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ニュージーランドは、初期のTPPを推進した加盟国だが、後から来た米国に滅茶苦茶にされている様子をケルシー教授は述べている
http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/749.html
投稿者 TORA 日時 2011 年 11 月 06 日 12:25:39: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu251.html
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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ニュージーランドは、初期のTPPを推進した加盟国だが、後から来た米国に
滅茶苦茶にされている様子をジェーン・ケルシー教授は、公演で述べている

2011年11月6日 日曜日

◆TPPの危険性を説く、「ジェーン・ケルシー教授 仙台講演会 議事録」その1 10月29日 怒り心頭
http://change-wecan.iza.ne.jp/blog/entry/2492034/

米国が陰で操っているTPPは、米国そのもののルールの押し付けだ。
TPPに参加すべきと決断した菅直人や野田佳彦は、日本を壊したいを通り越して、「日本国を米国の州に引き入れようとしている」としか理解できない程に酷い内容だ。
 ニュージーランドは、初期のTPPを推進した加盟国だが、後から来た米国に滅茶苦茶にされている様子をジェーン・ケルシー教授は、仙台公演で述べている。「一旦入ったら、変更できない、出られない、国の権限は全く役に立たない」と、警告している。
 長文だが、備忘録として記録する。

<要旨>
・TPPの協定内容は全てアメリカの議会によって承認されなければならない
・交渉参加国はASEANと自由貿易協定を締結している。つまり障壁があるのはアメリカ
・マイクロソフトはTPPによって知的財産権保護のためDLファイルの有料化を提言している。グーグルはそれに反対している
・外資投資による土地・資源などの資産購入について制約を緩和する内容も盛り込まれている
・漁業権などを外資に購入された場合、漁業で成り立っているような地方の地域への悪影響は計り知れない
・日本の国営貿易会社(主に農産物)に対し、すでにアメリカは反競争主義だとクレームをつけている
・公共工事において外国企業の入札参加の権利を要求している。日本では復興事業に多大な影響が考えられる
・アメリカは遺伝子組換作物について特に強い要求を提案している
・TPPの基本的考えは発行後10年以内に例外なく関税をゼロにするものであるが、アメリカは農業について譲歩していない
・ニュージーランドの乳業、オーストラリアの砂糖についてアメリカは一切譲歩しないと明言している
・パブリックコメントや意見募集において、外国企業も発言可能になるように求めている
・TPPの交渉内容は署名されるまでは非公開である
・TPP加盟国の義務は他の加盟国にも強制される
・投資家にはその国への政策的助言に参加する権利が与えられる
・規則や義務の変更はアメリカ議会の承認が必要となるため、極めて困難である


2011年7月12日
ジェーン・ケルシー教授 仙台講演会 議事録(未定稿)
【講演】
皆様こんにちは。
本日はTPPを考える国民会議・仙台に参加できることを大変嬉しく思っています。
主催いただきました仙台の方々に御礼を申し上げたいと思います。また、ご参加いただきました非常に多くの皆様に御礼を申し上げます。

ニュージーランドでは、通常ご挨拶として、生かせていただいている土地、並びに先祖の皆様、将来世代の皆様に敬意を表してイベントを始めます。とりわけ現在の世代におきましては、重要な意味を持つ挨拶ではないかと思います。

ニュージーランドのクライストチャーチにおきましても大震災がおきていますので、皆様方にお見舞い申し上げるとともに、ともに復興について考えさせていただく良い機会ではないかと思います。
本日は3つのトピックについて話をさせていただきたいと思っております。まず1点目はTPP交渉の背景についてです。2点目がTPP交渉に参加している国々においての主な問題点。そして3点目として日本への影響についてご説明したいと思います。

時間があれば具体的な事例についてご紹介申し上げたいと思っております。また、皆様方からのご質問についてもできる限りお答えしたいと思っています。

まず、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)とは何かということから始めたいと思います。
この交渉に関わっている当事者たちは、通常の自由貿易協定とは一線を画しているということを強調しています。21世紀型の協定であることが強調されています。

21世紀においては多くの課題があります。その中身については明らかでない課題も多くあります。21世紀の課題に応える一つとして、TPPというアプローチがあるのではないかと思います。

交渉官達によりますと、今まであった自由貿易協定や包括的経済連携などと比べると、国境の中に踏み込む、従来の枠組みを超えたものになるということが強調されています。国境の枠組みを超えるものであるという表現の意味ですが、過去の貿易協定などでカバーされていない政策・規制に関して、政府が決定できる選択肢を狭めるものになります。この話の中でTPPが、公衆衛生制度、そしてまた日本郵政、日本の食料安全保障などに対する影響を説明したいと思います。

現在、TPPを交渉しているのは9カ国となっています。オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカ、ベトナムの9カ国です。アジア太平洋経済協力機構(APEC)の加盟国です。

9カ国が現在交渉に参加しているということを申し上げましたけど、ご覧のとおり1カ国だけが他の8カ国に対して突出しているということがいえるかと思います。アメリカという国はこの9カ国の中で最大の経済大国であるのみならず、もっとも強い政治的影響力を持っています。

それはどうしてかと申しますと、TPPの協定の中身は全てアメリカの議会によって承認されなければなりません。国民の利益に反するようなもの、あるいは国民の利益に資することができないものについては、アメリカの議会では決して承認されることがないからです。このポイントは非常に重要でありまして、後でまた触れたいと思います。

日本並びにニュージーランドが、このTPPの交渉に関わる際には、今までの経緯を理解する必要性があります。

まず最初に申し上げたいのは、既存のTPP協定というのは存在していません。これは新しい特徴を多く含む、新しい協定ということになります。しかしながら、アメリカが既にその他のTPP交渉国と交渉し、取りつけた既存のFTAに大きく影響を受けることになります。この構想は、2000年に出てきたものであります。提唱しましたのは、現ニュージーランド貿易大臣です。WTOなどにおいて、十分に自由化の動きが浸透していないということをかなり提唱されました。WTOの交渉が1999年にシアトルにおいて失敗したことを受けまして、多国間での協議には限界があるという教訓が生まれました。そこで、協定を結び、より大きな枠組みにしていくということに方向転換がなされたのです。

元々ニュージーランドとシンガポールの間で締結された協定がベースとなりまして、それがP4と呼ばれる環太平洋戦略的経済連携協定が生まれました。参加した国は、チリ、シンガポール、ニュージーランドとブルネイです。しかし、この協定は完全なものではありませんでした。投資・金融サービスに関する規定の章がなかったからです。この分野の協議は数年後に行われることになりました。

その当時のアメリカのブッシュ大統領は、当初は投資並びに金融サービスに関して、交渉に参加したいという表明をしました。その後、協定全体に関しての参加表明に変更しました。そして、その後オーストラリア、ペルー、ベトナムも交渉に参加しました。ですから、これらの国々はP4に参加するという流れとなってますけど、実際には新たな協定を協議するということになりました。

オバマ政権が誕生し、その際、TPP交渉に参加するのかどうかということを検討することになりました。1年間の考慮期間を経て、その間中断はしまたけど、アメリカも参加することになりました。その後7回にわたって交渉・会合が行われました。そしてマレーシアも参加することになりました。

では、次に目的は何かということに進みたいと思います。
それは、今までの従来型の貿易協定とは違う内容となっています。それは、以下の二つの目的があるからです。といいますのも、参加する交渉国というのは、既に貿易体制が打ち出されていまして、国境での関税も概ね撤廃されており、低いレベルで推移していたからです。

そして参加国の間で様々なFTAが既に存在していました。例えばアメリカは、ペルー、オーストラリア、チリ、シンガポールと既にFTAを締結していました。そしてオーストラリアとニュージーランドはASEANと自由貿易協定を締結しています。したがって、このグループの中ではTPPを通して撤廃しなければならない貿易障壁というのはほとんど無かったのです。残っている障壁というのは、ほとんどアメリカ側にあるものです。しかも農業という非常に不利な分野においてのみ残っていたということです。このような、アメリカ側の保護措置を撤廃させるような内容については、アメリカの議会の承認を取り付けることが非常に難しいと思われました。

したがって、TPPにおいて従来型の自由貿易協定のような取り組みであれば、商業的な見返りというのは大きく期待できないという状況にあります。ですから商業的な意味合いよりも、投資協定としての意味合いの方が非常に大きいということが特徴として挙げられます。と言いますのも、TPPの加盟国に投資をしている外国の企業・投資家というのは、権利を国際的な裁判所に対して訴え、主張することが出来るからです。また政府に対して企業が強く求めているのは、ビジネスがよりやりやすい環境を確立するために、既存の政策や規制については撤廃あるいは引き下げる、緩和するということです。

しかし、今ある既存の政策あるいは規制というのは、それぞれ社会的な必要性、環境上の必要性あるいは食料の安全保障という観点で導入されているわけであります。したがって、このTPPの交渉の中では、政府に対して企業が求めている目的と、それが国益のために必要と考えられていることを立法府が行う、そしてまた市民団体の願いや要望との間で対立が起きているということであります。

当初の商業的な見返りというのは、それほど大きくはないと思われますが、しかしいずれはAPEC全域に及ぶ自由貿易協定に拡大しようという構想があります。その中には中国、インド、韓国、日本も含まれることになります。過去においてもこのような構想はありました。しかしながら、APECではFTAに向けた提案は却下されています。これから、アメリカのひな形でつくられたアジア・太平洋地域においての自由貿易圏の構想というのは、他の国において受け入れられるかどうか不確実といえます。

アメリカの国務長官ヒラリー・クリントンは、既にこのTPPというのは、アジア・太平洋地域において中国を牽制するためのものであるということを主張しています。ですから他の国々に参加してもらい、そしてまた、その合意された内容をもって中国を牽制したいと考えています。

次のこの6ページですけど、作業グループとしていかに広い分野をカバーしているのかということがおわかりいただけるかと思います。しかしながら、交渉は非常に緩慢なペースでしか進んでいません。それは一部の分野が広く、そして複雑であるからです。それだけではなく、アメリカの議会において、既にアメリカと締結している韓国、カナダ、コロンビアとのFTA自由貿易協定について、承認がされていないからです。

次のページですけど、今後のスケジュールについてです。
当初の目的というのは、ホノルルで開催される11月のAPECの首脳会合が、その大枠決定の時期とされていました。しかし実際のところ、特に機微な分野であります農業も含め他の交渉についてもまだ始まったばかりであります。ですから交渉は、おそらく来年に先送りになるだろうと思われます。しかし、来年はアメリカ大統領の選挙であります。ですから、?なくとも2年間は時間を要するのではないかと考えられています。したがって、この協定の中身について、より時間をかけて理解していくことが出来るということです。

では次の8ページですけども、各国の交渉の中で浮上して参りました主な問題点についてご説明申し上げます。

物議をかもしている分野の一つとして、知的財産権が挙げられます。とりわけニュージーランドにおいては、これは大きな問題でありまして、医薬品は安く購入出来るという環境があったんです。アメリカの製薬会社はニュージーランドの制度を問題視しています。実はその提案内容が一部リークしたので、その中身を見ることが出来たんですけど、その中身どおりに協定が結ばれてしまいますと、今後、ニュージーランドにおいては、今までのように安く医薬品を入手することが困難になります。

また、マイクロソフトのようなコンピューターの会社は、その知識に関しても制約を課したいと考えています。インターネットでダウンロード出来るファイルなどについて有料化したいという意向を持っています。しかし、過去グーグルのような企業は、いま申し上げたマイクロソフトのポジションには反対しています。

さらにそのリークされた文書によりますと、アメリカは著作権の保護期間をより長く設定したいと考えているようです。そうなりますと、図書館が悪影響を受けることになります。また、翻訳などに関しても、より長い期間アクセス出来ないという問題が生じます。

二つめに問題として浮上しているのは、外資の投資家のルールに関してであります。
具体的に申し上げますと、外国の投資家が土地あるいは資源など、戦略的な資産に対して投資をする際の制約を緩和するという内容が主張がされているということです。これは例えば、今日先生方に伺いたいのですけども、この地域で構想として検討されている漁業に関する特区が影響を受けることになります。例えば漁業権などが確立され、特区において外国の投資家が漁業権を獲得した場合には、一旦その様な権利の移行が行われると、後でその民間企業の漁業が、地元・地域社会に対し悪影響を及ぼしていると考えられる場合でも取消をすることができません。元に戻ることが出来ないのです。

また、この協定の中身によって、協定の中で謳われている権利に関して、外国の投資家は政府に対して権利を行使することが出来るようになります。これは裁判としては、世界銀行に付随する非公開の裁判で行われますので、中身について情報にアクセスすることができません。

オーストラリア政府は、煙草に関してはプレーンなパッケージでしか販売してはならないという規制を導入しています。それに対しまして、アメリカの煙草会社でありますフィリップモリス社はオーストラリア政府に対して、この要件を緩和するよう訴えています。フィリップモリス側の主張としては、自社の商標でありますマイルドという知的財産権を、オーストラリア政府が煙草に関しての公衆衛生管理法を施行することによって侵害しているということを訴えているのです。そして何十億ドルという損害賠償をせよということを求めています。

また、日本に関係のある問題点としては、国営の貿易会社に対しての問題が挙げられます。いわゆる国営の貿易会社がありまして、日本の場合は小麦あるいは米、その他の農産物を海外から輸入し、そして日本に流通させるという仕組みが影響を受けるということです。このような国営の貿易会社というのは、外国の企業が日本での競争が阻害されている、これは反競争であるということを主張しています。

もう一つ関係のある分野としては、政府調達市場があげられます。これは学校や道路あるいは建物の建設など、納税者の税金を使って政府が支出する公共投資の分野です。TPPの下では、TPPに参加する外国の企業が、日本企業と同様にこれらの政府調達案件に対し入札する権利を要求します。この分野でアメリカが日本に対して問題視しているのは、様々な建設工事あるいは道路の整備、港湾整備、そして官民パートナーシップの事業です。とりわけ被災地の復興事業において重要な意味をもつと思います。

そしてもう一つ当然のことながら重要になってくるのは農業です。皆さんの中にも農業関連の関係者の方がいらっしゃると思いますので、TPPが農業に対してどのような影響を及ぼすのかということを説明したいと思います。

先ほども若干触れましたけれども、農地の所有権あるいは農業に対する参入について、外資に課せられている要件や制約を緩和するということに対しての圧力がかかっています。そして輸入農産物を扱う貿易会社などに対しての解体が要求されます。検疫などに関しての要件、食品表示などに関する要件を緩和するように強く求められることになります。それはTPPに参加する国の中でも、とりわけアメリカが、しかもその中でも遺伝子組換作物について強い要求をして参ります。

そして当然の事ながら輸入食品に関しての関税を引き下げる、あるいは撤廃することが求められます。TPPの基本的な考え方というのは、発効後10年以内に例外なく全ての関税をゼロにするということです。しかし、日本の場合は特別なケースとして、もう?し時間的な猶予が与えられるかもしれません。ただ、ここで述べたいのはアメリカも同じように受け入れるのであろうかということです。過去の交渉を見ても明らかなように、アメリカは農業について譲歩していません。例えば、オーストラリアに対しては砂糖が例外として扱われています。そして現在のTPPの交渉の中では、ニュージーランドに対しては、乳製品に対する市場アクセスは一切譲歩しないという立場をアメリカは提示しています。ですから現状の印象ですけども、アメリカとその他の国とルールは別立てになるのではないかということです。

?し時間が無くなって参りましたので、跳ばしながらご説明申し上げたいと思います。では10ページをご覧いただきたいと思います。

先ほど申し上げましたとおり、この交渉の中で一番重要なのはアメリカです。ですからアメリカが、具体的に日本に何を要求するかということを想定してまとめてみました。近年、アメリカは製造業としてはポジションが低下して参りましたので、現在日本に一番大きく要求が出てきそうなのは、サービス、投資と知的財産権の分野だと予想されます。

11ページをご覧になって下さい。毎年アメリカは、世界各国に対して貿易障壁として問題のある分野を発表しています。そしてこちらに列挙されているのが、日本に対するアメリカの最近の要望です。いずれもTPPにおいて問題として浮上してくると思われる品目です。アメリカが強く主張しているのは、日本の企業と同等の条件で競争できる環境を日本に要望するということです。

そしてもう一つのポイントは、透明性を掲げることを日本に要求しているということです。この透明性というのは、アメリカの企業が日本政府に対して、より協議をする場を設けて欲しい、より発言力を高めて欲しいということであります。具体的には、日本政府の諮問委員会などに席を確保したい。あるいはパブリックコメント、意見募集において発言をしたいということです。

いま申し上げたようなことが、具体的にはどういう影響として出てくるのかを事例をもって証明したいと思います。これは、貿易問題というよりも社会的な問題と位置づけられると思います。TPPの枠組みの中では、医療というのが社会的なサービスとしてみているのではなく、商業的な市場という見方をしています。そのような枠組みの中で、日本の生活の中で変更して欲しい、改正して欲しいと特定されている分野がいくつかあります。

例えば、私立の病院を運営する際の外資の導入を緩和して欲しいと要求しています。またPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)、先ほどの官民パートナーシップのような仕組みの中で事業に参加し、病院の運営をしたいという意向をアメリカの企業はもっています。そしてその中で、権利を保証して貰い、問題があった時には国際的な非公開な裁判所に訴える権利を確保したいと考えています。

また、アメリカの企業が、オンラインで国境を越えた保険サービスを日本において展開したいと考えています。ですから、アメリカからインターネットを使って、日本において医療サービスを提供することを考えています。また、自らが求めるような料金で、自由に医療機器、医薬品を日本において販売したいと考えています。そして制限無く日本において血液製剤を販売したいと考えています。

その他にも公衆衛生の分野においては、いろんな要求が対象領域に入ってきます。ですから社会的な役割として見るのではなく、商業的な機会として、TPPの中では様々な領域が影響を受けることになります。

いま申し上げたのが一例でして、私の書いた本の中にも紹介されています。最後になりましたけれども、このようなTPPと民主主義並びに主権との関係について申し上げたいと思います。ここで強調したいのは、交渉内容が決定し、最終的に署名されるまで、次々に非公開で交渉が行われます。

9ページですけども、このように閉ざされた非公開の交渉になりますので、有意義な議論をすることが難しいということになります。ですから出来る限り我々としても、情報を集めて努力しなければならないということです。

このような交渉内容というのは期限がある訳ではありません。いつになったら失効するということはなく、永遠に永続する内容であるということです。また脱退するというオプションがあるかもしれませんが、それさえも安易ではないのです。それは誤りであったと後で反省して変えたい、あるいは新政権が誕生して中身を変えたい、あるいは市場主義が上手くいかないので元に戻したいと考えても、それは出来ないのです。これは国家間で権利を行使するというのみならず、参加している国の投資家が直接政府を訴えることができます。しかも、非公開の裁判の中で審理がなされ、最終的に何百万ドルあるいは何十億ドルという賠償金を支払わなければならなくなる可能性もあるのです。

以上、いろいろ申し上げましたけれども、こういう状況の中で日本政府は本当にこの交渉に参加したいと思っているのでしょうか。その理由として考えられるのは三つ挙げられると思います。

一つは、TPPを通して日本の投資家あるいは企業が他の国の市場にアクセスしたいということです。最後のページになりますが、今TPPを交渉している多くの国とは、既にFTAを日本は締結している、あるいは交渉中であります。そして唯一、やる気になっているのはアメリカですけど、アメリカは決して日本に対して有利な条件をのむことはしません。

二つめの動機としては、TPPが今後、より大きなAPEC、アジア太平洋地域においての自由貿易協定に発展することが期待できるという理由があげられます。しかし、日本は既にASEAN+3あるいはASEAN+6、並びに東アジア首脳会議という枠組みを協議しています。

三つ目は、経済や貿易とは全く関係なく、対中国への牽制の手段として日米間の戦略的関係を強化したいという思いがあるのかもしれません。これは経済の判断ということではなく、外交上の判断ということになります。

そして四つ目が、政治的に実現が難しいと思われる国内再編を、TPPを通して秘密裏に推し進め、政策として固めるということです。しかし、それは将来の政権をも永遠に拘束するものであります。政権が変わって、新たな方向に向かったり、あるいは中身を変更したいと考えても、それは実現し得ないということであり永遠に拘束されるということになります。また権利を行使し続けられるという状況になります。

私も広く日本とTPPの関係について提起をして参りましたし、様々な文献を読んで参りましたけれども、今申し上げた四つの理由の中で、一番大きいのはやはり四つ目ではないかと思います。この四つ目の判断については、自国の民主主義、そしてまた主権を鑑み、日本の国民が決定することだと考えています。

ご静聴ありがとうございました。


【質疑・討論】
(質問者)
TPPが大きく問題になったのは、私が見る限り民主党政権が誕生して、特に鳩山政権のもとでASEAN+3、それを基礎にして東アジア共同体の構想が出てきた。それを潰すためにTPPが提起されてきたと、私はそう思っています。結果的にはどうも、日本と中国とを対立させて、そして、アメリカは最終的には日本を使うという方向に行かざるを得なくなっているんじゃないか。そういう点では、非常に危険な動きであることを感じているんですが、先生は最後の方でASEAN+3、東アジア首脳会議という点にふれられたんですが、もうちょっと詳しくお話いただけないでしょうか。

(ケルシー教授)
おっしゃるとおりでして、APECの中でもアングロアメリカ側が、ASEAN+3の台頭によって、この域内においての影響力が損なわれるのではないかということを懸念していると思います。
そしてTPPにおいては、常にそのアジア・太平洋地域においての影響力を拡大するということが主旨であります。とりわけアメリカは、東アジア首脳会議に参加していませんので、メンバーではないのでTPPを重要視しているのだと思います。
だからこそアメリカは、何としても日本をTPPの中に参加させたいと思っています。日本が参加することによって、アジア・太平洋地域のその他のアジア諸国のTPPへの参加につながると考えているからです。テコのような作用を期待しているのだと思います。
しかも既に多くの国々とFTAを締結しているインド、中国、韓国にとりましては、TPPに日本が入らないということになれば、TPPは全く意味のない枠組みとなってしまうのです。日本が入ることが必要不可欠というふうに位置づけられています。
また、確かにおっしゃるとおり、戦略としては中国とその他のアジアの国々とを対立させようという思惑もあります。かつて「APEC全域においてのFTAを」という構想も出てきたこともありましたけども、それはアメリカ主導の色彩が強すぎて失敗に終わっています。だからこそ、今回のTPPに関しても、アジアのサポートというのを取り付けるのが難しいのではないかと私は感じております。やはり分割統治という考え方を受け入れることが出来ないからです。ですから全体が成功するか否かということについては、日本の判断にかかっているといえるのです。

(質問者)
先生がニュージーランドから見えられたということで一番聞きたかったのは、ニュージーランドは、最初にTPPの4カ国に参加されてここまでやってきている。2008年からですか、アメリカが交渉に参加を表明したわけで、ニュージーランドにとってこのTPPが、どのような意味を持って、どのような影響があって、どのような利便があるのか。日本については今お聞きしましたが、ニュージーランドにとって、TPPの影響はどうなのかということをお聞きしたいと思います。

(ケルシー教授)
日本について申し上げた問題点というのは、実はニュージーランドにおいても共通のものが非常に多くあります。ニュージーランドにおいて、今まで難しかったのは、このTPPがいかに広い分野を包含しているのかということを理解してもらうことでした。
ニュージーランドで一番問題視されているのは、生乳を安く購入することを可能にする機関があるんですけども、それを解体するということについての議論です。そしてもう一つ問題になっているのは煙草に関しての問題です。それは先ほどご説明したとおりです。そして開放されたインターネットに関する権利の問題も議論されています。また、土地並びに天然資源に関しての外資規制を廃止しなければならないという問題点です。そして、次が鉱業、とりわけ沿岸の掘削などについて権利を再規制する権利が損なわれるということです。
これから予定されています国有企業の民営化に対する影響も懸念されています。中には空港、そして電力会社の民営化が検討されています。そちらへの影響です。このような民営化の流れの中で、外資が所有権を持つということについて制限できるのかどうかが懸念されています。
さらには一旦民営化してそれが失敗した場合に、また国有化するということが、果たして可能かどうかということも懸念されています。例えば過去において航空会社を一旦民営化して、また国有化したという事例があります。鉄道会社についても同様です。そして公的な郵便貯金の制度が民営化されたんですけど、貧困者そして遠隔地に対するサービスが不十分であるということで、再国有化、改めて国立の機関を設立する必要性がありました。また、建設、電力、通信の規制の見直しが今までに必要でした。今後、TPPにおいて要求されると思われるような構想、推進的な手法というのはかつてニュージーランドで試されたけれども失敗したという経緯があるからです。
心配されているのは、我々の日常生活に極めて重要な影響を及ぼすような、今申し上げた様々な戦略的な事業に関して、自ら国内で徹底することが不可能になるのではないかということが懸念されています。
私どもも日本と同様に様々な経験を培って参りました。公益を十分に考慮することなく、短絡的に自由市場政策を推進することの失敗から多くの教訓を得ています。

(質問者)
外資の漁業権の参入について伺います。今、宮城県では、民間の漁業者が漁業権に参入することを特区を設けて考えていると思われます。それとTPPが組み合わせることによってもたらされる問題点はどんなことがあるのか、ニュージーランドでおきている漁業権の外資の参入の問題点は何か伺います。
(ケルシー教授)
ご質問ありがとうございます。実は、今いただいた質問は、昨日仙台でも議論した内容です。実は、1986年にニュージーランドでは、漁業権に関して民間への開放を行っています。その結果、零細な漁業事業、漁師の権利というのは、商業権としては確立されなくなってしまい、大きな企業に集約されることになりました。
そして、このような漁業権というのは、投資ということとしてTPPの脈絡ではみなされますので、投資であるが故に保護の対象となります。そして、このような漁業の企業あるいは加工工場に外資が参入していたならば、TPPの協定で投資家としての保護を受けることができます。そして、先ほど申し上げましたこの内容、権利というのは、投資家対国家の紛争解消手続きに付されることも可能です。
また、ルールによりまして、漁業権に関しても日本の企業と同等の権利を外資にも与えることを要求されると思います。このような漁業権に関しましては、後に日本の漁業の状況を考え、そしてまた、地域社会の状況を考えルールを変えたいと提案国政府が考えていても、それは変更ができなくなってしまいます。ルールの適用外という領域を提案国政府がリストアップすることも可能です。しかし、その内容というのは、交渉の対象となります。ニュージーランドの法律によりますと、漁業権に関しましては、外資1社は20%以上持ってはならないとしています。しかし、この制約も緩和するよう圧力を受けているところです。
この投資協定に関してのもう1つ重要なポイントなんですけれども、例外措置として扱ってほしいものに関しては、全てリストアップしなければなりません。しかし、この漁業権というのは、協定の交渉に参加する後で決まることがあります。ですから、先見の明を持って最終のリストに加えていればいいんですけれども、後で出てきた内容というのは、対象外となります。ですから、魔法の水晶の玉があればいいんですけれども、それがないと私は位置づけています。

(質問者)
日本人の多くは裁判に慣れていないのですが、紛争解決センターで外国人が訴えると英語が公用語になってしまうと圧倒的に不利になってしまうのではないでしょうか。

(ケルシー教授)
言語以上に大きな問題はたくさんあると思います。この手続きはまず、本国以外のところで争われることになるということです。そしてこの紛争解決センターというのは、公開されていません。外部の人が入ることができないのです。そして、そこで対象になっている文書も公開されません。また、そこで争われる内容、すなわち両者の法的な主張についても外部に公開されません。従いまして、このプロセスは、非常に秘密裏に行われる法的なプロセスです。
アメリカについては、NAFTAという北米自由貿易協定がありますけれども、その中でも物議をかもした内容となっています。このような権限を強く要求しないようにというプレッシャーがオバマ大統領にも寄せられています。また、オーストラリアとアメリカの自由貿易協定においては、オーストラリア政府が拒否することが可能でした。そして、TPPの中でも、受け入れないということを主張しています。ニュージーランド政府の立場は、議論の用意はあるというということです。しかし、今申し上げたようなこの投資家対国家の紛争解決手続きが入っていない内容の協定であれば、アメリカの議会の承認を取り付けることは難しいと思われます。
実は、もう1つ触れておきたいのですが、日本は既に締結している自由貿易協定の中にも、この権限が網羅されているものがあります。実は、日本郵政の民営化について、私は深く研究をさせていただきましたけれども、日本・シンガポールの自由貿易協定の中にある条文によって海外の金融機関が日本民営化を否定する、それを逆転させることを可能とする内容が含まれています。しかし、それは、さらにTPPになればリスクがより大きくなるということです。アメリカの企業は、皆さんもよくご存じのように大変訴訟が好きです。

(質問者)
投資家が国を訴えることができるというのは、逆に言うとアメリカがよく今までも問題にされてきたダンピング協定とアメリカが一方的に外国企業に対し制裁を科すということに対する逆の面のことなのかと理解できるのですが。

(ケルシー教授)
私はいつもサービスと投資の分野の研究をしていますので、アンチダンピングの話がでるととてもナーバスになってしまいます。その両者を比べると、むしろ今回、投資家に与えられる権利の方がより強力なものだと思います。今回の投資家対国家の紛争解決手続きの中で謳われているのは、世界銀行の国際投資紛争解決センターこれはICSIDというのですけれども、ここで決定された判断については、それぞれの提案国の国内の裁判所が行使、執行するということも条件として加えられているからです。その仲裁内容、判断というのは、非常に高額になりうる損害賠償金です。

(質問者)
私どもは、米を無農薬で作っている農家から直接買っている団体です。食の安全が脅かされるようで心配でなりませんが、ニュージーランドでは、安全なお米とか食品に関しまして、それを守るためにどのようになさっているのか教えてもらいたい。

(ケルシー教授)
競争原理が働いているそれぞれの市場において、食の安全性を確保すること
は、非常に難しい問題だと思います。私どもの国の食品安全基準、そしてまた、食品表示についても、様々な物議をかもしています。とりわけ、遺伝子組み換え食品ならびに食品についてのトレーサビリティが問題視されています。
そしてもう1つは、ニュージーランドとオーストラリアの間で食料安全基準が整合化されているということに起因する問題があります。すなわち、整合化されているハーモナイゼーションされているので、ニュージーランドが自国民のために決定できる権限に制約を受けているのです。とりわけ、効率性を高めるために、食品会社あるいは流通業者などが表示に関しての、あるいは規格に関しての整合性を求めています。従いまして、最近、ニュージーランドの緑の党の国会議員の方々と食の安全性をTPPの骨格の中でどのように位置づけるのかということについて、更なる研究が必要だということを議論しています。
これからTPPに関しましても、無農薬や有機栽培などの食品を対象としている消費者団体などは、対象の国となっている、例えばマレーシアも積極的にこの問題を取り組んでいるので、連携を深めて話し合っていくことが重要だと思います。

(質問者)
なぜ、紛争解決機関が秘密主義ということがあるのですか。透明性を要求する傍らで秘密、こんな国際協定は認められるのか、理解できません。

(ケルシー教授)
1つ1つの言葉の持つ意味が従来の考え方とは乖離してきたということだと思います。ただこのように、投資家が国際協定の中で権利を行使するという手続きは、新しいものではないのです。
二国間貿易協定というのは、何十年もの歴史を持っています。ただ、例えば建設などに関しての紛争などで扱われてきたという経緯があります。そして背景と致しましては、植民地時代の宗主国が植民地が独立する際に自分たちの権利を守るために文言を入れたっということに遡るのです。そして、このような文言をより協定に盛り込む、またFTAのなかに盛り込むという傾向がますます増えてまいりました。そして今では、より豊かな国もこの紛争の対象となってしまうということがより明確になってまいりました。
アメリカ、メキシコ、カナダというNAFTAの協定にも、この権利が謳われていまして、それが一番最近の明らかな事例だと思います。様々な紛争が起き、それが大きな物議をかもしている状況となっています。しかし、いったん協定の中で、1つの構想が決定してしまいますと、とりわけ大企業の利益が絡んだ際には、もはや元に戻ることはできない、修正はできなくなるのです。
今いただいたような質問は、多くの方も疑問に思っている点です。しかしながら、大きな協定の流れのなかでは、もはや身動きがとれない状況になってしまっているということです。


(私のコメント)


今日紹介させていただいた文書は、先にTPPに関するニュージーランドからの専門家の警告ですが、外務省や政府はこれらの情報を遮断して国民に知らせないようにしています。だから多くの人がこの文書を多くの人に紹介していた大いて広めてもたいた意と思っています。

政府の野田総理や玄葉外務大臣はアメリカから脅迫されて動かされているのでしょう。そうでなければよほどのバカと言うことになります。TPP推進論者の人たちも昨日の中野剛志氏やジェーン・ケルシー氏の意見に反論していただきたいものですが、ニュージーランドも後からアメリカが割り込んできて、自分に都合のいい条項を盛り込んで、アメリカ議会が賛成しなければ条項が変えられない仕組みにしてしまった。

これは国家主権をアメリカ議会に献上したようなものであり、TPPはアメリカの陰謀なのですが、TPP推進論者はどう反論されるのでしょうか? テレビではもちろんこのような詳しいレベルの話しは出ることがありませんが、どうしてニュージーランドやオーストラリアから情報を外務省か公開しないのですおうか? 外務省や防衛省はアメリカの出先機関化してしまって、アメリカ政府の言いなりだ。


 

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コメント
 
01. 2011年11月06日 12:42:23: YMulWdXmsU
・【経済討論】亡国最終兵器 TPPの真実[桜H23/11/5] 1/3〜3/3

http://www.youtube.com/watch?v=buBpYJO3Vro&feature=bf_next&list=PL840DA0218EB2639E&lf=bf_prev


02. 2011年11月06日 13:20:50: UunCtWGTXo
TPPとは、アメリカのルールを押し付けられ、自国の国益をも犠牲にしてアメリカの国益に沿うようにする為の物である事がよく分かる投稿である。
アメリカは自分たちの都合の良いルールで、TPP参加国を搾取しようとしている。
その最大の標的国は、わが国日本である事は間違い無い!
野田を、APECに送り出しては成らない。至急ゴルゴ13に消してもらえ。

03. 2011年11月06日 13:34:28: tGXMTcFclg
と言うことで、日本がユーロ各国にも声をかけてより広い地域での自由貿易を提案すると、一強国の言いなりにならずに済むんじゃないだろうか。

04. okonomono 2011年11月06日 16:23:46: ufgCmUGS6CG6M : FQZgWaDzzs
>> 01

ご紹介ありがとう。
3時間番組ですが見る価値がありますね。


05. 2011年11月06日 17:42:43: 0tMj7t4jgA
国際紛争解決センターでのプロセスが非公開
なので、「無理が通れば道理が引っ込む」
事態になってしまう可能性が大。

無論、無理とは米国投資家益に偏った判決。

そうなれば、国際紛争解決センターが
米国投資家益正当化センターに変質して
しまうだべさ。

一方、ケルシー教授が指摘しているように
この変質を「宗主国が植民地が独立する際に
自分たちの権利を守るため」と解釈すれば
納得。


06. 2011年11月06日 21:50:35: ZrMDpsyito
 日本政府が国民に押し付けようとする政策は、日本の政府とそこに利権を持つ人々の利益のためでしかない。これは明治政府ができて以来、ずっと変わらない。
 だから、政府の推し進める政策の反対を行えば、国民の利益となる。原発推進にしろ、TPPにしろ、政府が国民に押し付けようとするのだから、それは国民のためにならないものである。つぶしてしまわないと、今後の日本国民は、悲惨な目にあうだろう。原発ではすでに、きわめて悲惨な状況におかれているが…。


07. 2011年11月07日 03:12:19: 54jKM8Aboo

 害務省は国民の敵。(“害務バカの地球君臨作戦”=地球の破滅ダ。)
 

08. 2011年11月07日 06:17:51: Lkzy3a7kzM
ニュージーランドのことは報道しません。当然、急先鋒の中野も二度とテレビには出しません。(マスコミオールスターズ)

09. 2011年11月07日 07:38:01: dpp0eXCVak
この期に及んでまだ言ってますよ
「何種類かの農産物の関税については守れる!」ってね(笑)

バカな野田政権!
こんな事誰が信じるか?
本当に売国奴出しかない野田政権!
どうせ前原当たりの「言ってるだけ」作戦でしょうが
今更政府を信じる輩がどこいる?

今朝の世論調査!
TPP賛成が民主党支持者で45%?(笑)
民主党支持者って何人いるうちの何人に聞いたんでしょうかねぇ!
たった100人位で捏造数字!
って同じことをいつまでやっている新聞!

やめて良かった新聞購読(笑)
わずか3500円でも電気代が毎週上がる対策費!
毎月上がってるんですよ日本中の電気代!


10. 2011年11月07日 08:59:59: DrfEnlxz8Y
菅・野田とバカな政権を次から次から出してくる民主党。
09マニフェスト、忘れたか?
これがあるから政権に居れるのだ。

消費税アップ、TPP参加などやってくれとは言ってない。
国民に耳を傾け! 野田は、責任とれるのか?
野田独断でTPP導入した暁には、倒閣で、TPP離脱するしかない。
日本をつぶすTPPに反対する勢力は、団結せよ!

TPPは反対しないと、アメリカの失業者が輸出される。
中小企業が、破産する。
金融、保険で国富が略奪される。
国民の健康が守れない。

いろいろ悪くなることがいっぱいあるようです。
よくなることは、大企業輸出産業は少し良くなるようです。
10年間で2.7兆円と言っていました。これは、ゴミな金額です。
つまり利益はない。 なぜTPPに参加する?
野田。お前は頭がおかしい。

日本 悲劇である。


11. 2011年11月07日 09:35:19: 5UcIlFsRJA
経済音痴が首相になればこうなります。その模範例が野田豚です。
財務大臣をいくら経験しても、基礎学力のない無教養な間抜けには所詮、財務の外国人のいうなりである。哀れな日本人は売国の道を歩んでいることに気付かない。
ミスター\円が必要である。

12. 2011年11月07日 10:06:49: RUAhPthUoM
TPPは売国奴が進める亡国一直線の愚策です。

輸出は増えないどころか減少の一途です。

経団連の欲ボケ幹部よ、国家国民のことも考えろよ。

そもそも<農業=食料=国民の生存&生命>を外国に握られたら国家は終わりじゃないか?

小学生でもわかることだろう。


13. 2011年11月07日 11:12:17: tzmi4UKous
関税が嫌だからタイに工場を作って輸出!
で今何が起こっているか?
タイは来年の春まで工場が動かない!動けない!
損失はそれだけではない
工場自体の建物、機械、製品、原材料、人件費!
巨額の損失を生んだ!

関税分はもうすでに飛んでしまった!

何が大事かを見直すべき時代でしょうね
日本の国を大事にしましょうよ!
アメリカの植民地になっていいんですか?
日本の中で生産しましょうよ!
日本人は日本の中で助け合いましょうよ


14. 2011年11月07日 13:48:21: 8TGl0wGxLM
まさに植民地協定、当然日本は断固拒否すべし。
そうすればTPPを弱体化でき、アメリカに絡めとられた
国を救うこともできるのではないだろうか。

15. 2011年11月07日 14:18:46: IopOamDn7s
ドジョウはじめ売国奴を「国家反逆罪で牢屋にぶち込め!」

16. 恵也 2011年11月07日 15:02:49: cdRlA.6W79UEw : GEnLazUX6s
>>05 宗主国が植民地が独立する際に自分たちの権利を守るため(の協定)

確かにそれだと良く理解できる。
宗主国の大企業の害になることは植民地は出来ない仕組み。

インドが植民地だったときには東インド株式会社の意思に、インド人は逆らえ
なかったというが、その株式会社を温存させるための協定だろう。

日本はウランや石油の輸入はアメリカ企業から輸入してるけど、ここでいう自由化
とはアメリカ企業が日本を自由に闇に隠れて支配する事。

TPPの旗を振ってる政治者は、対米従属論者がほとんどでまともな政治家はいない。
アメリカ政府の意思と、日本マスコミと日本検察庁のお気に入りばかりだ。

ーーーー引用開始ーーーー
賛成している人々の本音は
「米国は日本にとって唯一絶対に大事な国であるのだから、米国が日本の
TPP参加を強く望んでいる以上、参加しない選択肢はない」

というものだ。賛成派の多く
は、対米従属論者である。日本が入った後のTPPの加盟諸国をGDPで見る
と、米国が全体の7割、日本が2割を占めている。他の7カ国の加盟国・加盟
交渉国は合計で1割にしかならない。TPPは事実上、日米FTAである。
(田中宇 氏より)


17. 2011年11月07日 15:32:53: Zc4LsHROVM
ニュージーランドに限らず米韓FTAもアメリカと韓国の不平等が伝えられているにも関わらず、マスコミは肝心なことは伏せて賛成論を展開している。
官僚や政府はそのことをしらないわけでもないだろう。
知っているが我々日本の交渉力を甘くみてほしくないとでも言うのだろうか。
私はいまから断言しておきます。アメリカの言いなりになるのは火を見るよりあきらかです。そうして小泉竹中構造改革の比ではありません。
それこそズタズタにされ日本は三流国に転落しG20にも入れなくなります。
小泉改革で騙されたことに懲りもしないで、野田、前原、岡田、仙谷、枝野、玄葉
鹿野、スーパー売国奴に押し切られてしまうのか。
普天間問題にしてもアメリカの意向尊重とやらで強制執行とならなければいいが。

18. 2011年11月07日 17:08:35: FHVyh15Kso
>それこそズタズタにされ日本は三流国に転落しG20にも入れなくなります。

それはない。
外貨不足で日本に泣きついたきた韓国でさえ「G20のメンバーとして最前線で」記念写真に収まっている訳だから。(よく恥ずかくない、と思うよ)
そもそも、そんな泣きごとを言うよりも、行動しろ、情報を拡散しろ。

都内での反TTPデモが不発に終わった時点で、負けは確定した、と言っていい。
東京のマスコミの雰囲気を変えなけらば「何も始まらない」事を、反TTP派の首脳は分かっていない。

フジが中野教授を「とくダネ」に出演させたのは、フジの良心でもなんでもなく、
プライムニュースという視聴者の意見を募集している番組の影響と、反韓流デモがが効いていたからだろう。
このまま「政府のいいなり」にTTPマンセーを行った結果、また、抗議デモなんてされたらたまらない、という思いがあったからだ。
実際、フジの論説は「TTPは賛否拮抗しているが、総理が参加というリーダーシップを示せ」というものに変化し、
それを受け、野田総理の『最終的に自分が判断する』というフレーズがメディアに流れる様になった。

反対派が、今唯一にして、最も効果のある方法は「ローソンの不買運動」だ。
ツイッターで大規模に広めて、「マスコミがニュースになるぐらい」派手に騒ぐしか手段はない。
http://topsy.com/www.j-cast.com/2011/10/13109944.html


19. 2011年11月07日 18:21:46: ILiTPGkN7Y
TPPに参加すれば、現在は輸出不能な畜肉や畜産加工品の対米輸出が可能になるのだろうか?
私は業界関係者です。TPPに詳しい人の回答を聴きたい。

20. 2011年11月07日 19:45:01: UrbnWInEwc
19さん

ケルシー教授の指摘を見れば明らかなように「無理」です。

@全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA):全米最大の生産者団体
Aアメリカ食肉協会(AMI):全米最大の食肉業界(加工業者・パッカー)団体

@Aから農務省に送り出す人事は浸透しきっている。選挙圧力で議会への影響は圧倒的。

⇒TPPの協定内容は全てアメリカの議会によって承認されなければならない
・アメリカは農業について譲歩していない
・ニュージーランドの乳業、オーストラリアの砂糖についてアメリカは一切譲歩しないと明言している


21. 2011年11月07日 19:55:03: UrbnWInEwc

それでも「品質の良い」ものを作るのが正解への道と思うのですが、企業が「いいがかり訴訟」し、しかも日本で無く「海外で秘密裏」に勝ち負けまで決める権限であるISD条項を含んでいるので危険です。特許等の権利を持つのが先かもしれません。

22. 2011年11月07日 20:29:52: CJRhwAIuD2

赤かぶさん、いつもありがとうございます。


「ジェーン ケルシー教授講演会 仙台」岩上安身氏のUSTREAMで視聴できます。

是非、視聴してください。^^

1/2: http://www.ustream.tv/recorded/15944634
2/2: http://www.ustream.tv/recorded/15945218



23. 2011年11月07日 21:05:10: ZqvBssa07w
アメリカは、黄色猿の国日本を、アメリカの州になどにするはずないよ。奴隷扱いであり、属領でしかない。

TPPは、日本人はキンタマ潰され、ケツの毛抜かれるだけだ。


24. 2011年11月07日 21:13:08: 1ktxLKCbxY

 日本ではほとんど報道されていないが、当初のTPPの参加国「P4」(シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ)のみならず、TPP加盟国を前提とした交渉に参加している国々の間では、実はTPPに反対、あるいは慎重な姿勢を政府に求める動きも活発化している。我々はアメリカの一方的な情報宣伝に飲み込まれることなく、各国の動きにも関心を向け、日本にとって国益や個別の業界の利益を守るうえで協力できる国々や組織との連携プレーを考えるべきではなかろうか。

 何としても、「バスに乗り遅れるな」といったアメリカの扇動的なキャンペーンに安易に乗せられる愚は避けなければならない。行き先や運転手の有無をしっかりと確認してから、乗るか乗らないかを決める必要がある。その観点から言えば、「P4」のなかではニュージーランドにおける動きが特に注目に値しよう。

 ニュージーランド各地では、TPPに対する反対の署名活動やデモ行動がすでに頻繁に展開されている。日本ではなぜか、こうしたTPP交渉参加国で発生している反対運動についての情報がまるで伝わってこない。まさに情報鎖国状態である。開国というならば、まずこうした情報面での開国から先鞭をつけるべきであろう。

 さて、日本では報道されない、そうした反対運動の最前列に立っているのが、「ウェリントンTPP行動グループ」と呼ばれる団体である。彼らの主張には我々日本人も大いに耳を傾けるべきものがある。特筆すべき問題点として、交渉参加国でありながら、同国政府が現在進行中の協議の中身について、議会に対しても国民に対してもまったく情報の公開を拒んでいることが挙げられる。

 建て前上、アメリカ政府はTPPにおいては交渉の透明性を確保すると高らかに宣言している。しかしながら、交渉に参加している国々の消費者や影響を受けるであろうと思われる業界団体に対しては、なぜか詳しい説明も情報の提供も拒んでいるのが現状である。そのため、ウェリントンの反対グループは、TPPは秘密交渉なのか。透明性が確保されていない。いわば交渉のプロセスそのものが非民主的と言わざるを得ないと厳しいアンチTPP活動を続けている。

 ニュージーランドの反対グループは、交渉中のTPPの素案を公開するよう迫っているのであるが、その背景には、TPPがニュージーランドの経済や社会、そして将来の環境を大きく左右するに違いない協定であるため、協定締結によりニュージーランドの国益が損なわれることは是が非でも阻止したい、という極めて当然の発想や危機感があると思われる。

 また、「ニュージーランド看護連盟」も、TPPの協定案をすみやかに公開するよう要請文を政府に出している。というのも、TPPへの加盟によりニュージーランドの医療制度そのものが根底から破壊される恐れがあるからである。

 「ニュージーランド看護連盟」会長のナノ・チュニクリオフ氏は、我々が多くの専門家を交えて検討した結果、TPPの加盟により我が国は独自のアルコール、タバコ、医薬品等の販売に関する規制を撤廃せざるを得なくなる可能性が懸念される。ニュージーランドの国民の健康と安全に責任をもつ医療従事者にとって、自国の安全基準を外国にゆだねるような協定は認めるわけにはいかない。その意味で、我が国の政府が国民に対しTPPのもたらす影響を明らかにしようとしていないのは極めて遺憾である。場合によっては国民の健康を大きく損なうのみならず、我が国の医療保険制度そのものが崩壊し、経済全体が奈落の底に追いやられる可能性すら否定できない」と語る。

 これほど厳しい言葉で、ニュージーランドの看護連盟は政府に対し情報公開を求め、各地でTPP反対運動を展開し始めている。そうした運動の理論面での中心的役割を果たしているのが、オークランド大学のジェーン・ケルシー教授である。

 彼女の専門は国際的な貿易協定。これまでも「政府にとって最も大切な役目は、外圧によって自国の政策を決定する権利を侵されないようにすることだ。たとえ、金融政策上の規制であっても、国民の意思を反映するのが政府の役割であり、海外の金融資本の利益を代弁するような圧力に屈してはならない」と主張してきた。ニュージーランドを代表する民間の’ステークホルダー(広い意味での利害関係者)’としての立場から、これまでのTPP交渉にオブザーバーとして参加し、目を光らせてきた人物である。TPPに関しても多くの著作や発言を通じて、警笛を鳴らしている。

 その彼女曰く「現在我々が見せられているTPPの協定案文は、アメリカの強烈な知的所有権に固執する姿勢を濃厚に反映している。もし、そうした中身が合意されることになれば、ニュージーランドにおける特許や知的財産はアメリカにより、瞬く間に収奪されかねない危険性を秘めていると言える。これまでもアメリカは著作権や特許に関する自国企業の権利のみを最優先する立場を貫いてきている」。

 具体的な問題点として、「現在の協定案文では、加盟する国々の書籍、音楽CD、DVDなどのコピーライトが発生するものに関し、その権利を撤廃ないし緩和することをアメリカは求めている。その一方で、協定加盟国がアメリカにおいて知的所有権の侵害を訴えることができないようにしたり、あるいは違反に対する訴えを厳しく制限したりする条項が織り込まれている。インターネットが急速に拡がり、ウィキリークスに代表されるような内部情報の流出や漏洩の問題も日常的に発生するようになってきた。そうしたネットを通じての知的所有権や知的財産の管理等について、この協定案文においては、アメリカの企業にのみ有利な保護条約が加えられている」というのである。

 さらに驚くべきことに、そうしたアメリカの一方的な利権を擁護する条文案が、アメリカの思惑とは別に、ネット上で流出しているという皮肉な状況も生まれている。

 TPP交渉を間近に捉えてきたケルシー教授自らの経験に加え、こうした内部告発ともいえる情報流出の流れを受け、アメリカが意図する「TPP情報の独占」並びに「自国最優先の知的保護の流れ」を食い止める必要があると、ケルシー教授は主張しているわけだ。

 例えば、たまたま誤って重要な知的情報をネット上に流出させてしまった場合や、あるいは外部からの侵入により情報が漏洩したような場合にも、その損害ないし責任をどのような形で訴え、回収できるのか。そのメカニズムと最終決断を下す機関がアメリカに集中することになるというのは、どう考えても納得できない。

 こうしたケルシー教授の指摘は、日本にとっても聞き捨てならないものであろう。

 また同教授によれば、アメリカは、自分たちの国では海外の情報コンテンツを自由に取引ができるようにしながら、海外の国々がアメリカのソフトや知財を利用する場合にはきっちりと対価を払わせるような一方的仕組みを考えているという。

 これまでのWTOやFTAの交渉においても、知的所有権に関しては一貫して自国の権利を守るアメリカの姿勢は強硬であった。TPPにおいてはこうした路線を踏襲するのみならず、よりいっそう強化しようとする姿勢を示しているようだ。

 この点からも、ニュージーランド政府は独自の知的所有権に関する案文を提出しているようだが、これまでの交渉過程においては、アメリカの強い姿勢に押され、ニュージーランドは自らの主張を貫くことができていない模様だ。もちろん他の国々も交渉に入る前から自国の国内事情や長期的な戦略に基づく協定案文を準備し、事前に提出している。

 しかし、各国が準備した協定案文を比較すれば、アメリカのみが突出して過去のWTOやFTAで合意されていた内容を飛び越え、はるかにアメリカの利益を拡大することのみを重点的に織り込んだ内容で押し切ろうとしているようで、ニュージーランドのみならずTPP交渉参加国の間でも対米不信と不協和音が生じ始めていると言われる。

 アメリカはオーストラリアとの間でFTAを結んでいるが、この2国間協定が必ずしも自国にとって有利な中身になっていないことに、アメリカは不満の意を表している。特に不正防止に関する分野に関しては、オーストラリアとのFTAは不完全なものであったと認識しており、アメリカが被った経済的損失を一挙に取り戻すため、今回のTPPにおいてはアメリカの知財擁護を最大限確保する条文が提案されているわけである。

 ニュージーランドだけでなく、「P4」の参加国、チリにおいても、こうした問題に関しては懸念を表明する識者や団体が数多い。さらには、オーストラリアの市民グループや教会、労働組合などもTPP反対の要請文を貿易大臣に届け、デモ活動を展開している。その理由は、アメリカがオーストラリアの健康、文化、環境政策を貿易障壁とみなし、それらの除去や変更を迫ろうとしているからということだ。具体的には、薬品価格の規制、遺伝子組み換え食品、映画などのメディア作品の保護を問題視している。つまりアメリカは、TPPを通じて公共の利益より企業の私益を優先させようとしている、との批判的見方をしているわけだ。

 ニュージーランドのケルシー教授をはじめ、民間の専門家として、TPP交渉の代表団の一部に加わっているメンバーの間では、アメリカが協定の中身に関して依然として秘密主義を貫いていることに対し、厳しい批判と不満感が渦巻いている。

 毎回、交渉終了後に開催されてきた記者会見、あるいは交渉期間中に開かれたマスコミ向けのブリーフィングなどの場においても、積極的な情報開示が行われていたとはとても思えない。ニュージーランドやチリのみならず、オーストラリアやマレーシア、そしてアメリカから参加した民間のオブザーバーたちは、それぞれの国のTPP反対派や慎重派と見られるグループから寄せられた要望書や反対意見書を協議の場に数多く提出しているが、こうした意見が交渉の場に反映されているとはとても思えないのが残念だという。

 こうした事態を打開するためにも、ケルシー教授などは交渉に参加している政府の代表や民間の有識者に対して、協議の中身をリークするように訴えているのである。

 なぜそこまで協定交渉が秘密裏のうちに進められているのか。交渉のテーブルでどのような取引が行われているのか。我々としても独自の情報収集に取り組む必要があるだろう。

 2011年2月、アメリカのTPP交渉担当者、通商代表部(USTR)副代表バーバラ・ワイゼル氏はニュージーランドが求めた情報開示の要望に対し、拒絶することを明らかにした。曰く、「ニュージーランドで起こっているTPP反対運動は誤った情報によるもので、実際にはこの協定は極めて開かれたものであり、何ら秘密のものではない」。

 しかし、こうした身も蓋もない回答を寄せられても、ニュージーランドの農業や医療、法律など、様々な分野で現実に危機感を抱いているグループは当然のことながら納得できていない。

 それに相前後するように、2010年秋以降、ニュージーランド各地でTPP反対運動が巻き起こっている。外務省や貿易省を取り囲むデモ隊が「民主主義を殺すようなTPPには断固反対。国民に情報を開示しないやり方は認めることができない」といったスローガンを掲げ、市民への関心を呼び起こす運動を展開中だ。

 我が国ではそうしたニュージーランドの動きなど一切報道されていない。大地震で日本人の犠牲者を含む多くの被害が出たことも重要なニュースではあるが、TPPに関するニュージーランドの対応ぶりもニュース価値が高いはず。それを無視するのは、これこそメディアの怠慢ではなかろうか。


25. 2011年11月07日 21:18:08: 1ktxLKCbxY

19. 2011年11月07日 18:21:46: ILiTPGkN7Y
TPPに参加すれば、現在は輸出不能な畜肉や畜産加工品の対米輸出が可能になるのだろうか?
私は業界関係者です。TPPに詳しい人の回答を聴きたい。

⇒より一般的な食への影響という観点から検討すると、TPPには「食の安全」という問題も浮上してくる。

 TPP条文第7章や米韓FTA条文第8章では、「衛生植物検疫措置(SPS)」が定められている。SPSについてはTPPの24ある作業部会の一つで取り扱われているが、これは食品衛生を確保するための措置、動植物の病気を防ぐための措置のことを指している。具体的にはSPSで問題となるのは、食品添加物、残留農薬基準、BSE問題、遺伝子組み換え食品といったものである。

 SPSについては、すでに1995年発効のWTOにおける協定が存在しており、TPPでもWTOの協定を引用している。このWTOの協定では、各国が食品衛生を確保するための措置や動植物の病気を防ぐために講じる措置は認められている。ただし、これらの措置が貿易を阻害しないようにするため、「科学的原則に基づくこと」が要求されている。また、加盟国を差別してはならず、例えば、国産品と輸入品に対して異なる基準を設定することは許されていない。

 実際、日本とメキシコとの間の経済連携協定(EPA)においても、SPSに関する規定が定められており、そこでは日本もメキシコも、WTOで定められたSPSに関する権利義務を有することが確認されている。

 それでは、なぜ1995年からWTOレベルで存在している衛生植物検疫措置(SPS)に関する規定がTPPで問題になるのだろうか。それは、TPPにおけるSPSの運用が食の安全に影響を与えうるからである。

 米韓FTAでは、両国がSPSについて協力し、かつ協議することとされている。そしてその協議の内容には、貿易に影響を与え、または影響を与えうるSPSの適用に関する事項が含まれているのである。

 おそらくアメリカが入った形でのTPPでは、同様の規定が入るに違いない。そうすると日本がTPPに参加する場合には、日本がどのような衛生植物検疫措置を講じるかについて、アメリカと協議をする必要が生じてくることになる。しかもアメリカは、「対日年次改革要望書」において、我が国に対しSPSに関連する要求を繰り返してきたことを忘れてはならない。

 例えば、食品添加物について、2008年の年次改革要望書では、「食品添加物における新規並びに変更の申請が、科学的な原則に基づき、透明かつ迅速に完了するよう、国内および国際的な団体を含む既存の科学的審査と評価を最大限活用する」ことを要求していた。

 さらに、同要望書の農業に関する政府慣行について、「米国は、日本が農産物貿易において国際的義務を十分に満たしていること、またすべての農産物・食品の輸入制度において科学的知見に基づいた国際基準を採用することを期待する」と述べたうえで、具体的な要求として、「FAO(国連食糧農業機関)・WHO(世界保健機関)合同食品添加物専門家会議によって安全と認められており、かつ世界各国で使用されている46種類の食品添加物の審査を完了する」ことを挙げている。

 また、ポストハーベスト農薬(収穫後、主として保管中の防虫対策として使用する農薬)は、人体に有害な物質が含まれる恐れがあるという理由で日本では禁止されているが、同要望書は、特定のポストハーベスト農薬を食品添加物と見なさず、その使用を認めるよう要求しているのである。

 WTOのSPS協定において、科学的に正当な理由がある場合などは、国際基準や指針、勧告よりも厳しい衛生植物検疫措置(SPS)を導入することができるとされているが、日本はWTOのSPS協定を踏まえ、食品添加物についての規制を緩和してきた。当然のことながら、国民の健康や衛生を守るという見地から、日本は明らかに国際基準よりも厳しいSPSを導入している。

 しかし、TPPに参加するためにはアメリカとの協議が必要となり、アメリカのこれまでの日本に対する要求から考えれば、日本の現在のSPSを非関税障壁と見なし、現在のSPSを大幅に緩和するよう求めてくることは確実である。さらに、これまで日本では認められていなかった相当数の食品添加物が認可されることになり、輸入食品を通じて、日本の消費者が今まで以上に食品添加物を摂取することは避けられそうにない。

 残留農薬についても、ほぼ同様の議論が当てはまる。日本の残留農薬規準は、日本人の食生活も考慮したうえで定められており、アメリカの規準と比べると格段に厳しくなっている。ところがアメリカは、2008年の年次改革要望書において、「最大残留農薬規準に関して、できる限り貿易を制限することがないように、効果的な輸入措置を取る」ことを要求していた。すなわち、日本の残留農薬規準が非関税障壁であるとして、規準の緩和を求めているのである。

 したがって、アメリカとの協議では、残留農薬規準を緩和することがTPP参加の条件になることは想像に難くない。その結果、これまでより多く農薬を含んだ農産品が日本に流通することになると思われる。

 牛海綿状脳症(BSE)についても、食品添加物や残留農薬基準の問題と同様である。日本はBSE問題に伴い、2003年12月からアメリカ産牛肉の輸入を禁止していたが、2005年12月に輸入禁止を条件付きで解除した。アメリカ産牛肉で輸入が認められる条件は、月齢20カ月以下の牛であること、脳や脊髄といった危険部位を除去していること、輸出国の政府が輸出証明を発行していることである。この条件は現在も付されたままになっている。

 これについてアメリカは、牛肉の輸入禁止が条件付きで解除になった直後から、日本に対し月齢制限の撤廃を強く求めているのである。国際獣疫事務局(OIE)は、BSE検査については月齢36カ月以上の牛のみを対象にすれば良いとしており、月齢36カ月未満の牛についてはBSEのリスクが非常に低いと判断している。つまり日本の輸入基準はOIE規準よりも厳しいというわけだ。

 アメリカから見れば、日本の輸出に付された条件は非関税障壁そのものなのである。実際OIEは、かつては輸出入できる牛肉の条件として「生後30カ月未満の骨なし」という月齢制限を課していた。ところが2009年の総会で、アメリカの圧力によりこの月齢制限を撤廃してしまった。これがアメリカ式である。

 それゆえ、アメリカがTPPを利用して、日本に対して牛肉の輸入規準の緩和、具体的には月齢制限の撤廃を迫ってくることは確実である。その結果、日本はTPPに参加してしまうと、アメリカ産牛肉の輸入に月齢制限を付すことができなくなる。これは、日本の消費者にとって新たなリスクが生じることを意味している。

 実際、2011年3月8日、元米農務長官のジョハンズ上院議員(共和党)は、超党派27人の上院議員団が連名でオバマ大統領に対し、米国産牛肉の輸入制限緩和を日本のTPP交渉参加の前提条件とするよう求める書簡を正式に送付したことを明らかにした。アメリカはOIEの指針をてこに、日本政府に圧力をかけているわけだ。

 遺伝子組み換え作物の問題も同様である。日本はすでに遺伝子組み換え食品を大量に輸入しているが、食用の遺伝子組み換え作物の栽培は、商業ベースではまだ始まっていない。しかも、複数の都道府県では、条例により遺伝子組み換え作物の栽培に対する厳しい規制が行われており、商業ベースでの遺伝子組み換え作物の栽培を開始するためのハードルは相当に高いと言える。

 遺伝子組み換えをしていない在来種は、長い時間をかけて自然環境に適合しているので、次世代に種子を残していく。しかし、遺伝子組み換え作物の多くは一代限りであり、次世代につながるような種子を残さないよう設計されている。言い換えれば、遺伝子組み換え作物は、次世代に種子を残して自然環境に適合していくという大自然の摂理に反する性格を持つと言える。

 同じ問題点を農家から見ると、次のようになる。農家は在来種であれば、残された自家製の種子を次の年に蒔き、栽培を継続することができた。しかし一代限りの遺伝子組み換え作物については、栽培を継続するためには種子を毎年、種子会社から購入しなければならない。そのため、遺伝子組み換え作物は、農家が種子会社に依存せざるを得なくなるという状況を作り出す恐れがあると言えるのである。

 また、遺伝子組み換え作物から発芽する種子を採ることができたとしても、次の年にこの種子を蒔けば、種子会社が遺伝子組み換え技術に対して得た特許に違反しているとして、農家は種子会社から高額の損害賠償を請求されることになる。結局、農家は毎年種子を種子会社から購入しなければならず、種子会社への依存傾向は変わらないのである。

 さらに、何らかの自然的、人為的理由により、遺伝子組み換え作物の遺伝子が流出すれば、在来種と雑種交配をすることにより、在来種が淘汰されることにもなりかねない。ブラジルやインドの例でもあるように、これは在来種を栽培している農家にとっては脅威である。

 近隣の遺伝子組み換え作物栽培農場から花粉の受粉等を通じて遺伝子が流出すれば、自らが栽培している在来種と近隣の遺伝子組み換え作物栽培農場から花粉の受粉等を通じて遺伝子が流出すれば、自らが栽培している在来種と意図しない交配がなされ、気が付けばいつの間にか栽培している作物が遺伝子組み換え作物になっていたという思わぬ事態も想定される。

 その結果、種を採ることができなくなる、あるいは、意図せずして種子会社から特許違反で訴えられるというリスクを在来種栽培農家も抱えることにすらなりかねない。
 
 ところが、種子会社の視点からすれば、当然のことながら遺伝子組み換え作物の栽培は大きなビジネスチャンスにつながるのである。

 このような種子会社の中で最も大きな存在感を持っているのが、モンサントである。同社は、世界中で遺伝子組み換え作物の栽培を拡大させる戦略をとっている。特に同社の遺伝子組み換え作物は、同社の除草剤である「ランドアップ」に対する耐性を有しており、「ランドアップ」とセットにした売り込みに熱心である。このように、除草剤と遺伝子組み換え作物の種子をセットにすることで、さらに利益を増やすことができるのである。

 さらにモンサントは、同社が特許を有する遺伝子組み換え作物の種子を農家が勝手に蒔いていないかチェックをし、同社から種子を購入していない農家で遺伝子組み換え作物が育っているのを発見した場合、特許侵害を理由とした訴訟を農家に対して起こしている。

 実際、モンサントはアメリカ国内で100人単位の農民を提訴している。しかも、故意、過失あるいは受粉を含む自然的経過といった事情に関係なく提訴をしているのである。またモンサントは、アメリカの政治家をはじめ、各方面にロビー活動や献金を行い、強烈な勢いで政治的影響力を行使していることでも有名だ。

 アメリカは、2006年以降の年次改革要望書において、「バイオテク産品に対する関連諸規則が国際安全基準を反映したものとなるよう改定する」よう、日本に対して強く求めており、遺伝子組み換え作物の栽培がアメリカ、カナダ、中国、ブラジル、アルゼンチンなどで本格的になされていることを踏まえ、日本が遺伝子組み換え作物の栽培を全面的に解禁するよう要求している。

 こうした状況から、日本がTPPに参加する場合、アメリカはTPPにおけるSPS規定に基づいて、日本の遺伝子組み換え作物の規制を非関税障壁だと主張する可能性は高いと言えるだろう。その結果、日本は遺伝子組み換え作物の栽培を全面的に受け入れざるを得なくなることも考えられる。

 仮に、遺伝子組み換え作物の栽培が全面的に解禁されれば、モンサントのような種子会社は日本において莫大な利益を得ることができるようになる。その一方、日本の農業は、自発的な遺伝子組み換え作物の栽培への切り替えや、意図しない交配によって遺伝子組み換え作物に席巻され、種子会社に依存せざるを得なくなるに違いない。たとえ日本の農業が自給率の面で持ちこたえたとしても、それは遺伝子組み換え作物で持ちこたえているという厳しい状況になりかねないのである。こういった事態のもとで、果たして日本の食の安全が守れるのだろうか。TPPはこのような難題も突き付けているのである。


26. 2011年11月07日 21:48:14: 1ktxLKCbxY

まず、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)とは何かということから始めたいと思います。
この交渉に関わっている当事者たちは、通常の自由貿易協定とは一線を画しているということを強調しています。21世紀型の協定であることが強調されています。

21世紀においては多くの課題があります。その中身については明らかでない課題も多くあります。21世紀の課題に応える一つとして、TPPというアプローチがあるのではないかと思います。

交渉官達によりますと、今まであった自由貿易協定や包括的経済連携などと比べると、国境の中に踏み込む、従来の枠組みを超えたものになるということが強調されています。国境の枠組みを超えるものであるという表現の意味ですが、過去の貿易協定などでカバーされていない政策・規制に関して、政府が決定できる選択肢を狭めるものになります。この話の中でTPPが、公衆衛生制度、そしてまた日本郵政、日本の食料安全保障などに対する影響を説明したいと思います。

⇒アメリカから提唱されている2011年11月の妥結を目指すTPP、環太平洋パートナーシップ協定は、地域内の貿易や経済活動を活発にするため、関税をゼロにしよう、という’おいしい話’のようだ。

 ものづくりを誇る日本。関税がゼロになれば、自動車や工作機械、家電や液晶TVなど、「メイド・イン・ジャパン」がどんどん輸出できる。海外からも安い品物がどんどん輸入されてくるので、生活が楽になる。一石二鳥ではないか。「今こそ’平成の開国’が必要だ」と、声高に叫ぶ政治家や経済人も多い。

 また、そうした論陣を張る学者やマスコミも少なくない。連日、「TPP推進!」「国際化のバスに乗り遅れるな!」の大合唱を耳にすれば、「そうかな。TPPは日本の国際化のためには必要なのかもしれない」と思うようになっても不思議ではない。

 果たして、TPPとは本当に「日本の開国」に欠かせない経済協定なのだろうか。

 そもそも、我が国があたかも鎖国状態にあるような錯覚を与える「平成の開国論」自体が、それこそ情報操作の典型である。客観的なデータを見れば、日本はすでに世界に大きく開かれた環境にあることが確認できるからだ。

 食料一つとっても、自給率が40%ということは、海外から60%の食料を輸入しているわけで、先進国の中でこれほど開放的な国はない。確かに、我が国ではコメをはじめ一部の農産物には高い関税が課せられている。しかし、自国民の食の源泉を守るのは当たり前のこと。アメリカであろうと、イギリスであろうと、自国のために、農業の保護や食料の安定供給のために、厳しい規制や関税という防衛策を講じているのである。

 実は、TPPをめぐる問題は、奥が深い。決して、「海外との貿易が促進される」といった単純な話ではない。というのも、TPPで扱う分野は第一次産業にとどまらず、サービス産業すべてを対象にしているからだ。農林水産業、建設、医療・福祉、通信・金融、法律・会計、教育・メディアなど、ヒト・モノ・カネの流れどころか、「価値観」までをも対象にし、「これまでに前例のない高度な自由貿易を目指す」(米国通商代表部<USTR>)としている。

 ところが、我が国の政府は「交渉に参加していないので、詳しい協定の内容はわからない。TPPに参加することで、個別の産業にどのような影響が出るのかは答えられない」(菅直人前総理)との無責任発言を繰り返すばかりなのである。

 その一方で、「関税撤廃の対象にならない項目が1〜5%はある可能性が高いので、コメなどの日本の重要品目は自由化の対象外にできる」(海江田万里前経済産業相)と希望的観測も述べている。

 こうした政府による身勝手な説明や、情報をひた隠しにするかのようなマスコミ情報に接すると、恐ろしくなる。なぜなら、TPPを国家戦略として強力に推し進めているアメリカのオバマ政権の意図がまったくわかっていないからだ。TPPはアメリカ政府と産業界が一体となり、我が国の構造改革を成し遂げようとする、アメリカに都合の良い「日本改造計画」に他ならないのである。

 また、オバマ大統領にとっては、2012年に迫った再選戦略に欠かせない「輸出倍増」と「雇用拡大」政策として位置付けられている。急成長を遂げるアジア太平洋地域ではすでに170もの経済協定が締結されているが、そのほとんどから締め出されているのが、実はアメリカである。

 そうした危機感を抱くアメリカが起死回生を狙って打ち出した戦略が、「TPP推進」である。当初、TPPは「環太平洋戦略的経済連携協定」とされ、「戦略」という言葉が含まれていたが、交渉相手国の反発や懸念を考慮してか、途中から削除されることが多くなった。ここからも、アメリカのしたたかではあるが、「取り残されてはなるまい」との必死な思いが垣間見て取れるではないか。

 要は、リーマン・ショック以降、失業率が9%を超え、社会不安も増す一方、貧富の格差は拡大するばかりのアメリカ。財政破綻の瀬戸際に追い込まれ、困っているのは何を隠そう、アメリカのほうである。決して日本ではない。1985年に仕組まれた、あの「プラザ合意」で、不意打ちのように、日本に円高を飲み込ませ、日本から国富の3分の1を収奪したアメリカの手口を忘れてはならない。あの時も「国際協調」や「日米同盟」という美名に乗せられた日本であった。

 たとえ騙されても、すべて水に流すのが日本人の美徳であろう。しかし、TPPで再び、失敗を繰り返すことになれば、もはや日本再生の望みは完全に失われる。再生どころか、日本という国家そのものが失われかねない。なぜなら、TPPには「国境や国家主権をなくすという毒薬」が仕込まれているからである。ここは日本の未来のために、「平成の開国論」に騙されてはならない、と強く訴えざるを得ない。

 しかも、日本政府はTPP交渉に関する情報を隠したままである。国会でも、各地で開催される「開国フォーラム」でも、真実はまったく語られていない。国民不在の亡国的政治主導としか言いようがないのである。「お答えする立場にない」との答弁は、これこそ公の議論を排除しようとする「鎖国」そのものではないか。開かれた議論なくして、真の国益は守れない。後悔先に立たず、「こんなはずではなかった」と、ほぞをかむことがないようにしなければならない。

 今回の「TPP開国論争」、「環太平洋パートナーシップ協定」とは名ばかりで、実質的には、新たな日米間の経済協定に他ならない。そのことは、米通商代表部(USTR)や米議会調査局(CRS)の公式文書で明らかになっている。第三者機関である世界貿易機関(WTO)の年次報告書でも、そのように受け止められ、分析されているではないか。

 そもそも、TPPという言葉が注目されるようになったのも、オバマ大統領が自らの再選戦略の一環として打ち出してからである。過去の「開国」の歴史と同じで、今回もアメリカによる「日本の制度的開放」という側面が否定できない。

 日米間の競争分野は製造業からサービス分野まで、実に広い。アメリカは自国の景気回復と雇用拡大のために、日本市場をかつてない範囲とスピードでこじ開けようとしている。実際、アメリカから日本へ輸出されているもののうち、すでに約75%は無税となっている。本来、貿易とは相互に補完しあう中で、お互いがウィン・ウィンの関係になるのが理想である。一方のみが得をするような経済関係は長続きしないだろう。

 しかも、トヨタのリコール問題でも明らかになったが、当時、アメリカではフォードが同様の欠陥問題でトヨタより大規模なリコールに直面していながら、アメリカ議会は国有化していたフォードには何ら制裁措置を加えようとはしなかった。極めて不公正な対応であろう。しかし、これが自国企業の利益を優先的に擁護しようとするアメリカ政府の一貫した立場である。

 さて、目前に迫るのがTPP参加問題である。TPPの対象には、自動車の安全基準は言うに及ばず、農産物、食肉、食品から医薬品、医療器具の安全性、そして建築、法律、会計、教育の基準まで、あらゆるサービス分野の安全基準や知的所有権問題が含まれるのである。いわゆるアメリカ式規準の押し売りとも受け止められるため、アメリカ以外の交渉参加国からも反論や疑問の声が上がっているようだ。そのことをどれだけ日本の国民は知らされているのだろうか。否、ほとんど知らされていないのである。こんな国民不在の貿易自由化交渉を認めるわけにはいかない。

 現在、TPP交渉に参加している9カ国の消費者団体や生産者組織の間では、議会へのロビー活動を含め、賛否両論が激しく戦わされている。場外闘争とも見られるデモも頻繁に繰り広げられるようになってきた。最終判断を下す前に、もっと情報をオープンにするよう求める声も巻き起こっている。当然のことであるが、情報も錯綜気味ではある。しかし、こうした声を受け止め、各国の交渉担当者はステークホルダー(利害関係者)の代表に対して、記者会見やネットを通じて情報開示に努めるような傾向になってきた。健全な反応であろう。

 となれば、我が国の「交渉に参加していないので、情報が得られない」という開示拒否の姿勢は、どうにもいただけない。これでは「何か不都合な内容を隠しているのでは」と、あらぬ不信感を高めるだけである。問題点を精査し、日本の進路を誤らないようにするためにも、政府による一刻も早い情報開示が求められる。

 同時に、非政府組織による独自の情報取集と分析も欠かせない。政府も企業も非政府組織も一致団結して、今こそ、したたかなアメリカに一泡吹かせるような日本の戦略を講じる時である。


27. 2011年11月07日 21:54:01: 1ktxLKCbxY

現在、TPPを交渉しているのは9カ国となっています。オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカ、ベトナムの9カ国です。アジア太平洋経済協力機構(APEC)の加盟国です。

9カ国が現在交渉に参加しているということを申し上げましたけど、ご覧のとおり1カ国だけが他の8カ国に対して突出しているということがいえるかと思います。アメリカという国はこの9カ国の中で最大の経済大国であるのみならず、もっとも強い政治的影響力を持っています。

それはどうしてかと申しますと、TPPの協定の中身は全てアメリカの議会によって承認されなければなりません。国民の利益に反するようなもの、あるいは国民の利益に資することができないものについては、アメリカの議会では決して承認されることがないからです。このポイントは非常に重要でありまして、後でまた触れたいと思います。

⇒ 現在、9カ国の間で交渉が進んでいるTPPの表面的交渉だけを見ていては、アメリカの真の狙いはわからないだろう。なぜなら、現在の交渉相手国の経済規模はいずれも小国の範疇に入るものだからである。どうしてアメリカのような巨大な経済大国が、こんな小国との交渉に血眼になるのか、不思議と思う向きも多いだろう。

 しかし、アメリカは明らかにTPPの加盟国を大幅に拡大する戦略を描いている。そのためにも、最終的には是が非でも日本を引きずり込む作戦を展開してくるに違いない。とはいえ、今のところオバマ大統領はまだその時期ではないと考えているようだ。ハワイで生まれ、インドネシアで幼少期を過ごしたというオバマ大統領自らの出自体験に触れつつ、アメリカ人が抱くアジアのパーセプション(理解、認識)を変える必要性にも言及している。

 ヒラリー・クリントン国務長官をたびたびアジアに派遣しているのも、アメリカがこれらの国々との関係改善や強化に余念がないことの表れである。また、友好親善を掲げる協定や条約をアジア各国と結ぶよう後押しも欠かさない。当然、オバマ大統領自らも、あらゆる機会を捉えてアジアの国々との関わりを深めようと努力を重ねている。

 2009年11月に東京で行ったオバマ大統領のスピーチでも、自らの体験に言及しながら、21世紀のアメリカにとって、アジア太平洋地域がいかに重要であるかということを繰り返し述べていた。しかし、そうしたアジア重視の演説やアプローチも、最終的にTPPを実現するための、欠かせないステップと見なしているとしか思えないのである。

 アメリカの多くの産業界からは、TPPを通じて「自由で公正な貿易という大原則を確立し、アメリカがアジアとの連携を再構築するチャンスにすべきである」との考えが寄せられている。これこそ全米商工会議所が中心となって進めているTPP推進の動きの背景に隠された思想的背景のようなものである。

 簡単に言えば、「TPPをアジア太平洋地域の自由貿易圏に進化させることで、アメリカの経済権益を確保せよ」という発想である。

 と同時に、アメリカの法制度がアジア太平洋地域と共通化することになれば、アメリカの企業、特に中小企業は大きなメリットを享受できることになるわけで、そうした法体系の一体化の動きも水面下で着々と進められている。

 国内経済が縮小傾向にあり、雇用の確保が最重要課題となっているアメリカにとって、経済の急成長が続くアジアは死活的利益を有する地域なのだ。

 全米サービス産業連盟はそうした発想のもと、TPPが取り組むべき最重点分野として、金融サービス、通信、オーディオ・ビジュアル・サービス、メディア、速配便といった産業を有望視している。

 実は、アメリカでは「TPPのための米国企業連合(U.S.BUSINESS COALITION FOR TPP)」が立ち上げられ、熱心な活動を展開している。

 すでにさまざまな要望書が作成され、議会に対しても、オバマ政権の中枢に対しても、日夜、ロビー活動を続けているのである。オバマ政権は多様な貿易通商政策を展開しているが、唯一といっても過言ではないほど、積極的に’攻め’の姿勢で働きかけを行っているのが、このTPPなのである。その背景には、こうした経済界や各種ロビー団体の強力な働きかけが影響しているわけだ。

 我が国では慎重な対応を求める声も強いが、アメリカ国内ではTPP実現に向けて日本の想像をはるかに超える規模とスピードで促進活動が進められているのである。

 TPP参加国、参加交渉国と日本のGDP比較

国名、GDP(億ドル)、同成長率(%)

TPP参加国
チリ、1,991、5.0
ニュージーランド、1,380、2.9
シンガポール、2,173、15.0
ブルネイ、119、0.4

TPP参加交渉国
米国、146,241、2.6
ペルー、1,535、8.2
豪州、12,197、3.0
マレーシア、2,189、6.7
ベトナム、1,019、6.4

TPP参加交渉を検討中
日本、53,909、2.8

米国の狙いは日本市場
TPP交渉参加9カ国に日本を加えた10カ国の内需総額のシェアを見た場合、日米で95.6%を占め、豪州を除くその他7カ国の国内需要のシェアはわずかに0.3%にすぎない。

 思い起こせば、アメリカがTPPへの参加を最初に表明したのはブッシュ政権末期のこと。具体的には2008年9月のことであった。

 その表明直後、オーストラリア、ペルーが参加を表明し、さらにはベトナムもオブザーバー参加を申し出た。そしてオバマ政権が誕生するや、マレーシアも参加の意思を表明。2010年10月にブルネイで開かれた第3回交渉で、マレーシアの参加が正式に認められた。翌11月にはベトナムも正式に参加。アメリカが参加を決定したことにより、TPPの動きは急速に進展するようになったのである。

 アメリカでは正式参加以降、「TPPのための米国企業連合」以外にも、TPP推進の業界団体が、次々と要望書を議会や大統領に突き付けている。

 例えば、米国製造業者協会(MTA)は15項目からなる要望書を2010年9月に発表。その中身は、「関税の例外なき撤廃、ネガティブリスト方式(リストにあるもの以外はすべて許可する方式)によるサービスの大幅な自由化、高度な知的財産権の保護、投資の自由化と政府調達の差別撤廃などで、これまでアメリカが各国と結んできたFTAでの伝統的な取り組みに加え、既存の2国間FTAを遥かに上回る自由化と規律化を求めているのが特徴である。

 このように、アメリカ政府は「TPPこそ21世紀型FTAモデル」と明確に位置付け、「極めて高度で包括的なFTAを目指している」のである。当然のことながら、既存のFTA以上の内容を交渉相手国に求めてくるであろうことは、容易に想像できるだろう。

 また、先に述べた米国企業連合の要望書を見れば、中小企業にとってのメリットとして、「既定の統一、サプライチェーン(供給者から消費者までの流れを管理すること)の実態の考慮、政治腐敗や透明性の向上」といった、これまでのFTAにおいては考えられなかった野心的な内容を、オバマ政権は企業からの圧力を受けTPPに織り込もうとしているわけである。

 果たして、TPP交渉参加国がどこまでこうしたアメリカ企業の要望を受け入れるかは予断を許さない。とはいえ、自らの再選戦略に邁進せざるを得ないオバマ大統領が、力ずくででもこうした新たなアメリカン・スタンダードをアジア太平洋諸国に押し付けようとする可能性は高いと思われる。

 もちろん、アメリカがこのTPP交渉を成功裏に決着させるためには、「議会が持つ貿易交渉権限を政府に付与する時限立法、すなわち貿易促進権限(TPA)が必要不可欠になる」。なぜならTPAがあって初めてアメリカ政府は他国との交渉がまとまれば、議会による修正を受けることなく、交渉の中身を採択することができるようになるからである。

 実際、ブッシュ政権の時代にはTPAを議会から付与された後、中南米や中東諸国、シンガポール、オーストラリア、韓国などとの間でアメリカは次々とFTAを結んでいった経緯がある。逆に言えば、TPAがなければ、オバマ政権がいくら外交圧力や軍事力をバックにTPP交渉をまとめたところで、最終的に議会の修正を受け、再度参加国と交渉をやり直すという不名誉な流れが起こるわけだ。

 そのため、ワシントンの通商問題専門家の間では、TPPの交渉を進めるのは結構だが、貿易促進権限がないアメリカにほかの参加国がどこまでついてくるかは難しいとの指摘があるほどである。

 確かにオバマ政権はアメリカの産業界の意向を受け、また自らの再選戦略の中心にTPPを位置付けていることは間違いないものの、オバマ政権と議会との関係を考えれば、必ずしもアメリカ主導のTPP交渉がスムーズに進展する保障はないのである。この点を見誤ってはならない。

 こうした懸念に対し、米国製造業者協会の責任者は、「貿易促進権限はなくてもオバマ政権は議会と相談しながらTPP交渉を進めている。よって、さほど大きな障害にはならないだろう」、と楽観的な見方を述べている。

 とはいえ、2011年11月を目途としているTPP交渉合意時点におけるアメリカ上下両院議会の政治情勢は、不透明な部分があり、修正が必要となる場合も考えられる。となれば繰り返しになるが、「最終的に議会による修正を余儀なくされるリスクがある協定の中身を、現在の交渉参加国がどこまで本気で詰めるのかは疑問の残る点である」。

 日本はこうしたアメリカ議会の情報をしっかり収集・分析したうえで、TPP参加について議論すべきであるが、果たしてそこまで詰められているのか、はなはだ疑問である。

 2010年10月に行われた中間選挙で共和党は歴史的勝利を収めた。

 一般的に共和党は自由貿易推進と言われているため、通常であれば、政権の求めに応じて貿易促進権限を付与する可能性が高い。とはいえ、オバマ政権発足後の2年間に生じた民主党と共和党との間の対立構造には根深いものがあり、共和党が多数派となっている議会が、オバマ政権に通商交渉の権限を与えるとは考えにくい。我が国でも「ねじれ国会」が、さまざまな法案の審議に影響を与えているが、こうした状況と似通っていると言えなくもない。

 さらにアメリカでこのところ顕著になってきた「保守回帰の動き」も無視するわけにはいかない。すなわち、オバマ政権の大きな政府に反対する、「ティーパーティー(茶会運動)」の影響力の拡大が、TPP交渉にどのような影響をもたらすかという点にも注目しておく必要があるということだ。

 先の中間選挙において、ティーパーティー支持議員は、下院で24議席を新たに獲得し、合計76議席を占めるまでに勢力を拡大。注意すべきは、これらティーパーティーの議員たちは、自由貿易協定(FTA)反対の立場を明らかにしていることだ。また、景気回復の兆しが見えないなか、これまで国内雇用の確保に重点を置いてきたのが民主党であるが、民主党がかろうじて多数を占める上院の貿易関連委員会において、貿易促進権限がすんなりと承認されるかどうかは極めて不透明と言わざるを得ない。

 こうした状況下で、オバマ大統領の議会工作がどこまで成功するのか。また、どこまでオバマ大統領自身がTPP交渉への支持基盤を拡大していけるのか。まだまだ思惑通りには進まない可能性も視野に入れておく必要がある。

 このような厳しい情勢に直面し、TPPを何とか進めたいオバマ大統領が見い出そうとしている活路が、環境保護団体との連携である。

 アメリカでは様々な市民団体や環境保護団体が、会員からの会費や一般市民からの寄付、また自らの出版事業による収益等を使い、自らの政策を広めるための多様な活動をしているが、このところ、こうした団体においてTPPへの関心が高まりつつある。

 従来から、こうした市民団体や環境保護団体は民主党支持の傾向が強かった。特にオバマ大統領が誕生した際の選挙戦では、環境保護グループや人権擁護団体が重要な役割を演じたものである。そのため、議会との対応で厳しい局面が想定されるオバマ政権は、TPP問題を有利に展開するための応援団として、経済団体に加え、環境保護団体などNGOとの情報の共有化や連携の強化を図ろうとしている。

 「全米野生生物連盟」や「グリーンピース」、「ワールドウォッチ」、「シエラクラブ」、「フレンズ・オブ・ジ・アース」など国際的に知られた環境保護団体は、これまでもFTAやTPPについて積極的に情報を発信してきているが、一方で、米国の非営利消費者擁護団体「パブリック・シチズン」や環境団体と労働組合の連合組織である「シチズンズ・トレード・キャンペーン」、アメリカとカナダの労働組合の連携組織で140万人の会員を誇る「チームシスターズ」などは、自らのホームページや街頭活動等を通じて、TPP問題をテコにオバマ政権に対する影響力を拡大しようと、あの手この手の知恵を絞っている。特に「シチズンズ・トレード・キャンペーン」ではTPPをTrade Policy Problems(貿易政策問題)の略だと訴え、問題点の指摘に余念がない。というより、国内の雇用を守る立場からTPPには反対している。

 またアメリカ最大の労働組合組織である「アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)」は、ことTPPに関しては条件付きでの支持しか表明していない。なぜならば、アメリカ国内での雇用確保がどこまで保障されるのか、見極めがつかないからだというのがその理由である。

 「パブリック・シチズン」も「自由貿易はアメリカの利益になっておらず、協定を結んでいない国との貿易のほうが伸びている」との報告書をまとめているほどだ。それどころか、FTAによってアメリカは1994年以降、490万人の製造業の雇用を失い、NAFTAの貿易赤字だけで、100万人以上が職を奪われることになったと分析している。

 このように諸手を上げて賛成の立場を表明しているわけではない多くの民間団体や環境・人権団体はTPPとどのような関わりを持とうとしているのであろうか。

 彼らの主張を分析してみると、次のような特徴があることが判明する。

 それはモノの貿易やサービス、金融事業がグローバル化した結果、アメリカの労働者の雇用や権利、自然環境や熱帯雨林などの資源、生物多様性や地球温暖化、市民の権利などにも様々な悪影響が及ぼされるようになった。こうした問題の解決策を自由貿易協定の中にも織り込むことで、労働条件や環境に配慮した投資のあり方、また政府調達の仕組みそのものに環境や人権問題を織り込もうという要求を掲げているのである。

 こうした発想を持つ組織の多くは、ブッシュ政権が進めてきた自由貿易協定は多国籍企業や大企業の利益を優先するものとして批判をしてきた経緯がある。そこでオバマ政権に対しては、自分たちの主張を取り入れた新しい貿易協定の締結を強く求めているのだ。この点、労働組合組織と歩調を合わせているといえよう。

 さらに、TPPへの関与を深めようとしているアメリカの環境保護団体は、「国内の厳しい法律を相手国にも求めるように」との申し入れを重ねていて、多くの環境保護団体は労働組合と連携し、TPPの投資部会に対して圧力をかけ続けていくとアピールしているほどだ。「外国企業などの投資家に対し、アメリカ企業が与えられている権利よりも大きな権利を与えてはならない」とする条項を必ずTPPの中に入れるように要求しているのである。

 つまり、外国の企業や投資家に対する扱いには、アメリカ企業との差をつけるべきだという考え方に他ならない。

 具体的な例を示せば、アメリカに進出することになるTPP締約国の企業や投資家から、「アメリカ政府が再生可能エネルギーや環境保護政策のもとで行うアメリカ企業への補助金、あるいは雇用創出に伴う給付金、そして政府調達による国内企業への優遇措置は外国企業や投資家を差別している」といったクレームが寄せられた場合、その問題解決を国際的な裁判所等に訴えようとしても、外国企業や投資家にそのようなことができないようにする条項をTPPに織り込もうとしているのである。

 こうしたアメリカ優先の条項は今後大きな議論を呼ぶことになるだろう。

 また、輸入食品の安全問題や検査の強化対策、厳格な原産地表示のルールなども、環境保護団体が求めている協定案文の一部である。要は、輸入される農産物や食品の残留農薬検疫、パッケージや表示のあり方などの安全基準に関連し、アメリカの基準を満たさないものは、その輸入を禁止するということである。

 こうした食品の安全基準を、他のTPP参加国においてアメリカ並みの水準に引き上げさせるため、環境保護団体は米通商代表部や食品医薬品局(FDA)が相手国の法律を審査するように求めている。

 そして、驚くべきことに2011年1月、アメリカでは「食品安全近代化法」が施行され、アメリカの環境保護団体は、この新たに施行された法律をTPP交渉の基盤とするよう、要求をエスカレートさせる行動を開始したのである。

 何が問題かといえば、この食品安全近代化法においては、食品医薬品局に対し、食品リコール権限を新たに付与するとともに、食品の製造、加工、包装、保管のためのアメリカ国内の施設は、2年ごとにFDAへ登録することが義務付けられるのである。ということは、TPP加盟国内においても、同様の登録や検査の義務を課すことになる可能性が高くなることは火を見るより明らかだ。

 とはいえ、アメリカの残留農薬や遺伝子組み換え作物の表示義務等は、日本と比べれば遥かに緩やかなものでしかない。にもかかわらず、アメリカの消費者団体や環境保護団体は、TPPの交渉においては、あくまでアメリカの規準や法律を基礎にすべきだとの主張で固まっているのである。果たしてアメリカの消費者団体や環境保護団体は、どこまで日本が定めている厳しい安全基準を認識しているかといえば、はなはだ心許ない限りである。

 であるならば、アメリカの消費者にとっても、日本の安全基準のほうが遥かに厳しいということを認識させれば、一方的なアメリカン・スタンダードを掲げるTPPの問題点も明らかになり、今後の交渉次第では日本の基準がアメリカやアジア、世界のスタンダードになる可能性も十分あるといえよう。

 しかし現状では、アメリカの消費者団体や環境保護団体の主張は、アメリカの経済団体や農業団体との間で対立したままである。

 また、言うまでもなく、アメリカ国内の様々な法律や安全基準が必ずしも唯一絶対のものではないわけで、そのことをアメリカの世論や一般の消費者が気づくようになれば、TPPが内部的に崩壊する可能性も否定できない。実はそうした脆い基盤の上に立っているスキームが、TPPなのである。だからこそ、TPP参加にただ邁進するのではなく、日本政府には冷静な情勢判断に基づいた方針作りが必要なのである。


28. 2011年11月07日 22:03:24: 1ktxLKCbxY

アメリカの国務長官ヒラリー・クリントンは、既にこのTPPというのは、アジア・太平洋地域において中国を牽制するためのものであるということを主張しています。ですから他の国々に参加してもらい、そしてまた、その合意された内容をもって中国を牽制したいと考えています。

⇒アメリカがアジア太平洋地域の経済連携構想の中に封じ込めようとしている中国は、TPPをどのように受け止めているのだろうか。

 中国社会科学院アジア研究所所長・李向陽氏によれば、「TPPは経済的に見れば金融危機以降、急速な発展の舞台となったアジアの活力を取り込みたいアメリカの思惑が色濃く投影されている交渉にほかならない。この地域で台頭しつつある中国を抑制しようとしているに違いない」と述べている。

 日本の立場についても、同所長は次のように述べている。
「これまで日本は中国、韓国とともにASEAN(東南アジア諸国連合)+3を主軸にアジア域内経済連携構想を進めてきた。もし日本がTPPに参加することになれば、そうした戦略は変更を余儀なくされるであろう。ただ、ベトナムやマレーシアに加え、タイなどもアメリカ市場に向けた競争力を確保するために、TPP参加に舵を切ろうとしている。そのため日本がTPP参加の決断を下せば、ほかのアジア諸国の動きを加速させることになるはず。しかし、我々中国はASEAN(東南アジア諸国連合)+3にせよ、インドなどを加えた+6にせよ、こうした地域間の経済連携とTPPを同時に発展させることは難しいと受け止めている」。

 そのうえで、中国の基本的立場を次のように説明する。曰く、「我々の戦略は、多国間の枠組みよりも2国間でのFTAのネットワークを広げることにある。その意味で、中国がTPPに参加する可能性や予定については短期的にはあり得ない。中国にとっての優先順位は低い。万が一、中国がすべての条件を満たすからTPPに加入したいと申し出たとしても、アメリカは中国に対して無理な条件を押し付け、加入を認めようとしないだろう。なぜなら、アメリカはTPPに限らず、経済連携については常に安全保障的な意味を付与したいと考えているからである。結論的にアジアの経済にとって最も望ましいシナリオは、日本、韓国、中国によるFTAを実現することである」。

 実は、中国外務省もこうした李所長の主張を裏付けている。

 すなわち、「TPPに関しては経済発展の地域格差と多様性を十分に考慮すべきであり、アジア太平洋地域における経済一体化のプロセスは順を追って段階的に進めるべきだ」というわけだ。要は、アメリカが進めるような、TPPによる急速な環太平洋、アジアの経済統合を牽制するという立場にほかならない。

 その背景として、TPPでは関税撤廃の例外品目がわずかにしか認められないため、中国とすれば自国の農業が厳しい競争にさらされることを警戒しているに違いないと思われる。また、アメリカがこの地域の経済連携構想において主導権を握ろうとしていることに対する警戒心も強い。結果的に、中国外務省はアメリカが入りたくても入れない東南アジア諸国連合(ASEAN)などの枠組みを軸にした経済連携強化を進める方針を固めているようである。

 食糧輸入国が市場開放を続けることは難しいというのが世界に共通した状況といえよう。中国にとっても、農業問題こそがTPPへの加盟に対し慎重ないし反対の立場をとる最大の理由に違いない。

 とはいえ、外交巧者の中国はTPPに関して各国の動きを注視し研究を進めているようだ。参加するか、参加しないかは研究段階であるとし、臨機応変な態度で選択肢を温存する構えをとっている。そのためか、「すでにTPPの交渉に参加している国々とも連絡をとっている」と駐日中国大使、程永華氏を通じてオープンな姿勢も印象づけようとしている。さすが、老練な外交官だ。

 アメリカがTPPの実現に向け、官民を挙げて取り組んでいること、そして、TPPをオバマ大統領の再選へ向けての切り札と位置付けていることは明らかだ。では、あらためてなぜTPPなのか。

 その理由として、現在のアメリカが国内総生産の8割以上、雇用の9割以上をサービス産業に依存していることが挙げられる。アメリカにとって、このサービス産業を海外市場に強力に売り込んでいくことが、今後の経済戦略にとって欠かせない条件になっているのだ。しかも、貿易拡大と投資のリターンが期待できる最大の市場がアジアであることは、衆目の一致するところであり、何としてもアジアに食い込んでいきたいということに他ならない。

 近年、アジア太平洋諸国では急激な経済成長が実現し、ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に、アジア各国間の域内連携も強まる一方だ。この地域では、我が国を含め関係国の間で170を超える経済協定が網の目のように結ばれているが、実はアメリカはそのほとんどから排除されている。イラクやアフガニスタンでの長引く戦争やテロに足元をすくわれ、アメリカはかつてのようにアジア地域におけるプレゼンスを維持できなくなっているのである。

 アジアの国々もそうしたアメリカの状況に敏感に反応し、アメリカ頼みの体制から脱却する動きを強めてきた。そうした情勢を踏まえ、アメリカでは議会が中心となり、アジア太平洋地域との新たな関係強化に取り組まなければアメリカの景気回復もあり得ないとの結論に至ったようである。要は、「最も経済成長が期待できるアジア太平洋地域から締め出された」との認識がアメリカの中枢に急速に芽生えてきたのである。

 このところアメリカの議会調査局(CRS)では相次いでTPPの必要性に関する報告書をまとめているが、2010年11月の報告書からは、TPPに寄せるアメリカの過剰なまでの期待感が読み取れる。

 この報告書によれば、「アジアとの経済並びに戦略的な関係強化こそが、アメリカにとって21世紀に生き残る最大の道筋になる」と位置付けられている。

 2006年5月、当初「P4」と呼ばれるシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国でスタートしたTPPは、2008年アメリカが参加を表明した結果、オーストラリア、ペルー、マレーシア、ベトナムを含む9カ国に拡大しつつある。アメリカの議会調査局はこの拡大路線をさらに強化すべきだと提言している。

 言い換えれば、東アジア・サミット(EAS)に参加を表明してきたアメリカにとって、TPPは欠かせない舞台と受け止められているわけだ。もともとEASはその名が示すように、東アジア諸国間での政治、経済、文化などあらゆる課題を協議する場である。そこにアメリカが参加の意向を示したことで、既存の東名アジア諸国連合(ASEAN)という枠組みを、さらに戦略的に高めようとする独特の色彩が加わったといえよう。

 とはいえ、かつてほどの政治的影響力や軍事的優位性を誇示することのできないアメリカが、どこまで東アジア・サミットの一員として受け入れられるかどうかは、大いに疑問視されていた。しかし、背に腹は代えられないとばかりに、アメリカはなりふり構わず、アジア太平洋地域の一翼を担う国としてEASへの参加への道筋をつけ、参加のための新たな試みとしてTPPを推進する戦略を立てたのである。

 いずれにせよ、アジア太平洋地域はすでにアメリカの貿易、安全保障にとって死活的な重要性を持つに至っている。米通商代表部(USTR)によれば、アジア太平洋地域は全世界の国内総生産(GDP)の60%を占め、また、国際貿易の50%近くがこの地域で営まれているという。

 さらに言えば、1990年以降、アジア太平洋地域における域内の貿易額は3倍に拡大し、世界各国からこの地域に投資された資金総額は4倍に膨れ上がった。アメリカとしても、このアジア太平洋地域との経済連携を抜きにしては、自国の経済発展はあり得ないとの認識に至ったのも当然であろう。

 一方、この地域では中国の存在感が日増しに大きくなっている。

 アメリカは軍事戦略的な観点からも中国の不穏な動きに神経を尖らせる局面も増えてきており、軍事、経済の両面から、中国の台頭を可能な限り封じ込める必要性を感じているに違いない。もちろん、経済面から中国の巨大市場に食い込む必要性も感じているようだが、傍若無人な振る舞いの多い中国の言動に、オバマ政権も共和党も危機感を募らせているようである。中国がTPPに対して、慎重かつ懐疑的な姿勢を示していることを「物怪の幸いとして、アメリカは中国抜きのTPPを強力に推し進めようとしてるように見える。」

 では、韓国はどうだろうか。

 現在、韓国はTPPへの参加に前向きではないが、アメリカの議会調査局の報告書には、「中国を封じ込めるためにも韓国、日本、そしてカナダやメキシコそのほか交渉に参加していない国々に対する働きかけが欠かせない」との考えが打ち出されている点は見逃せない。

 各種の資料から明らかなように、TPP交渉の最終目的は次の三つに置かれている。
@できる限り早期に関税の実質的な撤廃を図る
Aあらゆる製品、サービスの分野に例外を設けない究極のFTAのの実現を図る。
B交渉そのものプロセスを透明化し、現存する規制を撤廃する

 ここから見えてくるアメリカの究極の狙いは、アメリカ式のビジネスモデルを世界で最も急成長が確実視されているアジア太平洋地域に広め、最終的には、世界を
アメリカ式モデルに標準化させることにある、といえるだろう。

 2008年に米通商代表部のスーザン・シュワブ代表がTPP参加を表明して以来、アメリカ政府は着々とその布石を打ってきた。

 オバマ大統領も就任早々、TPP交渉参加の方針を議会に伝えている。当時のホワイトハウスの声明では、「TPPはこれまでのいかなる貿易協定と比べても、最も中身のあるものだ」と高らかに宣言している。

 とはいえ、経済規模や貿易に対する考え方が必ずしも一様ではないアジア太平洋の国々と関税ゼロに向けての交渉を進めることは、アメリカにとっても容易な作業ではないはずだ


29. 2011年11月07日 22:08:26: 1ktxLKCbxY

二つめに問題として浮上しているのは、外資の投資家のルールに関してであります。
具体的に申し上げますと、外国の投資家が土地あるいは資源など、戦略的な資産に対して投資をする際の制約を緩和するという内容が主張がされているということです。

⇒既存のTPPには投資に関する章は存在しないが、24の作業部会のうちの一つに投資に関する作業部会があり、新たに投資に関する規定を盛り込むことが想定されている。日本がこれまでに結んできたEPAや米韓FTAを見る限り、今後、投資についても、自国とほかのTPP参加国を対等に扱い、同じ条件で投資ができるようにすることが求められるようになると思われる。

 投資とは、単に他国の企業買収にとどまらず、多国にある財産の取得一般を含んでいる。そして、財産には土地も含まれるから、外国の土地を買収することも投資の一環になる。日本が各国と締結しているEPAの中には、シンガポールとのEPAのように外国人による土地所有を投資の自由化の例外に位置付けているものもあるが、こうした制限が明示されていないものも存在する。もちろん新たなTPPでは、外国人の土地所有が投資自由化の例外に位置付けられるという保障はどこにもない。

 このような懸念は、日本だけが持っているものではない。すでにTPPに参加しているニュージーランドでも、いろいろな懸念が示されている。ニュージーランドでは、現在、安全保障を含めたさまざまな理由から外国人による一定の土地に対する投資に関しては事前審査が課されている。しかし米通商代表部は、ニュージーランドに対し、このような事前審査が投資の自由に対する障壁になっていると指摘したのである。

 実際、オーストラリアは、米豪FTAにおいて8億オーストラリアドル以下の投資については事前審査の対象外とされ、アメリカ企業によるオーストラリアの土地所有も認められるようになっている。そのためニュージーランドでは、アメリカが参加するTPPにおいては、事前審査の撤廃を求められるのではないか、という懸念が広がっている。

 日本もTPPに参加し、参加国によるほかの参加国の土地への投資が自由化された場合、日本には少なくとも二つの点で大きな影響があると考えられる。一つは森林を中心とした水資源の問題、もう一つは農地の問題である。

 まず、森林を中心とした水資源の問題であるが、近年、中国人や中国資本が日本の森林を買収していることが問題となっている。中国はすでに慢性的な水不足に悩んでおり、今後、水不足はますます深刻化すると考えられている。そのため、日本の水資源とそれを育む森林を中国は喉から手が出るほど欲しがっているのである。

 確かに、中国はTPPの加盟国でも参加国でもない。しかし、現に中国人や中国企業は、中国籍以外の国籍でダミー会社を設立し、その会社の名前で諸外国の土地を買収したり、投資をしたりしているのだ。

 例えば、TPP参加国あるいは参加検討国のうち、中国系住民が多く存在するシンガポール、マレーシア、アメリカに中国人や中国企業が地元籍のダミー会社を設立したらどうなるだろうか。日本とこれらの国々がいずれもTPPに参加することになれば、TPP参加国にあるダミー会社を通じて、中国人や中国企業が日本の森林を買収し、日本の水資源を支配することがより簡単にできるようになってしまう。そうなると、中国人は日本の水を使い放題になる一方、日本人が自国の水資源を利用できず、水不足に苦しむといった事態すら想定される。

 次に農地の問題である。2009年の農地法改正により、農地の賃借が自由化され、外国資本を含む農業生産法人が日本の農地を賃借することができるようになった。

 しかし、TPPにより土地への投資制限が撤廃されれば、TPP参加国の資本が日本の農地を買収することは容易に想定される。特に、アメリカのアグリビジネスが日本の農地を大量に買収することが予想されていて、実際カナダでは、アメリカ、メキシコとの間で北米自由貿易協定(NAFTA)締結後、農業が全国規模でアメリカのアグリビジネスの支配下に置かれるようになり、その意向に逆らえなくなったという。

 もしアメリカのアグリビジネスが日本の農地を買収した場合、そこでできた作物を日本国内に流通させるとは限らない。アメリカは食糧を戦略物資として捉えており、日本がアメリカと何らかの理由で対立する、あるいは意見を異にするということになれば、日本国内の食糧流通を生産の段階からコントロールすることによって圧力をかけてくるであろう。そうすると、仮にTPPによって自給率がそれほど下がらなかったとしても、農地買収という側面から、日本の食糧安全保障が根底から脅かされることになりかねないのである。


30. 2011年11月07日 22:10:47: 1ktxLKCbxY

もう一つ関係のある分野としては、政府調達市場があげられます。これは学校や道路あるいは建物の建設など、納税者の税金を使って政府が支出する公共投資の分野です。TPPの下では、TPPに参加する外国の企業が、日本企業と同様にこれらの政府調達案件に対し入札する権利を要求します。この分野でアメリカが日本に対して問題視しているのは、様々な建設工事あるいは道路の整備、港湾整備、そして官民パートナーシップの事業です。とりわけ被災地の復興事業において重要な意味をもつと思います。

⇒TPPの24ある作業部会の一つが政府調達に関するものである。

 既存のTPPにも政府調達に関する章があり、内国民待遇と最恵国待遇が各参加国には約束されている。そしてTPP参加国が拡大した場合にも、現在の政府調達に関する原則は維持されると考える。つまり政府調達に関して、ほかのTPP参加国の物品サービスを、日本の物品やサービスと対等に扱うことが義務付けられ、さらにTPP非参加国の物品やサービスよりも不利に扱わないことが義務付けられわけだ。

 さらにTPP参加国への開放への対象となるのは、中央政府に関する調達にとどまらず、地方自治体に関する調達も含まれる。このことは2001年3月9日、松本剛明当時外務副大臣が参議院予算委員会でようやく明らかにした。そして、対象となる調達の基準額であるが、物品およびサービスについては5万SDR(SDRとは「特別引出権」という単位で、5万SDRは(750万円)、建設は500万SDR(7億5000万円)となっている。

 実は、WTOの政府調達協定に基づき、日本はすでに地方自治体を含めて政府調達を一部開放しているが、解放の基準額は高い。具体的には、物品およびサービスについては中央政府で10万SDR(1500万円)、地方自治体で20万SDR(3000万円)である。建設関係コンサルタントのサービスについては、中央政府で45万SDR(6900万円)、地方自治体で150万SDR(2億3000万円)とされ、建設については、中央政府で450万SDR(6億9000万円)、地方自治体で1500万SDR(23億円)とされている。

 このため、日本がTPPに参加し、既存のTPPの政府調達基準がそのまま当てはめられると、特に地方自治体レベルでの公共事業案件で、TPP参加国に開放される基準額が大幅に下がるため、TPP参加国の企業が大量に参入することになりそうだ。そうなると国内の建設業者、特に地方の建設業者が落札してきた公共事業案件がTPP参加国の企業によって落札されるようになり、地方の建設業界が大きな影響を受けることは避けられないだろう。そして地方は農業のみならず公共事業の面でも打撃を受け、疲弊に拍車がかかることが予想される。

 さらに、日本がTPPに参加した場合の政府調達への影響として指摘されているのが、国際競争入札の対象となる案件については英語で作成された必要書類のみを受理しなければならなくなるという可能性である。

 既存のTPPのどこにも、国際競争入札の対象となる案件については必要書類を英語で作成しなければならないとは書いていない。しかし日本において、国際競争入札の対象となる案件の必要書類を日本語のみで受け付けるとなれば、日本語が国際的に使用されている言語ではないため、TPP参加国、特にアメリカの企業から、日本語での書類作成を義務付けることによって実質的に海外の企業を締め出しているという指摘がなされ、英語での書類作成を義務付けられる可能性が十分にある。

 つまり、日本語が非関税障壁だというのである。もし、そのような事態になれば、地方自治体は英語での事務処理に対応できなくなり、地方の建設業者は英語での書類作成ができず、入札から事実上締め出されることになりかねない。


31. 2011年11月07日 22:13:42: 1ktxLKCbxY
TPPの枠組みの中では、医療というのが社会的なサービスとしてみているのではなく、商業的な市場という見方をしています。そのような枠組みの中で、日本の生活の中で変更して欲しい、改正して欲しいと特定されている分野がいくつかあります。

例えば、私立の病院を運営する際の外資の導入を緩和して欲しいと要求しています。またPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)、先ほどの官民パートナーシップのような仕組みの中で事業に参加し、病院の運営をしたいという意向をアメリカの企業はもっています。そしてその中で、権利を保証して貰い、問題があった時には国際的な非公開な裁判所に訴える権利を確保したいと考えています。

⇒医療は、当然TPPで取り扱われるべきサービスの定義に該当する。しかし、日本のスタンスは、現在各国と締結しているEPA(経済連携協定)においては、基本的に自由化の例外としている。
 
 アメリカ国務省と日本の経済産業省が2006年6月に公表した「2006年日米投資イニシアティブ報告書」によれば、アメリカ政府が日本政府に対し、医療機関による資金調達を容易にし、生産性を高めるとの観点から、病院、診療所経営に対する株式会社の参入拡大を可能とするよう要望したことが明示されている。
 
 さらにアメリカ政府は、日本では血液検査の外部委託により、かなりの効率化が図られたことを指摘したうえで、リスクの低い医療行為、特にMRI(核磁気共鳴画像法)やPET(ポジトロン断層法)、CTスキャン等、反復性のある医療行為については、株式会社に柔軟に外部委託できるよう求めたことも明らかになっている。
 
 つまり、アメリカ政府は日本の医療分野を自由化し、株式会社が医療分野に参入することができるようにすることを求めているのである。そして、当然のことであるが、この株式会社の参入とセットで、外国資本が日本の医療分野へ参入することが想定されている。

 日本では、基本的に医師が医療機関を設立し、その目的は医療の提供であって、収益を拡大することでない。たとえ収益を拡大することを目指したとしても、基本的には医療の提供に資するという枠内に制限されている。他方、株式会社であれば、医療の提供は、利益を最大化させるための手段となる。日本のこれまでの医療のあり方と、株式会社とでは、目的と手段が逆転することは避けられない。
 
 株式会社の目的に照らせば、医療サービスを提供する株式会社はコスト削減に努めることになるだろう。受診希望の患者は多数いるが、継続すればするほど赤字が出るコストに見合わないようなケースが地域や診療科目によってはあるかもしれない。そのようなケースでは、医療サービスを提供する株式会社は需要があるにもかかわらず撤退することが不可避になるであろう。
 
 もし採算を無視して撤退を拒めば、株主に対する義務違反になり、場合によっては株主代表訴訟で株主に賠償しなければならなくなることもあり得るからである。特に、小児科や長期入院を要する高齢者の治療は、需要がある一方、採算面では厳しく、株式会社の参入による影響が懸念される。つまり、株式会社の参入は、一部の患者の切り捨てにつながりかねないのである。
 
 この株式会社の参入に対し、日本医師会は、当然の如く反対論を展開している。その中で、株式会社の医療サービスの参入が「国民皆保険制度の崩壊」につながるとも指摘している。それはなぜか。

公的保険でカバーされる治療は報酬があらかじめ決まっており、利益率はそれほど高くはない。そのため医療サービスを提供する株式会社は、利益の最大化のためには自由診療を積極導入することとなる。それは、医療は自由診療で行えば良いという風潮につながり、公的保険による診療を中心としている病院の経営が立ち行かなくなる。その結果、公的保険は無意味となり、国民皆保険制度は崩壊するというのである。

 すでにアメリカ政府は「2006年日米投資イニシアティブ報告書」で、日本政府に対し、混合診療の解禁を強く求めていた。混合診療とは、保険診療と全額自己負担となる自由診療を組み合わせることである。アメリカ側は、解禁を求めるにあたって、混合診療の解禁により、国民の医療支出が減少し、結果、医療の効率化が進んで医療保険制度の財政上の困難を緩和すると指摘しているのだ。

 しかし混合診療が導入されれば、折からの財政難と相まって、新規の治療法等については、もはや公的保険でカバーする必要性はない、という判断に傾きかねない。また、これまで公的保険によってカバーされていた治療法や薬品についても見直しがなされ、自由診療の範囲になる可能性も出てくる。

 そして衛生植物検疫措置(SPS)に基づく認可基準の引き下げが行われ、これまで日本では認可されていなかった医薬品や保険補助栄養剤(いわゆるサプリメント)が一挙に流入することになるだろう。また、アメリカ製の先進画像診断機器や先進体外診断用薬品の導入が強制されかねない。と同時に、そうした先進製品の有用性や迅速性を評価する加算制度への移行も求められる。

 つまり混合診療の導入は、公的保険給付の範囲を狭くする引き金となり、国民皆保険制度の崩壊のきっかけにすらなりうると考えられるのである。日本医師会は、株式会社の参入が進めば国民皆保険制度が崩壊の危機に直面すると指摘しているが、混合診療の導入にも同様の危険が潜んでいると思われる。これは利用者である患者にとって望ましい事態ではないだろう。実際、医療の自由化が進んでいる英国では、公的保険で利用できる病院は限られ、受診するために何カ月も待たなければならないような事態も起きた。同じことが日本では起こらない、という保証はない。

 TPPに日本が参加するとなれば、サービス貿易の一環として、アメリカから医療分野について、「2006年日米投資イニシアティブ報告書」に沿った自由化を求められることは避けられない。では、なぜアメリカはそこまで日本に対して自由化を求めるのだろうか。

 一つには、アメリカ資本の医療サービスを提供する混合診療解禁=企業が日本に参入したいということである。日本には、資産1億円以上の富裕層が2007年末の時点で151万人おり、その数は世界でもトップクラスである。人口高齢化に伴い、富裕層に対する医療サービスへの需要は高まる一方と見られる。日本の富裕層に対する医療サービスはアメリカ資本の株式会社にとっては非常に魅力的な市場と映っているに違いないのである。

 もう一つは、アメリカ資本による保険サービスへの参入である。混合診療解禁と株式会社の参入により、自由診療市場が日本で拡大すれば、患者となりうる消費者を対象とした自由診療分のリスクヘッジとしての民間保険に対する需要が、当然、高まるはずだ。

 ところで、アメリカにはもともと国民皆保険制度がないため、医療費のリスクヘッジは当然のことながら民間保険でなされてきた。そのため、アメリカの保険会社は自由診療を対象とした保険のノウハウについては日本の保険会社に比べて一日の長がある。したがって、日本で自由診療市場が拡大すれば、アメリカの保険会社は多くの保険を日本人に売り、日本で莫大な利益を上げることが可能となる。そして、仮に国民皆保険制度が崩壊すれば、保険市場はさらに拡大し、保険会社の利益はさらに大きくなることが予想される。

 一方、もし国民皆保険制度が混合診療解禁や株式会社参入に耐えたとすれば、今度は、国民皆保険制度による国の保険給付が民業圧迫になり、サービス貿易を阻害するという主張すら出てきかねないことも懸念される。こうした要求は在日米国商工会議所(ACCJ)が「日本の健康増進、生産性向上に向けて」と題した政策提言としてまとめ、日本各地で啓蒙活動に活用している。

 実は、TPP参加による医療への影響はこれだけにとどまらない。サービス提供のために、ほかのTPP参加国から人が移動するということも認められるようになるのだ。そうなると看護師、介護士ひいては医師がほかのTPP参加国から来日し、日本の医療機関でサービスを提供するということも認められるようになる。

 日本では、すでにフィリピンやインドネシアから看護師、介護士の受け入れを開始してはいるが、日本語の能力が十分でないため、実際に日本で仕事をするためのハードルは高い。しかしTPPに参加すれば、資格の相互承認を求められる可能性が出てくるのみならず、「日本語がサービス貿易に対する障壁である」ということで、日本語ができなくても、英語ができれば日本で働けるようにするといった制度変更を求められることも十分考えられる。

 このような制度変更は、TPP参加国の資格保持者にとっては朗報かもしれないが、利用者である患者にとってはどうだろうか。症状の説明や治療に関する相談を英語で説明できる日本人患者は決して多くない。特に高齢者や子供についてはなおさらである。外国人の看護師、介護士、医師が日本語の微妙なニュアンスを理解できないために、十分なサービスを提供できないという状況も考えられる。つまり、外国人が医療サービスを提供することによって、日本人への医療へのアクセスが困難になる恐れが生じるのである。

 東京大学・医学教育国際協力研究センターの北村聖教授曰く「医療は社会共通資本である。市場経済に委ねるべきではない。必要な医療を提供するために経済はどうあるべきか、という視点が重要だ。質の劣る医師が大量に流入した場合、医療の質をどう担保するのか。医療レベルの劣る国の医師は、基礎学力が違うため研修医でも使えないほどだが、給料の安さを生かして、悪貨が良貨を駆逐してしまう恐れがある」。

 そんなことになれば、我が国の医療は崩壊するだろう。実際、英国ではEU諸国から英語のできない医師が大量に流入し、大きな社会問題に発展した。今では英国人以外の医師を法律で排除するようになっている。きめ細かな医療サービスを守るには、質の担保は譲ることのできない条件である。


32. 2011年11月07日 22:16:22: 1ktxLKCbxY

また、アメリカの企業が、オンラインで国境を越えた保険サービスを日本において展開したいと考えています。ですから、アメリカからインターネットを使って、日本において医療サービスを提供することを考えています。また、自らが求めるような料金で、自由に医療機器、医薬品を日本において販売したいと考えています。そして制限無く日本において血液製剤を販売したいと考えています。

⇒アメリカが日本のサービス分野の自由化を求めるに際し、最優先事項の一つとされているのが郵政民営化である。

 アメリカは「年次改革要望書」に基づき、長年にわたって郵政民営化を日本に対して求め続け、2005年の郵政解散とそれに続く総選挙を経て、ついに郵政民営化を実現させた。しかし、2009年の民主党を中心とした政権への交代により、特に郵政民営化に反対した国民新党が与党の一翼を担うことになり、郵政民営化に対する見直しの気運が高まった。こうした動きに対し、アメリカは懸念を強めており、郵政民営化のいっそうの推進を求めている。

 郵政民営化の要求の中でアメリカがとりわけ重要視しているのは、簡易保険の問題である。2010年4月に発表された米通商代表部の「外国貿易障壁報告書」では、簡易保険が民間の保険に比べて優遇されており、民業圧迫になっているという視点から、簡易保険と民間保険を同等に扱うよう、強く求めている。

 現在のところ、簡易保険で集められた資金の66%が国債で運用され、70%を超える資金が国債と地方債で運用されている。つまり、簡易保険の資金は国内に投資されているわけだ。これはある意味では安心材料といえよう。

 日本の民間保険は、契約者から払い込まれた資金の運用を外国の金融会社に委託することが自由に認められているため、アメリカの要求が認められれば、簡易保険の保険金も国債からシフトし、アメリカを中心とした外国の金融資本に流れる可能性が一気に高くなる。同様の議論は、郵便貯金についても当てはまる。

 もし、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の株をアメリカを中心とした外国の金融資本が購入すれば、それによって日本の国民資産をコントロールすることが可能となるわけだ。

 民主党の山田正彦元農水大臣は「アメリカの狙いは1200兆円ともいわれる民間預金やゆうちょの貯金ではないだろうか。おそらく、このことは24あるTPPの作業部会で話されているはずだ」とまで、アメリカの真意を疑っている。

 また、2010年のアメリカの「外国貿易障壁報告書」では、我が国の共済制度をも批判しており、共済に民間の保険会社と同様の義務を適用し、両者を対等に扱うよう求めている。これは毎年のように「年次改革要望書」において、アメリカから日本に対してアメリカのされ続けたところでもある。共済の存在を、アメリカの民間保険会社が日本の保険市場に参入する際の障壁と見なし、共済の優位性を削ぐことがアメリカにとっての至上命題になっていることの表れであろう。

 もし、共済に民間保険会社と同様の義務が適用されれば、共済は保険会社として求められる積立金の義務などを果たさなければならなくなる。そうした場合、共済は体力がもたず、民間の保険会社には勝てない公算が高くなり、潰れることにもなりかねない。アメリカの要求は、実質的な共済潰しとも言えるものではないだろうか。

 共済でも運用先は国債や地方債が多い。共済が潰れれば、その分の掛け金が外資を含めた民間の保険会社に流れるため、これまで国債や地方債に流れていた資金が外国の金融資本に流れることになるだろう。

 TPPに日本が参加することになれば、アメリカはTPPを利用して、サービス分野の自由化の一環として、保険分野への自由参入を求めるに違いない。そして、アメリカは対等な競争条件の確保の名目で、「外国貿易障壁報告書」で取り上げた事項をサービス貿易への障壁として扱い、簡易保険や共済を民間保険とまったく同様に扱うよう求めてくるはずである。

 さらに医療サービスのところでも述べたが、TPPに日本が参加すれば、自由診療の費用に対するリスクヘッジとして、アメリカの民間保険会社がさらに上陸することになり、このような保険を通じても、国民資産が外国に流出することになりかねない。


33. 2011年11月07日 22:29:02: 1ktxLKCbxY

このような交渉内容というのは期限がある訳ではありません。いつになったら失効するということはなく、永遠に永続する内容であるということです。また脱退するというオプションがあるかもしれませんが、それさえも安易ではないのです。それは誤りであったと後で反省して変えたい、あるいは新政権が誕生して中身を変えたい、あるいは市場主義が上手くいかないので元に戻したいと考えても、それは出来ないのです。これは国家間で権利を行使するというのみならず、参加している国の投資家が直接政府を訴えることができます。しかも、非公開の裁判の中で審理がなされ、最終的に何百万ドルあるいは何十億ドルという賠償金を支払わなければならなくなる可能性もあるのです。

⇒遺伝子組み換え作物の問題を考える時に、インドやブラジルの例は大いに参考になる。まずインドで2008年から2009年に起こった農民の大量自殺のケースを見てみたい。実はインドにおいては穀物の収穫量が飛躍的に伸びるとの宣伝文句につられ、従来型の土着の種子を使わず、遺伝子組み換え種子を導入する農家が急増していた。すでに数百万人もの農民が小麦、コメ、トウモロコシなど様々な作物に遺伝子組み換え種子を使うようになっている。

 「魔法の種子」という耳触りの良いキャッチコピーの影響もあり、多くの農家が遺伝子組み換え種子に飛びついた。従来の種子より値段は格段に高いが、病害虫に強く、収穫量も増えるので、投資効果は十分あると言われ、借金してまでこうした種子を購入する農家が続出したようだ。インドでは瞬く間に遺伝子組み換え作物を植え付けする農地が増え、1700万エーカーにまで急拡大を遂げた。

 ところが、期待したように実を結ばなかったのである。従来の種子であれば、翌年再度植え付けを行えば実を結ぶ可能性はあったが、遺伝子組み換え種子の場合には、実を結ぶのは1回だけ。毎年新たに種子を買い続けなければならないように種子の構造を遺伝子レベルで操作してあるからだ。

 宣伝通りに収穫量が上がれば、農家も借金返済に支障はなかったと思われるが、遺伝子組み換え作物の栽培は意外に難しい。病害虫や干ばつに強いと言われるものの、化学肥料を大量に投入しなければ期待されたような収穫が得られないという落とし穴もある。結果的に、「インドでは12万5000人もの農民が自殺に追い込まれてしまった(「デイリ−・メール」紙2008年11月3日)。借金に追いたれられた挙句、保険金で家族を守ろうとして自ら命を絶ったり、ようやく実を結んだ穀物を試しに家族に食べさせたところ病気になってしまったりというような悲惨な事例が相次いだという。

 こうした事態を重く見たイギリスのチャールズ皇太子はすぐさま声明を発表。曰く、「遺伝子組み換え作物は道義上の観点からも問題がある。世界各地で導入が進んでいるが、一度立ち止まって見直す必要があるだろう」。実は、インドで大量の遺伝子組み換え種子売りまくってきたのが、アメリカのモンサントである。

 ブラジルの事例も要注意である。ブラジルはかつて世界最大の非遺伝子組み換え大豆の輸出国であって、遺伝子組み換え大豆の栽培も耕作も禁止されていた。ところが、今日、ブラジル国内で生産される大豆の75%が遺伝子組み換えとなっている。

 ブラジルという農業大国において、遺伝子組み換え大豆の栽培が「解放の象徴」として実現されたプロセスは、我が国が直面している「平静の開国」論議にとっても貴重な示唆を与えてくれるだろう。

 もともとブラジル政府は遺伝子組み換え大豆に厳しい規制を課していた。しかし、1998年に隣国アルゼンチンから遺伝子組み換え大豆の種子が非合法に持ち込まれるようになってから、状況が激変するようになった。いわば密輸のなせる技である。

 当時のカルドーゾ政権は持ち込まれた密輸品である大豆を処分し、関係者の処罰をする義務があったにもかかわらず、十分な調査をしないまま放置してしまったのだ。その結果、密輸品の遺伝子組み換え大豆がどの程度広まったのか、耕作の実態が明らかにされないまま、なし崩し的に遺伝子組み換え作物が広がっていった。

 原因はいくつか指摘されている。まずは、ブラジルに今でも残る大土地所有者が大きな政治力を行使し、法律で禁止されていた遺伝子組み換え大豆を容認する事態を招いたこと。いわば大土地所有者への密輸という方法を通じて、種子メーカーであるモンサントはブラジルで遺伝子組み換え大豆を広めることに成功したといえよう。

 こうした流れに抵抗する動きもあったが、モンサントは資金力をバックにブラジル政府に対する強力なロビー活動を展開した。そして1998年後半には、ブラジルの法律を変えることにも成功。モンサントは除草剤「ランアップ」に耐性のある種子「ランドアップ・レディー」大豆の国内使用承諾許可を獲得したのである。

 こうした危険な動きに対し、「グリーンピース」や「ブラジル消費者保護協会」はモンサントとブラジル政府を相手取り、承認取り消しの裁判を起こした。この訴訟はグリーンピースらの勝利となり、1998年から2003年までブラジル国内では遺伝子組み換え大豆の栽培はモラトリアム(停止処分)となった。

 そして2002年の大統領選挙では、環境と生活の質の向上を政策公約として掲げ、非合法の遺伝子組み換え大豆の耕作停止を公約した労働者党のルラ候補が勝利したため、環境問題や農業問題に関わる人々の間では、これで遺伝子組み換え作物の栽培は完全にストップするだろうとの期待感が高まった。

 ところが、ブラジル議会に大きな影響力をもつ大土地所有者や、モンサントと提携するアグリビジネスの強力なロビー攻勢を受け、ルラ大統領は公約を次々と後退させることになってしまった。遺伝子組み換え促進派のロベルト・ロドリゲスを農務大臣に据える有り様だ。環境大臣には遺伝子組み換え技術に慎重な立場をとるマリナ・シバを起用したものの、ルラ大統領のあいまいな姿勢に失望したせいか、日を経ずして大臣を辞任することになってしまった。

 いずれにせよルラ大統領自身がアグリビジネスの圧力に屈したことは明らかである。2003年、政権発足と同時に人や家畜への遺伝子組み換え大豆の使用に関し、期間限定ではあるが、使用を承諾する暫定措置令を出したからである。これほど明らかな選挙公約違反もないだろう。

 こうした横暴ともいえるルラ大統領の公約違反に対し、多くの農民や消費者団体、環境保護団体から怒りの声が巻き起こり反対運動が盛んに繰り広げられたが、ルラ政権は一切無視したのである。

 その後、こうした反対組織は連邦最高裁判所に遺伝子組み換え大豆の承認は憲法違反であるとの訴えを起こしているが、ルラ政権のもとでははっきりとした結論が出ないまま、2010年末の選挙で新たな大統領へ政権が移った。

 ブラジル初の女性大統領となったジルマ・ルセフ。彼女はルラ政権のもとで官房長官の要職に就いていた人物で、こと遺伝子組み換え作物をめぐる利権問題に関しては、前任者と責任を共有する立場にあった。どこまで新機軸を打ち出せるか、内外から関心が集まっているが、まだ明確な方針を発表していない。

 これまでの一連の動きを見ていると、ブラジル国内には様々な市民運動の反対意見がありながら、また国内法で明確に禁止されているにもかかわらず、遺伝子組み換え大豆の使用をなし崩し的に認めるという政治的判断が下されてきたことがわかる。

 ブラジル議会下院では「バイオセキュリティ法案」が承認され、遺伝子組み換え作物の人体や環境への影響を実験農場で評価することが義務付けられている。にもかかわらず、こうした評価が一切行われないまま、モンサントの遺伝子組み換え大豆の使用が許可され、徐々に広がってきたのがブラジルの現状である。

 ブラジルの消費者の間では「遺伝子組み換え食物の表示が必要だ」と考える人々が92%に達している。また、74%の人々が「遺伝子組み換え食品を食べたくない」、そして73%の国民は「遺伝子組み換え食物の自由化に反対する」と答えている。これだけ多くの国民が自らの健康や環境に及ぼす悪影響を懸念し、遺伝子組み換え作物に慎重な考えを明らかにしているのである。にもかかわらず、ブラジル社会では大統領の一存で、しかも「開国」という名の下に、一部の企業や大土地所有者の利潤追求の動きのみが優先されてしまったのだ。

 実は2004年の時点で、遺伝子組み換え食品の表示規定を定めた政令が施行され、1%を超える遺伝子組み換え作物の原料が使われている場合には、人用あるいは家畜用にかかわらず遺伝子組み換えの表示義務が課されることになった。この1%という数字は、日本の表示基準(5%超)よりはるかに厳しいものである。しかしブラジル政府はこの政令を完全に実施するつもりはなさそうだ。なぜなら罰則規定を含めて、この政令を実効あるものにするための具体策がまったく示されていないからである。

 さらに深刻な問題がブラジルでは発生している。それは大豆増産のために大規模農場を中心に軽飛行機を使って空から除草剤を撒き、大型コンバインで収穫する農法が一般化した結果、周辺での森林や水源地が破壊ないし汚染されている事態が巻き起こっていることである。

 モンサントが開発した猛毒性の除草剤が大量に散布された結果、土壌汚染が進行し、地下の水脈も汚染が進んだ。除草剤に汚染された水を飲まざるを得なくなった周辺住民の間では先天性欠損症などの健康被害が続出しているというから恐ろしい。ブラジルでは「悪魔の大豆病」と呼ばれている。

 「遺伝子組み換え作物の導入という開国」を強く掲げたブラジル農業の近代化が、現実には一部のアグリビジネスと大土地所有者が連携したことにより、「ブラジルを亡国へ追いやる」結果になりつつある。大統領選挙の大きな争点となった遺伝子組み換え大豆の是非を、決着のないまま勝手に反故にし、公約とはまったく反する政策を平気で進めてきたルラ政権の責任は大きい。2011年1月に新たな大統領が誕生したが、この問題についての真正面からの議論はいまだ行われていない。

 TPPとの関連でもインドやブラジルの事例を参考にする必要があるだろう。

 日本に非合法な形で遺伝子組み換え種子が入る可能性は少ない。とはいえ、TPPが締結された場合、アメリカ企業が日本に進出し、その商品やサービスを通じて何らかの問題を起こしても、日本の法律で裁くことができなくなる可能性は無視できない。

 例えばモンサントが自社の遺伝子組み換え大豆で作った豆腐を販売し、その旨を商品表示で明らかにしなかった場合、現在の日本の法律では販売や操業を停止させることができる。そのうえで、モンサントに対し罰則を科すことも認められている。しかし、TPPのもとでは、そのような事態が発生した場合、モンサント側が逆に日本政府を国際調停機関に提訴できる仕組みが考えられている。

 なぜ、そのような理不尽なことが起こり得るのか。

 日本政府が外国企業を差別し日本企業を保護しすぎているとの観点から、罰則を受けるのは日本政府であり、アメリカ企業に対し罰則金を払うことになりかねない条項が含まれているからである。実に、危険な仕組みが隠されているのである。

 当然、我が国の民主党政権のもとで進められている農家に対する個別所得補償のような国内向けのセイフティネットもTPP違反として罰則の対象になる可能性が高い。

 TPPの本質は、アメリカ企業にとってアジア太平洋地域の市場を拡大させ、アメリカの雇用を確保することにある。ブラジルの農業市場を力ずくで押し開けたように、アメリカ政府は日本市場をこれまで以上にこじ開けようとしているにすぎない。

 日本の食糧自給率が40%しかないということは、日本の農業市場は世界に例を見ないほどすでに解放されているということだ。ところが、TPPにかけるアメリカの思惑は、日本の国内市場でいまだ未承認となっている遺伝子組み換え作物や種子の分野へ攻め込むことなのである。日本の農業のあり方や消費者の食生活の安全を考えれば、ブラジルの二の舞いを踏むことは何としても避けねばならない。


34. 2011年11月08日 03:08:26: eEdDplVwaI
TPPは不参加は「人類の為」。

インディアン殺しのアメリカ人。
アメリカから学ぶもの無し。
99%の富を1%の人が占めるのは良いとしても・・・
他国まで仕掛けるな。。。

いずれ、ギリシャ危機で、輸出が止まるのだから・・・
円高で、日本も「ドル」が紙幣になるか?

寒冷化で「グローバル」から「ローカル鎖国」が21世紀のあるべき姿。

以上


35. 2011年11月08日 06:35:51: pVYnA2lxHo
国民国家が独立性を維持しながら、
国家同士が共存共栄を目指すべき。

国際銀行家やグローバル企業には退場していただきたい。


36. 2011年11月08日 06:52:45: LjDUeYansg
TPPとはアメリカ企業が市場を独占するために、
協定の形を取った現代版『帝国主義』であり、
要するに、他の締結国の国民の血と汗の結晶を搾取することが目的で、
帝国主義の『植民地政策』と何等変わることが無い。

37. 2011年11月08日 07:08:29: iDyI6AD4SM
けど何だかんだ言ってもTPPには参加するんでしょうね。
止める手立てがありませんから。それこそ、いつぞやの事件の再来でも無い限り。

あとはISD条約が含まれるか否かが問題でしょうか。


38. 2011年11月08日 10:20:17: dZLdS14dRg
APECに行くのにおみやげがいるんだ。日本国民よ。我慢してくれ。(野田総理)

39. 2011年11月08日 11:06:21: IFGvqe6pOU
>四つ目が、政治的に実現が難しいと思われる国内再編を、TPPを通して秘密裏に推>し進め、政策として固めるということです。しかし、それは将来の政権をも永遠に拘>束するものであります。

ケルシー教授の4つ目が非常に気になった。
どうみてもメリットが無いTPPでメリットがある人間がいるようだ。
パッと思いついて、野心満々の勘違い前原。老害仙石。金まみれ米倉などなど。

「国民の生活が第一」の小沢氏を排除して、政権にしがみついている彼らが永遠に地位を保持するための最終手段がTPP参加の真の理由ではないか。

現状では、民主党の再起はありえない。小沢氏も居ない。
TPP参加を推進しているのは結局、民主党Bの面々なのである。

こいつらには国民の利益などという常識的な観点は全くない。
ただただ、強いものにすがり、自分の地位を確保したい権力中毒者なのだ。

アメリカから言われているのだろう。
TPPに参加すれば、もう永遠に安泰だと。
自民党55年態勢より酷い時代がやってくる。

アメリカ様の後ろ盾で、笑顔を振りまく前原の歪んだ顔が目に浮かぶ。

内閣不信任案や問責決議は出せないのだろうか。

断固TPPは阻止しなければならない。
世界にまれな美しい日本という国を守るために。


40. 2011年11月08日 11:50:38: dZLdS14dRg
みのもんたってなぜTPP賛成なの?。公共事業がアメリカに開放されたら、自分の会社の水道メーター屋さんはつぶれるんじゃないの。

41. 2011年11月08日 12:32:12: IFGvqe6pOU
みのもんたが単にメディアの犬だからでは?

朝日ニュースタースタッフも全員解雇だし、まともな事をいうテレビ番組は淘汰される仕組み。
まともな事を言う人もテレビには出れません。
これを考えれば、みのもんたがテレビに出られている理由もわかるはず。


42. 2011年11月08日 12:53:27: 1b47Mr60QK
経団連の米倉、売国奴第一級。

モンサントと組んで、遺伝子組み換え食品で国土と健康を台無しにしようと企んでいる。モンサントは世界中から悪魔の企業と呼ばれている危険な会社だ。

http://www.sumitomo-chem.co.jp/newsreleases/docs/20101020_3.pdf


43. 2011年11月08日 15:01:12: IFGvqe6pOU
アメリカ経済至上主義。

モンサント・原発・TPPと、ろくなものが無い。
生命の営みを投資対象にする愚かな文明。

戦争で他国を侵略するだけでは飽き足らず、アメリカはなんて欲深い国なのだろうか。

本当の悪人は善人の仮面を被って近づいてくる。

TPP断固反対。


44. 2011年11月08日 15:13:30: xJuFPs7iSg
国連憲章には、いまだに敵国条項があり、日本は条文上は敵国ってことだとすると

もしも、TPPに参加してアメリカの企業に日本が訴えられたとき、

国連の専門機関である世界銀行のグループの(国際投資紛争解決センター)

において、敵国である日本に有利な判決が出る事はないよね。 


45. 2011年11月08日 21:48:16: kRA28US3Uw

なぜ日本は今、2国間交渉で進めていくFTAではなく、多国間で交渉するTPPに舵を切ろうとしているのだろうか。FTAとTPPの違いは何なのかについて、簡単に説明したい。

 国際経済を支える貿易の仕組みは、1945年に発行した為替に関する協定、すなわちブレトンウッズ体制から始まった。

 ブレトンウッズ体制とは、金1トロイオンス=35USドルを固定し、そのドルに対して各国通貨の交換レートを決めた金本位制を定めた協定のことで、これにより日本円も1ドル=360円と固定された。そしてブレトンウッズ協定(1944年)以降、1945年には国際復興開発銀行(IBRD)が、1947年には国際通貨基金(IMF)が、1948年には貿易制限措置の削減と自由貿易の推進を定めた「関税および貿易に関する一般協定(GATT)」が発足したのである。

 GATTにより、原則として各国間での輸入禁止や数量制限措置が禁止され、すべて関税に置き換えていくになり、各国間の交渉で関税を引き下げられ、貿易環境が整えられていった。1986年から1994年にかけて行われたGATTのウルグアイ・ラウンドには123の国と地域が参加。1995年1月には、さらなる自由貿易の促進を目指す国際機関として、GATTに代わり世界貿易機関(WTO)が設立された。

 WTO設立以降、加盟国は153の国と地域にのぼり、モノやサービスなどの公正な貿易のために多国間貿易交渉を続けているが、WTOでは多くの国と一度に交渉しなければならないため、交渉成立までには時間も労力もかかかってしまうことが指摘されてきた。そこで、近年ではWTOを補うものとして、2国間で交渉する自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が注目されているのである。

 FTAは、特定国や地域の間で物品関税やサービス貿易の障壁などを削減・撤廃することを目的とする協定で、EPAは、人の移動(労働)や知的財産の保護、競争政策、さまざまな協力など幅広い分野の提携で関係強化を目指すものである。

 そして、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、物品貿易については、農産品を含め、原則全品目について即時または段階的に関税撤廃、政府調達(いわゆる公共事業)、競争政策、知的財産、金融、電気通信、電子商取引、投資、環境、人の移動(労働)など、あらゆるサービス分野を協定の対象に含んでいることが特徴である。

 2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国による経済連携協定(通称「P4」協定)が発行され、現在はこれにアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが加わり、9か国で交渉が行われている。2011年10月までに計9回の交渉を行い、11月にハワイで行われるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議で妥結することを目指している。

 そこでもう一度初めに戻るが、日本がこの協定に加わる意味は何だろうか。

 なぜ、FTAやEPAでは駄目なのだろうか。

 政府によれば、TPPがアジア太平洋の新たな地域経済統合の枠組みとして発展していく可能性があり、TPPのもとで決められた貿易投資に関する先進的なルールが、今後、この地域の実質的基本ルールになる可能性があるということなのだ。しかし、すでに述べたように、TPPはアメリカの経済政策という面を色濃くもっている。 
 
 アメリカは北米自由貿易協定(NAFTA)の締結によって、経済発展を遂げたメキシコとの貿易で莫大な利益を享受した。一方でメキシコの国内経済やカナダの農業は、アメリカ企業やアメリカ製品が大量に流入し、大打撃を受けていることは明記しておかなければならない。まさにアメリカは二匹目のどじょう、つまりは将来の可能性として中国を含む東アジア市場を狙っているわけである。


46. 2011年11月08日 21:49:35: kRA28US3Uw

 それならなおのこと、メキシコやカナダの二の舞にならないために、日本にとってTPPに参加することのメリットは何か、デメリットは何かをきちんと検証していかなければならない。

WTO、FTA(EPA)、TPPの違い

WTO(世界貿易機関)
関税削減交渉、153カ国・地域が加盟、加盟国共通のルール作り(関税削減率、国内補助金の削減、輸出補助金の撤廃)、我が国はWTO農業交渉で多様な農業の共存を主張

FTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)
2国間または複数国間で行う関税撤廃交渉
「実質上すべての貿易(一般的には90%以上と解釈)について、原則として10年以内の関税撤廃」とWTO協定で規定(10%は除外・例外が可能)

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)
太平洋を取り巻く9か国間のFTA
9か国間で行う関税撤廃交渉
除外・例外品目を認めず、全品目の関税を撤廃する
TPPもFTAだが、重要品目の除外・例外扱いを認めていない。「実質上すべての貿易」を最も厳格に解釈


47. 2011年11月08日 21:56:35: kRA28US3Uw

 アメリカがTPPの実現に向け、官民を挙げて取り組んでいること、そして、TPPをオバマ大統領の再選へ向けての切り札と位置付けていることは明らかだ。では、あらためてなぜTPPなのか。

 その理由として、現在のアメリカが国内総生産の8割以上、雇用の9割以上をサービス産業に依存していることが挙げられる。アメリカにとって、このサービス産業を海外市場に強力に売り込んでいくことが、今後の経済戦略にとって欠かせない条件になっているのだ。しかも、貿易拡大と投資のリターンが期待できる最大の市場がアジアであることは、衆目の一致するところであり、何としてもアジアに食い込んでいきたいということに他ならない。

 近年、アジア太平洋諸国では急激な経済成長が実現し、ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に、アジア各国間の域内連携も強まる一方だ。この地域では、我が国を含め関係国の間で170を超える経済協定が網の目のように結ばれているが、実はアメリカはそのほとんどから排除されている。イラクやアフガニスタンでの長引く戦争やテロに足元をすくわれ、アメリカはかつてのようにアジア地域におけるプレゼンスを維持できなくなっているのである。

 アジアの国々もそうしたアメリカの状況に敏感に反応し、アメリカ頼みの体制から脱却する動きを強めてきた。そうした情勢を踏まえ、アメリカでは議会が中心となり、アジア太平洋地域との新たな関係強化に取り組まなければアメリカの景気回復もあり得ないとの結論に至ったようである。要は、「最も経済成長が期待できるアジア太平洋地域から締め出された」との認識がアメリカの中枢に急速に芽生えてきたのである。

 このところアメリカの議会調査局(CRS)では相次いでTPPの必要性に関する報告書をまとめているが、2010年11月の報告書からは、TPPに寄せるアメリカの過剰なまでの期待感が読み取れる。

 この報告書によれば、「アジアとの経済並びに戦略的な関係強化こそが、アメリカにとって21世紀に生き残る最大の道筋になる」と位置付けられている。

 2006年5月、当初「P4」と呼ばれるシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国でスタートしたTPPは、2008年アメリカが参加を表明した結果、オーストラリア、ペルー、マレーシア、ベトナムを含む9カ国に拡大しつつある。アメリカの議会調査局はこの拡大路線をさらに強化すべきだと提言している。

 言い換えれば、東アジア・サミット(EAS)に参加を表明してきたアメリカにとって、TPPは欠かせない舞台と受け止められているわけだ。もともとEASはその名が示すように、東アジア諸国間での政治、経済、文化などあらゆる課題を協議する場である。そこにアメリカが参加の意向を示したことで、既存の東名アジア諸国連合(ASEAN)という枠組みを、さらに戦略的に高めようとする独特の色彩が加わったといえよう。

 とはいえ、かつてほどの政治的影響力や軍事的優位性を誇示することのできないアメリカが、どこまで東アジア・サミットの一員として受け入れられるかどうかは、大いに疑問視されていた。しかし、背に腹は代えられないとばかりに、アメリカはなりふり構わず、アジア太平洋地域の一翼を担う国としてEASへの参加への道筋をつけ、参加のための新たな試みとしてTPPを推進する戦略を立てたのである。

 いずれにせよ、アジア太平洋地域はすでにアメリカの貿易、安全保障にとって死活的な重要性を持つに至っている。米通商代表部(USTR)によれば、アジア太平洋地域は全世界の国内総生産(GDP)の60%を占め、また、国際貿易の50%近くがこの地域で営まれているという。

 さらに言えば、1990年以降、アジア太平洋地域における域内の貿易額は3倍に拡大し、世界各国からこの地域に投資された資金総額は4倍に膨れ上がった。アメリカとしても、このアジア太平洋地域との経済連携を抜きにしては、自国の経済発展はあり得ないとの認識に至ったのも当然であろう。

 一方、この地域では中国の存在感が日増しに大きくなっている。

 アメリカは軍事戦略的な観点からも中国の不穏な動きに神経を尖らせる局面も増えてきており、軍事、経済の両面から、中国の台頭を可能な限り封じ込める必要性を感じているに違いない。もちろん、経済面から中国の巨大市場に食い込む必要性も感じているようだが、傍若無人な振る舞いの多い中国の言動に、オバマ政権も共和党も危機感を募らせているようである。中国がTPPに対して、慎重かつ懐疑的な姿勢を示していることを「物怪の幸いとして、アメリカは中国抜きのTPPを強力に推し進めようとしてるように見える。」

 では、韓国はどうだろうか。

 現在、韓国はTPPへの参加に前向きではないが、アメリカの議会調査局の報告書には、「中国を封じ込めるためにも韓国、日本、そしてカナダやメキシコそのほか交渉に参加していない国々に対する働きかけが欠かせない」との考えが打ち出されている点は見逃せない。

 各種の資料から明らかなように、TPP交渉の最終目的は次の三つに置かれている。
@できる限り早期に関税の実質的な撤廃を図る
Aあらゆる製品、サービスの分野に例外を設けない究極のFTAのの実現を図る。
B交渉そのものプロセスを透明化し、現存する規制を撤廃する

 ここから見えてくるアメリカの究極の狙いは、アメリカ式のビジネスモデルを世界で最も急成長が確実視されているアジア太平洋地域に広め、最終的には、世界を
アメリカ式モデルに標準化させることにある、といえるだろう。

 2008年に米通商代表部のスーザン・シュワブ代表がTPP参加を表明して以来、アメリカ政府は着々とその布石を打ってきた。

 オバマ大統領も就任早々、TPP交渉参加の方針を議会に伝えている。当時のホワイトハウスの声明では、「TPPはこれまでのいかなる貿易協定と比べても、最も中身のあるものだ」と高らかに宣言している。

 とはいえ、経済規模や貿易に対する考え方が必ずしも一様ではないアジア太平洋の国々と関税ゼロに向けての交渉を進めることは、アメリカにとっても容易な作業ではないはずだ。


48. 2011年11月08日 21:59:27: kRA28US3Uw

 アメリカ政府はTPPの早期妥結に向けて、現在、民間からの要望を広範に聴取する作業を続けている。さまざまな業界団体や個別の企業、はたまたNGOの消費者団体などからも意見聴取を重ねており、すでに130本を超える詳細な要望書がUSTR(米通商代表部)に届いているという。また、全米各地域を代表する上下両院議員からも、さまざまな要望が寄せられているようだ。

 2009年3月には45人の下院議員が各業界の要望をまとめ、オバマ大統領に書簡を送り、TPPの交渉を加速させるべく働きかけを行った。

 その代表ケビン・ブレイディ下院議員は、「TPPこそWTOで決められた世界の貿易基準をさらに進化させ、サービス分野を含むあらゆる分野における障壁を取り除く意味で、自由貿易協定の最終ゴールと言える」とまで述べている。

 また、2009年11月には、下院歳入委員会のチャールズ・ランゲル委員長と貿易小委員会のサンダー・レビン委員長が連名で、「TPPこそアメリカ経済にとり、またとない貿易拡大の機会を提供するものであり、困難が伴うにせよ挑戦しがいのある協定である」との書簡を提出している。

 2010年1月には、下院貿易作業グループが米通商代表部に書簡を送り、「TPPは新たな枠組みの貿易協定であり、既存の協定にパラダイムシフト(変革)をもたらすべきもの」である。労働や環境、そして、医薬品に関する特許などを含め、アメリカにとって世界の市場に通用する新しい価値とサービスを広めるためには欠かせないとの見方を表明した。

 そのうえで、「アメリカの法律システムを国際的な貿易紛争の解決に適用することができれば、既存のFTAにおける弊害を取り除くこともできる」と、一歩も二歩も踏み込んだ視点を明らかにした。

 そんな中、2010年1月、下院の酪農議員連盟(デイリー・ファーマー・コーカス)の47人の議員たちは、米通商代表部のロン・カーク代表に要望書を提出し、「安価なニュージーランド産の乳製品はTPPの最終合意文書から除外するよう」強く求めたのだ。明らかに農業団体の中では最も大きな政治力を有していると言われる「全米牛乳生産者連合会(NMPF)」の主張を代弁するものである。

 同連合会はブッシュ前大統領がP4との交渉参加に関心を表明した当初から、ニュージーランド産の酪農品が一方通行的にアメリカ市場になだれ込むとし、TPP断固反対の姿勢を貫いている。2010年3月には、30人の上院議員たちが米通商代表部に対して同様の趣旨の要望書を提出。要は、自国内の酪農家に経済的な損害が及ばないように酪農品をTPPから外すように働きかけているわけだ。

 このようにアメリカでは、従来から民主党の支持基盤である酪農団体が「TPP締結に条件をつけるよう圧力をかけている」わけで、オバマ大統領とすれば、必ずしも例外なき関税ゼロの自由貿易にこだわらない可能性も出てきそうだ。

 実際、オバマ大統領自身が2011年1月の「一般教書演説」で、「私はアメリカ人の雇用を増やせるような貿易協定にしか署名をしない。アメリカの国民を守るために、良心的な緊急輸入制限措置(セーフガード)を新たに作り、それらを実施することに、私は躊躇しない」とまで謳っている。

 アメリカのさまざまな業界や団体が、自らの利権を守るために議会を通じて政府への圧力を強めているわけで、どこかで水面下の妥協や取引が行われる場面も否定できない。これが政治の現実である。

 そうであるならば、日本としても参加する、参加しないを逆に交渉のカードに使うこともできるはずである。というのも全米牛乳生産者連合会(NMPF)は「日本がTPPに参加するかどうかに大きな関心を寄せている」と明言しているからだ。

 こうした状況を踏まえ、アメリカでは全米50州において、民間からの意見聴取のための公聴会の開催も順次行われている。そこには国内の世論をTPP妥結に向けて可及的速やかにまとめ上げようとするオバマ政権の強い意志が感じられる。

 また、人権問題に配慮するアメリカらしく、ブルネイやベトナムとの関係においては、貿易協定を結ぶ交渉の過程の中で、「民主主義という概念を注入すること」の必要性も強く主張されている。要は、アメリカ的価値観をアジア太平洋地域に押し広げようという戦略であろう。

 アジア太平洋向けの輸出は、アメリカ国内の雇用増加に直結するのみならず、世界的に影響力が低下しつつあるアメリカの国家的な威信を、民主主義という価値観によって回復しようとする動きでもある。これこそオバマ大統領が自らの再選戦略の中心に位置付けている発想に他ならない。


49. 2011年11月08日 22:00:17: kRA28US3Uw

 現在、9カ国の間で交渉が進んでいるTPPの表面的交渉だけを見ていては、アメリカの真の狙いはわからないだろう。なぜなら、現在の交渉相手国の経済規模はいずれも小国の範疇に入るものだからである。どうしてアメリカのような巨大な経済大国が、こんな小国との交渉に血眼になるのか、不思議と思う向きも多いだろう。

 しかし、アメリカは明らかにTPPの加盟国を大幅に拡大する戦略を描いている。そのためにも、最終的には是が非でも日本を引きずり込む作戦を展開してくるに違いない。とはいえ、今のところオバマ大統領はまだその時期ではないと考えているようだ。ハワイで生まれ、インドネシアで幼少期を過ごしたというオバマ大統領自らの出自体験に触れつつ、アメリカ人が抱くアジアのパーセプション(理解、認識)を変える必要性にも言及している。

 ヒラリー・クリントン国務長官をたびたびアジアに派遣しているのも、アメリカがこれらの国々との関係改善や強化に余念がないことの表れである。また、友好親善を掲げる協定や条約をアジア各国と結ぶよう後押しも欠かさない。当然、オバマ大統領自らも、あらゆる機会を捉えてアジアの国々との関わりを深めようと努力を重ねている。

 2009年11月に東京で行ったオバマ大統領のスピーチでも、自らの体験に言及しながら、21世紀のアメリカにとって、アジア太平洋地域がいかに重要であるかということを繰り返し述べていた。しかし、そうしたアジア重視の演説やアプローチも、最終的にTPPを実現するための、欠かせないステップと見なしているとしか思えないのである。

 アメリカの多くの産業界からは、TPPを通じて「自由で公正な貿易という大原則を確立し、アメリカがアジアとの連携を再構築するチャンスにすべきである」との考えが寄せられている。これこそ全米商工会議所が中心となって進めているTPP推進の動きの背景に隠された思想的背景のようなものである。

 簡単に言えば、「TPPをアジア太平洋地域の自由貿易圏に進化させることで、アメリカの経済権益を確保せよ」という発想である。

 と同時に、アメリカの法制度がアジア太平洋地域と共通化することになれば、アメリカの企業、特に中小企業は大きなメリットを享受できることになるわけで、そうした法体系の一体化の動きも水面下で着々と進められている。

 国内経済が縮小傾向にあり、雇用の確保が最重要課題となっているアメリカにとって、経済の急成長が続くアジアは死活的利益を有する地域なのだ。

 全米サービス産業連盟はそうした発想のもと、TPPが取り組むべき最重点分野として、金融サービス、通信、オーディオ・ビジュアル・サービス、メディア、速配便といった産業を有望視している。

 実は、アメリカでは「TPPのための米国企業連合(U.S.BUSINESS COALITION FOR TPP)」が立ち上げられ、熱心な活動を展開している。

 すでにさまざまな要望書が作成され、議会に対しても、オバマ政権の中枢に対しても、日夜、ロビー活動を続けているのである。オバマ政権は多様な貿易通商政策を展開しているが、唯一といっても過言ではないほど、積極的に’攻め’の姿勢で働きかけを行っているのが、このTPPなのである。その背景には、こうした経済界や各種ロビー団体の強力な働きかけが影響しているわけだ。

 我が国では慎重な対応を求める声も強いが、アメリカ国内ではTPP実現に向けて日本の想像をはるかに超える規模とスピードで促進活動が進められているのである。

 TPP参加国、参加交渉国と日本のGDP比較

国名、GDP(億ドル)、同成長率(%)

TPP参加国
チリ、1,991、5.0
ニュージーランド、1,380、2.9
シンガポール、2,173、15.0
ブルネイ、119、0.4

TPP参加交渉国
米国、146,241、2.6
ペルー、1,535、8.2
豪州、12,197、3.0
マレーシア、2,189、6.7
ベトナム、1,019、6.4

TPP参加交渉を検討中
日本、53,909、2.8

米国の狙いは日本市場
TPP交渉参加9カ国に日本を加えた10カ国の内需総額のシェアを見た場合、日米で95.6%を占め、豪州を除くその他7カ国の国内需要のシェアはわずかに0.3%にすぎない。


50. 2011年11月08日 22:01:37: kRA28US3Uw

 思い起こせば、アメリカがTPPへの参加を最初に表明したのはブッシュ政権末期のこと。具体的には2008年9月のことであった。

 その表明直後、オーストラリア、ペルーが参加を表明し、さらにはベトナムもオブザーバー参加を申し出た。そしてオバマ政権が誕生するや、マレーシアも参加の意思を表明。2010年10月にブルネイで開かれた第3回交渉で、マレーシアの参加が正式に認められた。翌11月にはベトナムも正式に参加。アメリカが参加を決定したことにより、TPPの動きは急速に進展するようになったのである。

 アメリカでは正式参加以降、「TPPのための米国企業連合」以外にも、TPP推進の業界団体が、次々と要望書を議会や大統領に突き付けている。

 例えば、米国製造業者協会(MTA)は15項目からなる要望書を2010年9月に発表。その中身は、「関税の例外なき撤廃、ネガティブリスト方式(リストにあるもの以外はすべて許可する方式)によるサービスの大幅な自由化、高度な知的財産権の保護、投資の自由化と政府調達の差別撤廃などで、これまでアメリカが各国と結んできたFTAでの伝統的な取り組みに加え、既存の2国間FTAを遥かに上回る自由化と規律化を求めているのが特徴である。

 このように、アメリカ政府は「TPPこそ21世紀型FTAモデル」と明確に位置付け、「極めて高度で包括的なFTAを目指している」のである。当然のことながら、既存のFTA以上の内容を交渉相手国に求めてくるであろうことは、容易に想像できるだろう。

 また、先に述べた米国企業連合の要望書を見れば、中小企業にとってのメリットとして、「既定の統一、サプライチェーン(供給者から消費者までの流れを管理すること)の実態の考慮、政治腐敗や透明性の向上」といった、これまでのFTAにおいては考えられなかった野心的な内容を、オバマ政権は企業からの圧力を受けTPPに織り込もうとしているわけである。

 果たして、TPP交渉参加国がどこまでこうしたアメリカ企業の要望を受け入れるかは予断を許さない。とはいえ、自らの再選戦略に邁進せざるを得ないオバマ大統領が、力ずくででもこうした新たなアメリカン・スタンダードをアジア太平洋諸国に押し付けようとする可能性は高いと思われる。

 もちろん、アメリカがこのTPP交渉を成功裏に決着させるためには、「議会が持つ貿易交渉権限を政府に付与する時限立法、すなわち貿易促進権限(TPA)が必要不可欠になる」。なぜならTPAがあって初めてアメリカ政府は他国との交渉がまとまれば、議会による修正を受けることなく、交渉の中身を採択することができるようになるからである。

 実際、ブッシュ政権の時代にはTPAを議会から付与された後、中南米や中東諸国、シンガポール、オーストラリア、韓国などとの間でアメリカは次々とFTAを結んでいった経緯がある。逆に言えば、TPAがなければ、オバマ政権がいくら外交圧力や軍事力をバックにTPP交渉をまとめたところで、最終的に議会の修正を受け、再度参加国と交渉をやり直すという不名誉な流れが起こるわけだ。

 そのため、ワシントンの通商問題専門家の間では、TPPの交渉を進めるのは結構だが、貿易促進権限がないアメリカにほかの参加国がどこまでついてくるかは難しいとの指摘があるほどである。

 確かにオバマ政権はアメリカの産業界の意向を受け、また自らの再選戦略の中心にTPPを位置付けていることは間違いないものの、オバマ政権と議会との関係を考えれば、必ずしもアメリカ主導のTPP交渉がスムーズに進展する保障はないのである。この点を見誤ってはならない。

 こうした懸念に対し、米国製造業者協会の責任者は、「貿易促進権限はなくてもオバマ政権は議会と相談しながらTPP交渉を進めている。よって、さほど大きな障害にはならないだろう」、と楽観的な見方を述べている。

 とはいえ、2011年11月を目途としているTPP交渉合意時点におけるアメリカ上下両院議会の政治情勢は、不透明な部分があり、修正が必要となる場合も考えられる。となれば繰り返しになるが、「最終的に議会による修正を余儀なくされるリスクがある協定の中身を、現在の交渉参加国がどこまで本気で詰めるのかは疑問の残る点である」。

 日本はこうしたアメリカ議会の情報をしっかり収集・分析したうえで、TPP参加について議論すべきであるが、果たしてそこまで詰められているのか、はなはだ疑問である。

 2010年10月に行われた中間選挙で共和党は歴史的勝利を収めた。

 一般的に共和党は自由貿易推進と言われているため、通常であれば、政権の求めに応じて貿易促進権限を付与する可能性が高い。とはいえ、オバマ政権発足後の2年間に生じた民主党と共和党との間の対立構造には根深いものがあり、共和党が多数派となっている議会が、オバマ政権に通商交渉の権限を与えるとは考えにくい。我が国でも「ねじれ国会」が、さまざまな法案の審議に影響を与えているが、こうした状況と似通っていると言えなくもない。

 さらにアメリカでこのところ顕著になってきた「保守回帰の動き」も無視するわけにはいかない。すなわち、オバマ政権の大きな政府に反対する、「ティーパーティー(茶会運動)」の影響力の拡大が、TPP交渉にどのような影響をもたらすかという点にも注目しておく必要があるということだ。

 先の中間選挙において、ティーパーティー支持議員は、下院で24議席を新たに獲得し、合計76議席を占めるまでに勢力を拡大。注意すべきは、これらティーパーティーの議員たちは、自由貿易協定(FTA)反対の立場を明らかにしていることだ。また、景気回復の兆しが見えないなか、これまで国内雇用の確保に重点を置いてきたのが民主党であるが、民主党がかろうじて多数を占める上院の貿易関連委員会において、貿易促進権限がすんなりと承認されるかどうかは極めて不透明と言わざるを得ない。

 こうした状況下で、オバマ大統領の議会工作がどこまで成功するのか。また、どこまでオバマ大統領自身がTPP交渉への支持基盤を拡大していけるのか。まだまだ思惑通りには進まない可能性も視野に入れておく必要がある。


51. 2011年11月08日 22:02:50: kRA28US3Uw

 このような厳しい情勢に直面し、TPPを何とか進めたいオバマ大統領が見い出そうとしている活路が、環境保護団体との連携である。

 アメリカでは様々な市民団体や環境保護団体が、会員からの会費や一般市民からの寄付、また自らの出版事業による収益等を使い、自らの政策を広めるための多様な活動をしているが、このところ、こうした団体においてTPPへの関心が高まりつつある。

 従来から、こうした市民団体や環境保護団体は民主党支持の傾向が強かった。特にオバマ大統領が誕生した際の選挙戦では、環境保護グループや人権擁護団体が重要な役割を演じたものである。そのため、議会との対応で厳しい局面が想定されるオバマ政権は、TPP問題を有利に展開するための応援団として、経済団体に加え、環境保護団体などNGOとの情報の共有化や連携の強化を図ろうとしている。

 「全米野生生物連盟」や「グリーンピース」、「ワールドウォッチ」、「シエラクラブ」、「フレンズ・オブ・ジ・アース」など国際的に知られた環境保護団体は、これまでもFTAやTPPについて積極的に情報を発信してきているが、一方で、米国の非営利消費者擁護団体「パブリック・シチズン」や環境団体と労働組合の連合組織である「シチズンズ・トレード・キャンペーン」、アメリカとカナダの労働組合の連携組織で140万人の会員を誇る「チームシスターズ」などは、自らのホームページや街頭活動等を通じて、TPP問題をテコにオバマ政権に対する影響力を拡大しようと、あの手この手の知恵を絞っている。特に「シチズンズ・トレード・キャンペーン」ではTPPをTrade Policy Problems(貿易政策問題)の略だと訴え、問題点の指摘に余念がない。というより、国内の雇用を守る立場からTPPには反対している。

 またアメリカ最大の労働組合組織である「アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)」は、ことTPPに関しては条件付きでの支持しか表明していない。なぜならば、アメリカ国内での雇用確保がどこまで保障されるのか、見極めがつかないからだというのがその理由である。

 「パブリック・シチズン」も「自由貿易はアメリカの利益になっておらず、協定を結んでいない国との貿易のほうが伸びている」との報告書をまとめているほどだ。それどころか、FTAによってアメリカは1994年以降、490万人の製造業の雇用を失い、NAFTAの貿易赤字だけで、100万人以上が職を奪われることになったと分析している。

 このように諸手を上げて賛成の立場を表明しているわけではない多くの民間団体や環境・人権団体はTPPとどのような関わりを持とうとしているのであろうか。

 彼らの主張を分析してみると、次のような特徴があることが判明する。

 それはモノの貿易やサービス、金融事業がグローバル化した結果、アメリカの労働者の雇用や権利、自然環境や熱帯雨林などの資源、生物多様性や地球温暖化、市民の権利などにも様々な悪影響が及ぼされるようになった。こうした問題の解決策を自由貿易協定の中にも織り込むことで、労働条件や環境に配慮した投資のあり方、また政府調達の仕組みそのものに環境や人権問題を織り込もうという要求を掲げているのである。

 こうした発想を持つ組織の多くは、ブッシュ政権が進めてきた自由貿易協定は多国籍企業や大企業の利益を優先するものとして批判をしてきた経緯がある。そこでオバマ政権に対しては、自分たちの主張を取り入れた新しい貿易協定の締結を強く求めているのだ。この点、労働組合組織と歩調を合わせているといえよう。

 さらに、TPPへの関与を深めようとしているアメリカの環境保護団体は、「国内の厳しい法律を相手国にも求めるように」との申し入れを重ねていて、多くの環境保護団体は労働組合と連携し、TPPの投資部会に対して圧力をかけ続けていくとアピールしているほどだ。「外国企業などの投資家に対し、アメリカ企業が与えられている権利よりも大きな権利を与えてはならない」とする条項を必ずTPPの中に入れるように要求しているのである。

 つまり、外国の企業や投資家に対する扱いには、アメリカ企業との差をつけるべきだという考え方に他ならない。

 具体的な例を示せば、アメリカに進出することになるTPP締約国の企業や投資家から、「アメリカ政府が再生可能エネルギーや環境保護政策のもとで行うアメリカ企業への補助金、あるいは雇用創出に伴う給付金、そして政府調達による国内企業への優遇措置は外国企業や投資家を差別している」といったクレームが寄せられた場合、その問題解決を国際的な裁判所等に訴えようとしても、外国企業や投資家にそのようなことができないようにする条項をTPPに織り込もうとしているのである。

 こうしたアメリカ優先の条項は今後大きな議論を呼ぶことになるだろう。

 また、輸入食品の安全問題や検査の強化対策、厳格な原産地表示のルールなども、環境保護団体が求めている協定案文の一部である。要は、輸入される農産物や食品の残留農薬検疫、パッケージや表示のあり方などの安全基準に関連し、アメリカの基準を満たさないものは、その輸入を禁止するということである。

 こうした食品の安全基準を、他のTPP参加国においてアメリカ並みの水準に引き上げさせるため、環境保護団体は米通商代表部や食品医薬品局(FDA)が相手国の法律を審査するように求めている。

 そして、驚くべきことに2011年1月、アメリカでは「食品安全近代化法」が施行され、アメリカの環境保護団体は、この新たに施行された法律をTPP交渉の基盤とするよう、要求をエスカレートさせる行動を開始したのである。

 何が問題かといえば、この食品安全近代化法においては、食品医薬品局に対し、食品リコール権限を新たに付与するとともに、食品の製造、加工、包装、保管のためのアメリカ国内の施設は、2年ごとにFDAへ登録することが義務付けられるのである。ということは、TPP加盟国内においても、同様の登録や検査の義務を課すことになる可能性が高くなることは火を見るより明らかだ。

 とはいえ、アメリカの残留農薬や遺伝子組み換え作物の表示義務等は、日本と比べれば遥かに緩やかなものでしかない。にもかかわらず、アメリカの消費者団体や環境保護団体は、TPPの交渉においては、あくまでアメリカの規準や法律を基礎にすべきだとの主張で固まっているのである。果たしてアメリカの消費者団体や環境保護団体は、どこまで日本が定めている厳しい安全基準を認識しているかといえば、はなはだ心許ない限りである。

 であるならば、アメリカの消費者にとっても、日本の安全基準のほうが遥かに厳しいということを認識させれば、一方的なアメリカン・スタンダードを掲げるTPPの問題点も明らかになり、今後の交渉次第では日本の基準がアメリカやアジア、世界のスタンダードになる可能性も十分あるといえよう。

 しかし現状では、アメリカの消費者団体や環境保護団体の主張は、アメリカの経済団体や農業団体との間で対立したままである。

 また、言うまでもなく、アメリカ国内の様々な法律や安全基準が必ずしも唯一絶対のものではないわけで、そのことをアメリカの世論や一般の消費者が気づくようになれば、TPPが内部的に崩壊する可能性も否定できない。実はそうした脆い基盤の上に立っているスキームが、TPPなのである。だからこそ、TPP参加にただ邁進するのではなく、日本政府には冷静な情勢判断に基づいた方針作りが必要なのである。


52. 2011年11月08日 23:17:03: 3blrVjTZPA
韓米FTAはISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」)条項を飲まされているという。

ISDがなぜ「毒素条項」なのか、調べてみた。

韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、米ワシントンを本拠地とする世界銀行傘下の世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。

世界銀行の「President(総裁)」には米国出身者が選出される。

ロバート・ブルース・ゼーリック(Robert Bruce Zoellick、1953年7月25日 - )は、現在の世界銀行総裁。前職はアメリカ合衆国国務副長官(2006年7月7日に辞職)。その他、アメリカ合衆国通商代表として2001年2月7日から2005年2月22日まで仕えた。

ポール・ダンデス・ウォルフォウィッツ(Paul Dundes Wolfowitz,1943年12月22日 - )は、アメリカ合衆国のユダヤ系政治家・第10代世界銀行総裁(2005年6月1日 - 2007年6月30日)。
代表的なネオコンの論客の一人であり、米国で最も強硬なタカ派政治家。親イスラエル派で親台派である。

米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。

例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求めることができることになる。

ここからは、ハンギョレ新聞の記事より引用します。

裁判所構成、米国に有利…国際仲裁 公正性に大きな疑問
http://news.livedoor.com/article/detail/5984141/

果たして公正なのか?
公正性有無は論議の核心だ。米国投資家がわが政府を提訴すれば世界銀行の傘下機構である国際投資紛争調整センター(ISD)の仲裁審判部が事件を受け持つ。 1946年以後、一貫して米国人が世界銀行総裁を受け持ってきたという点で、当初から米国側に有利な環境という批判が絶えない。

特 に仲裁審判部(3人)は私達が知っている普通裁判手続きとは全く違う。一般的に裁判では両側の当事者が裁判の手続きや規則はもちろん、判事選任にいかなる 影響も及ぼしてはならないというのが基本原則だ。だが、仲裁審判部は両側当事者が一名ずつ仲裁人を選定し、残りの1人は合意で選ぶ構造だ。合意に至ることができない場合、国際投資紛争調整センター事務総長が残りの1人(部長)を任命する。その上、単審制だ。

国際仲裁手続きの経験が豊富な法律家が少ないという点も問題点として指摘される。 特定企業の仲裁審判に弁護士として仕事をした法律家が、次回にはすぐにその企業の仲裁審判に仲裁人として活動することがしばしば発生したりもする。国際仲 裁機関で活動する法律家の国籍現況だけ見ても、我々にはきわめて不利なのが事実だ。現在まで米国企業が相手国政府を提訴した事例は計108件だが、この内で敗訴したのは22件だけだ。 反対に外国企業が米国政府を相手に提訴した15件の内で米国政府が敗訴したことは一度もない。

ここまでハンギョレ新聞の記事より引用

実際に起きた事実として、
ISD条項は、米国とカナダとメキシコの自由貿易協定であるNAFTA(北米自由貿易協定)において導入された。

実際にカナダやメキシコでは国民のため、健康や環境に関する規制で
アメリカ企業が輸出できなくなるなどして政府が訴えられ、裁判で負け、
膨大な金額を支払うか それら規制の撤廃させられている。

国の法律を超越したルールが適用される…国民の主権を上回る法律。

外務省は、日本国に不利になることは、わざと国民に知らせようとしないのだろうか。


53. 2011年11月09日 00:13:26: lUv9my4LV2
権力が 人を 狂わせる。

危ういかな 人間。!!!!!!!!!!!

今後 民主党に 投票する人は いないだろう。!!!!!!!


54. 2011年11月09日 07:42:53: Z8eXKXpQEo

 経済産業省では、我が国がTPPに参加した場合の実質国内総生産(GDP)増加、および伸び率の試算を公表をしている。その試算によれば、我が国のGDPは年間0.48〜0.65%伸びることになり、2.4〜3.2兆円の経済効果が期待できるという。そのうえで、同省はTPP早期参加のメリットとデメリットを挙げているのであるが、まさにその論調は「TPP参加ありき」で、TPP参加のデメリットに関してはまったく想像力が働いていないのである。

 経済産業省が主張するTPP早期参加のメリットの第一は、「ルール形成への参加」である。すなわち、関係国の間で自由貿易に関するルールの協議が進んでいるわけで、その協議にいち早く参加することで、日本企業にとって、有利な条件を整備できるというわけである。

 具体的には中小企業の輸出支援、すなわち輸出手続きに関する情報の一覧化や書類を統一する協議が進んでいるのだが、その際に日本のルールを主張することができるというのだ。また、新たな投資規律を強化する議論が進んでいるため、日本が早期の協議に参加できれば、強制的な技術移転や送金規制に関する抑制策を主張できるとも言う。加えて、成長分野の規制の調和を主張できるとも説明。万が一参加のタイミングが遅れれば遅れるほど、他の国々によって作られたルールを受け入れるだけになってしまう、と不参加のデメリットを強調する。

 そして農業などの困難な分野についても、早期にルール形成の協議に参加できれば、除外品目を主張したり、長期の段階的関税引き下げを働きかけたり、いわゆるセーフガードといわれる緊急輸入制限を勝ち取ることもできる。そのためにも一刻も早い協議参加が欠かせないというのである。

 しかも、原産地の表記や基準、知的財産権において、日本型ではないルールが導入されることになれば、日本企業にとっては新たな仕組みに対応するため、過剰なコスト負担を余儀なくされ、競争力がそがれることになりかねないとも説明するのだ。

 こうした貿易のルールに関する早期参加のメリットのみならず、経済産業省が主張する早期参加のメリットには、アメリカとの関係強化という政治的な考慮も強く織り込まれている。すなわち、経済面でアメリカとの関係を強化するおとで、日米同盟を補完できるという発想である。

 沖縄の普天間基地移設をめぐるぎくしゃくした関係によって、アメリカの日本を見る目が厳しくなっていることは間違いない。

 これに対して前菅政権の思惑は、2011年11月にハワイで開かれるAPECでTPPの協定合意を目指すアメリカを後押しすることができれば、日米の同盟関係が修復できるに違いないというものだ。また、このところの中国の不穏な動きを見るにつけ、レアアースの輸出制限など資源ナショナリズムに傾きがちな中国の動きを牽制するためにも、日本とアメリカはいっそう協力関係を強化することで、対中政策にも効果があると分析。そのためにも、現在のWTOを超えた高いレベルの新たなルール作りが重要になる。そんな発想が経済産業省には強いようである。

 しかも、アメリカが主導するTPPを日本が全面的に支えることになれば、TPPへの参加をためらっている中国や、ほかのアジア諸国が少なくとも経済連携協定(EPA)に参加する道筋はつけられるだろうとの目論見も見え隠れする。

 一方でEUも、日本のTPP参加が遅れることになれば、日本とのFTA並びにEPA交渉に関しては、様子見を続けるだけになる可能性がある。その間に韓国とEUがFTAを発行してしまうことになるだろう。また安全保障の観点を考慮すれば、アメリカとの関係強化がないままでは、中国とのEPAも進めにくくなってしまう。

 こうしたもろもろの背景説明をもとに、経済産業省はほかの省庁とは一線を画し、菅前総理のTPP前のめりの動きを強力に推進しているわけである。

 一方、内閣官房においては、我が国がTPPに参加した場合のメリットとデメリットについて、よりバランスのとれた分析を行っている。

 まず、我が国がTPPに参加した場合、すでに述べたように実質GDPを約3兆円押し上げる経済効果に加え、国を開くという強いメーッセージ効果が期待できるという。日本に対する国際的な信用と関心が高まるというのである。

 韓国がアメリカとの間で進めているFTAが実現すれば、日本企業はアメリカ市場で韓国企業より不利な戦いを余儀なくされることはすでに述べた。しかしTPPに参加することになれば、日本企業は韓国企業と同等の競争条件を確保できるわけである。

 もうひとつのメリットは、TPPがアジア太平洋地域の新たな地域経済統合の枠組みとして発展していく可能性があるということである。TPPで協議の進む貿易・投資に関する先進的ルールが、今後この地域の実質的な基本ルールになることが想定されるからである。つまり、これまで我が国が各国と結んできたEPAにおいてはカバーされてこなかった環境や労働といった新しい分野が重要になるとの見方である。

 その意味で、日本がアメリカと歩調を合わせ、この地域の経済統合の枠組み作りを早い段階で進めることができれば、政治的意義は大きいと言えるだろう。もちろん、こうした目標を達成するためには、強い政治交渉力やリーダーシップが欠かせないことは言うまでもない。果たして今の日本の政府にそのような主導的交渉力があるかどうかは大いに疑問であるが。

 内閣官房においては、同時にTPP参加のデメリットも検証している。

 デメリットの最大のものは、あらかじめ特定セクターの自由化を除外したかたちの交渉参加は認められないという点に尽きる。

 すなわち、たとえ日本でもコメを聖域化するような交渉はあり得ないということだ。10年以内の関税撤廃が原則であるから、当然といえば当然のことであろう。

 農林水産省の試算によれば、コメや小麦など主要農産品19品目について全世界を対象にただちに関税を撤廃し、なんら対策を講じない場合の農業への影響は、農産物の生産額の減少が年間4.1兆円程度、カロリーベースでの食糧自給率の低下は現在の40%が14%程度に、農業・農村での多面的機能の減少は3.7兆円程度、農業関連産業も含めた国内総生産の減少は7.9兆円程度になるという。

国境措置を撤廃した場合の我が国農産物生産等への影響は甚大
農林水産省試算

試算の前提
○ 19品目を対象として試算
米、小麦、甘味資源作物、牛乳乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵等
【基準】関税率が10%以上 かつ 生産額が10億円以上 (林産物・水産物は含まない)

試算の結果
○ 農産物の生産減少額(※) 4兆1千億円程度(米19.7千億円・比率48%、豚肉4.6千億円・比率11%、牛乳乳製品4.5千億円・比率11%、牛肉4.5千億円・比率11%、鶏肉1.9千億円・比率5%、鶏卵1.5千億円・比率4%、甘味資源作物1.5千億円・比率4%、小麦0.8千億円・比率2%、その他の農産物1.8千億円・比率4%)
※ 国産農産物を原料とする1次加工品(小麦粉等)の生産減少額を含めた。
○ 食料自給率(供給熱量ベース) 40%→14%程度
○ 農業の多面的機能の喪失額3兆7千億円程度
○ 農業及び関連産業への影響
・国内総生産(GDP)減少額7兆9千億円程度
・就業機会の減少数340万人程度

 先に経済産業省の試算で述べられていたTPP参加によるGDPへの経済効果が最大でも3.2兆円だとすれば、この農水省による試算は、農業分野だけで15兆円を超える損失が出るわけで、輸出産業にとっては3兆円の新たな富を生み出す一方で、15兆円を超える損失が生まれる計算になる。

 農林水産省と経済産業省の試算がいずれも正しいとすれば、日本全体の経済のためには、TPPの参加は見送るべきとの結論が出るのは当たり前である。

 さらに、内閣官房では日本の消費者にとってより深刻な影響をもたらすと思われる問題を挙げている。それは既存の2国間の合意事項が加盟国すべてに波及する可能性があることだ。つまり、TPP参加国にうちある2国間で結ばれた合意事項に、日本も従わなければならないのである。

 特にアメリカからは日本に対して、牛肉の輸入やさまざまな非関税障壁に関して、これまで以上に厳しい要求を求められる可能性が高いと内閣官房では予測している。

 たとえば、2003年以降、牛海綿状脳症(BSE)の問題によるアメリカ産牛肉の輸入に制限が加えられ、現在も輸入制限が続けられているが、アメリカからは日本の輸入規制は科学的根拠に乏しいものだとして、早期の緩和措置を求めてくる可能性が高いだろう。

 また、公共事業の入札の際には、英語による情報開示が求められてくる可能性も出てくる。すなわち、一定金額以上の公共事業に関しては、国際的な競争の環境を整備する必要があるとし、入札条件が決定したのち、3日以内に英文でその情報を世界に公開しなければならないということだ。

 今の日本の自治体や建設業界では、そのような対応ができるケースは極めて稀と言わざるを得ないだろう。英語での公文書をわざわざ作成するとなれば、日本国内の公共事業はますます停滞することが想定される。

 現在、日本の地方で行われる公共工事に関しては23億円以下であれば、海外企業に門戸を開く必要がない。しかし、TPPがベースにしている「P4」協定では、一律7億6500万円以上の公共工事はすべて海外企業にも発注案件を公示しなければならないとされている。これによりアメリカの大手ゼネコンやコンサル会社が、アジアの安い労働者をまとめて日本に送り込む案件が急増するだろう。現に、東南アジアでは中国などの建設業者がそうした手法で次々と受注を獲得している。

 アメリカの大手建設会社にとっては小規模すぎるかもしれない公共工事であっても、TPPによって、「発注ロットの規模拡大」が現実化すれば、国際入札案件は一挙に拡大する可能性は否定できない。たとえば、日本海沿いで遅れている高速道路の整備(ミッシングリンク「未整備により途中で切れている高速道路」の解消)や新幹線網の拡大には、潜在的な50兆円規模の公共投資が想定されている。これなら海外の建設業界にとっておいしい話であろう。

 しかし、こうした国内の公共事業を海外企業に開放してしまえば、日本国内の建設業は崩壊してしまう。豪雪時には利益抜きで復旧に駆けつけてくれるのが地場産業であり、地元の建設業者である。「契約を優先する」海外の県建設業者にはとうてい望めない、日本的な’職人魂’を失ってよいのだろうか。TPPでは、こうした日本固有の文化的要素は「非関税障壁」として撤廃のターゲットにされる運命にある。

 地域を支えるのは、農業や林業だけではない。建設業も欠くことのできない役割を担っている。京都大学大学院の藤井聡教授(社会都市工学)によれば、TPPによる日本の建設業に対する経済的損失は「最低でも6000億円。最大では3兆円になる」という。となれば、さまざまな分野の専門的な知識や試算を総動員し、TPPのもたらす影響を個別の分野ごとに検証する必要がある。ところが、そうした検証作業がまったくといっていいほど進められていない。


55. 2011年11月09日 07:46:46: Z8eXKXpQEo

 実は、こうした問題は氷山の一角であり、関税撤廃や自由貿易のもたらす様々なメリットとデメリットをどこまで容認することができるのか、十分な研究や議論が行われているとはとても思えない。

 しかしながら、我が国の主要メディアや経済界では、自由貿易に立脚した日本は早期にTPP参加の決断を下すべきだ、という流れが強くなっている。保守的なメディアと見られる産経新聞ですら、「6月などと言わずに早期参加を目指し、国内の構造改革を果敢に断行すべきだ」(2011年1月16日)と主張しているほどだ。

 産経新聞は、日米構造協議の重要性に言及しつつも、「日米FTAと同等の意味を持つTPPに参加するメリットは大きい」と議論を譲らない。その理由として掲げていることは、「日米の競争力を強化し、長期的な成長を促す基盤を築くだけでなく、世界の通商ルールについて両国のリーダーシップを発揮できるからだ」というのである。

 また、経済産業省の主張と軌を一にするかのごとく、「安全保障の面でもTPPは日米同盟を補強し、国際ルールを無視する動きが目立つ中国を牽制する意味合いがある」とまで主張する。「民主党は日米FTAの締結を当初の政権公約に掲げていながら、農業団体などの反発で、「締結」という表現を「交渉の促進」に後退させ、TPP参加の決断も先送りにした。こうした腰砕けの姿勢では国民の不信を募らせるだけ。だから菅(前)総理はTPP参加を日本の死活問題と認識し、党内や国民への説得を急ぐべきだ」というから驚く。

 産経新聞がこのような主張を掲げるほどであるから、ほかのマスコミは推して知るべしであろう。メディアにとって欠かせないスポンサー筋の大手輸出関連企業が軒並みTPPへの参加を求める緊急集会などを相次いで開催している。自動車や電機機器など関税撤廃の効果が大きいと見られる業界では、それなりのメリットが見込まれるのは確かである。しかし、それ以上に日本の経済界がTPPに期待を寄せているのは、やはり韓国への対抗意識からであろう。

 FTAで先行し、多くの分野で我が国にとって最大のライバルとなった韓国。その韓国と同じ条件で戦うためには、TPP参加が欠かせないという発想が経済界の主流になっているようだ。

 読売新聞が2011年1月に行った経営トップ30人を対象にした新春景気アンケートの結果から見ても、TPPについては29人が参加すべきだと答えている。ほとんどの経営トップが自由貿易の推進により、海外事業に取り組むことで活路を見出そうとしていることが鮮明にうかがえる。

 日本経済新聞が2010年末に行った社長100人アンケートにおいても、TPPに「参加すべき」との意見は8割を超えている。TPP交渉について、「参加すべきではない」という声はゼロであった。

 また、中小企業の経営者を対象に産業能率大学が2011年1月に行ったアンケートの結果も、「TPPに日本は参加すべきだ」と答えた経営者は、全体の83%に達していた。この調査は従業員6人以上300人以下の企業経営者、688人の回答に基づくものである。

 さらにいえば、帝国データバンクが行った2010年1月にかけての全国2万3101社を対象にした調査においても、「TPP参加は日本にとって必要だ」と回答した企業が65%。また、TPPに参加しなかった場合、72%の企業が長期的に見て景気に悪影響があると認識していることも明らかになった。

 これらの調査の結果を見る限りは、経団連に加盟する大企業から従業員10人程度の中小企業の経営者に至るまで、TPPに関しては、「日本の参加が望ましく、かつ避けがたい」との認識が広がっていると受け止めざるを得ない。

 まさに菅前総理の意向を受け止め、経産省が中心となって進めてきたTPP参加に向けての世論工作が大いに効果を発揮しているといえるだろう。しかし、これらのTPP参加賛成派の経営者がどこまでTPPの本当の中身を確認、理解したうえで賛成の回答を寄せているのか、疑問の余地が多分にありそうだ。

 その点については、菅前総理自身が述べている次の言葉が、その危険性を象徴的に示しているといえるだろう。それは2011年1月28日、参議院本会議の代表質問でのことである。「TPPが国内医療など個別の分野にどのような影響をもたらすものか、私から言うのは困難だ」と答弁したのである。

 TPPの中身は、農業のみならず、また製造業に限定されることなく、実は医療や福祉、教育、法律、金融、通信など様々な分野に影響するものである。その一つ、医療分野の交渉が国民の健康に関わる国内医療にどのような影響をもたらすのか、そのことについて問われた前総理の答弁がこれでは、あまりに寒々しいと言えるのではないだろうか。

 2011年1月24日の施政方針演説のなかで、「平成の開国」という言葉を11回も使い、貿易や投資の自由化、人材交流の円滑化まで踏み込んだ包括的な経済連携の促進を強調している菅前総理。「21世紀の日本のオープニング」と題した官邸のホームページにおいても、繰り返し日本が「第三の開国」に向けてTPPの参加への準備を進めていることを強調している。

 これだけ日本の閉鎖性を強調し続けていれば、大企業であろうと、中小企業の経営者であろうと、このままでは日本が世界の流れから取り残されるとの思いに駆られるのも当然であろう。しかし、TPPの問題に関しては、やはりその参加のメリット、デメリットを、国民に対し具体的な情報を示さなければ、全体として賛成も反対も、結論の下しようがないのである。

 正月の福袋を買うわけではないのであって、中身のわからないTPPに賛成しろと言われても、まともな判断力のある人々にとっては、何とも答えようがないというのが正解ではなかろうか。なぜなら、国会の場においても、メディアの場においても、TPPの実態はほとんど明らかになっていないからだ。

 にもかかわらず、2011年1月時点で、TPPへの参加について反対あるいは慎重な対応を求める意見書や特別決議を採択した都道府県議会は39道府県議会と、全体の8割に上ることが、日本農業新聞の調べで分かった。ブロックの知事会が反対要請を政府に提出する動きも出ている。菅前首相は今年を「平成の開国元年」と位置付け、貿易自由化を加速する姿勢を強めるが、地方では反発の声も急速に広がっている。経済界の反応との違いに驚かされる。これは一体どういうことであろうか。要は、情報の開示を拒みながらTPP参加へ前のめりになっている政府への警戒心の発露にほかならないと思われる。こうした不安や懸念に対して、政府は納得できる説明義務を負っているはずである。

 ノーベル経済学賞の候補者とも言われる東京大学名誉教授の宇沢弘文氏は「世界各国はそれぞれの自然的、歴史的、社会的そして文化的諸条件を十分考慮して、社会的安定性と持続的な経済発展を求めて、自らの政策的判断に基づいて関税体系を決めている」と指摘する。その上でTPP反対の立場を鮮明に語るのである。

 曰く、「理念的にも、理論的にもまったく根拠をもたない自由貿易の命題を適用して、すべての商品に対する関税の実質的撤廃を「平静の開国」という虚しい言葉で声高に叫ぶことほど虚しいことはない」。

 日本学術会議の試算を見れば、宇沢教授が指摘する農村の社会資産の重要性が明らかになる。すなわち、洪水防止機能が3兆4988億円、水源滋養機能が1兆5170億円、土壌侵食防止機能が3318億円、土砂崩壊防止機能が4782億円と言われている。要は5兆円を超える農業、農村の多面的な機能がこれまでも十分働いているのである。これほどの資産価値を有する、我が国の地域社会が守ってきた共有インフラを失ってよいのであろうか。

 同じことは森林資源にも当てはまる。我が国は国土の75%が山に覆われている「森林大国」に他ならない。この森林のもつ貨幣価値も莫大である。先の日本学術会議の試算によれば、表面侵食防止機能が28兆2665億円、水質浄化機能が14兆6361億円、洪水緩和機能が6兆4686億円にも達する。

 こうした試算金額の妥当性については、様々な議論があるにせよ、我が国の自然や農山漁村が果たしてきた地域社会と、国民の食生活を守る役割については誰もが否定できないものであろう。「農業はGDPへの貢献度は1.5%に過ぎない」と述べ、「98.5%の輸出貢献産業のためにTPPを進める」と語る菅前政権の閣僚たちの創造力の欠如と、国家観のなさにはあきれるほかない。

◆輸出依存度(=財の輸出額÷名目GDP)について
・約11.5%(2009年)と低い。主要国の中で、日本よりも輸出依存度が「低い」のは、アメリカとブラジルだけ
(第一生命生命経済研究所のコラムでは、70か国中55位となっている。)
・日本の輸出の半分以上(51.81%)は企業が購入する資本財。さらに工業用原料の輸出も25.5%を占め、77%以上は、「企業」が購入する財。
・家電や自動車などの耐久消費財の占める割合は、14.42%。日本の輸出依存度が約11.5%であり、「耐久消費財の輸出対GDP比率」は、1.652% 〜( 第1次産業の割合1.5%とほぼ同等)
 今こそアメリカの考えるTPP、そしてこのTPPが日本にとってどのようなメリットやデメリットをもたらすものなのか、正確な情報に基づき判断を誤らないように議論を尽くすのが政治の役割だと思われる。残念ながら、そうした議論が国会の場でもまともに行われているとは言い難い。であるならば、議論の場をもっと拡大せねばなるまい。

 TPPへの交渉参加問題が提起しているのは、単なる「農業対輸出製造業」といった対立構図ではなく、我が国のあり方そのものなのである。しかも農業が自由化されることの意味はすこぶる大きい。というのは、人間生活に欠かせない「社会的共通資本としての農村」が事実上、消滅することにもなりうるからだ。

 そうした国家存亡の危機をもたらしかねないTPPを安易に認めるわけにはいかない。TPPがもたらす「光と影」の部分をしっかりと受け止める想像力と誤った政策を正す行動力が、我々国民一人一人に求められる。

 2011年3月に我が国は東日本巨大地震と大津波に見舞われた。戦後最大級の災害である。東京電力の福島第一原子力発電所にも被害が発生した。

 そうした国難に直面した日本に対し、世界各国、なかんずく同盟国のアメリカからも支援が寄せられている。しかし、自国の国益をいかなる場合においても最優先するのが超大国。アメリカの日本専門家で国防総省で日本部長を務めたジェームズ・アワー氏(現ヴァンダービルト大学教授)を通じて、日本の復興策の一つとして「TPPを早期に批准せよ」と申し入れてきたのである。曰く「津波で多くの日本農家が命を落とし、生き残った者も非常に苦しんでいるのは間違いない。TPPが批准されれば、日本経済全体を後押しするであろうし、ずっと延び延びになっている、意味ある農業改革をもたらすこともできる」(「産経新聞」2011年3月25日)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110325/dst11032502560002-n2.htm

 巨大地震と大津波で危機的状況に陥った日本に対し、「海外からの支援を円滑に受け入れるためにもTPPは必要」との論調である。我が国の政府内にも、これに呼応する動きも出始めたようだ。火事場ドロボー的な発想に他ならない。こうした時だからこそ、食糧やエネルギーの自給力を高める方策をしっかりと練り上げるべきであろう。決して安易な「第三の開国」論に飲み込まれてはならない。


56. 2011年11月09日 07:57:44: 3blrVjTZPA
政府は自国に有利になるルールを作るというなら、

例えばISDはTPPから除外する、公的医療制度は除外する、

などなど、いろいろな具体的な主張するルールを示し、

受けいらなければ、撤退すことを明確にすべき。

まったく、具体案もないのであれば、入水自殺だろう。


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