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犠牲の灯り 第1部 「ちむぐりさ」 /3 父と子<下>(東京新聞)
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投稿者 みょん 日時 2013 年 1 月 05 日 07:48:50: 7lOHRJeYvJalE
 

犠牲の灯り 第1部 「ちむぐりさ」 /3 父と子<下>
2013年1月5日 東京新聞[1面]


師走のネオンが目に痛い。客引きの声も軽快なクリスマスソングも、遠くで響く雑音のようだ。

昨年末、大城武正(77)=沖縄県糸満市=の次男(41)は一人、大阪の街にいた。

「目が覚めるたび、今の自分が受け入れられないんです」。故郷の島から北へ1,200キロ。内地の冷たい夜に、自分が何者かもわからなくなる。「健二とでも呼んでください」とつぶやいた。

健二には沖縄に妻と3人の息子がいる。クリスマスはいつも家族5人でおもちゃ店に向かい、気前の良いサンタ役に。正月には父武正を囲み、泡盛をあおった。住宅リフォーム業を営み、住人が変わるアパートを飛び回っては壁紙を張り替えた。

歯車が狂いだしたのは、3年ほど前だ。

「信じないだろうけど」と健二は、大阪の夜に白い息を吐く。「霊が見えるようになったんだ。いないはずの人々の、はっきりとした姿かたち。街でも仕事場でも見えた」

外に出るのが怖くなり、自宅に引きこもるようになった。病院で抗うつ剤と睡眠薬をもらったが、「霊」は消えない。仕事は廃業し、蓄えは底をついた。

「ばかなことを言ってるんじゃない。家庭があるだろ」。父の武正からは何度も叱責された。妻はしびれを切らしたように弁当店のパートに出た。

◆◆

大震災と福島第一原発事故が起きたのは、そんなころだ。しばらくして、健二は新聞の求人広告を偶然目にする。「急募 福島県 日給1万千円」。地元では望めない給料。事故収束に人手のいる面接先の社長は言った。「放射能なんて、へっちゃらだから」

沖縄でふがいない姿をさらすより、本土で再起したい。福島第一原発で働くことは家族に告げず、島を出た。

だが、福島で健二が見たのは、想像を超える惨状だった。

原発へ向かう作業員バスに乗り込むと、津波で朽ち果てた家々の残骸が目に飛び込んでくる。人々は集落から消え、絶え間なく波打ち寄せる海だけが生きているようだった。

健二は10代のころ、祖父の背におぶわれてサイパンの海に飛び込んだ父の話を聞いたことがある。ある時、酒の入った武正がぽつりと漏らしたのだ。「みんな次々、崖から飛んでいったさ」

戦時中、幼い父が見たのも、こんな絶望の海だったのだろうか。

◆◆

霊を見る健二のような体験は海外でも報告されている。英ケンブリッジ大で戦争体験とトラウマ(心的外傷)を研究するギリー・カー博士は「親子間でトラウマが引き継がれ、それが霊視という形で現れる人もいる」と言う。「沖縄のような小さな島で、体験者や戦跡が多く残る環境では、その傾向が強い」

父の体験と自分との関係は分からない。ただ、健二は原発周辺でも「津波で犠牲になった人の霊」にさいなまれ、わずか1カ月で福島を去った。各地を転々とし、今は大阪の土木現場で働く。宿舎代や食費を抜けば、手元には1日3,000円。沖縄の妻子には、10万円を2度送れただけだ。

福島を離れる直前、健二は武正に電話を入れ、自分を恥じた。「みんなの暮らしを壊してしまって、ごめん」

「体、気を付けろよ」と返してくれた父には、今も自分がどこにいるか告げられずにいる。(敬称略)
 

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コメント
 
01. 2013年1月06日 07:03:58 : ccXDyZTDcw
霊がみえるのに耐えられるなら霊能者になればいい。能力を生かすのも運命かも
しれない。

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