明治維新から今日までの歴史を含めて、戦後以来の日本の歴史教育というものは入試試験のための暗記するだけの貧弱な教育しかなされていない。各時代の出来事の裏にある社会的な要求や思想が欠如している。表面的な事しか教育されない事から来る無味乾燥な試験問題だけのつまらない授業を思い出す。明治100年といわれていたのはつい最近の事である。今日まで我が国がたどった歴史を思想的に語ったものは少ない。司馬遼太郎と梅原猛はその中でも正しい歴史認識を持った双璧といわれるべき人物であろう。この国の学者といわれる人種は明治以来おのれの意見を持たず単なる西欧思想の紹介者にすぎなくなっている。歴史認識においても、過去の正しいと言われる学説を、司馬遼太郎や梅原猛のように超えられない。

日本の近代という概念で明治以降を考える事は非常に大事である。それは西欧化にどのように成功したかを知ることができるとともに、何ゆえに戦争に突き進んだのかという問題で、現在世界で進行中の発展途上国の西欧化の過程を予測できる大きなヒントを得る事が可能であるからである。それらの正しい検証こそが、歴史というものを考える本当の意味なのである。では明治維新とは何であったのであろうか。そこに見られるのは圧倒的な西欧の科学技術文明の優越性に対する完全な屈服による社会の激変である。過去の思想の全てを捨て、科学技術に基づく強い国にするために思想を大きく変えたのである。その成功は、江戸時代から連綿と続いた武士階級という、優れた思想を持った政治家たちの考えた国家体制の変革の産物の見事さによっている。西欧の科学技術の移入のために、教育制度は国家神道という天皇を神とする全く新しい思想を作り出し、その神を中心とした富国強兵に沿って全てが実行され、見事に短期間に西欧化に成功したことは世界にも類を見ないものである。このような変革は官僚的な発想では絶対になしえない。そこには武士階級にあった過去の儒教や仏教などの優れた思想の積み重ねが結実したものと言わなければならない。しかしながら西欧思想の全面的な移入は国家による覇権主義を招き、強い倫理観を持った武士階級出身の政治家がいなくなるとともに、中国などの近隣諸国の侵略から最終的に太平洋戦争に突入という必然的な結果を招いてしまったのである。

この科学技術をもとにした西欧化は、その思想と共に戦後も何も変わらず移入する事が現在まで連綿と続けられている。敗戦による民主主義という制度は形だけが導入されたが、その本質的な理解もなく、国民は物質的利益を求めるだけの西欧的な生活の追及に明け暮れてきた。社会は大きく変わり、自然は「利用」という西欧的な思想のもとに大きく変えられ環境破壊や公害も経験してきた。その最たるものは福島原発の事故に見られるものであろう。明治の国家主義から派生した官僚制度は、まるで中国末期の清朝を滅ぼした儒教思想による変化をさせないための科挙の制度と同じかたちをとったまま現在に至っている。戦後の形だけの民主主義の中で官僚制度は国民から見えない形で実権を握り、この国は変化に対応できない三流国家になってしまった。政治家は自らの責任を放棄し、全てを官僚に丸投げする事で国民を欺いてきた。政権交代して変化を求めた国民は、菅直人政権の誕生によって完全に期待を裏切られたが、大多数の国民はその理由の本質さえ理解していない。国民も自ら考えずに全てを政治家に丸投げしてきたつけが来ているのだ。

世界を見れば西欧が世界の中心で、西欧こそが正しいとする人間中心の思想は完全に行き詰っている。戦争はなくならず、神を捨てた思想は人間性の荒廃を生み、至る所で問題が山積している。その上で科学技術の西欧の独占は崩れ、多数の新興国が物質的な豊かさを求めて西欧化の道を走り始めようとしており、世界はますます混沌としてきている。先進諸国と発展途上国の衝突は、その思想的なものと物質的な豊かさを求める動きの中で至る所で衝突するだろう。すでに環境問題でも原発の問題でも意見の衝突は至る所で見られる。

梅原猛という稀有の哲学者が主張するように、わが国が過去からある仏教や、国家神道ではない本来の神道に見られる自然や動植物などの全てに神を見る思想を見直す必要がある。その優れた思想と科学技術の融合の中に世界の未来を見る事で、わが国は世界を導くことができる思想を提示できるだろう。世界でどこよりも早く西欧化に成功した我が国こそ、その成功と失敗の全てを正しく検証できる。何が正しく、何が間違っていたかを認識する事こそが正しい歴史認識に導くものである。それを行う事で我々は世界を救う事が出来るはずである。日本人よ、もう一度過去を正しく見る事で自信を取り戻そうではないか。 　

コメント
01. 2011年6月25日 11:18:11: pRjsNFz8BI 日本が克服しなければならないのは 匿名の独裁から脱却だ 官僚独裁主義という 東アジア独特のシステム 支配者バカ殿かして祭りあげ より自分達の地位保全、利権の維持をはかる ゴミと厄人、サラリーマン経営者の 互助組織が出るくいを打ち 責任のあいまい化を推し進め 無責任の状況にした その最大の成果が奸一味だ 不都合、不具合を隠蔽してきた ゴミは強い指導者がでるたびに これに対して独裁者だとか 徹底的に世論誘導をしてきた 彼らは本当に寄生虫で吸血鬼のような 存在と化している どうしたら駆除できるのだろうか だから小沢さんが権力を掌握して かれらを駆逐することを願うのだ
02. 2011年6月25日 11:40:33: 9HNdOfobow 月と星さん 「武士階級出身の政治家がいなくなるとともに、中国などの近隣諸国の侵略から最終的に太平洋戦争に突入」と考えているようですが、秀吉の朝鮮出兵や西郷の征韓論などなどを見ても、武士階級出身者が必ずしも強い倫理観があるわけでもなく、また、彼らの持つどのような倫理観が近隣諸国への侵略を思い止まらせるのかも明らかでもありません。つまり、武士という階級の倫理観が大事と言う訳でもないでしょう。 私が言いたいのは、ごく普通の人間としての普通の倫理観、つまり、自分の家族、自分の周りの人間、また彼らの周りの人間、全てと、厳密な意味で共存関係にあるという基本的認識、基本的原理から考えれば、侵略して、一時的に他国の人の生命を奪い富を収奪しても、いずれ、その反作用というものが必ず生じる。これは、全くの物理法則で、誰も否定できない。この共存関係が希薄な時代では、侵略は自己保存にある一定期間つながったかもしれないが、今や、それはありえない。 にもかかわらず、「自虐史観」と言う言葉のウソで、過去の歴史から学ぶことすら拒否している。過去の歴史から何を学ぶのか？それは、まず第一に近隣諸国との人間関係であろう。そこで、どのような倫理観が機能しなかったのか、あるいは、欠如していたのかを学ぶべきであろう。 そうした、倫理観の欠如が、今や、自国民間にも及んでしまっているのではないのでしょうか？日本人の倫理観、西欧人の倫理観、など、人種による倫理観の差異は、根源的なところでは、存在しないでしょう。この自国内での対人関係における倫理観の欠如は、今や、どの国においても見られる。アメリカでは、サブプライムローンなど国家レベルでモラルハザード的政策が行われてしまった。金融工学という、モラルハザードをきたした富の収奪、等など。そして、そのことがその国を滅亡へと導く。 日本では、権力亡者達が政権を放さない。まさに、権力亡者そのものの姿である。菅内閣執行部は、詐欺、ペテン、、情報隠蔽を行い、原発周辺住民を見殺しにしてきたと言って過言でない。これらは、すべて、自国民への倫理観の欠如に端を発している。 一方、他者への倫理観とfair な科学開発競争とそれに伴う経済競争は基本的には両立するはずである。しかし、この科学分野でも「部族間」でモラルハザードが進行し、また、学際的研究の裏面としての「分野間」でのモラルハザードも見られる。そのため、科学の発展のスピードが鈍り、他者への倫理観と必ずしも両立しない局面も出現しているようにも思うが。 過去の戦争や争いを通じて他国への倫理観を如何に構築するかを学び、また、自国内での、「家族間」、「部族間」、「村間」、「地域間」、「政党間」の争いを通じて、他者への倫理観を如何に構築するかを学ぶことにより、未来につながる正しい歴史認識が得られると思う。
03. 2011年6月25日 16:32:11: q1gf0gzNbs 秀吉の時代、西欧は何を行ったのか。そして西郷の征韓というけれど、西郷は、まさに武士であって、力で征服しようと考えていない。思想を生き方を学べば、分かる筈内容だ。西郷隆盛の心配は、あくまでも欧米諸国のアジアに対して植民市支配の内容である。秀吉もそうだし、その為に出兵したのである。 　ここで、婦女子が何を行われされたかは、阿修羅の掲示板に載っている重要な道徳問題である。好きですね。あなた方は、強姦等を。阿修羅掲示板にこの問題を表立てにさせないで、前面に問題視させない方向に持っていき、その問題を隠して、 このような理論を弄ぶ０２さんの考えが、「モラールハザード」であり、さっさと警察に自首しろって。警察は、この問題を真面目に考えないから、天罰の地震を起されたのに。
04. 蒲田の富士山 2011年6月25日 20:34:08: OoIP2Z8mrhxx6 : NdQY6t8rDg ＞見事に短期間に西欧化に成功したことは世界にも類を見ないものである。このような変革は官僚的な発想では絶対になしえない。 官僚は中国人のような発想はしない。 日本の官僚制は、西欧化のための手段であり、西欧のその当時の隠れた勢力による指導の、結果として存在している。 「見事に短期間に西欧化に成功したこと」が、それが、よいことなのか？
05. 2011年6月25日 21:36:23: yxstEvnWG6 梅原猛はガクがないので語れませんが、司馬作品は、真実に触れないよう聞きざわりのいい物語を、司馬遼太郎が知った上で牽強付会した歴史読みものかと。
06. 2011年6月25日 23:04:27: yxstEvnWG6 >>5　続き 読みものなら、海音寺潮五郎、藤沢周平や池波正太郎のほうが、よほど日本人の人情や道徳、そして（正しいか正しくないかは判りませんが）歴史認識にふれると思います。 事実認識を歴史的に冷厳にすることを歴史認識とするなら、日本史は世界史、東アジア史の一部にすぎず、そうした条件から抜け出られるわけがないです。 条件から抜け出られるのは、日本浪漫派の神懸かったというか、はっきり言えば現実逃避の妄想世界や、司馬作品の甘い世界の中に入ることしかないから、この種類の読みものは、いつも一定の人気があるのだと思います。
07. 2011年6月26日 15:23:22: 3DzJqv1zRw 「正しい歴史認識とは」 非情に難しい問題です。 正しい歴史認識にせまるには「常にそれはただしいのか？と疑問を持ち続けることです。」 単純で些細な事象にも疑問、検証、裏付けを怠らない姿勢しか正しい歴史認識に至らないのは事実でしょう。
08. 2011年6月26日 19:59:34: 6ZUJSra9vU ＞西郷の征韓論などなどを見ても、武士階級出身者が必ずしも強い倫理観があるわけでもなく あ〜、すまん。 なんで、まだ征韓論幻想を抱いている奴がいるかね。 阿修羅って、そんなにレベル低いのかい？ 西郷隆盛が生きてた頃って、まだ（李氏）朝鮮だし そもそも西郷は、一人で使節として行かせてくれ、と言ってるだけなんだが。 いまだに西郷＝征韓論とか言ってる奴は、 西郷一人で朝鮮相手に無双が出来るとでも思ってるのか？ こんなんが正しい歴史認識とか言ってるって、とんだお笑いなんだが。
09. 2011年6月28日 01:40:17: yxstEvnWG6 >>5 ＞司馬作品は、真実に触れないよう聞きざわりのいい物語を、司馬遼太郎が知った上で牽強付会した歴史読みものかと。 参照； 坂本竜馬　　―　姦雄的心事歴然　―　（海音寺潮五郎著　「乱世の英雄」から） http://www.asyura2.com/09/reki02/msg/500.html 文春文庫「乱世の英雄」海音寺潮五郎著P106〜P107から下記部分を引用します。 ＝引用開始＝ （略） 　坂本竜馬もまた乱世向きの人だ。今にのこる彼の語録を一読すれば、それは歴然たるものがある。数条を上げてみる。 ○　人に対面せば、此奴（こやつ）はいかにせば打殺し得るぞと見取るべし。此奴を殺すわけはないと思う位な者は智恵なしなり。少しむずかしいと思う位な者は智恵あり。智恵のある奴は早くだまして味方にすべし。 ○　人を殺すことを工夫すべし。刃にてはかようにして、毒類にてはかようにしてなどと、工夫すべし。乞食など二、三人試みておくべし。 ○　薄情の道、不人情の道、忘るることなかれ。これをかえって人の喜ぶように行うを智という。 ○　涙というものは人情を示す色なり。愚人や婦女子には第一にききめあるものなり。 ○　衣食住財宝を人にあとうるに、智ある者はめったにだまされねど、度を重ねてあとうれば、ついにその親切にほださるるものなり。 ○　おのれの欲する所を人に知らしむるなかれ。おのれの短所もまたしかり。これに反して、他人のこの二つを知るを英明の器とす。 ○　偉い相手に対して、心臆（こころおく）する時は、こいつは女房とする時はどうしてするならんと想像して相手を見れば、ちっともこわくなくるるものなり。 読み来れば、姦雄的心事歴然である。 ＝引用終了＝

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