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米製造業は「復活」するのか オバマが狙う雇用問題解決は的外れ?
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/591.html
投稿者 taked4700 日時 2012 年 4 月 11 日 19:35:47: 9XFNe/BiX575U
 

(回答先: 製造業が米国や日本にもう戻らない理由 投稿者 taked4700 日時 2012 年 4 月 11 日 18:58:30)

米製造業は「復活」するのか
オバマが狙う雇用問題解決は的外れ?

安井 明彦  【プロフィール】 バックナンバー2012年2月23日(木)

 「製造業の衰退」を指摘されてきた米国が、製造業の立地先として注目を集めている。カナダにあったガスタービン工場を閉鎖してノースカロライナ州で新たな生産施設を稼動させたドイツのシーメンスや、タイヤ生産を中国から米国内の新工場に移す計画を明らかにしている米カーライル・カンパニーなど、米国内に生産をシフトする企業もあるようだ。

 そもそも米国には、成長する巨大市場という強みがある。輸送コストや消費者のニーズ把握といった観点を考え合わせても、米国で生産する利点は存在する。また、常に先端を走る市場である米国でのビジネスは、国際展開の試金石としての意味合いもある。

見直される米国の魅力

 さらに近年の米国には、製造業の立地先としての魅力を高める2つの追い風が吹いている。

 まず雇用にかかわるコストである。OECD(経済協力開発機構)によれば、米国の製造業の単位労働コスト(一定量のモノを作るのに必要な労働コスト)は、2000年から2010年までに約13%低下している。隣接する先進国のカナダはもちろん、ユーロ圏と比較しても低下幅は大きい(図1)。ちなみに、OECDの統計は現地通貨建てであり、ここに示された米国製造業の強みは、ドル安メリットを織り込む前の姿である。

 ユーロ圏との違いでとくに目立つのは、金融危機後の動きだ。ユーロ圏では、金融危機後に単位労働コストが大きく上昇している。これに対して、米国の単位労働コストの動きは小さかった。急速な経済の減速に見舞われた米国の製造業が、迅速に雇用調整を進めてきた様子がうかがえる。


 雇用コストにおける米国の魅力は、これまで「雇用の流出先」とされてきた新興国との対比でも指摘されている。中国で顕著なように、新興国の賃金が上昇しているからだ。

 米コンサルティング会社のアリックスパートナーズは、(1)中国の賃金が年率30%の上昇を続け(2)人民元の対ドルレートが年率5%ずつ上昇し(3)運輸コストも年率5%で上昇−―という条件では、北米市場向け生産拠点としての中国の労働コストは、2015年までに米国と同じ水準になると試算する。同じく米コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループも、北米市場向け生産拠点を米国ではなく中国に設ける経済的な利点は、やはり2015年ごろまでに消滅すると予測している。

 米国にとってもう1つの追い風は、エネルギー分野における大きな環境変化である。豊富な埋蔵量が見込まれる米国のシェールガス開発には、米国内のエネルギー価格の上昇圧力を緩和する働きが期待される。当然ながら、鉄鋼・化学などエネルギーを多く消費する製造業にとっては朗報だ。また、シーメンスの工場移転にも表れているように、ガスタービンのような天然ガスを利用した機器や、シェールガス掘削に関する機器の製造にも好材料といえよう。

オバマ政権も製造業の国内回帰を支援

 こうした追い風の存在を意識したバラク・オバマ政権は、政策的にも米国内に立地する製造業を支援する方針を明らかにしている。

 「今こそ製造業を取り戻す絶好の機会だ」

 1月24日の一般教書演説でオバマ大統領はこう指摘した。オバマ政権は製造業の米国回帰を「インソーシング」と呼び、これを積極的に奨励している。これまで米国では、雇用の海外への「アウトソーシング」が大きな政治問題となってきた。インソーシングの奨励は、これに対抗する動きとして位置づけられている。

 オバマ政権によるインソーシング支援策の一環が、法人税制の改革である。政権の改革案では、国内製造業に対する優遇税制が拡充され、特に先端技術にかかわる分野では、所得控除の割合が現行の倍の水準に引き上げられる。また、企業が国をまたいで移転する場合の費用についても、米国から海外に転出する時の費用については損金算入を制限する一方で、海外から米国内に企業が戻る際の費用は優遇する方針だ。

 米政権がインソーシングを讃えるのは、オバマ政権が初めてではない。2005年12月に当時のブッシュ大統領は、ノースカロライナ州にある日立建機と米ディアの合弁会社(ディア日立)の工場を訪れた。ここでの演説でブッシュ大統領は、「同工場はこれまで日本やメキシコで行われてきた生産を引き継いでいる」と指摘し、「実際にインソーシングを実行している興味深い合弁会社だ」と述べている。

 ただし、同じインソーシングでも、その位置づけには違いがある。ブッシュ大統領の演説の力点は、米国が海外からの輸入や投資に対して開放的であることの重要性にあった。ともすれば「海外への雇用流出」という一方向の動きに関心が集まりがちな中で、「海外からの雇用流入」という逆方向の動きを紹介し、保護主義的な風潮に歯止めをかけるのが狙いだった。

 これに対して、オバマ政権の一連の政策では、先に引用した一般教書演説にもあるように、製造業の雇用を海外から「取り戻す」ことが強調される傾向にある。ゼロ・サム的な色彩がにじむオバマ政権のインソーシング論は、「各国が利益を分かち合う」という伝統的なグローバル経済の考え方とは距離が感じられる。

「取り戻す」だけでは不十分

 インソーシングに関するオバマ政権の製造業支援には、疑問を呈する向きもある。特にオバマ政権が重視する雇用の観点では、製造業の雇用を「取り戻す」だけでは、米国が直面する課題解決にはつながらない可能性が指摘されている。

 オバマ政権でCEA(経済諮問委員会)委員長を務めたカリフォルニア大学バークレー校のクリスチャン・ローマー教授は、雇用に関する2つの論点を挙げる。

 第1は雇用の数である。ローマー教授は、米製造業の雇用減は過去30年にわたって続いてきた潮流であり、最近の雇用の弱さとの関連性は低いと分析する。金融危機後に雇用がなかなか増えなかった最大の理由は需要不足であり、「製造業に限定した政策支援は効果が少ない」というわけだ。

 確かに、米国の雇用者数に占める製造業の割合は一貫して低下しており、最近になって急に低下傾向が強まった様子はうかがえない(図2)。製造業の雇用者数だけをみると2000年代に入ってからの減り方が大きいが、この時期には米国の労働市場全体が弱かった。


 第2は雇用の質である。格差が大きな論点となる米国では、学歴が十分ではない人に中間層への足がかりを与える産業として、製造業の役割を重視する向きが少なくない。例えば今年の大統領選挙で共和党の予備選挙に出馬しているリック・サントラム元上院議員は、製造業を重視する理由を「大学で技術を身につけていない人を含めて、全ての人に機会を与えるためだ」と述べている。

 しかし、ローマー教授が指摘するように、こうした状況は昔のことである。いまや製造業といえども、高い賃金を得るには学歴が必要なのが現実だ。1969年には2割強に過ぎなかった大学教育を受けている製造業雇用者の割合は、今では5割を上回る。

 こうした変化の背景には、グローバル競争に対応した米製造業の進化がある。「衰退」がいわれる米製造業だが、減少し続ける雇用者数とは裏腹に、生産高は着実に増加してきた。雇用コストを抑えながら高い付加価値を生み出す産業へと脱皮を図ってきた努力が、今の米製造業の強さを支えている。

 言い換えれば、雇用コストを手がかりに昔の雇用を「取り戻す」ことは、米国が抱える雇用問題の解決とはズレがあると言うことだ。かつてのような「低学歴・高賃金」の雇用を製造業が米国民に提供しようとすれば、国際競争力を維持するのは難しい。まして、いくら中国の賃金が上昇したとしても、低コストで北米市場を狙う企業には、米国ではなくメキシコに立地するという選択肢もある。むしろ米国に必要なのは、「高学歴・高賃金」の職を多く生み出す仕組みだろう。

 ローマー教授は、米国経済に製造業が果たしてきた役割を評価しながらも、「公共政策は感傷や歴史を乗り越えなければならない」と主張する。高賃金の雇用は、製造業には限らない。例えば政府には、こうした職に就けるだけの能力を米国民が身につけられるよう、教育改革を進めるといった選択肢もあるはずだ。過去の雇用を「取り戻す」だけではなく、次世代の雇用を支える基盤作りこそが、米国の課題と言えそうである。  

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コメント
 
01. taked4700 2012年4月11日 19:54:26 : 9XFNe/BiX575U : k5jsxTgG52
記事投稿者です。

リンク元を忘れていました。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20120214/227213/?rt=nocnt


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