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国破れて日銀・財務省マフィアあり(山本幸三衆議院議員)
http://www.asyura2.com/11/senkyo119/msg/275.html
投稿者 忍 日時 2011 年 9 月 08 日 15:39:32: wSkXaMWcMRZGI
 

1  東日本大震災から五カ月を経過したが、未だ被災地はガレキに覆われ被災者の生活再建の目途は立っていないままだ。第一次、第二次補正予算で応急措置だけは施したが、本格的な復興には丸で至っていない。政府として十分な財源を用意出来ないからだ。私の「20兆円規模の国債日銀引き受けで」という提案を採用すれば直ぐに財源は調達出来るのに、日銀・財務省マフィアの反対でこの決断が出来ないのだ。日銀は自分達の権限を侵されたくないし、財務省は増税の好機だと思っているからだ。そうこうしているうちに日本は、全くおかしくなってきた。政治は菅総理の退陣騒動で混迷し、経済は長引くデフレと超円高、原発事故に伴う電力不足が重なって将来が見通せなくなり株が暴落、恐れていた「平成恐慌」が現実のものとなってきた。このままでは、日本は滅びる。「国破れて日銀・財務省マフィアあり」ということになってもよいのか。今一度、政治家の覚醒を促したいと思う。
 
2  1ドル75円台の最高値を付けた円レートを見て「大変だ、大変だ!」と叫び、「介入も辞さない。緊急円高対策も講じる。」などと右往左往している野田財務大臣や白川日銀総裁、海江田経済産業相などを見ているとチャンチャラおかしくなる。なぜなら、政府・日銀はこれまで円高になるような政策だけをやってきたのだし、これからもやろうとしているからである。今の円高は、政府・日銀の政策によって起こるべくして起こっている現象に過ぎない。このことは、8月3日に行われた財務金融委員会と経済産業委員会の連合審査会での私の質問で明らかにしたところなので詳しくは議事録を読んで頂きたいと思うが、そのエッセンスは下図を見て頂ければ一目瞭然である。

  2000年1月を100として2011年の今日までのマネタリーベース残高の推移を見ると、日本は僅か150程度までしか伸ばしていないのに対し、中国は620、米国は450、英国と韓国は250、ユーロ圏でも230辺りまでマネタリーベース残高を増やしているのである。マネタリーベースとは、その国の通貨の量(通貨ストック=マネーサプライ)の基となるもので中央銀行が金融政策として操作する対象をいう。日本の場合、「現金+日銀当座預金」のことである。このマネタリーベース残高を増やすということは中央銀行が金融緩和政策を採っていることを意味し、減らす場合には引締め政策を採っていることを意味する。白川日銀総裁は、口を開くと「極めて緩和的な金融政策を行っている。」というが、実際は何もやっていないことが数字を見れば明らかとなる。日本でかくも長きにわたってデフレが継続するハズである。また、通貨の価値は各国の通貨の量の相対価格であるから、米国でドル通貨を大量に発行しているのに日本が円の量をほとんど増やさないとすれば、ドル安・円高になるのは自明の理という訳だ。
  白川総裁は、デフレ大好き人間である。これまでも繰り返し「デフレスパイラルの恐れがない限り、デフレは許容する。」趣旨の発言をしてきた。実績から見ても、総裁に就任した2008年こそ原油価格の高騰もあってコアCPIは若干のプラスだったが、翌年以降はずっとマイナスである。日本の経済実態を最もよく反映する生鮮食品とエネルギー価格を除いたコアコアCPIで見ると、1998年以降今日までマイナス1.5%とゼロ%の間に見事にコントロールされており、白川総裁率いる日銀が「デフレ目標」を持って金融政策を運営していることが読み取れる。「白川デフレ」と私が名付けた由縁である。この白川日銀が自発的に大金融緩和すなわち通貨の大量発行に踏み切ることは到底考えられない。このままでは、今後とも超円高が進むことは必至である。
 
3  円高が進むもう一つの大きな要因は、復興のための財政支出の拡大である。いわゆるマンデル・フレミング効果である。この点については前回の(アピールNO5)で詳しく説明したので、もう一度読み直して頂きたい。要するに、「変動相場制の下では、財政支出の拡大は金利に上昇プレシャーがかかるので短資が流入して円高が生じ景気拡大効果が失われる。他方金融緩和政策は、金利低下と円安で二重の景気拡大効果がある。」というものだ。1973年の変動相場制移行後に提唱されたこの重要な理論は、それまでの単純なケインズ理論と余りにかけ離れているために、古い教育を受けた人々にはなかなか受け入れられなかった。日銀・財務省マフィアの利害に反することもあって長年にわたる自民党政権下では全く採用されず、その結果デフレを継続させ国民の生活を貧しくしてしまい終には政権を失うことにつながってしまったのである。今の民主党政権も、同じ過ちを犯しつつあるということだ。復興支出を拡大すれば景気回復につながると思っているようだが、超円高でその効果が帳消しになるということが分かっていないのだ。他方我が野党・自民党の方も、現執行部は依然政権を失った根本原因を理解しておらず、日銀の通貨発行を伴わない「復興債の発行による財政支出拡大と将来の増税」を提案している。超円高とデフレが深刻化して財政の健全化など一層遠のくだろうに。未だに日銀・財務省マフィアに牛耳られたままなのだ。
  いずれにしても今後、復興のための財政支出が拡大していくことは確実である。このとき日銀による通貨増発が伴わないとすれば、超円高が続くことは当然のことなのだ。何も大騒ぎするほどのことでもなく、自業自得なのだということを現政権を選んだ国民自身が認識すべきなのだ。
 
4  戦争や大規模災害という一時的に大きな財政支出を要する場合に、その財源をどのように調達すべきかについて国際的に通用する経済理論はあるかといえば、実はある。「公債を発行し、30年程度の長期で償還する。」というのが原則である。日米英の歴史統計をみても、公債残高が急増しているのは戦時中であり、それが30年程度経過すると平準化されるというのが各国共通の姿である。戦時下で必要となる巨額の政府支出を税金で賄うため限界税率を高めると、費用を負担する人と便益を享受する人がかけ離れているために費用と便益を均等化する価格シグナルの機能が損なわれて、効率上の損失が生まれる。それを避けるために世代間の負担を平準化して戦費調達の負担をならそうという知恵から、公債に頼ることを原則とするようになったのである。破壊された住宅をはじめ資本設備の復旧は、現世代だけでなく将来世代にも恩恵を及ぼすので、その一部を将来の世代が負担するのはむしろ公平である。
  ただここでも日銀の通貨増発が伴わない国債の市中発行だけだと、資金の取り合いから金利上昇プレッシャーがかかり円高が進行するという問題がある。日銀引き受けか日銀買い切りオペが必要な由縁である。
  ところで復興構想会議などは、実施時期を限った消費税など基幹税の増税を提案しているが、彼等は上記のような増税がもたらす効率上の損失とか社会的厚生の喪失とかいった概念を全く理解していないし、デフレ下では増税で経済が失速しむしろ税収は減ってしまうということにも気が付いていない。エール大学の浜田宏一教授の言葉を借りれば、「まるで災害という傷を負った子供に重荷を持たせ、将来治ったら軽くするといっているに等しい。」ということだ。
 
5  円高にはメリットもあるのではないかとの議論もあるが、それは交易条件(輸出価格/輸入価格)が有利化している場合であって、不利化しているときには当てはまらない。現状の日本は、後者の悪いケースに当たる。この場合には、超円高は何としても是正しなければならない。1995年に79円を割り込んだときの実質実効円レートは自然な購買力平価より78%も割高だったという研究成果も出ている。今の75円は、それ以上なので、産業界にとっては耐え難いものだろうからである。円高を是正する基本は、日銀の怠慢のせいで長期にわたるデフレに陥っていることから円高になっている訳だから、まず日銀の金融政策を根本的に変える必要がある。ただ、すでにゼロ金利、「流動性の罠」状態にあることから通常の金融緩和策だけでは効果が薄い可能性がある。こういう場合には、何らかの形で「予想インフレ率」を高め、実質金利を下げるようにするしかない。その最善の方策は、「物価安定(インフレ)目標政策」を日銀に義務付け、達成出来なければ責任を取らせることである。責任を問われない目標など、市場参加者の誰も信用しない。こうしたはっきりした形で、デフレ脱却の途を示さない限り、デフレ均衡に陥っている日本経済を救い出す途はないし、超円高も止まりそうにない。
  ゼロ金利下での超円高を早期に是正するには、徹底した市場介入しかなさそうだ。ゼロ金利下では同じような円資産同士の交換では効果が期待出来ないということになるのだが、ドル資産と円資産では違いがはっきりしており、価格すなわち円ドル・レートに影響を与えることが出来る。これも徹底介入で、市場参加者のレートに対する期待感を反転させるくらいでないと永続的な効果はない。2003年1月から2004年7月まで徹底して介入した結果、見事に円高から円安方向に転換させた溝口介入は大いに参考になる。なお、この介入が成功したのは、当時の福井日銀総裁による量的緩和策が同時並行して実行されたからであることも忘れてはならない。日銀の金融緩和と並行して初めて介入は成功するのである。
 
6  今の日本の状況は、関東大震災から昭和恐慌に至る過程に酷似している。1923年9月1日の関東大震災後、後藤新平の帝都復興計画が提案されたが、政治的混迷の中で規模の縮小を余儀なくされ復興のための財政支出はマクロ経済の落ち込みを防ぐには不十分であった。その結果、震災翌年の1924年こそ成長率は急上昇するが、しかしその後は停滞してしまう。より問題だったのは、当時の金融政策が引締め気味であったためデフレが続いたことである。これに円高を意味する金平価復帰が強行されたのだから、1930、31年の昭和恐慌に至るのも至極当然という訳だ。余りにもデジャブ(いつか来た道)という気がしませんか。もはや突入したとみられる「平成恐慌」から抜け出す途は何か。昭和恐慌から抜け出した妙策、高橋是清の「円安政策と日銀国債引き受け」によるデフレ脱却、株価上昇、経済成長しかないのではないか。
  もう少し具体的に列挙すると次の通りである。
  @復興財源を賄うための20兆〜50兆円規模の日銀国債引受け又は日銀の国債買い切りオペの実行
  Aデフレ脱却を確実にし、インフレ懸念を払拭するための「物価安定(インフレ)目標政策」の日銀への義務付け
  B上記金融緩和政策と相俟った徹底した為替市場介入の実施
 こうした施策が今の日本にとって是非とも必要なものである。迅速な実行が急務である。
今民主党の代表選が行われようとしており、次の総理に誰がなるか分からないが、誰がなろうと最低限これだけのことは実現してもらいたいものだ。必要なら、そのための政界再編も考えるべきだ。そうでないと、日本は「国破れて日銀・財務省マフィアあり」という悲惨な状況に追い込まれてしまうだけだろうから。   
 
(以上)

財務金融委員会


1  日本は今、私が危惧した最も悪い方向に進みつつあるようだ。菅政権は、東日本大震災という未曽有の国難に対し後手後手の対応しかできず、その政権担当能力に赤信号が点りつつある。未だ多くの被災者が避難所生活を強いられたままで生活再建の見通しも立てられず、心身ともに疲弊してきている。菅政権には、危機に際して採るべきリーダーシップとは何かということがまるで分かっていないのだ。
  当面の緊急対策としての第一次補正予算が4月28日にようやく国会に提  出され5月2日に成立したが、その中身は国債発行を避けるという建前に固執する余りたった4兆円というチョボい規模で、これでは被災者生活再建支援やガレキ処理に対してだけでも到底足りないことは最初から明らかで、苦難の中にある被災者のことを思えば暗澹たる気持ちにならざるを得ない。どうしてこういうことになるかというと、確固たる財源策が固まっていないからである。そうした中で菅総理を初めとする閣僚や与党幹部の発言から浮かび上がってくるのは、「まず復興再生債(国債)の発行で賄い、これを復興税という増税で償還する。」というのが規定路線のようだ。復興税は、消費税なのか所得税、法人税なのかは未定のようだが、増税であることは間違いがない。当初は国債発行であっても増税することが最初から分かっていれば、国民はそれを前提に行動するので経済学的には増税政策と捉えるべきものである。この増税シナリオは日銀・財務省マフィアのシナリオそのもので、このことは菅総理が遂に日銀・財務省マフィアの軍門に下ったことを意味するものである。
  一方で私の「20兆円規模の日銀国債引き受けで賄え」との提言は、完全に無視されている。日銀・財務省マフィアの増税路線にそぐわないからだ。デフレで大きな需給ギャップが存在する上に大震災という景気後退ショックが重なった現状で増税すれば、デフレが深刻化、消費も投資も減退、名目GDPも減少して返って税収は上がらず財政状況はより悪化するであろうに。雇用にも悪影響を及ぼす。菅総理や閣僚・与党幹部には、どうしてこんな簡単なことが分からないのだろうか。政治家の無知、極まれりというべきか。これでは、日本が本当に滅んでしまうことになるのではないか。こうした危機感から、今一度私の考えをアピールさせて頂きたいと思う。
 
2  今回のような危機に際し政治家が採るべきリーダーシップとはどのようなものであるかについて、私は改めて増田敏男元衆議院議員の話を思い出すのである。2000年3月31日に北海道有珠山が噴火したとき増田氏は国土庁の総括政務官(今の副大臣)の職にあり、時の森総理から現地対策本部長として北海道行きを命じられ、約三ヵ月間現地で総指揮を採ることになる。増田氏は現地に到着するや否や直ちに全省から派遣された役人達を集め、こう宣言したそうだ。「これからは、自分が全てを決断し決めるのでそれに従って行動してもらう。情報は全て自分に上げろ。ただし、全ての責任は自分が取る。それが嫌なら、今から直ぐに東京に戻れ。」と。勿論それで帰る役人などいないし、指揮命令系統と責任の所在がはっきりすれば役人はむしろ嬉々として仕事に精を出し始めるのである。
  例えば、一日も早く仮設住宅を作る必要があるが、とくに畳が足りないという情報が上がってくる。増田氏は直ぐに全国畳協会の会長に電話して、「全国から畳を一、二週間で集めて欲しい。」と依頼する。これに応じて会長は、「了解した。ただし、輸送手段がない。」と答える。すると、増田氏は防衛庁長官(当時)に電話して、「何とかならないか?」と相談。防衛庁長官は、「分かった。輸送艦を手配しよう。」と協力を申し出、とんとん拍子に話が進んでいったそうだ。
  また増田氏は、「被災者にとってはお金が一番欲しいはず。」と考え、北海道庁に半分出せと要請した上で、一、二週間内に一世帯当たり10万円を配ったとのこと。途端に、被災者の顔が明るくなったそうだ。財務省の言い分を聞けば「現金給付は法律と予算の根拠がないと無理。」というので、それではと「貸付金」という形を採り、ただし「返せるようになったときに返せばよい。」といって渡すのだから、事実上は現金給付である。しかし、これで後から問題になったという話は聞かない。
  こういうふうに迅速に決断し責任を取っていくということが、本当の政治家のリーダーシップというものなのだ。これに比べて菅政権の対応振りは、どうだろうか。何も決断しないで、パフォーマンスと会議を開くだけ。会議は責任逃れには役立つかもしれないが、決断してくれる訳でもなく、時間を浪費するだけだ。驚くべきことに、一次補正だけでは到底足りないことが明らかであるにも関わらず、二次補正は「復興構想会議」の報告が出る6月下旬以降から中身を検討するというのである。今一番必要なことは、現地の市町村長等の意見を聞いて、どんどん物事を決めていってやるということではないのか。「復興構想会議」がどんな立派なビジョンを示そうが、地元住民が納得しないような中身では絵空事にしかならないであろうに。
 
3  「復興構想会議」でビックリしたのは、初会合の冒頭に五百旗頭議長が「復興財源として復興税の創設」を提起したことである。そこで「復興構想会議」のメンバーを調べてみるとまたビックリ。マクロ経済や金融・財政の専門家は一人も入っていないのである。政治学者とか、建築家、脚本家、作家、哲学者、東北の県知事ばかりで、唯一労働経済の専門家が一名いるだけである。こんな人達だけで、日本経済に悪影響を与えないで真の財政の健全化を図るような復興財源の議論ができるとは、とても思えない。「復興債の借換えは行わない。」などいう、日銀の直接引き受けに絡む専門的な議論も出たということから推察すると、裏で財務省が仕切っていることは明らかである。財務省にとっては、素人集団の「復興構想会議」と日銀・財務省マフィアの典型である与謝野馨氏がリードする「税と社会保障の一体改革検討会議」を駆使して、念願の増税、とくに消費税の増税に踏み切る絶好のチャンスが到来したのだ。増税が日本経済にどのような影響を与えるかについて全く無知に見える菅総理は、願ってもないカモなのだ。
 
4  復興財源を考える際に一番重要なことは、今後の日本経済の推移をどのように診るかということだ。
  震災前の日本経済は、08年のリーマンショックによる落ち込みから新興国向けの輸出をテコにようやく立ち直りつつあったが、まだデフレで20兆円超の需給ギャップを有した状況にあった。そこに東日本大震災が襲ったのである。しかも今回は、地震に津波そして福島第一原発事故による放射能被害と電力供給不足という広範で複雑な大災害となっている。
  まず、東日本大震災による生産設備の損壊やサプライチェーン(供給体制)の寸断で日本経済の供給力が大幅に落ち込んだ。日本経済研究センターは、約4兆円と推計している。
  他方で、大震災や原発の事故などを受け消費者や企業の心理が急速に冷え込んでおり、需要も大幅に減退している。実際大震災後に集計された3月の景気ウオッチャー調査で、現状判断指数は前月比20.7ポイント低下と過去最大の落ち込みを記録した。私の地元の北九州でも、自粛ムードで宴会が続々とキャンセルとなり飲食店が倒産寸前に追い込まれている。
  こうした縮小均衡から、日本経済がいつ抜け出すことができるのか。当初は、供給面については秋口以降には回復が見込まれるというのが大勢だったようだが、福島第一原発事故を受けて浜岡原発の全面停止を菅総理が要請したことから全国的な電力不足が懸念され、このシナリオも怪しくなってきた。
  さらに大きな問題は、落ち込んだ消費者や投資家の需要が早急に回復するかどうかだ。
与謝野経済財政相は「景気冷え込みは短期」と、白川日銀総裁は「需要の蒸発が生じた訳ではないので、生産体制が修復すれば緩やかな回復経路に戻っていく。」と、それぞれ楽観的な見通しを示している。しかし、私から見ると「飲み屋の女将の声など聞いたことがない、現実離れした日銀・財務省マフィアの希望的観測に過ぎない」ように思われる。彼等は、秋にかけて復興需要が本格化するほか、新興国を中心とする好調な海外需要を背景に生産の回復とともに輸出が伸びるとみているのである。だが、復興需要は全体の需要の落ち込みをカバーするほどに大きなものと期待できるのだろうか。阪神・淡路大震災の際も確かに復興需要は観測されたが、その後の日本経済が大きく成長したかというと、そうでもない。むしろ、このころから日本にデフレが定着し始めるのである。関西地区も一次的に倒産率が減るが、1年半後には逆に大幅に増加に転じるのである。兵庫県の実質国内総生産は震災翌年の96年の水準を未だに回復できないでいるという。一時的、部分的な成長が継続・拡大する訳ではないということだ。エコノミストの間でも、「企業の生産減少などで所得が減るため、個人消費の回復は鈍い。」とみる向きも多い。また、日本で生産低迷が続く間に海外需要を他の輸出国に奪われ、秋以降も需要不足が続く可能性もあるのである。
  さらに原発の放射能の問題は、わが国の輸出に大きな影響を与える恐れがある。既に、幾つかの国で我が国輸出品の荷降ろしが断られたり、過剰な証明書の提示を求められたりしている。放射能漏れの完全封鎖にはまだ相当の時間がかかりそうであり、輸出だけを頼りに回復してきた我が国経済にとっては致命傷になりかねないかと心配である。
  以上のようなことを考えると、与謝野氏や白川氏のように供給の回復に応じて需要も順調に回復すると決めつけるのは相当の無理があると言わざるを得ない。そうした中で復興財源を考える際には、ゆめゆめ需要を減らすような方策は、決して採ってはならないのである。
 
5  次に、回復の起爆剤と期待される復興需要それ自体も、貨幣供給の増加が伴わなければ、それだけでは円高となってその景気回復効果が失われてしまうということを強調しておきたい。いわゆる、マンデル・フレミング効果といわれるものである。過去30年にもわたる景気対策がさしたる効果を発揮せず国債残高だけが累積する結果になったのも、歴代自民党政権の政策担当者がこの理論を全く理解していなかったからである。今回復興のための相当規模の財政支出をやらざるを得ない以上、この理論を理解していないと同じ失敗の轍を踏むことになる。そこで、簡単にマンデル・フレミング理論を解説しておきたい。
  事柄の性質上、数式を少々使わざるを得ないことをお許し頂きたい。最も単純なマンデル・フレミング・モデルは、
  S(y) ―I(i) = X(e,y,y*) ・・・・・・・・・(1)
  M = L(y,i)        ・・・・・・・・・(2)
  i = i*          ・・・・・・・・・(3)
 の三式で表わされる。ここで、Sは貯蓄、Iは投資(含む政府支出)、Xは経常収支、Mは貨幣供給、Lは貨幣需要、yは所得(GNP)、Y*は外国の所得、iは金利、i*は外国の金利、eは現在の円レート(円建ての名目の数字)で、為替制度は変動相場制である。
 (1)式は、財貨サービスの需給に関する均衡式であり、国内の貯蓄・投資バランスが経常収支に等しいことを示している。通常これは、IS曲線と呼ばれる。(2)式は、貨幣供給(外生変数)と貨幣需要とが一致するという貨幣需給の均衡式であり、LM曲線と呼ばれる。(3)式は、最も単純なケースで外国の金利と国内の金利が等しくなることを示している。一般的には予想為替レートを考慮しなくてはならないが、結論は同じなので省略する。なお、物価水準は一定で、経済は完全雇用状態にはないことを前提にしている。
以上のモデルを円レートeと所得yの関係として描くと以下のようになる。

通常のケインズ・モデルではiとyの関係として描かれIS曲線は右下がりとなるが、ここではIS曲線は右上がりとなる。これは、財貨サービス市場では、yが増加するとSが増加し、Xは減少するので、他を一定とすれば円レートが円安化(eの上昇)してXが増加することによって均衡が回復されるからである。一方、貨幣市場の均衡にはeが含まれないため、LM曲線は与えられたマネーサプライMの水準に対応するy=y'のところで垂直な直線として表わされる。
  次に、財政支出やマネーサプライが外生的に変化したとき、どのような効果が生じるだろうか。


財政支出の増加はIが増加すると考えればよく、その結果IS曲線が右にシフトする。他方LM曲線は変化しないので、均衡点はQからQ'に移動し、円レートが円高化(eo→e#)するだけで所得yはy'の水準で変化しない。これは、財政支出が増加するとiに上昇プレシャーがかかるが、iが上昇しようとすると短期資本が流入して円高となるからである。
  一方貨幣供給が増加すると、LM曲線が右にシフトして(IS曲線は動かない)、均衡点はQからQ"に移動し、円レートが円安化(eo→e+)するとともに所得(GNP)が増加(y'→y")する。貨幣供給の増加は、短期資本の流出を生み円安となり、輸出が増加、輸入が減少して経常収支が黒字化するとともに、国内生産が拡大するからである。
  以上のマンデル・フレミング・モデルから得られる結論は、「変動相場制の下では、為替レートが変化するので、景気対策としての財政政策は無効となるが、金融政策はより有効となる。」というものである。先進各国は、基本的にこの理論に基づいて経済政策運営を行っているように思えるが、日本だけが例外で金融政策が不足しているため、いつまでもデフレにあえいでいる。政治家が、この理論を全く理解していないからである。
 現状、各国が金利を上げ出して本来なら円安になるはずなのに逆に円高が進んでいる。これは、一体なぜなのか。それは、市場が復興のための財政出動を織り込み出し、他方で貨幣供給がそれほど増加しないだろうと読んでいるからだ。放射能に電力不足、それに政治家の無知による円高が重なれば、企業に「どうぞ海外に出ていって下さい。」と言っているようなものではないか。
 
6  そこで今一度、復興財源について検討してみよう。
  まず菅政権、すなわち日銀・財務省マフィアが考えている「増税シナリオ」はどういう効果を日本経済にもたらすだろうか。 
  増税のうち、消費税と所得税の増税は個人の可処分所得を減らす効果がある。大震災と放射能、電力不足で企業はリストラに走らざるを得ず、簡単に給料を上げようとはしないだろう。むしろ企業は海外進出を考えるので、所得環境はより厳しいものになるだろう。そういうときに増税すれば、消費者は一層財布の紐を締めるだけだ。すでに冷え込んでいた消費者マインドが一層落ち込むだけではないか。復興需要で所得が上がるから景気も良くなるという小野善康氏のような意見もあるが、小野氏の議論は実証された試しがなく、金融や為替も無視しているので到底説得力があるとは思えない。
  法人税の増税は,それでなくても海外に逃げ出そうかと考えている企業に引導を渡すようなものである。放射能、電力不足、円高が重なって投資マインドも冷え込んでいる企業に増税して本当に大丈夫なのか。
  どのように考えても、今日の状況で増税するのは的を外れている。増税による消費と投資マインドの一層の悪化で名目GDPは一段と落ち込み、返って税収は減ってしまうのではないか。財政再建どころか財政悪化を生み、将来の国民負担をより大きくしてしまうのではないか。
  また、この「増税シナリオ」は当初、国債の市中発行を前提としている。これは、金利の上昇要因であり、円高要因である。すでに円高が進んでいるのは、市場がこのことを織り込み始めているからである。これまた、景気と財政の悪化要因であり、どうしてこんなマイナスの政策ばかり考えるのだろうか。                          
  
7  このマイナスばかりの「増税シナリオ」に対して、プラスの効果ばかりを持つのが、私の「日銀国債引き受け」である。
  まず、異例の政策であることから、人々の期待感を一変できる。つまり根深い「デフレ期待」を一気に「インフレ期待」に転換できるのである。日本経済が上手くいかないのは、「デフレ期待」が蔓延しているからであり、これが緩やかな「インフレ期待」に変われば、全てが上手く回転し出すのである。なお、ハイパーインフレの恐れを強調する向きもあるので、その心配がないように日銀に「安定物価(インフレ)目標政策」を義務付けることにすればよい。これに関連して、白川日銀総裁が「日銀引き受け」に反対する理由として、「当初は上手くいっても、いずれは激しいインフレになるからだ。」と説明しているのは信じられないことだ。なぜなら、彼は「自分には、インフレをコントロールする能力はありません。」と言っているに他ならないからだ。そんな無能な日銀総裁には、早く辞めてもらうことが国益にかなうことだ。米国のバーナンキFRB議長が、「自分達には、インフレをコントロールする十分な能力を有している。」と繰り返し述べていることと比べると、なんと情けないことよ。
  第二に、国民の負担は一切生じない。つまりフリーランチである。通常こんなことはあり得ない。貨幣供給を増加させれば、インフレになるからである。ところが、長年の日銀のデフレ志向の金融政策の結果、日本ではデフレ期待が定着し、貨幣の拡張政策が直ぐには将来のインフレ期待を生まない状況にあるのである。国債負担を減らすには絶好の条件がそろっているのだ。これを活用しない手はないはずだ。なお、上記の「安定物価(インフレ)目標政策」さえ導入しておけば、これが行き過ぎる心配をする必要もない。
  第三に、金利は下降、円安が進み、日本経済の名目成長率は上昇する。その結果、税収は増加することとなり、財政は健全化の道を歩み始めることができるようになる。
  以上のように、いかなる観点からみても復興財源としては、「日銀国債引き受け」が現状、最適と考える。ただ、「日銀国債引き受け」というだけで抵抗感を感じる人が多いという指摘を随分受けた。そこで妥協策として、「まず復興債(国債)を市中で発行し、これを全額日銀が買いオペで買い上げる。」という案も受け入れることとしたいと考えている。米国FRBが大規模に実施し、成果を上げているので、一般的に受け入れ易いのかもしれない。経済的な効果は同じだが、この場合、日銀がお金を出すとしても後追い的に出すので「期待感」に与える効果が弱くなるという欠点があるが、それでも、これなら多くの関係者の合意が得られるというなら、増税よりは余程マシなので、受け入れることはやぶさかでない。どちらにしても、政治家の無知で日本経済を破滅させるような事態だけはなんとしても避けたいものである。
 
http://www.yamamotokozo.com/news/20110825_1.htm
 

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コメント
 
01. 2011年9月08日 16:34:45: s1fYEMEIuY
>上記の「安定物価(インフレ)目標政策」さえ導入しておけば、
>これが行き過ぎる心配をする必要もない。
 通貨増加は、物価の安定性政策と伴って実施すれば経済が発展する。
 勿論、これを乗じて物価高にして、ハイパーインフレーを起こそうとするならば
国家そのものが破壊するでしょう。そういう輩を監視するのも政府の仕事であるが。主に投機で値を吊り上げようと考えているだけの話だから。
 普通に物価が安定すれば、通貨供給は、国民の可処所得増大となり、低所得の人達のよい意味で投資が出来る環境となる。それは、正しい意味で経済規模の拡大と繋がるでしょう。勿論世界貧民対策にも繋がるでしょう。
 物価安定と通貨供給はセットで行う必要がある。その意味で上の政策が正しいと感じるが。通貨供給によって乗じて物価高にさせようとする事が邪道の道であるが。国民の可処所得増大が重要である。物価が安くなったから年金が安くするというのが邪道の道である。物価が安くなって年金が増ええれば、老人が正しい方向に経済投資が出来るでしょう。

02. 2011年9月08日 16:39:33: MgQtwWKHkU
小沢一郎氏の経済政策の論調も山本氏とほぼ同じ。
『デフレ克服最優先、日銀法改正やインフレターゲットも視野=小沢氏』
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17222120100914
「景気対策とデフレ克服に最優先で取り組まなければならない」
「日銀法改正など制度改革やインフレターゲット政策も視野に入れ、
金融政策と財政政策の両面からあらゆる手段を尽くす」

民主党ではリフレ派の筆頭、馬淵氏、小沢鋭仁氏、原口氏等々
他に亀井氏、田中氏、舛添氏ら各党代表
自民党では中川秀氏、みんなの党の渡辺氏も同じ主張をしている。
リフレ派が本気で公開討論を挑めば野田らの増税派に
勝ち目はまったくない。

マスコミが山本氏のようなマクロ経済政策スキームを
一切報道しようとしないのは、ある意味当然。
リフレ派 VS 増税派の対立図式が鮮明になれば
増税派は理論的に何ひとつ反論できず、
赤ん坊の手を捻るように潰されるのは目に見えているからだ。


03. 2011年9月08日 16:56:38: MgQtwWKHkU
ついでに書いておくと、日銀の国債直接引き受けを想定する場合に、
ネックになるのは財政法第5条だが、条文において
「特別の事由がある場合」を例外としており、東北大震災と福島原発事故は
十分該当するはずだ。これだけの天災と事故を「特別の事由」としないなら
何が「特別の事由」に該当するのか分からなくなる。

「財政法第5条」
第5条 すべて,公債の発行については,日本銀行については,
日本銀行にこれを引き受けさせ,また,借入金の借入については,
日本銀行からこれを借り入れてはならない。
但し,特別の事由がある場合において,国会の議決を経た金額の範囲内では,
この限りではない。(引用終わり)

また仮に、日銀の国債直接引き受けが駄目だとしても、
日銀はすでに毎月、1.8兆程度は財務省から国債を引き受けて
いるのであるから、引受額を3.6兆に引き上げればいい。
法的に何の問題も無いし、誰も何も困らない。
困るとしたら日銀券ルールという内規を死守しようとしている
チンカスみたいな日銀職員だけだ。


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