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原発を少しでも減らして廃炉に/金沢地裁の元裁判官(東京新聞:あの人に迫る)
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投稿者 みょん 日時 2012 年 11 月 11 日 13:40:22: 7lOHRJeYvJalE
 

原発を少しでも減らして廃炉に/井戸謙一 金沢地裁の元裁判官
2012年11月11日 東京新聞[あの人に迫る]

【井戸 謙一 いど・けんいち】
1954(昭和29)年堺市生まれ。東京大教育学部卒。司法試験合格後、79年に裁判官任官。88年から92年まで大津地裁彦根支部の支部長を務めたことから、滋賀県彦根市に居を構えた。金沢地裁の後、京都地裁、大阪高裁などに転勤し、昨年3月末で依願退官。滋賀弁護士会に弁護士登録した。
関西電力大飯原発(福井県おおい町)など若狭湾にある原発運転差し止め請求訴訟の弁護団に名を連ねるほか、福島の子どもたちの「集団疎開」を求める仮処分申請にも関わっている。


2006年3月に原発運転の差し止め請求を初めて認める判決を出した金沢地裁の元裁判官井戸謙一さん(58)。国策に異を唱えることを恐れず、原発政策の矛盾を突いた。退官後は弁護士に転身し、第二の福島事故を起こさせないために、若狭湾にある原発の運転差し止め訴訟4件で弁護団の一人として法廷に立っている。(梅田歳晴)


── 北陸電力志賀原発2号機の運転差し止め訴訟で判決文を書き上げたときの気持ちは。

ほっとした。これでいける、自分なりに満足いく作品が出来上がったと思った。人が判決文を読んで「なるほど。その考え方はあり得る」という判決文を書かなければいけなかった。自分の力を全部出し尽くし、どこに出しても恥ずかしくない判決だった。爽快感や満足感があった。

── 国策に反する内容の判決を出すことに重圧はなかったですか。

実は06年の1、2月くらいには判決の結論は決まっていたが、まだ判決文が書けるかは分からなかった。その段階まではプレッシャーがあったが、判決文が「書ける」と分かってからは気持ちが落ち着いた。どんな批判攻撃をされても大丈夫だと自信があった。

その前に住民基本台帳ネットワークをめぐる訴訟で金沢地裁裁判長として違憲判決(05年5月)を出していたこともあって、今後の自分の処遇に影響があるかもしれないという思いはあった。しかし裁判官をクビになるわけではないし、どこへ行っても裁判の仕事はできるわけだから。「上からにらまれる」とか、そういうことはあるかもしれないとは思ったけれど、小さいこと。命がなくなるわけではないし、今後の生活が成り立たなくなるわけでもない。自分が思った通りの判決を言い渡すことに比べたら小さいことです。

あの判決の中で耐震設計審査指針に合理性がないと書いた。そしてその後、原子力安全委員会が新指針に改訂した。安全委員会は、新指針はあくまで念のためで、今までの旧指針でも問題がないということも公表したが、判決が新指針改訂に影響を与えたとは思っている。

── 退官後、原発訴訟に関わる考えはもともとあったのですか。

退官を決めたのは福島原発事故の起きる前年の秋ごろ。一般の民事訴訟を扱って「町医者」的な弁護士になって、よろず相談所のようなことができればいいと考えていた。3人の子どもがいるが、一番下の子どもも就職したし、ほそぼそと地方都市で弁護士をやろうかと思っていた。でも、何の因果か全然違うことになった。

昨年5月くらいに滋賀県内を中心に活動する弁護士から誘われた。志賀原発運転差し止め訴訟が地震の問題が中心だっただけに、地震や耐震設計審査指針の基本的知識はあった。若狭湾の原発を取り上げるときに耐震問題は非常に大きな柱になる。自分の知識が役に立つだろうと思った。

── これからは、何を目標に原発訴訟に関わっていかれますか。

一つは、第二の福島事故を絶対に起こさせないこと。福島事故のようなことがもう一度起きたら日本は本当にだめになる。二つ目は少なくとも子どもはできるだけ早く福島から逃がす必要があると思っている。今後、福島の人たちの健康被害が出てくるんじゃないかと思う。子どもたちの甲状腺に何かしら異常を来していることは明らかなのに放置していいわけがない。

原発裁判をやりたくて裁判官、弁護士になったわけではない。金沢地裁に行けと言われて行ったら、たまたま差し止め訴訟が待っていた。つらつらと考えてみると、私が生まれた1954年はビキニ環礁の水爆実験、裁判官になった79年には米スリーマイル島の原発事故があった。福島原発事故のあった年に退官し、弁護士になった。運命は偶然の積み重ね。おもしろいものだと思う。

生きものは、次の世代を残すために生存しているわけだが、子どもを産めば、それでいいというわけではなく、子どもを社会的に一人前になるまで面倒を見なくてはいけない。でも、子育てを終えれば生きものとしての役割が終わっているのに、どういうわけかその後も命がある。

人間の人生は三分されていて、大人になるまでは自分のために生きる。大人になったら子どもが成人するまで子どものために生きる。子育ての役割が終わったら、これからの世代にいい環境を提供するために、残りの人生を使いたい。最近はそんな感じがしている。できるだけのことをやっていきたい。

── 国策に沿った形で判決を出してきた司法は福島の事故以降、変わっていくのでしょうか。

変わると思う。福島事故の責任の一つが司法にもあるという批判が言われている。国民に信頼されての司法だ。国民の期待を裏切る判決もたくさんあるかもしれないが、国民意識はどうしても判決に影響するもので、今までのようにはいかないでしょう。どう変わるかは分からないが期待はしている。

安全性に関して言えば裁判所が信頼してきた専門家の判断がいかにいいかげんだったかが白日の下にさらされた。その点でも今までと同じような判断はできない。今までのように、「原子力安全委員会が決めた安全設計審査指針に適合しているから大丈夫だ」という理屈は通りようがない。

大飯原発が再稼働しているが、結局、原発事故は起こらないという安全神話がまだあるからこそ再稼働ができる。政府が決めた安全基準すら一部しか満たしていない。免震重要棟や防潮堤ができるまで大地震や大津波が絶対に来ないとの前提がなければ、再稼働の判断なんてできない。でもそもそもそんな根拠はないわけだからそれはもう安全神話でしょう。逆に安全神話にしないと原発は動かせない。絶対に動かしたいという人がいて動かすためには神話を振りまくしかない。

今後、原発を少しでも減らしていくことができればと思う。できるだけすみやかに廃炉にするべきです。06年に志賀原発の判決を出したころはそこまで思っていなかった。原発を運転するなら「もう少しまともにやってよね」という感じだった。でも福島原発以降、この1年半で変わった。原発がなくてもやっていけるということも感じている。

原発に頼らない社会をつくるためには国民一人一人が賢くなることが必要でしょう。原子力ムラにだまされないように、情報が氾濫するなかで確かな情報を見に付けることが大切です。

──座右の銘とかは。

「たゆまざる 歩み恐ろし かたつむり」。長崎平和記念像を手掛けた彫刻家の故北村西望さんの俳句で、20年くらい前に新聞で読んでいい言葉だと思った。変なおじさんの小さな事件から社会が注目するような大きな事件までいろんな事件があるけれど、裁判官として手を抜かないでコツコツと取り組んで努力していこうと。この言葉は弁護士でもどんな職業にも通じることだと思う。


[インタビューを終えて]
「少しでも脱原発に向けて進むのなら」と多忙の合間を縫って今回の取材に快諾してもらった。紡ぐ言葉は極めて論理的。多くの人が抱いている原発に対する言いようのない不安を分かりやすい言葉で代弁しているようにも聞こえた。
福島事故後、メディアや反原発派から注目されるが、それは、単に全国で初めて原発の運転差し止め請求を認めた元裁判長だからではないと思う。弁護士の立場から福島の事故に住民の目線で向き合っている。「第二、第三の福島事故を起こさせない」。何度も口にした強い思い。今後も脱原発の流れの中心にいるべき人だ。
 

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