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■（NHK)　大越健介の現代をみる　〜経済一流、政治三流〜
2011年06月15日 (水)
http://www.nhk.or.jp/nw9-okoshi-blog/100/85569.html

　高度成長から安定成長、バブルが崩壊する前までは、「経済一流、政治三流」という言葉がよく使われた。なぜか今になって、この言葉がよく頭に浮かぶ。

　戦後の焼け跡から見事に立ち直り、右肩上がりを続けた日本経済は、日本人の知力と勤勉の賜物であり、諸外国からのバッシングに遭いながらも、どこか誇らしく「経済一流」と口にしていたものだ。

　一方で、政治の三流とは何を意味していたか。ぼくは必ずしも日本政治を突き放した言葉でもなかったように思う。三枚目、三文小説・・・。こうした時に使われる三という数字には、決して立派なものではございませんとへりくだりながら、どこかおかしみや親しみを感じさせるものがある。日本人はなぜかこの三という数字に愛着があり、球界の大スター・長島茂雄の背番号は、王貞治の１でなく、やはり３でなくてはならないと思わせる何かがある。

　横道にそれた。つまり政治に冠された三流とは、ゴリゴリの利益誘導でお縄になる議員に呆れ果て、国会議事堂での田舎芝居に辟易しながらも、「俺たちのセンセイよ、もうちょっとがんばってくれよ」という、どこか身内意識を込めた叱咤激励も込められていた。

　しかし、このところの政治は、果たして激励の対象たりうるだろうか。政権交代の期待を背負った民主党政権。その失速自体は、振り子が大きく戻ったのだと考えれば納得もできたが、震災のさなかの政権体たらくは何としたことか。

　その第一義的な責任は、やはりトップたる総理大臣に帰するのが妥当だろう。思わせぶりに辞めると言い、内閣不信任案という最大の風圧をかわしたかと思いきや、「いつ辞めるかなんて言うはずない。あす辞めるかもしれない」と言を左右にしながら、ずるずると職に踏みとどまるのは、前総理の「ペテン師」という言葉に説得力を持たせるだけのことである。第一、この国の子どもたちに説明がつかない。

　辞めると言ったら、その時点で求心力はなくなる。最低限の残務処理をこなして、次の本格的な仕事は後継者にゆだねるのが筋というものだ。その仕事の仕分けをし、時期を明示することが、総理たるものの去り際であるべきだ。震災からの復興という、日本の命運を握る課題を延命の具に使ってはならない。本人にその気がなくても、そう思わせるだけの状況証拠を積み重ねるだけで、十分罪深い。

　震災のダメージをかぶった経済は、ものづくりの現場力が支えとなり、部品工場などが復活のスピードを速めている。節電の夏というもうひとつの関門を控えながらも、二流への転落手前で踏ん張れるはずだと力も入る。

　しかし、政治には希望が感じられない。完全に主語をはき違えているのだ。「オレがオレが」の我の強さは、永田町の住人の特徴ではあるが、今、主語は被災者であり、国民であり、この国であるべきだ。自分を二の次に考える最低の道徳は求めても無駄なのか。

　経済一流、政治三流ということばがなぜ頭に浮かぶのかがわかった。経済はともかく、政治は果てない沼の底へと沈下を始め、もはや、愛すべき三流の勲章すら手放そうとしている。過去のものになりつつあるフレーズが、ぼくに旧き良き時代のノスタルジーを呼び起こしたのに違いない。