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菅―野田と官僚機構に手を引いてもらわないと道さえ渡れないような政治家が内閣総理大臣なのだから仕方がないが、諸外国に救済をお願いするわけでも、デフォルトで迷惑をかけるわけでもないのに、消費税の税率アップを国際会議で確約するというのは愚かの極みだ。
官僚が、安住財務相のときと同じで、「国際会議でぶちあげておけば“国際公約”ですから、党内は反対できなくなりますから」というくらいのことを吹き込んだのだろう。
ＴＰＰ問題では、オバケになるような危ない情報を必死に秘匿し、曖昧な説明やゴマカシの説明でちらちら見えているオバケに煙幕をかけているのに、財政問題では、「ギリシャのように『日本発の危機』を起こさぬ覚悟」と、まるで日本にもデフォルト問題のオバケがいるように煽っている。
財政破綻とは政府債務の不履行を意味するとして、財政破綻を主張している人や煽っている人に訊きたい。
もうダメだという声が上がってからでも１０年以上が経ち、その間だけでも政府債務は３００兆円ほど純増しているが、債務不履行には陥っていない。
今後、どういう過程、もしくは、どういう論理で日本の政府債務が履行できなくなるのか説明してもらいたい。
財政危機に関する論考をいくつか読んでみたが、財政危機は語られてはいても、どういう論理で財政破綻に陥ってしまうのか、納得できるレベルの説明をしているものに遭遇したことがない。
引用する記事に、「経常黒字国で国内の貯蓄が豊富な日本は国債の９割を国内で消化し、債務危機は顕在化していないが、財政は世界でも突出して悪化している」と書かれているが、ほとんどが円建てで、外貨建ての日本国債はなきに等しいボリュームだから、経常収支が黒字かどうかは債務の履行に影響しない。
債務残高はともかく、税収が一般歳出の半分さえ満たしていない状況が続いているのは異様である。しかし、それならインフレが起きてもおかしくなく、それこそが放漫財政が忌避されるわけでもあるのだが、日本では、インフレどころかデフレ基調がずっと続いている。さらに、４０兆円を超す国債の発行が続いても金利は上昇しない。
問題にすべきは、このような現実なのであり、財政破綻や政府債務残高の対ＧＤＰ比をあれこれ騒いで不安を煽るような問題ではないのだ。
税収が歳出の半分もない財政状況が続いているのに、インフレにならないどころかデフレが続いている論理を見つけ出し、その考察をベースに、緩やかなインフレに転換する処方箋を書き、それを実行することこそが“財政危機”を解消する道でもある。
これからもずっと財政に問題が起きることはないと言いたわけではない。
製造業の海外移転や高齢者比率の増大など、日本経済には“インフレの潜在エネルギー”がふつふつと蓄えられている。
“インフレの潜在エネルギー”が顕在化するのは、貿易収支が赤字基調になったときであろう。経常収支が黒字であっても、国内供給力の大きさを示す指標でもある貿易収支が赤字になればインフレの芽がむくむくと育つ。
（所得収支の黒字は外国の供給力から得た配当や利子が中核を占めるものだから、循環的に国内の供給力アップに寄与しているが、貿易収支はその貢献も含んで算定される）
記事は続いて、「歴史的な円高や海外経済の減速で日本の輸出は減少傾向にあり、海外で稼ぐ力が衰えて国債を国内で買い支えられなくなり、日本の債務問題が世界経済のリスク要因に浮上する懸念は拭えない」と説明している。
これまでや現在のような政策が続く限り、貿易収支はそれほど遠くない未来に赤字基調に転化すると思っているが、経常収支は海外からの大きな所得に支えられてしばらく黒字基調が続くだろう。
「国内の貯蓄が豊富な日本は国債の９割を国内で消化」とあっさり書いているが、これはゴマカシの説明である。
１５００兆円とされる家計貯蓄残高だが、０７年から０９年までは家計貯蓄残高そのものが減少し、家計から銀行や生保に入ったお金は、国債だけではなくより収益性が高い融資や内外証券投資にも振り向けられており、毎年３０兆円も純増している国債を買い続ける貯蓄余力はない。
日本の国債は、借換債は別として、日銀の買い入れ（年間約１７兆円）と実質ゼロ金利で日銀から借りた銀行による利ザヤ稼ぎのための国債購入で支えられていると言える。
（日銀は、借換債とちがって、直接の引き受けではなく市中（銀行）から買い入れるので、日銀が支払ったお金が銀行の新発国債の購入に回ることになる。利ザヤ稼ぎは主として短期国債が対象になる）
日本の国債償還は、５年とか１０年といった債券記載償還年限とは無関係にトータルで６０年償還計画が立てられているので、日銀の国債買い入れが今後も同じペースで続くなら、バランスシート制約を脇におけば、１７兆円×６０年＝１０２０兆円となり、現在の国債債務残高およそ６７０兆円を十分カバーする。
日銀は、米国のＦＲＢのように民間銀行ではなく、日本政府が株式の過半数を保有する中央銀行だから、日銀に利払いしても国庫納付金で吸い上げることができるし、日銀の保有国債を含む資産の過半は政府（国民）のものである。
記事は、「日本の債務不履行（デフォルト）が現実味を帯びれば、世界経済への打撃は計り知れない。日本の消費税率は海外と比べて低いだけに、各国から増税圧力が増すことも予想される」と、野田政権＝財務省の増税政策をサポートしている。
しかし、前述したように、日本国債はほぼ円建てだから、これまでのドルと同じで、インフレで円の価値が下落したとしても、債務不履行に陥ることはあり得ない。
政府も学者もメディアも、悪意（知っていること）か無知かわからないが、消費（付加価値）税の税率をアップしたからといって税収そのものが増えるわけではない歴史的事実を無視している。
８９年の消費税導入や９７年の消費税税率アップは、税収的にみると、同時に行った法人税や所得税の減税で減少した分のカバーさえできていないのだ。
そんなことくらい財務省もわかっている。それでも消費税のアップにこだわるのは、今回は消費税アップに先だち実施する法人税減税を恒久化し、さらにもっと減税したいからである。
もう一つ、消費税がアップすれば、それで増収が得られなくても、トヨタなど輸出優良企業の「消費税還付金」（謂われない還付も含まれている）は増大する。
現在の消費税率５％で１兆円と言われているから、消費税が１０％になれば、輸出免税に伴う還付金は２兆円になる。
トヨタなど輸出優良企業は、還付金を考慮すると、国内向けでもあれだけ販売していながら消費（付加価値）税をまったく納付していないことになる。
２兆円といえば、消費税１％分に相当する金額だから、５％アップするうちの１％は輸出優良企業の還付金に回ることになる。
政府は、居もしない「財政オバケ」を持ち出して国民を先行き不安に陥れ、消費税増税も仕方がないという気分にさせている。
そのようなインチキで消費税を引き上げることで生まれる現実は、中低所得者による“相互扶助”社会の深化なのである。
日本人の多くが政府が国民を意図的にいたぶるようなことはしないと思って政府を疑わず、ちょっと気がきく人は、成熟経済の宿命でありグローバルな大競争のなかで生きていくためにはしかたがないことだと納得しているように思える。
そのような国民のやさしさや受忍意識をいいように利用して、“稼ぎは少なくても数が多いんだから、彼らが消費税を少しずつ負担してお互いが助け合う社会をつくろう”としているのが官僚機構や主流の政治家たちなのである。
政治家や官僚機構そしてメディアや学者のまやかしの脅しにのることなく、消費税の増税を拒否しなければならない。
消費税増税をはねつけることこそが、日本経済のさらなる低迷を防ぐことであり、インフレ潜在エネルギーを緩和することであり、財政の悪化を防ぐ第一歩なのである。
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野田首相、消費税増税を国際公約 高まる財政再建圧力
2011.11.3 22:58
野田佳彦首相は３日始まった主要２０カ国・地域（Ｇ２０）首脳会議（サミット）で、消費税増税を表明する。欧州債務危機が主要議題となる中、巨額の国債を発行している日本にとっても危機が「対岸の火事」で済まなくなる恐れは否定できないため、財政再建への決意を「国際公約」として明確にする。ただ、東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税も検討するなど、財務省の敷いた路線に乗り相次ぐ増税を打ち出す首相に対し、「日本経済を冷え込ませる」との批判も強い。公約実現への道のりは平（へい）坦（たん）ではない。（仏カンヌ 加納宏幸、本田誠）
◆行動計画にも明記
「世界経済は民間と政府が債務を過剰に抱えるという課題に直面している」
首相は３日、Ｇ２０に先立って開かれたビジネスサミットでこう演説し、債務問題の解決に向けた結束の必要性を訴えた。
首脳会議では、各国が財政再建の具体策や内需拡大策を示す。首相も２０１０年代半ばまでに消費税率を１０％に段階的に引き上げる方針を表明し、財政再建に取り組む姿勢をアピールする。
首相は首脳会議での表明に加え、４日に採択される各国の政策対応を盛り込んだ行動計画（カンヌ・アクションプラン）にも日本の消費増税を明記させる方針だ。
経常黒字国で国内の貯蓄が豊富な日本は国債の９割を国内で消化し、債務危機は顕在化していないが、財政は世界でも突出して悪化している。
日本の政府債務は国内総生産（ＧＤＰ）の２１２・７％と、米国の１０１・１％、フランスの９７・３％、ドイツの８７・３％を大きく上回るだけでなく、ギリシャやイタリアと比べても極端に高い水準だ。
歴史的な円高や海外経済の減速で日本の輸出は減少傾向にあり、海外で稼ぐ力が衰えて国債を国内で買い支えられなくなり、日本の債務問題が世界経済のリスク要因に浮上する懸念は拭えない。
日本の債務不履行（デフォルト）が現実味を帯びれば、世界経済への打撃は計り知れない。日本の消費税率は海外と比べて低いだけに、各国から増税圧力が増すことも予想される。
「経済成長と財政再建の両立など取り組むべき課題は山積している。困難の克服には、国際社会のリーダーたちが強い決意とリーダーシップを発揮し、国民の理解を求めながら改革を進めることが必要不可欠だ」
首相は講演でこうも述べ、「ギリシャのように『日本発の危機』を起こさぬ覚悟」（首相同行筋）を示した。
◆増税のシナリオ
首相は１０月３１日から２日までの衆参本会議で「消費税の具体的な税率の引き上げ時期は政府・与党内の議論、与野党協議を踏まえ決定する。実施前には総選挙で民意を問う」と述べた。
年末までに消費税の増税幅や時期を含む「社会保障と税の一体改革」を具体化し、来年の通常国会で関連法案を成立させる。そして、衆院議員が任期満了を迎える平成２５年夏までに衆院選で増税の是非を問うのが首相の描く道筋だ。
だが、シナリオは書き直しを迫られつつある。野党が参院で多数派を握る「ねじれ国会」で法案成立のキャスチングボートを握る公明党が早期解散を視野に入れ始めたためだ。
同党の山口那津男代表は３日のＢＳ１１番組で「実施前に信を問うというのは民主党が言ってきたことに反する。法律を作る前に、上げる方向がよいかどうかを問うのが筋だ」と、首相の答弁を批判した。自民党の谷垣禎一総裁も３日、神戸市で講演し、法案提出前の解散・総選挙を求めた。
民主党内の調整も容易ではない。民主党は２１年衆院選に当たり、マニフェスト（政権公約）に消費増税を明記せず、鳩山由紀夫代表（当時）は税率引き上げの４年間凍結を明言した。党内には小沢一郎元代表に近い議員を中心に消費増税反対派は根強い。
首相は１０月１２日、中曽根康弘元首相に外交問題で指南を求めた。元首相のアドバイスは明快だった。
「サミットでは首相や大統領が相手の目方を量る。３０分も話をすれば、どの程度の重さがあるか分かるおっかない所だ」
国際公約を実現できなければ、「軽量級」の烙（らく）印（いん）を押されるだけではない。就任後２カ月間安全運転に徹してきた野田政権の足腰はガタガタとなり、崩壊につながっていくのは必至だ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111103/plc11110323030005-n1.htm
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