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アイルランド国民投票:EU新財政協定は承認されるか?     「欧州の救世主」? 成長路線にG8のお墨付きを得たオランド
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/319.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 25 日 03:11:29: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120522/232452/?ST=print
アイルランド国民投票:EU新財政協定は承認されるか?

可決が見込まれるも予断は許さず

2012年5月25日 金曜日 The Economist


 アイルランドのエンダ・ケニー首相は、憲法改正の賛否をめぐる国民投票で過去に一度敗れている。来る5月31日、アイルランドは、欧州財政協定の是非を問う国民投票を実施する。同首相としては2度目の敗北はぜひとも避けたいところだ。

 「アイルランド国民はこの機会に、支持率を下げつつある連立政権に反対票を投じるのでは」という懸念は、今のところ根拠のない話だ。

 野党フィアナ・フォイル(共和党)の強力な支援のもと、欧州財政協定への賛成を呼びかける運動が繰り広げられている。フィアナ・フォイルの新党首となったミホル・マーティン氏はこの協定の利点を懸命に売り込んできた。最新の世論調査では、賛成派が反対派の2倍を占めている(16%の「未定」を除いた場合)。

 だが賛成票を当然視するのは間違いだろう。欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が課す緊縮策に対するアイルランド国民の怒りは、同じ立場にある他国民と同じくらい強い。経営不振に陥った銀行や債権保有者を救済するのにアイルランドの納税者は法外な負担を強いられてきた、という見方が広がっている。また、同協定の是正を目指すフランソワ・オランド氏がフランス新大統領になったことや、ギリシャによるユーロ圏離脱の可能性が高まってきたことで、新たな不確定要素が生まれている。

 アイルランドの有権者が過去40年間に承認したEU条約は9件。うち2回は最初に否決した後、再投票で承認した。今回、国民投票の対象となる欧州財政協定は、ユーロ加盟国17カ国中12カ国が批准すれば発効する。したがって、アイルランドが批准しなくても財政協定自体が影響を受けることはない。

 ケニー首相は、再投票は行わないと主張している。そして批准国だけが、ユーロ圏の恒久的な救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)を利用できる。

 アイルランドの経済は、3年にわたる後退期を経てからは安定した状態を続けている。欧州委員会は今年のGDP成長率を0.5%と見込む。今のところアイルランドは、金融支援プログラムに盛り込まれた四半期ごとの財政目標をすべてクリアしている。2013年末に同プログラムが終了した後、債券市場への復帰を目指す同国政府にとって、欧州財政協定の批准は、将来再び救済が必要となった場合の保険となる。

 一方、シン・フェイン党と少数の小規模左派政党は、反対票を求めるキャンペーンを主導している。デクラン・ガンリー氏(2008年、リスボン条約をめぐる最初の国民投票で批准否決に貢献したビジネスマン)や英国・独立党の支持も勝ち取った。

 このキャンペーンの最大の弱点は、ひとつの素朴な疑問について、説得力のある答えを提供できないことだ――国民が財政協定を拒否し、アイルランドが2014年に2度目の救済を必要とした場合、誰が資金を提供してくれるのか。市場もESMも資金を貸してくれないのだ。加えて、「同協定を拒否することは、すぐさま緊縮策の緩和につながる」という主張についても、眉唾物だという見方が広がっている。

 今回の国民投票は、有権者の中で揺れる2つの感情の戦いだと言われる。一つは、「同協定を拒否すればEUの資金を利用できなくなる。ギリシャのように破滅の道を転がり落ちるのではないか」という恐怖心。もう一つは、4年間にわたる緊縮策が強いた苦労に対する怒りの感情だ。今のところは「恐怖心」が「怒り」に勝りそうだ。

© 2012 The Economist Newspaper Limited.
May. 19-25, 2012 All rights reserved.

英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


The Economist

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http://diamond.jp/articles/-/18868
永田公彦 パリ発・ニッポンに一言!

【第7回】 2012年5月25日
永田公彦 [Nagata Global Partners代表パートナー]
 

「欧州の救世主」となる可能性も
成長路線にG8のお墨付きを得たオランド氏 

 19日のG8先進国首脳会議で「財政の健全化と経済の成長の両方を追求」との見解が世界に示され、厳しい緊縮財政に軸足を置いたメルケル路線に対し、緩やかな緊縮財政と経済成長を訴え続けたオランド氏の路線に、世界のお墨付きが加わりました。

「野心的な欧州づくり」を公約し大統領に就任したオランド氏は、これまで欧州に欠けていたビジョン(欧州は一体どこへ向かうのか)を示すためのリーダーシップを発揮できるか、そして、そのビジョンに、今後避けて通れないであろう「域内のリストラ(一部加盟国の離脱含む)」と「経済統合から政治統合へ(国家連合から欧州連邦へ)」が組み込まれ、欧州に新たな歴史が刻まれるのかが注目されます。

ギリシャ・スペイン・伊から独・英へ
欧州全域に拡大する「反緊縮」の波

 出口が見えない財政危機、増加しつづける失業者、国際社会での経済競争力と相対的地位の低下、欧州域内格差の拡大…欧州市民は、日を追うごとに自信を失い、将来への不安と焦りを募らせています。これを反映し、ビジョンなき緊縮財政に対する市民の反発が欧州全域に連鎖的に拡大し続けています。

 5月に入ってからも、反緊縮財政を掲げる急進左派連合の台頭により38年続いた2大政党による政治が終わり、ユーロ離脱か残留かの瀬戸際に立つギリシャや、ユーロ圏最大の失業率(若年層で50%超)に達するスペインでは、緊縮財政に反対する10万人規模のデモが勃発。イタリアでも、昨年から頻発していた反緊縮デモが日増しに大規模化し、更に社会不安に乗じた無政府主義者によるテロ活動も相次いで勃発しています。

 こうした反緊縮の動きは、南欧諸国から徐々に北上しています。ドイツでは、来年秋の連邦議会選の前哨戦とも言われる、国内最大の州ノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙で、欧州債務問題の解決に向けて成長戦略の重要性を訴える中道左派の社会民主党(SPD)が、厳しい財政規律を訴えるメルケル氏率いるキリスト教民主同盟(CDU)を破りました。

次のページ>> 欧州市民が抱く「4つの懐疑」とは?

 181自治体で一斉に議会選挙が行われたイギリスでは、キャメロン首相が進める増税や歳出カットなど緊縮財政への反発が表れ、同氏が率いる連立与党が惨敗、このように緊縮財政への反発の動きが刻々と欧州全体に拡がっています。19日のG8先進国首脳会議で、これまでの緊縮財政一辺倒から「財政健全と経済成長の両方が必要」と8ヵ国が軌道修正を訴えたことで、こうした反発の動きも少しは鎮静化するかもしれません。しかし、あくまで一時的なものに留まるでしょう。

欧州市民が抱く「4つの懐疑」
真のヨーロピアンリーダーは現れるか

 反緊縮の動きが拡大する根本的な背景には、国や人により温度差はあるものの、欧州市民が持つ次の「4つの懐疑」があります。

 1つは、EU創案当時からある欧州統合の実現性に対する懐疑論です。そもそも共通通貨ユーロの導入運用も含め、国の規模・構造(政治・行政・立法・社会・経済)や人の文化・価値観(歴史・人種・言語・宗教・職業感・判断基準・時間概念等)が多種多様な欧州が一つになろうというのは無理じゃないか、という疑いです。

 2つ目は、財政危機に対する一連の瀬戸際対策の効果への疑いです。財政危機国への緊急財源確保に奔走する。確保できた金を注入するから、これまでの仕事、生活、権利、メンタリティーを一気に変えなさい捨てなさい、さもないと自己破産、家庭崩壊、路上生活を強いられますよ…と言わんばかりの緊縮財政を強いる。果たしてこうした瀬戸際のショック療法がうまくいくのかという疑いです。

 3つ目は、第3回コラム「EU首脳会議に世界が注目いよいよ本格化する欧州危機とその裏に潜むシャドーエコノミー」で紹介しましたが、政財界の権力者に対する不信、とくに脱税行為への疑いです。増税・歳出カットを強いる政界や、世界で金を回せる財界の権力者はどうせ脱税しているはず、ここから金を取らずに、金も権力もない我々一般市民がなぜ痛みを受け入れる必要があるのか、という集団心理です。

http://diamond.jp/articles/-/15247

 最後は、上記3つの懐疑を払拭してくれるような、真のヨーロピアンリーダーが本当に現れるのかという疑いです。イニシアティブをとり、欧州の中長期ビジョンとその達成に向けたロードマップを描く。そして関係国を巻き込み実行に導ける真のリーダーはいるのか、という疑問です。果たしてオランド氏は、このような真のヨーロピアンリーダーになれるのでしょうか?

次のページ>> 極右の父と左翼の母の 間に育つ

極右の父と左翼の母の
間で育ったサッカー少年

 新リーダーが、世の中にどうインパクトを与えるかを予測するには、まず本人の歴史を垣間見ることが必要でしょう。5月7日出版された、オランド氏の経歴を詳細に記した本「フランソワ・オランド:秘密の道程(セルジュ・ラフリー著)」から抜粋して紹介します。

 オランド氏の先祖は、16世紀にカトリック教徒による迫害を逃れオランダからフランス北部へ移住してきたプロテスタント系の貧困農家です。第一次世界大戦に出征後に小学校の校長となったオランド氏の祖父以前は、代々養鶏で生計を立てていました。

 オランド氏は、こうしたオランダ系移民の末裔で耳鼻咽喉科医の父とソーシャルワーカーの母の間に1954年に生まれます。父親は、活動的で会話も大声で荒っぽいタイプ。自ら医院を経営する傍ら、不動産投資経営も行いベンツを乗りまわす実業家、そして共産主義を徹底して嫌う極右の政治活動家でもありました。

 一方こうした父親とは正反対に、母親は、社会党(PS)のフランソワ・ミッテランを強く支持し、言葉をかみ砕いて静かに話すタイプでした。このようにオランド氏は、極右の父と左翼の母の間で激しく繰り広げられる政治論争を耳にしながら少年時代を過ごしました。そして将来の夢は、当時情熱を注いでいたサッカーの選手になることだったと言います。

父への反発、
そして母への愛他的行動

 オランド氏は、父親への反発を通じて自己を形成してゆきました。自分を幼稚園から中学まで厳格なカトリック系の学校に強制的に通わせる父親に反発します。その反動から、母に対し強い愛他的行動をとり(寛容、同情、援助、分与等の表現行動)、母親と同じ社会党のミッテラン支持者になったといわれます。

次のページ>> 「野心的な欧州」へ、4つの優先政策

 一方で、オランド氏は、自分が政治家を目指す運命は父親が切り開いたとも言います。父親は、地元の町長選挙でド・ゴール派候補に敗れ政治活動に終止符を打ちます。選挙で打ちのめされた父は、一旦は本業の医療と先祖が営んだ養鶏場に再投資するも、長続きしません。そしてオランド氏が14歳の時、突然医院を売り払い家族に理由も告げず、富裕層が集まるパリ近郊の高級住宅地区ヌイイ(正式名:ヌイイ・シュール・セーヌ)に一家で引っ越します。

 そこでオランド氏は、転校後すぐに生徒会長になり、弱冠16歳で「大統領になりたい」と友人に話していました。また、学校の父兄会役員でフランス国務院(フランス政府の諮問機関および行政裁判における最高裁判所)の有力者から政治家としての資質を認められ、政治家を目指すための屈指のエリート校であるパリ政治学院、そしてフランス国立行政学院(ENA)への進学を薦められました。その後は大統領への道を一気に進むこととなります。

 オランド氏は、こうした家族と自分の歴史を振り返り、「もし父が町長や国会議員になっていたら、政治的に正反対な両親の夫婦関係は続いてなかったかもしれない」「この突然の引っ越しはショックだったが、この転機がなければ、今こうして政治の大舞台に立つことはなかっただろう。結局のところ、父親が彼のやり方で自分を政治の道に進ませたのではないか」と語っています。

野心的な欧州の建設に向けて
4つの優先政策を提示

 オランド氏は、選挙期間中「野心的な欧州づくり」をスローガンに、次の4つの優先政策を掲げました。

 1つは、ユーロ圏の政治統合です。共通通貨を基軸に経済共同体となった欧州、これを政治の共同体にまで発展させることが、欧州を危機から抜本的に脱出させる唯一の道と位置付ける。

 2つ目は、緩やかな緊縮財政です。ユーロ加盟国の財政再建規律を柔軟化することにより、財政の健全化をより実現性の高いものにする。

次のページ>> 当選早々、矢継ぎ早に足場固めを実施

 3つ目は、汎欧州プロジェクトへの投資です。EU共通の資金調達を行い、各国の返済利子を減らすと同時に、集めた資金を国境をまたいだ汎欧州型の研究開発、教育、インフラ整備等のプロジェクトに投資する。

 4つ目は、EU予算の拡大です。欧州域内GDPの1%にも満たない予算を拡大し、これを将来への投資資金に充当する。

 現在、この4つの政策実現にあたり、複数の方法論が俎上に載っています。たとえば1の政治統合では、欧州がこれまでの国家連合から連邦予算を持った連邦国家へ発展する、2の財政再建規律の柔軟化については、時間をかけ段階的に財政の健全化を行う、3と4の共通資金調達については、ユーロ共同債の発行、欧州投資銀行の活用、金融取引税(株や債券の取引に幅広く課税)の導入、欧州連合(EU)構造基金、来年7月1日創設予定の欧州安定化メカニズムの活用などです。

 今後、オランド氏は、欧州関係当局と関係国との間でこうした各論について、議論と調整を加速するものと思われます。

新しい欧州づくりに向け好スタート
――ただし、時間はない

 オランド氏は、今月6日の大統領当選後、正式就任を待つことなく、矢継ぎ早に欧州関連政策の実現に向け域内での足場固めを行っています。9日には、欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領とパリで会談、欧州での経済成長路線復活とギリシャ危機などの意見交換を行いました。

 この会談の直後、ファンロンパイ大統領は、これまで日付を示さずあくまで予定としていた非公式の欧州首脳会議を23日に開催、その主旨が成長路線再開に関する議論であることを23ヵ国首脳に通知、また会議は23ヵ国トップ間の非公式な夕食スタイルで行われるとツイッターで言及しました。

 翌10日オランド氏はユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長とパリで会談。ユンケル氏はその前日、自ら首相を務めるルクセンブルク議会で「財政協定への再交渉は反対だが、欧州レベルで再成長を促しこれに向けた欧州としての資金枠を拡大・投資するというオランド氏の考えに賛成する」と演説したばかりです。会談では、この考えを改めてオランド氏に伝えたものと思われます。

 更にオランド氏は、15日の大統領就任式で「不可欠な公的債務削減と経済成長の双方を促進する新協定を同盟国に提案する」と、財政赤字および公的債務の抑制を約束、既に25ヵ国が署名した財政協定の再交渉への意志を改めて内外に示しました。

 また同日夕刻にはベルリンに飛び、財政協定に再交渉の余地はないとするメルケル氏と初会合、一部立場の違いは見せたものの未来に向けた独仏の連携の強さは変わらないとアピール、来月29〜30日欧州理事会の場で経済促進策を共同で提案すると宣言しています。

 18日には、ホワイトハウスでオバマ米大統領と会談。欧州には成長路線も必要との考えをかねて示していた同氏と、この点で協調することを確認、19日のG8先進国首脳会議で、財政の健全化と経済の成長の両方を追求するという世界のお墨付きを獲得します。

 23日のEU首脳非公式会議では、緊縮財政と同時に成長への投資の必要性を改めて主張、また、これを支えるユーロ共同債等の資金調達方法と枠の拡大への支持をを訴えました。さらに来月18〜19日のG20先進国首脳会議(メキシコ・ロスカボス)、28〜29日の欧州理事会(ブリュッセル)等を通じ「野心的な欧州づくり」の基盤をさらに固めていくでしょう。

EUはまだ「思春期の中学生」
成長の過程で落第生が出てもいいじゃないか

 ギリシャは来月16日の再選挙を控え「ユーロ残留=緊縮財政の受諾」か「ユーロ離脱=緊縮財政の回避」の岐路に立たされています。仮に、多くの国民の本音である「緊縮財政は免れたいが、ユーロには残りたい」を有権者に訴え支持率を伸ばす急進左派連合のツィプラス党首が勝った場合、欧州は果たして予定どおり財政支援を打ち切りギリシャを国家破綻に追い込むのか、それともオランド氏の言うような、現行の緊縮財政計画を緩やかなものに変更し、ユーロ圏への残留期限を延ばすのかが注目されます。

 私の考えは、こうした再交渉と譲歩はあってもいい。ただ譲歩後の新たな目標ラインすらも達成できなければ、ユーロクラブから脱会してもらう必要がある、ということです。他の加盟国の国民への強烈なメッセージにもなります。また頑張って節約し稼ぐ人たちの士気も確保できます。

 今のEUを人に例えるなら、思春期の中学生のようなものです。これから高校そして大学を卒業するまでに、何人かの落第生や離脱者が出るのは当然です。もちろん落第、つまり離脱した国の国民には新たな試練が加わります。また市場の混乱も起き、一時的にはEU残留組や世界経済に痛手も与えるでしょう。しかし、リストラによるダウンサイジングと質の向上なしには、欧州自体が総崩れし、消滅の運命をたどるのではないでしょうか。

政治統合という
新たなステージへ向けたフランスの意地

 欧州は、リストラでダウンサイジングすると同時に、政治統合という新たなステージに進む時がきています。「今われわれの世代がすべきことは、欧州の経済・通貨同盟を完成させ、一歩ずつ政治統合へ進んでいくことだ」。これは昨年11月14日のキリスト教民主同盟(CDU)年次党大会におけるメルケル氏の発言です。

「今ヨーロッパは、かつてアメリカがそうしたように、国家連合から連邦予算をもつ連邦国家に進化するタイミングにある」とフランスの経済学者、思想家、初代欧州復興開発銀行総裁でフランソワ・ミッテランの大統領補佐官を務めたジャック・アタリ氏も言います。ちなみに、同氏は81年に若きオランド氏の資質を見抜き、彼をミッテラン大統領の参事官に後押しした人物で、「国家債務危機〜ソブリン・クライシスにいかに対処すべきか?」の著者でもあります。

 歴史の偶然なのか必然なのか、欧州統合史のターニングポイントでは必ずフランス人がリーダーシップを発揮しています。まず欧州統合の起源です。それは1950年、欧州統合の父の一人とされるフランス人のジャンモネの発案で、フランスの外相ロベール・シューマンが、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)発足の基礎となる「シューマン・プラン」を発表したところから始まります。これは経済統合自体が目的ではなく、あくまで両世界大戦への反省と、そのような武力対決の根絶を実現するという政治目的のプランでした。

 また2002〜04年、EUの「諸国家の統合体」から「諸国家の上に立つ国家」への脱皮を目指し、欧州の「国家統合」の基盤となる欧州憲法条約を起草の指揮をとったのが、元フランス大統領で欧州大統領のジスカール・デスタンでした。彼は、欧州合衆国の提唱者としても有名です。そして皮肉なことに、この欧州憲法条約の批准を国民投票で真っ先に拒否したのがフランスです。

 このように政治統合は、フランス人が発案し、フランス人が起草し、フランス人が拒否しました。「政治統合が欧州を危機から抜本的に脱出させる唯一の道」と訴えるオランド氏が、果たしてフランス人の意地をもって実現への道を切り開き、欧州の歴史を塗り替えることができるか…今後の動きが注目されます。  

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