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非効率だが今の日本には必要な再生可能エネルギー買い取り制度
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/219.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 18 日 02:25:52: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://jp.wsj.com/Japan/Economy/node_444331?mod=WSJFeatures
【オピニオン】
非効率だが今の日本には必要な再生可能エネルギー買い取り制度
ジョゼフ・スターンバーグ
2012年 5月 17日 21:59 JST

 【東京】54基の原子炉の一部を再稼働させるべきか否かという議論が日本で起きていることはおそらくご承知だろう。こうした原子力発電所は定期点検のために稼働を停止しているが、昨年の福島第1原発の事故を受けて強い政治的な反発もあり、再稼働には至っていない。原発推進派は、再稼働が実現しなければ、輪番停電、工業生産力の低下、景気後退といった深刻な結果を招くことになると警告している。

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Associated Press
ソーラーパネルで覆われた東京工業大学の研究棟
 その一方で、先ごろ、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の原案が示されたことを知る人は少ない。政府は7月1日から、国内の電力会社に太陽光、風力、地熱などで発電された電力を発電事業者から高価格で買い取ることを義務付ける。その目的は電力供給源の分散化を促進すること、原子力や化石燃料への依存から脱却することにある。

 原発の稼働停止は次のような疑問を提起した。日本は原発なしで果たしてやっていけるのか。やっていけるのだとすれば、どのような手段を講じるべきなのか。固定価格買い取り制度はこの疑問に答えようとするものだ。これまでの公益事業のシステムを破壊することでそれは可能になる。

 固定価格買い取り制度がとんでもないアイディアだということは、ほとんどの国の経済について言える。環境保護主義者の怒りを鎮め、グリーン事業者の私腹を肥やすために、市場参加者は極端なハイコスト、不安定な供給、従来の発電に取って代わることが望めないほど少ない電力量など、再生可能エネルギーの経済効率の悪さに目をつぶることを余儀なくされる。消費者にとっては低炭素にかこつけたぼったくりでしかない。

 ところが、日本の経済は普通ではない。その他の先進国では程度の違いこそあれ電力の自由化が進んでいるが、日本は本気でそれに取り組んだことがない。それどころか、垂直的に統合された10の電力会社が地域で独占的に発電と送電を行うというシステムに計画的、惰性的に固執しているのだ。

 このことは、世界でも最高水準にある電力料金など、当たり前の非効率をもたらしている。固定価格買い取り制度は現時点で、そうした一枚岩を少しずつ削り始めるのに最も有効な手段なのかもしれない。

 公益事業を産業政策の重要なツールと考えている政治家と官僚のあいだには癒着があり、公益事業会社はその独占状態の維持を政治家や官僚に頼っているという側面があるので、その一枚岩を削っていくのは容易なことではない。原子力産業自体がその好例である。業界を管轄する省(かつての通商産業省、現経済産業省)は1960年代に産業政策の一環として原子力を推進することを決めた。これにより、日本の製造業は、化石燃料の輸入状況によって生じ得る電力の供給不足という不安から解放されるはずだった。

 また、その政策は、通産省の指導の下で原発技術を輸出していた日本企業にも繁栄をもたらした。原子力は、高い固定費、高い操業コスト、保険のかけようがない大惨事のリスクなど、経済面で問題を抱えている。にもかかわらず、通産省が原発推進の政策を強行することができたのは、日本には、公益事業会社が従わざるを得ない市場原理を持った真の意味での電力市場がなかったからだ。

 一方で、独占状態と利益が保証された総括原価(コストプラス)方式の恩恵を受けた公益事業会社は、しごく当然なことをした。独占状態を守る権限を握る規制当局に大きな投資を行ったのだ。福島第1原発事故の事後分析では、原発の推進と規制の両方を担うことですでにモラルハザードに陥っていた経産省の官僚たちが楽で割のいい天下り先として電力会社にどの程度期待していたか、また電力会社が独占で得た利益のどの程度を多くの政治家の活動資金として寄付していたかが明らかになった。

 福島原発の事故はすべてを変えてしまった。官僚や電力会社が密室でエネルギー政策を決めることを国民はもはや黙認しない。橋下徹大阪市長のように、原発の再稼働に反対することで、不安を感じている市民の支持を集約している巧妙な政治家もいる。一方で、かつては原子力を推進していた経済団体も、高いコストに不満を持ち始める企業が出るなどして分裂しつつある。

 こうした人々すべてにとって、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は、採石場の前に都合よく落ちているのみのようなものだ。主に環境保護主義者たちのあいだで提起されていたこのアイディアは、電力会社からの強い反対もあり、非常に甘い形で法律化された。しかし、この法律が電力会社による発電の独占を解く第一歩となるということに、より広範囲にわたる発電事業者が気付いてもいる。

 比較的少量の電力にしか適用されない固定価格買い取り制度の重要性を過大評価すべきではないが、過小評価すべきでもない。これが重大な疑問を呈するきっかけになるからだ。

 発電の独占が再生可能エネルギーによって解かれるなら、他の電力源にも参入の余地があるのではないか。トヨタ自動車が余剰電力を送電網に供給してもいいのではないか。

 電力を売ることがトヨタ自動車に許されるなら、発電を主な事業とする企業にも許可を与えざるを得ないだろう。発電が自由化されてしまえば、送電のようなこの産業の別の事業についても自由化されるはずである。電力会社が固定価格買い取り制度に一貫して反対してきたのは、それが氷山の一角であり、さらに大きな不利益を生むことになると気付いていたからである。

 その反面、固定価格買い取り制度のような改革は、最終的に原発を救うことになりはしないだろうか。政府はなんとしても、規制に対する国民の信頼を回復させる必要がある。原子力行政の組織改編だけでは不十分だ。国民がいつの日か電力規制を信頼できるようになるとしたら、それは、規制体系が単一の(あるいは少数の)当事者によって独占されるような状況が打破されたときだけである。通常は非効率で愚かしい固定価格買い取り制度だが、一枚岩をようやく削り始めた日本に対しては大目に見るとしよう。

(筆者のジョゼフ・スターンバーグはウォール・ストリート・ジャーナルアジア版のコラム『ビジネス・アジア』のエディター)  

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