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老人たちに左右されながら多難な道を進む習近平政権 本当に「対日強硬派」なのか?
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 21 日 00:34:21: cT5Wxjlo3Xe3.
 

老人たちに左右されながら多難な道を進む習近平政権

本当に「対日強硬派」なのか?

2012年11月21日(水)  福島 香織

 先日、友人でニューヨーク在住の亡命華人政治評論家の陳破空氏が日本に来ていた。天安門事件当時、民主化活動を組織したとして、その後、投獄され、4年にわたり労働改造所で強制労働に従事し、1996年、アムネスティ・インターナショナルの働きかけで釈放、米国に亡命。今ではニューヨークで語学学校を校長として運営しながら、マスメディアで言論活動を続けている。

 今回の来日は第18回党大会で習近平政権ができたタイミングであったので、さっそく新政権についての論評を聞かせてもらった。

 すると、彼は開口一番、日本のマスメディアの多くは習近平総書記についての理解が間違っていると言い始めた。日本のメディアも実のところ習氏がどのような人物であるか見定めているわけではないと思うが、習氏が保守派で対日強硬派である、という解釈が多いように見受けられる。

 それについて、彼は、「習氏は実は改革派で、対日強硬派というわけでもない」と主張する。根拠は習氏の父親、習仲勲氏が開明的、良心的な政治家であり、開明派で親日派としても知られる政治家・胡耀邦氏とも仲が良かったから、という。中国では、父親の性格や家庭環境が子供の人格形成に大いに影響を与えるので、習近平氏も開明派だ、という理屈である。

 実は習氏が開明派、改革派だと主張するのは陳氏だけではなく、何人かの中国人評論家や記者から同様の人物評を聞いた。もっとも胡錦濤政権が誕生したときも、胡錦濤氏が開明派で改革派であるという期待が在外華人から起きている。新政権誕生のときはそういう期待が盛り上がるもの。そういう見方もあることを含めて、第18期の政権の行方を考えてみたい。

胡錦濤派が惨敗とは言えない

 新政権の顔ぶれを今一度、紹介しよう。いわゆる党中央最高指導部となる中国共産党中央政治局常務委員は9人から7人になり、次のメンバーが選ばれた(数字は序列)。

【1】習近平(総書記、国家主席、太子党・上海閥)
【2】李克強(首相予定、団派・胡錦濤派)
【3】張徳江(全人代常務委員長予定、上海閥)
【4】兪正声(全国政治協商委員会主席、太子党・上海閥)
【5】劉雲山(中央書記処常務書記、中央党校長 団派だが保守)
【6】王岐山(中央紀律委員会書記、太子党・中間派)
【7】張高麗(常務副首相予定、上海閥)

 政治局委員は以下の通り。

李源潮(国家副主席予定、中央港澳工作協調小組組長、団派・胡錦濤派)
孟建柱(中央政法委員会書記、上海閥)
趙楽際(中央組織部部長、胡錦濤派?)
劉奇葆(中央宣伝部部長、団派・胡錦濤派)
李建国(全人代常務委委員会副委員長予定)
栗戦書(中央弁公庁主任、団派・習近平派)
劉延東(副首相予定、農業、林業、水利等担当予定、太子党・団派・胡錦濤派)
汪洋(副首相予定、工業、通信、エネルギー、交通等担当、団派・胡錦濤派)
馬凱(副首相予定、金融、商貿担当、団派・胡錦濤派)
王滬寧(国務委員予定、科学教育文化衛生等担当、団派)
郭金竜(北京市委書記、団派・胡錦濤派)
韓正(上海市委書記、上海閥)
孫春蘭(天津市委書記、胡錦濤派)
孫政才(重慶市委書記、胡錦濤派?)
胡春華(広東省委書記、団派・胡錦濤派)
張春賢(新疆自治区党委書記、団派・胡錦濤派)
范長龍(中央軍事委員会副主席、比較的胡錦濤派?)
許其亮(中央軍事委員会副主席、胡錦濤派)
 参考までに軍の中枢を担う中央軍事委員会のメンバーも挙げておこう。

主席: 習近平
副主席: 范長龍、許其亮
委員: 常万全(国防相予定、江沢民派)
房峰輝(総参謀部長、胡錦濤派)
張陽(総政治部主任、胡錦濤派)
趙克石(総後勤部部長、習近平派)
張又侠(総装備部長、習近平派)
呉勝利(海軍司令、江沢民・習近平派)
馬暁天(空軍司令、胡錦濤派)
魏鳳和(戦略ミサイル部隊司令、胡錦濤派)
 団派とは、共産主義青年団(共産党若手エリート育成機関)出身グループで、一般に胡錦濤派が多く、開明派が多いとされるが、必ずしも胡錦濤派に属するとは限らない。太子党とはいわゆる二世議員グループで保守的、一般に江沢民、習近平寄りのグループとされるが、これも絶対という色分けではない。上海閥は江沢民氏を中心としたグループで太子党とかぶる部分もあるがこれもイコールではない。

 この人事結果から、一般的な日本メディアの解説では、政治局常務委のメンバーは、保守的な上海閥(江沢民派)が多く、これは胡錦濤氏が権力闘争に惨敗した結果である、とみられている。特に胡錦濤派の李源潮氏、若手ホープの汪洋氏という改革派開明派の政治家が2人とも常務委入りを逃したのは、胡錦濤氏の力が及ばなかったため、と見ている。

 ただ、政治局の人事までを視野にいれると、団派・胡錦濤派が躍進しており、軍事委の人事に至っては胡錦濤派が過半数を占め、しかも副主席2人と、四大総部のうち実権派の総参謀部、総政治部トップがともに胡錦濤派。全体から見ればさほど惨敗人事とは言えないだろう。

長老政治・院政の終焉?

 今回の党大会の最大の注目点は、胡錦濤氏の完全引退、つまり総書記と軍事委主席のポストを同時に引退したことだと言われている。軍事委主席はケ小平体制において最高の権力ポストであり、ケ小平氏は中央委員を引退したのちもこのポストに2年とどまり事実上の最高実力者の地位を維持した。江沢民氏は総書記を引退した際、ケ小平の例に倣い、軍事委主席に2年留任し、江沢民VS胡錦濤の権力闘争の構図が続くことになった。

 当初、胡錦濤氏もこの軍事委主席に留任すると見られていたが、本人の希望で引退した。この引退理由については諸説あるが、1つには胡錦濤氏の健康上の理由がある。糖尿病、腎臓疾患がかなり悪化しており、留任しても半年、1年程度が限度であると見られていた。その程度しか留任できないのであれば、潔く引退し、習近平氏に恩を着せ、バーターで軍事委人事を有利に進めた方が影響力を維持できるという判断があったと言われている。

 もう1つは、依然強い江沢民氏の影響力を排除するため、自分も完全引退する代わりに江沢民氏も政治から完全に手を退くことを了承させた、というもの。その背景には胡錦濤・習近平両氏の同盟的な連携があったという見立てもある。このことから、今回の党大会の成果として、長老政治・院政の終焉をあげる人もいる。

 さて陳破空氏の分析を聞いてみよう。「まず、政治局常務委の人事は、江沢民氏の権力闘争の勝利の結果だ」という。「胡錦濤氏の完全引退で長老政治は終焉したが、今回の政治局常務委人事は長老政治の産物。習近平・李克強体制は実は改革志向だが、他の高齢の5人は保守派であり、習・李の改革志向を監視する役割を果たしている」

 このため、習政権は少なくとも最初の5年、政治改革はあり得ない。よって、格差や民族問題など中国が直面している矛盾は緩和される望みは全くない。政治局には汪洋氏ら改革派が控えており5年後の2期目に、改革派が政治局常務委に上がってくれば望みがなくもないが、習氏は健康状態がかんばしくないので、そこまでの気力があるかが問題だ、という。

 宣伝・思想統制担当の劉雲山氏が常務委入りしたことで言論・報道・ネット統制は依然暗黒時代が続く。官僚腐敗取り締まりも、紀律検査委書記が「八方美人」的性格の王岐山氏では期待できない。ちなみに王氏は本来金融・経済分野を得意とするが、経済担当の副首相に任命すると、首相となる李克強氏との不協和音が予想されるのではずされた。

 陳氏は、経済路線についてはケ小平路線継続とみている。習氏の父・習仲勲氏が深圳経済特区を作るなど、改革開放路線の主要な担い手であることからの推測だろう。

 陳氏によれば、習氏は対日強硬のイメージがあるが必ずしも根っからはそうではないらしい。対日強硬姿勢は、いわゆる権力闘争の中で軍部と世論を味方につけるためにエスカレートしていくものであり、とりあえず党大会が終わり、権力闘争はしばし小休止に入るので、反日温度も降下していくはず、と見る。

党中央の分裂をまず避けた

 さて、私の見解(勝手な妄想を含む)も示しておこう。

 まず、今回の人事については、江沢民氏の勝利、というより胡錦濤氏、習近平氏、江沢民氏ら長老たちの妥協の産物であり、「目立つ人材を指導部に入れない」という点で妥協が成立したのではないか。

 政治局常務委は上海閥が多いとはいえ、張徳江氏、張高麗氏は胡錦濤氏と関係が悪いわけではない。王岐山氏も八方美人。習近平氏自身が、父親の文化大革命時代の失脚の苦労を目の当たりにし、権力闘争の怖さを身にしみているだけに、目立つことを避け、周囲との調和を重んじるタイプだと言われている。李克強氏も強い主張をするタイプではない。

 薄煕来事件によって、野心のある、あるいは主義主張があり大衆を動員する可能性のあるような政治家を恐れた結果、汪洋氏や実務能力が高いと評価されていた李源潮氏が常務委入りを逃したのではないか。李源潮氏は天安門事件当時の中央批判発言が長老の李鵬氏から問題視されたと伝わっている。中国共産党体制の足元が揺らいでいる中、イデオロギーや路線対立で党中央が分裂することをまず避けた。政治局常務委を9人から7人に減らしたのも、人数が少ない方が意見の対立も少ないから。中央政法委員会書記を常務委から外し降格したのは、周永康・前中央政法委書記の権力の肥大化を目の当たりにし恐れたから、ではないか。

 次に「長老政治の終焉」というのも疑問が残る。常務委に江沢民氏の声を代弁する人間が多く残り、軍事委にも胡錦濤氏の影響力を伝える勢力が多く残っている。習近平氏が年寄り連中の言うことに耳を貸さずに独断で物事を進めることができるだろうか。長老政治というのは中国共産党体制の権力闘争の本質の部分でもある。香港紙の蘋果日報は「民衆が選挙権を得るようになって初めて長老政治が終焉する」と指摘している。

 経済失速、格差拡大、官僚腐敗、インフレ、民族問題といった国内矛盾、共産党の求心力低下といった問題に直面する中でまず、意見対立を避け、党中央の団結を図った人事と言える。習近平政権は、胡錦濤時代以上に年寄り連中の意見を聞きながら、右によったり左によったりバランスをとり、のろのろ安全運転をして、前途に現れる障害物を避けていくしかない。

 しかし、それでは問題の根本的解決にはならない。いずれ事故を起こすか、袋小路に迷い込むか。そうして厳しい批判にさらされる習政権を見て、次の党大会に向けた改革派を含む政治暗闘は予想より早く始まるかもしれない。その時、習近平氏が軍部の人気とりや世論誘導に「反日」や「尖閣」を再び利用するかもしれない。こういう予想は外れてくれることを祈るが、日本はいろんな予測をもって心の準備をしていた方がいいに違いない。


福島 香織(ふくしま・かおり)
ジャーナリスト

 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002〜08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。著書に『潜入ルポ 中国の女―エイズ売春婦から大富豪まで』(文藝春秋)、『中国のマスゴミ―ジャーナリズムの挫折と目覚め』(扶桑社新書)、『危ない中国 点撃!』(産経新聞出版刊)、『中国のマスゴミ』(扶桑社新書)など。


中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121119/239573/?ST=print  

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