★阿修羅♪ > 経世済民75 > 869.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
アジア新興国経済に復調の兆し、リスクは忍び寄るインフレ 中国とインドの“復活”にはまだ時間
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/869.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 07 日 00:25:35: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120501/231595/?ST=print エマージングエコノミーの鳥瞰図

アジア新興国経済に復調の兆し、リスクは忍び寄るインフレ

中国とインドの“復活”にはまだ時間が必要

2012年5月7日 月曜日 孕石 健次

今回から月1回のペースで、データに基づきながら新興国経済を俯瞰的に見ていくコラムをスタートする。世界の成長センターとして期待される新興国経済ではあるが、その実像はなかなか見えてこない。そこで、アジアを中心に、中東、中南米などの新興国にネットワークを張り巡らしている英HSBCグループに協力を仰ぎ、リサーチ本部や現地拠点からの経済・市場調査を踏まえて、最新のレポートをお届けする。
 アジア新興国では巨大な消費市場が台頭している。世界最大の自動車市場に躍り出た中国では、昨年は上海、今年は北京で大規模なモーターショーが開催された。米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産の復活の背景にはアジア新興国市場戦略の成功がある。先進国の企業にとってアジア新興国市場は、将来の生死を左右しかねないほど重要な位置づけになっている。

アジア新興国経済は世界をけん引するか

 ここ数カ月の世界経済は波乱が続いた。アジア新興国の輸出は後退し、ユーロ危機はなお解消せず、中国経済も減速した。しかし、最近は経済指標に安定化の兆しが見られる。日本は震災復興を加速させ、米国では雇用の改善と輸出の回復が進みつつある。アジアの小規模経済国は既にその恩恵を受け始めた。

 これまでの引き締め効果が残る中国とインドはまだ本調子とは言えないが、今年半ばまでには成長支援の政策シフトで活気を取り戻すだろう。だが、回復基調に戻れば、避けて通れない問題が再浮上する。インフレ圧力の高まりは、夏場にかけて、政策当局、投資家のいずれにとっても懸念材料として再び注目されることになり、これは、構造的な問題であると同時に、景気循環がもたらす不可避の問題だ。インフレは今後数年にわたってアジア経済の重荷になるだろう。

 アジアには追い風が吹くが、中国とインドが重荷に

 直近の指標を見てみよう。悪くない数字だ。昨年第4四半期 に落ち込んだ輸出は今年に入ってから持ち直した。主要部品の供給をストップさせ、アジアのサプライチェーンを寸断したタイの洪水被害も治まった。対米輸出も回復基調にあるほか、日本では予想以上の震災復興が進んでいる。欧州は依然、懸念される状況にあるが、数カ月前の見通しと比べ、需要は上向きつつある。韓国、台湾、シンガポールを中心とするアジアの貿易国は既にペースを取り戻し、アジア全体の生産回復に寄与している。こうした状況は、景気の拡大というより、安定化というのが適当かもしれない。だが、この流れはやがて本格化する。

 とはいえ、アジアの巨人、インドと、なによりも中国を欠く状態では、従来の高成長を再現することは難しい。「春の息吹」はまだ大半が地中に隠れている。

 中国の場合は、2010年1月から2年近く続いた引き締めの影響から抜け出せていないように見える。実質GDP(国内総生産)成長率(前年同期比)は2011年第4四半期に+8.9%、2012年第1四半期に+8.1%と減速し、2009年以来の低成長となった。景況感を表すHSBC中国購買担当者指数(PMI)は、3月の製造業PMIが48.3と4カ月振りの低水準となり、サービス業PMIは53.3と2月よりやや下落、その結果、総合PMIが49.9と中立の50を下回り、景気底入れ感がまだ見られない。

 もっとも、中国の国家統計局発表の製造業PMIは3月に改善しており、OECDの景気先行指標も2011年10月に底を打ち、以降緩やかに持ち直しを示すなど、2012年第1四半期が景気の底との見方もある。実際、小売売上高や都市部固定資産投資は底堅く推移しているものの、輸出や鉱工業生産の伸び率が低い水準にあるなど生産活動が低迷しており、景気下支えが必要だ。

 一方、インフレ圧力は3月の野菜価格の上昇により上昇したが、トレンドは下落方向にあるだけに、中国政府としては緩和策を発動しやすい状況にある。世界金融危機後の景気対策ほどの規模にはならないとしても、財政・金融両面にわたる追加緩和策の実施が必要と見られる。中国政府は昨年10月以降の輸出企業やサービス企業など中小企業に対する選別的な金融緩和や減税措置をとり始め、マクロ金融政策では昨年12月と今年2月に預金準備率の各0.5%の引き下げに踏み切り緩和姿勢をやや明確にしたが、3月上旬の全人代では期待されたほどの金融緩和措置が発表されなかった。

 そのため、HSBCでは今年第2四半期中に少なくとも2回計1.0%の預金準備率引き下げと追加減税措置が講じられるものと予想している。また、従来、第3四半期以降に0.25%程度の利下げに踏み切るものと見ていたが、成長減速が一段と鮮明になっていることから、タイミングを前倒しして、第2四半期に0.25%引き下げるものと予想している。

 これに対してインドの場合は、インフレ圧力がはるかに根強い。インド政府も長期間に亘りインフレ抑制のための金融引き締めを続けた結果、景気減速ペースは予想以上に速く、2011年第4四半期の実質GDP成長率(前年同期比)は+6.1%まで低下した。インフレ率(卸売物価=WPI、前年同月比)は、2012年1月には+6.6%と緩やかに低下してきたものの、2月は+7.0%と再び上昇、3月は+6.9%と下げ渋っており、依然として政府の望むレベルに収束していない。

 それでも、景気減速が一段と鮮明になっていることから、インド準備銀行は、3月17日に景気下支えのため、3年ぶりに政策金利の0.5%引き下げに踏み切った。HSBCでは、2012年第3四半期に0.25%の追加利下げを行い内需を支えるものと見ている。金融政策の転換以上に深刻なのは、昨年初より尾を引く汚職問題による政治の停滞と、それによる経済改革、インフラ投資の遅れである。

 2012‐13年度予算案は議会に提出されたものの、議会審議は新たな汚職問題で紛糾し、昨年同様政治の停滞が懸念されている。インド経済が7%を超える成長軌道に戻るためには、議会審議を正常化し、予算案の可決と経済改革のための必要な法案を通過させることが必要である。加えて、本年度より始まる第12次5カ年計画に沿ったインフラ投資が実施に移されるかどうかがカギと言える。

アジアに忍び寄るインフレの影

 中国、インドのいずれも2ケタ成長は望めないが、ハードランディング懸念を払拭するだけの回復は可能であり、アジア全体にとって追い風になる。しかし、アジアの空は快晴とは言えない。回復が進めば、インフレ圧力が再び高まる。従来より緩やかなペースでの回復であっても、それは同じだ。

 アジアでは、経済構造の変化に伴って、インフレ動向も変質しつつある。労働需給や農産物需給の逼迫、生産能力の不足、輸出主導型からサービス・建設需要への依存度の高まりなど、近年の様々な傾向がアジア経済の価格感応度を高め、成長率がわずかに回復しただけでも、インフレが加速しやすくなっている。そこへエネルギー価格の高騰という要因が加われば、成長懸念があっという間にインフレ懸念に変わる事態も否定できない。

 そうした状況は、予想外に起きるのが常である。今のところ、見通しに沿った動きになっている。アジア経済は今年第1四半期 で底入れしたように見える。ここからは、ユーロ危機が再燃したり、米消費が再び低迷したりしない限り、状況の改善が見込まれる。HSBCの2012年成長率予測は概ね据え置いたが、世界の貿易環境に最も影響を受けやすい香港とシンガポールは若干の上方修正とした。

 タイについてはV字回復を見込むが、これはまだコンセンサスとはかけ離れている。しかし、洪水対策としての財政出動だけでも強力な押し上げ要因になる。仮に世界需要の回復が本格化しなかったとしても、内需がタイ経済を支えることになるとみられ、コンセンサスもいずれ上方修正が予想される。

 オーストラリア、中国、インド、インドネシアについても、コンセンサスを上回る成長を見込む。台湾、マレーシア、フィリピン、スリランカなどに関してはやや慎重な見方をしている。しかし、これは第1四半期 の低迷が通年水準を押し下げているためだ。第2四半期以降は力強い伸びが見込まれ、2013年についてもアウトパフォームが予想される。

 一方、日本は状況が異なる。年初は堅調だったものの、勢いは続かないだろう。震災復興需要の後退が見込まれるほか、夏場の電力不足が生産減につながる可能性がある。韓国は、今年、来年と従来のペースを若干下回る公算が大きい。韓国中銀がタカ派色を強めているため(利上げ転換はアジアで最も早い部類に入るだろう)、景気にブレーキをかけ続ける可能性が高い。インフレ対策としては、やはり利上げが最も効果的と言える。

アジア主要国の実質GDP成長率、CPI(年平均)

  GDP 2011年 GDP 2012年(予) CPI 2011年 CPI 2012年(予)
中国 9.2% 8.6% 5.4% 2.9%
インド 6.7% 7.5% 8.1% 7.2%
インドネシア 6.5% 6.1% 5.4% 5.6%
タイ 6.1% 5.5% 3.8% 3.4%
マレーシア 5.1% 3.7% 3.2% 2.6%
フィリピン 3.7% 3.6% 4.8% 3.3%
韓国 3.6% 3.1% 4.0% 3.4%
出所:各国統計、HSBC予想


エマージングエコノミーの鳥瞰図

世界経済が揺れ動く中、新興国への関心が高まっている。成長への期待も強いが、その反面脆弱性も残る。専門家の目を通じて新興国経済の現状とこれからを俯瞰していく。これからの成長センターと期待される国々の実力を見ていく。

⇒ 記事一覧


孕石 健次(はらみいし・けんじ)

HSBC投信 シニアアドバイザー
1950年生まれ。1976年早稲田大学大学院修士課程終了。東京銀行入行後、国際投資部、資本市場1部、財務開発部、開発金融部などで国際金融業務を担当。海外駐在はニューヨーク、香港、ジャカルタに計11年。一貫して新興国向けビジネスを担当。2001年国際通貨研究所出向。総務部長、開発経済調査部長としてアジア危機政策評価、ASEM Task Forceなどの委託調査を主査として担当。2004年東京三菱銀行退職後、ITベンチャー企業役員などを経て、2007年HSBC入社。  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧