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「平成の開国」意味分かって言ってる?TPPとは「過激な日米FTA」にほかならない
http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/272.html
投稿者 taked4700 日時 2011 年 10 月 26 日 19:16:11: 9XFNe/BiX575U
 

かなり以前に書かれた記事ですが、阿修羅に投稿されていないようですので、紹介をさせていただきます。

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110203/218273/?P=1

「平成の開国」意味分かって言ってる?TPPとは「過激な日米FTA」にほかならない
三橋 貴明 2011年2月7日(月) 

 菅直人首相を始め、日本人の多くが勘違いしているように思える。ペリー提督率いるアメリカの「黒船」来航後に「開国」をしたのは、明治政府ではない。江戸幕府である。

 しかも、「開国」の象徴たる日米修好通商条約には「治外法権」や日本の関税自主権喪失など、我が国にとって不平等な条項が含まれていた。江戸幕府を倒した明治政府は、この不平等条約を改訂する為に、大変な苦労を強いられることになったのである。

関税自主権を喪失した国に落ちぶれる


 ところで、治外法権とは「外国人の日本国内における犯罪を、日本の法律で裁けない」という意味である。

 何ということであろうかっ! 2010年9月の尖閣諸島沖合において発生した、中国漁船衝突事件の漁船船長を、民主党政権が超法規的に不起訴処分とした「あれ」こそが、まさしく治外法権である。

 さらに、民主党政権はTPPにより、「環太平洋諸国」に対して「関税自主権の放棄」を実施するわけだ。菅内閣が推進するTPPは、中国人に対する治外法権と合わせ、まさしく「平成の開国」以外の何物でもない。日本は江戸末期同様に、外国人の治外法権を認め、関税自主権を喪失した国に落ちぶれるわけである。

 さて、菅首相は1月24日の施政方針演説において、TPPを「平成の開国」と位置づけ、国会における議論を呼びかけた。さらに、首相は1月29日、世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)において、日本のTPP交渉参加に関する結論を、6月までに出すと断言したのだ。日本が早急にTPPを検討することが、事実上「国際公約化」されてしまったわけである。

「あの」米金融サービスを受け入れますか

 このTPPは、日本ではあたかも「農業問題」のようなとらえられ方をしている。だが、これは明確な間違いだ。何しろ、TPPとは、

「2015年までに農産物、工業製品、サービスなど、すべての商品について、例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」

 という、「過激」と表現しても構わないほどに極端な「貿易・サービスの自由化」なのである。通常のFTAであれば、製品種別や自由化を達成するまでの期間について「条件交渉」が行われる。ところが、TPPの場合はそれがないのだ。何しろ「2015年」までに、「例外なしに」関税や各種の貿易障壁を撤廃しなければならないのである。

 ちなみに、上記の「サービスなど、すべての商品」の中には、金融・投資サービスや法律サービス、医療サービス、さらには「政府の調達」までもが含まれている。農産物の関税撤廃など、それこそTPPの対象商品の一部に過ぎない。

 この種の情報が日本国民には全く知らされず、「平成の開国!」「バスに乗り遅れるな!」など、キャッチフレーズ先行、スローガン先行で話が進んでいる現状に、筆者は大変な危惧を覚える。何しろ、TPPに日本が加盟することで、リーマン・ショックを引き起こした「あの」アメリカの金融サービス、あるいは同国を訴訟社会化した「あの」法律サービスを、我が国は受け入れなければならないのである。

 さらに、公共投資などの官需や、自衛隊の軍需品調達においてさえ、アメリカ企業を「内国民待遇」しなければならない可能性があるわけであるから、「ちょっと待ってくれよ!」と言いたくなるのだ。ちなみに、内国民待遇とは、自国民と同様の権利を、相手国の国民及び企業に対し保障することである。すなわち、アメリカ企業であっても、日本企業同様に扱うことを「保障」しなければならないわけだ。

GDPシェアが日米両国で9割を超える

 TPPとは決して日本の「農業の構造問題」などではない。もちろん、筆者にしても「日本の農業に何ら問題はない!」などと主張する気は全くない。日本の農業が制度上、あるいは産業構造上、様々な問題を抱えているのは確かだ。それにしても、それらの問題は、あくまで日本の「国内問題」である。日本の農業の構造問題は、日本国民が自らの手で、粛々と解決しなければならないのだ。

 そういう意味で、
「日本の農業の構造問題を解決するには、TPPなどの外圧を利用するしかない」
などと、TPPと農業の構造問題を絡める言説には、怒りを禁じえない。

 日本国民の所得水準向上や国富増大に貢献するのであれば、TPPにせよ農業の構造改革にせよ、淡々と進めればいいだけの話だ。逆に日本の国益に貢献しないのであれば、やめるべきである。少なくとも「農業の構造問題解決のためのTPP」などという考え方は、風邪をこじらせた患者に全身手術を施すようなもので、まさに異様極まりない。

 そもそも筆者は、TPPのような「外圧」がなければ農業の構造問題一つ解決できないほど、日本国民が愚者であるとは考えていない。逆に、本当にそうであるならばなおさら、日本国民自らの手で改善しなければならない。

 いずれにせよ、農業問題はTPPにより「自由化」される産業の、ごくごく一部に過ぎないのである。それにも関わらず、政治家やマスコミの論説において、農業を「悪者化」「抵抗勢力化」し、TPPを「農業の構造改革問題」であるかのごとく印象付ける行為、すなわち「TPP問題の矮小化」が盛んに行われている。

 さらには、日本がTPPに参加しなければ「世界の孤児になる」などと発言する人がいるわけであるから、驚愕すらさせられる。何しろ、TPPは世界でも何でもないのだ。

 TPPとは、「アメリカ」なのである。

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 TPPに参加している国々、及び参加を検討している国々のGDPを比較すると、アメリカ1国で66.7%を占める。さらに、日本のGDPの割合が23.7%である。何と日米両国で、TPP諸国のGDP合計の90.4%を占めるわけだ。

 GDPシェアが日米両国で9割を超える現実がありながら、「TPPに参加しなければ世界の孤児になる」などと考える人がいるわけだから、恐れ入る。「世界」について、随分と狭くお考えのようだ。

 現実には、TPPとは「過激な日米FTA」に過ぎない。通常のFTAであれば、締結する両国が製品やサービスの種別、それに自由化(関税撤廃など)までの期間について、互いの国益に基づき条件を詰めるプロセスを踏むものである。ところが、TPPにはそれがない。

 また、TPP推進派の中には、
「TPPに参加することで、アジアの活力を取り込む」
などと意味不明なことを言う人も多い。

 図1-1の通り、TPPに参加、あるいは参加を検討している「アジアの国々」とは、日本を除くとシンガポール、マレーシア、ベトナム、そしてブルネイしかない。この4カ国のGDPを合計しても、わずかに4825億ドルに過ぎないのだ。TPP諸国のGDP全体に占める割合は、2.4%だ(注:ケタを間違っているわけではない)。TPPは「世界」でもなければ、「アジア」でもないのである。

 例えば、中国や韓国もTPPに参加するというのであれば、まだしも理解できる。しかし、韓国はTPPではなく、締結に際し条件交渉が可能な米韓FTAという道を選んだ。そして、中国に至っては、TPPなど「完全に無視」しているのが現状である。

 なぜ、中国や韓国がTPP批准を検討しようとしないのか。それは単純に、TPPに加盟することが、自国の利益になるとは考えていないためである。

昨年秋のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)において、まさに降って沸いたように日本で話が始まったTPPは、本連載で明らかにしていくように、内容的に様々な問題を含んでいる。冗談抜きに、TPPに加盟した結果、日本の「国の形」が変えられてしまう可能性すらあるのである。

 それにも関わらず、菅政権が「平成の開国」などと、スローガン優先で話を進めていることには、異様さを感じざるを得ない。と言うよりも、菅首相自らが、TPPについてきちんと理解をしているのかどうか、疑問符をつけざるを得ないのだ。

平均関税率は既にアメリカよりも低い

 1月28日の通常国会の場において、みんなの党の川田龍平議員が「TPPに参加すると医療分野における市場開放や自由競争を迫られる」という懸念に関する質問をした。それに対し、首相は「アジア太平洋地域が自由な貿易圏に発展していくことが重要だ」などと、「言語明瞭、意味不明」な観念論でしか回答することができなかった。あえて率直に書くが、支持率低迷に悩む菅首相が、単に「フレーズの響きが格好いい」などというくだらない理由から、「平成の開国」「平成の開国」と繰り返しているに過ぎないのではないか。

 先述の通り、TPPは確かに「平成の開国」だ。しかし、それは民主党首脳部が思い描いている、「世界に日本を開く」といった意味における開国ではない。まさしく、1858年にアメリカとの間で結ばれた不平等条約、すなわち日米修好通称条約締結に極めて近い「開国」なのである。

 菅政権は尖閣問題で中国人船長に「治外法権」を認め、TPPでアメリカ(及び、ほかのTPP諸国)に対し「関税自主権の放棄」を実施しようとしている。挙げ句の果てに、登場したスローガンが「平成の開国」であるわけだから、とんだブラックジョークである。

 そもそも、政治の責任者が「開国する」「平成の開国だ」などと無責任に繰り返す以前に、現在の日本は既に十二分に「開国」しているのである。それは、日米の平均関税率を比較すると、一目瞭然だ。

【図1-2 日米に平均関税率】  日本 アメリカ
農産品 21.0% 4.7%
鉱工業品(非農産品) 2.5 3.3
電気機器 0.2 1.7
 (うちテレビ) 0 0〜5
輸送機器 0 3.0
 (うち乗用車) 0 2.5
化学品 2.2 2.8
繊維製品 5.5 8.0
非電気製品 0 1.2


出所:JETRO「環太平洋戦略経済連携協定(TPP)の概要」

 図1-2の通り、日本の平均関税率は、農産品という唯一の例外を除き、ほとんどの項目においてアメリカよりも低くなっている。何しろ、アメリカは工業製品について関税を維持しているが、日本はすでに「関税率ゼロ」なのである。この状況にありながら、「日本は開国する」などと、あたかも日本が「開国していない」かのごとき言説を繰り返す人々は、率直に言って現実を見ていないか、あるいは何らかのおかしな意図があるとしか考えられない。

 やたら問題視される農産品に関しても、日本の自給率は生産額ベースで70%(2009年。以下同)、カロリーベースでは40%に過ぎない。それに対し、アメリカの生産額ベース自給率は124%である。自給率が低いということは、それだけ「海外から農産物を輸入をしている」ことを意味しているわけだ。

 さらに、重量ベースで見た日本の主要穀物自給率は58%、穀物自給率に至っては、わずかに26%に過ぎないのだ。穀物という、極めて重要な農産物に限ると、日本は重量ベースで7割以上を「輸入」に頼っているのである。この状況で「日本の農業市場は閉ざされている」などと言い張る人は、「数字」の読み方が分からないと断言されても仕方がないと考える。日本の農業市場は、むしろ充分以上に「開国」されているというのが真実だ。

 そもそも、いまだTPP加盟の是非を決断していない状況で、一国の首相が、
「日本は開国していない。平成の開国を実現する」
などと発言する真意が理解できない。

外交交渉上も素人丸出しのやり方

 何しろ、TPPの詳細に関する交渉は、これから始まるわけである。そのような段階で、国家の政治責任者が「我が国は開国していない」などと発言した日には、諸外国がかさにかかって、様々な条件を突きつけてくるのは確実だ。外交交渉上、極めてずさんな(というか、素人的な)やり方である。

 この種の国際交渉の場においては、「我々は十分にやっている。十分にやっていない貴国が譲歩しろ」というスタイルで望むのが「国際常識」である。さもなければ、その国は他国から寄ってたかって、食い物にされるだけの話なのだ。

 現実の世界は、民主党首脳部や国内マスコミが思い描いているようなユートピアでも何でもない。各国が自国の国益を貫くために、様々な手段を駆使してくるのが当たり前なのである。その状況で「我が国は開国していない」などと首相自ら表明した日には、「どうぞ諸外国の皆さん。我が国から譲歩を引き出して下さい」と宣言しているようなものだ。

 菅直人首相の「平成の開国」発言は、そもそも「江戸末期の開国の歴史」を理解していないとしか思えない上に、外交交渉上も素人丸出しのやり方である。まあ、民主党政権はいまだに「仮免許中」なのだと言われれば、それまでなのかもしれないが。

 いずれにしても、江戸幕府の後を継いだ明治政府は、日米修好通商条約に代表される不平等条約を改訂するために、大変な苦労を長年に渡り重ねた。条約改訂を成し遂げるために、複数の戦争を遂行し、大勢の日本国民の生命を犠牲にした。

 もしや菅直人首相は、我々の子孫に対し、明治政府や当時の日本国民同様の苦労を強いたいのであろうか。  

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コメント
 
01. taked4700 2011年10月26日 19:24:45: 9XFNe/BiX575U : IanDpFU7gs
報じられない米国の「輸出倍増計画」
「雇用!雇用!」と叫ぶオバマ大統領にとって日本は格好の標的
三橋 貴明  2011年2月14日(月)

 先月(2011年1月)の26日に、アメリカのオバマ大統領は、経済、教育、財政、貿易、インフラ再構築、さらには外交、対テロ戦争、安全保障と、多岐にわたる一般教書演説を行った。

 全文を読んだ上で(※全文の日本語訳を報道した国内メディアはない)、筆者が最初に受けた印象は、「内向きになったアメリカ」であった。何しろ、安全保障やテロ戦争に関する部分を除くと、オバマ大統領はほとんどアメリカ人の雇用改善のことしか語っていない。

「衰退した建設業界に数千もの仕事を与える」


 オバマ大統領の一般教書演説の全文について、日本語訳を報じた報道機関はないが、英語版全文は、ウォールストリートジャーナル日本語版で読むことができる。読者も是非、ご自身の目で確認してみて欲しい。(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版『オバマ米大統領の2011年一般教書演説原稿(英文)』)

 筆者が最も「典型的」と感じた箇所は、以下の部分だ。

英文:
Over the last two years, we have begun rebuilding for the 21st century, a project that has meant thousands of good jobs for the hard-hit construction industry. Tonight, I'm proposing that we redouble these efforts.
We will put more Americans to work repairing crumbling roads and bridges. We will make sure this is fully paid for, attract private investment, and pick projects based on what's best for the economy, not politicians.

日本語訳:
 過去2年間、我々は21世紀の再建作業を開始した。本事業は、衰退した建設産業に数千もの仕事を与えることを意味する。今夜、私はこうした努力をさらに倍増することを提案する。
 壊れかけた道路や橋を修復する仕事に、さらに多くのアメリカ人を充てるようにする。そのための給与が支払われるのを確実化し、民間投資を誘致し、政治家のためではなく、経済にとって最適な事業を選択するようにしたい。

 筆者は前回の連載『暴論?あえて問う! 国債増発こそ日本を救う』の第5回『30年前より少ない日本の公共投資 「荒廃する日本」にしていいのか。未来への投資、始めるのは今』において、寿命を迎えつつある橋梁やトンネルのメンテナンスなど、日本国内で大々的な公共事業が必要だと書いた。ところが、日本でいまだに公共事業悪玉論が幅を利かせている中において、アメリカの方が先に始めようとしているわけである。

 橋梁や道路など、インフラがメンテナンス時期を迎えつつあるのは、別に日本に限った話ではない。まさしく、先進国共通の課題である。さらに、アメリカでは国内の雇用改善が必須命題になっているのだから、オバマ大統領が一般教書演説において、わざわざ「衰退した建設業界に数千もの仕事を与える」と明言したことにも、大いに意義があるわけである。

 ちなみに、上記の「衰退した建設業界に数千もの仕事を与える」というオバマ大統領の演説内容について、国内でそのまま報じた日本のメディアは皆無だ。理由は筆者には分からない。

 さらに、日本のメディアは、オバマ大統領の演説内容を報じる際に、以下の「輸出倍増計画」についても、ほとんど無視を決め込んだわけであるから、驚かざるを得ない。アメリカを含むTPPをめぐり、国内で侃々諤々の議論が始まっているにも関わらず、日本のメディアはアメリカの「輸出」や「貿易協定」に関する大統領発言を報じなかったわけである。

英文:
To help businesses sell more products abroad, we set a goal of doubling our exports by 2014 ― because the more we export, the more jobs we create at home. Already, our exports are up. Recently, we signed agreements with India and China that will support more than 250,000 jobs in the United States. And last month, we finalized a trade agreement with South Korea that will support at least 70,000 American jobs. This agreement has unprecedented support from business and labor; Democrats and Republicans, and I ask this Congress to pass it as soon as possible.
Before I took office, I made it clear that we would enforce our trade agreements, and that I would only sign deals that keep faith with American workers, and promote American job.

日本語訳:
 輸出事業を支援するために、我々は2014年までに輸出を倍増する目標を掲げた。なぜならば、輸出を増強すれば、我が国において雇用を創出できるためである。すでに我が国の輸出は増えている。最近、我々はインドと中国との間で、米国内において25万人の雇用創出につながる協定に署名した。先月は、韓国との間で7万人の米国人の雇用を支える自由貿易協定について最終的な合意に至った。この協定は、産業界と労働者、民主党と共和党から空前の支持を受けている。私は、上院に対し、本合意を可能な限り速やかに承認するよう求める。
 私は大統領に就任する以前から、貿易協定を強化するべきとの考えを明確にしていた。そして、私が署名する貿易協定は、米国人労働者を守り、米国人の雇用創出につながるものに限るだろう。

 オバマ大統領が「輸出倍増計画」を打ち出したのは、2010年(昨年)1月の一般教書演説においてである。すなわち、2010年から5年間で、アメリカの輸出を2倍にするという、大胆極まりない戦略目標だ(※アメリカの輸出総額は、元々世界で1位、2位を争うほどに多い)。今回の一般教書演説において、2014年までに輸出倍増と発言している以上、昨年1月時点の計画は、現時点でも「生きている」ということになる。

 さらに、引用の最後の部分で、オバマ大統領は自分が署名する貿易協定は「米国人労働者を守り、米国人の雇用創出につながるものに限る」と断言しているわけだ。TPPを検討している最中に、この発言を一切報じなかった日本の各メディアは、職務を放棄していると断言されても仕方があるまい。

 要するに、TPPとはアメリカの輸出倍増計画、ひいては同国の「雇用改善計画」の一部に過ぎないのである。アメリカのTPP検討において、自国の「雇用改善」以外の目的は、何一つないわけだ。何しろ、大統領自らが一般教書演説において、「米国人労働者を守り、雇用創出につながる貿易協定にしかサインしない」と宣言しているのである。

 すなわち、1930年代のニューディール政策を思い起こさせる(※と言うか、ニューディール時代に建造された)アメリカ国内のインフラのメンテナンスにせよ、輸出倍増計画にせよ、アメリカ人の雇用改善のためなのである。

中国製鋼管に430%の反ダンピング税

 少なくとも、アメリカが「我が国を世界に開きます」などと甘いことは、微塵も考えていないのは確実だ。何しろ、オバマ政権は片手で日本をTPPに誘いながら、もう片方の手で容赦なく「非自由貿易的」な措置を講じていっている。

 2月7日。アメリカ国際貿易委員会(ITC)は、原油掘削用の中国製鋼管に対し、反ダンピング税と補助金相殺関税を適用することを決定した。今後、中国からアメリカに輸出される原油掘削用鋼管には、430%の反ダンピング税と、18%の相殺関税が課せられることになる。ITCは、中国製品の輸入に、これらの措置を講じることを決定した理由について、「中国製品の輸入がアメリカ企業に脅威と損失をもたらしているため」と説明している。

 要するに、アメリカの現在の戦略は「自国の雇用改善」に貢献するのであれば、貿易協定を結ぶが、そうではない場合は相殺関税を適用するという、極めて「自国中心主義」的なものなのだ。何しろ、一般教書演説において、オバマ大統領が雇用(jobs)と発言した回数は、実に25回にも及ぶのである。

 アメリカを含むTPPという自由貿易協定、しかも「過激な」自由貿易協定を締結することを検討するのであれば、せめて現在の米国側が「何を望んでいるのか」くらいは理解しておかねばなるまい。

 ところで、なぜ現在のアメリカは、ここまで自国の雇用改善にこだわるのであろうか。無論、同国が1930年代の大恐慌期に、失業率25%(都市部では50%超!)という凄まじい恐慌状況を経験したためである。加えて、現在のアメリカは、リソースのほとんどを雇用対策に注力させなければ、失業率の改善が困難という事情もある。

 2007年まで続いた世界的な好況は、ご存知の通りアメリカの不動産バブルに端を発していた。より具体的に書くと、不動産バブルのおかげで、アメリカが前代未聞のペースで経常収支の赤字(同国の場合は、ほとんどが貿易赤字)を拡大してくれたからこそ、実現したのである。


 図2-1は、1980年以降のアメリカの経常収支の推移である。確かに、アメリカでは80年代から双子の赤字(経常収支赤字と財政赤字)が問題視されてはいた。それにしても、98年以降のアメリカの経常収支赤字の拡大ペースは、率直に言って「異様」である。不動産バブルの崩壊が始まった2006年まで、同国の経常収支赤字は、まるで指数関数のように伸びていったのだ。

 ちなみに、2002年のアメリカの経常収支赤字は、「世界全体の経常収支赤字」の8割を占めていた。一国の経常収支赤字が、世界全体の8割に達していたわけである。

 アメリカの経常収支赤字が拡大するということは、反対側に必ず「経常収支黒字」の国が存在する。中国などのアジア諸国や欧州の黒字組(ドイツやオランダ)はもちろん、当時は日本もアメリカの経常収支赤字拡大の恩恵を受け、経済成長を遂げることができた。

 2002年以降の、いわゆる世界同時好況は、まさしくアメリカの経常収支赤字拡大により達成されたのである。そして、繰り返しになるが、アメリカがここまで経常収支を拡大できた理由は、同国で不動産バブルが発生していたためだ。

アメリカ不動産バブルの主役は家計だった

 日本の不動産バブルの主役は「企業」であったが、アメリカの場合は「家計」である。家計が不動産バブルに沸き、国家経済のフロー(GDPのこと)上で、民間住宅や個人消費が拡大し、世界各国からアメリカへの輸出が拡大することで、世界経済は「同時好況」を楽しむことができたわけである。

 何しろ、アメリカの個人消費は、同国のGDPの7割超を占める。文句なしで「世界経済における最大の需要項目」である。不動産バブルにより、アメリカで「世界最大の需要」が活性化し、世界各国は史上まれに見る好景気を楽しむことができたわけだ。

 しかし、それもアメリカの不動産バブル崩壊で終わった。


 図2-2の通り、アメリカの家計は2007年まで、年に100兆円のペースで負債を拡大していった。このアメリカの家計の借金が、不動産バブルに回り、ホームエクイティローンなどで個人消費を牽引し、世界は同時好況に酔いしれることができたわけだ。

 2007年(厳密には2006年後半)に不動産バブルの崩壊が始まると、アメリカの家計は負債残高を全く増やすことができなくなってしまった。グラフではよく分からないかも知れないが、アメリカの家計の負債総額は、現時点においてもわずかながら減少を続けている。すなわち、アメリカの家計は負債を増やすどころか、むしろ「借金を返済する」という、バブル崩壊後の日本企業と全く同じ行動をとっているわけだ。

何しろ、アメリカの個人消費は日本の全GDPの2倍に達する「世界最大の需要」である。この世界最大の需要が、負債を増やさず、支出を絞り込んでいったわけであるから、アメリカ(及び世界各国)の雇用環境が急激に悪化して当たり前だ。バブル崩壊後の金融危機も、アメリカの失業率上昇に拍車をかけた。

 結果、2007年時点では5%を下回っていたアメリカの失業率は、2009年10月に10%を上回ってしまった。政権への風当たりも、一気に強まった。当たり前の話として、オバマ政権はすべての知恵を雇用環境改善に注ぎ込まざるを得なくなってしまったわけだ。

日本もアメリカの国益中心主義を見習うべき

 現在のアメリカは、雇用創出のために各国と貿易協定を結び、国内で減税を延長し、公共投資の拡大を検討すると同時に、量的緩和第2弾、いわゆるQE2を実施している。QE2は食糧価格や資源価格を高騰させ、世界各国は多大な迷惑を被っている。だが、自国の雇用改善以外に興味がないアメリカにとって、他国の事情など知ったことではないだろう。

 自国の国益のために、時には「グローバリズム」を叫び、時には保護主義に邁進するのが、アメリカという国家である。

 ちなみに、筆者は別にこの種のアメリカのエゴイズムについて、批判しているわけでも何でもない。アメリカ政府は単に、自国の国民のために、やるべきことを全て実施しようとしているだけの話である。むしろ、日本もアメリカの国益中心主義を見習うべきであるとさえ考えている。

 いずれにしても、アメリカは単純に「自国の雇用改善」のために、TPPに日本を引き込もうとしているに過ぎないのだ。前回掲載した図1-1の通り、日本が含まれないTPPなど、アメリカにとっては何の意味もない。

 現実の世界は、あるいは現実の外交は、国益と国益がぶつかり合う、武器を用いない戦争である。まさしく各国の国益のぶつかり合いこそが、本来的な意味における「外交」なのだ。

 少なくとも「我が国は閉鎖的です。平成の開国を致します」などと、自虐的に国際会議の場で演説することは、決して「国際標準としての外交」などではないということを、民主党政権は知るべきだろう。


02. taked4700 2011年10月26日 19:29:39: 9XFNe/BiX575U : IanDpFU7gs
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110217/218478/
自動車・家電輸出がそんなに重要か
この産業を救うのは「適切なデフレ対策」しかない
三橋 貴明  2011年2月21日(月)

 予めお断りしておくが、筆者は国内の「誰か」(特定産業や企業など)を「悪者化」し、別の産業や国民が「得をしよう」などという発想について、決して健全だとは思わない。何しろ、国民経済とは「つながっている」のである。特定産業や企業をことさらに叩いた結果、失業者が増え、国民経済全体の景気が悪化した結果、最終的には自分たちの産業がダメージを受けるケースが多々ある。

 具体的な例を1つ書いておくと、メディア業界だ。日本のメディア業界は、ひたすら企業を叩き、政府を叩き、官僚を叩き、政党を叩き、業界を叩き、国内のデフレが継続する方向に、国民の危機感を煽り続けている。結果、現在は大手新聞社やテレビ局の業績が悪化し、自分たちの職や給与が危なくなってきているわけである。

 当たり前の話を1つ書いておくと、メディア企業に勤めている人々の給料を払っているのは、会社でもなければ社長でもない。購読者やスポンサー企業などの「顧客」である。日本のデフレ深刻化を煽り、経済全体が沈滞化した結果、結局はメディア企業に勤める日本人も損をするというわけである。
農水省と経産省、セクショナリズム丸出しの理由

 さて、今回の「平成の開国」すなわちTPPに関する検討手法が問題だと思うのは、まさしく前述の「誰かを悪者化し、他者が得をしようとしている」を、政府自ら実践している点である。具体的に書くと、悪者化されているのが「農業」で、「得をしようとしている」のは自動車や家電などの大手輸出企業である。

 何しろ、TPPに参加した場合、農林水産省が、
「全国で農産物の生産額が4兆1000億円減る」
と試算し、悲鳴を上げている。

 同時に、経済産業省がTPPに参加しない場合、
「自動車、電気電子、機械産業の3業種について、2020年にGDP換算10.5兆円の減少となり、実質GDPを1.53%押し下げる」
と、日本国民の危機感を煽る数値を掲げているわけである。

 農林水産省と経産省が、まさしくセクショナリズム丸出しで「参加するべき!」「いや、参加するべきではない!」とやっている以上、TPPに参加した場合、「農産業が損をし、家電や自動車などの輸出産業が得をする」と考えて構わないだろう。
「車が来るなんて想定外でした」とでも言うのか

 それでは、農産業にも輸出産業にも従事していない、多数派の日本国民にとって、TPP参加はどのような影響を与えるのか。実は、現時点では「不明」なままである。TPP推進派にしても、せいぜい
「国民生活や日本の諸制度に影響を与えるような、大幅な完全自由化は、TPPでは想定していない」
 などと、アメリカの戦略を無視した説明をする程度だ。

 要するに、農産業や輸出産業への影響以外に、例えばアメリカが「どこまでの自由化を望んでいるのか」などについては不明、というのが現状なのだ。無論、アメリカがサービスや官需について完全自由化(非関税障壁の撤廃を含む)を要求してきた場合、日本側が「NO!」と言うことはできる。とはいえ、実際には他国よりも関税が低いにも関わらず、国際会議の場で首相がわざわざ「我が国は開国いたします」などと発言し、自虐的な態度で交渉に臨む日本政府が、アメリカ相手に強硬姿勢を貫けるとは思えない。

 日本が「NO!」と言った日には、
「貴国の総理大臣が『平成の開国を致します』と言ったじゃないか。つまり、日本は国を開いていないということだろう」
 などと反論されるのが関の山である。

 いずれにしても、農産業と輸出産業以外への影響がほとんど不明な時点で、「平成の開国です!」などとスローガン先行で話を進めるのは、全くもっていただけない。まるで、目隠しをしたまま交差点を渡ろうとするようなものである。

 日本が「医療や金融、官需まで含めた完全自由化」という「車」にひかれた後に、
「ああ、ごめんなさい。車が来るなんて想定外でした」
 などと、TPP推進派に言われた日には、日本国民としては目も当てられない。
日本の輸出依存度は約11.5%しかない

 さて、繰り返しになるが、筆者は同じ日本国民でありながら「誰かを悪者にする」という発想が嫌いである。ところが、現在の民主党は、本当にこの種の「誰かを悪者にする」政治手法が大好きである。

 何しろ、TPP推進派の前原誠司外相自ら、昨年10月19日に以下の発言をしているのだ。
「日本の国内総生産(GDP)における第1次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」
 見事なまでな、農業などの第1次産業を悪者化している発言だ。

 ちなみに、この種の「他者を悪者化する手法」は、伝統的に共産独裁国が得意としている。かつてのソ連の独裁者スターリンは、政敵に「トロツキスト」とレッテルを張り、弾圧を繰り返した。中国の毛沢東も「右派分子」「走資派」などのレッテルを用い、他者を悪者化することで自らの権力を強めていったわけである。

 それはともかく、前原外相が「数値データ」を用いてTPPを推進しようというのであれば、筆者としても以下のデータを出さないわけにはいかない。すなわち、日本のTPP参加により「得をする」側である輸出産業とGDPの比較である。

 そもそも、多くの日本国民が誤解しているが、日本の輸出依存度(=財の輸出額÷名目GDP)は約11.5%(2009年)と、決して高くない。というよりも、むしろ低い。主要国の中で、日本よりも輸出依存度が「低い」のは、アメリカとブラジルだけである。
GDP比輸出、乗用車は1.23%、家電は0.021%

 さらに、日本の輸出の主力は「資本財」であり、国民の多くが「主力輸出品」と思い込んでいる自動車やテレビなどの耐久消費財ではない。日本の輸出の半分以上(51.81%)は消費財ではなく、企業が購入する資本財なのだ。さらに、日本からの工業用原料の輸出も、輸出全体の25.5%を占めている。一般人が工業用原料を購入するケースはないだろうから、日本の輸出の77%以上は、消費者ではなく「企業」が購入する財なのである。

 家電や自動車などの耐久消費財が、日本の「輸出全体」に占める割合は、わずかに14.42%だ。そもそも日本の輸出依存度が約11.5%に過ぎないため、「耐久消費財の輸出対GDP比率」は、1.652%ということになる(数値はいずれも2009年)。

 「何ということか! 日本のGDPにおける第1次産業の割合1.5%を、耐久消費財の輸出の割合(1.652%)が上回っている。その差が対GDP比で0.152%もあるのだから、日本はTPPに参加すべきだ」
という話にでもなるのだろうか。


 皮肉はともかく、TPPでネガティブな影響を受けそうな第1次産業の対GDP比を示し「TPPを推進するべきだ」と主張するならば、ポジティブな影響を受ける耐久消費財の輸出対GDP比も出さなければ、アンフェアというものだろう。

 ちなみに、乗用車(1.23%)と家電(0.021%)の輸出総額をGDPと比べると、1.251%になる。少なくとも、対GDP比で1.251%の自動車や家電の輸出については、TPPに参加することで、アメリカの関税撤廃というベネフィットを得るわけだ。

 もっとも、アメリカの関税は家電(テレビなど)について5%、乗用車は2.5%に過ぎない。わずか数パーセントの関税撤廃という恩恵を、対GDP比で1%強の輸出産業が獲得するために、日本国民は「目を閉じたまま、交差点を渡る」という、チャレンジをしなければならないのだろうか。

 とはいえ、筆者は別に耐久消費財の輸出メーカーを「悪者化」した上で、日本はTPPに参加するべきではない、と言いたいわけではない。日本のGDPの2倍にもなる「世界最大の需要」たるアメリカの個人消費市場において、日系企業が勝てなくなっている現実は、これはこれで重要な問題である。筆者は単に、TPPに参加せずとも、日本の輸出産業の苦境を救う「真っ当な手段」がほかにあると言いたいだけだ。
日本はアンフェアな戦いを強いられている

 そもそも、現在の日本の家電企業や自動車企業が「世界最大の需要」たるアメリカ市場で苦戦しているのは、韓国企業の攻勢を受けているためである。何しろ、韓国は2008年の危機の際にウォンが暴落し、その後は「通貨安を利用し、グローバル市場で勝つ」ことを、成長戦略の基本に置いた。

 韓国の危機が深刻化する前の2007年、韓国ウォンの対日本円レートは「1円=7ウォン」であった。それが2008年の危機により、一時は「1円=16ウォン」にまで、韓国ウォンの価値が暴落したのである。現在に至っても、韓国ウォンの対円レートは「1円=13ウォン」前後で推移しており、日本企業を苦しめている。

 サムスン電子やLG電子、それに現代自動車にしてみれば、アメリカ市場において対日本企業の「半額セール」を常時実施しているようなものなのだ。この「ハンディ」は、デフレで収益が上がりにくい日系企業にとっては、あまりにも過酷である。TPP参加により「せめてアメリカ市場における関税だけでも撤廃して欲しい」と考える日系企業の気持ちは、痛いほど分かる。

 ちなみに、日系自動車企業のアメリカにおける現地生産の比率は、すでに6割を超えており、現代自動車の攻勢を何とか食い止めている。とはいえ、現地化が進んでいない日系家電企業は、まさしく惨憺たる状況になっているのである。また、アメリカで健闘している日系自動車企業にしても、現地生産が少ない欧州市場においては、現代自動車の躍進を抑えることができていない。2008年のウォン暴落以降、日系企業はグローバル市場において、為替レート的にアンフェアな戦いを強いられているのである。

 とはいえ、先にも書いたように、現在のアメリカの関税は乗用車が2.5%、家電は5%に過ぎない。TPP参加で関税が撤廃されたとしても、ウォンが対日本円で5%下げるか、あるいは日本円が対ウォンで5%上がってしまうと、元の木阿弥である。韓国ウォンは変動幅が大きい通貨であるため、日本がTPPに参加した直後に「ウォンが対日本円で5%下落」という事態は、普通に起こりえるのである。

 すなわち、日本の輸出企業が通貨安を韓国企業の攻勢に苦しむという構図は、TPP参加では解決できない可能性があるのだ。
答えは明白、デフレから脱却すればいい

 それでは、どうすればいいのだろうか。実は、答えは明々白々だ。日本がデフレから脱却すればいいのである。

 そもそも、日本の家電企業や自動車企業が、アメリカ市場ばかりを意識しなければならないのは、国内のデフレ不況が深刻化しているためである。デフレ下で物価が下がり続けている環境下において、過当競争を繰り広げなければならないのだ。日本企業が海外にばかり目を向けるようになっても、致し方がない話ではある。

 しかも、デフレにより日本の実質金利(=名目金利−インフレ率)が高くなっており、金融市場で日本円が好まれる傾向が続いている。すなわち、円高が継続しているわけだ。現在の日本は「デフレで円高」なのではない。「デフレゆえに円高」なのである。加えて、アメリカが量的緩和第2弾(QE2)として、ドルの供給量を増やしている以上、日本円が高騰し続ける状況は終わりそうにない。

 さらに言えば、日本でやたらと「国の借金(=政府の負債)」増大が問題視されるのも、デフレが続いているためだ。デフレ下では物価が下がり、「お金の価値」が上がり続けてしまう。すなわち「借金の実質的な価値」も高まっていってしまうのである。

 この環境下において、日本が「適切なデフレ対策」を実施した場合、果たしてどうなるだろうか。「適切なデフレ対策」とは言っても、別に難しいことをしろと言っているわけではない。現在のアメリカが実施しているデフレ対策を、そのまま、まねすればいいだけの話だ。
バーナンキ・米FRB議長の提案

 具体的には、まずはオバマ大統領の一般教書演説にもあった「インフラストラクチャーのメンテナンスなど、公共投資の拡大」だ。さらに、昨年12月に、やはりオバマ大統領が延長を決断した「大型減税」を日本でも実施する。そして、現在もFRBが継続している、大規模量的緩和である。

 ちなみに、現FRB議長のベン・バーナンキ氏は、2003年に「デフレ脱却策」として、日本に以下のソリューションを提案する論文を公表した。

Remarks by Governor Ben S. Bernanke
Before the Japan Society of Monetary Economics, Tokyo, Japan
May 31, 2003
Some Thoughts on Monetary Policy in Japan

『(前略)Finally, and most important, I will consider one possible strategy for ending the deflation in Japan: explicit, though temporary, cooperation between the monetary and the fiscal authorities. (後略)』

日本語訳:
最終的に、あるいは最も重要なこととして、わたしは日本のデフレを終わらせるための1つの可能な戦略について考えたい。すなわち、一時的な通貨当局と財政当局の明確な協力である。

 上記論文の中で、バーナンキ氏は日本政府に対し、デフレ脱却のために、 「一時的に通貨当局(日銀)と財政当局(日本政府)が明確に協力する必要がある。具体的には、日銀が国債の買取枠を増やし、同時に政府が財政出動と減税を行う必要がある」 と述べている。

 実は、現在のアメリカが実施している「デフレ対策」は、2003年時点でバーナンキFRB議長が日本に提案したことを、そのまま実行しているに過ぎないのだ。

 日本政府がアメリカ同様、適切なデフレ対策を実施すると、以下の効果が見込める。

◆国内経済の成長路線への復帰

◆円安

◆増収と名目GDP成長による財政健全化

 日本がデフレから脱却し、国内経済の成長率が高まれば、家電企業などがアメリカ市場ばかりを意識しなくても済むようになる。加えて、実質金利の低下と量的緩和により、日本円の為替レートが下がっていけば、TPP参加以上に韓国企業に対する競争力を獲得することができる可能性がある。

 加えて、増収と名目GDPの成長により、「国の借金(政府の負債)対GDP比率」も改善していく。すなわち、財政健全化の達成だ。

 まさに、一石三鳥なのである。

 ところが、現政府のやろうとしていることといえば、消費税増税などの緊縮財政による、総需要の抑制だ。すなわち「デフレを深刻化させる」政策ばかりなのである。

 加えて、TPP参加を検討するなどと言い出すわけであるから、呆然としてしまう。何しろ、TPPなどの自由貿易とは「インフレ対策」であり、デフレの国においては状況を悪化させる施策なのだ。


03. taked4700 2011年10月26日 19:34:43: 9XFNe/BiX575U : IanDpFU7gs
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110224/218588/

何度でも言う、TPPは「インフレ対策」です
自由貿易が「何を目的にしているか」もう1度振り返る
三橋 貴明  2011年2月28日(月)

 今さらであるが、現在の日本は深刻なデフレに悩んでいる。デフレとは、国内の全経済主体の供給能力(いわゆる潜在GDP)が、需要(現実のGDP)を上回ってしまっていることが、主たる原因である。

 デフレで物価下落が継続している結果、日本は、
「実質GDPが成長しているにも関わらず、名目GDPが横ばい、もしくはマイナス成長」
という悩みを抱えている。

 内閣府は、2月21日に日本国家の経済全体のデフレギャップを発表した。デフレギャップとは、日本経済が持つ潜在的な供給能力と、現実の需要(GDP)の乖離を意味している。

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 図4-1で言えば、青色の「本来の供給能力(潜在GDP)」と、赤色の現実の需要(GDP)」との「差」こそがデフレギャップである。日本経済は、自らが保有する供給能力に対し、現実の需要が追いつかず、物価が継続的に下落し、雇用環境が悪化するという状況が続いているわけだ。

 内閣府によると、2010年第4四半期のデフレギャップは対GDP比で3.8%とのことである。金額に換算すると、現在の日本経済は約20兆円の「需要不足」という問題を抱えていることになる。

 日本がデフレから脱却するためには、需給の乖離であるデフレギャップを縮小させる必要があるが、方法は2つある。すなわち「供給能力」を削るか、あるいは「需要」を拡大させるかである。

民主党は「総需要抑制策」をしている


 とはいえ、供給能力の削減とは、企業の工場閉鎖や設備廃棄、それに人員削減などになってしまう。すなわち、リストラクチャリングだ。企業がリストラを推進すると、国内の失業率は上昇する。失業率が上昇すると、当然ながら個人消費は減少してしまう。

 個人消費とは、GDP上の「民間最終消費支出」という需要項目の1つだ。企業がデフレギャップを縮小するために、供給能力(図4-1の青色部)を削り取ると、需要(赤色部)までもが減少してしまうのである。すなわち、デフレギャップは埋まらないわけだ。

 あるいは、民主党政権が発足直後(当時は鳩山政権)に行った「補正予算の凍結」である。鳩山政権の前の麻生政権が作成した補正予算は、景気対策を目的としていた。

 民主党政権が発足し、いきなり補正予算を3兆円分も止めてしまったわけだが、あれは別に「政府が懐に入れるお金」を止めたわけではない。政府が景気対策に使い、「民間企業のビジネス」になるはずだったお金を、3兆円分も止めてしまったのである。

 政府の支出にしても、「政府最終消費支出」や「公的固定資本形成(いわゆる公共投資)」などのGDPの需要項目の一部だ。民主党政権が「無意味」に予算を止めてしまった結果、日本経済はその分だけ「成長しなかった」ということになる。すなわち、図4-1の需要(赤色部)が増えず、デフレギャップが縮小しないというわけだ。

 さらに言えば、管政権が現在、推進している消費税増税である。消費税を上げると、当たり前の話として、GDPの「民間最終消費支出」などがダメージを受ける。基本的に、消費税などの税金を上げることは、総需要抑制政策なのだ。

 総需要抑制政策とは、政府が国内の需要を「抑制」するために、市場に介入する政策を意味している。すなわち、図4-1の「現実の需要(赤色部)」を縮小させることこそが、総需要抑制政策なのである。具体的な政策としては、消費税などの増税はもちろん、財政支出の削減(民主党政権の補正予算凍結など)、さらには金融の引き締めである。

 現在の日本は、一応、日本銀行がゼロ金利政策や量的緩和を維持し、総需要抑制政策ではなく「総需要拡大政策」を維持している(率直に言って、不十分だが)。ところが、その裏で民主党政権は、「ムダの削減」なる総需要抑制政策を大々的に推進し、さらに増税までをも行おうとしているわけだ(一部の増税は既に行われたが)。

 日本経済の問題は「需要不足」であり、「需要過剰」ではない。ところが、なぜか民主党政権はこのデフレ環境下において、総需要抑制政策ばかりを推進しようとする。

 要するに、ちぐはぐなのだ。

リカードの比較優位論、ロジックは正しいが

 念のため断っておこう。筆者が民主党政権の「ムダの削減」や「増税」などの総需要抑制政策に反対するのは、現在の日本がデフレに苦しんでいるためだ。これが問題が正反対で、日本が継続的な物価の上昇、すなわちインフレーションに悩んでいるのであれば、筆者はむしろ率先して「政府はムダを削れ」「増税しろ」と主張するつもりである。何しろ、インフレ時には増税や財政支出削減などの「総需要抑制政策」こそが、適切なソリューションになる。

 すなわち、デフレ期とインフレ期では、適切な政策が正反対になるのだ。

「デフレ期には、デフレ対策を。インフレ期には、インフレ対策を」

 この当たり前のことを理解していない評論家や政治家が、日本には多すぎる。結果的に、日本政府は自国がデフレに悩んでいるにも関わらず、インフレ対策ばかりを推進しようとするわけである。

 まさにその1つが、TPPなのだ。

 TPPとは「過激な日米FTAである」と、本連載の第1回で書いた。FTAとはFree Trade Agreementの略だが、日本語訳すると「自由貿易協定」となる。製品やサービスなどの関税、さらには非関税障壁などを互いに撤廃し、自由貿易を実現するための国際協定こそが、まさにFTAというわけだ。

 TPPの場合は、通常のFTAと異なり、製品やサービスなど、関税や非関税障壁撤廃の対象製品・サービスが幅広い。さらに、関税撤廃までの期間も極めて短期であるため、「過激なFTA」と表現したわけだ。

 さて、この「自由貿易」、言葉の響きは大変美しい。何しろ「自由」な貿易である。
「自由な貿易に反対するんですか」
などと言われると、普通の人はひるんでしまうだろう。

 ところで、そもそも自由貿易の目的とは何だろうか。自由貿易の「思想」の基盤になっているのが、19世紀初めにイギリスで活躍した経済学者、デヴィッド・リカードの比較優位論である。リカードの比較優位論について理解すると、自由貿易が「何を目的にしているか」が明確になってくる。

 リカードの比較優位論は、各国が「比較優位(絶対優位ではない)」にある製品の生産に特化し、互いに輸出しあうことで、全体的に多くの財やサービスを消費できることを説明している。リカードの比較優位論が成立するには、幾つもの条件があるが、このロジック自体は正しい。各国が生産に際し機会費用が少ない製品、すなわち比較優位な製品の生産に注力し、余剰生産物を輸出し合うことで、消費量を増やすことができる。

 逆に、関税などで自由な貿易を制限すると、全体的な消費量が減ってしまうわけだ。各国の「比較優位な製品生産への特化」と、「自由な貿易」が実現できたとき、全体の供給能力が高まり、消費可能な財やサービスが最大化されるという考え方である。

 というわけで、リカードの比較優位論にしても、自由貿易にしても、「参加者全体の供給能力を高める」ことこそを目的としているのである。国内の供給能力が不十分で、国民が充分な消費が行えず、物価が継続的に上昇している国々にとっては、自由貿易は極めて適切なソリューションである。

 物価が継続的に上昇している国とは、すなわちインフレに悩んでいる国というわけだ。自由貿易は参加国全体の生産性を向上させることができるため、インフレ期にはまことに適切なソリューションだ。

 ところで、現在の日本は、果たしてインフレに悩んでいるのだろうか。

日本に必要なのは需要であり、供給能力ではない

 現在の日本はインフレ(物不足、供給能力の不足)ではなく、デフレ(モノ余り、供給能力の過剰)に悩んでいる。現在の日本に必要なのは需要であり、供給能力ではない。

 TPPという「過激な日米FTA」により、アメリカ産農産物が入ってくると、日本国内の農産品の価格水準は、間違いなく下がってしまう。消費者は、
「安い農産物が買えて、嬉しい!」
と喜ぶかも知れないが、農産業従事者の方はたまらない。何しろ、生産性が極端に違うアメリカ産農産品と、関税という防壁なしで真っ向から競争しなければならないのだ。結果的に、アメリカ製品との競合に耐え切れなくなった農家は、廃業していくことになるだろう。

 農家が廃業し、所得獲得手段を失うと、民間企業のリストラクチャリング同様の効果が生じる。すなわち、失業者の増加による個人消費(GDP上の民間最終消費支出。図4-1参照)の縮小だ。そして、日本国内の個人消費が縮小すると、図4-1の「現実の需要(赤色部)」がさらに縮んでしまい、デフレギャップが拡大してしまう。すなわち、デフレが悪化するというわけだ。

 当初は「安い農産物が買えて嬉しい」と考えていた消費者も、デフレ深刻化の影響で、最終的には自らも損をする。それは、消費者が働く企業の経営悪化による、給与削減という形をとるかもしれないし、あるいは自身の失業かも知れない。何しろ、農家が廃業して労働者の供給が増えていけば、必然的に失業率は上昇し、日本国民全体の実質賃金は低下してしまう。

 前回(第3回)冒頭にも書いたように、国民経済とは「つながっている」のである。特に、デフレが深刻化している国において、「他者に損を押し付ける」行為は、巡り巡って自らの損失までをも拡大させてしまう。

 消費者が「安い農産物を買える」ということは、その分だけ「誰かが損をしている」ということになる。上記のケースでは、損をしているのはもちろん農業関係者だ。

「サービス(金融)」と「投資」を加えたアメリカ


 断っておくが、筆者が現時点でTPPに反対しているのは、単にそれが日本のデフレを悪化させるためである。TPPにより関係国全体の「消費量=生産量」が増えたところで、日本にとっては供給能力(図4-1の青色部)が「無用に」高まってしまうだけの話だ。しかも、TPPで安い農産物が海外から輸入されたとき、農業従事者の所得低下を通じて、日本の現実の需要(赤色部)をも押し下げてしまう。すなわち、デフレギャップの拡大だ。

 そして、恐らくこれが最大の問題だと思うが、TPPにより海外の企業との競合が激化するのは、別に農産物には限らないのである。何しろ、TPPで設置された作業部会は、現時点で24もあるのだ。農産物は、24ある作業部会の1つに過ぎない。

 ちなみに、TPPの作業部会は、当初は22だったのだが、そこにアメリカが2つほど追加してきた。すなわち「サービス(金融)」と「投資」である。

 TPPで自由化が目指される「農産物」以外の製品やサービスには、果たしてどのようなものがあるのだろうか。本連載でも取り上げていく予定だが、もしかしたら読者が勤めている企業の製品、もしくはサービスも含まれているかも知れない。

 それでも読者は、TPPで外国産農産物が入ってきたとき、
「安い農産物が買えて、嬉しい!」
などと、素直に喜べるだろうか。

 そもそも、日米を含む現在の各国は「失業」に悩んでいるのである。特に、アメリカの場合は顕著だ。

 各国の雇用環境が悪化している以上、比較優位とは無関係に、各国とも「すべての財・サービスを自国で生産したい」という欲求に駆られて当然だ。何しろ、他国から製品やサービスを輸入するということは、「自国では生産しない」ということになる。輸入する製品を自国で生産すれば、質や価格ともかく「雇用」は確保できる。逆に、自国で生産せずに輸入する場合は、あくまで「他国の雇用」が創出されるだけ、自国の雇用はほとんど増えない。

 というわけで、オバマ大統領が一般教書演説において20回以上も「雇用(Job)」という言葉を使った以上、アメリカが「日本の雇用を奪う」ことを狙っているのは確実だ。

 と言うよりも、オバマ大統領自身が一般教書演説において、
「私が署名する貿易協定は、米国人労働者を守り、米国人の雇用創出につながるものに限るだろう」
と明言しているわけだから、何をか言わんやである。

 アメリカは自らの戦略目標について、別に隠しているわけではない。大統領自ら、堂々と「雇用を拡大するために、他国と貿易協定を結ぶ」と宣言しているわけだ。

必ず「別のどこかの国」で雇用環境が悪化する

 そして、アメリカが「貿易協定」により雇用を拡大したとき、必ず「別のどこかの国」において、雇用環境が悪化することになる。

 日本人は、今ひとつ「輸出」や「輸入」の意味を理解していないように思えるが、日本が輸出を拡大した場合、輸入した側の国では雇用と「現実の需要」(GDP)が奪い取られることになる。輸入はGDPにおける控除項目であり、加算項目ではない。

 すなわち、アメリカが日本への輸出を拡大し、自国の雇用を改善したとき、我が国の雇用環境は必ず打撃を受ける。

 逆に、日本などが対米輸出を拡大すると、今度はアメリカの雇用が悪化することになる。2007年まで不動産バブルで内需を拡大させていたアメリカは、各国の対米輸出が膨張しても、雇用環境を一定水準で維持することができていた。すなわち、外国からの輸入で自国の雇用が奪われても、内需による雇用創出でカバーすることができていたわけである。

 しかし、もはやその時代は終わった。

 そもそも、国民経済の目的とは何だろうか。国民経済の目的とは「国民」の所得を高め、同時に国富を蓄積し、国民全体を「富ませる」ことである。

 自由貿易にせよ、TPPにせよ、国民経済全体を成長させ、国民を富ませるのに有益であるならば、率先して行われるべきだ。何しろ、自由貿易が参加国全体の生産性を高め、消費量可能な財やサービスが増えるのは、間違いない事実だからだ。

 しかし、自由貿易による生産性向上や消費可能「量」の拡大が、失業率上昇や実質賃金の低下といった、社会的な「痛み」を伴う状況であっても、我々は自由貿易を喜んで受け入れなければならないのだろうか。そんなはずはない。

 現在の日本は、深刻なデフレに悩んでいる。そして「過激な日米FTA」であるTPPは、日本の雇用環境や給与水準を間違いなく悪化させ、デフレをさらに深刻化させる。そうであっても、日本は自由貿易やTPPを喜んで受け入れなければならないのだろうか。

 繰り返しになるが、そんなはずがないのだ。


04. taked4700 2011年10月26日 19:41:19: 9XFNe/BiX575U : IanDpFU7gs
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110303/218708/

構図「製造業vs.農業」の目くらまし効果
問題は「24分の2」に矮小化、残り22項目の議論を聞いたことがあるか
三橋 貴明  2011年3月7日(月)

 そろそろお気づきの読者も増えているかとは思うが、実は日本における「TPP(環太平洋経済連携協定)問題」とは、農業の問題でもなければ、家電や自動車などの輸出産業の問題でもない。ついでに書くと、日本にとってTPPとは、実は関税の問題でさえないのだ。

 何しろ、第1回『「平成の開国」意味分かって言ってる? TPPとは「過激な日米FTA」にほかならない』の図1-2で示した通り、日本の平均関税率は農業を除き、アメリカよりも低い。日本は現時点で、アメリカ以上に「開国」しているというのが現実なのだ。すなわち、日本が関税を撤廃しても、アメリカは農産物の輸出以外に、ほとんどメリットがないように思えるわけである。

 それにも関わらず、アメリカには日本にTPPに参加してもらいたい理由がある。それは単純明快。アメリカは自国の雇用のために、日本に「非関税障壁」撤廃して欲しいのだ。すなわち「規制緩和」である。

「サービス(金融)」を追加したのはアメリカ


 まずは、現在TPPで「作業部会」として設置されている分野についてご紹介しておこう。何しろ、大手メディアの報道姿勢が極端に偏っているため、読者の多くはTPPで協議されている分野は「農業」と「製造業」のみであると、誤解しているのではないだろうか。

 現実はさにあらず。

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 何と、TPPにおいて作業部会として協議されている分野は、現時点で24にも及ぶのだ。工業も農業も、それぞれ「24分の1ずつ」に過ぎない。経済産業省は24分の1の「工業」を取り上げ、「日本のGDPが何兆円増える」と気炎を上げ、農林水産省は、これまた24分の1の「農業」の立場を代弁して「GDPが何兆円減る」と悲鳴を上げる。しかし、工業にせよ、農業にせよ、包括的なFTA(自由貿易協定)と言えるTPPにおいては、それぞれ24分の1のテーマに過ぎない。

 さて、図5-1で「黒抜き」になっている部分、すなわち「サービス(金融)」及び「投資」は、もともとTPPに含まれていなかった分野である。

 例えば、金融サービスについては、現在のTPP協定(ブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランドが締結済みのもの)には含まれていない。サービスの自由化範囲について記載された、TPP協定の第12章において、金融は航空輸送サービスと共に「適用されない」と記されている。

 それにも関わらず、現在のTPP作業部会には「サービス(金融)」が追加されている。果たして「誰が」追加したのだろうか。

 もちろん、アメリカである。

 アメリカは以前から、日本の金融市場の一部における「非関税障壁」を問題視していた。例えば、2010年3月に米国通商代表部(USTR)がアメリカ議会に提出した報告書の一部には、以下の記載がある。(以下は、日本に関連する部分を衆議院調査局農林水産調査室が翻訳したものを、雑誌「農民」が掲載したものからの引用である)

『2010年外国貿易障壁報告書』

◆サービスにおける障壁
 保険
 共済

 協同組合が経営する保険事業、すなわち「共済」は、日本における保険業界において相当な市場のシェアを保有している。

 共済の中には、原則として全ての民間保険会社を規制している金融庁(FSA)に代わり、当該組織を所管する省庁(例えば農林水産省や厚生労働省)によって規制されている組織がある。

 これらの別々の規制スキームは、企業や保険契約者に対して合理的で透明な規制環境を提供する日本政府の能力を損なうものであり、競争相手の民間企業にとって不公平な業務上、規制上、税制上の優位性を共済に与えている。米国政府は、公平な競争の確保や消費者保護のため、共済に関する規制の基準・監督を競争相手である民間企業と同じ条件にすべきであると考えている。(中略)

 また、金融庁以外の省庁により規制されている共済に関しては、日本の保険市場において拡大し続けることを米国政府は憂慮しており、これらの共済を金融庁による監督下に置くことを日本政府に対し、求め続けていく。(後略)』

 アメリカの金融サービスは、「未開拓」である日本の共済分野や、あるいは簡保の分野への参入を虎視眈々と狙っているのである。そのためには、日本の同分野における様々な規制、すなわち非関税障壁が不都合である(アメリカにとって)。だからこそ、TPPの作業分野に、それまでは除外されていた「サービス(金融)」が、突然、出現したのではないだろうか。と言うよりも、ほかに理由の推測のしようがないわけだ。

 また、投資分野に目を移すと、そもそも外国人に国内における投資を自由に開放することは、国益を害する可能性があるとして、WTO(世界貿易機関)においても自由化対象外となっている分野である。例えば、港湾や空港、水道、交通分野など、国家の国防や安全保障に関わる分野における投資は、「サービスの自由化」などとは違った側面を持っているわけだ。さらに言えば、農地への投資を外国企業に開放し、加えて食料の加工、流通分野まで外国企業に握られてしまうと、これまた国民の安全保障に関わる問題になる。

 アメリカは1994年に成立したNAFTA(北米自由貿易協定)において、投資の自由化を盛り込むことに成功した。結果、カナダやメキシコは、特に「付加価値を生む分野」において、アメリカ資本を受け入れざるを得なくなってしまった。

 その後、アメリカは1995年にWTOのTRIM協定(貿易に関連する投資措置に関する協定)に、投資の自由化を追加しようとした。だが、主に発展途上国が反対し、不十分な成果に終わった。1998年には、アメリカは今度は多国間投資協定構想(MAI)により、OECD(経済協力開発機構)における投資自由化を実現しようとした。ところが、10月にフランスのジョスパン政権が参加取り止めを表明し、失敗に終わった。さらに、アメリカは2003年に、米州自由貿易地域(FTAA)において、投資ルールの問題を扱おうとしたが、ブラジルがWTOにおける協議を望み、またもや失敗した。

『24分の1』対『24分の1』という語り口

 要するに、アメリカが貿易協定などにおいて、投資の自由化を求めるのは「いつものこと」なのである。とはいえ、投資の全面自由化は国益と衝突するケースが少なくなく、各国は(アメリカ以外は)常に慎重姿勢を保っている。

 例えば、OECDでは一応「資本移動の自由化に関するコード」において、直接投資の自由化義務が課されている。だが、各国は投資の自由化について留保することが可能になっており、実際に多くの国が留保している。

 さらに、FTAなどの2カ国間条約の中には、相手国から自国への投資に際し、最恵国待遇を約束しているものもあることはある。だが、さすがに内国民待遇まで認めている条約は多くない。多国間貿易協定における投資に関する原則も、投資全般のルールこそ定めるものの、最恵国待遇や内国民待遇を強制するものは、ほとんどないというのが現実だ(NAFTAを除く)。

 TPPに関して言えば、もちろん既存の協定には「投資の自由化」は含まれていない。ところが、なぜか24の作業部会の中に「投資」が含まれている。

 誰が追加したのだろうか。言うだけ野暮な気がするが、もちろんアメリカだ。

 そもそもTPPの概要は、これまでは「『投資を除くと』自由化レベルが極めて高い協定」と説明することができた。ところが、いつの間にか作業部会の中に「投資」が入り込んでいるわけだ。これまでのアメリカの手法を考えると、TPP拡大に際して投資の自由化をも盛り込もうと意図していると考えて間違いないだろう。

 極めて問題に思えるのは、上記のような情報が国民にオープンにされないまま、「農業対大手輸出企業」、すなわち「『24分の1』対『24分の1』」という語り口で、国内のTPP報道が続けられていることだ。金融サービスの自由化にしても、投資の自由化にしても、まさしく国論を二分するような重大事項である。それにも関わらず、この手の情報がマスコミはもちろん、政府からも一切出てこない。異常である。

「究極の構造改革」こそがTPPの本当の姿

 異常といえば、そもそもTPPとは、既に存在している協定なのだ。すなわち、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4カ国が参加し、2006年に発行した貿易協定こそがTPPなのである。

 TPPが存在する以上、当然ながらTPP協定の規約も実在していることになる。(当たり前だ)ちなみに、TPPの原文(英語版)は以下で読むことができる。

【TRANS-PACIFIC STRATEGIC ECONOMIC PARTNERSHIP AGREEMENT】

 不思議なことに、首相が「平成の開国」と言い出してから半年以上が経過しているにも関わらず、未だにTPPの日本語版が公開されない。日本国民は、原文を自国語で読むことなく、「平成の開国」というスローガンを信じ、TPPへの参加を決断しなければならないのだろうか。

 TPPとはそもそも、
「例外品目なしで、100%自由化を実現する過激なFTA」
 である。

 しかも、日本とアメリカが参加した場合、両国のGDPを合計すると全体の9割を超えるわけである。事実上の「過激な日米FTA」であるということは、第1回で書いた通りである。

 TPPの自由化対象には、農産物や耐久消費財等の製品の貿易はもちろん、サービス、政府調達、知的財産権、衛生植物検疫問題(図5-1のSPS)など、社会構造に関わる問題も多数含まれている。TPPに日本がこのまま参加した場合、わが国の社会の構造は大きく変えられてしまうことになる。まさしく「究極の構造改革」こそが、TPPの本当の姿なのである。

「政府調達」に大いなる懸念


 アメリカは1989年の日米構造協議以降、様々な形で日本に「構造改革」を要請してきた。93年には日米包括経済協議が始まり、94年以降は年次改革要望書に姿を変えた。年次改革要望書は、なぜか09年以降は公開されなくなってしまったが、またもや形を変え、わが国に突きつけられたアメリカからの「構造改革」の要望こそが、TPPなのだろうか。

 ちなみに、2008年までのアメリカからの年次改革要望書は、今でも普通に読むことができる。その中には、郵政民営化や法科大学院の設置、労働者派遣法改正などに関する「アメリカの要望」が含まれており、日本国民が読むと吃驚すること請け合いだ。

 それはともかく、TPPの24の作業分野の中で、さらに1つ、大いに懸念せざるを得ない分野を挙げておこう。それは「政府調達」だ。

 政府調達分野において、現在のTPP協定(シンガポールなどが締結しているもの)がそのまま適用された場合、公共事業の国際入札の下限が、現行の政府調達協定(WTOのルールに沿っているもの)よりも引き下げられる可能性があるのだ。特に、地方における公共事業が危険である。

 何しろ、現在の地方自治体の公共事業における建設事業の国際入札範囲は、23億円(WTO基準による)である。ところが、これがTPP協定に沿うことになると、7.65億円(500万シンガポールドル)にまで引き下げられてしまうのだ。すなわち、地方における7.65億円以上の公共事業については、外国企業を「内国民待遇」しなければならないことになる。

 内国民待遇とは、外国企業を自国企業並に優遇し、非関税障壁を撤廃するという究極の自由化だ。地方自治体は外国企業に不便がないように、公共事業の公文書を英語でも作成しなければならなくなってしまう。(すなわち、非関税障壁の撤廃だ)

『平成の開国』どころか『平成の壊国』

 また、サービス分野における公共事業の国際入札範囲は、やはりWTO基準に沿い、現行は中央政府が6900万円、地方自治体が2.3億円だ。これがTPP協定に沿う形になると、中央政府・地方自治体共に750万円と、敷居が一気に引き下げられてしまう。

 こう言っては何だが、市町村等の自治体が750万円「程度の」サービスの事業を行おうとした際に、外国企業を内国民待遇するために、わざわざ英語の公文書を作成しなければならなくなるわけだ。

 ここまで来ると、だんだんバカバカしくなってくるが、これがTPPがもたらす「可能性」の1つであるのは間違いない。何しろ、現行のTPP規約がそのようになっているのである。

 とりあえず、事務作業(何しろ公文書の英訳が必要だ)が公共事業の実務を煩雑にし、国内の事業がますます縮小することになるか、少なくとも事業開始が遅延するのは確実だろう。特に、地方のインフラ整備などを請け負っている中小企業は大打撃を被ることになる。

 挙句の果てに、人件費が安い他国の企業と、地方の公共事業において競合させられる可能性さえあるのだから、
「『平成の開国』どころか『平成の壊国』だ!」
などと、罵声が飛び交う羽目になるのは、ほぼ確実である。

 繰り返しになるが、問題なのはTPPの現行規定でもなければ、アメリカの構造改革要望でもない。この手の情報をひた隠しにし、「平成の開国」などというスローガンでことを進めようとする現行政府の手法だ。

 そして、TPP問題を「農業 対 製造業」と、矮小化したスタイルで国民に意識させようとする、メディアの報道姿勢である。農業及び製造業「以外」の部分。すなわちTPPの作業部会の「24分の22」について、ほどんと報じず、論じず、日本社会の構造が大きく、しかも悪い方向に変わってしまったとき、果たして現行政府やメディアは日本国民に対してどのように責任を取るつもりなのだろうか。
■変更履歴
4ページ1、2、4段落目、「国債入札」は「国際入札」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2011/03/07 11:05]
4ページ2段落目、「7.65億円以下」は「7.65億円以上」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです[2011/03/08 17:20]


05. taked4700 2011年10月26日 19:45:19: 9XFNe/BiX575U : IanDpFU7gs
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110310/218923/

「日本こじ開け戦略」とここまで一致
FTA/EPAで十分なはず、アメリカの思惑はどこに?
三橋 貴明  2011年3月22日(火)

 前回まで、TPP(環太平洋経済連携協定)の本質は、アメリカの雇用創出を目的とした日本への「規制緩和要求」あるいは「構造改革要求」であると述べてきた。この種のアメリカからの要求が始まったのは、1980年代の日米貿易摩擦以降であるが、その目的は一貫している。すなわち、「アメリカの」対日輸出を伸ばし、「アメリカ人の」雇用を創出することである。ここで言う輸出とは、もちろん製品の輸出に限らない。

 国内総生産(GDP)上において、輸出は加算項目で、輸入は控除項目だ。すなわち、輸出をすることは相手国の需要を奪い取る行為で、輸入とは自国の需要を献上する行為になるのである。良い悪いの善悪論を論じているのでなく、GDP統計上、そうなるというだけの話だ。

 そして、他国から製品やサービスを輸入すると、「自国では作らない」ということになる。逆に「自国で作る」場合は、自国民が働く必要があるわけだ。当然の結果として、輸出が増えれば自国の失業率は減少する。また、輸入が増えれば失業率は高まる。

自らの故郷でTPPの成果を誇りたいオバマ大統領


 さて、2期目を狙うアメリカのオバマ大統領は、今年11月にハワイのホノルルで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)開催までに、TPPを妥結に持ち込みたいと考えている。何しろ、ホノルルはオバマ大統領が生まれ育った故郷だ。自らの故郷で「アメリカ人の雇用創出に貢献する」TPPの成果を誇り、支持率の上昇につなげたいわけである。

 オバマ大統領自身が一般教書演説で述べたように、現在のアメリカにとって、TPPなど貿易協定の目的は、
「米国人労働者を守り、米国人の雇用創出につながるものに限る」
というわけだ。非常に分かりやすい。今回のアメリカの手法は実にオープンで、ある意味でフェアと言える。

 菅政権はTPPについて「6月までに協議に参加するかどうか、結論を出す」と言っている。だが、11月にオバマ大統領が「故郷に錦を飾る」というスケジュールが決まっている状況において、協議途中で参加を断念するなどの決断が、本当に可能なのだろうか。

 と言うよりも、国益のために協議途上で不参加を決断できるような政権であれば、「平成の開国」などというスローガンベースで事を進めたりはしまい。24の作業項目や既存の(4カ国締結済みの)TPP協定をきちんとオープンにし、国民に情報を共有させた上で議論を行い、参加の是非を決断するはずだ。

 例えば、以下のような情報についても、マスコミに流れないのはもちろん、政治家も全くと言っていいほど口にしない。恐らく、ほとんどの日本の政治家は、以下の情報について知らないのではないだろうか。

 すなわち、TPP加盟国、及び加盟検討国と日本との間の貿易協定の現況である。

【表6-1 TPP加盟国、及び加盟検討国と日本との間の貿易協定の現況】  国名 貿易協定の種類 発効日
TPP加盟国 シンガポール EPA 2002/11/30
チリ EPA 2007/09/03
ブルネイ EPA 2008/07/01
ニュージーランド 未締結  
加盟検討国 マレーシア EPA 2006/07/13
ベトナム EPA 2006/10/01
ペルー EPA 2011年発効予定
オーストラリア 交渉中  
アメリカ 未締結  


 何と、TPP加盟国及び加盟検討国のうち、シンガポール、チリ、ブルネイ、マレーシア、そしてベトナムとの間では、日本はすでにEPA(経済連携協定)を結んでいるのである。また、ペルーとのEPAについて、両国が昨年11月に合意に至り、今年中に発効する予定になっている。(どうでも良い話だが、日本とFTA/EPAを結んでいない3カ国は、見事なまでにアングロサクソン国である。)

 EPAとは、製品やサービスの貿易以外にも、人の移動や2カ国間協力なども含めて締結される、包括的な貿易協定だ。FTAが製品とサービスの貿易の自由化であるのに対し、EPAはより広い分野に渡る自由化を実現するわけである。(さすがにTPPほど、分野が多岐にわたるわけではないが)

「TPPでアジアの活力を取り込む」

 などと主張する人がいるが、別にTPPに加盟せずとも、同協定の「アジアの加盟国、加盟検討国」のすべてとの間で、日本はすでにEPAを締結しているのである。EPA締結時には、当然ながら両国の国益を吟味し、国内への影響が「過激」にならないように協議を重ねた上で締結する。例えば関税引き下げの期限も、ものによっては10年以上先になるケースも少なくない。関税引き下げ実現まで「猶予期間」を取ることで、国内の調整を図りつつ、自由化を実現しようとするわけである。

日本は既にFTA/EPA戦略というバスに乗っている

 例えば、日本がアメリカとFTAなりEPAを検討するというのであれば、筆者は全く反対しない。日米両国が共に自国のために製品やサービス、それに自由化の時期について協議を重ね、貿易協定を締結すればいいだけの話だ。

 ところが、TPPは自由化対象の製品やサービスの対象が極端に広く、関税引き下げなどの期日も極めて近い将来(原則2015年)に設定される。さらに、前回ご紹介した通り、自由化が求められる範囲も、過激と表現しても構わないほどに広い。加えて、既存のTPPでは自由化対象外になっていた金融や投資までもが、いつの間にか作業部会に入り込んでいるのである。

 話を整理するが、日本はTPP加盟国についてはシンガポール、チリ、ブルネイとEPAを締結している。加盟検討国についても、マレーシア、ベトナム、ペルーとの間でEPAを結んでいる(ペルーは合意段階)。すなわち、これらのTPP関連6カ国とは、すでに「日本の国益を考慮し、協議を重ねたEPA」を締結しているのだ。なぜ、この上、わざわざ「過激なEPA」と言えるTPPを推進し、自由化の範囲を拡大しなければならないのだろうか。

 この種の話が出てくると、必ず、
「バスに乗り遅れるな」
などと言い出す人がいる。しかし、既に日本はFTA/EPA戦略というバスに乗っているのである。今後の日本が、粛々と米豪、及びニュージーランドと「自国の国益を考えて」FTAなりEPA締結を目指せば、それで話は済んでしまうのだ。「過激な自由貿易協定」であるTPPに、「平成の開国」などというスローガン頼みでチャレンジする必要など全くない。

 ところが、豪州やニュージーランドはともかく、日米FTAとなると、即座にアメリカ議会が猛反対し、なかなか話が前向きに進まない。なぜ、アメリカの議会が日米FTAに反対するのかと言えば、もちろん「自国の雇用に悪影響を与える」と考えるためである。誰が考えるのかと言えば、アメリカの議員たちで、彼らは日本とFTAを結ぶと「地元の雇用」に悪影響が生じると判断しているわけである。

アメリカとは、本当に分かりやすい国だ


 さて、日米FTAには極めて後ろ向きにも関わらず、アメリカはなぜTPPについては、かくも日本を巻き込むことに熱心なのだろうか。一般教書演説で「自国の雇用優先」と明言したオバマ大統領同様に、アメリカ国内でTPPを担当しているUSTR(米国通商代表部)も、極めてオープンである。

 アメリカの通商代表部は、毎年3月に通商政策のアジェンダを公表する。その中に、TPPに日本を引き入れたい「アメリカの思惑」が、きちんと書いてあるのだ。

参考:【2011 Trade Policy Agenda and 2010 Annual Report】

 上記2011の通商政策アジェンダから引用する。

英文:
The United States continued to engage Japan on a broad array of trade and trade-related issues throughout 2010, with the goal of expanding access to and opportunities in Japan's market.
In late 2010, the United States and Japan agreed to launch the U.S.-Japan Economic Harmonization Initiative as a new, regular forum for bilateral engagement on trade and economic issues.(中略)
The United States and Japan agreed in late 2010 to begin bilateral consultations related to Japan's interest in the Trans-Pacific Partnership (TPP) process, as Japan considers whether it will formally seek TPP membership.

日本語訳:
アメリカ政府は2010年を通じ、日本市場におけるアクセスと機会を拡大するために、日本に対し貿易及び貿易関連の問題を幅広く検討させることを続けた。
2010年後半、米国と日本は、貿易及び経済問題などの2国間関係を話し合うために、新しい、かつ定期的なフォーラムとして、日米経済調和対話を開始することに合意した。(中略)
アメリカ及び日本は、2010年後半、日本がTPP参加するかどうか公式に検討する際に、TPPプロセスへの日本の関心に関連する2国間協議を始めることに同意した。

 アメリカの通商代表部は、上記の通り「日米経済調和対話」及びTPPについて、「(アメリカの)日本市場におけるアクセスと機会を拡大するため」と明言しているわけである。「日米経済調和対話」とは、89年の日米構造協議、93年の日米包括経済協議、94年以降の年次改革要望書に続く、「アメリカが日本に市場開放を要請する場」というわけである。アメリカとは、本当に分かりやすい国だ。

 実際、2月28日から3月4日まで、アメリカからUSTRの担当者が来日し、第一回日米経済調和対話が開催された。2月の時点で、アメリカの「関心事項」は日本側に伝えられていたわけだが、その内容が実に明々白々なのだ。

参考:【日米経済調和対話】

日本の「国の形」が変わるほどの構造改革

 以下のアメリカの「関心事項」は、前回ご紹介した「図5-1 TPPの24の作業部会」と見比べながら、読み進めて欲しい。以下はあくまで項目だけであるため、詳細を知りたい方は上記【日米経済調和対話】のページにアクセスして欲しい。

 以下、アメリカの「関心事項」について、項目別に整理したものだ。 ◆ 通信:周波数、支配的事業者規制、移動体接続料、透明性、国際協力
⇒TPPの24の作業分野における「サービス(電気通信)」など
◆ 情報技術:政府のICT調達、医療IT、クラウド・コンピューティング、プライバシー
⇒TPPの24の作業分野における「サービス(電気通信)」「政府調達」など
◆ 知的財産権:技術的保護手段、著作権保護期間の延長、オンライン上の海賊行為、エンフォースメント手段、保護の例外、特許法と手続き、透明性、日米協力
⇒TPPの24の作業分野における「知的財産権」など
◆ 郵政:保険と銀行サービスにおける対等な競争条件、郵政改革、日本郵政グループの金融会社の業務範囲、国際エクスプレス輸送における対等な競争条件
⇒TPPの24の作業分野における「サービス(金融)」など
◆ 保険:共済、保険の窓口販売、生命保険契約者保護機構(LIPPC)、外国保険会社の事業の日本法人化、独立代理店
⇒TPPの24の作業分野における「サービス(金融)」「投資」など
◆ 透明性:パブリックコメント手続き(PCP)、審議会など、規則の解釈
⇒TPPの24の作業分野における「制度的事項」「紛争解決」など
◆ 運輸・流通・エネルギー:自動車の技術基準ガイドライン、再生可能エネルギーに関する規制制度、申告のための通関事務所の選択、税関職員の共同配置、免税輸入限度額
⇒TPPの24の作業分野における「市場アクセス(工業)」「環境」など
◆ 農業関連課題:残留農薬および農薬の使用、有機農作物、食品添加物、ゼラチン
⇒TPPの24の作業分野における「市場アクセス(農業)」「SPS(検疫及びそれに付随する措置)」など
◆ 競争政策:執行の有効性、手続きの公正性、談合
⇒TPPの24の作業分野における「競争政策」など
◆ ビジネス法制環境:国境を越えたM&A、コーポレートガバナンス、法務サービス
⇒TPPの24の作業分野における「投資」「サービス(クロスボーダー)」など
◆ 医薬品・医療機器:
・ 医薬品・その他:新薬創出・適応外薬解消等促進加算、市場拡大再算定、外国平均価格調整(FPA)ルール、14日の処方日数制限、ドラッグ・ラグ、行政審査期間、手数料、血液製剤、
・ ワクチン:ワクチンに対するアクセス、透明性、ワクチンに関する意見交換
・ 医療機器:外国平均価格調整(FAP)ルール、体外診断薬(IVD)に関する保険償還、大型医療機器に対するC2 保険適用プロセス、デバイス・ラグおよびギャップの解消、企業に対する薬事規制負担の軽減
・ 化粧品:医薬部外品、広告・表示、化粧品・医薬部外品の輸入、その他透明性・規制問題
・ 栄養補助食品:規制分類と表示、健康食品安全規制、食品添加物

⇒TPPの24の作業分野における「サービス(クロスボーダー)」「SPS(検疫及びそれに付随する措置)」「TBT(貿易上の技術的障害)」など


 日米経済調和対話におけるアメリカの「関心事項」が、TPPの24の作業項目と、見事に一致しているわけだ。ご丁寧なことに、TPP作業項目に新たに追加された「金融」や「投資」も、関心事項の中にきちんと含まれている。と言うよりも、そもそもアメリカの日本市場における関心事項の中に「金融」と「投資」があったからこそ、TPP作業部会にこの2つが追加されたというのが真実だろう。

 これほどまでに広範囲の「規制緩和」「構造改革」を、極めて短期間に日本に押し付けることができるのであれば、日米FTAには反対のアメリカ議会も納得せざるを得まい。日米FTAであれば、協議を重ねた上で両国が「妥協」していく必要があるわけだが、TPPにうまく日本を引き込めれば、上記を一気に実現することができるのである。

 アメリカは日本市場を「こじ開け」、自国の雇用改善という目標達成に一歩近づき、オバマ大統領は11月にホノルルで成果を誇り、日本は「国の形」が変わるほどの構造改革を、極めて短期間に強いられるというわけだ。

 これが「TPPの真実」である。

 アメリカ議会が「過激な日米FTA」たるTPPに納得しそうな理由が、もう1つある。すなわち、TPP加盟国及び加盟を検討している国々は、すべて日本と国家構造や経済モデルが異なっているという点である。

日本の味方は1カ国もない

 例えば、TPP加盟国、加盟検討国の中に、単一民族で、かつ本格的な製造業を持つ内需大国は日本しかない。

 アメリカ、豪州、ニュージーランドは農業大国で、ブルネイは王政の資源国。シンガポールは都市国家であり、ベトナム、マレーシア、チリ、及びペルーは低賃金労働を売りにした国々。各国とも、輸出依存度が極端に高い、外需依存国だ。

 さらに、アメリカ、豪州、ニュージーランドは移民国家である。日本と似た「国の形」を持つ国は、1つもない。

 すなわち、日本がTPPのルール作りに参加し、自国の国益のためのルールを主張しようとしても、「組める国」が1つもないのである。6月にTPP協議への参加を決定し、いざ作業部会に乗り込んだところで、味方は1カ国もないというわけだ。

 逆に、アメリカには「組める国」が複数ある。これほどまでに有利な環境が整えられ、かつ「短期間に日本市場をこじ開ける」を実現できるのであれば、アメリカ議会も総立ちで、オバマ大統領に拍手をするのではないだろうか。

 加えて、アメリカは今回のTPPに関連し、ゴールまでのスケジュールを明確に定めている。すなわち、今年の11月、ホノルルで開催されるAPECである。日本がTPP協議に6月に参加し、厳しい情勢を理解したところで、そう簡単に「いち抜けた」はできない。くどいようだが、11月のホノルルにおけるAPECは、オバマ大統領の晴れ舞台なのだ。アメリカ大統領が故郷で錦を飾ろうとしているときに、後ろ足で砂を掛けるような真似が日本政府にできるとは、到底思えない。

アメリカの要求はごくごく当たり前の話


 ちなみに、筆者は別に反米でもなければ、アメリカに対して怒っているわけでもない。アメリカは単純に、自国の国益のために最も適切なソリューション(解決策)を選択しようとしているだけだ。

 アメリカが自国の国益、具体的に書くと、雇用改善のために日本に規制緩和や構造改革を要求するのは、ごくごく当たり前の話だ。現時点においては、それこそがアメリカの国益に即しているのである。

 筆者は日本政府、いや日本国民に一言だけ言いたいだけだ。そろそろ、日本国民も「平成の開国」とやらのスローガンに踊らされず、「日本の国益」を考えるべきではないだろうか。


06. taked4700 2011年10月26日 19:49:47: 9XFNe/BiX575U : IanDpFU7gs
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110324/219132/

年10兆円超、存分に復興資金を投じろ
「子ども手当」「高速道路無料化」「高校無償化」……“4K予算”はすべて廃止
三橋 貴明  2011年3月28日(月)

 東北太平洋沖地震で亡くなられた方々のご冥福を、心からお祈り申し上げます。また、被害に会われた皆様にお見舞い申し上げます。

 被災地において、少しでも被害を小さくすべくご尽力されている現場の皆様に、日本国民の一人として心から感謝申し上げます。

(三橋貴明)

 我々日本人は、世界屈指の震災大国に住んでいる。だからこそ、過去の日本人は「国民の安全を高めるための投資」を積み重ね、震災に会うたびに復興のための努力を続け、何度も、何十度も「震災と復興」のプロセスを繰り返して来た。我々は、不定期に襲い掛かってくる自然災害により、理不尽に生命や財産を奪われ、それでもなお、日本列島において世界に類を見ない文化・伝統を築き上げて来た日本人の子孫なのだ。

阪神淡路の時、経済の成長率は高まった


 今回の震災においても、我々は過去の日本人同様に、復興のために力を尽くし、世界が驚くほど速やかに震災の打撃から立ち直ることができると信じる。それは、もちろん現在に生きる我々のためでもあるが、同時に、将来の日本人に対する責任でもあるのだ。

 1995年の阪神・淡路大震災の際には、日本政府及び日本国民は、復興のための建設投資を拡大した。具体的には、土木、住宅投資、非住宅投資の3つが増加し、結果的に日本経済の成長率は高まった。

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 日本の建設投資はバブル期にいったんピークアウトしたが、その後、96年に2度目のピークを迎えている。阪神・淡路大震災を受け、まずは95年に土木投資が、翌96年に住宅投資が増えた。震災からの復興は、インフラ再整備のための土木投資に始まり、民間の住宅投資拡大に波及するというプロセスを踏むわけである。

 さて、バブル崩壊後、すなわち92年以降の日本においては、政府の総合経済対策が継続していたこともあり、景気が次第に回復していった。阪神・淡路大震災の復興事業が続く96年、日本の実質GDP成長率は2.6%、名目GDP成長率が2%と、バブル崩壊の痛手から脱したかに見えた。

 さらに、翌97年には名目GDPの成長率が2.1%と、ついに実質値(1.6%成長)を上回ったのである。すなわち、日本経済は97年に一時的に、デフレを脱した可能性があるのだ。この年に、橋本政権が緊縮財政や構造改革を強行さえしなければ、その後の日本がこれほど長期に渡りデフレに苦しめられることはなかっただろう。

菅政権は村山・橋本政権期のコピーのようだ

 橋本政権が実施した消費税増税、公共投資削減などの緊縮財政は、総需要抑制策である。需要を抑制することで、インフレ率を押し下げる政策なのだ。すなわち、インフレ対策である。

 また、橋本政権を中心に実施された金融ビッグバン(第1次)などは、まさしく小泉政権以降の「構造改革」を先取りしたものである。金融ビッグバンの場合、フリー、フェアー、グローバルの3原則に基づき、金融産業を国際化、自由化したわけだ。結果、日本の金融産業に「市場原理主義」が導入され、金融機関の競争が激化した。

 筆者は別に、構造改革や規制緩和を真っ向から否定するわけでも何でもない。とはいえ、この種の政策が総供給を拡大することは間違いない事実なのだ。規制緩和などで生産性を高め、供給能力を高めることが必要なのは、果たしてどんな時期だろうか。もちろん、国内の需要に対し、供給能力が不足している時期、すなわちインフレ期である。間違っても、デフレ期ではない。

 橋本政権は、96年、97年の景気回復を受け、いまだに日本がデフレから完全に脱却していたわけではないにも関わらず、「総需要抑制(=緊縮財政)」「総供給拡大(=構造改革)」という、2つのインフレ対策を実施したのだ。その後の日本が、極度のデフレ深刻化に苦しめられたのも、ある意味で当然に思える。

 2011年。日本は死者・行方不明者が阪神・淡路大震災の3倍を上回る東日本大震災に襲われた。この時期に政権を担当している菅直人内閣の政策の目玉が、「税と社会保障の一体改革」という緊縮財政、そして「TPP(環太平洋経済連携協定)」という名の構造改革というわけである。震災、緊縮財政、そして構造改革と、菅政権は村山・橋本政権期のコピーのようだ。

「デフレの禍」が伝播していく

 日本というのは、本当に不思議な国である。

 今回の震災で東日本地域が大きな打撃を受け、特に東北の農家が甚大な被害を被った。普通に考えて、このような環境下においては「アメリカの雇用改善のための、日本の構造改革」であるTPPなど、検討にも値しないはずである。

 ところが、TPP推進派(と言うか、環境条件を無視した構造改革派)は、これまでのパターンから予測すると、

「大震災により日本経済は打撃を受けた。だからこそ、平成の開国を実現して、経済成長を実現しよう」
「東北の農家が大打撃を受けた。だからこそ、農地集約化で生産性を高め、平成の開国にも対応できるようにしよう」

などと無茶を言い出しかねないので、注意が必要である。構造改革派の人々や省庁は、基本的には結論が常に同じである。

 何しろ、95年の阪神・淡路大震災により日本経済の打撃を受けると、
「強靭な日本経済の再建を!」
というスローガンが叫ばれ、一連の構造改革が始まった。いまだデフレを完全に脱却していないにも関わらず、構造改革及び緊縮財政が強行された結果、98年には実質GDP成長率マイナス2%、名目GDP成長率マイナス2.1%と、日本経済は奈落の底に突き落とされてしまったのである。

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 2011年時点の日本は、1997年前後よりも深刻なデフレに苦しんでいる。こんな状況で、TPP(及び「税と社会保障の一体改革」)のようなインフレ対策を実施された日には、日本経済の「失われた○○年」は、未来永劫、続いていくことになりかねない。現在の日本にとって必要なのはデフレ対策であり、インフレ対策ではないのだ。

 TPPのような自由貿易「系」のインフレ対策を、デフレの国が採用することが問題なのは、「デフレの禍」が伝播していくためである。例えば、海外から安い農産物が流入したとき、困るのは日本国内の農家に限らないのだ。外国の安価な農産物を利用すると、加工食品産業や外食産業がコストを削減することが可能になる。すると、外国農産物に依存しない加工食品、あるいは外食の企業までもが、対抗して価格を下げざるを得ない。

 要するに、日本国内で価格競争の激化が伝播していくわけだ。価格競争が激化する中で、人件費を上げられる経営者はいない。と言うよりも、価格競争激化は、普通に人件費削減要因になる。価格競争の伝播により、人件費が下落し、あるいは失業者が増え、日本のデフレはますます深刻化していくことになる。

期間が不明、TPP参加の経済効果試算

 断っておくが、筆者は別に市場競争を否定しているわけでも何でもない。消費者にとっては、競争激化により、高品質の製品やサービスを安価に手に入れられる状況は、素晴らしいの一言に尽きる。これだけデフレが深刻化しているにも関わらず、日本はいまだに米韓両国のように、国内諸産業が寡占化していない。健全な市場競争が維持されている日本は、むしろ資本主義の鏡であるとさえ思っている。

 それにしても、デフレは問題だ。継続的に物価が下落していく環境では、失業者が増え、労働者の実質賃金が下がり、デフレがさらに深刻化していく。国内の健全な競争が維持されているうちに、日本は何としてもデフレから脱却しなければならないのだ。ところが、現政権がデフレ環境下にも関わらず「インフレ対策」であるTPPを推進しようとしているからこそ、筆者は反対しているわけである。

 しかも、TPPにより日本経済の成長率が大きく高まり、政府の増収が見込めるならともかく、どうやらそれも怪しいようである。週刊東洋経済3月12月号で、TPPの効果に関する内閣府試算を担当した川崎研一氏が、以下のように語っている。

 「私が算出した政府試算は、関税撤廃等の自由化を10年やった場合の累積だ。TPP参加、不参加で3兆〜4兆円差がつくとみているが、1年で3000億〜4000億程度、GDPなら0.1%相当にしかならない」

 内閣府の「EPAに関する各種試算(2010年10月27日公表)」を見ると、TPP参加(100%自由化)の場合、実質GDPが0.48%〜0.65%増加(2.4兆円〜3.2兆円増)し、参加しない場合には実質GDPがマイナス0.13%〜0.14%(0.6兆円〜0.78兆円減)となっている。すなわち、TPPへの参加不参加で、実質GDPに3兆円から4兆円の乖離が発生すると明記されているのだ。

 ところが、内閣府の試算の数値が「何年間」で生じるものなのかについては、明記されていない。筆者はもちろん本資料を事前に読んだが、普通に「1年間」における試算値だと思っていた。ところが、実際に試算を担当した川崎氏によると、本試算は「10年間の累積」という話なのである。

日本のデフレギャップは宝に変わった


 改めて考えてみると、第3回の「図3-1 日本のGDPと輸出額」で示した通り、日本の輸出がGDPに占める比率は11.458%(数字はいずれも2009年)、耐久消費財の輸出が1.652%に過ぎない。

 世界最大の市場とはいえ、アメリカが5%(家電の場合。乗用車は2.5%)の関税を撤廃してくれたところで、日本のGDPがそれほど増えるはずもない。毎年「実質GDPの0.1%の成長をするか否か」程度の話に過ぎないTPPを、大仰に「平成の開国」などと名づけ、政府マスコミ総出で大キャンペーンを行ってきたわけだ。

 無論、自国の雇用環境改善のために、日本の非関税障壁撤廃を望むアメリカにとって、TPPが持つ価値は大きい。日本は毎年、実質GDPが0.1%増えることと引き換えに、国内のデフレ悪化を容認し、アメリカの雇用改善に貢献するわけだ。

 割に合う話ではない。

 ちなみに、日本はTPPなどに参加しなくても、アメリカの雇用環境改善には貢献できる。すなわち、巨大化したデフレギャップ(供給能力と実際の需要の乖離)を埋めるべく、政府が公共投資を中心とした財政出動を行い、内需中心の経済成長を達成することで、アメリカからの輸入を増やせば良いのである。無論、日本の内需が拡大すれば、アメリカのみならず、TPP参加国、参加加盟国からの輸入も増え、環太平洋諸国の経済成長に貢献できる。

 これまで、日本のデフレギャップは、経済の足を引っ張るボトルネックであった。ところが、東日本震災が発生したことで、日本のデフレギャップは「宝」に変わった。何しろ、日本はデフレギャップが存在する限り、政府が国債を増発し、東北地方の復興のために支出(=需要)を拡大しても、インフレにはならないのだ。

 日本のデフレギャップは、間違いなく世界最大である。日本以外の国が、今回のように大震災の被害を受けると、インフレ率が上昇し、通貨が安くなる。日本のように国内の余剰供給能力が大きくなっている国はそうはないため、震災による国内需要の拡大は、供給能力の不足による物価上昇をもたらす。物価上昇によりインフレ率が高まると、実質金利(=名目金利−期待インフレ率)が下落し、通貨は売られやすくなるわけだ。

 ところが、日本の場合、震災により円安になるどころか、逆に1ドル=76.25円をつけ、95年の対ドル最高値(79.75円)を更新してしまった。無論、震災発生後の極端な円高は、海外投資家の思惑先行という面が強かった。それにしても、日本が供給能力不足により、インフレ率上昇が期待される国であるならば、大震災の直後に通貨が史上最高値をつけるなどという現象は発生し得ない。

所得移転を受けるべきは非被災地住民ではない

 現在の日本がやるべきことは、TPPなどという「アメリカのための構造改革」ではない。有り余る供給能力を活用し、政府主導で東北地方を復興することだ。

 現時点で、東日本大震災の被害総額は、20兆円前後に達する見込みである。政府は少なくとも年間十兆円規模の復興予算を複数年(できれば5年)成立させ、被災地の復興事業として支出(=需要)する必要がある。財源は、もちろん国債発行で構わない。民間の資金需要が低迷し、銀行が過剰貯蓄問題に悩んでいる環境下においては、政府が国債増発で資金を吸い上げても、長期金利は上昇しない。

 また、長期金利が上昇したならば、日銀が国債を買い取り、マネタリーベースを拡大すれば済む話だ。そういう意味で、今回の復興事業においては、政府と日銀の一時的な協調、すなわちアコードが必須である。

 直接的にGDPを拡大するわけではない所得移転系の支出、すなわち「子ども手当」「高速道路無料化」「高校無償化」そして「農家戸別所得補償」といった、いわゆる4K予算は、すべて廃止し、被災地に振り向けるべきだ。現時点で、所得移転を受けるべき日本国民は被災地住民であり、非被災地住民ではない。

「国民の安全を守るためのコンクリート」に投資


 さらに、福島原発が被害を受けたことで供給が不安定化している電源開発の強化、全国的な防災事業、民主党政権が予算を削減、凍結してしまった小中学校の校舎耐震化や、高速道路の耐震化プロジェクトの再始動など、政府が公共投資として支出を拡大すべき分野はたくさんある。政府の公共投資とは、GDPの需要項目の1つだ。すなわち、現在の日本は「日本国民の安全を高めるために」公共投資を推進し、政府の支出を起爆剤に民間の資金需要を拡大し、「総需要拡大」によりデフレ脱却を図るべきなのだ。

 「コンクリートから人へ」ではなく、「国民の安全を守るためのコンクリート」に投資をする。それこそが、現在の日本政府に求められている政策であり、日本人が長期にわたり繰り返して来た復興と成長のプロセスである。

 デフレ脱却策が明確にも関わらず、TPPという構造改革や、消費税アップなどの緊縮財政、すなわち「インフレ対策」を実施し、デフレそ深刻化させる喜劇を繰り返すのは、もはや終わりにすべきだ。


07. taked4700 2011年10月26日 19:54:02: 9XFNe/BiX575U : IanDpFU7gs
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110331/219249/

アメリカの「誰が」推進したいのか
国民に、目隠しをしたまま交差点を渡らせてはならない
三橋 貴明  2011年4月4日(月)

 本連載は今回が最終回である。

 民主党の菅直人内閣は、参院予算委員会において、環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題について、当初の6月判断を先送りする考えを示した。東日本大震災という大災害からの復興という、喫緊の課題に直面している以上、当然である。

 とはいえ、経済産業省や外務省、及び日本国内のTPP推進派は、TPPについて諦めたわけでも何でもない。95年の阪神大震災後に、一気に日本で各種の規制緩和が進んだことを思うと、半年以内に、

「震災から復興するためにも、日本経済の強化が必要だ」

などの、イメージ優先の理屈を編み出し、「復興のためにこそ、TPP推進」といった論調が、新聞に載り始めることになるだろう。日本国民は、今こそイメージにとらわれることなく、冷徹な視線でTPPをはじめとする各政策について理解しなければならない。

4カ国締結済み協定が公開されていない


 本連載第1回より、筆者はTPPについて「平成の開国です」などとイメージ優先で事を進める政府を批判してきた。もちろん、各種の情報がきちんとオープンにされ、国民的な議論が巻き起こった上で、日本国民がTPPを選択するというのであれば、それはそれで構わない。

 とはいえ、現実には(信じられないことに!)いまだにTPPの現行協定、いわゆる「P4協定」の正式な日本語版がオープンにされていないのだ。今さらであるが、TPPとは「これから結ばれる協定」などではない。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が、すでに締結済みの協定なのだ。4カ国が締結済みP4協定を国民に公開することは、この種の協定を検討する際には基本中の基本であろう。

 ところが、故意なのかどうかかは知らないが、民主党政権はいまだに現行のP4協定について明らかにせず、「平成の開国です」などと、イメージを優先させることを続けている。国民は現行協定を日本語で読むことなく、「平成の開国」などのフレーズを頼りに、TPPについて検討しなければならないのだろうか。

 適切な情報を、適切なタイミングで政府が提供することは、民主主義の基本だと思うわけだ。少なくとも、民主党政権による現在のTPP検討手法は、民主主義の基本を疎かにしていると断ぜざるを得ない。

 本連載も最終回ということで、TPPとは「結局、何なのか?」についてまとめておきたい。ここで言うTPPとは、シンガポールなどが締結済みのP4協定の話ではない。2009年の、アメリカによる参加表明以降のTPPについてである。

 アメリカにとって、日本が入らないTPPなど、ほとんど意味をなさない。何しろ、連載第1回で見た通り、現状のTPP参加国、参加加盟国のGDPを合計すると、日米両国で9割のシェアになってしまうのである。また、第2回でご紹介した通り、アメリカが輸出倍増計画による自国の雇用改善を望んでいる以上、現行のTPPの目的が、

「日本にアメリカの農産物やサービスなどを輸出する」

ことにあるのは明白だ。

アメリカの関心事項は金融や投資

 第6回で見たように、アメリカの新たな構造改革要求の場である「日米経済調和対話」における「アメリカの関心事項」と、TPPで検討されている24の作業項目は、見事なまでに一致している。ご丁寧なことに、元々のP4協定には存在しなかった「サービス(金融)」や「投資」までもが、24の作業部会の中に含まれているわけだから、まさに何をか言わんや、である。単純に、日米経済調和対話において、アメリカの関心事項に金融や投資が入っているからこそ、作業部会の方にも加わっただけなのである。

 さて、前回までをお読みいただいた読者は、アメリカが「TPPで何をしたいのか?」については、概要をご理解いただけたのではないかと思う。次に問題になるのは、「誰がTPPを推進したいのか?」である。

 この問いに「誰が推進したいかって? アメリカだろ」と答えたくなる人は多いだろうし、もちろんその答えは正しい。しかし、ここで問題にしたいのは「アメリカの『誰が』推進したいのか?」という話である。

 実は、アメリカは「誰がTPPを推進したいのか?」についても、きちんとオープンにしている。と言うよりも、全く隠していない。何というか、アメリカという国は、ある意味で本当にフェアである。

日本政府相手の訴訟も可能になる

 アメリカには、「TPPを推進したい誰か」が集まった「TPPのための米国企業連合」という団体がある。

 「TPPのための米国企業連合」は、TPPがアメリカにとって「死活的な問題である」と位置づけ、ホワイトハウスに様々な要求を突きつけている。すなわち、TPP加盟国がアメリカの製品やサービスを拒むことができるような「抜け穴」は、決して作ってはならないと、オバマ政権に圧力を掛けているのだ。

 同企業連合は、特に六つの分野を重要視している。すなわち、「市場開放」「知的財産権」「投資」「簡素化された貿易」「規制の統一」「公正な競争」の6分野である。例えば、「投資」の分野において、「TPPのための企業連合」は、

「米国の対外投資にとって安定した非差別的な法的環境の典型をつくり出すために、強力な投資保護、市場開放規定、紛争解決を組み込むべきだ」

と主張している。

 何を言っているのかといえば、北米自由貿易協定(NAFTA)同様に、TPPにおいても「国際投資紛争解決センター(ICSID)」を仲裁機関に指定しろ、という話である。TPP協定に投資が含まれ、ICSIDによる「紛争解決」が組み込まれると、外資系の投資企業が投資相手国の政府をICSIDに訴え、損害を弁済させることが可能になってしまう。より具体的に書くと、例えばアメリカ系投資企業が、日本政府を相手に訴訟を起こし、巨額賠償金を得ることも可能になるのである。

PCB輸出禁止で違反とされたカナダ


 実際にICSIDによる仲裁機能が組み込まれている貿易協定、すなわちNAFTAの例を1つ上げておこう。

 NAFTA発効(1994年)後、アメリカ系の企業SDマイヤースは、カナダにおいてPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物処理をビジネスにしていた。ところが、カナダ政府が「カナダ国内」からのPCBの輸出禁止を決定したため、SDマイヤースは経営不振に陥ってしまう。SDマイヤースは1998年に、カナダ政府がNAFTAの規約に違反しているとして、ICSIDに訴えた。ICSIDは2000年に、SDマイヤースの訴えを認め、カナダ政府がNAFTAの内国民待遇を犯しているとの判決を下したのである。

 カナダ政府が「自国からの」PCB輸出を禁止したのは、カナダ政府、あるいはカナダ国家としての主権行為である。これをとがめることができるのは、本来はカナダの主権を持つカナダ国民だけのはずだ。ところが、貿易協定(このケースではNAFTA)に「投資」が含まれていると、外資系投資企業が「投資相手国の政府を訴える」という、無茶が通ってしまうのである。

 率直に言って、カナダ国民の主権が侵害されているとしか思えない。 ◇ TPPの作業項目に、元々のP4協定にはなかった「投資」が含まれていること。
◇ 「TPPのための米国企業連合」が「投資」について、何を要求しているのか。


 上記を理解した上で、TPPについて「いや、単なる平成の開国だよ」などと、呑気なことを言える日本国民はいないのではないだろうか。

 さて、「TPPのための米国企業連合」であるが、果たしてどのような企業、団体が加盟しているのだろうか。まさに、豪華絢爛といった顔ぶれだ。

 例えば、農業分野では、世界の穀物市場や農産物市場を牛耳る、いわゆる「穀物メジャー」の1社であるカーギル。「GM作物」、すなわち遺伝子組み換え作物の種子の市場において、何と世界の9割のシェアを握る巨大企業モンサント。さらに、アメリカ大豆協会やトウモロコシ精製協会、全米豚肉生産者協議会等、アメリカ国内で巨大な権力を持つ農業団体が「TPPのための米国企業連合」に参加しているのだ。

 もはや、この時点で「お腹いっぱい」という感じであるが、同企業連合に参加している企業の顔ぶれは、こんなものではない。金融分野からは、シティ・グループ。通信分野からAT&T。世界最大の建設会社であるベクテル。日本でもお馴染みの、建設機械の最大手キャタピラー。世界最大の航空機製造会社ボーイング。飲料分野からコカ・コーラ。物流サービス世界最大手のフェデックス。IT系ではヒューレット・パッカード、IBM、インテル、マイクロソフト、オラクル。世界最大の医薬品メーカーであるファイザー製薬。医薬品世界第2位のジョンソン・エンド・ジョンソン。世界最大の小売業、ウォルマート。さらに、世界最大のメディア・コングロマリットであるタイム・ワーナー。

 上記のほかにも、アメリカ生命保険会社協議会、先進医療技術協会など、アメリカが誇る「サービス業」の団体が、ずらりと顔を揃えている。

国家は「サービス」も輸出できるのである

 上記の凄まじい顔ぶれが名を連ねる「TPPのための米国企業連合」が、オバマ政権に対し、「TPP交渉で妥協をするな」と要請を出しているわけである。理由はもちろん、彼らのビジネス戦略上、TPPで他国の市場をこじ開けることに意味があるためだ。

 日本人の多くは知らないと思うが、実はアメリカは「世界最大のサービス輸出国」である。輸出と聞くと、日本人は「工業製品の輸出」を頭に思い浮かべてしまう。あるいは「アメリカの輸出」の場合は、「農産物」の輸出になるだろうか。

 ところが、実は工業製品や農産物などの形がある「財」だけではなく、国家は「サービス」も輸出できるのである。と言うか、そもそもGDP(国内総生産)上の「純輸出」は、工業製品や農産物の輸出から輸入を差し引いたもの、すなわち貿易黒字を意味しているわけではないのだ。工業製品や農産物などの「財」の輸出入に加え、「サービスの輸出入」も統計上、きちんとカウントされているのである。すなわち、国際収支上の「貿易・サービス収支」である。

 サービスの輸出とは何だろうか。財務省の国際収支統計を読むと、サービスの収支の解説は以下の通りとなっている。

◆サービス収支 サービス取引の収支を示す。 輸送 :国際貨物、旅客運賃の受取・支払
旅行 :訪日外国人旅行者・日本人海外旅行者の宿泊費、飲食費等の受取・支払
金融 :証券売買等に係る手数料等の受取・支払
特許等使用料 :特許権、著作権等の使用料の受取・支払


 すなわち、国境を越えて「売買」される貨物運送や、航空サービス、海外旅行、「金融サービス」、そして特許等のライセンス料が、国際収支上の「サービスの輸出入」になるわけだ。TPPの24の作業部会の中に「知的財産権」があったが、覚えておいでだろうか。これは、特許や著作権などの「知的財産権の輸出」を意味しているのである。

 ちなみに、日米経済調和対話の「アメリカの関心事項」や、「TPPのための米国企業連合」の要望の中にも、「知的財産権」がきちんと入っている。「TPPのための米国企業連合」は、知的財産権を含めた理由について、

「知的財産権は米国の経済成長と雇用を支えている。知的財産権の保護規定は米国がTPP諸国と結んだ既存の通商協定に基づくべきだ」

と、説明している。

 すなわち、アメリカ(もしくはアメリカ企業)にとって、知的財産権とは「輸出したいサービス」の1つなのである。

 輸出されるサービスは、前述の輸送、旅行、金融、特許使用料のほかにも複数ある。例えば、医療や教育、通信や保険、建設や文化・興行、それにビジネスサービスなどである。先の「TPPのための米国企業連合」の企業の顔ぶれと比較すると、かなり納得していただけたのではないだろうか。

画像のクリックで拡大表示

 図8-1の通り、アメリカのサービスの輸出は、2009年時点で既に輸出総額の3分の1を占めるに至っている。日本のサービスの輸出が輸出全体に占める割合は、わずかに10%強でしかない。アメリカは、ことサービスの輸出については、日本など歯牙にもかけない「先進輸出国」なのである。

 グラフを見ると、1980年台以降にアメリカのサービスの輸出が急拡大しているのが分かる。この時期、各国と貿易摩擦を引き起こしたアメリカは、製造業の輸出で日独などには勝てないことを理解したのだろう。結果、輸出促進の主力をサービスに切り替えたというわけだ。

画像のクリックで拡大表示

 アメリカのサービス輸出の内訳をグラフ化したものが、図8-2である。アメリカのサービス輸出拡大は、当初は輸送や旅行が中心だった。ところが、90年代から「その他サービス」が急激に伸び始め、2000年頃に輸送・旅行を抜き去っている。

 その他サービスとは、金融、保険、IT、ビジネスサービスなどになる。今や、「その他サービス」は、アメリカのサービス輸出全体の、ほぼ半分を占めるに至っている。これは90年代後半以降の、ITや金融工学の発展と、もちろん無関係ではない。

「スローガン先行」の政治から抜け出せ

 さて、全8回にわたり、TPPについて色々と書いてきた。何度も繰り返すようで恐縮だが、筆者は別にTPPに象徴される貿易協定や構造改革について、全面的に否定しているわけでも何でもない。とはいえ、どんなソリューション(解決策)であっても、適切な時期というものがあるのだ。あるいは、時機を逸したソリューションは、言葉の響きがどれほど美しくとも、適切ではないのである。

 また、TPPほど大規模な「改革」を、政府がほとんど情報をオープンにせず、「平成の開国」などのスローガン先行で推進しようとするのは、民主主義国家として問題があるとしか言いようがない。情報が適切に与えられない状況では、国民は目隠しをしたまま交差点を渡らなければならなくなってしまう。

 TPPを推進する人たちは、「情報の非公開」「スローガン先行」「悪者を作る(TPPの場合は農業)」といった、日本の政治スタイルの悪い部分が凝縮されたような手法を採っている。これはさすがに、看過することができない。

 本連載や「TPPについて考えること」をきっかけに、日本国民が「スローガン先行」の政治から抜け出せることができれば、筆者としてこれに勝る喜びはない。


08. 2011年10月26日 20:47:51: 0EopofEgjc
すいません。
コメント長すぎw

09. 2011年10月28日 14:43:18: FUviF2HWlS
taked4700さん、投稿ありがとうございます。
2月14日から3月28日の記事については、コメントよりも、フォローアップ投稿の方が読みやすかったと思いました。


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