中日春秋
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2012072302000078.html
2012年7月23日　中日新聞

　＜銀の代わりに鉛を受け取ったような面（つら）＞という諺（ことわざ）がある。期待していたのと似て非なるつまらぬものを受け取り、がっかりした顔つきのことをいう

▼＜金を化して鉛とす＞は価値の高いものを低く変えてしまう例えだ。鉛という金属は、ことさら価値を低く見られているようで、少々気の毒に思える

▼こんな諺もある。＜鉛は刀となすべからず＞。鉛では刀は造られない。そこから、物にはそれぞれ使い道があるという意味も生じた。その鉛の効用に目を付けた者がいた

▼福島第一原発事故の収束作業を請け負う福島県の建設会社の役員が昨年末、作業員の身に着ける警報付き線量計を鉛板のカバーで覆うように強要していた。放射線の遮蔽（しゃへい）効果が高い鉛を利用して、累積被ばく線量を偽装しようとしたようだ

▼作業員九人がこのカバーを使用させられた。被ばく線量限度を超えないようにするごまかしは、以前からあったという証言もある。下請け、孫請け、ひ孫請け…。末端の原発労働に近づくほど、日雇いや非正規労働者が増え、危険にさらされる

▼「経済弱者であるがゆえに被曝（ひばく）しながらでも働かざるをえない人々の犠牲がなければ、平時の原発さえ成り立たないシステム」（東大大学院総合文化研究科の高橋哲哉教授）。作業員の犠牲で成り立つ原発の仕組みを知るほど、鉛をのみ込んだような重い気分になる。

コメント
01. 恵也 2012年7月23日 19:07:19 : cdRlA.6W79UEw : y0E8B0mLbQ >>　下請け、孫請け、ひ孫請け…。末端の原発労働に近づくほど、日雇いや >>　非正規労働者が増え、危険にさらされる ８次下請けまであっては、末端の労働者は使い捨てになる。 原発においては東電正社員は神様で、東芝など１次下請けは殿様、８次下請けは 被曝労働のための使い捨ての奴隷。もう階級社会になってしまってる。 使い捨て奴隷でも１日の日当が３千円くらいは、被曝のため相場より高いという。 俺なら願い下げだけど・・・・
02. 2012年7月23日 19:10:56 : G3UdYLyhsI 人は他の動植物と比べて、決して体の素材が勝っているわけではない。そんなか弱い者が今まで存続し続けてこれたのは、別に現在の人が過去の人に比べて勝っているわけでも劣っているわけではなく、登場してから今までの間に数々の奇跡を成し遂げてきたからだ。 それを成し遂げなければ存続できない状況があるか否かで、人はその潜在能力を最大に発揮するのではあるまいか？でなければ、確実に終末(太陽が膨張するため)が訪れるのをわかっている世界で、人が天使(キリスト教徒限定)であろう訳がない。 フクイチの事故処理は、我々にとって奇跡だと思う。なぜなら、事故を起こした原子炉の全ての放射性物質が大気中に流失していたとしたら、人どころか世界中の全ての生物の存在すら危うくなるからだ。その放射性物質を完全に閉じ込めるにはまだ予断を許せる段階ではないので、今後も長期間、彼らの世話になることになる。 日本には古くから感謝の意を表して、神として崇める風習がある。キリスト教的に言うとするならば、フクイチの全ての作業従事者こそが天使である。
03. 2012年7月24日 15:38:09 : pPJ5gJb78A 恐ろしい量の被曝をさせられている福島の子供たちのことを思うと、 鉛の重しをくくりつけられて海に沈められたような気分になる。

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