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議員年金廃止で公費激増に異議 一市長が起こした反乱の顛末 3月会合は国債購入増額見送り日銀方針変更 労働契約法改悪
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/432.html
投稿者 MR 日時 2012 年 3 月 22 日 00:57:59: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://diamond.jp/articles/-/16682
議員年金廃止で公費激増に異議
一市長が起こした反乱の顛末

公費負担の支払いを拒否する群馬県安中市を市議会議員共済会が提訴する事態に発展も、「反乱」は幕引きへ(写真は議員共済会が入居するビル)
Photo by Toshiaki Usami
 たった1人の反乱に終止符が打たれることになりそうだ。地方議員年金制度の廃止に伴う自治体負担金の増額をめぐる、群馬県のある市長の異議申し立てである。

 議員特権として批判を浴びていた地方議員年金制度が昨年5月末で廃止となった。しかし、その裏側にとんでもないからくりが隠されていた。自治体負担金の激増という、巨額の税金投入だ。

 年金廃止とはいうものの、受給している退職議員の年金額や、受給資格を持つ現職議員の将来年金額がカットされたりするわけではない。廃止の実態は、新たな受給資格者をつくらず、自然減を待つものだった。

 さらに問題なのは、廃止により議員の掛け金支払いはなくなる代わりに、年金給付の費用などが全額(共済会の積立金を除く)、自治体負担となる点だ。国(総務省)の試算では、公費負担は約60年間続き、負担総額は約1兆1400億〜1兆3600億円にも上るという。

 議員年金を廃止する法案が閣議決定されたのは、東日本大震災に見舞われたその日。廃止の裏側でこれほどの税金が投入され続けることを知らされていただろうか。

 廃止直後は増加分の支払いに難色を示す自治体が相次いだが、今もなお支払い拒否を続けるのは、群馬県安中市のみ。市議会議員共済会から2度にわたって督促を受け、今年2月に提訴された。それでも安中市の岡田義弘市長は「国会は納税者への説明責任を果たさぬまま法改正した。議員年金の財源が不足ならば給付カットすべきで、全額公費にしたのは納得がいかない」と、譲らない。

 各自治体の負担金は、議員報酬月額と定数、それに年ごとに定められる係数を掛けて算出される。廃止前の係数は0.165だったが、廃止後の昨年6月から今年3月までは全国一律で1.029に跳ね上がった。安中市の場合、これまでの年間負担額が約1711万円(定数24)だったのに対し、廃止後の2011年度分は約6倍の1億0322万円になった。

次のページ>> 1人の首長の反乱は約10ヵ月で幕引きとなる

年度末を迎え、岡田市長は次の挙に出る。「こちらから市民に説明できないので、議会の権能でやってくれ」と、予算の増額修正を議会側が提案するのが筋だと迫ったのである。

 議会側は「法律で決まったことなので、市長が補正予算を出すべきだ。法律で決まったことは守ってくれないと」(奥原賢一議長)と困惑しきりだったが、結局、3月12日の総務文教常任委員会で議員から補正予算の増額修正案が提出され、全会一致で可決された。修正案は3月22日の本会議で正式に可決成立する見込みだ。

 1人の首長の反乱は約10ヵ月で幕引きとなる。だが、議員年金をめぐる理不尽に大きな一石を投じたといえるのではないか。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)

http://diamond.jp/articles/-/16665
第219回】 2012年3月22日  

3月会合は国債購入増額見送り
日銀の方針変更点を再整理する 

「日銀は本当に変わったのか?」

 金融市場参加者の間で最近よく話題になる議論である。2月の金融政策決定会合で、日銀は事実上のインフレ目標といえる「中長期的な物価安定の目途」を採用し、資産買入等基金の国債買い入れ枠を10兆円増額した。

 3月13日の会合前に、株式市場や外為市場では、日銀はデフレ克服のために今月も大胆な追加緩和策を実施するだろう、という憶測が高まった。しかし3月会合では、成長基盤強化策の拡充(新たに設定された小口投融資、ドル資金供給を含む2兆円の増額と期間延長)は決定されたが、国債購入の増額は見送られた。

 現時点の日銀の基本方針を、2月を境に変わった点と変わっていない点に分けて分析すると次のようになる。

 変わった点は、消費者物価指数(CPI)前年比上昇率が「物価安定の目途」である1%に達することが見通せるようになるまでは、経済のダウンサイド・リスクが高まっていないときでも追加緩和を選択する、というスタンスにシフトしたことである。

次のページ>> 変わっていないのは国債価格への配慮

 一方、変わっていない点、あるいは怖くて変えられない点は、国債価格への配慮である。日銀は、インフレ率を望ましいプラスの領域に持ち上げることを狙いつつも、国債価格の急落を招き得る急激なインフレ予想の上昇は避けなければならない。非常に狭く容易ならざるパスを実現しなければ、と考えているようだ。

 だが、多くの市場参加者は2月の日銀の決定を、政治サイドからの要求に応じたものと受け止めている。日銀が積み上げてきた市場に対するコミュニケーション政策は2月にいったん崩壊し、債券市場の期待をコントロールすることが難しくなりつつある。

 もし3月の決定会合で日銀が2ヵ月連続の国債買い入れ増額を決めていたら、円安、株高の流れに一段の弾みがついた可能性は高いが、債券市場では「日銀は財政赤字のマネタイゼーション(貨幣化)に踏み込むのでは」との疑念が台頭し、10年以上の長期金利が不安定化しただろう。国債買い入れの増額を見送りつつ、成長基盤強化策を拡充して玉虫色にしたのは、債券市場での期待の不安定化を避けたかったからだと考えられる。

 なお、CPI前年比が安定的に1%以上になることが見通せるようになったら、日銀は「物価安定の目途」を引き上げ、ECBに似せて、「2%以下で、かつ2%に近づける」といった表現にするのではないかと予想している。1%が達成されても、ゼロ金利はしばらく継続される可能性がある。

(東短リサーチ取締役 加藤 出)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120320/230080/?ST=print
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
契約社員も上司も追い詰める“改悪法”の実態

ホントに困っている人たちの声に耳を傾けているか

2012年3月22日 木曜日 河合 薫

 「あ〜あ、これでまた企業は逃げ道を探すことになるぞ」
 「規制すればするほど、働きづらくなるっていうのに、やめてほしいよ」
 「誰かを守るってことは、誰かを切らなきゃいけなくなるってことなのになぁ」

 思わずこんなふうにつぶやいてしまった人もいたのではないだろうか。

 そう。3月16日、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会が、小宮山洋子厚労相に答申した労働契約法改正案の要綱についてだ。同じ職場で5年を超えて働く有期契約のパートや契約社員について、本人が希望した場合に契約期間を限定しない「無期雇用」、すなわち、正社員に転換することが盛り込まれた。

 現在の労働契約法は有期雇用について、1回の契約で働ける年数を原則3年以内と定めているが、契約更新を重ねた場合の上限規定はない。それを改めて、新たに有期雇用の通算期間の上限を5年に設定し、それ以上は「正社員へ」との道筋を示したわけだ。

 ううむ。これってどうなのだろうか? 確かに正社員になれた方が安定するかもしれないけど、5年って、ちょっとばかり長くない?

 小学校の6年間は、とてつもなく長かったし、大学の4年間だって、そこそこ長かった。CA(客室乗務員)をやったのも4年間、夜のテレビ番組やったのも4年間、朝の番組やったのも4年間……。どれもこれも5年以下。大学院を修了するまでだって、かなり長い期間だったように記憶しているが、あれでやっと5年間だ。

 どう考えてみても、5年は長い。ん? だからこそ、「5年も契約したんだから、正社員にしちゃってよ」ということなのだろうか。

「働く人のため」の制度がかえって雇用を奪う矛盾

 いずれにしても、これまで政府が「働く人のため?」とばかりに制度で縛り付けることで、余計に働く人たちの「雇用」が奪われてしまったという現実もある。

 例えば、リーマンショックの後、連日メディアで取り上げられた「派遣切り」。その「派遣切り」を防ぐという名目で、製造業への派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案が2010年の通常国会に提出されたことがあった。

 ところが、「派遣社員」を守るためのルールであったにもかかわらず、派遣社員の労働市場は安定するどころか、「雇ってもらえない」ようになってしまった。多くの企業が派遣社員を減らし、パートやアルバイトを増やしたのだ。

 2009年で108万人だった派遣社員は、96万人にまで減少。一方、パートやアルバイトは、1153万人から1192万人に増加した。さらには、「派遣切り」と非難されることへの危惧が、円高や節電といったほかの要因以上に製造業の海外進出に拍車をかけているとの指摘もある。

 しかも、前述した要綱には、「無期契約に移行した場合でも、賃金や年金制度など雇用期間以外の条件は変更する必要がない」とされているのだ。

 つまりは、正社員になったとしても、もらえるおカネは増えないということになる。

 あれ? 非正規社員にとっては、「正社員よりも賃金が低い」などの、「雇用期間以外の条件」に関する問題の方が大きいと思うのだが、なぜ、それを「変更する必要がない」なんてわざわざ付記するのだろうか?

 まさか、「まぁ、細かいこと言わないでよ。正社員になれる、ってだけでいいジャン」というわけじゃないでしょうね?

 というわけで、今回は「働かせ方のルール」について、考えてみようと思う。

 「うちの会社では、以前は契約社員から正社員に転換できる制度はありませんでした。ですから、何回でも契約を続行することは可能でしたし、長い人では10年近く契約で働いていたんです。ところが一昨年に、3年たったら正社員に転換できるという制度ができましてね。最初は私も、その制度ができて良かったと思ったんですけど、実際には問題の方が多くなってしまったんです」

 こう語るのは、ある大手電機関連会社に勤める50代の管理職の男性である。

 この男性の会社では、「3年たったら正社員に転換できる」という制度ができたことで、現実には多くの契約社員が仕事を失うことになってしまったそうだ。実際には、会社はもっぱら「3年たったら正社員に転換できる」ではなく「4年以上は契約しない」という方針で制度を運用したからだという。

 つまり、それまではよほどの問題を起こさない限り、自動的に更新されていた単年度契約が更新されなくなった。2年目まではすんなりと行っても、3年目の更新の時のハードルがメチャクチャ上がり、一定の人数はそこで契約の解除を余儀なくされるようになったというのだ。

 「今までだったら雇い続けることができた人を、切らなくてはならないというのは、結構しんどい。契約だろうと、正社員だろうと、現場では、同じ働く仲間です。その仲間として一緒に働いている人と、契約社員だからという雇用形態の問題だけで、切るという行為が、実につらい。以前、人事にいた時には、“あんなの契約しなきゃいい”なんてことを、平気で口にしていたんですけど、実際に現場で一緒に働いていると、数値で示すことができない貢献をしてくれていることもあるんです」

 「毎日、一緒に働いていれば、その人の家庭の事情も分かってきます。自分が契約更新の判を押さなかったことで、その人の人生を変えてしまうのかと思うと、何だか申し訳なくて。すると、独身の人とか身軽な人ばかりを契約解除してしまったり、ホントにできる人を、『この人だったらよそでもやっていける』と契約解除したり。本末転倒です。こんなことだったら、いっそのこと前の方が良かったんじゃないかって思うこともあるんです」

50代の男性が語った胸中の苦悩

 数年前、人員削減が多くの会社で行われた時に、自分の部下たちをリストラしなくてはならない立場にいた人たちの苦しい胸の内を、何度も聞いたことがあった。それと同じ思いをこの男性も抱いていたのだ。

 もちろんこの問題は、「彼の問題」であって、制度やらルールやらの問題ではないのかもしれない。実際、3年目に正社員になった人たちにとっては、良い制度であるに違いない。でも、人間の気持ちは複雑である。ある人にとっては有益なルールが、ある人にとっては苦しみをもたらすこともある。

 制度さえなければ、何年も働き続けられた人たちが、制度ができたせいで働き続けられなくなってしまった。正社員にするという会社のルールに従うために、「切られる」人が生まれ、その上司は「切る」苦しみを味わわなくてはならなくなった。契約の解除は、現場のリーダーの一存に委ねられていることが多いのだ。

 特に、その契約社員たちが正社員たちよりも優秀な場合、余計に胸が締め付けられる。

 「契約の社員の人たちって、ものすごくよく働くんです。変な話、会社へのロイヤルティーも、仕事への責任感も、正社員よりもよほど高い」

 そんな言葉を幾度なく、契約社員を雇用している会社のリーダーたちから聞かされてきた。能力やパフォーマンスといった「個人の問題」ではなく、雇用形態という「会社の問題」でその人の人生を左右せざるを得ないことに、苦悩するのだ。

 契約社員として働いている人たちだって、同じだ。自分の能力に問題があるなら、何とかあきらめることができても、会社の都合となっては納得がいかない。「仕方がない」と必死に自分を納得させようとしたところで、なかなか受け入れられることではないはずだ。

 ただでさえ、「契約」というだけで、それまで散々煮え湯を飲まされてきたのだ。

・正社員よりも賃金が低い
・契約だと交通費が支給されない
・社員食堂でも契約には割引がない

 「なぜ、雇用形態が違うだけで、こんなにも待遇が違うのか?」という不満を抱えていたうえに、制度ができたことでそれまで自由に何年も契約更新できていたことができなくなったとなっては、元も子もない。

 そもそも「正社員」じゃ困るから、企業は「契約社員」にしているわけで。正社員化を義務付ける制度を作れば、ハッピーエンドってわけにはいかないのだ。

 当然ながら、契約社員たちにとって、将来への不安があるのは紛れもない事実だ。正社員になれれば、それに越したことはないだろう。だが、それ以上に、「今」への不満が深刻であることは、数々の調査結果から明らかである。

契約社員たちの真の不満と意外な希望

 厚労省の「有期労働契約に関する実態調査(個人調査)報告書(平成21年=2009年版)」によれば、正社員との賃金の差について、「かなり低い」との回答がトップで、48.0%だった。次いで「少し低い」が21.1%となっており、7割近くの契約社員が正社員よりも低い賃金で働いていることが分かる。

 賞与の有無についても、「賞与がある」としたのはわずか28.0%。しかも、85.6%が「正社員に比べて(金額が)少ない」と答えている。退職金の有無についても、「退職金がある」は10.2%で、75.9%が「正社員に比べて少ない」としているのだ。

 「でも、それって契約社員は、そもそも『責任』ってもんがないんだし、残業もないんだから、正社員と差があって当たり前だよ」。こう苦言を呈する人もいるかもしれない。

 だが、先の報告書によれば、「残業することがある」と57.7%が答え、平均残業時間の長さについても、「正社員と等しい」と52.1%が答えているのだ。

 52.1%を「やっぱ少ないでしょ」と捉えるか、「意外と多い」とするかは、人それぞれかもしれない。だが、契約だからといって残業が免除されるわけではないということだけは、この数字から明らかだろう。

 しかも大いに注目に値するのが、次の質問項目である。

 「契約期間が終了したのち、あなたはどうしたいですか?」

 この質問に対して何と50.9%の人が、「引き続き現在の職場で契約社員として働きたい」と答え、「現在の職場で正社員として働きたい」と答えた18.6%を、大きく上回っているのである。

 しかも、調査対象になった5000人の現在の通算勤続年数を見ると、「1年超〜3年以内」が30.1%と最も多く、次いで「6カ月以内」が21.2%、「3年超〜5年以内」が15.3%で、「5年以上」の人は20%しかいないのだ。

 おまけに、55.7%が「現在の仕事に満足している」と答え、「不満である」と答えた44.3%を10ポイント以上、上回った。

 さらに、「不満がある」と答えた人にその理由を尋ねたところ、トップは、「頑張ってもステップアップが見込めないから」(42.0%)、次いで「いつ解雇・雇止めされるかわからないから」(41.1%)、「賃金水準が正社員に比べて低いから」(39.9%)となっている。

 つまり、厚労省の作業部会が参考にしたという「契約社員の実態調査」から考えても、即座に改善が求められるのは、正社員との格差問題と言っても過言ではない。

 もちろん、「正社員として雇用してほしい」としている人も、22.1% いるので、正社員化を進めることには、異を唱えるつもりはない。でも、もし、「正社員としなくてはらない」というルールを作るのであれば、それと同じくらい「賃金格差」の改善にもプライオリティーを置かなくてはならないのだ。

 特に、「賃金格差」は人間関係をもいびつにする。

 「アイツは正社員のクセに、大して働いていない」
 「アイツは正社員のクセに、仕事ができない」
 「アイツは正社員なんだから、この仕事はアイツに押し付けてやろう」

 こうしたネガティブな感情は、慢性的なストレスとなり、不安感を高め、職務満足感を低下させていくのである。

働く人たちの意欲を保つために重要な「心理的契約」

 なぜ、「無期契約に移行した場合でも、賃金や年金制度など雇用期間以外の条件は変更する必要がない」なんて文言を追加する必要があるのか?

 そもそも現段階で「5年以上」働いている人が2割程度しかいない実態から考えれば、「5年」という制限はどんな意味を持つのか?

 何のためのルールなのか? 誰のためのルールなのか? 申し訳ないけど、私にはちっとも分からない。「3年以上は正社員化。賃金なども、すべて正社員と同等にすること」という法案であれば、納得できる。

 まさか……。何か、“裏”があるわけじゃあ、ないでしょうね?

 このルールを作ることで、甘い蜜を吸う人たちが“他”にいるんじゃないか、なんて。そんなことまで考えてしまうほど、訳の分からない改定なのだ。

 心理的契約――。

 これは、「組織によって具体化される、個人と組織の間の交換条件に関連した個人の信念」と定義され、働く人たちの働く意欲、つまりモチベーションを保つために、重要な要因と考えられているメカニズムの1つだ。

 「心理的」としている通り、法的な契約や職務契約とは異なり、あくまでも個人の認知に基づいたもので、多くの場合は、会社という目に見えない組織だけでなく、実際に日々関わる上司との関係性において構築されていく。

 例えば、「賃金、待遇」などは組織との関係性、「どんな仕事を任されるか、どれだけ上司から信頼されるか」は、上司との関係性に影響を受ける。

 そして、それらの条件が「自分にとって受け入れられる」ものであれば、個人は働く意欲を高め、職務満足感が高まっていく。心理的契約が高まると、次第に「この会社のために働きたい」と、会社へのロイヤルティーも高まっていくのだ。

 上司から仕事を認められたり、責任ある仕事を任されたり、正社員と分け隔てなく自分の存在価値を認められることで、上司との心理的契約は強められる。契約社員の方たちの実に6割近くの人たちが、「仕事に満足している」としていたのは、上司との心理的契約によるものだと考えることが可能なのだ。

 仕事へのモチベーションやパフォーマンスは、法的な契約よりも、むしろ心理的契約の度合いによって左右されると考えられているのである。

 しかも、いったん構築された心理的契約が破られることは、破る方にも、破られる方にも、土砂降りの雨となる。

 「パフォーマンスの高い仕事をすれば、契約を更新してもらえる」という思いから、120%の力を発揮すべき頑張っている契約社員の人たちも少なくない。そういう人たちにとって、契約を更新してもらえない理由が、自分のパフォーマンスによるものではなく、会社の都合ということになると、それは想像以上のストレスとなる。

 前述の「正社員への転換制度」ができたことで、苦悩する男性の場合も、一緒に働いている仲間への情だけでなく一緒に働くことで互いに交わされていた心理的契約を破ることにあった。そう考えることが十分できるのである。

 労働者の安定を守るためにという大義名分でルールを作るのであれば、本来、この心理的契約への影響も十分に考慮しなくてはならない。ところが、多くの政策や制度を決定する時には、アンケート調査などの量的調査をもとに行われることがほとんどだ。

 質的調査(個人にフォーカスし、その個人に語ってもらう手法)でしか測ることの難しい「心理的契約」は、完全に無視される。でも、本当に「契約社員のため」と思うのであれば、大変だろうと何だろうと、質的調査も行うべきだと思うのだ。

現場でホントに生かされるのは個人の生の声

 大学院にいる時に、臨床でドクターを経験していた先生が、「量的調査に基づく政策が、ちっとも現場では役に立たないと感じ、再び大学に戻った」と語ってくれたことがあった。

 「量的調査はね、結局は、その調査を行った人の仮説を検証するためのもの。質的調査は、個人的な意見で汎用性がないって非難する人が多いけれど、現場でホントに生かされるのは、そういう生の個人的な意見なんだよ」と。

 ルールや制度は必要である。でも、働く人のためのルールを作るのであれば、役人や大学の先生や知識人たちだけでなく、ホントに困っている人たちの「ナマの声」に、もっと耳を傾ける工夫も必要なんじゃないだろうか。

 それに……、人はルールで縛られれば縛られるほど、抜け道を探そうとする動物であることも、忘れてはならない。OECD (経済協力開発機構)の『Online OECD Employment database』によれば、労働者の雇用を保護する制度を強めれば強めるほど、失業期間が長くなる結果が示されているのだ。

 「新卒社会人の正規雇用の約3分の1が3年以内に辞める」時代に、「5年で正社員化」という法案が、悪い“逃げ口”にならなければいいと願うばかりである。


河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。

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河合 薫(かわい・かおる)

博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『<他人力>を使えない上司はいらない!』(PHP新書604)  

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コメント
 
01. 2012年3月23日 18:48:57 : tLL5rmHw5c

派遣を禁止すれば良いだけ。

人手が要れば社員として採用するようになるさ。

期間限定なら、アルバイト、パートで雇えば良い。

直接雇用でなく、責任の無い派遣を通す事自体が問題なのだ。

派遣を大幅に緩和して日本の雇用環境を破壊した、小泉竹中は万死に値する。


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