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日本の脱原発を実現するドイツからの二つの柱  関口博之
http://www.asyura2.com/12/genpatu20/msg/580.html
投稿者 msehi 日時 2012 年 1 月 30 日 08:24:15: MaTW.8vfzXWdQ
 

投稿者msehi関口博之
http://d.hatena.ne.jp/msehi/

ドイツの脱原発を実現させた大きな二つの柱は、連邦環境省(BMU)の部局である放射線防護局(BfS)と環境事務局(SRU)であった。(注1)
放射線防護局は、16の原発周辺地域5キロメートル以内、5歳以下の子供の白血病や癌にかかる確率が、1980年から2003年にわたる疫学調査で、原発のない地域の子供に較べて小児癌で約60パーセント、白血病で約100パーセント高いことを2007年12月に報道した。(BfS:Pressmitteilungen:12.2007)
この時期ドイツでは原発ロビイストたちが原発推進の巻き返しを強めており、現在企業からの贈賄疑惑でドイツ全土に物議を醸しているドイツ連邦大統領ヴルフは、当時ニーダーザクセン州の首相であり、原発運転期間の延長を電気料金の高騰という常套のセリフで求めていた。
「フィンランドやスェーデンのように原発運転期間を延長しないことは国家財産の損失であり、早急な原発撤退はドイツの電気料金を高騰させる」(WELT ONLINE www.welt.de,18.07.2007)
そのような電気料金の脅しに水をかけたのが放射線防護局の報道公表であり、すべての国民の関心が集中すると同時に、電気料金の高騰という脅しが吹き飛び、原発運転期間延長反対に大きく傾いた。
もっともこの放射線防護局の報道公表には原発推進側から強い圧力がかけられ、連邦環境省の別の部局である放射能防護委員会(SSK)で再検討された。
再検討では原発周辺地域の白血病や癌になる確率の高さは再確認されたものの、低い放射線被ばくとの因果関係については特定されなかった。(注2)
特定されなかった理由は、国際基準となっている国際放射線防護委員会(ICRP)の基準が累積100ミリシーベルトを超えると癌になる確率が0,5パーセント増加するとなっていることから、この基準よりも1000分の1も低い原発周辺地域の放射線被ばくで100パーセント増加するとの断言が常識的に不可能であったからだ。
しかし放射線防護局は1980年からの原発周辺地域の疫学調査だけでなく、チェルノブイリ事故後周辺地域の非公式データーを綿密に検証し、低線量放射線被ばくの恐ろしいリスクを既に認識していたことから、2001年からのドイツ放射線防護令47条は現在の日本の基準より数百倍も厳しく、放射線の最大年間実効線量を0、3ミリシーベルトとしている。
そして日本に食物などの貴重な情報を提供してくれる民間非営利組織のドイツ放射線防護協会(Deutsche Gesellschaft für Strahlenschutz e.V.)は、この放射線最大年間実効線量0、3ミリシーベルトに基づいて食物などの安全性を積算している。(注3)
もちろんこの協会には放射線の専門家たちが集結しており、協会の情報媒体である「放射線テレックス」のホームページ(http://www.strahlentelex.de/)には20人ほどの学識顧問の名前が載せられており、殆どが医学博士である。
そして日本国民への啓蒙を求めるテキスト(注4)「あらかじめ計算された放射線による死(EUと日本の制限値は防護するものではなく、放射線による死者をあらかじめかなりの数計算に入れている)」では、EUと日本の放射線防護制限値が高すぎるのは(数年前からウクライナとベラルーシで適用されている食品制限値に比べ最高500倍高い)、制限値の決定に影響力を持つ欧州原子力共同体(Euratom)と国際放射線防護委員会(ICRP)が原子力産業と放射線医学界に支配されているからだと述べ、より安全な制限値はないと強調すると同時に、市民を保護するために制限値の強化を求めている。
そして最後のまとめでは、チェルノブイリ後に科学界で高い地位を占める学者たちが市民に対して情報を隠蔽したようなことが(「放射線恐怖症」や「100ミリシーベルト以下の放射線量であれば危険がない」などの間違った決まり文句)日本でも繰り返されることがあれば、それは悲劇だと述べ、劇作家ブレヒトの「真実を知らない者は愚か者でしかない。だが、真実を知っているにもかかわらず、それを嘘という奴、そういう奴は犯罪者だ」という台詞で結んでいる。
こうしたドイツ環境省放射線防護局の原発周辺地域の疫学調査やドイツ市民の放射線防護協会のレポートは、低線量放射線被ばくリスクの事実を検証するものであり、NHKの「低線量被ばく揺らぐ国際基準・追跡!真相ファイル」制作者が魔女狩りされたり、ベラルーシで5年間診療活動をしていた菅谷昭松本市長の講演が暗殺予告の脅迫で中止を余儀なくされる理由である。(注5)
それはチェルノブイリ周辺の低線量放射線被ばく地域でも、未だに癌や白血病が増加しており(注6)、現状に精通している菅谷松本市長の話が広まることを、原発推進側が恐れているからに他ならない。
何故なら2001年のドイツ放射線防護令47条、最大年間実効線量の0、3ミリシーベルトはチェルノブイリ周辺地域の低線量放射線被ばくリスクの検証に基づいており、そのような人体の安全性を最優先させた制限値が適用されれば、外部へ多量の放射線を放出する核燃料サイクル計画は不可能になり、放射能汚染を招く最終処分場建設も難しくなることから、必然的に脱原発が実現するからだ。
既に原発推進側はほとぼりが覚めたと見ており、今年は核燃料サイクル再開、点検した原発の順次運転再開、原発ルネサンスによるさらなる売り込みを目論んでおり、その実現のためには「低線量放射線被ばくリスクの事実」がアキレス腱であることから、お金をばら撒いて関与者の魔女狩りや脅迫を始めている。
それに対抗するためには、国民の全てに「低線量放射線被ばくリスクの事実」を知らせることであり、阿修羅や小メディアなどを通して真相を拡散させていくことが重要である。
また原発推進側の脱原発による脅しに対しては、脱原発後の素晴らしい未来を啓蒙していくことが重要である。
それをドイツで実現したのは、もう一つの柱である連邦環境省のエネルギー専門家スタッフからなる環境事務局であった。
環境事務局は「脱原発による電気料金高騰」の嘘や、「原発は再生可能エネルギーへのエネルギー転換に必要」という嘘を論破し、脱原発後の100パーセント再生可能エネルギーで賄われる素晴らしい未来を科学的に実証した。(注7)
またメルケル首相の顧問であり、環境事務局の看板スタッフであるオラーフ・ホーメヤーは、2010年7月のZDFフィルム「大いなるこけおどし・・・政治の間違った約束」で、以下のように強調している。
「脱原発からの下車は、明らかに巨大電力企業に長期に渡って好意を約束したものである。それは内容的に全く馬鹿げており、エネルギー政策的に全く間違った決定である。
私たちは脱原発を、さらに徹底して実現していかなければならない。
原発の長期運転は必然的により高い収益をもたらす。しかし必然的に安い電力料金にはならない。
もし私たちが底なしに向かう原発に運転期間延長というシグナルを与えるなら、それは同時に再生エネルギーによる持続的な電力供給を本質的に望まないというシグナルを与えることになる。その限りでは、このシグナルは全く致命的である」

日本の環境省(今やドイツよりも大きな環境庁)は役に立たないばかりか、地球温暖化で原発推進に協力してきた事実からも、全く当てにならない。
しかしドイツの二つの柱からのメッセージを拡げていけば、必ず日本の脱原発は実現できる。


(注1)
ドイツの環境省は4つの部局と2つの委員会からなり、環境全般に関与する環境局(UBA)、放射線防護局(BfS)、環境事務局(SRU)、自然保護局(BfN)と、国連の気候変動会議に関与する環境諮問評議会(WBGO)、そして放射線防護委員会(SSK)である。

(注2)
ドイツ語資料http://www.bfs.de/de/kerntechnik/kinderkrebs/stellungnahme_kikk.pdf

(注3)
「日本における放射線リスク最小化のための提言」(ドイツ放射線防護協会)
http://icbuw-hiroshima.org/wp-content/uploads/2011/04/322838a309529f3382702b3a6c5441a32.pdf
ドイツが考えてくれた日本の子どもを守る摂取限界値(BGM_掛け歌)
動画http://www.youtube.com/watch?v=-tdLYv_iE3s

(注4)
「あらかじめ計算された放射線による死」
http://www.strahlentelex.de/calculated-fatalities_jp.pdf

(注5)
2011年10月14日菅谷松本市長『チェルノブイリから学ぶこと』講演会@福島
動画http://www.ustream.tv/recorded/17868965

(注6)
NHKスペシャル。汚染された大地・・・チェルノブイリ20年後の真実
動画http://www.youtube.com/watch?v=pIY5AT3o8SI&feature=youtu.be

(注7)
英語資料http://www.umweltrat.de/SharedDocs/Downloads/EN/02_Special_Reports/2011_10_Special_Report_Pathways_renewables.pdf?__blob=publicationFile  

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コメント
 
01. 2012年1月31日 01:43:26 : C0LQ7RbFcw
>チェルノブイリ事故後周辺地域の非公式データーを綿密に検証し、低線量放射線被
>ばくの恐ろしいリスクを既に認識していたことから、2001年からのドイツ放射
>線防護令47条は現在の日本の基準より数百倍も厳しく、放射線の最大年間実効線
>量を0、3ミリシーベルトとしている。

0.3ミリシーベルトというドイツの基準値は知っていたけど、こういう事情は
知らなかった。福島と東日本のひとも知らなくちゃね。


02. 2012年1月31日 21:45:05 : XZWCRAyTMM
 ドイツは、バイエルン、ミュンヘンなどに、チェルノブイリ由来のセシウム汚染地帯があります。平方メートルあたり2万〜8万ベクレルくらいの値が伝わっています。福島県中通ほどではありませんが、関東地方、東京あたりとは近いレベルです。
 都市部などは、もう検出不能の地域が多いと思いますが、森林、畑、2次的汚染地で年間0.3mSvを越える地域はあるでしょう。ドイツでは、そういう地域に対して、どのような規制を行っているのでしょうか?どなたか、ご存知ありませんか。

03. msehi 2012年2月01日 22:49:59 : MaTW.8vfzXWdQ : CxL4Lyrs2A
02さんへ
確かに土壌汚染は直後(1986年調査)で2万から8万ベクレルくらいの値がありましたが、2005年の調査で南バイエルン州で1万3200、北バイエルンで4300ベクレルですので(http://www.lfl.bayern.de/iab/bodenschutz/14896/linkurl_0_2.pdf)、1万3200ベクレルはシーベルトに換算すると0、089マイクロシーベルト/hで、年間で約0,78ミリシーベルトになり、0,3ミリシーベルトを超えてきます。
しかし1万3200ベクレルは地表10センチの平方メートルの放射線量ですので、家にくらす人の放射線最大年間実効線量は0,3ミリシーベルト以下になり、規制が必要ないように思います。

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