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労働者の限界生産性と賃金の差の計測への新しいアプローチ
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/902.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 09 日 03:54:15: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/12e028.html

労働者の限界生産性と賃金の差の計測への新しいアプローチ

執筆者 児玉 直美 (コンサルティングフェロー)
小滝 一彦 (上席研究員)

研究プロジェクト サービス産業生産性向上に関する研究

ダウンロード/
関連リンク ディスカッション・ペーパー:12-E-028 [PDF:553KB] (英語)
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/12e028.pdf

このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
基盤政策研究領域II (第二期:2006〜2010年度)
「サービス産業生産性向上に関する研究」プロジェクト
労働者の賃金と生産性は必ずしも一致していないのではないか? この問いは、経済学のみならず、企業の人事労務管理や、政府の社会政策に至るまで、現実の経済社会において非常に重要な論点である。経済学者は、勤続年数−賃金カーブを描くことを可能にしてきたが、生産性と賃金の差異の計測に成功した例は少なく、これが経済学の発展にとっても、経済政策や企業の人事戦略の企画立案においても、大きな隘路となってきた。
この論文では、労働者の賃金と生産性のギャップを測定する新しい方法を提案する。この方法では、まず生産性と賃金のギャップの関数表現を、人的資本関数から導出する。次に、このギャップ関数を企業の生産関数に代入することで、ギャップ関数の係数を推定する。賃金関数に、ギャップ関数を上乗せすれば、労働者の生産性を得ることができる。
その結果、労働者の限界生産性と賃金ギャップはそれほど大きくなく、賃金を生産性の代理変数とする従来の方法は、一次近似として使えることが示された。また、今回の我々の推定から、2000年前後の製造業において、(1)高卒男性の生産性は、入社時には賃金より15%程度低く、入社から10年位までは賃金より低く、10年過ぎから27年目位までは賃金を超え、27年後からは再び賃金を上回ること、(2)高卒女性の生産性は、入社当初から20年目位まではほぼ賃金に一致し、その後賃金を下回ることが分かった。これは、高卒男性の場合には、若年期は企業による教育訓練が施されており、中年期にはその教育訓練投資を企業が回収し、熟年期にはラジアー型(注)の後払い賃金体系を持っていることが推察される。高卒女性では、入社直後の教育訓練投資が男性ほどにはなされておらず、人的資本の蓄積を必要としない仕事を与えられていることと解釈できる。
高卒男性正社員は、新卒就職後数年間に、企業の負担で、相当額(入社1年目で賃金の15%、3年目で10%程度)の教育訓練投資が行われ、その投資は長期間の雇用によって回収されていることが分かった。近年、離職率が高まっていることは、こうした正社員への訓練投資を妨げる要因となっているが、正社員の就職直後の訓練投資を公的に助成することは有効な解決策であると考えられる。一方、現在検討されているような、数年間雇用された非正社員を強制的に正社員に転換させる政策は、非正社員の訓練とセットでなければ、賃金と生産性の高い正社員の増加にはつながらず、むしろ低賃金の正社員の増加や、転換対象となる非正社員の予防的雇い止めをもたらすおそれがある。
高卒女性正社員は、男性よりも、企業による初期の訓練投資が小さく、またその後の生産性の伸びも小さいことが判明した。企業が高卒女性に投資しない原因は、離職率の高さにあると考えられるが、その問題を解決しないまま、男女の正社員の賃金の平等化を政策的に強制していくと、高卒女性の賃金が生産性に対して割高になってしまい、結果的に企業が女性を雇用する動機が失われてしまう。今回の分析でも、中高年期の高卒女性社員の賃金は、生産性の男女差を考慮すれば、既に男性より割高になっていることが示されており、女性より男性を雇用することが合理的であるという結果になっている。
定年間近の高卒男性正社員については、賃金後払い仮説が指摘するとおり、賃金が生産性を上回っていることが判明した。勤続42年目の高卒男性労働者の生産性は賃金よりも20%程度低い。このため定年を延長するならば、定年間近の賃金のまま定年延長を強制するのではなく、さかのぼって中年期からの賃金体系を変更する必要がある。

脚注
• ラジアーは、労働者の努力水準を使用者が直接観察できない場合に、若年期には生産性以下の賃金を支払い、企業が潰れず業績が好調であれば、中高年期に生産性以上の賃金を支払う賃金体系によって、労働者のインセンティブを維持できると指摘した。

http://www.rieti.go.jp/jp/projects/prd/prd-2/17.html
サービス産業生産性向上に関する研究
プロジェクトリーダー/サブリーダー


リーダー
権 赫旭 (ファカルティフェロー)

サブリーダー(2009年3月31日まで)
松浦 寿幸 (研究員)

プロジェクト概要
活動期間:2008年5月26日〜2011年3月31日
2009年度〜2010年度
本プロジェクトでは、欧米に比べて低いと言われている我が国の商業とサービス業(特に、市場型サービス業)に焦点を当て、1)わが国のサービス業の生産性の動向を把握し、2)サービス業の生産性を改善させるための必要な要素と手段を明らかにすることを目的とする。1)としては、法人企業統計調査の個票データを用いて、企業レベルの生産性データベースを作成し、製造業、建設業などと比較することで、わが国のサービス業の生産性の特徴と問題点を把握する。2)では、ICT投資、人的資本、新規参入や制度・政策変化に注目し、これらの変数が生産性にどのような影響をもたらすのかを明らかにする。

2008年度
RIETIにおいて実施されている研究プロジェクトU−4)日本の生産性と経済成長:国際比較と生産性上昇の源泉(深尾FF)、U−9)日本における無形資産の研究(宮川FF)、U−14)産業・企業の生産性と日本の経済成長や、T−3)ITと生産性に関する実証分析(元橋FF・松浦F)、また、海外の研究機関(OECD、IFS、KDI、Brookings Instituteなど)や海外のプロジェクト(EUKLEMS)と協力しながら、産業レベルと企業レベルのデータを用いて、サービス産業の生産性を正確に測定する方法、サービス産業の生産性を決定する要因(人的資本、イノベーション、IT化、無形資産、アウトソーシング、立地、新規参入、規制緩和政策など)を明確に実証分析し、さらに、厳密な方法による国際比較を通じて、日本のサービス産業が持っている問題を明らかにしていく。そこで最終的に得られた分析結果に基づき、必要な政策を具体的に提言する。

主要成果物
2012年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
12-E-028
"A New Approach to Measuring the Gap between Marginal Productivity and Wages of Workers" (KODAMA Naomi and ODAKI Kazuhiko)
2011年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
11-E-075
"Labor Market Gender Disparity and Corporate Performance in Japan" (Jordan SIEGEL and KODAMA Naomi)
11-E-063
"Entry of Foreign Multinational Firms and Productivity Growth of Domestic Firms: The case of Japanese firms" (ITO Keiko)
11-E-058
"Population Density and Efficiency in Energy Consumption: An empirical analysis of service establishments" (MORIKAWA Masayuki)
12-J-003
「電子商取引は雇用を増加させるのか:『事業所企業統計調査』個票データに基づく実証分析」 (権 赫旭)
11-J-073
「日本の労働市場における男女格差と企業業績」 (Jordan SIEGEL、児玉 直美)
11-J-062
「サービス産業のエネルギー効率性−事業所データによる実証分析−」 (森川 正之)
11-J-045
「日本経済成長の源泉はどこにあるのか:ミクロデータによる実証分析」 (深尾 京司、権 赫旭)
2010年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
11-E-016
"Productivity of Banks and its Impact on the Capital Investments of Client Firms" (MIYAKAWA Daisuke, INUI Tomohiko and SHOJI Keishi)
10-E-057
"Similarities and Differences between the Manufacturing and the Service Sectors: An empirical analysis of Japanese automobile related industries" (KATO Atsuyuki)
10-E-050
"Economies of Scale and Hospital Productivity: An empirical analysis of medical area level panel data" (MORIKAWA Masayuki)
11-J-042
「生産性動学と日本の経済成長:『法人企業統計調査』個票データによる実証分析」 (乾 友彦、金 榮愨、権 赫旭、深尾 京司)
11-J-034
「外資系企業の参入と国内企業の生産性成長:『企業活動基本調査』個票データを利用した実証分析」 (伊藤 恵子)
11-J-019
「日米上場企業データによるTFPレベルの国際比較分析」 (権 赫旭)
10-J-058
「価格決定力と生産性−サービス品質による差別化−」 (児玉 直美、加藤 篤行)
10-J-050
「所有構造とTFP:日本企業データに基づく実証分析」 (権 赫旭、金 榮愨)
10-J-041
「病院の生産性−地域パネルデータによる分析−」 (森川 正之)
2009年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
10-E-010
"Does Material and Service Offshoring Improve Domestic Productivity? Evidence from Japanese manufacturing industries" (ITO Keiko and TANAKA Kiyoyasu)
09-E-054
"The Effect of Relaxation of Entry Restrictions for Large-Scale Retailers on SME Performance: Evidence from Japanese Retail Census" (MATSUURA Toshiyuki and SUGANO Saki)
09-E-015
"Measurement of the Consumer Benefit of Competition in Retail Outlets" (MATSUURA Toshiyuki and SUNADA Mitsuru)
RIETIポリシー・ディスカッション・ペーパー
10-P-003
「RIETIの生産性研究について−成長政策の実務のための鳥瞰−」 (森川 正之)
2008年度の成果
RIETIディスカッション・ペーパー
08-E-030
"Demand Fluctuations and Productivity of Service Industries" (MORIKAWA Masayuki)
08-E-027
"What Do Japanese Unions Do for Productivity?: An Empirical Analysis Using Firm-Level Data" (MORIKAWA Masayuki)
08-E-026
"Productivity and Survival of Family Firms in Japan: An Analysis Using Firm-Level Microdata" (MORIKAWA Masayuki)
08-E-023
"Economies of Density and Productivity in Service Industries: An Analysis of Personal-Service Industries Based on Establishment-Level Data" (MORIKAWA Masayuki)
08-J-058
「日本の商業における生産性ダイナミックス‐企業活動基本調査個票データによる実証分析‐」 (権 赫旭、金 榮愨)
08-J-042
「サービス業における需要変動と生産性−事業所データによる分析−」 (森川正之)
08-J-031
「サービス産業の生産性を高めるにはどうすれば良いのか?−これまでの研究成果からの示唆と今後の課題−」 (森川 正之)
08-J-030
「日本の労働組合と生産性−企業データによる実証分析−」 (森川 正之)
08-J-029
「同族企業の生産性−日本企業のマイクロデータによる実証分析−」 (森川 正之)
08-J-008
「サービス業の生産性と密度の経済性−事業所データによる対個人サービス業の分析−」 (森川 正之)  

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