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北朝鮮で考えた(2)/田中 宇(2012年5月11日)
http://www.asyura2.com/12/asia14/msg/105.html
投稿者 仁王像 日時 2012 年 5 月 12 日 22:50:41: jdZgmZ21Prm8E
 

  
北朝鮮で考えた(2)
2012年5月11日  田中 宇
http://www.tanakanews.com/120511korea.htm
この記事は「北朝鮮で考えた(1)」の続きです

 北朝鮮は冷戦終結後、ソ連(ロシア)からの支援が切れてひどい経済難に陥った後、1994年から2000年まで、米国と締結した核問題の枠組み合意に基づき、北朝鮮が核(原子力)の開発を放棄する代わりに、北朝鮮が原発を建設して発電する予定だった分の電力を火力発電で得られるよう、米国が北朝鮮に原油を供給していた。北朝鮮は国連機関を通じ、飢饉に対する人道支援として食糧も得た。01年にブッシュ政権になった米国は、北朝鮮への敵視を強めて原油供給を打ち切ったが、同時に米国は北朝鮮が起こす問題の解決を中国に押しつけ、中国に6カ国協議を主催させた。(北朝鮮6カ国合意の深層)

 米国に代わって中国が北朝鮮に原油や食糧を支援するようになり、金正日総書記が何度も中国を訪問し、北朝鮮は中国に最大の敬意を表した。北朝鮮は02年7月に、自由市場への規制を緩和し、社会主義の計画経済を後退する「7・1措置」を発表した。日米などの分析者の多くが、北朝鮮も中国式の市場経済政策を導入すると考えた。張成沢と金敬姫という妹夫妻が政権中枢で軽工業主導の経済強化策を担当しつつ、金正日に連れられて中国を訪問するようになり、昨年末に金正日が死去した後、妹夫妻は金正恩の折衝役として北朝鮮の経済運営を担っている。このような流れをふまえ、私はこれまで、北朝鮮が中国の勧めに従って社会主義経済を放棄し、中国式の市場経済策(改革開放)を進めていると考えてきた。(北朝鮮の中国属国化で転換する東アジア安保)

 だが今回、平壌で、私が参加した訪朝団との会談に応じた社会科学者協会や金日成総合大学の経済や法律などの学者たちは、この話になると、全員が「市場経済政策は導入していない」「苦難の行軍から脱し、計画経済政策に基づき、配給できる品目を増やしている」「中国から市場経済策の導入を求められていない。中国には中国の、わが国にはわが国のやり方がある」といった話しをした。

 計画経済には、配給所を通じた配給と、国営商店を通じた超安価の公定価格による販売しか存在しないが、平壌には「統一通り市場」など、個人が店を出して市場価格で商品を売れる自由市場が存在する(訪朝団として見学を希望したが実現しなかった)。北朝鮮政府は、自由な市場活動を容認しているが、北朝鮮の学者たちは「国家の生産力は向上しているが、まだ国家が人民に物資を十分に供給できないため、過渡的に市場の存在を許している。生産力が増え、配給が万全になれば、市場は縮小するだろう」と説明した。

 中国など、今や建前だけ社会主義の国々も、公式論では「市場経済は過渡的な措置」という理屈を言っているが、中国はすでに配給をやめて久しい。「過渡的な措置」は、建前のみの全くの空論だ。対照的に北朝鮮は、冷戦後の苦難の時代から脱して経済が上向くと、すぐに実際の配給を再拡大しようとしている。19品目の最も基礎的な食糧や衣料品の配給すら、なかなか万全になっていないが、今の世界で、社会主義の計画経済を本気で強化しようとしている国は、北朝鮮だけだ。これは日本で一般的に、とんでもなく間抜けなことと考えられているが、私は北朝鮮のこの強情さに驚いた。

(中国は78年から市場経済を導入し、ベトナムも中国の成功を見て85年にドイモイを開始し、カンボジアとラオスも追随した。ミャンマーやベネズエラも国家統制型の市場経済だ。キューバは近くに敵を必要とする米国に制裁され続け、最近になって市場経済を導入した)

▼中国への面従腹背

 私は今回訪問しなかったが、北朝鮮と中国は、国境を流れる鴨緑江にある威化島(イファド)と黄金坪島(ファングンピョンド)という北朝鮮領の2つの中州を、中国企業が工場を作って北朝鮮の人々を工員に雇う国際工業団地にすることを決め、昨年5月に張成沢ら中朝の政府要人も参加し、起工式を大々的に行っている。工業団地の開発は中国企業が行い、中国側は鴨緑江の橋も建設した。中国が80年代以降、香港に隣接する深センを工業団地として開発し、生産技術や工場運営のノウハウを体得し、市場経済策を成功させたように、中国は威化島などの工業団地を通じて北朝鮮に市場経済を浸透させようとしたのだろう。

 しかし昨年5月の起工式後、工業団地に工場が建ったという情報は全くない。起工式の会場を作るために搬入された建設機械が、式の直後に撤去されたとする報道もある。平壌の学者は威化島などの現状について「中国側と交渉を続けている段階で、計画自体は進んでいる」と説明していたが、北朝鮮側が市場経済を導入したくないなら、工員の雇用契約などの面で中国側の提案を拒否し、交渉が長引いて工場の建設に入れないとしても不思議でない。(中朝経済協力地域の黄金坪、開発の動き見られず)

 北朝鮮は、中国から原油や食糧を支援してもらっている手前、表向き中国が求める市場経済の導入に賛成する態度をとり、工業団地の起工式までやったものの、実際のところ中国に対して面従腹背で、市場経済の導入を拒んでいる。中国は北朝鮮を傘下に入れ、従属させたがっているが、北朝鮮は援助だけもらう一方で、突っ張って自国のやり方を押し通している。

 政治的な理屈性で見ると、北朝鮮は中国に対して強みを持っている。本来、社会主義国ならば、資本主義的な現象である市場経済の存在をできるだけ否定し、計画経済の維持発展に努力するのが正統な姿勢だ。この観点から見ると、中国は正しくなく、北朝鮮が正しいことになる。だから中国は、施す側でありながら、施される側の北朝鮮に強いことを言えず、北朝鮮が「中国には中国のやり方があるのは存じておりますが、わが国は社会主義の正統を守りたく存じます」と言えば、正面からの反論ができない。北朝鮮が自国を「政治強国」と自賛するのは、こうした点があるからだろう。

 そもそも中国が市場経済を導入したのは、毛沢東の時代に計画経済を導入して飢饉や生産力の低下などの失敗を引き起こし、挙げ句の果てに毛沢東が文化大革命を起こして政治と社会も大混乱させ、実質的に中国の社会主義が失敗した後だった。中国は文革後、社会主義政策が挫折した状況だったので、毛沢東の死後に権力をとったトウ小平が、市場経済政策を導入しやすかったといえる。加えて、中国が市場経済策を導入したのは、米中国交が正常化したのと同時期で、中国は、資本主義陣営の覇権国である米国の祝福を受けつつ、自国経済を市場化(資本主義化)した。

 中国が国内政策の挫折を経験して社会主義計画政策をあきらめ、米国に祝福されて市場経済政策に転換したのと対照的に、北朝鮮は冷戦後、94年の米朝枠組み合意など例外がありつつも、米中露など国際社会から「潰れてしまえ」と見放された状態の中で、建国以来最も苦しい90年代を何とか自力で乗り切り、国内的な挫折を経験せず、00年以降に経済がしだいに楽になってきている。挫折後に市場経済策を導入した中国から「貴国もどうですか」と勧められても、北朝鮮はいんぎんな姿勢をとりつつ内心で「わが国は挫折してませんよ」と思っているだろう。

▼開城のピンハネも社会主義の一部

 北朝鮮は、韓国とも合弁で38度線の近くに「開城工業団地」を作っており、こちらは今回の訪朝で見学できた(15人ほどで訪れたが、これだけの人数の日本人が開城工業団地を見学したのは初めてだと言われた)。工業団地は南北合同の委員会で運営され、私たちは金浩平・副委員長(韓国人)に話を聞いた。彼によると、操業している工場のほとんどは韓国企業で、全体で約5万人の北朝鮮の工員が働いているが、工員の給料は企業から各工員に個別に支払われるのでなく、まず北朝鮮当局に渡され、北朝鮮の当局が各工員に支払っている。

 私ら訪朝団の学者から「北朝鮮当局は、給料の一部を当局の取り分(ピンハネ)にして、残りを工員に渡していると報じられたが、事実か」と質問されると、金氏はそれを事実と認めた上で「資本主義諸国で個人が支払っている年金や医療費、家賃や教育費などを、北側の政府は無料で人々に提供しているので、その分を北側の政府が工員の給料から差し引くのは当然と考える」という趣旨の答えをした。北朝鮮政府が工員の給料の何割を政府の取り分にしているか、韓国側が知らされていないと彼は言っていた。

(金氏は経済専門家でなく、東京の韓国大使館にも駐在したことがある外交官だという。情報を出さない北朝鮮側と接するには、目的が工業団地の運営であっても、生産効率を引き上げる経済専門家よりも、対立を緩和しつつ秘密を取ってくる外交官の方が適しているのだろう)

 開城の状況から感じ取れることも、北朝鮮政府が、個々の人々が工場と契約して勝手に稼ぐことを認めず、人々が労働で得たものをいったん全て国家に入れさせ、国家が各個人に必要なだけ再配分する社会主義計画経済にこだわっている点だ。資本主義の価値観で「国家によるピンハネ」が、社会主義の価値観では「国家の役割として当然のこと」になる。

▼いったん中国式を取り入れたが・・・

 北朝鮮政府は、ずっと計画経済策を堅持していたわけでなく、2002年に計画経済を退潮させ、市場経済に移行しようとした。ソ連からの経済支援を失った北朝鮮政府は、1993年ごろから人々への配給ができなくなり、96−99年に60万人といわれる餓死者を出した。計画経済の体制が崩壊し、食糧難の中、食糧を市場価格で売る自由市場が出現し、そこで食糧を買える人だけが生きながらえた。

 その後、中国が北朝鮮を支援し始めるなど「苦難の行軍」から脱する方向に事態が動き出した00年から、北朝鮮政府は、自由市場の存在を認め、計画経済策から公式に離れ、中国式の市場経済策を導入することを検討した。その結果が02年7月の7・1措置で、これは「生活費」と呼ばれている人々の給料を、人々が自由市場でコメを十分に買える額にまで引き上げる、価格体系の見直しだった。人々の月給(生活費)は、それまでの50−100ウォンから、2000−6000ウォンに引き上げられた(現在も同水準)。当時、自由市場でコメが1キロ50ウォンだったから、人々はそれまで毎月1−2キロしかコメを買えなかったが、給料の引き上げによって、月に40−120キロのコメが買えるようになると、北朝鮮の上層部は考えた。

 しかし、この政策は大失敗した。食糧難でコメの供給が足りないのに、紙幣を刷って給料だけ大幅に引き上げたため、インフレがひどくなってコメの価格が急騰した。韓国在住のロシア人研究者がアジアタイムスに書いた記事によると、コメは1キロ3000ウォンまで値上がりし、結局人々は、政府からの給料(生活費)だけだと毎月1−2キロのコメしか買えない状態だった。(80年代まで計画経済の食糧などの配給が機能していた時代、公的給料は文房具や映画の券などを買うための「お小遣い」としての意味合いがあった)(North Korea redefines 'minimum' wage)

 このひどい失策の後、北朝鮮政府は、市場経済策を導入する前に、農業や軽工業の生産を増やして食糧や生活必需品の供給を十分にせねばならないと悟り、いったん計画経済策を再導入し、人々が最低限の生活を維持できる配給制度を取り戻す必要を痛感したに違いない。北朝鮮が計画経済を再導入した背景には、社会主義にこだわる政治的な建前と別に、市場経済の導入に失敗し、いったん以前の計画経済に戻らねばならなかった経緯がある。

 今の北朝鮮政府は、配給制の計画経済策にこだわっているが、前出のアジアタイムス記事によると、配給を受けている人は北朝鮮国民の35%ほどだという。これは、90年代に配給を受けていた人が全体の10%ほどと推測されているのに比べると増えているが、まだ平壌市民を中心とする国民の一部にしか配給が行き渡っていないことがうかがえる(北朝鮮の人口2300万人のうち320万人が平壌市民)。配給を受けず、市場価格で食糧や日用品を買うと、3−4人の家族で最低毎月5万ウォンは必要とされている。この額は、市場の為替レートで1000円ほどになる。私たちが平壌で訪れた中朝合弁市場では、従業員の月給が多いときで15万ウォンだと聞いた。

 市場経済策を導入しようとした02年の価格改定は失敗し、07年ごろから北朝鮮政府は配給制の再強化へと再転換した。だが、こうした政策的な転換と関係ない現実面で、自由市場は北朝鮮に浸透し、それによってここ数年、少なくとも平壌での人々の暮らしが向上している。国営工場など多くの政府機関が、計画経済に基づく生産とは別に、自由市場で売るための商品やサービスを生産し、配給や公的給料(生活費)とは別の所得を従業員に与え、人々はそれで生活しているようだ。

 北朝鮮では近年、エジプトの電話会社が運営する携帯電話が、平壌を中心に普及している(通信先は国内のみだが、通話とショートメールができる)。携帯電話は2万円ほどで売られているというが、平壌の中心街を歩くと、意外に多くの市民が歩きながら通話している。北朝鮮全体で100万台の携帯電話があり、多くが平壌で使われているという。入学祝いに親族から携帯電話をプレゼントされる大学生が多いとも聞いた。価格的に見て、自由市場の恩恵を受けている人しか携帯電話を持てないはずだが、その割合は「ごく一部の金持ち」ではなく、もう少し広い。

▼団結する北朝鮮は内部分裂する韓国より強い

 計画経済政策と市場経済政策を比べると、市場経済の方が「金持ちになりたい」という個人の願望に基づくやる気を引き出すので、政治宣伝によって人々のやる気を鼓舞する計画経済よりも、はるかに成功しやすい。その面では、北朝鮮の計画経済の再導入はなかなかうまくいかないだろう。だが同時に、北朝鮮の国営企業は計画経済の外で市場経済的に儲けることを上から黙認されており、国家は国営企業が私的に儲けたお金の一部を上納させ、その資金で配給を増やすことができる。北朝鮮政府は、建前論では市場経済を潰して計画経済にするのだと言っているが、実際には市場経済を黙認してその儲けを国家が吸い上げ、計画経済用の資金にしているようだ。

 政府が配給を充実させるには、原油をすべて中国から無償提供されてもなお、原材料や工作機械、肥料の一部などを外国から買ってこねばならず、外貨が必要だ。だが北朝鮮は今、鉱物資源や魚介類ぐらいしか輸出できるものがない。配給制を充実するには、輸出して売れる工業製品を国営企業に作らせる必要がある。北朝鮮は今、配給という内需のために計画経済を回しているが、輸出を増やして外貨収入を増やさないと配給制を充実できない。

 北朝鮮は「国際社会」から経済制裁されており、日米欧との貿易ができない。だが、中国や他の発展途上諸国は、日米欧よりも北朝鮮に対して寛容だ。今後、世界経済の重心が日米欧から中国やBRICS、発展途上諸国に移っていく流れが続きそうなので、経済制裁の悪影響は減っていくだろう。

 開城工業団地の韓国企業によると、北朝鮮の工員は勤勉で教育水準も高く、生産性が良い。北朝鮮政府がうまくやれば、いずれ開城工業団地の韓国側に嫌がられつつ工員の給料をピンハネしなくても、自国の国営企業に輸出製品を作らせることができるようになる。ただし、02年の7・1措置の失敗に見られるように、北朝鮮の再上層部が「人民の給料を上げれば経済難が解決する」といった素人的な考えの政策を続けていると、うまくいかない。金正日はその後、経済運営を自分でやらず、テクノクラートの張成沢ら妹夫妻に任せたが、これが失敗から学んだ教訓だったのかもしれない。

 配給制がうまくいくと、北朝鮮は、市場で儲ける才覚のない大半の人々にある程度の生活ができる必需品の配給を保障する一方、儲ける才覚のある人は自由市場で儲けるという、混合型の経済になるのでないか。金正日は、自国をスウェーデンのような高福祉国家にしたいと言っていたとされるが、その意味するところは、才覚のない者も配給によって生活苦に陥らずにすむ国ということだろう。

 半面、北朝鮮政府が下手な経済運営を続け、配給制の充実が遅々として進まない場合、北朝鮮政府は09年末にやったデノミのように、自由市場で儲けた人々の富を無効にしたり、横取りする行為によって、配給の拡大を図らねばならない。北朝鮮は政治的な締め付けが非常に厳しいし、貧しい大半の人々は市場で儲ける人々の富が政府に吸い上げられた方が良いと思っているだろうから、市場の富を国家が横取りしても政権崩壊にはつながりにくいが、北朝鮮経済はなかなか良くならない。

 すでに述べたように計画経済体制は、市場経済体制より、経済効率の面で劣っている。だが、北朝鮮が今の独裁体制を維持するという政治的な目的から見ると、計画経済体制は非常に強い。計画経済の体制下では、人々が国家からの配給に頼って生きており、国家の権力者が人々の生殺与奪の権限を握っている。北朝鮮では自由市場が存在を黙認されているだけで、権利を制限され、いつでも弾圧されうる。

 このような状況下では、自由市場が大手を振って保障されている中国や資本主義国に比べ、国家のプロパガンダが効きやすいし、国家的な団結を維持しやすい。北朝鮮は、外国人の自由な旅行を禁じているし、住民が外国に行ったり、外国の情報に接することも禁じる一方、住民の団結を鼓舞する政策、勉強会や反省会の実施、指導者に対する個人崇拝の奨励などを熱心に続けている。これは、日本などのカルト的な新興宗教が信者に対してやっていることに良く似ている。配給制の計画経済も、住民の国家に対する忠誠心を涵養する効果があり、カルト的な政策の一つといえる。北朝鮮は、カルト式の政策によって世界で最も住民を結束させている国の一つだ。

 中国も毛沢東の時代まで、カルト的な国家政策をやっていた。だが中国は広大で多様なうえ、大昔から「帝力いずくんぞ我にあらんや」的な個人主義が強く、カルト的な団結策がなかなかうまく行かない。毛沢東は最終的に、中国国内の多様性を破壊する文化大革命をやって失敗し、逆に中国を弱体化させてしまった。中国には、スローガンで鼓舞する計画経済より、金で釣って人々にやる気を出させる市場経済の方が適合している。これと対照的に、北朝鮮と韓国は、単一性の強い粘着気質の民族で、伝統的に結束も強く、カルト的な政策が効果的だ。

 韓国も精神主義で頑張る傾向が強いが、強烈な独裁制を維持する北朝鮮と対照的に、右派と左派、慶尚道と全羅道の政治対立が常に激しく、国内が政治的に分裂している。こうした南北の違いがそのまま続き、米国の財政難がひどくなって在韓米軍が撤退し、中国主導の6カ国協議がある程度の成果を得て、中国の仲介のもとに北朝鮮と韓国が和解を進めて連邦制の新たな政治体制を組んだ場合、カルト的に団結している北朝鮮が、内部分裂傾向の強い韓国の内政を食い荒らし、北朝鮮の方が政治的に優勢になる可能性がある。そのような状況になったら、そのころには米国の後ろ盾を失っているであろう韓国も、北朝鮮への対抗上、対米従属に便利だった左右や地方間の国内政治対立を乗り越え、プーチンのロシアのような、強権的な大統領が率いる全体主義のにおいのする政治体制に転換していくかもしれない。

 とはいえ、北朝鮮にも大きな弱みがある。それは、カルト的な団結を維持するために、外国からの情報や人が国内に自由に入ってこないよう、鎖国的な状態を続ける必要がある点だ。南北が和解したら、南北間など、北朝鮮と外国との往来や情報流通の自由化も行われるはずだが、それは北朝鮮のカルト式の政治団結を破壊する。カルト式の団結には「外の強敵」がいると便利であり、従来はその役割を米韓が担っていたが、6カ国協議が進展すると、北朝鮮と米韓の緊張も緩和され、強敵がいなくなってしまう。

 また、北朝鮮が団結を維持するには、配給制の計画経済を輸出ができるぐらいまで十分に進める必要があるが、そのためには多分5−10年の時間がかかる。北朝鮮にとっては、その間、南北和解や6カ国協議の進展を許さない方が得策だ。韓国では今年末に大統領選挙があり、来年からの新政権が北朝鮮に対する融和策に転じる可能性が高い。米国も、財政再建の一環として在韓米軍の縮小を望む声が政界にあり、オバマが再選されたら朝鮮半島の緊張緩和を進める政策を強めるかもしれない。中国も、早く朝鮮半島を安定化したい。

 このように来年以降、米中韓が朝鮮半島の緊張緩和を望む姿勢を強めそうな中で、北朝鮮も表向きは緊張緩和を望む姿勢だが、実は融和を遅らせて時間稼ぎしたいだろう。そのような目で、最近の北朝鮮が「国際社会」の警告を押し切って衛星ロケットを発射したり、核実験の準備をしていると報じられているのを見ると、これは北朝鮮が国内経済を立て直して政治的団結力を強めるため、和平の進展を遅らせて自国の日程に合わせるための時間稼ぎかもしれないと思えてくる。
 

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