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緊急時対応の能力がなかった政府と東電の罪 原子力防災技術者が語る福島原発事故の深層(その3
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 01 日 07:13:53: cT5Wxjlo3Xe3.
 

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緊急時対応の能力がなかった政府と東電の罪

原子力防災技術者が語る福島原発事故の深層(その3)

2012年11月01日(Thu) 烏賀陽 弘道
 前回、前々回に引き続き、原子力防災の元実務技術者である永嶋國雄さん(71)へのインタビューをお届けする。永嶋さんの名前を教えてくれたのは、『原子力防災』の著者、松野元さんである。永嶋さんは、松野さん同様、原発事故に備えた防災システムの設計に関わり、危険を警告していた人物で、『原子力防災』の共著者にもなるはずだったという。

 今までのインタビューで、政府は巨額の予算を投じて原発事故に備えた防災システムを築いていたが福島原発事故では生かされなかったこと、事故発生時に現場と官邸内で判断ミスが積み重なったことなどが明らかになった。

 最終回となる今回は、原子力関連組織や電力会社の杜撰な危機管理体制について聞く。住民避難を失敗に至らしめた組織の実態を語ってもらった。

「電源が永久に途絶える」ことも想定されていた

──永嶋さんと松野さんは、全国の54基の原子炉に関してシビアアクシデントのシミュレーションを何度もくり返していらっしゃったということですが、お2人がまだ原子力発電技術機構(NUPEC)におられた頃とすると、2000年代前半ぐらいですか?

 「そうですね。2人ともいなくなったのが2002年か3年。その年からその仕事が原子力安全基盤機構(JNES)に移ったんです。移った時に私は辞めたんです」

──松野さんは2003年に辞めてらっしゃいますね。永嶋さんが2003年でしたっけ?


永嶋國雄さん。原子力防災システム研究会を立ち上げ代表を務める。著書に『福島原発事故の深層』(eブックランド)がある。
 「正確に言うと同じ時までいた。私はさらにJNESができた時NUPECに残った。そういう人もいたんです。私は1年くらい残ったんです。なぜ行かなかったかって言うと『JNESに行くんだったら、検査部に行け』って言われたんです。緊急対策をやる仕事ではなかった。違ったことをやるんだったらこのまま残ると」

──松野さんは、永嶋さんの方が先輩で師匠に当たるとおっしゃっていました。

 「室長は松野さん。電力会社のポストになっています。ああいう外郭団体では、上の方は通産省のポスト。中間的なのは電力会社。実働として働くのはメーカー出身者です。辞める時は松野さんが室長で、私は部長のサポートをする調査役。まぁ、室長よりちょっと上くらいな感じ」

  「それでもう1つ面白い話がある。松野さんは、普通4年の任期なのに、4年より早く帰らせられた。これもプレッシャーなんですよ。それで四国電力に戻ったら、もう主要ポストじゃなかった。それはなぜかっていうと、その時にやってた仕事自体が電力会社にとってみるとあまり好ましくない」

──それは「シビアアクシデントが起きる想定をしてるのはけしからん」という反発ですか?

 「電力会社は『そういう事故は起こらないんだ』と言う。起こらないんだから『そういう仕事をしていること』を一般公開したら『そういうことが起こる』と考えていることになる。そうすると『今まで電力会社が言ってたことはおかしいんじゃないか』と、住民からすると思う。それを恐れたんですよ」

──なるほど。それは完全に逆立ちした論理ですね。「火事があったら困るから避難路は決めておきましょうね」とか「どれぐらいで燃え落ちるかシミュレーションしときましょう」とか、そういう準備が永嶋さんや松野さんの仕事だった。なのに「火事になると言い出すとは何事か」と怒る。馬鹿げていますね。

 「そこが原子力業界特有の物の考え方です。特にマスコミがかなり騒ぎ立てたんですよ。変なふうに歪曲したんです。それで住民が心配しないよう、電力会社とか国が情報を出さなくなった」

──マスコミの歪曲って例えば何でしょう?

 「反対派は『チェルノブイリみたいな事故が起こるから、日本の原発やめろ』と言ってるわけです。『レベル7の事故が起きうると予測していた』とマスコミが書いたら、住民の反対運動も強まっちゃう。そういうのを恐れるがゆえに、そういう情報は出さない。それが、東電や国の上層部の考え方なんです」

 「事故があっても、最大限10キロメートルまで。防災訓練の10キロメートルというのはどういう意味かっていうと、3キロメートルまで避難して、あとの10キロメートルまでは屋内待機。要するに家にいればいい、となっていた。それなら簡単な話でしょう? その程度で収まると、それでやっていたんですよね。ところが、シミュレーションやってみたら、10キロを超えることがある。なにも上手くいかなかったら。100キロメートル超えるとか、そういうのも出ちゃうんです」

──先程おっしゃっていた永嶋さんご自身によるシミュレーションですね(注:前回記事を参照)。

 「電源を復旧させるのが難しかったらっていう仮定です。津波とかを考えれば、もう電源が復旧しないのは分かりきったことです」

──では、政府や東電は「原発が電源喪失するなんて、ものすごく想定外の大事件」と大騒ぎしていますが、実はとっくの昔に「当たり前のこと」として予想しておられたということですね?

 「安全設計の考え方として『設計基準のシナリオ』と『設計基準を超えるシナリオ』があります。設計基準というのは『電源喪失しても30分以内で回復する』とかそういう話です。それは『設計基準』としてなら、良い。工学的に考えると、造る時に設計基準内に収めるのは当たり前です。しかし『防災』は設計基準よりもっと大きい、厳しいシナリオもあるんじゃないかと考えなくてはいけない。『電源が永久に途絶える』ってことも可能性の1つとして考える」

──「施設を造る時の『設計』と事故が起きたときの『防災』は別の基準だ」。よく分かります。

 「津波の想定は高さ15メートルとか20メートルとか議論しているでしょう? あれは『設計基準』なんです。1万年に1回起こるか起こらないかの津波に備える。だが、防災は、もっと小さい確率で起こる津波を考える。20メートルの防波堤を造ったとしても、それを超えることを必ず考えなければいけない。それがいわゆる『防災で想定する津波』です」

──「防波堤が津波より高ければ、津波が起きても原子炉や冷却装置、電源に到達しない。だから原子炉は無傷である」という発想が「設計基準」ですね。なるほど。

 「設計基準内で全て安全が確保できるのか。安全性に問題はないのか。そうではない。ということで、設計基準を超えるようなシナリオも考えた。これが防災の発想です」

100キロ避難シナリオを想定したら怒られた

──避難が100キロメートルを超えるようなシミュレーションをしていたら、10キロメートルという設定をした学者の先生に怒られたと取材で聞きました。「おれの顔を潰すのか」と。

 「ありますね。X(永嶋さんは発言者の名を挙げた。実在した。しかし松野さんの記憶する発言者Yと違った。X、Y両者とも当時現場にいたはずの人名である。しかし証言が食い違うので名前を伏せる)ですね。我々がやっていた緊急対策を評価する委員会の委員なんです。で、その時にPBS(プラント解析システム:Plant Behavior System)のシミュレーションを出したんです。まずは何もない、一切復旧操作もできない場合を考えてた。事故対策をいろいろ打って、それで事業者が何時間後に何ができるって情報あったら、それを計算します。そういう仕様を提出したんです。こんなことを世の中に出したら怒られると」

──それで100キロメートル避難のシナリオというのは、ないことになってしまったんですか?

 「そういうことは考えないことにしてしまった。ま、それは2002年前後の話だったかな」

──ずいぶん最近ですねえ。

 「その時は松野さんが室長だった。自主的に松野さんがそういうシミュレーションをいろいろやって、シミュレーションでトレーニングした結果を評価委員会に出した」

──松野さんは「私の顔を潰す気か」と怒られたそうです。それじゃもう、サイエンスの議論じゃないですね。

 「原子力安全委員会に防災部会ってのがあるんです。防災部会の部会長も怒った。原子力安全委員会の顔を潰すのかって。その防災部会の中にXも入ってた」

──つまり、X委員だけでなく、組織としての原子力安全委員会そのものも、顔を潰しちゃうぞって話なんですね。

 「だから安全委員会は避難範囲を10キロメートルで収めることにした」

──何かサイエンスに基づいて10キロメートルという線引きが決められているわけではないのですね。電力会社が事故をその範囲で収めるようにするという、努力目標みたいなものと考えればよいのでしょうか?

 「技術的にはできないことはないんです。フランスでは過酷事故が起こった時に、それを抑えるのは非常に難しいということで、フィルターつき格納容器ベントシステムっていうのを設置したんです。それで放射能の出る量を100分の1以下にした」 

──それは本に書いてらっしゃいましたね。

 「100分の1以下になれば、30キロメートル避難の事故でも2〜3キロメートルで済んじゃう感じなんです」

──そうか。放出量を100分の1に抑えれば、逃げなくてはいけない範囲も小さくなるわけだ。

 「実際の現象としては、体積を100分の1にすれば、大雑把に距離も100分の1になっちゃうんです」

──そうなんですか。

 「放射能が外へ出る場合に、半径方向に広がると同時に、放射性物質が上の方に無限に拡散していけばいいんだけど、実際は高さが抑えられちゃうんです」

──つまり上昇する高さには限界があるっていうことですか?

 「大気の現象として上がろうとすると冷やされて、ある程度以上は上がらない」

──きのこ雲と同じ現象ですね。

 「放出量が100分の1になると、1キロメートルから原子炉の近くでは吹き上げるから、せいぜい1キロメートルかその数倍にくらいになる。それで10キロメートルに収まると予測した」

──つまりフィルター付きベントに改良すると、避難100キロメートルは、大体計算上10キロメートル以内に縮小するということですね。

 「フランスはそういう設計の下で、フィルターベントシステムを付けたんです」

──つまり、フィルター付きベントにするということは、原子炉の中が高温になって高圧になったら、どんどんガス抜きをする。しかし外に放射性物質が出ないようにフィルターで濾してしまう。

 「ベントをせずに格納容器が破裂したらどうしようもなくなるからね」

──そういうことですよね。その場合メルトダウンすることは仕方がないんですか?

 「メルトダウンするシナリオは無視できません。メルトダウンしても、格納容器は壊れない程度に水を入れて冷やすことは簡単にできます」

──「container」(封じ込め容器)という元の意味どおり、格納容器で封じ込めてしまうということですね。

 「その時は炉心が溶融して原子炉圧力容器も壊れちゃう。その条件までは考えてる。だから格納容器が破壊するとこまでは行かない。格納容器は破壊しないように圧力を逃す。メルトダウンした燃料棒集合体の下の方は簡単な操作で水を入れることは確実にできる」

──つまり格納容器が破裂しないように、ガス圧を抜いちゃう。そのガスに危険がないようにすれば問題ないんだという発想ですよね。

 「それがフランスの考えね。アメリカはそれを付けなかった。付けなくて、運転操作でしっかりやるから抑え込むんだと。そして運転操作は、日本よりもっといろんな事態を考えて、運転操作のマニュアルを作って運転させてるんです。訓練している。で、日本はアメリカのやり方を取った。ところが、やる範囲を限定してしか訓練しなかった」

 「アメリカでは炉心が溶融した時、どうするかっていう訓練までやってるんです。日本はそこまでやらずに、まあ楽な、あまり厳しくならない段階の訓練で終わらせてる。それがあるから(3.11発生時の)東電の運転は極めて下手くそだったと思うのです」

──ああなるほど、分かってきました。そういう意味では日本が一番危ないんですね。非常時の運転技術はアメリカほど高度じゃない。が、フランスのようなフィルター付きベントもない。

 「その時の大きなポイントです。アメリカがそうやった時に、日本はただそのままアメリカのやり方を採用して、フィルター付きベント装置は付けなかった。運転操作も簡単にしてしまった。もう1つ大事な点は、そういう事故が起こることが、アメリカじゃまずないんじゃないかという点。理由は地震や津波がまずないから」

──なるほど。

 「確かに、地震、津波を除くと極めて起こる確率が少ない」

──テロだとか飛行機が落ちたとか竜巻が来たとか、そういう話ですね。

 「もちろん、だからテロの訓練はアメリカは凄いですからね。守衛はすごい武器を持ってるんです。日本の守衛は警棒すら持ってないからね」

──本当にそうです。アメリカの原発を見に行くと、日本で言えば軍隊レベルの装備です。

 「フランスもです」

PBSは動かしていた証拠が公開されている。

──先程大事なことをおっしゃったと思うのです。JNESがPBSのデータを持っていったはずだ、それを保安員が捨ててしまったのだ、という話です。永嶋さんはどこでそのお話を聞かれたんですか?

 「データが公開されています。去年の9月に、情報公開請求に従って保安院がしぶしぶ出したんです。そこにPBSのデータが入ってた。3月11日って日付まで入ってます」

──ええっ! そんな大事なことが公開されている! なんで新聞テレビが書かないんですかね?

 「そこまでは把握してないんでしょう」

──3月11日って日付が入ってるんですか。ダメじゃないか。

 「マスコミはどういう観点でやっているか分からないんだけど、大体、マスコミってのは面白けりゃいいっていう感じでやってるんでしょ。本当に問題を追及しようというあれでやってるんじゃないんじゃないですか?」

──かつての同僚の名誉のために言うならば、彼らも真剣にやってるんですけど、いかんせん勉強が足りないので、嘘を見破れないんですよ。

 (注:当時の朝日新聞紙面を見ると2号機だけに限って「このまま事態が悪化するとP時Q分に炉心溶融に至る可能性がある」などの文面があった。同時期、首相官邸からの発表資料によく似た簡略な記述が10行ほどあった。それをそのまま書き写したように推測できる。広報資料にも記事にも、PBSの名前がない。誰がどうやってこの予測を出したのか、などの5W1Hはまったく記述されていない。これは福山哲郎官房副長官の著書に出てくる記述とも符合する)

なぜ知見は死蔵されたのか

──PBSのデータを保安院が持ってたという話は、どういうふうに考えればいいのでしょうか。持っていたけど使い方が分からなかったということでしょうか?

 「そうです。それをどういう時に使うか。JNESの能力を保安院が理解してなかったんじゃないかって感じがしますね。僕は7年前に辞めてるから分からないけど、7年前から今くらいの間のJNESの担当者は、保安院に対してこういうことがちゃんとできますよ、ということを、ちゃんと理解してもらってなかったんじゃないか」

──JNESと保安院はそんなに距離があるのですか?

 「いや、JNESと保安院は近いから、歩いていける距離です(笑)。その時に保安院が、JNESがどういうことができるかっていうことを理解できなかった。それと、ここ7年間はちょっと私も分からないんだけど、JNESもあんまり難しいことは考えなくなったってのは確かにあるんです。全体として、あまりそういう30キロメートル避難になるような事故とか、そんな難しいことは考えない。だからJNESも保安院に対して、ちゃんと相手がJNESのデータを使うことを、判断できるようにデータを出してなかったんじゃないかという感じなんです。それで、そのデータは使わずに、保安院としては東電の情報にだけ頼ったんじゃないか」

──全てがちぐはぐですね

 「その時に松野さんと私がいれば、保安院を十分説得できた。東電はそういう道具を持っていないから、何もできなくて総理に説明できず、空転した。だから、保安院が出動しなければいけなくなった。そういうことを説明すれば保安院も多分採用したと思う」

──保安院はそれさえジャッジできないんですね。

 「何が大事かってことすら分からない」

──つまり分かっていて無視したんじゃなくて、分からないんだ。ジャッジする能力すらない。「それを東電にやらせたら、彼らは道具を持ってないからできないんだ」ということすら分かっていない。これは本当に情けないですね。

 「7年前に、全て現役を辞めた時点でJNESに言った。このシステム、PBSは東電、電力会社に持たせろと。それでお互いに計算して、お互いにチェックするやり方でやるべきだ。なぜなら、確かにPBSは技術は高いかもしれないけど、東電は現場の情報をいっぱい持ってる。だから事故の場合は同時に2カ所で計算して、それで結果をつき合わせて判断するという、そういうやり方にしろ、というのを僕が辞める頃に言ったんだけど。このやり方はフランスが同じやり方なんです」

──電力会社にやらせるということですか?

 「フランスは、EDFという国営電力会社が持っているプログラムのシステムと、国が持っているシステムが同じなんです。同じでお互いに計算しているんです。それで常に更新していって、何が正しいかをお互いで共通に認識して、次の判断を下すというやり方になっています」

東電はシビアアクシデントシナリオを主張する人を切った

──本当にその通りだと思います。一体どうして、それがなされていないんでしょう?

 「まず保安院はPBSの意味や重要性があんまり分からなかった。で、東電は数年前『100キロメートル避難の事故』とか厳しいことを言う奴は一切、上の方が排除していたんです。PBSのデータベースを作ってる時に、東電から出向してきた人がいたんです。その人に私は全部教えました。彼にデータベースを作る作業もさせてたから」

──え! 東電からの人もいたんですか。今その人はどうしておられるんでしょう?

 「まぁ東電に帰って、どこかの原発の技術部長かなんかになったけど、そういう人は戻っても、自分が身につけたことを、東電の中では採用にならなかったと思いますよ」

──なぜでしょう?

 「そういうことは考えない。PBSみたいな世界は考えない。だからPBSを受け取ることはしなかった」

 「東電から私のグループに来た人がPBSの開発のグループのリーダー格だった。東電は格好悪くて絶対に公表しないだろうなあ」

──PBSはERSSの一部と考えればよろしいんでしょうか。読者にPBSのことを、短い言葉でどう伝えるかを考えているのです。リアルタイムでのプラントデータを取ることができなくなった時の備えだというふうに考えてよろしいですか? リアルタイムでプラントデータが取れていれば、PBSが出る幕はないのですか?

 「いや、同時に使います。データベースは計算してあるから、データが揃っている。それでリアルタイムで進んでいるデータをチェックする。だけど、リアルタイムデータの方が精度が良い。しかし、リアルタイムだからゆっくりしか進まない。将来のことを予測するのはPBSで計算してあるので、早く出せる」

事故調査委員会もノーマーク

──国会事故調査委員会も政府調査委も、なぜPBSに言及しないのでしょう。永嶋さんご自身は、事故調からヒアリングとか受けてらっしゃらないんですか?

 「民間調査委員会からは、北澤委員長(宏一・福島原発事故独立検証委員会委員長)とは何度もありますね。国会と政府からはないです。だから、国会や政府調査委員会の報告の大きな欠点がある。私のように緊急時対策を20年もずっとやってたような詳しい人間が検証しているという部分が一切ない。委員はそういう知識や経験のない、要するに専門外の人です。だから、分からない。東電や保安院の人の言い分を聞いて『いや、そうじゃないだろう。PBSがあるはずだ』とか突っ込めないんです。だから今までの全ての事故調が不十分だと言ってるんです」

──保安院や原子力安全委員が「いや、そんな話はない」と嘘を言っても、「それは嘘だ」あるいは「何かを隠してる」と見破れないのですね。

 「だから事故調で報告内容に差が出てくるんです。だからみんな『推定』になっている。本当に分かってる人なら、推定ではなく確信を持った言い方ができる。そういうところに今までの経験者を入れなきゃダメだと私は言っています。これからはどうなるのか分かりませんが」

──国会事故調が最終報告書を出してお役は終わりみたいな感じになっています。が、お話を聞くと、真相に全然到達してないって感じがします。松野さんは「事故調査委員会はどこも深掘りができない」って言い方をされていました。つまり相手の嘘を見破れない。相手の隠してることを隠してるだろうと言えない。永嶋さんも松野さんと同じことをおっしゃってるように思えます。

 「同じです。事故調の報告書を見ても、なんかおかしいなって、いろいろ腹が立っている」

──言い方は穏やかですけど、やっぱり随分ご立腹のご様子ですね。PBSを含めて、解明できていないことがたくさん残ってるんですね。

 「国民も自治体もみんな不安に思ってるんですよ。だから、よく自治体から各事故調がやって来る」

──都道府県ですか?

 「例えば新潟県知事。事故調の報告書では、事故原因は本当には解明されていないと言ってるんですよ。それは、自治体はある程度知っているからです。新潟県の知事はあんまり分からなくたって、中に防災の専門家がいるからね」

──県レベルでもいるんですか。県庁ですか?

 「特に福井県なんかそうですね。はるかに保安院よりレベルが高いです」

──それは、例えば諸外国の例なんかも調べて、ちゃんと勉強してるということですか?

 「そうです」

──面白いですね。

 「だから、福井県が運転再開を認めるという判断は、安全かどうかの判断も、国がやってるよりもっとしっかりしたものです」

──県の独自のということですか?

 「そうです。結局それで県としては大丈夫だということで、運転再開を認める。その時に国は、一応やる格好にはなっているが、野田(佳彦)総理にしろ何にしろ、ロクなことができていない。だけど、再開しないとまずいから。だから、実質判断してるのは県です」

──まあ地方自治としては結構なことなんでしょう。でも何か逆転してます。

 大飯の再稼働の後、福井県に行ったんです。で、途中でふと気がついて見ると、やはりどの原発も、オフサイトセンターが4〜5キロメートルのとこにあるんですね、原発から。それは、福島第一原発のオフサイトセンターが大熊町の5キロメートルのところにあったのと、全く同じなんですよ。ものすごい危機感を感じました。ということは、もし福島と同じ規模の事故が起きたとすると、やはりこのオフサイトセンターは機能しない。なぜそれで再稼働できたのか。僕は不安に感じるところです。

 「オフサイトセンターも移設するところもあるんだけど、移設するにも時間がかかるんです。多分最短でも1年半かかるんですよね。そんなもん待ってたら全く運転できないでしょ。その時に福井県の技術屋さんは10キロメートル以内に収める自信があるということです」

 「安全委員会が30キロメートル。自治体も30キロメートルに拡大する政策変更をやっている。それはそれとしてやってもいいんだけど、もっと大事なのは放射能汚染なんです。30キロメートル避難規模の事故だとすると、まあ普通に考えて汚染するのは5倍の距離です。だから30キロメートル避難の事故で150キロメートル汚染になっちゃうんです。それほど大きく汚染する。その範囲内で、農産物の出荷がほとんど制限されちゃう」

──5倍という数字は最悪のシナリオのときですか?

 「福島第一発電所事故を『30キロメートル避難規模』と形容するなら『汚染範囲』は150キロメートルになります」

──それは現実に起きたことをおっしゃってるのですね?

 「150キロメートル内という福島と同じ汚染が、もし大飯原発で起きるとしたら、誰も賛成しない。県でさえ賛成しない。原子力安全委員会もそこがまるっきり分かっていないんです」

──それは汚染が及ぶ範囲ということですね。

 「何がその時大事かが、いちばん安全委員会が分かってないんです。福島県の人たちが避難する間に浴びた量が推定どれくらいか計算が出ている。100ミリシーベルトです。これは短時間だから許されます。ところが汚染の問題ってのは永久に続く。だから年間1ミリシーベルトで判断する。大変なことになるんです」

──なるほど。

 「今、全国各地で、30キロメートルまでEPZを広めるということで、防災対策をやっています。じゃあ汚染したら、何兆円もの汚染による損害を手当てするのか。それから住民に対して、福島と同じように汚染されますけどいいですか? という確認を取る話をしていないでしょ? やるんであれば、汚染の方の対策をまず取って、それで、避難30キロメートルをその後考える。非常に大事な問題です。汚染の問題というのはすぐ終わるのではなくて、何十年も続く」

──それは半減期を過ぎてもということですよね?

 「セシウム等の半減期は30年です。だから少なくとも30年の間では半分にしかならない。

 今、福島でやっている除染にしろ、農産物の被害にしろ、あれだけの大きな経済的被害を突きつけられている。福島で起きたああいう汚染を、大飯付近の京都とか滋賀県の人に『ああいうのを覚悟しますか』っていうことです。それを覚悟できる人はいないと思います」

──福井県の原発から30キロメートルでラインを引くと琵琶湖が入ってくるんです。琵琶湖は京都の上水道源です。しかも淀川水系ですから、そのまま大阪まで流れる。ですから関西の人間にとっては、福井の原発で福島第一発電所規模の事故が起きたら、飲み水が汚染してしまう。それが起きた時の人々の不安というのはすさまじいものがあると思います。

 「だから絶対に、汚染の拡散を大丈夫な範囲に抑えていかなければならない。せいぜい受け入れられるのは、避難を10キロメートル、汚染を50キロメートル程度でしょう。このためには、事業者に放射能放出抑制の安全対策を強化してもらうことになります」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36449  

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コメント
 
01. 恵也 2012年11月01日 12:10:59 : cdRlA.6W79UEw : cmmhfDW8MU
>>。リレベル7の事故が起きうると予測していた』とマスコミが書いたら、住民の反対運動
>> も強まっちゃう。そういうのを恐れるがゆえに、そういう情報は出さない。

言霊信仰というものが、日本人には色濃く残って戦前とまったく変わってない。
アメリカとの戦争に負ける危険を考えたら、真珠湾攻撃なんて考えられないのに最後まで
勝つもりで神風特攻ということまで行ってる。

神風特攻も最初ころは成果があったが、対抗策を本格的にアメリカ軍がとったらほとんど
成果もなくなってるのに確認も行わず神風特攻を延々と繰り返す暴走。
レベル7がないという夢想で、言霊信仰を建前に言論を弾圧し事故がないと信じてしまう。

今回は放射能の1%排出で済んだわけで、日本で起こるべくして起こった中事故であり10倍
の排出にならなくて日本人にとっては運が良かったというべき!


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