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消費税率引き上げが医療崩壊を加速する!?
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/571.html
投稿者 MR 日時 2012 年 4 月 10 日 00:34:18: cT5Wxjlo3Xe3.
 


http://diamond.jp/articles/-/17025
西沢和彦 [日本総合研究所調査部主任研究員]

消費税率引き上げが医療崩壊を加速する!?

消費税率を引き上げると、医療機関の経営が打撃を受けるというパラドックスが生じる。それは、現行の消費税制において、医療機関に仕入税額控除が認められていないためだ。これを防ぐには医療サービスを課税取引とし、医療機関に仕入税額控除を認めることである。
消費税率引き上げのパラドックス

 前回まで年金、医療の順に社会保障制度を扱ってきた。今回から社会保障制度との関連を意識しつつ税制に視点を移そう。

 まず消費税である。野田政権が推し進める社会保障・税一体改革は、社会保障制度を維持・充実するための消費税率引き上げを標榜しているが、実は、消費税率を引き上げると、医療機関経営が深刻な打撃を受けるというパラドックスが生じる。これは、極めて重要な問題でありながら、今回の社会保障・税一体改革では、ほとんど議論もされないまま、先送りとなっている。
仕入税額控除の理解が鍵

 このパラドックスを理解する鍵は、消費税制とりわけ仕入税額控除という仕組みを押さえることにある。説明を簡素化するため、原材料製造業者、完成品製造業者、小売業者、消費者の4者による財・サービスの生産・流通・小売経路を想定する(次ページ図表1)。財・サービスは全て消費税の課税取引であるとしよう。金額は例示である。

 まず、原材料製造業者は、2万円の原材料を製造し、これを完成品製造業者に2万円プラス消費税1000円(=2万円×5%)で販売する(この原材料製造業者は、他の業者から全く仕入れをすることなく原材料を製造したと仮定しておこう)。原材料製造業者は、完成品製造業者から受け取った消費税1000円を税務署に納税する。

次のページ>> 仕入税額控除の仕組み

 次に、完成品製造業者は、原材料を加工して完成品を製造し、これを5万円プラス消費税2500円(=5万円×5%)で小売業者に販売する(5万円−2万円=3万円の付加価値を産んだことになる)。完成品製造業者は、小売業者から受け取った消費税2500円から既に原材料製造業者に支払った消費税1000円を控除し(差し引いて)、差額の1500円を税務署に納税する。

 最後に、小売業者は、5万円プラス消費税2500円で買い入れた完成品を、消費者に7万円プラス消費税3500円(=7万円×5%)で販売する。小売業者は、消費者から受け取った消費税3500円から、既に完成品製造業者に支払った消費税2500円を控除し、差額1000円を税務署に納税する。

 これら原材料製造業者、完成品製造業者、小売業者が税務署に納税した消費税の合計額は3500円(=1000円+1500円+1000円)となり、消費者が小売業者に支払った額と一致する。

 このように、消費税を税務署に納税するのは各事業者であり、事業者が販売の際に預かった消費税から仕入の際に支払った消費税を控除することを仕入税額控除という。事業者は、消費税の納税という事務的負担を負っているが、仕入税額控除という仕組みがあるおかげで、金銭的な負担は一切負っていない(注1)。

(注1)やや複雑なので念のため整理しよう。事業者が税務署に納める消費税は販売先から預かった消費税であり、自分の懐を痛める訳ではない。しかも、販売先から預かった消費税から仕入れの際に自らが仕入先に支払った消費税を差し引くことができるので(ここで支払った消費税を取り戻すことができる)、事業者に金銭的な負担は一切生じない。もっとも、現実には、販売先からきっちり消費税を取ることが出来ない(転嫁しきれない)場合が存在する。

http://diamond.jp/mwimgs/0/b/600/img_0bc9e4bcf567fbdc552d82768dc5b45e9388.gif

次のページ>> 医療機関は仕入税額控除できず

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 医療サービスは、こうした一般的な消費税の仕組みと照らし、次の2点において特殊な扱いとなっている。1つは、医療サービスは、社会政策的な配慮から非課税取引とされているため、医療機関は、最終消費者である患者から消費税を受け取らないことである(注2)。例えば、図表1における小売業者を医療機関に置き換えると(図表2)、医療機関が患者に提供する医療サービス7万円に対し消費税は課税されない。

 もう1つ、医療機関は、仕入れの際に消費税を支払いつつ、仕入税額控除が認められていないことである(注3)。医療機関も、他の事業者同様、広範かつ大量の仕入れを必要としており、そのほとんどが課税取引である。主なものとして、外来・入院患者を受け入れるための建物建設とその改修、コンピューター、検査・診療機器、医薬品、自動車、光熱費などがあげられる。

 例えば、図表2の例では、医療機関は、製薬会社や医療機器メーカーといった完成品製造業者に、仕入れ代金5万円とともに消費税2500円を支払っているが、この2500円について仕入税額控除は認められない。この場合、受け取っている消費税がないので、仕入税額「控除」が認められないというより、仕入税額を税務署から「還付」を受ける権利が認められないといった方が適切かもしれない。いずれにしても医療機関にとって2500円は支払ったままとなる。

(注2)但し、出産費用、差額ベッド代など社会保険診療ではない場合、消費税が課税される。その消費税は医療機関から税務署に納税されなければならず(一定規模の売上の場合)、そうした課税取引にかかる仕入に関しては、仕入税額控除が認められる。

(注3)正確には、非課税取引となる医療サービスにかかる仕入れに関し、仕入税額控除が認められていない。

次のページ>> 医療機関に「損税」が発生

 その規模を、日本医師会の調査をもとに推計すると、およそ8000億円となる。日本医師会によれば、医療機関は医療費の2.2%に相当する額の消費税を負担しているとしているためだ。

 ちなみに、これは、医師会だから甘く推計しているという訳ではないと考えられる。医師会の調査を使わず「産業連関表」を用いて別途試算した結果とも整合的だからだ。「産業連関表」をみると、医療機関は年間18.9兆円(消費税抜き)仕入れを行っている。すなわち、18.9兆円×5%およそ0.9兆円の消費税を負担していることになる

 3月31日に閣議決定された消費増税関連法案が成立し、消費税が5%引き上げられれば、医療機関の消費税負担は約8000億円増える(国民医療費36.0兆円×前出の2.2%)。この追加的な負担8000億円に対し、何ら手当てがなされなければ、医療機関の持ち出しとなる。このため社会保障制度の維持・充実のための消費税率引き上げが、医療機関経営に打撃を与えるというパラドックスが生じる。民主党が問題視している「医療崩壊」に拍車をかけることにもなりかねないのである。
医療機関に「損税」が発生

 ちなみに、現在、医療機関が仕入税額控除出来ていない約8000億円は、どうなっているのだろうか。政府の説明では、医療サービスの公的価格である診療報酬で手当てされているという。1989年度の消費税導入時に0.76%、1997年の税率引き上げ時に0.77%、計1.53%診療報酬がプラス改定されている。しかし、次の問題が指摘できる。

 第1に、そもそも診療報酬で手当てするという方法の妥当性である。診療報酬で手当てしているというのであれば、医療を「非課税取引」と呼ぶことが適切とは言えなくなる。診療報酬の財源は、社会保険料、税、窓口負担なので、結局、被保険者と患者が消費税を負担していることとそれほど変わらないからだ。

 また、同じ診療行為を行っていても、医療機関ごとに仕入額は異なっているはずである。それにもかかわらず診療報酬で手当てすると、過剰に手当てを受けている医療機関と、逆に過少な手当てしか受けていない医療機関とが出てくる。例えば、積極的に設備を更新する医療機関はその分、仕入税額控除できない消費税の持ち出しが多くなる。診療報酬による手当ては方法として適切ではないだろう。

次のページ>> 一体改革大綱では問題先送り

 第2に、政府のいう手当てでは、不十分との疑義が呈されていることである。日本医師会は、実際には医療機関は医療費の2.2%に相当する額の消費税を負担しているにもかかわらず、診療報酬による手当ては同1.53%であり、差の0.67%分、金額にして2330億円が医療機関の持ち出しとなっているとする。いわゆる「損税」である。

 なお、2330億円の持ち出しとは言っても、医療機関が無尽蔵の金庫からお金を出している訳ではなく、医療機関がその2330億円を捻出するために、人手を減らしたり、診察時間を減らしたりする結果、医療サービスの質・量の低下となって、最終的には患者・被保険者に、そのしわ寄せが及んでいることがあり得ることに、留意しなければならない。
一体改革大綱では問題先送り

 このように、医療にまつわる消費税の問題は、極めて重要である。もっとも、今回の社会保障・税一体改革は、残念ながらこの問題に関する認識も乏しく、よって、議論も深められてこなかった。「社会保障・税一体改革大綱」をみても、医療サービスは引き続き非課税取引とし、今回はとりあえず診療報酬で若干の手当てを行い、そもそものあり方については、今後検討すると述べるにとどまっている。「大綱」における該当部分の記述は次の通りだ。

「今回の改正に当たっては、社会保険診療は、諸外国においても非課税であることや課税化した場合の患者の自己負担の問題等を踏まえ、非課税の取扱いとする。その際、医療機関等の行う高額の投資に係る消費税負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し区分して手当てを行うことを検討する。これにより、医療機関等の仕入れに係る消費税については、診療報酬など医療保険制度において手当てすることとする。また、医療機関等の消費税負担について、厚生労働省において定期的に検証する場を設けることとする。なお、医療に係る消費税の課税のあり方については、引き続き検討をする。」(「社会保障・税一体改革大綱」33ページ)

次のページ>> 医療も課税取引とするのが最もシンプル

 解決方法はいくつか考えられる。最もシンプルなのは、他の財・サービス同様、医療サービスを課税取引に切り替え、併せて医療機関に仕入税額控除を認めることであろう。医療サービスを非課税取引から課税取引に変更するというと、福祉の後退のようにも聞こえるが、現行の診療報酬による手当てという不透明な国民負担を、課税という透明な国民負担に変えるのだと考えれば、むしろ好ましい変更である。

 そのように消費税法を改正した上で、必要に応じ低所得者に関しては、医療機関の窓口負担軽減などを実施する。透明な国民負担となれば、対応策も練りやすい。現在でも、70歳以上の高齢者(高所得者を除く)の窓口負担は、70歳未満に適用される3割負担より軽減されており、実務的にも可能である。こちらは、健康保険法や国民健康保険法などの改正となる。まさに、社会保障と税の一体改革である。「大綱」は「検討する」といっており、こうした案を含め、根本的かつ真摯な議論の展開が求められている。
まとめ

 以上を踏まえて、今回の議論をまとめよう。

1.消費税率を引き上げると、医療機関の経営が打撃を受けるというパラドックスが生じる。それは、現行の消費税制において、医療機関に仕入税額控除が認められていないためである。

2.仮に、消費税率が追加的に5%引き上げられれば、医療機関に約8000億円の消費税負担が追加的に発生すると試算され、何ら手当てがなされなければ、医療機関の持ち出しとなる。民主党が指摘してきた医療崩壊に拍車をかけることにもなりかねない。

次のページ>> 低所者に対しては窓口負担軽減などの措置を講じる

3.現在、既に問題は起きている。現行、5%の消費税率のもと、医療サービスの公定価格である診療報酬によって、医療機関が仕入税額控除できない消費税分は手当てされているというのが政府の説明であるが、2つ問題がある。1つは、診療報酬で手当てするという方法の妥当性である。もう1つは、その規模では不十分であり、医療機関に2330億円の持ち出しが生じていると指摘されていることである。

4.このように、医療サービスに対する消費税の課税のあり方は極めて重要な問題だが、「社会保障・税一体改革大綱」は問題を先送りしている。「大綱」は、今回はとりあえず高額投資の一部に対し診療報酬で手当てをし、そもそものあり方については、今後検討すると述べているのみである。

5.最もシンプルな方法は、医療サービスを課税取引とし、併せて、医療機関に仕入税額控除を認めることである。低所者に対しては必要に応じ別途窓口負担軽減などの措置を講ずる。まさに社会保障と税の一体改革であり、こうした方法を含め、今後、根本的かつ真摯な議論の展開が求められている。
世論調査

質問1 医療サービスは消費税がかからない非課税取引だということを知っていましたか?  

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コメント
 
01. 2012年4月10日 02:09:30 : 3CNLte9sGM
>最もシンプルな方法は、医療サービスを課税取引とし、併せて、医療機関に仕入税額控除を認めることである。低所者に対しては必要に応じ別途窓口負担軽減などの措置を講ずる

消費税増税でも、建前上、非課税の医療サービス価格に転嫁できないから、さらに医療機関の収益を圧迫することは間違いないから、妥当な提案だが

ただでさえ政治基盤が揺らいでいる今の民主党が、高齢者の反発を抑えて実施できるかどうか


02. 2012年4月10日 11:59:28 : MIIltGXvDs
課税売上割合は消費税制度のなかでももっともゆがんだ制度だろうね、

非課税とされてしまうと消費税を隠して負担させることになる。

大体直間比率を直すのが消費税の役割だっつってたのにいつのまにか社会保障にあてるとかおかしいだろ、所得税と法人税率を昭和時代にもどせばすむこと。


03. 2012年4月10日 17:15:44 : RLNZCizfEc
医師優遇税制は大々的にマスコミが報道して医師と患者の信頼関係を損ねてきた。
医師虐待税制はマスコミは一切触れない。
8割が仕入れとすると、4%消費税がかかる。20−4=16%が利益になる。
消費税10%では20−8=12%が利益になる。
(16−12)=4/16=0.25の減益。
利益が25%カットになる。
厚労省の給与を25%カットすれば痛みが共有できる。


04. 2012年4月10日 17:17:57 : RLNZCizfEc
(16−12)=4/16=0.25の減益。
(16−12)/16=4/16=0.25の減益。
訂正

05. 2012年6月08日 19:09:25 : lDzIl2fabo
「最もシンプルには、事業者間取引には、消費税を課さない」
と決めることです。
やれマイナンバーがどうこうと言ってないで、
事業者にだけ番号配賦すれば済む話だと思いますよ。

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