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投稿者 明るい憂国の士 日時 2012 年 3 月 05 日 18:33:06: qr553ZDJ.dzsc
 

(回答先: Re: test 投稿者 明るい憂国の士 日時 2012 年 2 月 20 日 20:47:11)

植草一秀著『日本の再生』を読んでみて (神州の泉)

http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2012/03/post-e7e8.html
2012年3月 4日 (日)

 植草一秀著『日本の再生』を読んでみて

 2011年11月15日、経済学者の植草一秀氏は、渋い緑色一色だけでデザインされた『日本の再生』(菁志社)を出版した。神州の泉は本を読了し終え、表装の緑色が象徴する著者の日本再建に対する強い思いを感じた。この本が垣間見せてくれる著者の世界は、通俗的な政治批評本とはまったく違っていて、失われた20年と呼ばれる過去の一時代から現在までの日本を俯瞰し、ここにエポックメーキングとして生じた東日本大震災と福島第一原発事故を通じて、日本が置かれてきた政治的状況や、繰り返されてきた重大な経済政策の失政の原因等、日本が抱える問題の根幹を露わにし、日本がこれらの惨状から立ち上がってどのように生きていくか、その重要な示唆が書かれている。

 人間や社会が希望を持って先に進むためには、現在までの絶望的な経緯や状況をきちんと見据え、そのことときちんと向き合って乗り越えていく以外にない。その意味で、『日本の再生』は、植草氏が日本政治の歴史的過程を踏まえ、何が問題で、何を乗り越えるべきか、その道筋が示されている得難い内容と示唆に富んでいる。広範囲にわたる東日本大震災の惨禍と、それに連動した原子力クライシスがもたらしたカオスの中で、著者の植草一秀氏は、実に説得力のある希望の書を上梓した。神州の泉は植草氏の存在を知る前から、常々心に強くわだかまっていたことがある。それはこの日本が強烈な対米隷属の桎梏化に置かれているにも関わらず、国の中枢にいる人たちが、その現状を是正しようとしない事実が不思議でならなかったし強い憤りに囚われていたことである。

 植草氏が京急事件に巻き込まれる直前は、ようやく植草一秀氏が日本を呪縛する根本的な問題、すなわち対米隷属の国政傾向を正しく把握して、そこから脱却を志向する稀有な学者さんであることを知り、俄然注目に値する一押しの有識者となっていた。そして神州の泉がかねがね考えていたように、戦後の日本では対米隷属を批判したり、そこからの解放を試みて真の独立を志向する知識人たちは、アメリカの意を汲んだ国家官僚に睨まれ、重要な地位から外されたり、表舞台から遠ざけられてしまうことに気が付いていた。その筆頭株が、故田中角栄氏であった。このような不文律が根付いてしまった結果、有能な多くの知識人たちは基本において、負け犬根性から抜け出せずにいる。それは特に小泉政権以降に顕著になった。案の定、植草氏は品川事件と京急事件という国策捜査に二度も巻き込まれていた。

 自らの良心に基づいて真摯な政治批判を繰り広げてきた植草氏は、対米隷属のアンシャンレジーム勢力に睨まれ、不当な汚名をかぶせられたが、不撓不屈の根性でそこから這い上がってきた。地獄を見た学者は、より堅固で不動の信念に彩られたフェニックス(不死鳥)となった。そのような強固な信念があるからこそ、植草氏は菅政権時に勃発した大震災や原発事故の混乱状態の中で、『日本の再生』という稀代の名著をものにした。

 正しい日本復興は正しい思想からしか生まれない。その意味で『日本の再生』は植草氏の思想性や世界観が余すところなく発揮されていて、日本人がこれからの苛酷な現状を乗り越えて生き抜くための最良の指針が示されている。まさに希望の書と言えるだろう。具体的な内容は植草一秀氏が運営するブログ「植草一秀の『知られざる真実』」の「日本が直面する経済政策上の最重要課題」に書かれてある次の六つのレジュメに基づいている。

(1)震災復旧・復興政策
 
(2)財政危機と消費税増税
 
(3)格差の時代の経済政策
 
(4)原発事故を踏まえたエネルギー政策
 
(5)TPP・外貨準備巨大損失と対米隷属外交
 
(6)真の日本経済復興プラン


 現下日本が抱える、章分けされたこれらの課題は、これから日本がどう歩まねばならないか、国民がどういう意識を持って日々を生き抜いていかねばならないかが、具体的に述べられている。人間を判断する場合、その人物が述べている事柄が、ある時間を経てぶれるかぶれないか、あるいは変節するかしないかということは、その人物に信頼を寄せる大事な物差しになる。野田佳彦首相は2009年8月の総選挙で、シロアリを退治すること、天下り法人をなくすこと、わたりをなくすことを声高に唱えていたが、今やその部分をきれいに目隠しして財務省の言いなりになって消費税増税を唱えている。変節の最たるものである。これに比べれば、植草氏は対蹠的にまったくその考えや表明がぶれていない。

 その明白な証左は、植草氏自身が1999年5月6日に出した『日本の総決算』(講談社)、2001年9月20日に出した『現代日本経済政策論』(岩波書店)を読めばはっきりと見える。たとえば『日本の再生』第二章「大増税政策強行実施で財政赤字を激増させた橋本政権」では、「1996年には実質経済成長率が三%を突破し、日経平均株価も二万二千六六六円まで回復した。生産、所得、支出の好循環が始まり、この民間需要主導の自律的な景気回復を維持させていったなら、日本経済はバブル崩壊の傷跡を早期に修復することに成功させていたに違いない。ところがここに大きな問題が出現した。消費税増税提案が、提出されたのである。 ――中略―― 失敗の原因が何であったかは明白である。経済回復初期に、過度の緊縮財政を強行実施したことが、すべてを崩壊させた原因である。」(P91、P92)と書いているが、植草氏は1996年の橋本増税路線の失政をあらゆるところで何度も繰り返して説明している。

 今から13年前の著書『日本の総決算』でも、植草氏は大蔵省が進めていた言論統制プロジェクトTPR(タックスのPR)と絡めて、橋本大増税路線の間違いを強く指摘している。この当時は大蔵省の支配下に置かれた経済企画庁がその間違った増税路線を大々的に進めていた。週刊東洋経済誌の編集長・三上直行氏が2月17日に都迷惑防止条例違反で捕まったが、実は、この事件も植草氏が遭遇した京急事件と極めて強い相似性を有している。しかも、週刊東洋経済を出している東洋経済新報社は、橋本増税路線を批判していた当時の植草氏と無縁とは言えない出版社なのである。この出版社が出していた雑誌、九八年三月号『論争』に植草氏が寄稿していたことを『日本の総決算』でも触れている。

 また植草氏の著書『現代日本経済政策論』の中でも、「九六年の年初来、筆者は九七年度の増税規模圧縮に向けて論陣を張った、たった一人の抵抗といっても過言ではなかった。主張の概要は『論争』一九九六年七月号(東洋経済新報社)に発表した「財政再建最優先論に異議あり」に記述したが、九七年度増税の規模圧縮を主張した。」とあり、植草氏は東洋経済新報社の雑誌に橋本増税路線の批判論を寄せている。このことも98年12月に植草氏が遭遇した、東海道線の一件に強く影響していたと神州の泉は考えている。

 このように植草氏の唱える、政府や財務省(旧大蔵省)への政策批判は過去から常に一貫しており、その論旨は夙(つと)に明快なのである。植草氏が特に重要視して何度も繰り返し指摘する重大な経済失政は、景気浮揚の兆しが出始めた初期の過程で、政府筋(財務省筋)がいきなり大増税路線や緊縮財政路線を採用して景気を失速、墜落してしまうことである。これを『現代日本経済政策論』では「典型的なストップ・アンド・ゴー」の施策として、日本経済長期低迷の真因とまで言い切っている。植草氏はこの「ストップ・アンド・ゴー」の巨大なリスクを何度も政府に警告し続けて今日に至っている。小渕政権はこれを正常化に向けて日本経済を上向き基調に上げて行ったが急逝し、その後を引き継いだ森政権がまたしても財務省に踊らされ、緊縮財政路線のブレーキを踏んで経済を失速させてしまったのである。しかも、それを受け継いだ小泉政権は性懲りもなく超緊縮財政に突っ走り、2003年4月28日には株価を7607円まで暴落させてしまっている。

 植草氏が怒りを込めて警告するこの超緊縮財政路線の大弊害は、神州の泉のような経済の素人でも簡単なアナロジーでよく理解できる。これは人工衛星の打ち上げと同じ思考実験が可能である。宇宙ロケットを地球の軌道に乗せるためには、打ち上げてから脱出速度を得る必要がある。脱出速度とは、地球という天体の引力を振り切り、軌道上での慣性飛行を可能にする最小限度の速度である。この脱出速度を得るためにロケットは莫大な燃料を燃やして大きな推進力を確保する必要がある。もしも、ロケットが脱出速度に至る直前で、推進力を絞ったり逆噴射をした場合、軌道に達する前に墜落してしまうことになる。

 これを経済の景気浮揚と景気安定に重ねてみれば、景気浮揚局面における超緊縮財政とは、宇宙ロケットの打ち上げ時の逆噴射と同じ効果を持ち、経済は絶対に安定軌道に乗らないことになる。つまり、景気浮揚のための莫大な財政投下が無駄になり、再び景気浮揚を狙うためにはまた、莫大なエネルギーを費やさなければならないことになる。これではまるで、坂の上に大岩を運んでもその瞬間に岩は下に転げ落ち、また坂の上に運び上げるという無限ループを延々と繰り返すという、神の怒りを受けたシジュホスの劫罰(ごうばつ)ではないか。植草氏でなくともこれでは怒りたくなる。

 どうやら、景気の上向き局面でこの逆噴射政策を取ってしまう元凶は財務省のようである。国民の税金に寄生して生き延びているシロアリ帝国総本山の財務省が、どうして自分たちの食い扶持を敢えて減らすような経済失速行動を取るのか、神州の泉には大いに謎である。景気浮揚時の緊縮財政投下とは、パラサイトが宿主の命を脅かす行為であり、どうにも解せないものであるが、何度も同じ轍を踏んでいる以上、そこにはれっきとした理由があるに違いない。

 植草氏は天才である。しかも、己の才に溺れず、日本の現状を冷静に分析し、それへの解決点を客観的に提起し続ける。この緑の本『日本の再生』には、植草氏の知の凝縮と、一貫した幸福原理への追及がある。そこへ導くために植草氏は、日本の問題構造を対米隷属勢力の存在、財務省自体の存在論的な問題、TPP参加問題、超緊縮庶民大増税路線の指摘、東日本大震災及び原発事故デザスターからの回復(エネルギーと日本経済の未来)等を具体的に書き記している。もう一つ重要なことを言っておく。植草氏はこの本で、東日本大震災後の復興の動きに、強烈な市場原理主義の形が見えていると警告している。菅政権は復興構想会議の中に、漁業における企業形態での参入を盛り込んだ。これを積極的に推し進めている宮城県の村井嘉浩知事は、対米隷属、市場原理主義の手先のような人物であると植草氏は看破している。植草氏がここで言っている警告は、ナオミ・クライン女史が洞察して世界に広めたショック・ドクトリン構造そのものである。

 最後に、ここで紹介した『日本の再生』書評は、植草氏が記述した多くの論点、視点のごく一部である。我が国で、無数に出版されるさまざまな著作にはよく“必読の書”というキャッチフレーズが使われるが、『日本の再生』こそ、心ある日本人すべてが読まなければならない本である。それほど素晴らしい内容に満ちた本である。神州の泉が植草氏の支援者だから、ことさらに言うわけではない。客観的に言って、これほど優れた内容の本は唯一無二であろう。


追記

『日本の再生』の書評を最も的確にかつ学問的に書かれているのは、政治学者の渡邊良明(わたなべ よしあき)氏が「植草事件の真相掲示板」に掲載している次の四つの記事であろう。特に(4)に書いていることは、新自由主義の大御所、ミルトン・フリードマンの研究から入った植草氏が、その経済的研鑽の結果、今ではジョン・メイナード・ケインズも、ミルトン・フリードマンも超えた、独自の新境地に到達していることを説明しているが、神州の泉もまったくそれに同感である。植草一秀氏という学者は、新古典派かケインズ主義者かというような、大時代的な区分けはすでに無意味であり、現代の経世済民思想を地で行く、日本が生んだ偉大な経済学者である。
 
「植草一秀氏著『日本の再生』を読んで(1)」

 
「植草一秀氏著『日本の再生』を読んで(2)」
 

「植草一秀氏著『日本の再生』を読んで(3)」
 

「植草一秀氏著『日本の再生』を読んで(4)」
 

2012年3月 4日 (日)


 「神州の泉」


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