に与野党が協力するかどうかは不明である。それにしても、いま反対を唱えている野党も政権を取った後を考えるならば、おのずとある種の合意ができるであろう。

 しかし、デマゴーグの政治は日本の現実から人々の目をそらさせ、まじめな政策論議をリセットする。また、人々の憎悪や相互不信を煽り、社会的連帯を不可能にする。政治に責任感を持つ政治家はまだ与野党にたくさんいるであろう。彼らが、自分たちが頓挫した後に出てくるものに思いをいたすならば、今足を引っ張り合っている場合ではないという危機感を持つはずである。ただ、困ったことにデマゴーグの政治はその種の良識をもえさにして肥大化するという点にある。

 政権交代の竜頭蛇尾は、我々にとって貴重な政治の学習材料であった。負け惜しみではなく、心からそう思う。政権選択は、買い物とは違うのである。マニフェストというカタログの通りに政策が実現すると考える方が間違いである。もちろん、政治家はマニフェストの主要な政策を実現する努力を払う義務はあるが、努力したから実現するとは限らないという常識を我々は持つべきである。また、何かを政府に実現して欲しければ、口をあけて待っているのではなく、求めなければならない。政治指導者の質が低いのは、我々の愚かさや優柔不断さの反映である。

 実は、こんなことは丸山真男が50年前以上に書いていた。いわく、「政治にベストを期待するということは、強力な指導者による問題解決の期待につながります。政治というものは、われわれがわれわれの手で一歩一歩実現していくものだというプロセスを中心にして思考していったものでなければ、容易に過度の期待が裏切られて、絶望と幻滅が次にやってくる。」そして彼は政治とは悪さ加減の選択であるという(「政治的判断」丸山真男セレクション、平凡社、369ページ)。

 われわれの手で一歩一歩実現するとはどんな作業か教えてくれと読者は苛立つかもしれない。NGOに参加して政治家と一緒に政策を論議することだけが政治参加ではない。まず他者の言葉を聴くことから参加は始まる。人々が聴く能力を失ったから、デマゴーグはいい加減な言葉を撒き散らす。そして他者を憎悪するように仕向ける。彼らは住民投票のようなある種の直接民主主義を好むが、それは政治参加の不在の証である。まず聴くことによって人は自分の態度や立ち位置について考える。そしてそこから政治参加が始まる。

特に今の大人は、できれば、今の世の中の問題は自分たちの世代が作り出したようなものだから、自分たちで何とか解決の糸口だけでも開かなければという漠然とした覚悟というか責任感を持って、話を聞くべきである。そうすると、明らかなインチキは何となく分るはずである。また、外交問題についても自国の主張をただ繰り返していればよいというものではないということが分るであろう。あるいは安全保障の問題でも、巨大な基地を押し付けられた沖縄の人々が何に対して怒っているのか想像できるようになるであろう。

グローバル化の時代には、何かにつけて速さを要求される。確かに、速く手を打つべき問題も多い。しかし、人口減少を止める、若者の働き口を確保する、女性が働くことを当たり前の社会にする、農業を守るなどといった課題を解決することについて、今日対策を決めて明日から効果を上げるなどということはありえない。私たちが、若者にどのように機会を与えるか、女性の職場の仕事と家庭での仕事をどう支えるか、食料品にどれくらいお金を払うかという、生活の根本部分について考え直すことを経なければ、この種の問題は解決しないのである。そして、生活の根本を考え直すためには時間がかかる。

政権交代以後の政治も試行錯誤を続けているが、これは私たち自身が次の時代に生き延びていくための試行錯誤である。まさに、社会の側が変わらなければ、政治も変わらない。

朝日ジャーナル 知の逆襲第2弾 2011年3月15日
 

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コメント
 
01. 2011年3月22日 20:52:19: QKagFAt0Qo
政党政治がぶっ壊れたあと、軍部が台頭したのがかれこれ70年前。

 同じ鉄を踏むのか?


02. 2011年3月22日 22:08:15: rWmc8odQao
つっこみどころ満載ですな。10文字で充分です。
く・だ・ら・な・い・ぶ・ん・し・ょ・う

03. 2011年3月22日 23:18:20: AdKaaFvNBE

【 タヌキ腹組 工作員見習“ぽんぽこ”の お節介な怪説・笑説 】

>民主党を押し上げて政策実現のパートナーとなるべき社会運動の側も政権の無力を冷ややかに見ている

 冷やかに見ているのは、山口先生ですね。
 愚痴らず、政党政治の前進を阻む、「政治とカネ」で暴走する検察、
傲慢な官僚、魔女狩りマスコミ等を徹底的に糾弾し、一歩一歩実現するよう
論陣を張るべきです。



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