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「みんな平等に電力を使えません」震災で露呈した、見せかけの電力自由化
http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/715.html
投稿者 palクン 日時 2012 年 7 月 19 日 10:05:58: mWJq7xP6mpLMg
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20110714/221477/?P=1

 計画停電は、9割超のシェアを占める東電が、福島第1原子力発電所事故を起こして供給力不足に陥ったことで実施したもの。ところが、東電だけでなく、新興の電力会社である「PPS(特定規模電気事業者)」のユーザーも、東電ユーザーと同様に計画停電の対象になった。

 PPSとは、2000年3月から段階的に始まった電力自由化によって誕生した新規参入の電力事業者のこと。最大手のエネット(東京都港区)は、NTTファシリティーズと東京ガス、大阪ガスが出資している。このほか、新日鉄の子会社である新日鉄エンジニアリング(東京都品川区)、住友商事子会社のサミットエナジー(東京都中央区)、三菱商事子会社のダイヤモンドパワー(東京都中央区)などがある。

 PPSは、企業の自家発電装置で使い切れなかった電力を購入したり、自前の発電所で電力を作り、電力会社よりも安い料金で、企業や官公庁、自治体などに電力を販売している。取引の大半は相対契約だが、一部は日本卸電力取引所(JEPX)を通じて売買している。

○「悪平等」を押し付けた政府と電力会社

 3月11日の東日本大震災でダメージを受けたのは、東電の原発や火力発電所であって、電力を運ぶ送電網の大半は、問題なく使える状態だった。つまり、電力の供給がままならなくなったのは東電や東北電力だけで、PPSの電力供給は問題が無かったわけだ。それなのに東電は、計画停電のエリアの送電を停止し、PPSユーザーまで電力を使えなくなってしまった。

 PPSが電力を販売する際には、電力会社の送電網を、利用料金(託送料)を支払って利用する。にもかかわらず、計画停電を実施するに当たって、送電網の利用者の不便を勘案せず、送電を止めてしまったのである。しかも、事前の相談なく、決定事項として通達した。

 この東電の手法を、経済産業省も認めている。政府までが、「最大シェアの電力会社のユーザーが不便を被るのだから、みんな平等に不便を被りましょう」と“悪平等”を選んだのだ。

 さらに、震災明けの3月14日月曜日には、日本卸電力取引所(JEPX)が東京電力管内での電力取引を停止してしまう。その理由は、「東電から送電網の運用、監視ができないので停止してほしいと要請があった」(JEPX)ためだという。

 電力自由化によって、需要家は電力会社をサービスの内容や料金で選択できようになったはずだった。複数の電力会社と契約することは、自家発電装置を持つのと同様に、停電などへの備えであったはずだ。実際、PPS各社には、「電力を供給して欲しい」という企業から問い合わせが殺到している。

 ところが、いざ大規模なトラブルが電力会社で発生しても、巨大企業と政府の判断によって、PPSは本来の役割を一切、発揮できなかったのだ。
 計画停電で発生した不条理は、7月1日からの電力使用制限令でも起こった。電力会社のユーザーと同様に、PPSユーザーも15%削減を強いられることになったのだ。

 6月16日に社長を退任したエネットの武井務・前社長は、電力ビジネスの不条理に怒りをあらわにする。

 「通常のビジネスなら、東電が電力を供給できない分、我々PPSが通常時よりも好条件で電力を販売したり、新規顧客を獲得できるはず。ところが政府は、PPSのユーザーも15%の節電対象だという。しかも、節電で余った電力は東電に売ってやってくれと。政府が敵に塩を送れと言うとはどういうことなのか。自由化したという意識がないことを象徴している」

 電力料金は、前年度の使用料の実績を基に決める。15%節電を強制されれば、エネットにとっては翌年の基本料が低下することを意味する。

 「計画停電といい、15%節電といい、我々はボランティア組織のようだ」と武井前社長は憤る。

○「まったく勝ち目がない」

 そもそも電力会社とPPSは、平等に戦える環境にない。その理由は3つある。

 第1がコスト。電力会社の原発や水力発電所は、何十年も前に作ったものが大半で、設備の償却を終えている。つまり、発電コストが非常に安い。古くて効率の悪い火力発電所の発電コストは割高になりがちだが、安価な原発や水力の電力を混ぜて平均化すれば、電力会社は顧客に安価な料金を提示できる。

 しかも、火力発電の燃料費が高くなれば、その分を「燃料費調整制度」の下、電力料金で回収できる。

 一方のPPSは、燃料高の影響を直接受ける。電力自由化が始まった2000年当初は、原油価格が1バレル当たり30ドルを切っていた。安価な燃料と、最新鋭の設備を組み合わせれば、電力会社とも戦えると新規参入が相次いだ。

 ところが、この10年で燃料費は高騰。原油価格は1バレル当たり100ドル前後と約5倍に跳ね上がった。三井物産と日揮、石川島播磨重工業が出資したジーティーエフ研究など、撤退や事業の縮小が相次いだ。
サミット美浜パワーから周辺の工場へ、電力と蒸気を直接、供給するための自営線

 発電事業はスケールメリットが働く。この点でも、電力会社はPPSよりも優位にある。

 千葉港に隣接するサミット美浜パワーの亀岡和英社長も、「電力会社と戦っても、まったく勝ち目がない」とため息をつく。同社のLNG(液化天然ガス)火力コンバインドサイクルの設備容量は、5万キロワット。一方で、東京電力の火力発電所は1カ所に複数の発電機があり、設備容量は合計で100万〜500万キロワットもある。

 特に、電力会社の料金が安い夜間はビジネスにならないのだという。そこで、サミット美浜パワーでは、夜間は東京電力から電力を調達し、昼間は自社で発電している。さらに、周辺の食品工場などに自営線を敷設し、電力と発電時に生じる蒸気の両方を販売している。「電力の販売だけでは厳しいが、蒸気も売れれば採算性が上がる」(亀岡社長)。

 電力会社の送電網ではなく、電力を自営線で供給しているユーザーは、計画停電も15%節電も無縁だ。現在、周辺の7社に提供中だが、「既に倍以上の企業から要望がある」(亀岡社長)。ところが、自営線を今以上に敷設するためには、公道を越えなければならず、自治体などの認可を取るのが困難な状況にあるという。
 さらに、電力会社が発電部門と小売り部門の両方を併せ持つことも、電力会社とPPSが平等に戦えない環境を育む要因の1つとなっている。

 電力会社は、普段使っていない火力発電などの設備を大量に保有している。それは、発電電力量の約3割を賄う原発が止まっても、停電を起こしていないことが証明している。

 電力会社は、原発や水力を最優先に稼働させ、次に石炭火力を動かす。そのうえで、LNG火力で不足分を補い、さらに足りないときだけ石油火力を動かす。つまり、LNG火力と石油火力の稼働率は、そう高くない。

 民間企業なら、設備稼働率を高めることは経営の至上命題だ。電力会社にこうした視点があれば、遊んでいる設備を使って発電し、その分の電力を市場で販売すればよい。

 だが、残念ながらこのロジックは働かない。電力会社の小売り部門にとって、電力を他の事業者に販売することは、顧客を他事業者に奪われることを意味する。

 しかも、電力会社は、「総括原価方式」によって、設備などにかかった費用を電力料金で回収できることになっている。設備稼働率が低くても、設備投資を必ず回収できる。総括原価方式は、かかったコストに一定の利潤を載せて電力料金から回収する仕組みであるため、設備投資が大きくなればなるほど、電力会社が得られる利潤も大きくなる。無理して設備稼働率を高めるのではなく、止めておこうと考えても不思議はない。

 結果的に何が起こるか。例えば、企業が自家発電装置で発電した電力で、事業に使わなかった余剰分があったとする。PPSの参入以前は、買い取ってもらう相手は電力会社しかいなかった。これをPPSが買い取ろうとすると、「電力会社よりも10〜20%高く引き取り、需要家に5%程度安価に売るしかなくなる」(あるPPS幹部)。

○電力会社を自由にした「見せかけの自由化」

 「電力自由化が始まってから、電力料金は約2割下がった」「既に発電電力量の63%が自由化されている」

 こう聞くと、日本の電力業界でも競争が起きているような錯覚を覚えるかもしれない。だが、実際のところは前述のとおりで、公正な競争ができる状況にない。PPSのシェアは、わずかに3%程度にとどまる。

 確かに、経済産業省によれば電力料金は約2割下がっている。火力発電料の燃料費がこの10年で約5倍になったのに、料金を2割下げられるほど、電力会社の運用には、よく言えば余裕が、悪く言えばムダがあるわけだ。

 ある大手素材メーカーの幹部は、「電力会社よりも火力発電所を安価に運用できる自信がある」と明かす。電力会社が発電から小売りまでの垂直統合型であり、地域独占であることによって、発電コストは高止まりしている可能性が高い。

 潤沢な設備を保有し、需要家が望むだけ湯水のように電力を供給するという、現在の電力会社のビジネスモデルは、電力料金が下がらないだけでなく、需要家を巻き込んだ需給調整という発想も生まない。

 本来、企業などの需要家は、料金や信頼性といった様々な観点から、電力サービスや自家発電装置、節電などの選択肢を組み合わせ、自社に合った最適な調達をする工夫をこらすべきだ。そうすることが、結果的に日本全体の電力需要を押し下げることに繋がるだろう。

 夏場の昼など電力需要の多いときは、電力料金も高く、そうでないときは安く設定するだけでも、ピーク時には不要不急の用途以外は自主的な節電が働くだろう。計画停電や一律の節電が不要になる可能性は高い。

 三菱総合研究所が実施した「電力市場の競争環境及び需要家意識に関する調査」(2011年2月)によると、PPSから電力を購入している企業とそうでない企業で、電力調達への意識レベルにも差がある。選択肢が広がれば、需要家の意識は必ず変わる。

 電力市場で経済合理性にかなった競争を起こすためには、電力会社の発送電分離や、市場取引量を増やすためのルール整備などの手法がある。電力会社の既得権を奪うことに繋がるため、実現までの道のりは険しいだろう。政治手腕も問われる。だが、震災によって市場に歪みがあることが露呈したいま、目の前の課題から目を背けてはならない。  

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コメント
 
01. 2012年7月19日 19:22:59 : NrnWIa4XYo
本来は電力を別に電力会社の電線を経由して買う必要などないのです。
コンセントアウトハイブリッドカーや各世帯などから他の需要家へDC12V〜60Vとかで直接売電すれば良いだけであって将来的にはこうした電力の直接売買も自由化する法改正をすれば良いのではないでしょうか。今すぐにでも結論を出すべきでしょう。
直流ならば売電も容易です。
いちいちAC100V(電柱のトランス経由なら更に6600V)なんかに変えてたら非効率で仕方ありません。

02. 2012年7月19日 20:18:57 : rXhnnuVrfs
01さんへ
小規模な、家庭での電力なら、DC電源で何とか行けるかも?
しかし、PPSの規模になってそれをDCで賄うとなれば、しかも超低圧の12〜60Vとなると、不可能です。
ダムの水を水道ホース1本で放出するような話です。
それこそPPS直下の電線の太さはメートル単位では足りないでしょう、何十、何百メートルもの直径の電線が要ると思います。

低圧では電流を多く流さないと、電力は確保できません、その電流を多く流そうとすると、損失が電流の流量に比例して増えるため、限界が有ります。

その限界を超えるために、電圧をドンドン上げて(数千〜数万V)電流を少なくして、損失を減らしているのです。

今でさえPPSの営業妨害をしている電力会社が、電力の直接売買を許すはずが有りません。

それを言うなら、PPSの足枷を取り払い、対等な立場でPPSと電力会社がガチンコ対決するだけで大分変わると思います。


03. 2012年7月19日 20:25:28 : rXhnnuVrfs
まぁ、その内に、電力会社から、買うよりも安い合法的な電力が出てくると思いますよ。
何時までも胡坐をかいて、殿様商売が、今の世の中続くはずも無い。

もしくは、電力会社に7割の利益を提供している、家庭用電力の消費者が電力会社とチキンレースを始めるさ、電力会社が死ぬか、電力購入者が節電で参るかのレースだ。


04. 2012年7月19日 20:37:03 : NrnWIa4XYo
02さんへ
コンセントアウトハイブリッドカーなら電源である自動車の方が電力買取の消費者にほうへ出向くので送電損失はなく、また仮に自宅などから50メートル以内とかなどの近隣に直接売電するならそのまま直流で良く、現状の、直流 → 交流100V → 場合によっては交流6600V → 買い取る側のために、また交流100V、と言う各変圧時の損失がなく、それだけ採算に合うのではないかと思います。
家電の直流仕様の統一化が必要かも知れません。
但し都市部等のビルなどはそうもいかないかも知れません。
一方、工場などは比較的自由に買取電源の電圧や交流直流の仕様を設定できると思いますので、計画停電などにも有効に電力自由化が機能すると思います。

05. 2012年7月19日 22:04:19 : sgolhP60mA
関電は「ネガワット入札」と言うのをやって、逼迫時の電力を高値で買い取る。
東電にもこれをやらせて、エネットも高値で入札したらどうだろうか。

06. 2012年7月22日 12:42:56 : S1TA0DnTMI
PPSって結局のところ自前の電力網構築しないですむから、アチコチと気軽に契約できるんだけどね。

これ自前網になったらケーブルテレビと同様のことしないといけないわけだから
実際は相当苦しくなると思うけど?


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