日本の消費者にまだ伝わっていないスマートグリッド導入のメリット
――2008年春に通信機能とパソコン機能を持った電力メーター「スマートメーター」を紹介した「インテリジェントなエネルギー」というテーマのインタビュー記事を掲載してから1年半が経過しました。2009年11月から日本でも太陽光発電の固定価格買取制度がスタートし、電力網を使って余った電力の買い取りが本格化しますね。
川井：　スマートグリッドが導入されると、双方向で電力を売ったり買ったりできるようになるので、電力網もスマートな制御が必要になります。2009年1月に誕生した米国のオバマ政権が、エネルギー効率の向上をめざして賢い電力網「スマートグリッド」の構築に積極的に投資する考えを打ち出したので、日本でも最近では、スマートメーターと言うよりも、スマートグリッドと言った方がお客様の反応も良いですね（笑）。
ただ、日本では、スマートグリッドについて「定義が判らない」という声を良く聞きます。その原因を探っていくと、電力会社などのエネルギー供給事業者、太陽光パネルや蓄電池などの新エネルギー事業者、そして消費者が、三者三様の観点からスマートグリッドを捉えているからだとわかってきました。
――どのように違うのですか?

川井：　スマートグリッドが効率的で賢い電力網であるなら、「海外に比べて日本は送配電品質が高く、通信制御も可能であり、停電も少ないので、すでにスマートグリッドになっている」という意見も日本にはあるようです。一方、新エネルギー事業者は太陽光パネルなどの販売を拡大することに注力していて、「消費者にとってスマートグリッドのメリットが何か？」があまり伝わっていないように感じます。
スマートグリッドとは何か、消費者にどんなメリットがあるかが具体的に示されれば、導入に向けた世論も高まるでしょうが、残念ながら日本ではまだスマートグリッドの全体像がきちんと捕らえられていないように思います。
3つのステップで進化するスマートグリッドの将来像
――スマートグリッドは一般的に、情報通信技術（ICT）を使って送配電や分散発電を制御できる電力網と定義されていますが…。
川井：　確かに機能的にはそうかもしれませんが、問題はその機能を使って何を実現するかです。スマートグリッドには、次の3つのステップがあると考えています。
第1ステップは、スマートメーターなどのITを使って電力使用量などの情報を消費者に提供する「見える化」です。
第2ステップは、スマートグリッドに太陽光や風力などの発電システム、家庭用燃料電池や電気自動車などの蓄電池が接続され、電力を融通し合って利用する電力ソースの「マルチ化」。そしてそれらが地域を超えて連携する「広域化」が進んでいくでしょう。
第3ステップは、インターネットを通じて新しいサービスが次々に提供されたように、スマートグリッドに接続された電気自動車や家電製品などを通じて消費者に新しいサービスを提供する「統合化」と「サービス化」が実現すると予想されます。

IBMでは、「Smarter Planet」を実現するには、3つのi（Instrumented＝機能化、Interconnected＝相互接続、Intelligent＝インテリジェント化）が重要だと考えていますが、スマートグリッドも機能化＝見える化、相互接続＝マルチ化・広域化、インテリジェント化＝統合化・サービス化によって実現されていくでしょう。
拡大図
日本の電力網は、機能的には送配電品質の向上と効率化を実現していますが、消費者は電力の利用状況をリアルタイムで把握することができません。
まずは第1ステップとして「見える化」によって消費者も効率的にエネルギーを使用できるようにする必要があります。今後は、太陽光発電の固定価格買取制度の導入で、太陽光発電システムの普及が進んでいくでしょう。
次の第2ステップとしては、それらをスマートグリッドでつないで地域で発電した電力を地域で相互活用する仕組みが必要になります。そして第3ステップに向けて、あらゆる機器を接続して利用できるようにスマートグリッドの標準化に今から取り組む必要があると思います。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASHD2703E_X20C12A6000000/

　関西電力の八木誠社長は27日、株主総会後に大阪市内で会見し「脱原発は絶対にない」と述べ、今後も原子力発電が重要な電源であるとの認識を示した。総会では脱原発を求める議案など28件の株主提案は全て反対多数で否決された。

株主総会を終え、記者会見する関西電力の八木社長(２７日午後、大阪市福島区)
　――脱原発の株主提案が多かった。

　「脱原発依存の声はひしひしと伝わってきた。福島第１原発事故を踏まえた安全対策を行ったうえで、エネルギーの安全保障や地球温暖化などの観点から原子力が重要な電源であることもしっかり説明できた」

　――脱原発の株主提案に対する賛成票は相当数にのぼるとみられる。

　「（多様な電源を生かす）エネルギーミックスに関してエネルギー・環境会議で議論されている。当社としては議論を真摯にうけとめ、適切に対応する。脱原発は絶対にない」

　――国の政策が脱原発になった場合、どう対応する。

　「先般、野田総理が原子力は重要な電源であるとの考えを示している。野田総理がそうした考え方を示したことは大変心強く思っている」

　――地方自治体が初めて株主提案をした。

　「真摯に受け止め総会で審議した。当社は地域に根ざした企業であり、自治体とも色々な形でコミュニケーションをとって要望に応えられるようにしていく。エネルギーを地域の皆様と共に考え、当社の事業を理解していただきたい」

　――大阪市の橋下徹市長が「関電はつぶれるのでは」と発言した。

　「貴重な意見として受け止める。そういうことにならないよう経営陣が一丸となって企業の経営改善に努めてまいりたい」

　――電気代の値上げについての考え方は。

　「大飯原発３、４号機の再稼働だけだった場合、2400億円強の燃料費増で2013年３月期は5000億円くらいの赤字になる。大変厳しい状況。万が一そういう状況になれば、ありとあらゆる選択肢を考える必要がある」