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厳しすぎるファール判定と「野田三原則」
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投稿者 sci 日時 2011 年 10 月 01 日 12:04:03: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110929/222889/?ST=print
厳しすぎるファール判定と「野田三原則」

2011年9月30日 金曜日
小田嶋 隆


 「余計なことは言わない」「派手なことをしない」「突出しない」
 何の三原則だろう。
 農家の嫁の心得? あるいはエロ本屋のオヤジの自戒だろうか。
 答えは9月26日付の毎日新聞の朝刊に書いてある。

 上に挙げた3つの文言は、野田首相が政権運営の心構えとして側近議員らに指示しているもので、名付けて「安全運転三原則」という施政方針なのだそうだ。

 記事は、《与野党や官僚に気配りして「安全運転」の政権運営を進める首相は、次期通常国会に提出する12年度予算案や、悲願の税制関連法案の早期成立を念頭に、与野党協議の成功を最優先。来年3月までの半年間は、波風を立てず融和に努める構えのようだ。》と、「安全運転三原則」が、もっぱら国会運営のための対策である旨を強調している。

 なるほど。
 本当だろうか。
 もし仮に、首相が上記の「三原則」を指示しているのだとしたら、野田さんの真意はむしろメディア対策にあるはずだ、と、そう受け止めるのが自然なんではなかろうか。

 というのも、政権発足直後に鉢呂前経産相が「死の町&放射能」発言で辞職したことを考えれば、首相の危機対応は対メディアのリアクションとしてごく自然ななりゆきだからだ。

 ポイントは二つある。
 一つ目は、野田さんの「三原則」が、メディア対策に限定した注意事項に過ぎないのかどうかだ。これが、単にマスコミ対策であるのか、より包括的な意味を含んだ政権運営のための内閣の行動原則であるのかによって、話はだいぶ違ってくる。

 二つ目の論点は、記事を書いた記者が、「三原則」の意図を本当に「与野党&対官僚対策」であるというふうに評価していたのかどうかだ。記者は、もしかすると、野田さんの反応が、実のところメディアの揚げ足取りへのリアクションであることを感知しつつトボけていたのかもしれない。だとすると、この記事は二重の意味で底意地の悪いテキストだということになる。

 野田さんは全力で仕事をする気持ちを失っているのだろうか。そして、記者の皆さんは、首相の消極姿勢が自分たちの小姑報道のせいだというふうには、まったく考えていないのだろうか。

 答えは、現段階ではわからない。
 どっちにしても淋しい話だ。私は記事を読んで、なんだか白けた気持ちになった。
 真相は行間に漂うばかり。何もわからない。

 「いかにも日本的な」という論評の仕方を、私はいかにも日本的な逃げの打ち方であるというふうに考えている。だから、この論法は本来なら採用したくないのだが、本件のありようがいかにも日本的な事なかれ主義の様相を呈している以上、仕方がない。三原則は、いかにも日本的な解決である、と、そうまとめないと、この話はどうしても着地できない。なんとも日本的な事態だ。

 ついでに申せば、本件をめぐる報道には、いかにも日本的な横並び志向がうかがえる。また、その論評には、いかにも日本的な責任回避の姿勢が見え隠れしている。ということは、この話題は、背景から何からをひっくるめて、一から十まで、どこまでも日本的な、徹頭徹尾翻訳不能な、ヌエの如きエピソードなのである。

 ひとつ、思い出した歌がある。以下に引用する。ちょっと長いが、ご容赦願いたい。

 「ひとまず人妻」
1.  にっこり笑ってお茶いれて にっこり笑ってコピーをとって
男の人たちはみんな 優しくしてくれるけど
わかってるつもりよ 女はどうせ消耗品
消しゴムみたいに 忘れられるわ
2.  言葉少なに控えめに 笑う口には手を添えてれば
男の人たちはみんな いいコだと言ってくれるけど
わかってるつもりよ 女はどうせ水商売
お化粧落とせば 魔法はとけるの
※  この秋に結婚するわ イカさない彼だけれど
ほかにどうしようもないから
ひとまず人妻 とりあえず人妻
ひとまず人妻 とりあえず人妻
3.  シナを作れば二割高 ヒザを崩せば五割は高い
ボーイフレンドの5人や6人は どうにでもなるけど
わかってるつもりよ 女はどうせチョコレート
銀紙むいたら 半額以下なの
※  この秋に結婚するわ 月並みな男だけれど
オールド・ミスだけは 避けたいから
ひとまず人妻 とりあえず人妻
ひとまず人妻 とりあえず人妻

※ (以下、※をリピートしてフェイドアウト)

 ごらんの通り、世をスネたOLさんの自分語りを題材にした、ちょっぴりセンチメンタルな歌だ。作詞者はオダジマ。まだ20代の頃、当時所属していたアマチュアバンドのために書いたものだ。だから、大丈夫、ジャスラックは手を出せない。引っ込んでろよ、シャイロック。オレの歌をオレが引用しているだけなんだから。

 歌詞の中で、主人公の女性は、世の中をあきらめて、斜に構えている。
 で、結果として
 「言葉少なに控えめに、笑う口には手を添えてれば」
 と、野田三原則にそっくりな心構えを開陳している。

 背景にあるのは、「女はどうせ水商売」ならびに「女はどうせ消耗品」という、蓮っ葉な諦念だ。
 彼女は、自分の仕事が正当に評価されず、その存在が一個の人格としてマトモに扱われていない現状を冷ややかに観察している。で、その不当な職業生活からの決別として、「結婚」の道を選ぶ旨を宣言している。同時に彼女は、自分が逃げ込む先である「人妻」という立場もまた、暫定的(ひとまず)な立ち位置であるに過ぎないことを暗示してもいる。イカさない彼との月並みな生活。それが女の幸せだというのか?

 どうにもひがみっぽくて後ろ向きな歌だと思う人もあるだろう。笑えねえぞ、と、当時からそういう評判はあった。いや、笑っていただかなくてもけっこう。泣いてもらう必要もない。狙いはうんざりさせるところにある。

 ぜひご理解いただきたいのは、この歌が作られた当時の1980年代の日本が、本当にどうしようもない男性社会だったということだ。
 自分が書いた歌の解説のために行数を割くのは、実際のところ、少しばかり心外なのだが、仕方がない。歌はそれほど古くなってしまっている。解説抜きでは真意が伝わらない。だから老婆心で解説する。辛抱して読んでください。

 いわゆる「男女雇用機会均等法」が施行されたのが1986年の4月で、それ以前の日本では、おおまかに言って、女子の就職は「腰掛け」ないしは「男性社員の花嫁候補」と考えられていた。

 当然、女性の総合職なんてものは存在していなかったし、高齢の女性社員にはそもそも居場所が無かった。それゆえ結婚した女子社員に対しての退社勧告のようなことも、ごく普通に行われていたのである。
 信じられない人もいるだろうが、これは本当の話なのだ。

 事実、私の妹が就職した某一流商社では、新入女子社員を対象とした父母会(!)において、「結婚したら原則として退職するものとお考えください」という旨がはっきりと言い渡されている。この件については資料も残っている。それほど、昭和の日本の企業社会は前近代的だったのである。

 四大卒(←当時は四年制大学を卒業した女性に対して、半ば差別用的なニュアンスで「四大卒」という言葉が使われていた)でとある地方銀行に就職した女性が自らの境涯を嘆く場面に遭遇したことがある。

「あたしが毎日残業で何をやってるかわかる?」
「さあ」
「盆踊りよ、盆踊り」
「なんで?」
「商店街の夏祭りに各銀行の支店が踊りのチームを出すわけ」
「楽しそうだね」
「どこが楽しいの? 仕事なのよこれは。あくまでも商店街向けのサービスとしての」
「ふーん」

「で、信用金庫に負けるなってことで、毎日女子社員だけが居残りで踊りの練習をしてるのよ。毎晩10時過ぎまで」
「…残業手当は出るんだろ?」
「出るわけないじゃない。何バカなこと言ってるの? だって、建前はあくまでも自由参加のレクリエーションということになってるのよ」
「拒否すればいいじゃん」
「あんたって、本当におめでたい男ね。っていうかバカなの?」

 彼女は本当に、心の底から怒っていた。自分が大学で勉強したのは何のためだったのか。いったいこんな職場に、何の将来があるのか。自分がノートを貸してやったデキの悪い同級の男子の太平楽なアドバイスを聞きながら、どうして自分はその男を殴らずに我慢していないといけないのか。
「落ち着けよ」
「どうして落ち着かなきゃいけないわけ? あんたも揃いの浴衣着て踊ってみればわかるわよ。見世物になるってことがどんな気分かってことが」

 で、せめてものなぐさめに作ったのがこの歌だったわけだ。
 女三界に家なし。ひとまずひとづま。ひどい時代だった。

 細かいことを言えば、この歌には、「水商売」「オールド・ミス」という二つの放送自粛用語が含まれている。だから、このままではレコーディングできない。仮にレコーディングしても放送局はオンエアしたがらないだろう。私としてはそういうことをしている連中に「表現の自由」だなどという口幅ったい述語を使ってほしくはないわけなのだが、オンエアも何も、「ひとまず人妻」は、誕生以来、既に三〇年、私の部屋の片隅で眠っていたのである。私は何を怒っているのだろう。ちくしょう。

 とにかく、だ。
 いかなへなちょこ作詞家のオダジマとて、昭和のOLさんの無力感と、現代の政治家の韜晦を一緒くたに弁護するわけには参らぬのである。

 お茶くみ扱いにうんざりしたOLさんがやさぐれるみたいな調子で、政治家にスネられたのではたまらない。
 相手は、国民のリーダーだ。
 その21世紀の現代に生きる内閣総理大臣閣下が、昭和のひがみっぽい女子社員みたいな調子で世をはかなんでいて良いはずがないではないか。

 「余計なことは言わない」「派手なことをしない」「突出しない」という三原則は、普通に考えれば、官僚(それも下っ端役人)の処世だ。在職中はとにかく問題を起こさず、無事に任期をまっとうすることだけを念願するその心根を、わたくしども民間の人間は「役人根性」と呼んで蔑んできた。「遅れず休まず働かず」というお役所仕事を揶揄する標語もあった。意味するところは同じだ。要するに、成果をあげることよりも失敗しないことを重んじる心性を、不安定な景気に翻弄されているわれら民間の人間は、心から軽蔑しているのである。

 実は、日本のサッカーについて、幾人かの外国人監督が似たことを言っている。「日本人選手にはリスクを冒すことを恐れる傾向がある。この傾向を放置していると、日本のサッカーは世界標準に追随できなくなってしまう」と、トルシエをはじめとして、オシム、アルディレス、アスカルゴルタなどなど、日本で指揮を採った経験を持つ世界の錚々たる指導者たちが異口同音に同じことを指摘しているのだ。

 たしかに、事なかれ主義は、わが国のサッカーにおける数十年来の課題であった。
 サッカー選手のリスク回避傾向は、この数年か、若手選手の海外進出の増加にともなって、克服されつつあるようにも見える。が、いまに至るも、ここ一番ではリスクを恐れるプレーが顔を出す。局面が緊張すればするだけ、うちの国の選手たちは、リスクを恐れるプレーに逃げ込むのだ。国民性とは思いたくない。解決できる課題であると、ぜひそういう方向で考えて、対策を考えなければならない。

 原因のひとつは、審判の判定にあると言われている。
 日本のプロサッカーリーグであるJリーグのファール基準が厳しすぎるために、選手が思い切ったプレーをできないというのだ。

 2004年から2005年のシーズン、応援している浦和レッズに、アルパイ・オザランという名前のトルコ出身の大柄なディフェンダーがいた。熱い選手だった。私は大好きだった。

 2004年シーズンの対横浜Fマリノス戦でのことだ。先発出場したアルパイは、登場するや、最初のプレーでいきなり鮮やかなスライディングタックルを決めた。
 本人は綺麗にボールを奪って大得意だった。

 が、判定はファール。
 アルパイは唖然としていた。
「えっ、オレがプレーしてきたプレミアリーグじゃ、こんなプレーは朝のあいさつみたいなもんだぞ」
 と、彼がそう言っていたのかどうかはわからないが、とにかくアルパイは猛烈に抗議した。

 で、その抗議に対して審判は、イエローカードを提示したのである。
 以来、アルパイは、少しずつやる気を喪失して行った。
 鹿島アントラーズの岩政選手の首のあたりに手を伸ばしたプレーにレッドカードを出された時も同じだ。

 アルパイは、うんざりしていた。
「こんな判定じゃディフェンダーなんかできない」
 というわけで、彼は2005年シーズンの半ばで、優勝を待つことなく、退団したのである。惜しい選手だった。

 何を言いたいのか説明する。
 日本のサッカーが「お嬢さんゲーム」「ピンボールサッカー」「ボール回し至上主義」と揶揄される裏には、強い当たりやハードなタックルを許さない判定が影響している。これはおそらく間違いない事実だ。
 無論、選手の安全を守るためには、悪質なファールを許してはならない。その意味で、ファールの判定は必要だ。

 とはいえ、あまりにも厳しすぎる判定基準はディフェンダーを萎縮させる。
 逆に、ファールに守られてプレーしている前線の選手からたくましさを奪ってしまう。
 ことほどさように、判定は、バカにならないのである。

 野田内閣の安全運転三原則も、メディアのファール判定があまりに厳しすぎることに対する反応と考えれば、ある程度は説明がつく。

 私が恐れるのは、野田政権の「安全運転」が、単なる慎重さにとどまらず、本当の無気力に結びついてしまうことだ。

 アルパイは、無気力になっていた。
「審判の連中は、オレにピッチで花でも摘んでいてほしいのか?」
 てな調子で、2005年シーズンのアルパイは、芝の上をのろのろ歩くようになっていた。校則の厳しすぎる学校の生徒がふてくされた態度で登校してくるみたいにして、だ。
 野田さんには、そんなふうになってほしくない。

 どじょうが金魚の真似をしても仕方がないことはよくわかる。
 でも、メダカの真似をするのはいくらなんでもなさけない。
 どじょうが目指すなら、とりあえずはなまずだ。ひとまずなまず。世間の初期微動をいちはやく察知して、適切に行動してくれるとありがたい。

(文・イラスト/小田嶋 隆)  

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コメント
 
01. 2011年10月01日 13:39:07: oXjyYrHR4I
 国民に夢を与えず、ひたすら官僚との調和だけを優先する国家のリーダーには存在する価値がない。己の給料が何処から出ているのか全く考えもせず、大増税路線まっしぐらで、国家が滅びようが、外国勢力に支配されようがお構い無し!民主党議員の素姓ほど如何わしいものはない。
現在の民主党国会議員には、大震災と経済大不況から国民を助ける気がないし、能力もない。
小沢氏が本当に復権したいなら、新民主党を立ち上げるべし。

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