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中国社会科学院 海外逃亡の高級官僚1万8000人に上ると推計 (SAPIO) 
http://www.asyura2.com/12/china3/msg/510.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 03 日 07:29:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130603-00000009-pseven-cn
SAPIO 2013年6月号


 600万人とも1000万人とも言われる中国の公務員。その1割以上にあたる高級官僚たちが、真っ先に逃亡の準備を始めている。拓殖大学海外事情研究所付属華僑研究センター長の澁谷司氏が解説する。

 * * *

 中国共産党幹部や政府高官が海外逃亡を企てるケースが近年増えている。明らかになったものだけでも、例えば2009年、広東省中国人民政治協商会議主席(当時)の陳紹基が腐敗などの党紀違反に問われ、役職も党籍も剥奪された後、関係の深かった高官約150世帯が海外へ逃亡したと言われている。

 少し遡るが、2003年には当時、浙江省温州市副市長だった楊秀珠が娘や娘婿らと上海空港を飛び立ち、シンガポール経由でアメリカへ逃亡した。楊は約2億5000万元(約40億円)にものぼる収賄の疑いをかけられていた。2005年にオランダで拘束された楊は、その後中国側に引き渡された。

 中国社会科学院の研究によると、海外に逃亡した中国高官の数は1990年代以降、1万6000〜1万8000人にのぼる。中国の統計は正確ではないため、この数字も根拠ははっきりしないが、実際の逃亡人数はもっと多いと私はみている。さらに言えば、これから逃亡する高級官僚はどんどん増えるだろう。

 

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コメント
 
01. 2013年6月04日 07:00:57 : bR6HtcMLCU
 国家主席の学歴詐欺が表面化している。
何でもありだな。

02. 2013年6月07日 08:55:30 : e9xeV93vFQ
【第127回】 2013年6月7日 姫田小夏 [ジャーナリスト]
農地集約のインセンティブは「豪邸」
農業の大規模化で崩壊する中国の農村
 かつて農業大国と言われた中国だったが、現在、中国で進んでいるのは“農村の崩壊”だ。13億人の人口を抱える中国が、耕地の不足と食糧生産の不足にさらされていることは、中国が抱える最大の問題のひとつである。

 一方で、着々と進んでいるのが、“農業の大規模化”である。農業の担い手にまとまった土地を提供するという農地集約は、日本と共通する課題でもある。日中の農業は、農地面積や生産規模、あるいは生産コストの違いこそあれ、農業人口の高齢化や担い手不足、また小規模な農家経営など、類似点も少なくない。今回は中国の農業の今をクローズアップする。

土地は私有から公有、さらに占有へ
共産党支配下の中国農業の歩み

 まずは簡単に中国農業について、土地の権利関係という角度から見てみてみよう。中国の農業は1949年、建国当初の『土地改革法』により、地主階級が土地を支配する封建的土地所有制から、農民による土地の所有制に変わった。これにより、農民は土地を得るのみならず、「自由経営権、売買と賃貸の権利」を得ることができるようになった。

 1950年代中頃になると、農民による土地の所有制は「集団所有」に変わった。さらに1957〜1978年にかけて人民公社、生産大隊、農村生産小隊による「公有制」となることで、農民は“社員”として生産と労働を求められる一方で、私有する権利が消滅した。

 1978年、改革開放政策が幕開けすると、「集団による管理体制」の形態から、「各農家単位による生産および経営を管理」する形態となり、生産責任制のもとで土地の所有権と使用権が分離されることになる。

 その後、2008年に『新土地改革法』が制定された。土地と家屋は「村の経済組織による集団所有」としながら、生産経営権を完全にするかたちで、「土地に対する占有・使用・収益等の権利を農民に認める」ようになる。

 最近、筆者は江蘇省出身の友人から、中国農民の時代の変遷を物語るかのような、こんな笑い話を聞かされた。「江蘇省のある村で、“戸籍のない老人”が発見された」というのだ。

「村中大騒ぎだった。『なぜ今まで戸籍がないことを黙っていたのか』と聞かれた老人は、こう言った。『戸籍があれば税金を取られるから』。『それは建国前の封建時代の話じゃないか』と、村では大笑いさ」

 皮肉にもこの“無戸籍老人”が発見されたのは、今年、村民委員会が農民に手当を支給しようと、各農民に手続きを求めたときのことだった。時代も変わって、今では農民が手厚く保護されるようになったのだ。

 今では「農民戸籍こそステイタスなのだ」と言い切る中国人もいる。上海の企業に勤務する江西省出身の男性(38歳)は「都市戸籍になると、農村戸籍を手放さなければならない。都市戸籍になれば、社会保障体系も変わり“市民”になることができる。だが、農村戸籍は『新土地改革法』のお陰で、これから価値が上がるだろう。だから私はこのままでいい」と話す。

 他方、2011年末、農村から流出する農業労働力は2億5300万人にも達した。沿海部へは1億0790万人が、中国内陸へは1億4488万人が移動する一方で、2011年、中国のGDPに占める農業生産の割合は10.12%と、歴史上最低点に達した。迷わず農村戸籍を捨ててきたのがその歴史であり、そこには依然として「都市と農村の収入格差」が存在していた。

荒廃する地方の農村と
進む大規模農業

 今、農村はどうなっているのか。筆者は上海で複数の農村出身者から話を聞いたが、誰もがその農村の荒廃を嘆いていた。

 中国の農村は、今や空き家だらけだという。そこには若者の姿がないどころか、村長がいないところすらあるとも。農業従事者の平均年齢は50歳以上、高齢化する農村では稲作は難しく、比較的手入れの楽な小麦などを作るしかない。

 中国では、かねて存在していた「農民の貧困」という問題に加え、高齢化と担い手不足が大問題になっている。食糧生産の基盤は徐々にむしばまれていく。同時に、農地の建設用地への転用が進行し、昨今「18億ムー(約120万平方キロメートル。中国の国土面積の約8分の1、日本の国土面積の3倍強)の耕地は何としても死守」が声高に叫ばれるようになった。

 上述した、農民の土地に対する占有、使用、収益等の権利を認めた『新土地改革法』は、農地のマンション建設用地化を促す一方で、荒廃した農家の土地や空き家の権利を国が買い上げ、農業の大規模化を図るための布石でもある。

 今年、中央政府が経済政策の重点においた「城鎮化」(都市化のこと。詳しくは本連載『習近平新政権が指導する「都市化」政策で中国経済はまたもや“不動産頼み”の時代が始まる?』参照)は、まさにこれにつながるものであり、インフラを整備し産業を興し、雇用の機会を創出し、学校や病院などをつくり、農民をその土地における中心地に寄せ集めて住まわせるとした、いわゆる“ニュータウン”を中国全土に点在させるためのものである。

 しかし、これに対しては「少数による農業経営、すなわちそれは農民に農業をやらせないことをも意味する、それが城鎮化政策だ」、「生活の形態、仕事の形態がガラリと変わる。中国の農民がそれについて行けるだけの能力があると思うか」など、否定的な意見も存在する。

250平米・5LDKの戸建ても
豪華住宅に住むいまどきの農民は

 さて、筆者は上海市郊外の、ある実験農場を尋ねた。虹橋空港から南北に走る中環状線を南下すること1時間半。幹線道路から少し奥まったところには、牧歌的な農村地帯が広がっていた。

 そこでは地味な農業が展開していた。その規模は「土いじり」の域を出ず、ナスやキュウリ、インゲンなどが無秩序に植えられているに過ぎない。北海道の帯広の大規模農場を目の当たりにしたばかりの筆者にとっては、この格差に愕然としないではいられなかった。


ひとり当たりの耕地面積は小さい Photo by Konatsu Himeda
 中国では農民1人当たりの耕地面積は1ムー(666平米)あるかないか、といわれ、あまりに少ない耕地面積であるため、“規模の農業”という効率が追求できないことが懸案となっている。しかもその1戸当たりの農地はあちこち点在し、1ヵ所に集約されていない。言い換えれば、ここが中国農業の改革の重点でもあるのだ。

 この村では、この改革が着々と進行していたのである。中国の農村の改革、それは他ならぬ「大規模農業化」にある。

 この村に足を踏み入れて驚かされたのが、農民たちが住んでいるその住宅だ。農民の住宅といえば、10年ほど前なら、レンガ造りの構造をコンクリートで固めた粗末なものだったが、今では3階建てのオシャレで豪華なタウンハウスに住んでいるのだ。その広さはなんと、延床面積250平米の5LDKだ。中国では一般市民が住むのはたいてい集合住宅だが、農民が立派な戸建てに住んでいることは、都心から見学に同行して来た中国人たちすら、少なからず驚かさせた。


いまどきの大都市郊外の農民は高級住宅に住まう Photo by Konatsu Himeda
「こんな家に住めるなら、私も農民になりたい!」

 筆者と一緒に現地を訪れた中国人の友人は、広々として贅沢なこの豪邸に、興奮を隠さなかった。

豪邸をエサに農地を集約
農業を放棄した農民たち

 そして驚きの2点目は、彼ら農民は“もはや農作業をしていない”という事実だった。

「うちは3ムー(約2000平米)の土地を農村委員会に借り上げてもらっている。1ムー当たり年間で1000元(約1万6000円)の収入になる」と、この豪邸の老主人は語る。3ムーなら年間3000元だが、「昼間は、近くのスーパーに働きに行っているんだ」とも打ち明ける。つまり、月収入もあるのだ。中国の農民は年間2000元の収入があればまずまずの生活できる、とも言われていることからも、彼らの暮らし向きは「上等」であることがわかる。

 しかも、元の耕地と豪邸を交換し、この豪邸に住まう過程で、本人は2万5000元(約40万円)の負担しかしていない。残りの費用は地元政府が負担する。大規模農業のための農地集約のインセンティブ、それは他ならぬ“中国人垂涎の的の高級住宅”を与えることなのだ。

 農地の区画整理をしながらも農民を「豪邸に住まわせ」富裕を味わわせることに、改革の妙味がある。富裕の道から取り残された農民に、夢を与えるのがこの集約作戦だというわけだ。

 しかし、この“延床面積250平米”を誇る自慢の3階建てタウンハウスにも、住人は2人しかいない。

「息子夫婦は子どもを連れて都市に出て行った」という。よりよい教育の機会を求め、不便な農村をひとたび後にすれば、若者は再び戻ってくることはない。

 この村に限らず、今や農業の担い手は、“外地打工”(外省からの出稼ぎ労働者)なのだ。村にはあちこちに娯楽施設としての“雀荘”が点在するが、この雀荘で余暇を利用してパイをかき回しているのは、他ならぬこの“打工”たちだ。高齢化した農家では、こうした出稼ぎ労働者を雇い、自分は悠々自適の生活を送る…。そんな光景が、この上海郊外ではスタンダードになりつつある。

 しかし、この光景に、筆者は一抹の不安を抱かずにはいられない。つい半年前に江蘇省の蘇州の街で見たのは、農地を国に売り渡し、等価交換によってそこに建てられたマンションを複数所有する農民たちの姿だった。政府からは経済的な補償を与えられ富裕となり、複数の住宅とクルマを所有する…というのが、現代の中国沿海部の農民たちだ。中には工場労働者に転じる農民もいるが、住宅の賃貸収入に満足して遊びほうける農民も少なくない。

 農民人口は中国の人口の6割を占める、と言われている。都市化率は50%を超えた。今後もそれは急速に進むだろう。だが、同時にそれは、土地を持たず、働かなくなる農民が増えることを意味する。土地を失った農民、勤労の意欲を失った農民、その先に果たして持続可能な農業はあるのだろうか。


03. 2013年6月07日 10:57:32 : e9xeV93vFQ
中国が抱く優越感と不平不満
2013年06月07日(Fri) Financial Times
(2013年6月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 1773年12月16日、アメリカ大陸の愛国主義者の一団が3隻の英国船に乗り込み、数百個の荷箱をボストン湾に投げ込んで紅茶を廃棄した。後にボストンティーパーティーとして知られるようになったこの反乱は、アメリカ革命の画期的な出来事だった。この革命は茶会事件の数年後、米国が植民地支配から抜け出した時に勝利を収めた。

 1839年の広東阿片パーティー(そう呼ばれたことは1度もないが)は、それほど勝ち誇った終わりは迎えなかった。清朝の欽差大臣を務めていた林則徐は、ビクトリア女王に手紙を書き、なぜ英国は中国人に「毒」を売ることにそれほど躍起になるのか尋ねた。返事が来ないと、林則徐は2万箱の阿片に火を付け、海に流すよう命じた。

 英国はこれに激怒して軍艦を送り込み、中国は屈辱的な南京条約に署名することを余儀なくされた。条約によって、中国は英国政府に賠償金を支払い、5つの「条約港」を開港し、香港島を割譲した。林則徐は追放の身となった。

2つの反乱がもたらした正反対の結果

 アメリカの反逆的行為が偉大な国家――そして2世紀に及ぶ楽観主義――を誕生させたのに対し、中国の反乱は、王朝の崩壊、日本の侵略、長期にわたる貧困の時代の到来を告げることになった。

 歴史というものは、敗者の方により大きくのしかかるものだ。6月7日に米国のバラク・オバマ大統領と会談する中国の習近平国家主席は、1世紀半以上に及ぶ屈辱の時代に醸成されてきた国民の期待を背負っている。

 同時に、中国が抱く明白な運命感は、米国のそれ以上に強い。確かに中国の方が米国より古く、半ば神話的な過去5000年間に及ぶ、途絶えることのなかった漢民族の歴史を通して広がっている。

 ぐつぐつと煮え立つ不平不満が、世界の序列における自国の支配的地位に対する確信と混ざり合うと、強い酒のような強烈な力になる。だが、中国が時として国際舞台で見せる自信満々の態度とは対照的に、中国政府は多くの意味で、今ほど無防備に感じたことはない。

 中国のことを、隣国をいじめたり、世界中から容赦なく資源を吸い上げたりすることを厭わない巨人と見るようになった多くの人にとっては、これは意外に思えるかもしれない。

 ニューヨーク・タイムズ紙は最近、『China's Silent Army(中国の沈黙の軍隊)』の著者であるヘリベルト・アラウージョ氏とフアン・パブロ・カルデナル氏の寄稿を掲載した。このコラムは、多くの発展途上国をその勢力圏に取り込んだり、圧倒したりすることに余念がない国家を描いている。

 ある中国企業は先週、スミスフィールド・フーズに47億ドルの買収案を提示し、大胆にも米国のベーコンとソーセージさえも平らげようとした。

世界の中国観と中国の世界観

 だが、北京から見た景色は、こうした状況が暗示するよりはるかに不安に満ちたもののようだ。

 第1に、中国にはほとんど友人がいない。中国は14の国に隣接しており、守るべき国境は2万2000キロに及ぶ。周囲を取り巻くのは、モンゴルや核武装したロシア、インド、北朝鮮など、中国と不安定な関係にある国々だ。対照的に、米国には隣接する国は2つしかなく、どちらも友好国だ。

 もっと悪いことに、中国は今、自国を前進させ続けるために、かつてないほど他国に依存している。1990年代半ばまでは、中国は多かれ少なかれ自給自足できていた。今は、それがなければ猛烈なスピードの発展を維持することも、人々の高まる野心を満たすこともできない石油、銅、鉄鉱石、大豆、その他多くのコモディティー(商品)を他国に依存している。

 オーストラリアの元駐中国大使ジェフ・レイビー氏は、昨年メルボルンのモナシュ大学で行った講演で次のように表現した。「中国は今、その歴史上初めて、自国経済を回し続けるために、あらゆるものを外国の市場と外国人に完全に依存している」

 清朝の乾隆帝が1793年に英国王ジョージ3世の特使が持参した陶磁器をあざ笑い、中国は外国のつまらないものに用はないと断じたことを思い出すといい。

 中国は、ほとんどそうと自覚することなく、ケ小平が1970年代後半に改革開放政策を打ち出した時に想像していた重商主義の大国から、今やリカルドの比較優位や国際分業の概念と深く結びついた国に変貌を遂げている。

 そのため中国は、レイビー氏の言葉を借りるなら、「非常に制約の多い国」になっている。対照的に米国は最も急速な発展を遂げていた時、人間を除けば、成長するために必要な資源をすべて持っていた。そして足りない人間については、自発的に欧州から、強制的にアフリカから連れてきた。

 最後に、習氏をはじめとした中国指導部は、対外問題よりも国内問題のことで頭がいっぱいだ。中国経済は、指導部が強力な利権と戦わねばならない、痛みを伴う変化を経験している。中国人がより豊かになる――あるいは周りの人たちが富を得るのを見る――につれ、彼らは単なる景気拡大に満足しなくなっているように見える。

 しばしば指摘されるように、中国政府は、国防費よりも国内の治安維持費に多くの資金を使っている。

 シドニーのローウィー国際政策研究所の安全保障専門家リンダ・ジェイコブソン氏は、中国の外交政策を「受け身」と評し、中国を台頭する大国と見なす世界の見方と、国内問題で頭がいっぱいの指導部との間に隔たりがあると指摘する。

強くなればなるほど不安を感じる国

 国内問題が積み上がり、諸外国への依存度が高まっているにもかかわらず、明らかに中国は自国の強さを感じ始めている。習氏は、中国と米国が「新しいタイプの大国関係」を築くことを提言している。これは内気な国の提案とはほど遠い。

 それでも、諸外国が中国のことを強大で無敵の存在と見なすようになっているのに対し、中国政府が抱く自己像は正反対だ。この事実は、欧州とのソーラーパネル紛争からサイバースパイ行為に対する米国からの非難に至るまで、あらゆる問題に中国がとのように対処するかに関係してくる。中国は、強くなればなるほど不安を感じるのだ。

By David Pilling

 


習近平よ、大きな賭けに出たのか?
首脳会談に臨む米中の思惑〜中国株式会社の研究(218)
2013年06月07日(Fri) 宮家 邦彦
 本稿が掲載される頃、米カリフォルニア州で米中首脳会談が開かれる。中国メディアはその意義を盛んに宣伝するが、欧米の識者は「具体的成果は期待薄」などと概ね冷ややかだ。それでも、今回の首脳会談の結果は今後の米中関係の方向性を占ううえで極めて重要であろう。

 今回は静かな保養施設で2日間、プライベートで非公式な会談も行う。成功、失敗にかかわらず、米中間の詳細なやりとりが表に出る可能性は低いだろう。されば、今回も筆者の独断と偏見により、両国首脳の思惑を勝手に想像してみたい。関連報道を読む際の参考になれば幸いである。(文中敬称略)

新型大国関係


今年3月ロシアを訪問した中国の習近平国家主席〔AFPBB News〕

 今回の首脳会談のキーワードは「新型の大国間関係(新型大国关系)」だろう。しかし、その具体的内容について米中の見方は大きく異なる。

 まずは、今回の会談に向けた中国側の「思い入れ」の強さを中国メディアの報道で検証してみよう。

 以下は5月30日付人民日報日本版の解説記事の概要だ。いかにも中国らしい、「ジコチュウ」の塊のような情勢認識ではないか。

●中米の新型の大国間関係という提起の仕方は、2012年2月の習副主席(当時)訪米時に遡る。・・・(その後)ヒラリー・クリントン国務長官も事実上、新型の大国間関係の構築に関する習副主席の提案に間接的に応じた。

●これを踏まえて、胡錦濤国家主席(当時)は2012年5月3日の第4回中米戦略・経済対話で「互恵・ウィンウィンの協力を推進し、新型の大国間関係を発展」と題する開幕の挨拶をし、・・・新型の大国間関係の具体的中身を初めて明らかにした。

●ここに至って、新型の大国間関係をいかに構築し、発展させるかが両国上層部の共通認識となり、両国関係発展の新たな目標を導くものとなった。米国の知中派の専門家は・・・(オバマ大統領が)新型の大国関係の構築という中国側の提案に前向きに応じるよう次々に提案している。

●トム・ドニロン米大統領補佐官は(本年)3月11日に講演した際、米中による新型の大国間関係の構築について米側の構想を初めて明らかにした。・・・(習国家主席就任の際)オバマ大統領は祝電で「双方が戦略的角逐ではなく健全な競争に基づく新型の大国間関係の構築に共に努力すること」の重要性を強調した。

●朝鮮半島情勢がにわかにエスカレートすると、米側は中国と新型の大国間関係を構築することの必要性をより差し迫って感じるようになった。ホワイトハウスは習近平主席がメキシコなど中米3カ国を近く訪問することを知ると、米国でオバマ大統領と特別な会談を持てないかと中国側に急遽打診してきた。

会談を切望したのは習近平

 要するに、習近平が提起し、胡錦濤が正式に提唱した「新型大国関係」なる概念を米側が受け入れ、今回はその重要性を認識した米側からの「急な」申し入れで首脳会談が実現したというのだ。

 さすが中国、芸が細かい。しかし、実際には、中国側の強い要請を米側がようやく受け入れたというのが実態のようだ。

 ワシントン発の各種報道(例えば、ウォールストリート・ジャーナルの6月2日付記事)を総合すれば、習近平が米側に早期の首脳会談を打診したのは昨年12月だったらしい。当初ホワイトハウスはこれに強い難色を示したという。当時米側は習近平との初の米中首脳会談など9月のG20サミットの機会で十分、と考えていたフシがある。

 昨年12月と言えば、日本も早期の日米首脳会談を申し入れていた頃だ。そう言えば、当時ホワイトハウスは1月の安倍晋三首相の訪米にも消極的だった。オバマ政権にとっては、外交よりも国内の予算強制削減問題の方がはるかに重要だったのだろう。

 ちなみに、日米の場合は2月下旬に安倍訪米が実現している。

 中国の一部には、米側の態度変更が「習近平の権力基盤が予想以上に早く確立したため」などと見る向きもあるが、それは違うだろう。習近平が総書記に就任したのは昨年11月。わずか1カ月後には早くも訪米を要請している。やはり、何らかの理由で習近平自身が早期訪米を強く求めたと見るべきだろう。

 ちなみに、中国外交部の洪磊報道官は5月21日、首脳会談の時期について、「双方とも早期の首脳会談を望み、・・・両国首脳のスケジュールから6月初めが双方にとって都合がよかった」と述べたそうだ。こちらの方が、下手なプロパガンダよりも、はるかに正直なコメントだと思う。

米中で解釈が違う「新型大国関係」

 人民日報に限らず、中国の官製メディアは、あたかも米側が中国側の提唱する「新型大国関係」を受け入れたかのごとく書いている。しかし、本当にそうなのだろうか。「新型大国関係」に関する中国と米国の説明ぶりの違いを、改めて筆者の独断と偏見で、検証してみよう。

 中国メディアは、「新型大国関係」につき胡錦濤が昨年5月3日に、「思考の革新、相互信頼、平等と相互理解、積極的行動、厚い友情の形成」という5つの構想を提唱したと報じている。恐らく中国が最も訴えたいことは、「思考の革新」、すなわち米側が「対中思考を根本的に変える」ことではなかろうか。より具体的には、

●中国はもう小国ではなく、米国は中国を「大国」として取り扱うべし
●米国は「リバランス」という名の「対中包囲網」作りを即刻止めるべし
●米国の力の衰退は明らかであり、米国は「大国」である中国と、対立ではなく、共存する道を選ぶべし
●米国はこうした中国の「大国」としての権益を東アジア地域において認めるべし
●その権益の中には、当然ながら、政治、経済、軍事、領域的権益が含まれるべし

 これに対し、米側の認識はちょっと違う。人民日報は、2013年3月11日、アジア・ソサエティにおける講演でドニロン米大統領補佐官が「新型大国関係」に関する米側の考え方を示したというが、同講演の中でドニロンは中国側が主張するほど明確に言及しているわけではない。

 同補佐官が述べたのは、「既存勢力と新興勢力の間の関係について新たなモデルを作るという目標を米中首脳は承認した(…to build a new model of relations between an existing power and an emerging one. Xi Jinping and President Obama have both endorsed this goal.)」ということだけだ。

 要するに、通常は新しいパワーが台頭する際、既存のパワーに対する挑戦が始まり、両者間で対立・紛争が生ずるものだが、中国は間違ってもそのようなチャレンジを行わず、既存の国際秩序を尊重するような「新しいモデル」になってほしい、ということ。これが米側の理解する「新型大国関係」である。

 そもそも米国には中国を「封じ込める」野心などない。

 米国の関心はあくまで太平洋における海洋覇権の維持。万一、新興勢力たる中国が「新しいモデル」とならず、西太平洋における米国の既存の海洋権益に挑戦すれば、米国は決してこれを容赦はしない。米国の本音は、「習近平さん、勘違いしないでくれ」ということだ。

首脳会談を急いだ理由は何か

 最近米側が懸念を深めているのは中国側、特に人民解放軍による対米サイバー攻撃だ。以前からこの問題は関係者の間で内々指摘されてきたが、最近米側はついにオンレコで「対中懸念」を表明するようになった。さすがの米国もこれまでの中国側の不誠実な対応に業を煮やしたのだろう。

 米国(ワシントン・ポストなど)からの報道が正しければ、中国側が不正に入手した情報はいずれも東アジアに前方展開する米軍の最新鋭武器システムに関するものばかり。こうした事態は、米国の対中抑止力を大幅に減じかねず、日本にとっても極めて深刻であることは間違いない。

 いずれにせよ、今回の首脳会談で米側が中国の主張するような「新型大国関係」を認める可能性は限りなく低い。サイバー攻撃だけでなく、北朝鮮の核開発、東アジアの領土問題、米中貿易摩擦、人権・民主化など米中間の懸案は山積みであり、どれ1つとして簡単に妥協できるものはないからだ。

 こう考えれば、今回習近平が外交上の成果・得点を狙って早期訪米を仕掛けたとは考えにくい。中国に最も同情的な米国人識者でも、今回大きな進展を予測する向きは少ない。せめて両首脳が個人的に親しくなり、より率直に話し合えるようになればいい、ぐらいにしか考えていないだろう。

 そうだとすれば、中国側のこの「前のめり」感には国内政治上の理由があるのかもしれない。要するに、昨年11月に成立したものの、新体制の政治的権威は必ずしも確立しておらず、習近平は焦っている。


国務長官がジョン・ケリー(左)に代わって中国はチャンスと判断?(写真は2013年4月北京での会談)〔AFPBB News〕

 だからこそ、対米関係をトップレベルで一気に改善しようと一種の賭けに出たのではないか、ということだ。

 オバマ政権1期目の対中関係は最悪だったが、幸い、中国に厳しかったクリントン国務長官が政権を去り、中国としては御しやすいジョン・ケリー国務長官に代わった。

 今こそ、米国の対中外交を一気に転換させる絶好のチャンスではないか。党中央政策研究室の王滬寧あたりがそう考えたのかもしれない。

 いかにも中国人らしい考え方だが、この戦術が成功するためにはいくつか条件がある。

 それはオバマと個人的に親しくなるだけではなく、習近平が、(1)オバマと取引のできる相手であること、(2)人民解放軍などを十分コントロールできること、(3)西太平洋における米国の海洋権益にチャレンジするつもりがないことなどを具体的に説明し、オバマを納得させることだ。

 上記(1)の可能性はゼロではない。しかし、習近平は(2)と(3)をオバマに明言できるだけの政治的権威を確立しているだろうか。筆者は疑問に思う。

 焦点は、今回の非公式な雰囲気の中で習近平とオバマがこれらの点についてどこまで踏み込んで話すかだ。米中首脳会談関連報道ではこの点に注目したい。

 「狼少年」と言われるかもしれないが、筆者が最も恐れているのは将来の「第2次太平洋戦争」である。少なくとも、このまま行けば、その可能性は否定できないだろう。

 中国の「新型大国関係」なる主張は、残念ながら、米国の西太平洋における権益の一部を放棄せよと言っているに等しいと思うからだ。

 現在の中国には80年前の日本のイメージがどうしても重なる。もちろん、当時の日本と今の中国は同じではない。しかし、西太平洋における米国の海洋覇権に挑戦するという点で対立の基本構造は大して変わらない。

 今回の米中首脳会談がこのような不幸な流れを変える転換点となることを期待したい。


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