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量的緩和政策の真の目的は“物価”ではなく“国債”だった?  行革なき消費税増税が招く行政の肥大化とムダ拡大
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/298.html
投稿者 MR 日時 2012 年 3 月 01 日 02:20:00: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://diamond.jp/articles/-/16372
野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

量的緩和政策の真の目的は“物価”ではなく“国債”だった?

 前回、「糸で引くことはできるが、押すことはできない」(金融引き締めは効果を持つが、金融緩和政策で経済成長率や物価上昇率を引き上げることはできない)と述べた。
 このことは、実際のデータで確かめられる。これについては、前回の最後に簡単に紹介した。以下では、これをもう少し詳しく見ていくことにしよう。
2001年からの量的緩和政策で
当座預金増が目標とされた
 2001年3月19日から2006年3月9日まで、「量的緩和政策」が実施された。このときに行なわれたのは、つぎの2つである。
(1)日銀当座預金残高の増加
 第1は、市中銀行が日銀に持つ当座預金の残高を増やすことだ。これによって、市中のマネーサプライを増やし、物価上昇率を高めることが目的とされた。
 なぜ準備預金を増やせばマネーサプライが増えるのか?
 仮に、ハイパワードマネー(マネタリーベース)とマネーサプライの比率(貨幣乗数)が一定であれば、「準備預金を増やせばマネーサプライが増える」ということになる(注1)。
 そのメカニズムについて、このときに言われたのは、つぎのようなことだ。
 義務付けられている所要額を大幅に上回って銀行が過剰な準備預金を保有すれば、銀行は金利なしの資金を保有するので、収益機会を逃すことになる(注2)。したがって、利益を得るために、貸し出しなどを増加させるはずだ。そうなれば、マネーサプライが増加する(しかし、実際には、後で述べるように、このメカニズムは働かなかった)。
 日本銀行の当座預金は、量的緩和開始前の01年2月頃には、4兆円程度だった。量的緩和政策によって、当座預金残高を5兆円程度とすることが目標とされた。その後8回にわたって目標が段階的に引き上げられ、04年1月以降は、30兆から35兆円程度となった。
(注1)「ハイパワードマネー」とは、現金通貨(日本銀行券と硬貨の合計)と民間金融機関が保有する中央銀行預け金(日銀当座預金残高)の合計のこと。日銀の統計では、「マネタリーベース」と呼ばれている。「ベースマネー」と呼ばれることもある。
 通貨量の残高を表すものとして、2008年4月までは「マネーサプライ」という言葉が使われ ていたが、現在では「マネーストック」と呼ばれている(定義も若干変更されている)。マネーストックの指標M1、M2、M3については、前回述べた。本稿 では、08年以前の文献も参照するため、「マネーサプライ」という用語を使うこともある。
(注2)従来、日銀当座預金は無利子であった。しかし、2008年11月に「補完当座預金制度」が導入され、日銀当座預金の平均残高が必要準備額を上回る場合には、上回った金額について、日銀が金利を支払うこととなった。
http://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/oth_a/index.htm/
次のページ>> 量的緩和政策を行なったがマネーストックは増えなかった

(2)長期国債の買い入れ
 第2は、長期国債の買い入れの増額である。
 これが必要なのは、「日銀当座預金を円滑に増加させるため」と説明された。
 前回見たように、結果としては、日銀のバランスシートで、負債で当座が増え、資産で国債が増えた。
 05年末時点では、日銀は日銀当座預金と銀行券で合計117兆円のマネタリーベースを負債として供給し、長期国債の保有額は63兆円に達した。63兆円というのは、当時の国債残高に比べるとかなり多い。
マネーストックもGDPも増えず
物価も上昇しなかった
 では、この政策は効果を発揮しただろうか?【図表1】に明確に見られるように、GDPや物価に関する限り、効果はなかった(注3)。
http://diamond.jp/mwimgs/9/1/600/img_915b2bd10c6ff11d997c9c6a49ff14ed21095.gif
 すなわち、ベースマネーの伸びは大きく高まったが、マネーサプライの伸びは低迷を続けた。
 マネーストックとしてM3をとった場合の伸び率は、前回示したとおりである。金融緩和を行なったにもかかわらず、2002年から06年まで下がっている。
 つまり、量的緩和政策を行なったにもかかわらず、マネーストックは増えなかったのである。
 1ページ目で、「仮に、ハイパワードマネーとマネーサプライの比率が一定なら、量的緩和政策はマネーサプライを増やす」と述べた。実際には、この比率は一定ではなく、マネーサプライに対する準備預金の比率は、顕著に上昇したのである。
「日銀保有の国債が増え、銀行の当座預金残高が増える」という政策の直接的な効果はあったが、それだけであって、波及効果はなかったのである。
(注3)量的緩和政策の効果に関する詳細なサーベイは、鵜飼博史、「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No.06-J-14、2006年7月。
次のページ>> 量的緩和政策の真の目的は、国債購入だった?
目的は国債購入で
当座預金増は結果?
 ここで、つぎのような仮説を立ててみよう。それは、「量的緩和政策の真の目的は、国債購入だった」というものである。
「もともと物価目標が達成できないことは、わかっていた。しかし、それは『目くらまし』にすぎないのであって、本当の目的は国債消化の環境づくりだった」との仮説だ。
 この理解によれば、物価上昇率や経済成長率の引き上げは、もともと目的ではなかった。そうだとすれば、量的緩和政策は「失敗した」とは言えない。「もともと効果がないとわかっていることを行ない、そのとおりになった」というべきだろう。
 そして、真の目的である国債保有の増加は、先に述べたように実現した。だから、「真の目的に照らせば、量的緩和政策は成功した」ということになる。
 このように考えられる理由は、いくつかある。
 第1は、新規国債発行額との関係だ。
【図表2】に示すように、それまで年間20兆円未満だった新規国債発行額は、1998年度に34兆円と急激に増加し、99年度には37.5兆円まで増加した。したがって、国債消化に深刻な懸念が生じた。このため、日銀による買い上げが行なわれたのだと考えることができる。
http://diamond.jp/mwimgs/9/9/600/img_9961f3816d3b22537bc72b9a450cfdba19604.gif
 量的緩和政策の終了も、新規国債発行額の変化と関連している。税収の増加によって、新規国債発行額は2005年度から減り始め、06年度には20兆円台になった。このため、量的緩和政策の必然性が薄れ、停止されたのだと考えることができる。
 このように、少なくとも結果的に見れば、量的緩和政策が行なわれた時期と、新規国債の年発行額が30兆円を超えた期間とは完全に一致している。
次のページ>> 量的緩和政策の「時間軸効果はあった」のか?
 第2は、当座預金残高の増加が目的であったのか否かである。通常の説明では、「マネーサプライを増やすために当座預金残高増が必要であり、そのた めに必要であれば国債を買う」とされている。つまり、目的は当座預金残高の増であり、国債購入はそのための手段であるとされている。
 バランスシートはつねに均衡しなければならないのだから、当座預金残高の増加は、日銀貸し出しの増加、国債の増加などを伴っていなければならな い。そして、バランスシートを事後的に見る限り、どの変化が意図的な目的をもって行なわれ、どの変化がバランスをとるための調整として行なわれたのかを区 別することはできない。
 しかし、「準備率引き上げという強制的な手段を用いずに、利子がつかない当座預金の積み増しを要求し、バランスをとるために受動的に国債を購入する」というのは、不自然な説明だ。
「国債の購入が目的であり、その代金を当座預金残高増という形で支払った」と考えるほうが自然である。
 しかし、これでは、「日銀による財政ファイナンス」(または、「国債の貨幣化」、「マネタイゼーション」)ということになってしまう。そして、そ れに対しては、批判が起こる。そうした批判を避けるために行なわれたのが、「当座預金残高の誘導」という表現だったのではないだろうか。
 本当の意図がどうだったかは検証しようのないことだが、現実に起こったのが上の解釈と矛盾しないことは間違いない。
「時間軸効果」も目くらまし?
 前記鵜飼論文(注3)は、量的緩和政策の「時間軸効果はあった」と評価している。すなわち、イールドカーブを平行的に引き下げることができた、というのである。簡単に言えば、短期金利を下げただけでなく、長期金利も下げたということだ。
 通常、「時間軸政策」とは、「緩和を将来も続けると約束することによって長期的な緩和効果が実現されること」であると説明されている。
 確かにそうだが、実際に長期国債を購入したことは事実である。そして、長期金利引き下げは、それによって実現したのだと考えることができる。
次のページ>> 今また日銀の国債購入の必要性が復活している
これによって、新規国債の発行を支障なく行なうことが可能となった。
 10年国債の応募者利回りは、2000年には1.622〜1.825%だったが、01年には1.027〜1.504%とかなり低下し、さらに03年には0.470〜1.518%と顕著に低下した。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/index.htm
 これは、緩和政策の継続期待によるものというよりは、長期国債購入の直接の効果であったと考えるほうが自然であろう。そうであるとすれば、「時間軸効果」というのも、量的緩和政策の真の意図を隠すための『目くらまし』であったと考えることができる。
 ただし、日銀はこの国債を保有し続けたわけではない。前回見たように、国債保有は04年でピークになり、それ以降は減少した。そして、09年には、ほぼ量的緩和政策前の水準まで戻った。その意味で言えば、結果的には国債の貨幣化は行なわれなかったということができる。
 ところが、今また、国債発行額の急増を背景に、日銀の国債購入の必要性が復活しているのだ。

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第2章 国債消化はいつ行き詰まるか
第3章 対外資産を売却して復興財源をまかなうべきだった
第4章 歳出の見直しをどう進めるか
第5章 社会保障の見直しこそ最重要
第6章 経済停滞の原因は人口減少ではない
第7章 高齢化がマクロ経済に与えた影響
第8章 介護は日本を支える産業になり得るか?


http://diamond.jp/articles/-/16370
田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授] 行革なき消費税増税が招く行政の肥大化とムダ拡大
行政改革を「官僚主導」で進めた日本
「民間主導」で進めたオーストラリアの違い
 私は1994年にオーストラリア政府の招きで訪豪し、行政改革について多くのことを学んだ。
 私の学生時代に発足した、池田勇人内閣の「行政改革調査会」(佐藤喜一郎会長)以来、行政改革に関する政府の諮問機関は、途絶えた期間は短く、形を変えながら次々と設置されて答申をまとめて発表してきた。
 だが、答申内容とそれを受けての実績の落差はあまりにも大きかった。佐藤調査会の分厚い答申に対しても、実績は「一省一局削減」と「総定員法の制定」くらいなもの。
 どうしてそうなったのか。答ははっきりしている。わが国では行政改革や官僚改革まで官僚主導で進められてきたからだ。
 オーストラリアでは、80年代に、大がかりな行政改革に取り組み、機構改革、行政の簡素化、政治主導体制などで大きな成果を挙げていた。
 だから私は視察の大半の日程を、行政改革を断行した民間人との面談に割いた。
 オーストラリアは、エリザベス女王を戴いた日本とよく似た議院内閣制をとり、日本と共通の制度上の問題を抱えていた。
 ところが、何組かの人たちと会談した際、1つの事実によって決まってこちらの本気が疑われてしまった。
 それは、「日本では行政改革も官僚が主導するそうだが、それで行政改革ができるはずがない」ということである。
 彼らの一言一言は、私が以前から感じていたことを確認させるものだった。
次のページ>> 「行政構造改革会議」も野田政権では官僚主導にならざるを得ない
「われわれは行政改革に関する官僚の陳情を一切受けなかったし、彼らからの電話にも出なかった」
 オーストラリアでは、民間主導の行政改革が徹底していたのである。会うのは、官僚から説明を聞く必要があるときだけだったという。
 その後、私は行革委員会の事務局長に官僚を当てるという不見識な人事に強硬に反対した。新党さきがけの同志たちも同調し、2人の閣僚(武村正義氏と出井正一氏)の辞任も覚悟で臨んだのである。
 官僚が行政改革を主導するのは、被告が判決文を書くようなもの。受験生が答案の採点までするに等しい。患者がメスを握って手術するのと同じ。挙句は、まな板のコイが包丁を握るようなものと強烈に批判した。
今回も官僚主導の「行政構造改革会議」なら
行政は簡素化どころか肥大化する
 現在、野田佳彦政権は、作成が進められている「行政構造改革実行法案」に「行政構造改革会議」の新設を盛り込むと言われている。これは、国鉄など3公社の民営化を提言した「土光臨調」(第2次臨時行政調査会)をモデルにするという。
 しかし、これも野田政権では官僚主導にならざるを得ないだろう。そして、多くの提言の中から、制度の新設や権限の拡大の箇所のみがつまみ食いされて終わるのが目に見えている。行政の簡素化どころか行政の肥大化さえもたらすことになる。
 私は、97年の消費税率アップ前にも、徹底したムダ使いの排除を主張した。当時閣内にあって閣議でもそれを強く主張してその後の行政改革会議の設置を促した。
 だが、行政改革会議の設置前に私は落選の憂き目に遭って現場を離れてしまった。
 行政改革会議は、その後省庁の再編などの機構改革に矯小化され、またもや行政の焼け太りを招くに至った。
次のページ>> 官庁・独法統廃合のほとんどは行政簡素化を“偽装”するもの
 官庁や独立行政法人の統廃合のほとんどは行政の簡素化を偽装するもの。人員や経費が劇的に減らなければ何の意味もない。
 今回の「行政構造改革会議」も官僚主導であれば、96年と同じ運命にある。会議そのものが大きなムダになってしまうのだ。だから、行政改革はどうしても消費税増税に先行させなければならない。
 行革をしないで増税することは、ガソリン漏れの激しい中古車に給油するのと同じ。給油してから修理すると言っても誰が信用するのか。ムダはますます大きくなるのではないか。
 もしも、野田政権に誠意があれば、徹底した行政改革を先行させるのは当然のこと。消費税増税法案の提出は後回しにすべきなのである。

◎編集部からのお知らせ◎
2001年に講談社から刊行された田中秀征著『梅の花咲く――決断の人・高杉晋作』が近代文藝社より新装版となって発売されました。命を懸けて幕府の息の根を止め、新しい国家への道を切り拓いたリーダーの生き方は、今の日本人に何を問いかけるのか――。ぜひ、ご一読ください。

 

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コメント
 
01. 2012年3月01日 09:34:53 : QuXwEmPL1s
為替に言及してないのでダウトですな

長々しく書いてるけど鼻紙にもならん


02. 2012年3月01日 10:12:30 : IOzibbQO0w

>>01
為替からの波及効果も小さいから
日銀がハイパワードマネーを増やしても、マネーストックもGDPも増えなかったということだな

03. 2012年3月01日 10:28:43 : IOzibbQO0w

つまり、量的緩和は、ゼロ金利下では、投資・消費誘発効果が消え、リスク資産保有者へのプレゼントであり、近隣窮乏策になるという
既に知られていた理論と、非常に近い結果になったということか


04. 2012年3月01日 10:36:07 : IOzibbQO0w

あと緩和競争による通貨安では、リスク資産が大きく上昇するから
その波及効果(いわゆる富裕層からのトリクルダウン)は少しは期待できるが

格差拡大効果も大きい

また政治力(軍事力)の強い国の通貨ほど、減価しやすいという傾向があるから

日本での雇用増加はあまり期待できず、
せいぜい低賃金雇用が減らないことで満足するしかないか


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