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三重・芦浜ルポ 「原発を止めた町」で考える(東京新聞:こちら特報部)
http://www.asyura2.com/12/genpatu29/msg/134.html
投稿者 みょん 日時 2012 年 12 月 01 日 09:10:33: 7lOHRJeYvJalE
 

総選挙・脱原発も過疎対策は素通り 三重・芦浜ルポ 「原発を止めた町」で考える
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012120102000116.html
2012年12月1日 東京新聞[こちら特報部]


衆院選では多くの政党が脱原発を掲げるが、原発に代わる地域振興策の議論は不十分だ。原発立地の大半は止まらぬ過疎化に対抗するため、原発に頼らざるを得ない面もあった。三重県の中部電力芦浜原発計画は40年近くに及ぶ反対、推進両派の衝突の末、約十年前に頓挫した。福島原発事故を目の当たりにした住民らは「造らなくて良かった」と安堵(あんど)するが、地域の衰退に手をこまねいている。(佐藤圭)


◆賛否で二分 後遺症も

「平凡な毎日がいかに幸せかを痛感している。推進派は『原発マネーで町が潤う』と宣伝していたが、大事故が起これば生活が破壊される。町の人たちは『あんたが反対してくれたおかげだ』と感謝してくれる」

芦浜原発計画に反対した三重県大紀町の元紀勢町議西村高芳さん(65)は、経営する理髪店の店先でこう力説した。

芦浜は旧紀勢町(現大紀町)と旧南島町(現南伊勢町)にまたがる小さななぎさだ。中部電力は1963年、三重県南部の熊野灘沿岸に原発を建設する計画を公表。その翌年、芦浜が候補地に決まった。

漁業者らが激しい反対闘争を繰り広げた旧南島町とは対照的に、旧紀勢町は当初から推進姿勢を前面に打ち出した。

西村さんは88年の旧紀勢町議選で見事トップ当選を果たした。当時の状況を「推進色が強い町と言われていたが、お客さんと話していると本音では反対の人が少なくなかった」と振り返る。

反対運動は旧南島町の闘争本部が96年、県民81万人の反対署名を当時の北川正恭知事(68)らに提出したところでピークを迎える。県の要請で中電が現地での立地推進活動を休止する「冷却期間」を経て、2000年2月、北川知事が計画の白紙撤回を表明。これを受けて中電は建設を断念した。

計画断念を見届けた西村さんは00年7月、町議を引退。だが、実際には3.11の直前まで火種はくすぶり続けた。

中電は11年2月、新たな原発建設を目指す経営ビジョンを発表。計画地は示さなかったが、芦浜原発計画の再燃が取り沙汰された。中電が芦浜の土地を保有していたからだ。だが、それも福島原発事故で消滅した。

西村さんは「中電は3.11の1年ほど前から、町の人たちを原発視察旅行に盛んに誘うようになっていた。少し風が吹けば、計画が再び一気に燃え上がりそうな雰囲気だった。一度染み付いたタカリ体質はなかなか消えない」と指摘した。

◆脱過疎あっての脱原発

紀勢町は「原発推進の町」だっただけに、今も原発に未練を残す人たちはいる。

推進派だった元漁業の谷口世紀さん(70)は「原発ができれば、雇用が確保できたし、関連の交付金で町おこしもできた。推進、反対両派の対立による人心の荒廃はあったが、町の将来を考えれば、原発誘致はやむにやまれない選択だった」と、自分に言い聞かせる。

旧紀勢町地区の人口は現在、原発計画撤回時の2000年から1,000人減の約3,800人。基幹産業の漁業はじり貧だ。

谷口さんは「どの過疎地でも活性化の決め手はない。(旧紀勢町の)現状は深刻だ。親世代が亡くなれば、そのまま空き家になる。数十年後には地域が消滅してしまうのではないか」と嘆く。

原発を推進しようとした親の背中を見て育った世代は、地域の現状をどう考えているのか。

旧紀勢町の伝統行事保存に取り組む地元女性グループ代表の西村元美さん(56)は「原発計画があったころは、中電が祭りなどの行事に寄付していた。だから今も地域のために無償で汗を流そうという人が少ない。原発に反対した人は私たちの活動を『中電からお金が出ているのではないか』と警戒する」と”原発後遺症”の深刻さを語る。

とはいえ、09年にスタートしたグループの活動は着実に実績を積み上げている。昔の伝承や風習を1話につき1枚で表現した紙芝居は既に35枚。郷土食を振る舞う週末限定のレストランは3年目を迎えた。

西村さんは「伝統行事や郷土食を子どもたちに伝えていきたい。子どもたちが郷土に誇りを持てなければ、未来はない。町おこしは簡単ではないが、私たちが頑張るしかない」と話した。


[白紙撤回した北川元知事]
かつて芦浜原発計画を白紙撤回した元三重県知事の北川正恭・早稲田大大学院教授に聞いた。

─なぜ白紙撤回表明に踏み切ったのか。
「(建設計画が浮上して以来)37年間、『ゴールなきマラソン』が延々と続いていた。いくら推進しても、立地は難しい状況だった。知事には新規立地に関する権限はないが、地域を統括する責任がある。考え抜いた末に『白紙』という結論にたどり着いた」

─中部電力が要請を受け入れるとの確証はあったのか。
「政治感覚としか言いようがない。要請を拒否されれば、ピエロになるだけだ。結果は期待した通りだった」

─旧紀勢町では過疎化に歯止めがかからない。
「反対、推進両派とも原発問題が生活そのものになっていた。(原発に代わる)地域振興策は簡単な問題ではない。芦浜は工業化社会から取り残され、町や住民の気持ちも国頼みだった。白紙撤回表明後、地域のお宝探しを一生懸命やったが、私の知事時代には実を結ぶことはなかった」

─芦浜に限らず、過疎対策の切り札はなかなか見つからない。
「地方も、国を造り替える気概を持たなければならない。補助金頼みの風潮はかなり残っているが、過疎が進んでいる地域ほど危機感を持っている。時間はかかるかもしれないが、活性化のきっかけをつかんだ地域は少なくない」

─衆院選では原発問題が大きな争点になっているが、立地地域のあり方についてはほとんど話題にならない。
「脱原発を実現するのであれば、新エネルギーの普及策や地域振興策なども煮詰めておかなければならない。感覚的に脱原発を叫んでも、上滑りするだけだ。もっと真剣に考えてほしい」


[衆院選各党公約 地域振興 具体性乏しく]
今回の総選挙で脱原発を主張する政党の衆院選公約や要綱を見ると、原発に代わる地域振興策は具体性に乏しい。

民主党は「地産地消の再生可能エネルギーを広め、地域に産業と雇用を創出」と触れているのみ。日本未来の党は「再生可能エネルギーの普及で地域産業を育成し雇用を拡大」、共産党も「再生可能エネルギーへの転換で日本経済と産業の新たな可能性を開く」との表現にとどまっている。

公明党は「雇用調整助成金を積極的に活用し、廃炉に伴う地域支援制度を検討」、社民党は「立地地域支援のための立法を行い、国が責任を持って地域振興と雇用対策を進める」と、法整備の方向性だけを示している。


[デスクメモ]
駆け出しは芦浜と目と鼻の先の熊野灘沿岸の尾鷲支局だった。地元では工業は育たず、漁業や林業も不振。過疎一直線だった。選挙のたび地域振興が語られ、原発や自衛隊基地の誘致話が浮かんでは消えた。それから四半世紀。「美しき故郷」で済まさず、過疎地の崩壊を救う脱原発が求められている。(牧)
 

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