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EUの未来:運命の選択 スペインの資金調達コストに新たなリスク  ドイツは統合の対価を払う用意 次はイタリア
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/425.html
投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 04 日 00:21:19: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35358
The Economist
EUの未来:運命の選択
2012.06.04(月)

ユーロ解体よりは制限された形の連邦主義の方が、まだ救いのある解決策だ。


60年以上に及ぶ欧州統合が試されている〔AFPBB News〕

欧州連合(EU)は一体どうなるのか? 一方の道を進めば、ユーロの全面解体に至り、解体に伴う様々な経済的、政治的余波が生じる。

 もう一方の道を進めば、欧州全土の国境を越えた前例のない富の移転が起き、それと引き換えに、富の移転に見合うだけの主権移譲が生じる。

 分裂か超大国か。これが今ある選択肢のように見える。

 危機に悩まされたこの2年間、欧州の指導者はこの選択から逃げてきた。指導者たちは、場合によってはギリシャは例外としても、ユーロを今のまま維持したいと言う。だが、ドイツを筆頭に、欧州北部の債権国はユーロ存続を確実にするだけの資金を払わない。一方、南欧の債務国は、自分たちの生き方に口を挟む外国人への怒りを募らせている。

 この危機は60年以上にわたる欧州統合を試す試金石になった。ヨーロッパ人が共通の目的意識を持って初めて、単一通貨を救うための壮大な合意が正当性を持つように思える。そして、正当性を持って初めて合意は永続し得る。何より、これはドイツを試す試金石だ。

 アンゲラ・メルケル首相は、わがままな政府に改革路線を守らせるためには、ユーロ破綻という脅威が必要だと主張している。だが、ドイツの瀬戸際戦術は、ユーロに未来があるという信念を蝕み、それが救済コストを引き上げ、メルケル氏がまさに避けたいと言っている崩壊を早める。最終的に、欧州の選択はベルリンで下されることになるだろう。

英エコノミスト誌が考える救済策の骨子

 昨年夏、本誌(英エコノミスト)はユーロ圏の下方スパイラルを断ち切るためには、銀行の資本増強を実施し、欧州中央銀行(ECB)が無制限の支援で支払い能力のある国々を支え、緊縮財政に対するドイツの執着を抑える必要があると主張した。

 残念なことに、欧州の一連の救済計画はそれに及ばず、ECBは昨年12月と今年2月に銀行に対して低利の長期資金を供給して一息つく時間を稼いだものの、危機はさらに悪化し、深刻化した。

 本誌はここ数カ月で、ギリシャがユーロ圏に残留するにせよしないにせよ、救済にはもっと多くの措置が必要になるとの結論に達した。ユーロの全面解体という見通しを払拭するためには、ユーロ圏は団結して大手銀行を支援し、各国の債務負担を分担するユーロ共同債を発行することで共同の資産を活用しなければならない。

 本誌は以下に救済スキームの骨子を示した。あくまで実務的かつ限定的な救済策で、批判派(および本誌)が恐れる完全な超大国が創設されないよう設計された案だ。しかし、これは明らかに連邦主義に向かう動きであり、多くのヨーロッパ人を悩ませるものだ。

 この救済策は博打だが、もう時間がなくなってきている。欧州周縁国の銀行取り付け騒ぎの噂で、預金者と投資家は警戒態勢を取っている。ユーロ圏には何らかの計画が必要だ。

すべてに別れを告げる


存続させる価値が本当にあるのか?〔AFPBB News〕

 ユーロは本当に存続させる価値があるのだろうか? 筋金入りの単一通貨支持者でさえ、今となってはユーロの作り方はまずく、運営の仕方はそれ以上にひどかったことを認める。

 ギリシャは決して加盟を許されるべきではなかった。フランスとドイツは、政府の借り入れが制御不能に陥ることを防ぐための規則を破り、骨抜きにした。

 ユーロ創設の立役者たちは、アイルランドとスペインがユーロの財政規律を守っていたにもかかわらず、不動産バブル崩壊に脆弱なことや、ポルトガルとイタリアが低成長と競争力低下で身動きが取れなくなっていることに気づかなかった。

 ユーロが解体されれば各国は金融政策の権限を取り戻せると、多くの人は主張する。通貨安は少なくとも当面の間、労働者の生産性と賃金を均衡させる助けになるだろう。

 解体支持者は、友好的な別離を思い描いている。各国政府は、預金、融資、価格、賃金など、すべての国内契約を新通貨に切り替えるよう命じる。取り付け騒ぎを防ぐため、特に経済的に弱い国では、銀行は週末に営業を停止するか預金の引き出しを制限する。資本逃避を阻止するために、政府が資本規制を導入する――。

 どれも結構なことだが、ユーロがない方が各国はうまくいくと考えている向きは、そこに至るまでの莫大なコストをごまかしている。

 たとえユーロ解体が完璧に行われたとしても、国内外の資産と債務が釣り合わなくなるため、大陸全土で銀行や企業が破綻する。その後、デフォルト(債務不履行)と訴訟の連鎖が生じるだろう。財政赤字を抱える国は容赦ない歳出削減や紙幣の印刷を余儀なくされるだろう。

 しかも、これは楽観的なシナリオだ。むしろ可能性が高いのは、ユーロ解体は世界的に株価が急落し、質への逃避や銀行の取り付け騒ぎが起き、経済生産が激減する中で進むという展開だ。経済的に弱い国の通貨切り下げと強い国の通貨上昇は、富裕国の生産者に壊滅的な打撃を与える。

 EUでは資本規制は違法で、ユーロ解体は法律の網の外にあるため、EU全体が法的に宙ぶらりん状態に追い込まれる。

 一部の富裕国はそうした混乱を利用し、単一市場を一時的に閉鎖して自国の生産者を守ろうとするかもしれない。人の移動の自由を禁ずることで、経済移民を阻止しようとするかもしれない。モノと人、資本の移動がなければ、事実上、EUにはほとんど何も残らない。

 たとえユーロ圏の残骸として強国の集団が生まれたとしても、シューマンやモネの後継者たちは、これほどの大混乱の原因となった後に27カ国の欧州を復元することはできないだろう。

 ユーロの崩壊は、フランスのマリーヌ・ルペン氏など、EUやグローバル化に反対するポピュリストへの贈り物となる。責めを負うべき人は大勢いる。ユーロクラート、投資家、妥協しないドイツ人、無責任な地中海沿岸諸国の人々、ありとあらゆる外国人などだ。

 国内政治が荒れるにつれて、欧州の協調は瓦解する。積極的にユーロを捨て去ることは無謀だと本誌が考える理由はそこにある。解体よりは救済の方が望ましい。

共有される課題


ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、成長促進策にもっと寛大になるべきだった〔AFPBB News〕

 しかし、どんな救済でも良いわけではない。ユーロを救う方法を巡る議論では、単に成長計画に重点を置くだけのものが多すぎる。

 経済成長によって債務の管理は容易になり、銀行の健全化が進むことから、成長計画は役には立つ。メルケル氏はこの点で、もっと寛容になるべきだった。

 だが、現実的な刺激策はどれも、危機を食い止めるには規模が小さすぎる。ECBは利下げして量的緩和を始めることができるし、実際そうすべきだが、投資向けの公的基金には限りがある。

 また、サービス分野における欧州単一市場の完成など、より野心的な成長促進方法は、残念ながら議題にさえ上っていない。

いずれにせよ、ユーロ圏の問題はあまりに根深すぎる。銀行とその国の政府は、金曜夜の酔っ払いのように互いを支え合っている。銀行に対するECBの支援は、スペインやポルトガル、イタリア、アイルランドの弱い経済が各国の銀行と政府を弱体化させるのを防げない。

 国債利回りが高く、経済成長が乏しい状況が続く限り、国は債務返済能力を疑われ、銀行では融資が焦げ付いていく。その一方で、まさにその不確実性が国債利回りを押し上げ、銀行融資を阻止し、さらに成長を妨げることになる。

 政府が銀行破綻への対処を迫られるかもしれないという不安は国債のリスクを高め、政府が対処できないかもしれないという不安は銀行破綻の可能性を高める。

 本誌が不本意ながら、ユーロ圏諸国は負担を分担しなければならないという結論を出したのは、このためだ。その論理は簡単明瞭だ。ユーロ圏の問題は債務の規模ではなく、細分化された構造にある。

 全体として見ると、ユーロ圏の公的債務の残高はGDP比87%だ。これに対して米国は100%を超えている。同様に、大陸全体にとっては銀行は大きすぎない。個々の政府にとって大きすぎるだけだ。

 生き残るためには、欧州はもっと連邦制に移行しなければならない。議論となるのは、どの程度移行するか、だ。

共通市民はドイツ語で何て言う?

 一部の熱心な連邦主義者に言わせると、かなり大きく移行しなければならない。ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相のような人々にとっては、単一通貨は常に、完全に統合された欧州へ向かう旅の一行程だった。

 彼らは費用を負担する見返りとして、税制を調和させ、政治的権限を中央集権化するとともに、例えば欧州委員会を選挙制にしたり、欧州議会に新たな権限を与えたりしたいと思っている。

 ユーロ崩壊があまりに恐ろしい事態であるため、有権者は嫌々ながら従うだろう。時間が経つとともに新たな機関は正当性を得る。新機関がうまく機能し、ヨーロッパ人が再び豊かだと感じるようになるからだ――。これが連邦主義者の言い分である。

 しかし、ユーロ危機をEUを連邦化するチャンスだと見なすと、統合に対する人々の意欲を読み誤ることになる。EUのことを衝突に対する防波堤と見なした戦争世代は、次第にいなくなっている。大半のヨーロッパ人にとって、EUの最も野心的なプロジェクトであるユーロの結末は惨めに感じる。

 また、各国の有権者がEUに親近感を抱いているという証拠は何もない。リスボン条約と、その前身である頓挫したEU憲法は、合わせて6回国民投票にかけられ、3回否決されている。10を数える国の政府が、憲法改正を投票にかけるという約束を反故にした。議会は絶望的なほど超然としている。

 超国家のもう1つのバージョンは、政治は断固として各国に属するものだということを受け入れたうえで、各国政府が近隣諸国を監督する権限を強めることだ。だが、ここにも問題がある。ユーロ危機が示したように、各国政府はなかなか集団として決断を下すことができない。ユーロ圏の小国は、大国が影響力を持ちすぎることを恐れる。

 ドイツ政府が費用を払い、その他欧州諸国にどういう行動を取るべきか指図すれば、ドイツに対する破壊的な国家主義的反感を招く恐れがある。

 そして、もう1つのバージョンの完全な超国家のように、英国で離脱を唱える陣営を勢いづかせることになる。これは英国人だけでなく、経済的にリベラルなすべてのヨーロッパ人にとって問題だ。

5万300ユーロ(6万4000ドル)の問題

 本誌の救済が、負担の分担と主権の譲渡の両方を制限しようとしているのは、このためだ。本誌の案は、連邦制度を築くのではなく、単一通貨の当初設計の2つの穴を埋めるものだ。

 1つ目は金融の穴。ユーロ圏には、銀行の監督、資本増強、預金保険、規制に関し、地域全体を対象とする制度が必要だ。2つ目は財政の穴だ。ユーロ圏諸国の政府は、債務の共通化が限定的な場合に限って、自国の財政負担を管理し、軽減することができる。だが、どちらの場合も、すべてをEUレベルに移管することが、その答えではない。

 まず銀行から見ていこう。ユーロが創設されてから、欧州統合が最も進んだのは金融分野だった。銀行は国境をまたいで事業を展開している。ドイツの銀行はスペインの不動産バブルを煽り、フランスの銀行はギリシャにお金を貸した。

 本誌の答えは、銀行(少なくとも大手銀行)を監視し、支援する役目を、国の規制当局から欧州の規制当局へ移管することだ。最低でも、預金保険と監督体制についてユーロ圏全体を対象とする制度がなければならない。危機に陥った銀行の自己資本を増強するための共同の資金を持ち、本当に破綻した銀行の破綻処理について地域のルールがなければならない。

 第一歩は、欧州の救済基金を使って、脆弱な銀行、特にスペインの銀行の自己資本を増強することだ。だが、預金保険の共通制度も早急に創設する必要がある。

 これらは大きな制度変更だ。政治家はもう自国の銀行に対し、国内企業を支えたり、国債を買ったりすることを強要できなくなる。銀行はスペインの銀行やドイツの銀行ではなくなり、欧州の銀行になっていく。間違ってはいけない。これこそが統合だ。だが統合は、通貨同盟が既に国境をすべて取り払った金融の世界に限られる。

 財政統合も限定的なものにできる。ブリュッセルのEU本部が税制と歳出の責任を引き受ける必要はないし、ユーロ共同債がすべての政府債務に取って代わる必要もない。最低限必要なのは、過剰債務を抱えた国がある程度資金を調達できること、そして銀行が、一国の命運に左右されない、ユーロ圏全体の「安全な」資産クラスを持つことだ。

期間も量も限定したユーロ共同債を

 解決策は、限られた期間のみ、限られた量の債務を共有化する狭義のユーロ共同債だろう。最善の選択肢は、ユーロ圏諸国の債務残高に関し、GDP比60%を超えた部分の債務を共通化するというドイツ政府経済諮問委員会(5賢人委員会)が提唱した案を基に考えることだ。

 各国が新たな国債を発行するのではなく、ドイツ(公的債務はGDP比81%)からイタリア(同120%)に至るまですべての国が、自国の債務残高がGDP比60%という基準に減るまでユーロ共通債のみを発行する。

 市場規模にして総額ざっと2兆3000億ユーロに上る新たなユーロ共同債市場は、25年かけて償還していく。償還費用を賄うために、すべての国が特定の税金(追加の付加価値税など)の課税を誓う。

 今のところ、メルケル首相はいかなる形の債務共通化にも反対している(5月23日にも再び反対した)。本誌が提唱する枠組みでは、ドイツは自国の債務に対し今より高い金利を払い、リスクの高い借り手を助成することになる。だが、これは全面的な財政連邦主義に向かう動きではない。

 こうした共同債は、連邦当局による立ち入った財政監視は必要としない。規模と期間が限定されている共同債は、ドイツ憲法の制約にも抵触しないはずだ。

 実際、このような共同債は、過剰な借り入れと債務を抑制する昨年秋の「シックスパック」や、1月に合意された財政協定(財政規律を法律に盛り込むもので、現在、ユーロ圏諸国で批准されている)を基に築けるはずだ。

 これだけ限定された連邦主義でさえ、厄介な問題をはらんでいる。単一の銀行規制当局の設置には、条約改正が必要になるかもしれない。英国を含むEU加盟国10カ国がユーロを導入していない状況では、条約改正は難しいだろう。欧州の救済基金を創設する条約も、銀行に直接資金を注入できるように変更する必要がある。

 各国は、先々の政権が必ずユーロ共同債の金利負担を分担するようにする、説得力のある方法を見つけなければならない。ギリシャの債務は自国経済の規模を大きく上回っているため、債務共通化スキームに加わる前に追加の救済を必要とするだろう。もっとも、その金額は大陸規模からすれば小さいはずだ。

連帯感を持てるか

 確かに、これは長い課題リストだ。だが、EUを全面的に再設計しようとするよりは容易だし、ユーロ解体よりは安上がりで済む。ユーロを救うことは望ましいし、救済は実行可能だ。

 残る疑問は、ドイツ人やオーストリア人、オランダ人が、費用を負担していいと思うほどイタリア人、スペイン人、ポルトガル人、アイルランド人との連帯感を覚えるかどうか、だ。本誌は、そうすることが彼ら自身のためになると考えている。欧州の指導者たち、特にメルケル首相が、そう訴えるべき時が来た。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35360
Financial Times
スペインの資金調達コストに新たなリスク
2012.06.04(月) 

スペイン国債の利回りは、他国が救済要請を余儀なくされた領域に近づいている(写真はマドリードの夕暮れ)〔AFPBB News〕

スペインの債務危機が深刻化する中、投資家は、同国の国債利回りを「救済領域」に追い込みかねない引き金を注視している。

 注目すべき数字は、スペインの10年物国債と、トリプルA格付けを持つ欧州諸国の国債のバスケットとの利回り格差だ。

 スペイン国債を保有する際に投資家が要求するプレミアムが450ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を上回る水準で高止まりすれば(5月28日以降この水準を上回っている)、スペインを取り巻く状況は一段と悪化するだろう。

決済機関の証拠金引き上げという「引き金」

 その理由は、欧州最大の決済機関であるLCHクリアネットだ。利回り格差がこの水準に達すると、LCHはいわゆる「レポ」取引で短期資金を調達する際にスペイン国債を担保として利用する銀行に、追加証拠金を課す可能性がある。そうした措置は、スペインの金融機関を苦しめている流動性問題を悪化させる恐れがある。

 アナリストの見るところ、LCHは銀行に要求する証拠金を数日内にも引き上げる見通しだ。LCHは通常、利回り格差が450bpを超えた場合に15%の追加証拠金を課す。スペインは5月31日時点で利回り格差が470bpに上っていた。

 アイルランド国債、ポルトガル国債に課された過去の証拠金比率引き上げは、債券市場を動揺させ、政府レベルの問題を悪化させてアイルランド政府を救済に追い込む一因となった。一部の銀行は、証拠金の要件を満たすためにより多くの現金を確保しようとして手持ちの国債を売却し、国債利回りを一段と上昇させた。

 ポルトガルとアイルランドの場合、LCHは利回り格差が450bpを超えてから5日以内に証拠金比率を引き上げている。

 「スペインの銀行では、レポ取引による資金調達コストが間もなく上昇し、場合によっては急激に上昇するだろう。これは重要なことだ。欧州中央銀行(ECB)やその他のユーロ圏の資金源への依存度が高まるからだ」。ICAPのエコノミスト、ドン・スミス氏はこう話す。

 ポルトガルとアイルランドの証拠金比率引き上げは、時として両国の国内銀行のレポ取引による資金調達コストを「涙が出るほど高額」にしたと言う。


多くの銀行はECBによる長期資金供給オペで、資金不足を埋めたが・・・〔AFPBB News〕

 ソブリン債務危機が公債市場を襲った昨年末、ユーロ圏の銀行は流動性逼迫に見舞われた。

 ユーロ圏の銀行システムに対してECBが実施した1兆ユーロ超の資金供給は、欧州全土の銀行数百行の資金不足を埋め、スペインとイタリアの銀行は、借り入れた3年物資金のかなりの部分を国債購入に回した。

 だが、ECBの資金供給の効果が徐々に消え、スペインに対する懸念が強まると、国債利回りが跳ね上がった。

 スペインの銀行は、公債市場で無理のない金利で資金を調達するのが難しくなっている。投資家が拡大したリスクを埋め合わせるために、より高いリターンを要求するからだ。スペインの10年債利回りは急騰し、5月最終週には昨年秋に記録したユーロ導入後の最高水準に迫った。5月31日時点で6.56%だった利回りが7%まで上昇すれば、持続不能だと見られている。

 LCHは、利回り格差は欧州諸国の国債に求める証拠金比率の引き上げを決める際に検討する数多くの要素の1つであり、証拠金比率は絶えず見直していると話す。

個別銀行の格下げによる追加コストも

 大幅な引き上げがある場合は大抵、デフォルト(債務不履行)リスクに対する補償として、取引金額に対して最大15%の支払いが求められるが、個々の銀行の信用格付けが最低基準であるトリプルBを下回るようなことがあれば、追加のコストが発生する。

 これは現実的なリスクだ。政策立案者やアナリストは、経済目標を達成し、銀行問題に対処するスペイン政府の能力について懸念している。スペインの銀行は、同国の不動産バブルの際に多額の融資を行い、今では山のような不良債権を抱えている。

 多くの銀行は既に格下げに見舞われており、政府の銀行再建基金を通じてバンキアに巨額資金を注入する計画は冷ややかな反応をもって受け止められた。

 一部のアナリストは、スペインの金融機関はECBの3年物融資を大量に利用したため、短期金融市場へのアクセスに対する依存度が下がっているかもしれないと話している。欧州のレポ市場は2011年末時点で6兆ユーロ規模だったと推定され、少なくとも3分の1は中央清算機関によって決済されている。

命綱が途切れたら・・・

 レディング大学ICMAセンターの客員シニアフェロー、リチャード・コモット氏は、レポ取引での決済機関の利用はスペインの銀行に命綱を与え、各行は、さもなければほぼ不可能になっていた方法で短期資金を調達することができたと指摘。「これで短期市場が閉ざされずに済んでいた」と言う。

 同氏はさらに、アイルランドとポルトガルの銀行の資金調達に与えた影響を目の当たりにした後、LCHはスペイン国債の証拠金比率引き上げには慎重になると見ているものの、「下手をすればろくなことにならない」と話している。

By Mary Watkins


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35361
Financial Times
ドイツは統合の対価を払う用意がある
2012.06.04(月)


我々は前にも同じような場面を経験した。言ってみれば、ユーロ圏版のグラウンドホッグデーだ。警戒心が欧州の金融市場を支配し、周縁国で借り入れコストが上昇する中、1つの国がスポットライトを浴びている。今回はスペインだ。

 協議中の救済策の大半には、できればスペイン経済にさらなる緊縮策を課すことなく、欧州の資金でスペインの銀行の資本を増強するという内容が含まれている。

救済を受けるにはプライドが高すぎるスペイン

 だが、公の場でほとんど何も語られていない場所が1つある。最大の資金の出し手として、救済策にその承認が不可欠なドイツである。

 表向きの説明は、はっきりしている。「我々はスペイン政府が問題に対処できると確信している。これまでスペインが取ってきた対策は賢明なものだ。彼らが欧州の資金は必要ないと言うのなら、我々はそれを信じる」というものだ。


マリアノ・ラホイ首相は、スペインは改革を推し進めており、救済は必要ないと主張しているが・・・〔AFPBB News〕

 だが、スペインが助けを必要としているのなら、使える手段はあるとドイツ政府は言う。

 スペイン政府は、2010年に創設された一時的なユーロ圏救済基金である欧州金融安定基金(EFSF)や、それに代わる恒久的な制度、欧州安定メカニズム(EMS)から借り入れを行うことができる、というわけだ。

 しかし、救済基金からの借り入れは国際的な監視を受け入れることを意味しており、スペインのプライドが許さない。

 一見すると、ドイツは(またしても)残忍な振る舞いをし、自国の金融支援と引き換えに他の加盟国に過剰な緊縮策を押し付けているだけにも見える。現実は、もう少し複雑だ。

ドイツが表向き沈黙を守る理由

 ドイツ政府の立場からすると、沈黙を守ることには少なくとも4つ、短期的に正当な理由があった。ユーロ圏の財政協定に関するアイルランドの国民投票、6月に行われるギリシャの再選挙、フランスの議会選挙、そして金融市場だ。

 ドイツが軽率な発言をすれば、そのいずれにもマイナスの影響を与えかねない。

 だが表面下では、ユーロ圏の進むべき道や欧州連合(EU)の将来について、ほかのどの加盟国より活発な議論が展開されている。ドイツでの議論は、諸外国が思っているほど独善的ではなく、もっと急進的だ。

水面下で繰り広げられている活発な議論


欧州の命運を握るドイツのアンゲラ・メルケル首相〔AFPBB News〕

 まず、アンゲラ・メルケル首相率いる右派のキリスト教民主同盟(CDU)から、左派の社会民主党(SPD)や緑の党に至るまで、政界の既成勢力全体にわたって、ユーロ圏の経済統合強化を支持する幅広い合意がある。

 財政統合として大まかに定義されるものは、しっかり適用されていない現行の財政規律をはるかに超えるものだ。こうした統合には、各国間で今よりはるかに緊密に調整された財政戦略が含まれることになるだろう。

 かつての革命派で、緑の党の代表を務めた元外相のヨシュカ・フィッシャー氏は、EUは人々の信頼を取り戻すために明確なビジョンを必要としていると話す。先日ベルリンで開かれた欧州外交評議会(ECFR)の会議で、フィッシャー氏はこの課題をはっきりと口にした。

 「我々は今、解体の危機に瀕している」と同氏は述べた。「非常に素早く前進するか、さもなくば後退して分裂するしかない。我々は富を共有するのか? 債務を統合するのか? 権限を共通機関に移譲するのか?」

 ドイツは、統合の緊密化と引き換えに、こうしたことをすべて協議の対象にする用意がある。問題は、極めて重要なフランスやイタリア、スペインを含め、ユーロ圏の他の加盟国がまずドイツに資金を出してもらえることを確かめたうえで、後で統合について交渉したいと思っていることだ。

 例えば、共同で保証されるユーロ共同債をとってみよう。イタリアのマリオ・モンティ首相から、フランスの社会党の新大統領、フランソワ・オランド氏、スペインのマリアノ・ラホイ首相に至るまで、このように債務をプールすることは、ソブリン債市場への信頼を回復するために欠かせない一歩だと受け止められている。

 メルケル首相は、ユーロ共同債に「ノー」と言っているわけではない。首相は「条約の変更がなければできない」と言っているのだ。

 カールスルーエにあるドイツ連邦憲法裁判所は、中央で予算計上される効果的な財政規律に各国が従わない限り、ソブリン債に対するドイツの保証がユーロ圏加盟国に与えられるのを決して認めないだろう。

 だが、それを望んでいる国が、ドイツ以外にあるだろうか? 

欧州で最も尊敬されている国は・・・ドイツ

 5月29日に公表されたピュー・グローバル・アティチュードの世論調査は、ドイツが、過半数をかなり超える人(59%)が今でも経済統合が良いことだと考えているユーロ圏(調査対象となった8カ国の中)唯一の国であることを示していた。ポーランドも肯定的だ。フランス、イタリア、ギリシャは、どこも非常に批判的だ。

 同じ世論調査は、ドイツが欧州で最も尊敬されている国であること(ギリシャのみ例外)や、メルケル首相が最も尊敬されている指導者であることを示していた。それは、メルケル首相が孤立しており、ドイツ政府は弱いものいじめをする大国だと思われているという報道とは一致していない。

By Quentin Peel in Berlin


http://diamond.jp/articles/-/19465
スペインも支援要請の可能性
止まらぬ欧州危機の連鎖の火 

欧州不安が世界の市場を振り回している。最大の懸念はギリシャだが、ここにきてスペインの金融システム不安という別の火種が大きくなってきた。欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は何が何でも最悪の事態は回避しようとするだろうが、市場の不安は簡単には収まりそうにない。危機の連鎖は止められるのか。


投げ売りされるマドリード近郊のマンション
Photo:REUTERS/AFLO
 ギリシャのユーロ離脱懸念がくすぶる欧州で、別の火種が大きくなっている。

 焦点は、スペインである。不動産バブルの崩壊による銀行の不良債権増大と、地方政府の財政難が深刻化。市場は、アイルランドの二の舞いになるのではないか、と不安視している。アイルランドも、不動産バブル崩壊から金融危機に陥り、銀行への公的支援で政府債務が増大、財政が悪化した。最後は政府が資金繰りに行き詰まり、2010年11月、金融支援要請に追い込まれている。

 スペインの住宅価格は、ピーク時から約20%下落しているが、アイルランドに比べ落ち方は緩やかだ。つまり「不動産価格の調整は道半ば」(伊藤さゆり・ ニッセイ基礎研究所主任研究員)である。一方で銀行の不良債権比率は08年の1%から足元で8.4%まで上昇しており、不動産価格下落によるさらなる増大 は不可避だ。


 スペイン政府も、国内金融機関の再編を進めるとともに、引当金の積み増しと自己資本比率の増強を義務付けるなど、手を打ってはいる。しかし、引当率を今年2月以降段階的に引き上げたことは、市場には「状況の悪化」と捉えられてしまった。前提となる資産評価が適正な価格なのか、あるいは正常債権と分類されているものは本当に大丈夫なのか、という疑念もある。政府は外部の監査機関に資産評価を依頼し、さらに欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)が監督につく見通しとしているが、疑念を払拭するには至っていない。

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 銀行の資本増強は、まず自力で行い、それができなければ政府が支援、さらに政府の能力を超えれば、欧州連合(EU)が政府を通じて支援を行う決まりだ。BNPパリバ証券の試算によれば、スペインの銀行が今後要する追加資本は900億ユーロ、楽観的にみても500億ユーロ。国際金融協会(IIF)の試算でも750億ユーロと目されている。一方、5月11日に発表された追加の引当金目標は300億ユーロ程度で、想定が甘いと取られても致し方ない。現に、大手銀行のバンキアは5月25日、当初の政府想定の2倍以上となる190億ユーロの支援要請を行った。

 つまるところ、「損失規模はどれほどなのか、現行のスキームで救済できるのか、市場が疑心暗鬼に陥っている」(田中理・第一生命経済研究所主任エコノミスト)のだ。

 政府による救済は銀行再編基金(FROB)を通じて行うのが前提だが、その原資は50億ユーロ程度しかないともいわれる。政府は銀行支援と、さらに資金繰りに窮している地方政府の支援のため、債券発行により市場で資金調達する方針だ。しかしスペイン国債(10年債)の利回りは7%近くに上昇しており、調達コスト増大と、財政と景気への悪影響は避けられない。金融システム不安への対応が財政悪化懸念を招き、いっそう対応を難しくするという悪循環である。

スペインの支援要請で
イタリアにも波及の恐れ


労働市場改革に反対するデモ。景気悪化で失業率は24%以上に達し、デモも多発している。
Photo:REUTERS/AFLO
 スペイン政府はあくまで自力での問題解決を強調しているが、結局はEUに支援を仰がざるを得ない、とみる向きは多い。ところが、「その際のセーフティネットも盤石とはいえない」(中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査本部長)ことが、不安に拍車をかけている。

 スペイン政府が支援要請した場合、欧州金融安定基金(EFSF)あるいは7月1日から稼働予定の欧州安定メカニズム(ESM)を利用することになる。ESMの融資可能額は5000億ユーロとされているが、資本金は分割して払い込まれるため、12年中ではEFSFと合わせて3400億〜4400億ユーロ程度にとどまる。IMFの支援枠と合わせても7300億ユーロだ。

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スペインだけなら、これでも何とか事足りる。しかしスペインが支援要請に至った場合、イタリアにも危機が波及する可能性が高い。イタリアは、財政再建も比較的順調に進んでおり、状況はかなり異なるのだが、過去の経緯からすると市場は同一視しがちであり、現に両国の国債利回りは危機時には連動している(下のグラフ参照)。スペインに加えてイタリアが資金調達できなくなれば、必要な支援額は合わせて1兆ユーロを超えると予想されている。


 無論これは最悪に近いケースであり、実際にはその前に、スペインに対し金融システム対策に絞った“予防的”な支援が行われ、危機の波及と拡大は何とか食い止められる公算が大きい。

6月のギリシャ再選挙で
懸念される最悪シナリオ

「問題が単純化され過ぎており、現在の市場の不安は行き過ぎ」(藤岡宏明・大和証券キャピタル・マーケッツ金融市場調査部副部長)との見方もある。「すべての銀行に公的資金注入が行われ、政府の負担がGDP比40%に達したアイルランドに対し、スペインは最大手の2行が健全で、負担額のGDP比も2%」(藤岡副部長)というのが根拠だ。

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 ECBによる長期資金供給(LTRO)第3弾や国債買い入れの再開など、波及を食い止める手段もまだ残されている。だがこれらは時間稼ぎにすぎず、今回は乗り切れたとしても、事あるごとに危機が再燃する状況は変わらない。

 一歩踏み込んだ対応策としては、ESMを“銀行化”して各国の銀行に直接資本注入できるようにすることや、各国の国債に代わり「ユーロ共同債」を発行することなどが、フランスを中心に主張されている。

 これらは確かに有効ではあるが、各国の財政規律の緩みや自国の負担増大を懸念するドイツ、ECBなどが反対しており、一朝一夕にはいかない。フランスのオランド新大統領が唱える「成長戦略」も、即効策とは言い難い。

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 そもそも、スペインの問題をめぐる議論にせよ、共同債や成長戦略をめぐる議論にせよ、ギリシャのユーロ離脱はない、との前提に立っている。肝心のギリシャの行方は、6月17日の議会再選挙の結果を待つ他ない。

 今のところ、EU・IMFによる支援条件の撤回、すなわち緊縮財政路線の破棄を公約に掲げた急進左派連合が再び勝利を収めても、同党はある程度現実路線に公約を“修正”するとみられている。またEU・IMF側にも、支援条件で譲歩を行う余地はあるだろう。

 だが、再選挙でまたもやどの党も過半数を取れず、政治的混迷が長引く危険はある。また急進左派連合が支援条件撤回に固執する可能性も皆無ではない。ギリシャがユーロ離脱には至らなくとも、“時間切れ”で支援を打ち切られてデフォルト(債務不履行)に追い込まれ、欧州経済が大混乱に陥るという、「悪夢に近いシナリオ」(伊藤主任研究員)もあり得る。

 新たな対応策を打ち出すべき欧州首脳会合の開催は、再選挙の後だ。欧州の綱渡りは続く。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)  

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