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野田政権は、日本の財政危機をギリシャなどユーロ圏のPIIGSになぞらえて煽り立てていますが、見当はずれもいいところです。
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/608.html
投稿者 TORA 日時 2012 年 4 月 13 日 15:48:27: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu261.html
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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菅前政権や野田政権は、日本の財政危機をギリシャなどユーロ圏の
PIIGSになぞらえて煽り立てていますが、見当はずれもいいところです。

2012年4月13日 金曜日

◆ユーロで不幸になったケルトの虎 4月13日 Electronic Journal
http://electronic-journal.seesaa.net/article/264156632.html

 もし、このユーロ加盟の4条件を日本に当てはめると、日本は明らかに不合格です。財政赤字は9%台であるうえ、政府負債累積残高に至っては200%を超えているからです。確かに、この数字だけを見ると、日本はギリシャよりも悪いのです。

 しかし、そうであるからといって、日本が財政破綻する危険があるのかというと、必ずしもそうとはいえないのです。ユーロ圏の国々のなかには、この条件があることによってかえって国の運営が危機に瀕してしまったところもあるのです。

 ユーロ圏ではまずギリシャが問題になりましたが、PIIGS諸国すべてが問題なのです。そのなかでユーロに加盟して明らかに不幸になった国のひとつであるアイルランドを取り上げて、検討していくことにします。

 アイルランドは、アイリッシュ海を挟んでグレートブリテン島の西側、アイルランド島にある国です。昨日のEJの添付ファイルのグラフを見れば明らかであるように、財政赤字の対GDP比は実に30%に達しています。日本の場合は約9%ですが、30%になると一年の財政赤字が150兆円に達することになり、それがいかに深刻であるかわかると思います。

 日本の財政赤字は、たとえどんなにそれを増やしたところで、それは自国通貨建て──円建てなのです。自国通貨建てであればいろいろな解決策があるのです。しかし、アイルランドの負債はIMFやEUなどの「外国」から借りたお金なのです。

 しかも、アイルランドはユーロ圏の国ですから、ユーロの発行権限がないので、アイルランドは増税をして、国民からユーロを絞り取ることで返済するしかないのです。つまり、徹底した緊縮財政を行うことになるので深刻な不況になります。この点は、ギリシャもまったく同じ状況にあるといえます。

 菅前政権や野田政権は、日本の財政危機をギリシャなどユーロ圏のPIIGSになぞらえて煽り立てていますが、その寄って立つ基盤がぜんぜん違う国と日本を比較して、増税の必要性を説いており、見当はずれもいいところです。

 その点、1997年のアジア通貨危機のさい、ウォンが暴落した韓国は、アイルランドとは事情が異なるのです。韓国は、国内金融機関が対外負債をデフォルトし、外貨準備が枯渇する寸前まで行ったのですが、比較的早く立ち直っています。

 それは、ウォン暴落でウォン安になった韓国は、輸出競争力が復活し、それが経常収支の黒字をもたらすことになったのです。経済評論家の三橋貴明氏は、通貨の暴落について、次のような表現を使って、その本質を述べています。

―――――――――――――――――――――――――――――
 破綻国における「通貨暴落」とは、その後の経済成長を後押し
 してくれる一種のボーナスなのだ。     ──三橋貴明著
  『2012年/大恐慌に沈む世界/甦る日本』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――

 しかし、アイルランドにはその「ボーナス」(通貨安)がないのです。アイルランドがユーロに加盟している限り、ドイツの信用によって暴落することがないユーロのために、経常収支を黒字化できない状況が続くことになります。対外資産を稼げないからです。そのため、アイルランドはGDP成長率をプラスにすることが極めて困難になります。GDPが成長しないと、政府の税収は増えず、そうなると、政府のユーロ建て対外負債を返済することは、きわめて困難になるのです。

 もし、対外負債が自国通貨建てであれば、アイルランド政府はインフレ覚悟で国債を大量に発行し、それを中央銀行に引き受けさせて負債を返済できるのですが、ユーロ建てなのでそれは不可能です。中央銀行はあっても金融政策は使えないのです。

 しかし、アイルランドは、90年代に経常収支の黒字を持続させ、「ケルトの虎」と呼ばれるほど華やかな経済成長を遂げた国なのです。「ケルトの虎」はアイルランドという国そのものを示す表現であり、またアイルランドの好景気の時期のこともそう呼ぶのです。そういう意味で、少なくともアイルランドはギリシャよりも潜在GDPは高い国といえます。

 それほどの実績を持つアイルランドはユーロにそれなりの計画があって加盟したはずです。それがどうして、現在のような状況に陥ったのでしょうか。そのあたりのことを分析してみる必要があるのです。なぜなら、今後アイルランドがどうなるかは、PIIGS諸国の運命を握っているからです。


(私のコメント)


北朝鮮がロケットを打ち上げて数分で海上に落下したようですが、北朝鮮国内ではどのように報道されるのでしょうか? 北朝鮮はもはや国家の体をなしていないのですが、中国からの最低限の援助で生き延びている。アメリカからの食糧援助はミサイル打ち上げでご破算になるのでしょうが、軍部ですら食料に事欠くようになっている。

韓国は北朝鮮と民族も文化も同じであり、南北朝鮮は冷戦体制下では、北朝鮮は中国やロシアの経済援助を受け、韓国はアメリカや日本からの経済援助で支えられてきた。北朝鮮が現在のような破綻国家になってしまったのは、ロシアからも中国からも見捨てられてしまったからだ。かろうじて中国からは緩衝地帯として生かさず殺さずの援助を受けている。

韓国は日米からの有形無形の経済援助を得て先進国の仲間入りを果たしていますが、日米からの援助が無ければ北朝鮮並みの国家に過ぎなかっただろう。韓国も宇宙ロケットを自前で開発していますが失敗続きで北朝鮮と同じだ。テレビや自動車程度の技術は提供できても宇宙ロケットまでは日米も技術援助は難しいからだ。

韓国も何度も経済破綻寸前まで行きましたが日米の援助で危機を脱してきた。朝鮮半島は歴史的にも長い間中国の従属国であったが、中国国土に組み入れなかったのは文明度に差がありすぎて組み入れないほうがいいと判断したのだろう。中国はソ連からの技術援助があったにしても人間宇宙衛星を打ち上げて行くだけの文明度があった。

ヨーロッパにおいても国家によって文明度が異なるのは当然ありますが、近代ヨーロッパ文明の中心はイギリスとドイツ・フランスにある。この三カ国にPIIGSと呼ばれる周辺諸国がありますが、ヨーロッパの経済問題はPIIGS諸国の問題でもある。アイルランドはその中の一国ですが、財政赤字の規模がGDPの9%もあり破綻寸前の状況にある。

アイルランドはクロムウェルによって侵略されて長い間イギリスの植民地となり、大飢饉などによって人口が800万人から400万人に減るなどの大量の餓死者を出した。まさにアイルランドはヨーロッパの北朝鮮だ。イギリス人が民族的にアングロサクソンなのに対してアイルランド人はケルト人の末裔であり文明度に差があったのが悲劇の元なのだろう。今ではアイルランド語は廃れて英語が話されている。

このような歴史的な経緯から、アメリカにはアイルランド系移民が多く、好景気の時はアメリカなどの外資を呼び込んで「ケルトの虎」と呼ばれるほどの経済発展をした。低い法人税と安い人件費は外国企業にとって魅力だったからだ。PIIGSと呼ばれるヨーロッパの地域はユーロに参加することで高い信用力をつけた。しかしこのような外資に頼った経済発展は海外の経済の波の影響を受けやすく、多くの外資は景気が悪くなると撤退してしまうので空洞化してしまう。

中国や韓国も外資の資本と技術によって経済発展した国であり、輸出が経済の原動力になっている。しかしPIIGS諸国とは違って自国通貨で資金調達しているから、金融危機が起きれば為替相場が暴落して輸出がしやすくなる。韓国のサムスンやLGやヒュンダイが好調なのは韓国ウォンが安くなった為であり、経済危機を脱している。

しかしアイルランドはユーロ通貨だから、自国の中央銀行が買い取るわけにも行かず、ユーロ建て国債で財政を賄わなければならない。しかし買う人がいなければ金利が上がって財政を余計に圧迫してしまう。ユーロの問題はここにあるわけですが、ドイツだけがユーロ安を享受している。しかしドイツはPIIGS諸国を援助する気はなく、ユーロ圏は分裂や離脱の気配が出てきました。

アイルランドとイギリスの関係は、日本と韓国の関係に似ていますが、日本は韓国に多額の投資をして技術援助もしてインフラ整備にも貢献してきましたが、イギリスによるアイルランドの関係はまさに悲惨の一言であり、19世紀における数百万の餓死者はイングランドが食料を略奪して大量に餓死者を出した。その結果、アイルランド語を話す人口が少なくなり公用語も英語になってしまった。それに比べると日本が行なった韓国への援助は、感謝されこそすれ恨みを買うようなものではない。

 

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コメント
 
01. 2012年4月13日 18:56:01 : IOzibbQO0w

>破綻国における「通貨暴落」とは、その後の経済成長を後押ししてくれる一種のボーナス

海外にとって見れば国家(労働、資源・・)の大安売り

国民にとってはインフレ途上国に逆戻りだけどね


02. 2012年4月13日 19:06:02 : R1oTRA2nvc
逆にドイツなんかはPIIGS各国のおかげでマルク単独の場合よりユーロが安く、
輸出企業がウハウハだけどね。

まあ、そのうちPIIGS各国の尻ぬぐいを独仏(主にドイツ)がさせられて
帳尻は合うかな?


03. 2012年4月15日 11:45:52 : rpquO3TM7s
覇権体制になるBRICS
2012年4月14日  田中 宇

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 3月末、インドのニューデリーでBRICSの4回目の年次サミットが開かれ、最終日の3月29日に「デリー宣言」を発表した。BRICSは中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの5つの新興大国で構成され、5カ国で人類の4割を占め、国際社会で世界の途上諸国の代表として振る舞うことが多くなっている。

 米欧日のマスコミは、BRICSサミットを大きく報じなかった。だが、サミットで表明されたデリー宣言は、国際政治の体制を、従来の米国(米欧)主導からBRICS主導へと転換する流れを描いている。この転換は、BRICSが米国から覇権を奪う動きでない。米国の覇権が弱まる中、世界の混乱を避けるため、BRICSが米欧に代わって集団で覇権の運営する動きだ。BRICSは今回のサミットで、米国の覇権が縮小した後の世界に向けた準備を具体化した。BRICSは、覇権という舞台で次の幕の登場を準備すべく、舞台裏の控え室に入った感じだ。控え室のドアに貼り出されたのがデリー宣言だ。

 デリー宣言は50条からなる。1−4条で協調的なBRICSのあり方を述べた後、5条で先進諸国が財政赤字と通貨発行を増やしすぎ、世界経済を不安定にしたことに懸念を表明した。6条で先進国に過剰な金融緩和をやめるよう求め、7条で世界的な金融財政の安定化機関としてG20を使うことを提唱、8−10条でIMFにおける途上国の発言権が弱いと不満を表明した。(BRICS Summit: Delhi Declaration)

 11、12条は、途上国への経済支援体制の改善のため、米国人だけが占めてきた世界銀行の総裁に、途上国の出身者も就任させることを求めた。13条は、BRICSが合同で国際銀行を設立し、途上国に開発資金の供給を強化すると述べている。15、16条では、世界の自由貿易体制を推進するWTOのドーハラウンドの交渉が頓挫しているのを立て直すと宣言している。

 19−25条は中東情勢だ。カルテット(米EU露国連)によるパレスチナ和平交渉にBRICSが協力すると表明し、シリア内戦の解決のため、国連のアナン元事務総長が露中の後押しで行っている和解仲裁に協力すると述べている。またイランを中東の平和に寄与する国として評価し、イランの核の平和利用権を認めたうえで、イラン核疑惑を戦争でなく外交で解決せねばならないとしている。アフガニスタンの発展にも協力する。

 26−27条は国連安保理改革で、インドとブラジル、南アを安保理常任理事国に就任させるべきと書いている。29−30条は、地球温暖化(気候変動)への国際的な対策に全面協力すると宣言している。

 その後の条項は、UNCTAD、Rio+20など、BRICSの一カ国が今後主催する、途上国の発展に関する各種の国際会議を、BRICS全体で推進することを述べている。36−37条でアフリカの発展への寄与、38条は食糧などの国際高騰を抑止するインフレ対策、39条は原発の安全、42条は国民皆保険制度など保健衛生、43条は都市化の問題、45条は再生可能エネルギー利用でBRICSがノウハウを共有すると書いている。

▼最大の懸念は先進国の金融財政政策

 総花的な宣言なので、どこが重要なのか見えない人が多いかもしれない。最初に米欧日の金融緩和策への批判が出てくるのは、リーマンショック以来、米連銀に主導された米欧日の当局が、金融危機の元凶である債券金融システムのバブル化を抑止する根本的な対策をとらず、むしろ危機でしぼんだバブルを金融緩和によって再燃させる不健全な方策を続け「危機は去った」と豪語していることへの警告である。表向き債券市場は活況に戻ったが、担保となる米住宅市況は悪化し続け、危険は先送りされ、次に危機が再発したら前回よりもっとひどいことになる。(Chris Martenson: "Are We Heading For Another 2008?")

 BRICSはそのことを知っている。デリー宣言に載せていないが、BRICSは相互の貿易に、ドルでなく相互の通貨を使う決済体制を今回のサミットで正式に決めた。世界的にドル以外の通貨で決済する体制が作られたのは1944年のブレトンウッズ体制以来、初めてだ。BRICSは、近いうち(今年か来年?)に米欧日の金融財政の過剰な緩和策が行き詰まり、リーマンショック型の金融危機が再燃し、ドルと米国債の価値が急落すると懸念している。だから、宣言の具体策の中で、真っ先に先進国の金融財政への懸念を表明し、ドルを使わない貿易決済体制を開始した。(Economics outweighs politics at New Delhi BRICS summit)

 IMFは、ドル主導の国際通貨制度を守るために作られた。BRICSの発言権が増えれば、IMFは、崩壊しかけているドルを守るだけの従来の役割を脱皮し、ドルに代わる国際決済体制の構築へと動くだろう。代わりの通貨体制が作られなくても、米国で金融危機が再燃したらドルは勝手に崩壊し、世界経済を破壊する。先進諸国が米連銀に誘導され、ドル防衛のための金融財政の大緩和に固執するのは危険だ。BRICSの批判は当を得ている。(G20は世界政府になる)

 G20がG7に代わって世界的な経済政策を練る機関になったのは、リーマンショック直後で、G20の目的はブレトンウッズ体制に代わるものを作ることだと、当時フランスやロシアの首脳が宣言した。ドルに代わる基軸通貨体制作りをG20が担うのは、当初からの流れだ。(転換期に入った世界経済)

 18世紀の産業革命から世界を支配している欧米が、支配される側だった途上国の集まりから重要政策を明確に否定され、代わりの政策を提唱されたのは、今回が初めてだ。19世紀末以降、日本が非欧米の国として国際台頭したが、日本は戦前も戦後も欧米のやり方を真似るだけで、代わりの戦略を明確に打ち出したことがない(「大東亜共栄圏」すら、岡倉天心らが米国の知識人に教わった舶来の概念だ)。BRICSの宣言は、産業革命以来の歴史的転換だという指摘が出ている。これは「資本主義バージョン2」の始まりとなるかもしれない。(BRICS challenges the world order)

 世界銀行の総裁に途上国出身者がなることについては、めずらしく米国の右派経済紙WSJにも賛成する記事が載った。これまでの世界は、先進国が途上国に経済支援するのが主流で、その状況下なら歴代世銀総裁が米国人でも良い。だがこの10年でBRICSなどが発展し、豊かな途上国が貧しい途上国を支援する傾向が急増した。だから米国は率先して途上国出身者でも世銀総裁になれる機会を与えよとWSJは書いている。「世界支配」と「小さな政府」「孤立主義」が紙一重で混在する米右派ならではの主張だ。(Put the World in World Bank)

▼米国覇権が倒れるので代わりを作る

 先進民主諸国の集まりであるG7、米欧の自由主義民主国家の防衛同盟であるNATO、欧州諸国だけのEU、東南アジア諸国だけのASEANなど、従来の多国間協調組織は、地縁や価値観を共有する諸国が作っていた。その点BRICSは各大陸にバラバラに存在し、民主国も独裁国もあり、多国間組織の体をなしていないと米欧で指摘されている。BRICSという名前自体、ゴールドマンサックスが01年に作った。BRICSは結束できず、何を宣言しようが空論にすぎないとの見方がある。(BRICS and the West)

 こうした見方は、国際政治や覇権の状況を無視している。世界の政治意志決定の最高機関である国連安保理の5つの常任理事国は、米英仏とロシアと中国という3種類の国々から成り立ち、この多様性が第2次大戦直後の世界を網羅する大国のネットワークとして好ましかった。今の世界だと、BRICSにEUと米国が入れば、世界を網羅する大国網になる。BRICSは各大陸を代表する大国群を集めており、バラバラで当然だ。(ヤルタ体制の復活)

 BRICS内部は、中国とインドなどに対立傾向が残っている。結束できず、集団覇権体制になるはずがないとの見方もある。しかしリーマンショック後の09年にロシアのエカテリンブルグで最初の年次サミットを開いて以来、BRICSは可能な範囲で協調していき、対立が残る部分は協調すべきテーマのみを定め、議論を続けるやり方をしてきた。毎年のサミットの宣言は、テーマのみの概念的な文章から、しだいに具体策を伴うものへと変化しており、時間をかけて相互に協調を深めていることがうかがえる。これまで概念的な宣言が多かったBRICSが今回、世界の諸問題(つまり世界の運営方法)について具体策を盛り込んだ宣言を出した点が画期的だ。(BRICS summit: the charming effect on global politics)

 BRICSは、米国の覇権を倒すために結束しているのでない。米国の覇権が自滅しそうだから、その後の世界の混乱を防ぐために結束してきた(ロシアだけは、米国の覇権が潰れた方が良いと考えている)。世界のために結束せざるを得ないという動機があるので、もともとの意見が食い違う中国とインドなどが結束でき、多数の国が参加する集団的覇権体制の構築が可能になっている。「米国の覇権はまだまだ続く」と思い込んでいる人ほど、BRICSが結束できるはずがないという間違いに陥る。(BRICS anticipates new challenges)

 米国自体には、自国の覇権が崩れかけていることを自覚する分析者がいる。しかし米国には、BRICSや上海協力機構(中露安保体制)について、分析者が深く考えることを抑止する風潮があり、米マスコミの多くもBRICSや上海機構を軽視している。これは米国自身の内部に、自国の覇権崩壊とBRICSのような多極型の新覇権体制への移行(BRICSなど途上国主導の世界経済の大発展)を誘発する「隠れ多極主義」的な人々(資本家)がいると感じられることにつながっている。(上海協力機構の過小評価は意図的?)

 国連安保理の常任理事国制度(ヤルタ体制)にしても、BRICS(+米国EU)にしても、大国だけが世界の重要事項の決定権を持っている。これに疑問を持つ人は多い。しかし、その疑問は理想論的で、あるべきだ論の範疇だ。実際の複雑で裏表のある、欺きや二枚舌、謀略、意図的誤報、間諜、なりすましに満ちた国際政治の中で、重要事項について世界的な意志決定する場合、すべての国家が平等に参加する国際民主主義でやっていたら、英国など諜報と二枚舌がうまい国ばかりが裏で得をすることになる(第一次大戦前の国際政治がそうだった)。表向き理想的だが、実は隠然独裁になる平等主義より、大国間の談合体制(もしくは第二次大戦後の明示的な米国の一国覇権体制)の方が、世界は安定する。

 これと対照的な疑問として、BRICSがEUのように複数国家を政治統合した「世界政府」のような超国家組織になりそうだという見方がある。だが現実は、EUでさえ政治統合に難渋している。BRICSの政治統合は、まず無理だ。ロシアのプーチン大統領は「国家の主権が世界システムの基本構造であり続けることについて、BRICS内での合意ができている」と述べている。(The bloc becomes a union)(Sovereignty is foundation of BRICS)

▼世界体制を途上国有利に替える

 BRICSは、覇権体制を新たに作るのでなく、既存の国際機関や体制を活かしつつ、主導権を米欧からBRICSに目立たないように移転し、覇権を乗っ取っていくことを考えている。デリー宣言の26−27条で、インドとブラジルと南アを国連の常任理事国にしてBRICSが安保理の主導権を乗っ取ることを掲げたのがその例だ。

 常任理事国の再編に手をつけると、英仏の2席をEUの1席に統合すべきという話になって欧米に不利だ。再編には、現在の常任理事国の全ての同意が必要だから無理だ。しかし同時に、BRICSはもっと隠然とした乗っ取りも手がけている。その一つは、デリー宣言29−30条の地球温暖化対策だ。

 以前の記事に書いたように、温暖化対策は当初、京都議定書として、まず先進国が温室効果ガスを削減するが、その後は中国やインドなど途上国にも削減を義務づけ、低成長で排出が少ない先進国が、高成長で排出の多い途上国から金をピンハネする構図が作られた。しかし09年のCOP15を機に、途上国が数の力で圧して構図を変え、先進国が途上国の排出削減のために金を出すという、途上国が先進国からピンハネする構図に転換した。(新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題)

 BRICSが、デリー宣言で温暖化対策の世界体制作りに全面協力すると表明したのは、自分らの利害として当然だ。むしろ、構図が転換した今もまだ温暖化対策を頑張ってやろうとしている日本政府の方が、ライバルの中国にピンハネしてもらう構図を自ら推進しており、自滅的だ(日本政府は、欧米と協力して構図を元に戻そうとしているのだろうが、途上国の政治力が増す中で困難になっている)。

 デリー宣言の中の覇権の隠然乗っ取り策のもう一つは、16条のWTOドーハラウンドの再生計画だ。ドーハラウンドは米欧主導で進められ、米欧が得をする貿易体制を途上国に同意させようとしたが、BRICSなど途上国の反対が強まり、07年から頓挫している。(世界貿易体制の失効)

 その後、途上国の政治力がさらに強まり、中国はWTO加盟から10年がすぎて重鎮の座におさまり、さらに今年からロシアもWTOに加盟した。今後BRICSがドーハラウンドを再開したら、交渉は、途上国が得する(または損しない)貿易体制を欧米に認めさせる方向になる。それは、地球温暖化対策の枠組みが、先進国にとって得な体制から、途上国にとって得な体制に転換したのと同じ流れだ。

 今回の宣言の諸項目の中で、最初にBRICSの主導体制が具体的に見えそうなのは、シリアやイランなど中東の紛争に関してだろう。シリア問題に対する国連のアナン案は露中が中心にまとめた。また、もし今後イランの核疑惑が外交的に解決したら、急にイランが優勢に、イスラエルが劣勢になって政治バランスが崩れ、中東は不安定になる。不安定化による戦争の発生を防ぐには、早くパレスチナ問題の交渉を進め、イスラエルと周辺諸勢力との緊張を緩和せねばならない。だからデリー宣言で、中東の項目の最初にパレスチナ問題を掲げたのだろう。(Abbas to Netanyahu: Respond favorably to our peace plan or we return to UN)

 半面、いつ起きるかわからないのが、ドルに代わる国際決済体制が必要になる事態だ。米国の金融危機の再燃が今年中に起きるかもしれないし、逆に意外とずっと延命するかもしれない。ドルや米国債が持ちこたえている限り、BRICSが覇権体制になる必要はない。

 目立ちたがり屋のロシア以外のBRICS諸国は、地域を代表する地域覇権国になることを表に出さないようにしている。欧米による軽視も続きそうなので、今後もBRICSはきたるべき覇権体制という印象を人々に与えず、目立たず準備活動を続けるだろう。

http://tanakanews.com/120414brics.htm


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