なぜ、日本人は子どもを被曝させたか？（４）　必死の注水の理由
http://takedanet.com/2013/01/post_0023.html
平成25年1月24日　武田邦彦（中部大学）

2011年3月12日、原発事故が起こった時、日本中が青くなり、自衛隊がヘリコプターで必死に上空から水を掛けた.　その後も必死の防御作業をした。あれは何だったのだろうか？　どんな事が起こると思ったのだろうか？

以下、政府、原子力安全委員会、保安院、東電などが、今まで言ってきたことと、事故後、発表したことが事実なら、「たいした事が起こらないことがわかっているのに、大げさな防御を必死でした」という実に奇妙な結論になる.　これは原発の安全性と再開問題に大きな課題を残す.

福島原発は軽水炉で、水で中性子を減速している。だから原子炉の温度が上がり水が蒸発すると水蒸気になるので、減速せず核分裂は止まる.これを「固有安全性」といって政府や電力がくり返し原発が安全だという理由に使っていたことだ。

しかも地震の時に緊急停止して制御棒（ホウ素）が入っている。だから制御棒が中性子を吸収するのでまったく核分裂はしないはずだ。

そうすると、大きな危険は、水と金属が接して金属が腐食して水素を発生することによる水素爆発だけである.　原子炉内は次々と水素が発生するので、それを建物内に抜いている間は、建物上部で爆発する可能性があっても、原子炉は爆発しない。

そして、１，３，４号機が水素爆発し、2号機からの大量の放射線が破れた窓からでたのだから、核爆発が起こらなければ、福島の状態が軽水炉における「最大の被害」ということになる。この「最大」というのは政府や電力がこれまで言ってきたことが正しいとすれば最大になるという意味だ。

ところが、爆発後に政府はスピーディーの結果を発表せず、福島県は1年100ミリまで大丈夫と言った.つまり、原発は冷やしもせず、必死の防御をしなくても、問題は無かったということになる。それなのに首相は福島の東電社員に事故後、「命をかけて＊＊＊を守れ」と言った。何を守れと言ったのだろう？？？

第一に「軽水炉は水が無くなり、制御棒が入っても核爆発する」ということなら、他の原発は絶対に再開できない.

第二に「1年100ミリシーベルトまで大丈夫」と言うのがウソなら、政府、自治体などの責任が問われるし、再開に当たっても基準を合意しておかなければならない。

その他の理由もあるだろう.　でも今の所、この二つが主である.マスコミが騒いだ「メルトダウン」というのは水素爆発より軽い事故になるので（スリーマイル島事故はメルトダウン）、マスコミは言葉にとらわれて誤解しているが、メルトダウンは福島事故より1000分の１ぐらいのことしか起こらない.

そうすると、政府などのうろたえぶりは何を怖がったのだろうか？　まして、福島県や日経新聞の論調から言って、日本の中枢部は「今回の福島原発では健康被害はでない」と考えているらしい.そうすると、あの事故の時に何を恐れたのだろうか？

くり返すが、現在の状況以上のことが起こるということは、「核爆発」だが、チェルノブイリ以来、日本の原子力関係者は「チェルノブイリと軽水炉は違う。制御棒が入らなくても固有安全性があり、制御棒が入れば万全だ」と言ってきたが、事故が起こったとき、何が起こると思ったのだろうか？？

もし、日本の原子力専門家が「もっと恐ろしいことが起こる」と恐れたとしたら、原発再開はできない。もしあるなら、まずは「何を恐れたのか？」をハッキリさせて欲しい。私は「水素爆発すると1年1ミリを超える」と考えたので避難を呼び掛けたが、1年100ミリならゆっくり避難しても大丈夫だからだ.

事件直後、あらゆるマスコミが連日、トップで報道した.それが2年たって全くといって良いほど報道されていない.　その間に何が変わったのか？　今こそ、「原発を再開する」ことに抵抗のない原子力科学者、電力関係技術者が自らの信念をもって社会に「なぜ、あれほど苦労して注水したのか？」を明らかにすべき時である。

おそらくは事故直後は「1年1ミリ以上の被曝になるから大変だ」と思い、それを防ぐことができなかったので、「1年100ミリ」と言い出したと思います。そんなウソつきなら原発は全くできません。

コメント
01. 2013年1月29日 20:21:51 : cbSvFkdXRQ 武田氏は、自分の変節の検証をまず行うべきである。 また、放射能の脅威を過大に言う一方、地球温暖化やダイオキシンやたばこの害については過小にしか評価しないダブルスタンダードについて説明すべきである。 放射能については法律論で立論しながら、地球温暖化は条約を無視するダブルスタンダードについて説明すべきである。
02. 2013年1月29日 20:57:01 : FfzzRIbxkp フクイチ事故が起きた時の政府の対応がデタラメだったのでしょうか。 する必要のないことをしたために、逆に事故の被害が大きくなってしまったのでしょうか。 自衛隊は阪神淡路大震災では、ろくな対応ができず、中越地震でも、消防隊の救援活動には及ばす。３１１の地震・津波対応は、初動も早かったのですが・・。 毎日のように自衛隊のヘリコプターが上空を行き来しますが、 自衛隊は、ただ今、フクシマの除染作業をしているようです。 自衛隊は、原発事故にもともと対応してないならば、 　この国には、原発事故に対応する組織が全くなかったのかと呆然とします。 自衛隊は、自衛もできない組織とは。全く・・・。
03. 2013年1月29日 23:19:38 : QD4LP89UO2 >>01 日本の政府は、 地球温暖化対策の推進に関する法律　は守ろうとしているのに、 電離放射線障害防止規則（年間１ミリや放射線管理区域 等）という法律を 完全に反故にした。 武田氏以前に、国が法律を守らない、これについてあなたはどう思う？ 武田氏は、地球温暖化については、法律以前に、 物理学者という立場から見解を述べているだけであり、 大学の教授であり科学者という立場上、 憲法２３条に定める「学問の自由」があり、 その研究内容について自由に発表することが許されている。 地球温暖化説に異を唱えているだけであり、法律そのものを否定したり 反故にしているわけではない。 タバコやダイオキシンについても同様だと思う。
04. 2013年1月30日 02:43:31 : GNcNi6mjs6 地球温暖化詐欺という映画をみなさんはご存知でしょうか？ 地球温暖化が人為的であるという理論は イギリスの保守党の首相マーガレット・サッチャーによって、 原子力の推進のためと国有石炭産業の炭鉱労働組合のストライキの影響を 減らすために宣伝されたプロパガンダであると主張されています。 http://www.youtube.com/watch?v=P--pmZpwYEY&list=PL0FE784D4266C9287&index=1 私はこれから見るのですが… 確か３０年程前の社会の教科書にも石油があと５０年で枯渇するとか 二酸化炭素などの温室効果ガスの影響で地球が温暖化する等と書かれていたと 思いますが、教科書というのもウソが多いようですね… 中国の教科書では尖閣は中国の領土だと教えているらしいです 西澤潤一先生が「教科書は必ずしも本当ではない」とおっしゃって 本当かどうか検証する姿勢を強調されていらっしゃいましたことが 思い出されます…
05. taked4700 2013年1月30日 18:59:04 : 9XFNe/BiX575U : DPl5Y3GVS2 武田先生の活躍には敬意を払いたい。ただ、今回は多分勘違いをされていると思う。 まず、使用済み核燃料プールの冷却が問題であったはずで、4号機はその典型。3号機にしてもそう。はっきり言って1号機の水素爆発も使用済み核燃料プールが関係していた可能性は残っている。 次に、原子炉に入っている燃料集合体は、それ自体、つまり、制御棒がセットされた状態でも、ある程度燃やした後は、短寿命の放射性核種が燃料棒内に大量に発生してしまうので、仮に制御棒がセットされていることや中性子の減速材である水が無くなったとしても、中性子による連続核反応はほとんど起こらないが、短寿命の放射性核種の崩壊による崩壊熱が発生し、それによってメルトダウンする。多分、武田先生はこのことも以前の原子力村は起こらないとしていたのに、福島台地原発事故では起こっているから問題だと主張されているのかもしれない。 まあ、どちらにしても、原子炉が当初言われていたような安全性を持ってはいなかったということは真実だし、今の現実でもあると思います。
06. モンテカルロ・モナコ 2013年1月30日 21:09:09 : jxuoe3ac9bV5I : UZZkrvTd1c タケダせんせぇ（先生）ぇぇぇぇぇ ４号機の４階の真ん中のパネルが南北の両サイドとも吹っ飛んでいます！ これって３月１５日未明の朝６時の爆発だとすれば、天気は雨でなく、薄明りの中で福島中央テレビの定点カメラが確実に映像を捉えているはずですよね。 見たいよ………　　見れるものならね ケネディの暗殺かもね
07. 2013年1月31日 02:55:15 : sGMdQahdXY >>01 ＞放射能については法律論で立論しながら、地球温暖化は条約を無視するダブルスタンダードについて説明すべきである。 すごいこじつけだ。 これでいえば、スピード違反した者を放置してはいけないというなら、地球温暖化の条約を無視する（賛同しない）論議をすることはダブルスタンダードだ、ということにもなる。 法規の性格やその拘束性の問題と、その内容自体にも疑義がある条約とと二重写しにしたのではどうしようもない。 １ｍｓｖというのは、原子力事業者が、これを超える放射線量を施設外にもたらして被ばくさせてはならないことを定めているもので、加害者―被害者の関係を明瞭にしており、これを破ることは傷害の意味を持つ。 温暖化問題での各国の条約遵守問題とは位相が違う。 なお、自分も、武田氏のダイオキシン、タバコの害をめぐる評価に賛成していないことを加えておく。 また、原子炉をめぐる評価についても疑問点は多い。 しかし、被曝問題への警鐘については（この領域の指摘が非常に少ないこともあるが）語られている内容を積極的に評価している。 （温暖化問題は疑義が大きい）
08. 2013年2月25日 03:27:58 : AiChp2veWo タバコと申しますと、全国、総禁煙社会となって久しいですが、癌の発生率とタバコの禁煙化が進む度合いが反比例しているグラフをどこかで目にしましたが、これって何なんでしょうか？。禁煙が進むにつれて癌が増加するって、普通、理解しがたいです。このグラフの作成の仕方がいわゆる正確であるとするなら、タバコは癌を抑制ないし発生させない何かの作用でもあるんでしょうか？。

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