菅首相が、浜岡原発の運転停止を要請したことに拍手した人たちは、１８日の首相発言にも同様に拍手をするのだろうか。１８日のロイター電によると、１８日夕の記者会見で、「原子力行政を根本的に見直さなければならない」とし、政府が近く設置する原発事故調査特別委員会で検討していく考えを明らかにしたと述べたが、それに続けて、次のようなことを述べている。（以下ロイター電よりの引用）

菅首相は、原子力エネルギーについて、「安全性を高める為、徹底的に何をすべきか検討しなければならない」とし、「安全性を一層高めた上での活用を考えている」と指摘。原子力のより安全な活用方法が生み出されれば、「さらに活用していく」考えも示した。現在、定期点検で停止中の原子力発電所の対応では「各電力会社に対して緊急の安全措置を準備するよう申し上げている」とし、安全性が確認された原発には「稼働を認めていくことになる」と語った。（引用終わり）

浜岡原発の運転停止要請を、筆者は菅首相のパフォーマンス以外の何物でもないと批判してきた。この要請に拍手をした人の大多数は、菅首相は「脱原発」に舵を切ったと勝手に解釈し拍手した。原発事故に対する不安が醸し出す「反原発」の空気に迎合したマスコミは、この要請を「ヨイショ」した。従って、このロイターが報道した菅首相の発言をほとんど報道してはいない。しても僅かに１〜２行くらいだ。

菅首相は浜岡原発の停止要請を「熟慮」で決めたと言ったが、誰一人として原子力の専門家の意見を聞いていないことは、国会答弁で明らかになった。あの要請は、一向に収束の目途が立たない福島原発事故から国民の目を逸らすための、単なる「目くらまし」（田中良紹氏による）であったことは明らかだ。首相の浜岡原発停止要請に拍手をした人たちに尋ねるが、今一度「拍手できますか」。

菅首相の要請は、日本全体の経済と原発の安全について熟慮したものではなく、国民感情に迎合したポピュリズム的発想での要請に過ぎなかったと云うことだ。浜岡原発が東海地震の想定地域内にあることより、日本の原発の中で最も危険度が高いと位置づけられている。それを利用したパフォーマンス。ただ、それだけだったのだ。

そして、今一つ菅首相のポピュリズム的思考を示すのが１０日の記者会見での発言。
首相は、「原子力政策は資源の乏しい我が国が国策として進めてきた。安全であると信じ、原発と共存してきた被災者の皆さんの、裏切られたとの思いに、国は真正面から向き合わねばならない。だから、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応する」と述べ、原発事故の被災者は「国策による被害者」だと位置づけた。

これの何処が「ポピュリズム」だとの意見があるだろう。ならば訊くが、「原発が国策で、最後まで国が前面に立ち、責任を持つ」と言うのなら、最終的に東電が全賠償責任を負うスキームと矛盾しているとは思わないか。筆者は東電に全賠償責任があるとの立場である。それは原発の被災者は「国策の被害者」ではなく、東電・官僚・学者の慢心、過信そして怠慢による「政策の不実による犠牲者」だと認識するからだ。

菅首相の「原子力政策が国策」だとの発言は、終戦直後の「一億総懺悔」に通じるものがある。この言葉により戦争責任は、天皇と軍人官僚から国民全体に転嫁された。同様に、国策発言は国民全体に責任を転嫁するものだ。そして肝心なことは、国策ならば主権者である国民の代表、国権の最高機関である国会で決められなければならないと言うことだ。だが、日本の原子力政策は、国会議員が全く関与しない原子力委員会で決められてきた。それは、単なる官僚による一政策に過ぎない。

ドイツのナチスがそうであったように、「ポピュリズム」的政策は、一見「尤もらしい」羊の皮を被ってやってくるのだ。この「国策の被災者」とは、先の浜岡原発停止要請と同様に、ポピュリズム的思考から来た発言以外の何ものでもないのだ。そしてポピュリズム的思考には「義務」とか「責任」という概念が希薄なのである。国民の「情緒」さえ満足させればいいのだ。だから無責任な政治になるのだ。

なお、２１日の毎日新聞に、今月２６、２７日にフランスで開催されるＧ８サミットで、菅首相が行うエネルギー政策の概要が分ったと、小さな囲み記事が載っている。そこには、菅首相は、原発の安全性を向上させたうえで、継続利用する方針を示し、日本が「脱原発」に転じたとの見方を払拭する、と書かれている。最後に今一度尋ねるが、菅首相に対して、今一度「拍手できますか」。
http://www.olive-x.com/news_30/newsdisp.php?n=109238
　

コメント
01. 2011年5月21日 22:26:43: rWmc8odQao 「筆者は菅首相のパフォーマンス以外の何物でもないと批判してきた。」 別の仮説もありますよ。「アメリカに言われた」という。 大事なことは、２つ。 （１）これまでおよそ停まるとは思われなかったものが停まったこと。 （２）それが国民の意思で停めたわけではなかったこと。 （１）については「拍手」。（２）については「腕組み」。うーん…
02. 2011年5月22日 01:05:44: 6t3Z2XpZpc 浜岡電発を止めた。この言い方は正確ではない。とりあえずほんの数年休止させることにしただけだ。 ガス抜きがすめば、また稼働させようと企んでいるのが原発利権集団だ。その意図を挫かねばならぬ。この状態でまだ「利権」にすがる人間外生物とでもいうべき集団だ。
03. 2011年5月22日 06:03:25: pRjsNFz8BI 浜岡は止めなければならない瑕疵があった 海江田が停止要請しなければならないので 通産大臣として要請したいと奸ダダっ子に話したら それは俺がするとるとでしゃばった だから中部電力の責任で停めるようにお願いした ゴミや反原発運動家の評判がいいので １０日に調子こいて、凍結を言ったらが アメリカ様に怒られた それでアメリカ様のご希望に沿って 国策としての推進に変えた 反原発や反基地の人達の言動や発言みてると 本当に其のテーマを実現したいのか疑問だ なんでも反対の現実をみない 潔癖症の自分達だけは汚れた人間じゃない という傲慢さと独りよがり 個々に不都合があるとあれは建前だ。 少しでも現実よくしようという 堅実さより 少しでも目立ちたいという パフォーマンスしか感じない ベストをもてめるのではく ベターでもなく グッドな選択で思考すれば 奸ダダのようなワーストな選択をしないはずだ つまり判断は遅いは、リスクをとらないは 追い込められると自分だけ助かればよい 卑劣な判断をする ある意味でゴミと厄人との連帯者と断じる
04. 2011年5月22日 10:57:14: 6mp0wtFJYz 浜岡一時停止の理由、30年以内に大地震が起きる確率、87％だから。 明日起きるかもしれないし29年後かもしれない確率、あほくさ。 じゃあ私は100年以内に日本が沈没する確率は99％と予言しよう。 ちなみに震災前、福島第一原発付近に大地震が起きる確率は0,1％でした。
05. 2011年5月22日 16:08:03: LNLKy2O6FE 云ったことが明日にはひっくり返っている菅の言葉の軽さに総理大臣の器の欠片も無い者を総理大臣と呼ばねばならない国民も哀れです。最大の不幸にして最大の国家的損失に他の国会議員の責任の重さが分かっているのか、これまた甚だ疑問だ。菅みたいな者を担いでいる政治屋の輩達よ、国民のイライラが日々に増している現実を説くと選挙区に帰って認識してほしい。

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