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マスコミでしばしば極論を展開する郷原氏の所論に対する一つの評価
http://news.livedoor.com/article/detail/5922989/
2011年10月08日15時37分 弁護士早川忠孝の一念発起・日々新たなり
検察官出身の弁護士にも色々なタイプがあるが、自分の故郷である検察庁に対して剥き出しの敵意を表明する人は少ない。自分のやってきた仕事に誇りと愛着を持っている人は、自分のかつての同僚や後輩達の仕事ぶりにも比較的同情的で、なるべく好意的に評価をするかあるいは強いて何も言わないようにするものだが、この人は珍しく多弁である。
郷原氏のことである。
かなり物は見えている人なので、黙って見過ごしておくと司法の世界に通じていない人はこの人の所論が法曹界の支持を得ている正論だと誤解されかねないので、あえて問題を提起しておく。
私は少なくとも賛同できない。石川被告はじめ小沢氏の元秘書に係る陸山会政治資金収支報告書不実記載・政治資金規正法違反事件が郷原氏の所論のように展開していくとは到底思われないからである。裁判批判や検察審査会制度批判、あるいは検察庁の在り方についての郷原氏の問題提起自体には傾聴に値するところが多いが、こと裁判の帰趨について郷原氏が言及していることは大方外れるだろうと見ている。
元々は理科系の出身のようだから、その発想は独創的なところがありそれなりに論理的であるが、些か決めつけが過ぎるようである。先日の小沢裁判の第１回公判期日で行われた検察官の冒頭陳述や弁護側の冒頭陳述に関して、ニコニコ放送で郷原氏は、検察側は弁護側の虚偽記載はないという主張を覆すことは出来ないだろうと述べた、と報道されている。
しかし、虚偽記載、不実記載の立証責任は元々検察側、指定弁護士側にあるので、これは物の考え方の順序が違っているのではなかろうか。小沢秘書裁判で既に有罪の執行猶予付き禁固刑判決が出ている事案なので、第三者である裁判所が虚偽記載、不実記載を認めるはずがない、認めるのがおかしいといくら言っても、裁判批判にはなっても裁判の帰趨を正しく読んでいることにはならない。
もしニコニコ放送の報道が正しいのなら、小沢裁判に対する批判のための批判ということになる。いくらなんでも裁判が始まったばかりの段階でそこまで決めつけるのは早過ぎる。
郷原氏は、小沢執行部時代の民主党や小沢氏の陣営側から直接間接に色々な相談を持ちかけられる立場におられたようだ。その所論から推測すると、第三者では通常入手し難い小沢氏側の様々な資料にも目を通されているようだ。こういう背景があることが分かると、郷原氏が極力、中立公正な第三者に立って冷静かつ客観的に小沢裁判を論評しているのだ、と言われても直ちには納得し難い。
郷原氏は、どちらかと言うと小沢弁護団の理論的支柱の一人のように見える。弁護士である以上、頼まれればそれなりのアドバイスをすることは結構なのだが、アドバイスをした以上は利害関係者の一人になる。利害関係者になった人は、如何にも公正中立な第三者の立場で論評しているのだなどと視聴者には思わせない方がいいと思うが、如何だろうか。
ニコニコ放送というのは小沢氏の単独インタビューなどを好んで報道するようで、私のように批判的に小沢氏の一連の行動を見ている人間にはお呼びがかからないが、郷原氏の所論はどうにも決めつけが過ぎる。
それにしても、小沢氏の弁護団の冒頭陳述で弁護人が、「小沢氏が石川秘書に４億円の現金を渡したが、借用書も受領書も作らなかった。『貸した』『借りた』という言葉も、意識もなかった。石川秘書がその４億円をどこに運び、どのように処理したかは知らなかった。石川秘書が４億円を土地購入に利用することは認識していたが、利用方法は石川秘書に一任していた。」と主張していたのは、如何にも苦しい。
陸山会のために４億円小沢氏が用立てて、これが現実に土地代金の支払いに充当された事実が確認されている以上、貸借の意識はなかったと言っても、これは通らない。まあ、精々が個人の金も政治団体の金も渾然一体となっていた、同じ財布なんだが名義が違っているだけだったに過ぎない、と言っているに等しい。
弁護人はさらに、「被告は陸山会に資金的余裕が出来次第、提供した４億円を戻してもらうとの認識はあったが、銀行から借り受けた４億円とは別に、４億円の貸借契約を締結したという認識はなかった。まして８億円という金額を陸山会に貸し付けたなどという認識はなかったし、戻してもらうべきお金が８億円であるなどと考えたこともなかった。」とも主張したようだが、これも同様に苦しい。
普通には考えられないことを滔々と延べなければならないというのは、この裁判が、虚偽記載の一点に関しては如何にきついか、という証拠である。
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