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まだまだ続く中国レアアース「狂奏曲」 政府の介入が事態をより難しくしている
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投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 29 日 00:33:17: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120525/232600/?ST=print
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まだまだ続く中国レアアース「狂奏曲」 政府の介入が事態をより難しくしている

2012年5月29日 火曜日 青山 周

 中国のレアアース輸出規制が国際問題になっている。日増しに中国に対する日米欧の圧力が高まる一方、中国国内では価格が乱高下するレアアースをめぐり、中央政府、地方政府だけでなく、官僚や一般市民などを巻き込んだ混乱が今なお収まっていない。迷走する政策が有効に機能しないまま、現場の環境汚染も歯止めがかかっていない。

 中国が一党独裁で、指導者の命令一下で統制がとれている社会と考えるのは今ではおとぎ話である。中央省庁、機関、地方政府、中央企業、地方企業、一般市民が、それぞれの既得利益で動く。市場経済の浸透は中国社会を確実に変貌させた。

 世界貿易機関において日本政府は欧米とともに中国のレアアース輸出規制に関するパネル設置を求めたが、中国政府の反対にあって、パネル設置はまだ実現していない。パネルを設置して、協議を重ねて中国の非を認めさせることは国際関係において重要な意義をもつものの、結論が出るまでに相応の労力と時間がかかることは必至である。仮にパネルにおいて中国政府の協定違反の結論を勝ち得たとしても、中国国内の経済・社会情勢に中央政府が有効な政策を打ち出せるかどうかは、また別の問題となる。

事件は「地方」で起きている

 報道から見た中国国内の状況は混迷の度を深めている。

 場所は江西省の南部にある贛州(かんしゅう)。福建省、広東省との省境にある山間地帯はレアアースの開発で深刻な環境汚染が進行している。

 中央政府が開発規制を打ち出す中、高騰するレアアースの開発をめぐり、関係するすべてのプレーヤーが参戦する争奪戦を繰り広げている。

 中央政府はレアアースにかかわる業界秩序の構築に向け、採掘許可証の厳格な規制、採掘許可証を有する業者に対する採掘量の厳格な規制、レアアース精錬企業に対する厳格な割り当てなどを実施している。こうした「整頓」政策により、贛州の採掘場も1000余りから100カ所に削減された。贛州レアアース鉱業有限公司が採掘者の管理、レアアースの取引や売買に関して統一的に管理する責任を負っていて、国家の割り当てを超過して採掘や生産を行った場合、処罰を受ける。しかし、これは建前の話である。実際には管理の中で相当量の「漏れ」があり、こうした「漏れ」を管理・監督することは不可能だ。管理から漏れ出たレアアースは、「ヤミ」の市場に消えていく。

 中央政府による管理が日増しに強まる一方で、低コストで高利潤が得られるレアアースの採掘、生産、取引といったサプライチェーンに参加するプレーヤーが政府管理から「逸脱」するのは当然だろう。宝の山を目の前にしてただ見つめているだけというのは市場化した中国の人々にとって酷な話である。

 採掘の現場では、中央政府が産業の秩序を取り戻すために打ち出したブラックマーケットに対する規制により、表面上は規制がかけられている。一見、正規の企業による開発はすでに止まっている。しかし、こうした正規の企業でも、巡視の合間を縫って、盗掘が行われている。

 規模の小さな盗掘も横行している。果樹を植えるなどと称して山を確保したアウトローたちが「投資」を回収するために短期間のうちに荒稼ぎを行う。そこで働く労働者に休日や夜の休息などは与えられないが、レアアースさえ掘り出されれば、労働報酬やボーナスはかなりはずんだ額となる。ほかに産業らしい産業がない江西省の田舎では貴重な働き場所だ。

 レアアースの盗掘を監視する巡視隊は日増しに増強されているが、実態はいたちごっこにある。贛州市鉱産資源管理局の役人は「レアアースの採掘場は山野に広がっており、多くの山が辺鄙で遠いところにあって、道すらない。盗掘している連中は見張りを置いている。車で巡視をすればすぐに知られてしまうので、捕まえるのは至難の業だ。そこには当然のことながら利益がからむので、村長、郷鎮の長、さらに極端な場合は鉱産資源管理局の役人に至るまで裏でつながっている可能性がある。結局はカネの問題なんだ」と漏らす。

 贛州市の傘下にある龍南県はレアアースの採掘場の跡地利用のためにカオリンを採掘する企業を受け入れた。カオリンは焼き物の原料だ。レアアース採掘場の残土からカオリンを取り出し、陶業を起こす狙いだった。しかし、当該企業はカオリンの採掘許可証を取得すると、贛州レアアース鉱業公司と契約を結び、レアアースの回収利用に乗り出した。カオリン採掘に熱心でない企業の行動に県政府のいらだちは積もるばかりだ。利潤を追求する企業の狙いがレアアースにあることは一目瞭然である。

 もともとトン当たり2万〜3万元だったレアアースが最も高い時期には40万元に跳ね上がったことにすべては起因している。出稼ぎなどするより、レアアースを盗掘した方はよほど稼ぎになる。

 こうなると秩序など吹っ飛んでしまう。盗掘するアウトローたちの関係もどろどろであり、仁義なき戦いが繰り広げられている。取り締まり当局を相手に表面上は結束していると見えながら、互いに相手を売る密告もあり、ときに刃傷沙汰に及ぶこともあるといわれる。「2000元余りの『月給』のためにどうしてそこまでするのか」と監督する側の役人も感じている。

手つかずの環境保護対策

 中国南部のレアアースはイオン吸着型鉱床であるため、採掘に硫酸アンモニウムが大量に使われる。問題は適切な排水処理をしないまま、排水が採掘現場から下にある農村の田畑に流れ込んで公害を引き起こすことである。こうした被害が江西、広東、福建、広西などの採掘の周辺地域で頻発している。

 硫酸アンモニウムはもともと化学肥料であるが、レアアースの採掘に使用される量が半端ではないことから栽培作物に甚大な影響を与える。

 国家環境保護部の推計では、レアアース産業が排出する排水の量は年間2000万トン余りに達する。その排水にはリットル当たり300〜5000ミリグラムのアンモニア窒素が含まれているが、これは国家基準の10数倍から100倍に相当する。土壌と水に対するアンモニア窒素の影響が懸念されている。贛州の多くの村では、レアアースの採掘のためにその後も草も生えない状態が続くはげ山が無数に存在している。このため、国土資源部、科学技術部、工業信息化部は予算を計上して土壌復元プロジェクトを立ち上げたが、復元のためのコストが高くつく上に対象とする面積も大き過ぎるために、焼け石に水の状況だ。

 4月後半、中央政府の42省庁による調査チームが贛州に派遣された。調査の結果、遺棄された鉱山30カ所、放棄された尾鉱1.9億トン、破壊された山林面積97.34平方キロメートルと判明した。贛州の環境修復に限ってもその費用は380億元(およそ4750億円)にのぼる。尾鉱の処理にはざっと70年間を要すると試算された。レアアース産業で稼ぐ利潤からはとても比較にならない経済規模の環境破壊である。

レアアース産業育成は任重くして道遠し

 中央政府は昨年5月、「レアアース業の持続的、健全な発展を促進する国務院の若干の意見」を公表し、今後1〜2年の間にレアアースの資源開発、精錬・生産、流通に関して規範と秩序を確立して、無秩序な資源開発、環境悪化、盲目的生産・輸出拡張に歯止めをかける政策を打ち出した。具体的には大企業主導のレアアース産業を形成する考えである。こうした基本政策に沿って、今年4月8日にレアアース協会が設立されている。

 中央政府はレアアース産業のアップグレードを目指すのは、将来のハイテクに重要な役割を果たすものと期待されているからである。

 しかし、中央政府が北京で考えているほど、現場の状況は単純ではない。工業信息化部の蘇波副部長が今年3月、贛州での調査を行ったが、大企業中心の業界再編を思い抱いていた中央の幹部一行の考えは実地調査の後にはもろくも崩れ去った。

 贛州など中国の南部のレアアースは山野に広がっているため、採掘権も山林の権利に関わってくる。地下にある資源の所有権は確かに国家に所属するが、地上にある山林は農民のものである。地方政府の支持なしに、中央企業だけでこうした権利関係を処理することはできない。実際に地元での中央企業の評判は良くない。中央企業にできるのは利潤の上前を掠め取ることだけと感じている。

 レアアース産業を支える企業が育たない状況は、国際経済の図式における中国企業の位置づけにも表れている。

 贛州の龍南県には26社のレアアース関連企業がある。そのうち、中国五鉱、アモイ東林が省エネ照明を生産し、龍南レアアースが蛍光粉を材料として応用製品を生産している。この3社以外で使われるレアアース、すなわち生産したレアアースの90%以上が輸出に回されている。

 フィリップスの照明には中国のレアアースが使われているが、全世界の2480を超える発光材料による照明に関わる特許において中国が占める割合はたったの0.8%だという。知的所有権の乏しい中国は海外企業のためにレアアースを採掘し生産して輸出するしか能がない。

 実際に中国自身のレアアース消費量は、2005年に前年比で50%増、2008年には前年比で10%近い減少と、増減の凹凸が激しく、鉄鋼やエネルギーなどのような産業とは異なり、健全な発展を遂げる上での環境が欠如している。

 レアアース産業の育成を図るという環境整備に向けた政府の初動は余りにも遅すぎたと言えよう。「未来へのカギは自主的な創新能力の育成」と関係者は言うが、レアアース産業発展の道はまさに「任重くして道遠し」の状況にある。

「大国を治むるは小鮮を烹るがごとし」に習え

 自国資源や自国産業の育成にばかりにとらわれ、いささか焦り気味だった中央政府が輸出や生産に規制をかけたためにレアアースの市場に大きな影響を与えてしまったことに混乱のそもそもの原因がある。レアアースの価格が急騰すれば巨利を求めてレアアースそのものやその権益を奪い合う状況が出てくることは必定である。その反対に価格が下がれば、必要なコストをかけずに採掘や生産が行われるため、汚染や公害が引き起こされる。

 政府の力で直接、産業や市場に介入することはできるだけ自制するという態度や行動が見られないことが最大の問題である。「大国を治むるは小鮮を烹るがごとし」。古の知恵を活かすしか中国に道はない。

 ただし、産業政策の成否に一喜一憂している間にも中国の国土は破壊され続けている。中国に残された時間はそれほど長くない。


青山周 中国×環境×ビジネス

世界不況下においても、一層の存在感を増す中国。しかし、こと環境問題に関しての評判は芳しくない。しかし、中国はいま、私たちが想像する以上に環境問題の解決に熱を入れている。中国は変わった。そして、変わる。中国のいまを知ることは、環境立国を標榜する日本の使命でもある。

※本コラムの内容は、中国の状況分析に携わっている筆者自身の個人的な見方や意見を著したもので、筆者が所属する経団連の公式な見解ではありません。

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青山 周(あおやま・めぐり)

日本経団連国際協力本部主幹。1982年、慶應義塾大学経済学部卒業後、経団連(現・日本経団連)事務局入局。地球環境・エネルギーグループ長、国際第二本部アジアグループ長を歴任。2009年5月より現職。中国上海の復旦大学に留学経験があり、中国通であり、環境通。2011年、日本大学大学院総合社会情報研究科後期博士課程総合社会情報専攻修了(博士)。  

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