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欧州銀が手を引く貿易ファイナンス、米国やアジア勢が拡大目指す〜7千億ドル
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/657.html
投稿者 MR 日時 2012 年 4 月 17 日 20:19:28: cT5Wxjlo3Xe3.
 

欧州銀が手を引く貿易ファイナンス、米国やアジア勢が拡大目指す
2012年 04月 17日 16:46 JST

東芝テック、IBMから流通業向け情報端末事業を680億円で買収
ECBによるユーロ圏の成長支援、条約変更は必要ない=仏大統領
日経平均は小幅続落、米主力企業の決算控え動きにくい展開
インド中銀、3年ぶりに利下げ:識者はこうみる

[ロンドン 16日 ロイター] 欧州の銀行が、伝統的に強さを誇ってきた貿易ファイナンス分野で他地域の銀行にシェアを侵食されつつある。欧州債務危機のあおりで財務基盤が悪化し、同分野における世界的な規制強化に対応することが困難になっているためだ。

貿易ファイナンスは18兆ドルの市場規模があるが、これまでは複雑な金融テクニックやリスク資産を駆使した投資銀行分野の陰に隠れ、銀行業務の中でも日の当らない存在に甘んじてきた。

だが、市場環境が不安定化しても低リスクで安定した収入が得られることから注目が集まり、財務体質の悪化を背景に業務縮小を強いられている欧州銀に取って代わろうと、米国やアジアの銀行が虎視眈々(たんたん)と市場を狙っている。

世界の貿易にとって、貿易ファイナンスは欠かせない存在。例えば、ブラジルに道路建設機械を輸出するドイツのエンジニアリング会社や、砂糖の輸出入業者、アップルの「iPad」や「iPhone」向けの部品メーカーにとって、銀行ローンや信用状なしには事業が成り立たない。

特に、中国、ブラジル、中近東諸国など新興国地域間の貿易が急拡大する中、貿易ファイナンスの重要性は一段と高まっている。

コンサルティング会社オリバー・ワイマンのパートナー、アクセル・ミラー氏は「貿易ファイナンスは、コーポレートバンキング部門で数少ない成長分野の1つだ」とした上で、「それを通じ、銀行は顧客に新たな市場に導くことができ、融資拡大や決済取引の獲得にもつながる」と述べている。

貿易ファイナンス業務は、伝統的に欧州の銀行が強みを持っていた。シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)のパンディット最高経営責任者(CEO)によると、世界の貿易ファイナンス市場の約80%を欧州の銀行が占めていた。

しかし、BNPパリバ(BNPP.PA: 株価, 企業情報, レポート)、ソシエテ・ジェネラル(SOGN.PA: 株価, 企業情報, レポート)、クレディ・アグリコル(CAGR.PA: 株価, 企業情報, レポート)、BBVA(BBVA.MC: 株価, 企業情報, レポート)、ING(ING.AS: 株価, 企業情報, レポート)など、欧州の銀行は軒並み融資残高を縮小する必要に迫られ、貿易ファイナンス業務も縮小。

その結果、ある銀行関係者によると、約5000―7000億ドル相当の貿易にファイナンスがつかない状態が生じた。

これを受け、米国のJPモルガン(JPM.N: 株価, 企業情報, レポート)、シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)、ウェルズ・ファーゴ(WFC.N: 株価, 企業情報, レポート)、日本の三井住友FG(8316.T: 株価, ニュース, レポート)、三菱UFJ(8306.T: 株価, ニュース, レポート)、シンガポールのDBS(DBSM.SI: 株価, 企業情報, レポート)、豪ANZ(ANZ.AX: 株価, 企業情報, レポート)、台湾の兆豊金融(2886.TW: 株価, 企業情報, レポート)、欧州銀の中でもアジアに強いHSBC(HSBA.L: 株価, 企業情報, レポート)やスタンダード・チャータード(STAN.L: 株価, 企業情報, レポート)、それに中国やカナダの金融機関が、貿易ファイナンス業務の拡大を目指している。

<低リスクで安定収入>

貿易ファイナンスのマイナス面は利益率の低さだ。それに加え、新たな規制により、銀行は融資額の5倍に相当する資本保有を義務付けられる可能性があり、利益率がさらに圧迫されかねない。

だが、リスクの低さや安定的な収益が見込まれる点は魅力だ。

国際商業会議所の分析によると、1140万件に上る貿易ファイナンス案件のうち、デフォルトとなったのは3000件未満で、デフォルト率は0.03%にすぎない。

しかも、1件当たりのエクスポージャーが小さい上、期間も通常は180日以内と短く、商品による担保がついている。

メディオバンカのアナリスト、クリス・ウィーラー氏は「貿易ファイナンスは、低いデフォルト率で手数料収入が得られる魅力的なビジネスだ。顧客にとって、為替やスワップなど他の取引にもつながる」と語っている。

<アジアの成長>

銀行は新興国同士の「南―南」貿易の拡大にも注目している。アジア諸国では消費支出やインフラ投資の拡大がお互いの輸出入を押し上げているほか、ブラジルは中国にとって最大の貿易相手国となった。

HSBCはすでに世界の貿易ファイナンス市場で9%のシェアを獲得し、世界のトップに躍進。昨年の貿易ファイナンス収入はコモディティ関連案件の増加が寄与して23%増加し、32億ドルに達した。

スタンダード・チャータードも昨年の貿易ファイナンス収入が25%増加。ユニリーバ(ULVR.L: 株価, 企業情報, レポート)のアジア事業拡大やインドのタタによる英国投資向けにサービスを提供した。

豪ANZは、昨年の貿易ファイナンス収入が29%増加し、アジア地域では58%の伸びを達成したと明らかにした。

(Steve Slater記者;翻訳 長谷部正敬)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE83G04R20120417?sp=true  

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01. 2012年4月17日 23:25:43 : 3CNLte9sGM
IMF:世界経済成長見通し上方修正、米国がけん引-改善弱い 

  4月17日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)は17日、米経済の見通しが改善されたことを受けて、世界経済が「徐々に強くなりつつある」との見方を示した。ただ「最近の改善は非常に脆弱(ぜいじゃく)」だとしている。

IMFはこの日発表した世界経済見通し(WEO)の中で、今年の世界の経済成長見通しを3.5%、来年については4.1%と予想した。1月時点ではそれぞれ3.3%、4.0%と予想しており、今回はともに上方修正された。米国についても今年の成長率を1.8%から2.1%に、来年は2.2%から2.4%にそれぞれ予想を引き上げた。

ユーロ圏については、なお景気の下降局面に直面しており、一国がデフォルト(債務不履行)に陥る潜在的リスクを「測ることは難しい」としながらも、状況は昨年よりも安定してきているとした。今年のユーロ圏経済は0.3%のマイナス成長が予想されているが、前回予想のマイナス0.5%からは上向きの修正となった。このほかでは今年の中国の成長率を8.2%、日本は2%と予想した。

IMFは見通しの中で、「昨年7−12月期に米経済で改善が見られ、ユーロ圏では経済危機対応でより良い政策が講じられた結果、世界経済が急減速する脅威は軽減された」と指摘。主要先進国では鈍い成長が再開される可能性が高く、新興諸国では相対的に着実な経済活動が続くと予想した。その上で、最近の改善は非常に脆弱だと付け加えた。

「差し迫った懸念」

一方、IMFは「最も差し迫った懸念は、ユーロ圏の危機がさらにエスカレートし、広範なリスク回避の動きの引き金を引くこと」だと指摘。また、地政学的な不透明感が石油価格の大幅な上昇を招く恐れもあるとした。石油価格が50%上昇すると世界の生産は1.25%減少するとIMFは試算している。

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が今週ワシントンで開かれるが、IMFは欧州当局者らに対し「銀行システムの無秩序で破壊的なレバレッジ解消の動きを回避し、民間部門への適切な信用フローを促進」するよう求めている。

米国、ユーロ圏、日本、英国など先進国の成長率は今年1.4%、来年は2%と見込まれている。1月時点ではそれぞれ1.2%、1.9%だった。新興国・途上国については今年5.7%、来年6%と予想、1月時点の5.5%、5.9%から上方修正した。

こうした中でスペインについてはマイナス1.8%成長を予想。1月時点のマイナス1.6%成長から下方修正した。同国の国債利回りはラホイ政権の発足後の4カ月間での最高水準に上昇。ラホイ首相は16日、資金調達を継続できるよう財政赤字を削減しなければならないと述べた。

中国の急激な調整見込まず

一方、世界2位の経済規模の中国についてIMFは、昨年半ばから成長が緩やかになったとし、「ハードランディング懸念が広まっているが、今のところ過熱懸念のある不動産市場などで急激な調整局面を迎える兆候はほとんど見られない」と指摘。中国の成長率は今年8.2%となった後、来年は8.8%を予想している。

記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Ian Katz ikatz2@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2012/04/17 22:00 JST


02. 2012年4月17日 23:26:06 : 3CNLte9sGM
IMF:中国国内経済は一段と不均衡−黒字縮小に隠される 

  4月17日(ブルームバーグ):中国の貿易収支にはかなりの改善が見られるものの、その陰で同国の国内経済における不均衡の度合いは強まっている。国際通貨基金(IMF)が指摘した。

IMFはスタッフによる報告書で、「中国の成長は高水準の投資への依存度が高まっており、同国で不均衡が強まりつつあることを一段と示している」と指摘。IMFはこの日発表した世界経済見通し(WEO)の中で、中国の経常黒字の対国内総生産(GDP)比の見通しを「中期的に」4−4.5%と、昨年7月時点の7.5%前後から下方修正した。

今週開催されるIMFの春季会合や20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を前にしたこの下方修正は、世界の不均衡是正に向け人民元高を求める動きに中国が対応していく上で支援材料になる可能性もある。一方でIMFスタッフによる報告書は、中国には消費の拡大が必要であり、それがなければ同国経済が不安定化するリスクが生じ、ひいては世界経済に影響を与えるだろうと指摘した。

IMFは「中国の中期の経常収支は危機前の水準を下回る状況が続く公算が大きいものの、それで世界の不均衡が解消されたとか中国で真の『バランス再構築』が成されたことが示唆されたと結論づけるのは時期尚早だ」と論じた。

この報告書についてIMFは、あくまで執筆したスタッフの見解に基づくものであり、必ずしもIMFの総意ではないとしている。

原題:China’s Falling Trade Surplus Masks Domestic Imbalance,IMF Says(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:北京 Nerys Avery navery2@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net
更新日時: 2012/04/17 22:44 JST


03. 2012年4月17日 23:30:42 : 3CNLte9sGM
国際通貨基金 | 2012年4月

総括

2011年9月の世界経済見通し(WEO)の発表
後まもなく、ユーロ圏は再び深刻な危機に陥っ
た。
イタリアとスペインの財政の持続可能性に対
する市場の懸念は、国債の利回りの急激な上昇
を引き起こした。銀行が保有する一部資産の価
値が疑問視され、この様な銀行が投資家に対し
融資のロールオーバーを説得することができる
のか、疑問となった。資金調達問題を懸念した
銀行は、信用凍結に踏み切った。信認は落ち込
み経済活動は低迷した。
しかし、力強い政策対応がとられたことで事
態が好転した。スペインの選挙と、イタリアによ
る新首相の選出が、投資家にある程度の安心感
を与えた。財政協定の採択は、赤字と債務に対
処するというEU加盟国のコミットメントを示し
た。最も重要な点は、欧州中央銀行(ECB)によ
る流動性の供給により、銀行のロールオーバー・
リスクが当面回避されソブリン債圧力が軽減し
たことだと言える。
危機の最悪期が過ぎ去り、米国経済に関する
喜ばしいニュースが報道され、楽観志向が幾分
戻った。しかし過度に楽観視すべきではない。新
たな欧州危機が発生しなくとも、大半の先進国・
地域は依然として成長に大きなブレーキがかか
っている。さらに、危機が新たに発生するリスク
も依然として存在しており、先進および新興市
場国・地域に影響を及ぼす可能性がある。
ベースラインについて注目してみる。当分、名
目金利がゼロ近傍にあると考えられるにもかか
わらず、先進国の需要が何故拡大しないのかと
いう疑問もあろう。その理由として、これらの国
々の成長に、程度に差があるものの、財政健全
化と銀行のレバレッジの解消という二つの要因
がブレーキをかけていることが挙げられる。両
者とも、必要な調整を反映しているが、短期的に
成長の減速要因となっている。
大半の先進国で、財政健全化が進められてい
る。今年の循環的変動調整後のプライマリーバ
ランスの赤字が平均で対GDP比1ポイント弱
減少し、乗数効果を1とした場合、財政再建によ
り、先進国の成長率は約1ポイント縮小すること
になろう。
銀行のレバレッジ解消は、主に欧州に影響を
及ぼしている。銀行のレバレッジ解消は必ずし
も民間部門への与信の縮小を意味するもので
はないが、与信のさらなる引き締めに影響する
と示す証拠もある。我々の最も可能性のある推
定によると、これにより今年ユーロ圏の成長が、
さらに1パーセントポイント縮小する可能性が
ある。
我々の見通しは、これらの影響を反映してい
る。我々は、なかでも欧州で成長は引き続き低
迷し、当分失業率は高止まりすると予想する。
新興市場国・地域もこれらの情勢と無縁では
ない。先進国経済の低迷は、輸出の伸びの鈍化
となった。さらに金融をめぐる不透明性が、リス
ク選好度の急激なシフトと相まって、変動的な
資本移動につながった。しかし、多くの場合、新
興市場国は堅調な成長を維持するための政策
余地を十分に有している。しかし、このような見
解が、状況は国により異なるという事実を覆い
隠すことが往々にしてある。すなわち、景気過熱
に警戒が必要な国もあれば、産出量ギャップが
マイナスで、成長維持のための政策を実施する
ことができる国もある。総じて、我々は9月の見
通しに若干下方修正を加えたものの、新興市場
国・地域では成長が持続すると考える。
リスクに関しては、原油市場に影響する地政
学的緊張がリスクであることは間違いない。しか
し、欧州での深刻な危機の再発が、主なリスク
であることは変わりない。「防火壁」の構築が完
成したとき、大きな進歩を遂げることになろう。
投資家心理の悪化の影響を乗り越える支援や、
財政健全化と改革を進める時間的猶予をさら
に提供するために、必要に応じて資金を動員す
ることが可能となる。しかし、防火壁のみでは、
一部の国が抱える財政や競争力、成長に関する
困難な問題を解決することはできない。マクロ
経済面或いは政治面での悪いニュースが、昨年
の秋に経験したようなダイナミックスを引き起
こすリスクが残存している。

世界経済見通し:回復を始める成長、未だ残る危険性 
国際通貨基金 | 2012年4月

政策に話を移すと、財政健全化と銀行のレバ
レッジ解消の長期的な好ましい影響と短期的な
悪影響の間のバランスの最善の取り方に、多く
の議論が集中している。
財政政策については、早急な財政健全化に対
する市場からの圧力により複雑になっている。
さらに、財政引締め策に対する市場の反応は、
財政健全化を求める一方で成長の減速に伴い
否定的な反応を示すなど、若干一貫性に欠けて
いるように見られることから、更に複雑化してい
る。適切な戦略はこれまでと変わりない。すなわ
ち、早急な財政調整は信頼性の点から必要だ
が、支出トレンドの縮小、および支出と赤字を漸
次的かつ自動的に削減する財政システムとルー
ルの導入の決定を行うなど、長期的な信頼に足
るコミットメントを求めるべきである。この点で
の進展が、なかでも米国と日本で不十分である。
しかし、この面で更なる進展がなくとも、短期的
な財政健全策については、現水準で概ね適切だ
と思われる。
銀行のレバレッジ解消をめぐっての課題は二
つある。財政政策と同様、第一の課題はレバレッ
ジ解消全体の適切なペースの見極めである。第
二に、レバレッジ解消により、国内のみならず他
国でも信用収縮を引き起こすことがないように
しなければならない。一部公的資金による銀行
の資本増強は、既にアジェンダにはないようだ
が、検討する必要があるかもしれない。これが、
与信と経済活動の拡大につながることから、注
入した資金は、他の財政措置と比較しても、一段
と容易に取り戻すことが可能であろう。
リスク軽減政策については、焦点は明らかに
欧州である。政府と銀行の連関性の軽減を図る
措置を導入すべきであり、たとえば、ユーロレベ
ルの預金保険や銀行の破たん処理制度の構築
から、ユーロ建て債券の共通市場の創設など、
限定的な形でのユーロ債の導入といったことが
考えられよう。これらの措置は早急に必要であ
り、危機がじきに発生するとなった場合、効果を
発揮するだろう。
一歩下がってみると、欧州をはじめとする先
進国・地域の持続的な成長の拡大が、おそらく
最も重要だが最も達成が困難な課題であろう。
成長の低迷は、低調なベースライン予測の原因
となるのみならず、財政調整を困難にしかつそ
のリスクを高める。差し当たっては、需要を高め
る措置に集中すべきである。今後、潜在成長力
を高める措置にも注力する必要がある。望むべ
くは双方を行う措置であるが、そのようなもの
は無いに等しいだろう。しかし、より現実的には、
長期的に有益で、かつ短期的に需要を抑制しな
い改革を求める必要がある。これらの改革の特
定と、その短期的な潜在的な負の影響への対策
を、政策の最優先課題とすべきであろう。

オリビエ・ブランシャール
経済顧問

国際通貨基金 | 2012年4月

要旨
世界経済の見通しは、2011年に大きく悪化し
た後、再び次第に力強さを増している。しかし、
下振れリスクは依然として高い。2011年の後半
に、米国の経済が改善を見せ、ユーロ圏が混迷
する経済危機に対しより良い政策をとったこと
で、世界経済が急激に減速する可能性が低下し
た。結果、主要な先進国・地域では、再び経済の
回復が緩慢ながらも見込まれ、大半の新興市場
および途上国・地域では、引き続き比較的堅調
な成長が予測される。しかし、この改善の足取り
は極めて脆弱である。政策担当者は、中期的に
健全な成長を実現するうえで不可欠な、抜本的
改革を継続しなければならない。また、先進国・
地域では産出量ギャップが大きいことから、依
然として低調な成長を支えるべく、当面は政策
を調整する必要がある。
2012年の世界経済の成長率は、2011年後半
と2012年前半の経済活動の低迷を受け、2011
年の約4%から3.5%に落ち込むと考えられる。
2012年1月の世界経済見通し(WEO)改訂版
で、ユーロ圏の政府と銀行部門の情勢の悪化に
よるダメージを背景に、2011年9月のWEO見通
しを下方修正した。ユーロ圏を含めた大半の国
や地域の成長率は、2012年1月のWEO改訂版
予測より若干力強いものとなろう。第1章で述べ
るように、2012年を通し経済活動が再び加速す
ることで、2013年の世界の成長率は約4%に回
復する見込みである。ユーロ圏は、ソブリン債
務危機、総体的な信認の喪失、銀行のレバレッ
ジ解消の実体経済への影響、市場圧力を受け
た財政健全化の影響などを背景に、2012年は
穏やかな景気後退局面に入ると引き続き予測
される。欧州の様々な問題を理由に、先進国・地
域のグループとしての経済活動は、2012年、翌
2013年の成長率が、それぞれ僅か1.5%、2%と
予想されるなど、引き続き期待を裏切るものと
なろう。これらの国や地域の雇用創出は引き続
き低迷し、失業者はさらなる所得支援および職
業訓練、再訓練、職業紹介の面での支援が必要
となろう。新興市場および途上国・地域の実質
GDP成長率は、2011年の6.25%から、2012年は
5.75%へと鈍化すると考えられるが、その後、マ
クロ経済政策の一層の緩和と外需の改善を背
景に、2013年には6%まで再加速する見込みで
ある。第2章で論ずるように、ユーロ圏危機の伝
播は欧州の他の国々に大きく影響することにな
ろう。一方、欧州以外の国や地域では、金融のボ
ラティリティは一段と増加するものの、ユーロ圏
危機が再燃しなけければ、経済活動への大きな
影響はないだろう。
システミックリスクの軽減において政策が果
たした役割は重要であるが、ここで立ち止まって
はならない。欧州中央銀行(ECB)の三年満期の
リファイナンス・オペ(LTROs)、 欧州の防火壁の
強化、野心的な財政調整プログラム、および製
品市場と労働市場の大々的な改革の実施がユ
ーロ圏の情勢の安定化に寄与し、銀行や政府に
かかる圧力が軽減された。しかし、懸念は引き
続き残る。また、先の給与税減税と失業保険給
付の延長により、米国経済に悪影響を及ぼす可
能性があった、財政の急激な引き締めを回避す
ることができた。より広く見ると、多くの先進国・
地域が、中期的な財政健全化のための堅牢な
プログラムの策定と導入において大きく前進し
た。同時に、新興市場および途上国・地域では、
これまでの政策の改善が功を奏している。しか
し、さらなる措置を取らなかった場合、ユーロ圏
の問題が容易に再燃し、米国では2013年に著し
く急激な緊縮財政が選択される可能性がある。
以上を踏まえ、これまでの世界経済見通しで
繰り返し指摘してきたように、下振れリスクは引
き続き高い。あいにく、これまでに指摘したリス
クの一部が現実となった。この度のWEOの各予
測は、これまでの下方シナリオと比較し若干良
いというだけである1。引き続き、ユーロ圏危機
の一層の悪化による一段と広範なリスク逃避
が、当面の懸念材料である。本WEOで詳しく検
証しているように、このシナリオは、当予測と比
較し、世界およびユーロ圏の産出高が、2年で
各々2%、3.5%落ち込む可能性を示している。ま
た、地政学的不透明性が、原油価格の急騰を引
き起こす可能性もある。原油価格が約50%上昇
1 2011年1月のWEO改訂版の下方シナリオを参照
世界経済見通し:回復を始める成長、未だ残る危険性 
国際通貨基金 | 2012年4月
することで、世界の産出高は1.25%落ち込む可
能性がある。こういった緊張の成長への影響は、
金融の大幅なボラティリティと信認の喪失を伴
った場合、一段と大きいものになろう。さらに、
マクロ経済政策の引き締めが過度に行われた
場合、新たな主要国が継続的なデフレ或いは長
期に渡る経済の著しい低迷期に突入する可能
性もある。さらに、潜在的なリスクの一つとして、
日本や米国の巨額の財政赤字と債務、および一
部の新興市場国・地域の経済の急減速により、
世界の債券市場や為替市場が混乱することも
考えられる。しかし一方で、政策の改善が一段と
進み、金融環境が継続的に緩和され、地政学的
緊張が緩和した場合、予測以上の成長を遂げる
可能性もある。  
弱い回復を強固なものとし、多くの下振れリ
スクを封じ込めるために、政策は強化しなけれ
ばならない。短期的には、ユーロ圏危機の対策
に一層注力しなければならず、より低迷する経
済活動を踏まえ財政引き締めを節度あるもの
とし、大幅に緩和された金融政策を継続し、金
融部門へ十分な流動性を供給することが求め
られる。
• ユーロ圏については、欧州安定メカニズ
ム(ESM)と欧州金融安定ファシリティー
(EFSF)の統合に関する先の決定は歓迎すべ
きものであり、これは、欧州の直近の他の取り
組みと共に、欧州の危機メカニズムを補強し
IMFの世界規模の防火壁(ファイアウォール)
の強化に向けた取り組みを支えることになろ
う。十分な財政再建が進んでいるが、短期的
な需要の過度の落ち込みを回避する必要が
ある。国内インフレは非常に低いと予測され
ることから、更なる金融緩和の余地がある。異
例的支援(LTROsや国債の購入など)を通し、
資金調達市場の秩序を保ち、金融政策の実体
経済への波及を促すよう、引き続き努めるべ
きである。さらに、銀行の資本増強が不可欠
だが、これにはより柔軟化したEFSF/ESMから
の直接的支援が必要となろう。
• 米国と日本については、短期的には十分な財
政調整が計画されているものの、中期的に一
段と堅牢かつ持続的な財政健全化戦略を早
急に打ち立てる必要がある。また、国内のイン
フレ圧力が極めて低いことから、日本は、金融
緩和を一層進め、中期的にインフレ目標を達
成する必要があろう。また、米国でも、経済活
動が期待に沿うものにならない恐れがある
場合、一層の金融緩和が必要かもしれない。
• より広くは、主要な国や地域の成長見通しが
弱いことから、財政収支が健全で市場の信認
を確保している国や地域は財政政策に余地
があり、再建ペースを見直すこともできよう。
また、他の国・地域では、現水準以上の赤字に
対する資金調達が容易であるならば、自動安
定化機能を自在に機能させるべきである。
今後については、主要先進国・地域の弱い中
期的成長見通しの改善が課題である。今後も、
金融部門の抜本的改革、給付金プログラムの野
心的改革を含めた財政健全化の一層の推進、
潜在生産量を押し上げるための構造改革が、喫
緊の課題である。新たに合意された規制(バー
ゼルIIIなど)の国レベルでの実施に加え、大き過
ぎてあるいは複雑過ぎてつぶせない機関をめ
ぐる問題、シャドーバンキング・システム、銀行
監督当局間のクロスボーダーな連携など、金融
危機により明らかとなった多くの弱点に、金融
部門改革は取り組まなければならない。高齢化
にかかる支出の改革は、今日の需要を大きく弱
めることなく将来の支出を大幅に削減すること
ができることから、不可欠である。このような措
置をとることは、政策担当者が断固たる行動を
とることができる能力を示すことになり、財政の
持続可能性に対する市場の信認の再構築に寄
与するだろう。そして、これにより、国債発行によ
るインフレ上昇の懸念を生むことなく、金融の
再建と需要を支えるための財政・金融政策を行
うより多くの余地が生じる。また、ユーロ圏での
競争力ショックへの調整能力の強化や日本での
労働参加の向上など、多方面で構造改革を行う
必要がある。

不動産市場に対する政策は、家計のバラン
スシートの改善を促し、さもなくば低迷する消
費を支えると期待される。第3章で論じているよ
うに、アイスランドをはじめ、このような政策を
導入した国々は大きな効果を上げている。米国
は、様々なプログラムを導入してみたもののそ
の効果は限定的であることから、より強力なア
プローチを検討している。その他の国や地域で
は、問題の解決を銀行や家計に委ねている。 総
じて、過度のリスクを伴うあるいは投機的な住
宅投資を行った個人の責任を問わないことに
伴うモラルハザードへの懸念が、進捗の足かせ
となっている。欧州のモラルハザードをめぐる

議論は、個人ではなく国を対象としているが、こ
の問題がユーロ圏危機への対処を非常に困難
にしている。どちらにしても、需要を支える的を
絞った介入は、遥かに高いコストを伴うマクロ
経済プログラムと比較し、大幅な効果を発揮す
ると思われる。モラルハザードの問題は、規制
と監督の強化により一部対処することも可能で
ある。
新興市場および途上国・地域では、力強いマ
クロ経済政策と構造政策が引き続き効力を発
揮しているものの、国内では脆弱性が次第に蓄
積している。これまで10年に渡り、これらの国や
地域の多くが、急速な与信の伸びと国際商品価
格の上昇に支えられ、予測以上に良い状態に
ある。与信の伸びが金融の深化の現れである限
り、これは成長へのプラスの影響となっている。
しかし、大半の国や地域では、銀行融資の質に
対する疑念を深めることなく、信用が現在のペ
ースで拡大を続けることは不可能である。また、
国際商品価格が、地政学的緊張により短期的に
急騰するものの、これまで10年間で見られたよ
うな高い水準で推移するとは考えられない。こ
れは、第4章で論じたように、財政政策をはじめ
とした様々な政策が、潜在成長率の低下に適応
する必要があることを示している。
新興市場および途上国・地域では、力強い経
済活動、高い与信の伸び、変動的な資本フロー、
高止まっている国際商品価格による景気過熱圧
力と、エネルギー価格に起因するインフレと財
政ポジションのリスクの再燃の抑制に努めなが
ら、先進国・地域からの大きな下振れリスクに
対処すべくマクロ経済政策を適切に調整するこ
とが、当面の主要な課題である。適切な対応は
異なるだろう。マクロ経済政策がほぼ正常化し
ている国や地域では、短期的には先進国・地域
からの需要の低下への対応に焦点を絞るべき
だろう。同時に、マイナスの波及効果や変動的
な資本フローに対応する用意がなくてはならな
い。他の国や地域では、マクロ経済政策の余地
の再構築とプルーデンシャルな政策と枠組みの
強化に引き続き取り組む必要がある。金融政策
担当者は、原油価格の高騰がより広範なインフ
レ圧力とならないよう警戒する必要がある。ま
た、財政政策は、補助金の対象を最も脆弱な世
帯のみとするなど、公的部門のバランスシート
へのダメージを抑制しなければならない。
最近の情勢に照らし、グレート・リセッション
の間に急激に縮小した世界の経常収支の不均
衡は、再び拡大することないと考えられる。これ
は主に、危機前に巨額の対外赤字を抱えていた
国や地域の特徴であった過剰消費の伸びが疲
弊し、黒字国のより高い消費に相殺されていな
いことによる。結果、世界経済は、危機直前まで
の好況期と比較し、全ての地域で需要と成長の
損失を経験した。主要な黒字国・地域による、こ
れまで以上に市場が決定する為替レートシステ
ムに支えられた、消費拡大へのシフトを進める
リバランスは、これらの国のみならず世界全体
の見通しの改善に貢献するだろう。
緊縮財政のみでは、主要国・地域経済の停
滞に対処することはできない。より力強い協力
者からのリソースを活用し、調整を緩和し根本
的な問題(米国の弱い家計、ユーロ圏の弱い政
府)により良くターゲットを絞った政策が必要で
ある。政策担当者は、非伝統的な金融支援に伴
うリスクを過剰に懸念するあまり、中央銀行の
政策実施余地を制限することがないようにしな
ければならない。非伝統的な政策は抜本的改革
の代替とはならないが、より良い政策とより高い
世界成長の可能性を著しく毀損する債務デフレ
の罠に、新たな主要国が陥るリスクを抑制する
ことができよう。


04. 2012年4月17日 23:48:51 : 3CNLte9sGM
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2012/01/index.htm
World Economic Outlook (WEO)
Growth Resuming, Dangers Remain

April 2012

The April 2012 edition of the World Economic Outlook assesses the prospects for the global economy, which has gradually strengthened after a major setback during 2011. The threat of a sharp global slowdown eased with improved activity in the United States and better policies in the euro area. Weak recovery will likely resume in the major advanced economies, and activity will remain relatively solid in most emerging and developing economies. However, recent improvements are very fragile. Policymakers must calibrate policies to support growth in the near term and must implement fundamental changes to achieve healthy growth in the medium term. Chapter 3 examines how policies directed at real estate markets can accelerate the improvement of household balance sheets and thus support otherwise anemic consumption. Chapter 4 examines how swings in commodity prices affect commodity exporting economies, many of which have experienced a decade of good growth. With commodity prices unlikely to continue growing at the recent elevated pace, however, these economies may have to adapt their fiscal and other policies to lower potential output growth in the future.

http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2012/01/pdf/text.pdf


05. 2012年4月17日 23:57:08 : 3CNLte9sGM
国際金融安定性報告書 2012 年 4 月

第 3 章 プレス・ポイント:
安全資産: 金融システムの要か?

著者: Silvia Iorgova (チームリーダー), Abdullah Al-Hassan, Ken Chikada,
Maximilian Fandl, Hanan Morsy, Jukka Pihlman, Christian Schmieder,
Tiago Severo, Tao Sun
ポイント
 市場に歪みが生じていることで、金融市場で枢要な役割を果たす安全資産
(米国債、ドイツ国債、場合によっては高格付社債)に負荷が強まってい
る。先進国における不確実性の高まり、規制改革、中央銀行による金融危機
後の異例の政策措置が、安全資産に対する需要に拍車をかけている。
 安全資産の供給は、公的部門及び民間部門の発行能力が低下しているため、
減少している。その債務が安全資産とみなされる国の数は減少している。証
券化をめぐる様々な問題により、証券化商品の安全資産としての役割も低下
している。
 安全資産の減少と需要圧力の増加は、国際金融システムの安定性にとってマ
イナス要因となる。安全資産の不足は、投資家の買い急ぎを招き、その価格
を上昇させ、安全性基準の引き下げも余儀なくするだろう。また、短期的な
ボラティリティを一段と拡大させ、高品質な担保の不足にもつながろう。
 安全資産市場におけるスムーズな調整には、より柔軟な政策の立案と実践が
求められる。政策当局は、金融機関の健全性の確保と、そのために安全資産
に対する需要が過度に性急に高まることによるコスト、とのバランスを取ら
なければならない。
世界金融危機および多数の先進国における財政の持続可能性に関する懸念の高まり
は、絶対的に安全とみなすことができる資産は存在しないことを示している。これ
まで実質的に無リスクとされてきたソブリン債が最近格下げされたことにより、高
格付けの資産もリスクと無縁ではないことが浮き彫りになった。絶対的に安全とい
う概念は、格付機関の最高位格付けに暗に含まれ、プルーデンシャル規制、機関投
資家の資産運用基準に内包され、金融危機前に偽りの安心感を与えていた。資産の
安全性は以前よりも適切に評価されるようになっているものの、予定されている規
2
制改革や市場改革、中央銀行の危機管理戦略は、先行き不透明な状態が継続し、安
全とみなされる資産の供給が減少していることも相俟って、安全資産の価格を、こ
うした歪みが存在しない場合と比べて、押し上げることになろう。
本章では、安全資産の様々な役割、規制・政策・市場から生じる歪みの影響、さら
にはこれらに起因し今後問題となり得る点を検証する。需要面を見ると、不確実性
の高まり、規制改革、及び中央銀行による危機関連の措置が、需要の押し上げ要因
となっている。今般の危機以前の主な外部要因は、世界的な経常収支の不均衡であ
り、これが外貨準備や一部の政府系投資ファンドによる安全資産の購入を促してい
た。今後の焦点は、新たなプルーデンシャル規制による需要、OTCデリバティブ取引
やそのセントラル・クリアリングへの移行に伴う担保需要、中央銀行のオペレーシ
ョンに伴う需要の増加を満たすことができるかということにある。供給面では、財
政に対する懸念からソブリン債は安全であるという認識が後退している。分析によ
ると、2016 年までに約 9 兆ドル分(ソブリン債の予想発行残高の約 16%)が、安
全資産とみなされなくなる可能性がある。民間部門による安全資産の発行も、証券
化を巡る問題により証券化商品の安全性に問題が生じたため、減少している。
安全とされる資産の減少と安全資産に対する需要の増加が、国際金融システムの安
定性にとってマイナス要因となる。安全資産の不足は、投資家の買い急ぎを招き、
その価格を上昇させ、安全性基準の引き下げも余儀なくするだろう。また、短期的
なボラティリティを一段と拡大させ、金融取引における「潤滑油」あるいは信用の
代わりの機能を果たす、流動性があり価格が安定した担保の不足を招く可能性があ
る。
政策提言
政策対応は、安全資産の新たな、そしてスムーズでない価格調整から生じ得る金融
システムの安定性に対するリスクを減ずるべく、柔軟かつ段階的に実施すべきであ
る。
新たなプルーデンシャル・ルールは、安全資産となり得る資産のそれぞれの特性を
十分に考慮すべきである。対象となる資産のリスク評価は、信用力ならびに流動性
の観点に基づき、適切な間隔で行い、資産によって異なるものにすべきある。資産
のリスク評価が個別に適切に行われていれば、市場情勢の悪化や格付けの引き下げ
により、その資産が自動的に安全性の低いカテゴリーに振り分けられ、価格がいき
なり下落するといったクリフ効果を回避することができよう。自己資本規制におけ
るソブリン債の扱いについて言えば、発行国の相対的な信用リスクをより正確に反
映したリスクウェイトをいずれは適用する必要性があろう。流動性規制に関しては、
流動性カバレッジ比率算定のため、対象資産のヘアカット率を定期的に見直してい
く必要があろう。
3
CCP のデフォルトファンドに安全資産を担保として差し出すことに伴う需要の増加
圧力については、担保として受け入れ可能な安全資産のカバレッジに柔軟性を持た
せることで軽減できよう。リスクに基づくヘアカットの設定や、受け入れ可能担保
の最低基準を設けつつ、受け入れ担保対象資産の範囲を広げることで、CCP の健全
性を犠牲にすることなく、特定の安全資産への過度の需要圧力を軽減することが可
能となろう。
供給面での政策対応は、需要が高まっている安全資産の価格上昇圧力を抑制する。
政府の信用力の改善、資金調達コストの低下、及び経済成長力の強化のためには、
政府債務残高の削減、その債務管理の改善、より優れた金融インフラストラクチャ
の導入に向けた戦略が必要である。民間部門も、安全資産の重要な供給源であり、
より健全で、カバードボンドにみられるよく練られ規制された枠組みにより証券化
市場の回復を促すことで、安全資産を供給できよう。また、新興国が自国の金融イ
ンフラストラクチャの改善を通じ、安全資産を発行する能力を高めていくことで、
国際的な安全資産市場の不均衡が緩和されよう。
第4 章プレス・ポイント
長寿リスクの財務的影響
国際金融安定性報告書 2012 年4 月
著者:S. Erik Oppers (チーム・リーダー), Ken Chikada, Frank Eich, Patrick Imam,
John Kiff, Michael Kisser, Mauricio Soto , Tao Sun
本章では人々が想定以上に長生きするという長寿化リスクが、金融面でかなり大き
な影響をもたらし得る点について取り上げる。本章ではまず長寿化リスクを定義し、
リスクの規模とそれが財政や企業のバランスシートに及ぼしうる影響を推計する。
今後何十年かにわたって人口が老齢化するにつれ、経済全体の中での老人による消
費の比率は上昇し、公的部門や民間部門にとって負荷となっていくであろう。政府
ポイント
 人々の寿命が延びていることはとても望ましいことであり、長寿の実現で
個人の厚生は高まっている。しかし、寿命の長期化は、社会保障や公務員
年金制度を通じて政府、確定給付年金を支給する企業、終身年金を販売す
る保険会社、確定給付年金を持たない個人、それぞれにコスト増大をもた
らす面もある。
 人々が想定以上に長生きすること(いわゆる長寿化リスク)の金融面への
影響はかなり大きい。平均寿命が現在の予想より3 年延びると、すでに大
きい人口高齢化に伴うコストが2050 年までにさらに5 割も増大する。
 金融面への影響の大きさと、その対応策が効果をもたらすまでに時間がか
かることを考えれば、長寿化リスクに今からもっと対処していく必要があ
る。
 長寿化リスクの影響を緩和するには定年の延長(法制化するか自主的であ
るかを問わず)、年金積立金の増額、及び年金支給額の削減の組み合わせ
が必要である。
 政府としては、(i)長寿化リスクが財政に与え得る影響を認識し、(ii)政府、
民間の年金運営者、個人の間のより適切なリスク分担のあり方を構築し、
(iii)長寿化リスクの移転のための資本市場の発達を促し、(iv)長寿化に関す
る情報と老後の生活設計の教育を充実させる、ことが必要である。
2
も民間の年金運営者も老齢化に伴うコストについて準備はこれまでもしてきている。
もっとも、こうした対応は、過去において常に寿命の延びを過小評価してきた人口
動態の将来推計をベースにしたものである。
こうした想定を超えて人々が長生きする場合には、政府や確定給付年金の運営者に
とっては、社会保障費や年金支給負担が想定外に増大することになる。また、個人
にとっても、長寿化による恩恵もある一方で、老後の生活資金が枯渇し得るという
金銭的なリスクが生じる。こうしたリスクは徐々に蓄積していくものであるが、早
期に対応をとらないと、すでに問題を抱えている民間や公的部門のバランスシート
に大きな負荷を与え、他のショックに対する脆弱性を増し、金融全般の安定性にも
悪影響を及ぼす恐れがある。
長寿化に伴うリスクを十分に認識している政府や年金運営者はごく少数である。実
際にそれを計測した場合、その規模は大きい。本章では、2050 年まで平均寿命が現
在の基準推計より3 年(過去の過小推計分に概ね相当)延びた場合には、老齢化に
伴うコストがさらに5 割拡大すると推計している。また、米国の民間企業年金デー
タに基づく試算例では、3 年の寿命の延長に伴い年金債務が9 パーセント上昇する。
年金債務の残高は大きいため、この場合、企業は単年度の年金積立分の何倍にも相
当する金額をさらに年金基金に拠出する必要があることになる。
長寿化リスクに対応するには様々な手段をとる必要がある。第一に、政府は高齢者
社会保障制度と公務員に対する確定給付年金制度を通じて、大きな長寿化リスクを
抱えていることを認識する必要がある。第二に、長寿化リスクは個人、年金運営者、
政府の間で適切に分担されるべきである。第三に、資本市場を活用し、長寿化リス
クを年金運営者からリスクをより吸収できる主体に移すこともできる。本章では、
最近拡大しつつあるこのリスク移転市場の取引を取り上げ、その機能の改善策につ
いても論じる。
予想寿命の長期化に合わせ、定年を引き上げていくことも必要不可欠な対策である。
政府が定年延長を法制化することも可能だが、個人が定年を先延ばしにするような
誘因を設けることもできる。定年延長は老後のための生活資金を蓄積する期間を延
長する効果と、蓄積した生活資金の使用期間を短縮させるという二つの効果を持つ。
長寿化とその資金面への影響についてより充実した教育を行うことで、個人の認識
を高めることができる。年金支給の柔軟性を高めることも重要であり、年金掛け金
の増額や定年延長ができない場合には支給額を引き下げざるを得ない場合もあろう。
3
長寿化リスクについての認識をより高め、その緩和策は今から着手すべきである。
対策が効果を発揮するまでには時間がかかり、対策が遅れるほど効果的な対応がよ
り難しくなる。人口の高齢化とその追加的なリスクである長寿化に対応していくこ
とは、民間ならびに公的部門のバランスシートの持続可能性についての信認を回復
させるために必要な取り組みの一部である。


06. 2012年4月17日 23:58:16 : 3CNLte9sGM
http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/weo/2012/01/pdf/sumj.pdf
報道資料
世界経済見通し 2012年4月

第3章 要旨 家計債務への対応を考える
著者: Daniel Leigh (チーム・リーダー)、 Deniz Igan、
John Simon、Petia Topalova
うよう
Key Points
多くの国が、グレート・リセッション以前に積み上がった家計債務負担という問題を抱えている。2007年に至るまでの5年間で、先進国および一部の新興市場国で、家計債務の対所得比率が歴史的水準にまで膨らんだ。アイスランド、アイルランド、スペイン、英国、米国といった国々で資産価格ブームが同時期に発生したが、これは、資産に対する家計債務の割合が総じて安定していたことから、資産価格の急落
要点
 グレート・リセッション(大規模景気後退局面)以降、多くの国が、資産価格の下落後の高水準の家計債務負担という問題を抱えている。本章では、住宅価格の急落後の家計債務の影響を分析するとともに、経済面へのダメージの軽減に向け、国が選択可能な政策を検証する。
 住宅価格の急落や景気後退局面の影響は、そこに至るまでに積み上がった家計債務が巨額であるほど、より深刻かつ長期化する傾向にある。経済の低迷は、住宅価格の下落とそれ以前に蓄積された過剰債務が組み合わさった結果を反映している。
 住宅価格の急落期における経済活動の過度の縮小を抑制するには、金融緩和や、ソーシャル・セーフティネットを通した財政移転といったマクロ経済政策が不可欠である。しかしながら、マクロ経済政策には限界がある。
 家計の債務水準の引き下げと債務返済負担の軽減に向けた良く練られた大胆な政策を採ることで、一定の財政コストで、家計によるレバレッジ解消の経済活動へのマイナスの影響を緩和することが可能である。
2
へのエクスポージャーの拡大が覆い隠されていたことを意味する。住宅価格の下落に伴い、多くの家計で負債に対し資産が目減りし所得も減ったことから、住宅ローンの返済が一段と困難となった。今日、家計によるデフォルトや差し押さえ、投売りが一部の国々で広がっている。
これは、経済パフォーマンスへどのような影響を及ぼすだろうか。過去30年の先進国についての分析で、住宅価格の急落や景気後退局面の影響は、そこに至るまでに積み上がった家計債務が巨額であるほど、より深刻かつ長期化する傾向にあることが判明した。すなわち、家計消費と実質GDPは一段と落ち込み、失業率は上昇し、債務の完済或いは債務不履行による家計のレバレッジ解消がより顕著となり、経済の低迷が尐なくとも5年に渡り続く。住宅価格の急落後の経済活動の縮小規模が一段と大きいことを踏まえると、住宅価格の一層の落ち込みのみが影響しているとは言えない。また、銀行危機の発生のみでは説明がつかない。むしろ、深刻な経済縮小は、住宅価格の下落と住宅価格急落以前のレバレッジの蓄積が組み合わさった結果だと言えよう。これらの定型化された事実は、家計債務とレバレッジ解消が、経済低迷の深刻化と長期化を引き起こすとした最近の理論モデル予測と一致している。
家計債務問題を前に、政府が採ることができる成長支援策とは。家計のレバレッジ解消に関する過去および現在の事例の分析は、家計がレバレッジ解消を進める間、経済活動の過度の縮小を防ぐうえで、マクロ経済政策が不可欠であることを示している。例えば、1990年代のスカンジナビア諸国のケースが示すように、失業者世帯に対するソーシャル・セーフティネットを通した政府移転支払いにより、所得を押し上げ債務返済能力の向上を期待することができる。また、なかでも変動金利で住宅ローンを組んでいる場合、金融緩和を行うことで、住宅ローンの支払い負担を即座に軽減し家計のデフォルトを防ぐことが可能である。さらに、金融部門へ支援を行うことで、劣化した家計のバランスシートが銀行の貸出意欲に影響するリスクに対処する
3
ことができよう。しかし、マクロ経済刺激策には限界がある。名目金利のゼロ下限制約により、十分な利下げを行うことができず、高水準の債務を抱えていることで、財政移転の余地が抑制される可能性もある。
的を絞った家計の債務再編政策により、大きな成果が期待できる。1930年代の米国や今日のアイスランドのように、大胆かつ包括的なプログラムを導入することで、比較的低い財政コストで、家計のデフォルトや差し押さえの件数を大幅に減尐させ、債務返済の負担を大きく軽減することができる。さらに、住宅価格の下落と総需要の低下という相互循環的な関係を防ぐことも期待できる。しかし、これらのプログラムが成功するには、その内容を慎重に策定する必要がある。適格基準が過度に厳格であったり、十分にインセンティブが組み込まれていない場合には、プログラムの効果は限られたものとなろう。一方、その対象を過度に広く設定した場合、深刻な副作用を引き起こすとともに、金融部門の健全性を損なう可能性がある。
(参考仮訳)
報道資料
世界経済見通し 2012年4月
第4章 要旨 国際商品価格の変化と一次産品輸出国
著者: John Bluedorn、 Rupa Duttagupta (チーム・リーダー)、Andrea Pescatori、 Stephen Snudden
Key points
要点
 これまで10年に渡り、一次産品輸出国は、国際商品価格の上昇の恩恵を受け、低迷する世界経済に対し耐性を示して来た。しかし、依然として下振れリスクが高いことから、一次産品輸出国の短期的見通しをめぐり懸念が指摘される。国際商品価格が横ばいあるいは下落した場合、これら輸出国はどのような政策を採るべきであろうか。
 一次産品輸出国は、国際商品価格のサイクルに対し脆弱である。なかでも、世界の経済活動の急激な落ち込み(拡大)は、国際商品価格の大幅な下落(上昇)や輸出国のGDPおよび対外収支の著しい悪化(改善)を引き起こす。
 輸出国は、国際商品価格の上昇期には予想外の収入を蓄え、下落傾向にある場合にはこの蓄えを使い経済の安定化を図る必要がある。しかし、歳入が恒久的に増加する場合、これらを公共投資や減税に活かし、長期的に産出高を押し上げ厚生を改善することが最善策だと言える。
 現在、国際商品価格の見通しは不透明であり世界経済成長は下振れリスクにさらされている。このようななか、一次産品輸出国はどのような備えが必要だろうか。一時的なショックに対するバッファーを財政面で構築する一方、国際商品価格のトレンドに関する最新の情報を取り入れる制度的能力の改善が、賢明なアプローチだといえる。
2
世界経済が低迷し国際商品価格が引き続き高止まっているなか、一次産品輸出国は、現在どのようなリスクに直面しているだろうか。本章では、輸出国の経済パフォーマンスを、実質GDP、与信の伸び、対外収支および財政収支で測定した。結果、これらの国々の経済パフォーマンスは、国際商品価格の変化と引き続き密接に関係しており、その上昇に伴い向上し下落に伴い悪化することが判明した。通常、エネルギーおよび金属価格の下落は2~3年続き、価格はピーク時から底値へ向けて実質的に40~50%下落する。これは、価格上昇時と比較し、下落時では実質GDP成長率が0.5〜1パーセントポイント縮小する可能性を示している。また、価格サイクルが、通常より急激に変化するあるいは長期化する場合、国際商品価格の変化の間の経済パフォーマンスの差が大きくなる。
世界経済の情勢の悪化により、国際商品価格が急落した場合、一次産品輸出国へはどのような影響があるだろうか。 世界の経済活動に起因する国際商品価格の変化は、一次産品輸出国の経済パフォーマンスに大きな影響を及ぼす。なかでも、原油輸出国への影響が最も大きい。原油の実質価格を約12%押し上げる1年を通した世界経済ショックは、即座に原油輸出国の実質GDPを0.4%、その後3年間で約2%押し上げる。
総じて、一時的な国際商品価格の変化に対しては、カウンターシクリカルな財政政策を採ることが最善だが、他国への影響を加味した場合、この提言には調整が必要となる。輸出国は、輸出品価格の
3
上昇の背景要因が需要・供給にあるにかかわらず、上昇期には一次産品に関連する収入の増加分を蓄え、下落時にボラティリティーを抑制すべくそのバッファーを活用すべきである。このような政策スタンスは、純債務の水準が低く、金融政策がインフレ目標政策と柔軟な為替相場制度のもとに運用されている場合に、最も効果的であり、これは価格上昇のボラティリティーの緩和に資する。しかしながら、他の国や地域での国際商品価格に影響する生産性ショック を相殺することが不可能な場合、主要な一次産品輸出国は、他国への影響を考慮し協調的な措置を採る必要がでてくることから、若干カウンターシクリカルな要素を減らした財政政策を採り、世界経済への生産性ショックの影響の中和に貢献することが必要となるかもしれない。
国際商品価格に起こった変化が永続的となる可能性がある場合、一次産品輸出国はどのような対応をとる必要があるだろうか。国際商品価格の変化が持続的あるいは永続的な性質を有すると判明している場合、歳入の恒久的な増加あるいは減少への調整が主な課題となる。価格が上昇する場合、公共投資の拡大と労働税や資本税の減税を行い、民間部門の生産性、産出高、厚生の改善に努めるべきであろう。しかし、国際商品価格の変化が一時的かあるいは恒久的なものであるかの正確な判断は、実際には困難である。このことから、国際商品価格のトレンドに関する最新の情報を次第に取り入れながら、国際商品価格のあらゆるシクリカルな変化に対処するために、政策枠組みの強化を図ると共に財政面でのバッファーを構築する必要がある。


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