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Yシャツしか作れなかったミャンマーが変わる日 課題が見えたらチャンスがある。変化の先頭に立てるかどうかの勝負どころ
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/763.html
投稿者 MR 日時 2012 年 4 月 27 日 01:23:02: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120425/231393/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>ニッポン企業のための新興国ガイド〜ミャンマー編

Yシャツしか作れなかったミャンマーが変わる日 課題が見えたらチャンスがある。変化の先頭に立てるかどうかの勝負どころ

• 2012年4月27日 金曜日

• 野村 修一,木村 義弘


 このところニュースではミャンマーの話題で持ちきりだ。私たち自身、数多くの日系企業の新興国戦略構築に携わってきたが、ミャンマーがここまで話題になるというのは以前から着目してきたものとして素直に嬉しく思う。願わくは、この流れが一過性に終わることなく、ミャンマーで日系企業がチャンスをものにできるよう一緒に汗を流していきたい。
 一方で、そんなミャンマーへの関心の高まりに対して、「ミャンマー投資は時期尚早である」という言説もある。では、いつ、どんな条件が揃えばミャンマーを考えるのか。戦略的に考え、結論として進出しないという選択肢もあるだろう。しかし、「まだ早い」という考えはその決断を先延ばしにしているように見える。
 今回は第1回、第2回の連載を受けて、ミャンマー全体の課題について、そしてチャンスについて読者の皆さんと考えを共有したい。
法律の整備に規制緩和など課題も残る
 前回、多重為替相場制についてご説明したのと同時に今年4月に統一されたということも書いた。多重為替相場制は、長らくは経済の歪みの原因となるものであった。ではそれが解決された今、他の課題とはなんだろうか。

 それには基本となる法制度の未整備、輸出入規制、利益送金の制限、金融が機能していないことが挙げられる。これらの課題と現状について紹介したい。
 基本となる法制度の未整備という点においては、前回汚職について説明したことを覚えて下さっているだろうか。実はそれ以外にもある。現在行われている国会では投資法等の改正について議論されているが、会社法等も旧態依然としたものとなっている。知的財産権の保護に関する法律では、1914年に制定された著作権法のみ。しかも権利侵害を行った場合の罰金が、なんと500チャット。日本円で50円程度だ。これは実体にあっていない。
 輸出入制度においては、輸入の都度、輸入ライセンスが必要であったり、煩雑な手続きが必要であったりする。制度変更も頻繁になされている。
 利益送金の制限についてもそうだ。投資法上、ミャンマー投資委員会もしくは中央銀行の許可の下、利益送金は可能だということになっている。しかし、昨年まで利益送金は許可されることがなかったと聞く。ただ、今年になってようやく配当が認められる兆しもある。
 金融も機能しているとは言い難い。従前では預金調達規制というものがあった。これは、銀行の払込資本金の10倍までしか銀行は預金を受け入れられないということだ。つまり1000万チャットを資本金とする銀行はその10倍の1億チャットまでしか預金を受け入れられないということになる。
 それだけではない。預金調達規制によって、貸し出しまで規制されるのだ。これがミャンマーの金融が機能しない理由であった。さらに、ミャンマーの中央銀行は財務省の管轄である。本来ならば財務省と中央銀行は牽制しあう関係にある。そうでなければインフレを起こしてしまうのだが、まだ中央銀行の独立が確立できていない。
 この点については、現在行われている国会がカギとなろう。銀行法の改正について討議がなされているのだ。そしてこの銀行法改正の主眼はミャンマー中央銀行の独立性の確保だ。ミャンマー中央銀行の独立性が確保され、その上でミャンマーにおける金融マスタープランが描かれる。そこでは外国銀行への銀行ライセンス開放も盛り込まれるであろう。ASEAN経済共同体(AEC)が実現される2015年までを目標に、今まさしくミャンマーの経済が変わろうとしている。
 このように変わろうとしているミャンマー。前回までに労働力、市場性という視点でミャンマーの魅力を考えた。しかしそれだけなら他の新興国と変わりはない。他の新興国との違いはなにか。それはミャンマーという国の「地政学的位置」にある。
アジアの成長エンジンに囲まれたミャンマー
 連載第1回目でミャンマーを考える上でのカギの1つは、ミャンマーの地政学的位置であると紹介した。
 経済予測に関するレポートの多くが、近い将来の国別経済規模において、中国とインドがトップとなる、と語る。ミャンマーはこの世界の2大国家の両方と国境を接している稀有な国だ。さらに現在のアジアを引っ張るタイ、そしてタイを中心とするメコン川流域諸国。これらアジアの、いや世界の成長エンジンに囲まれた国がミャンマーだ。周辺諸国の成長の果実を享受し、自国の成長も加速させることができる。

中国とインドに囲まれたミャンマー
注目されるSEZ開発
 ミャンマー国内には既に28カ所の工業団地が開設されている。その中で、現在注目を集める経済特別区(SEZ)は、チャオピュー、ティラワ、ダウェイだ。

 北側のチャオピューの位置づけは中国雲南省と結ぶ石油及び天然ガスパイプラインの拠点だ。中国は言わずもがな、ミャンマーに深く食い込んでいる。

 では他の経済特区はどうか。現在の状況を見ると、日本政府は旧首都であるヤンゴン近郊のティラワに最も関心を持っているようだ。ただ、状況は時々刻々と変わり、韓国や中国もここの開発に乗り込んでくる可能性が高い。ティラワは、旧首都であるヤンゴン近郊ということもあり、近郊のインフラ整備は進んでいる。また周辺人口も多いので労働力の調達も容易である。現在はまだ写真の通り、更地にして一部の工事が始まったところであるようだが、通常の製造業の進出候補地の1つとなりうる。
 最後に紹介するダウェイは、現在タイの民間ディベロッパーが事業権を取得しており、開発を進めている。工業団地だけでなく、港としての開発も主眼の1つだ。ダウェイはバンコクからちょうど真西230kmの地点であり、現在陸路の整備が進められている。この陸路が整備されればタイの物流が変わる。タイ国内企業の貨物は主にレムチャバンという港からシンガポール、マラッカ海峡を経由して西側に輸送される。ダウェイが港として機能すれば、タイ国内からミャンマーのダウェイまで陸路で貨物を運び、ダウェイ港からインド、アフリカ、中東という次のマーケットに出荷される。物流大手のDHLによると、ダウェイ港が整備されることによって、リードタイムがかなり短縮されるという試算が発表された。
 タイを中心にアジア事業の基盤を確立している日系企業は多い。タイで確立した基盤を活用して、ミャンマーから新しい市場を攻めることはできないだろうか。タイ国内の工場をマザー工場として、ミャンマーにサテライト工場を作り、工程を完結させるという考え方もできるだろう。また、物流のハブとしてとらえることもできるであろう。ミャンマー、特にダウェイは、日系企業にとってメコン川流域における西側のゲイトウェイになりうるのだ。
 さらにダウェイ自体は地盤も固く、重工業にも適しているとされる。環境意識の高まりとともに、重工業の開発には周辺住民との対話が必要であろうが、日本の環境技術を併用しながらであれば、ミャンマーにとって日本はこの上ない最良のパートナーとなりうるのではないか。
ミャンマーの物流で何が変わる?
 さて、このような物流上の革新が行われた場合何が起こるか、例を挙げて考えてみたい。それには第1回の記事を思い出していただこう。縫製工場の説明をした。その中で、現在のミャンマーの縫製工場では「何故、Yシャツの生産が中心か」について説明した。
 1つは工数が多いため、安い労働力というメリットを活かしやすいからだ。それに加えてもう1つある。物流の制約条件の下、Yシャツと言う商品特性が製造にマッチしているからだ。
 まずミャンマーに布を送るのに1カ月。縫製に1カ月、出荷して店頭に届くまでさらに1カ月。合計3カ月が必要となる。これが物流の制約条件である。そのような制約条件の下、ファッション性の高い衣服を3カ月以上のリードタイムが必要な場所で作るであろうか。Yシャツの商品特性を考えれば、季節性が低く、リードタイムがあっても問題がない。これが、ミャンマーの縫製工場でYシャツが製造されるもう1つの理由だ。
 さて物流上の革新が起き、タイ・ミャンマー間で陸路による流通網が整備された場合はどうか。よりファッション性の高い衣服にもミャンマーの縫製工場で対応できるようになるかもしれない。
 物流というキーワードで見た時、ミャンマーはゲームのルールを変えうる可能性を持つ。この意義をいち早く見出し、どのように動くか。地政学的な優位というものはなかなか変わるものではない。一般的には労働者の賃金は国が富むにつれて高くなる。税制の優遇措置もいつ変わるか分からない。しかし、ミャンマーという国の地理的な位置は、大天災が起きない限りは変わらない。
 初回の冒頭に書いたとおり、「とりあえずミャンマーに進出しよう!」では失敗の轍を踏むであろう。そこに何かしらの目的があって、その目的を達成する上で「ミャンマーでなければならない理由」が必要だ。もしその目的を達成する上で、インドがよいのであればインドに進出するべきだし、カンボジアなのであればカンボジアに進出するべきだ。日本国内で達成しうるならば日本を出る必要はない。それこそが「戦略」というものだろう。
 今回紹介したように、ミャンマーにはまだ課題が多い。しかし、裏を返せば、ビジネスチャンスにあふれているということだ。そしてミャンマーにしかないチャンスもある。
 3回の連載であったが、この間にも時々刻々とミャンマーの情勢は変化している。変化の先頭に立つのか、それとも変化を追いかけるのか、私たちに決断が求められている。
 ミャンマーはアジアにおける”The Last Piece of Sweet Cake”(おいしいケーキ、最後の一切れ)と言われている、と初回に書いた。そして、最近これに次の一文が付け加えられた。「朝のビュッフェタイムは10時までだ。日本が到着したのは9時半。既にデザートに手を伸ばそうとしている国もある。日本の知らないところで」。
◆進出・駐在に向けてのポイント

• ミャンマーでは一般的な駐在員事務所に当たるものが支店とされている。支店の新規設立には2〜4カ月を要する。一方過去にミャンマーで支店を設立しており、これを再開する場合は6カ月程度を要する場合もある。
• 進出時は、まず住居を押さえること。オフィスは最近の進出ラッシュで満室状態。生活拠点、つまり住居をおさえることが肝要である。オフィススペースは20平方メートルで1カ月1900ドル、ワンルームで同2500ドルの水準。進出ラッシュを考慮すると今後も高騰すると考えられる。また、オフィス兼住居として、一軒家を賃貸する場合もあるが、この場合オフィスとしての機能を担保するために自家発電設備(1万ドル程度)の購入を検討する必要がある。
• ヤンゴンには日本食材を販売する店もある。例えば現地大手ショッピングセンターの「Citimart」などではシンガポールから輸入した日本食材を販売している。日本食レストランも複数あり。ヤンゴン市内には日用品等各種取り揃えたショッピングモールなどが多数ある。
(ミャンマー編は今回で終了します) 

ニッポン企業のための新興国ガイド〜ミャンマー編
新興国への進出を真剣に検討する企業が増えている。では、いまどの国にチャンスがあるのか。その国の魅力は何か。一方で進出におけるリスクは何か。新興国進出のサポートを手掛けるコンサルタントが現地からの情報を活用しながら、わかりやすく解説する。
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野村 修一(のむら・しゅういち)
デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター
新興国市場エントリー戦略を中心とするグローバルビジネス戦略担当。
本邦企業の海外業務企画・アジア合弁事業のマネジメントを経験し、デロイト トーマツ コンサルティング入社。
新興国進出・撤退・再編・戦略提携・買収案件に多数携わる。
仏INSEAD修了(MBA)。
木村 義弘(きむら・よしひろ)
デロイト トーマツ コンサルティング コンサルタント
新興国市場において特にASEAN地域でのビジネス戦略担当。
ベンチャー投資、海外事業開発、新興国でのマーケティングを経験し、デロイト トーマツ コンサルティング入社。
ミャンマーをはじめとした新興国進出戦略、インフラ開発、プロジェクトファイナンス案件に携わる。
東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(工学修士)。
 

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コメント
 
01. 2012年4月27日 16:20:03 : Pj82T22SRI

ミャンマーは、グローバル資本主義が、労働コストの裁定取引で大きく儲けられる LAST RESORTになりそうだ

アフリカとアラブが労働市場に参加できるのは、まだ先だし、質的・量的にもアジアには劣る

そろそろ世界的な労働価格破壊も収束に近づいてきたということか


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