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ビジネス知識源Vol.276:特別号:ギリシアとスペインの債務問題は、 ユーロの崩壊への道程(1)
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/651.html
投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 25 日 18:39:11: cT5Wxjlo3Xe3.
 

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     2012年6月25日:Vol.276   

<Vol.276:特別号:ギリシアとスペインの債務問題は、
ユーロの崩壊への道程(1) >

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  著者:Systems Research Ltd. Consultant 吉田繁治
45,389部
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おはようございます。ユーロについての日本の分析や論調は、地理
的に欧州が遠いためか、のんびりしているように感じています。日
本人は、米国は心理的に近く考えるのですが、欧州は遠い。(NY出
張をはさみ、1ヶ月ほど間が開きました。)

円が高いままで、(世界の通貨の対する実効レートで)ドルも上が
っているので、ユーロは無関係と考えられているのかもしれません。

米ドルを論じるエコノミストは多くても、欧州経済とユーロに対し
ては少ない。金融が大きくなった経済では、経済を論じることは、
通貨を論じることでもあります。通貨の価格は、各国の株価のよう
なものでしょう。

最初に送るのは、A4で約10ページのプロローグ(前段)です。本稿
は、5月に送った有料版の一部に、その後の変化を、書き加えたも
のです。金融(ファイナンス)の大河小説を気取って書きます。

ギリシアとスペインでは、預金者が、銀行から預金を引き出す「取
り付け」が起こっています。FT紙では、「Bank Run」という、金融
崩壊の究極の言葉が踊っています。

政府(スペインの財務大臣モントロ氏)は、当然に「スペインでは
取り付け起こらない。」と否定しています。取り付けがあっても、
政府は、あると言えません。

あると言えば、取り付けが拡大し、銀行にパニックの群衆が並ぶか
らです。いや今は、インターネットで引き出しができます。ネット
取り付けが先行するでしょう。(注)米国のリーマンショックの後
も、英国と米国で、預金取り付けが起こりました。

【景気のサイクルとは異なる信用恐慌】
●銀行からの預金取り付けは、預金総額の5%であっても、マイナ
スの信用乗数(後述)が働くため、その国に信用恐慌を生みます。

こうした信用恐慌は、投資や在庫サイクルからくる普通の不況(リ
セッション)ではない。経済取引に必要なマネー(=信用)が抜け
ることから起こるものです。

借入であれ、自己資金であれ、企業と世帯のお金が減れば、投資と
商品購買は、その分減ります。GDPは、投資と商品購買の総額です。

【マネーの増加は、信用乗数】
銀行システムでは、最初は1000億円の預金の増加が、銀行の支払準
備率を5%としたときは、[1000億円÷5%=2兆円]の貸付と預金
を増やします。預金の増加は、約20倍の乗数効果があります。

【マイナスも、負の信用乗数】
逆に、1000億円の預金が銀行システムから流出し、タンス預金にな
ると、2兆円の貸付金と資金運用を、銀行全体から減らさねばなら
ない。これがマイナスの乗数効果です。こうしたマイナスの乗数効
果が起こった場合、明白に、その国は信用恐慌になります。

●預金取り付けは、銀行の貸付及び運用のマネー量をマイナスの乗
数効果で急減させ、実態経済(商品の購買と投資)を恐慌に至らせ
ます。

【公的な発表数値】
スペインの「公的な銀行統計」では、取り付けによる銀行預金の流
出は、大きくは起こっていません。世界中で銀行の不良債権問題で
は、政府が実態より1/2〜数分の1以下の少ない額を言うことは、
同じです。

経済と金融を見通すには、公的統計から、実態の数値を推計せねば
ならない。しかし、こうしたとき政府は、嘘、あるいは嘘ではなく
ても事実の隠蔽を言います。

福島原発での、政府や東電の発表と同じです。「国民にパニックを
起こさないため」として、嘘が正当化されます。

以下は、2008年の1月を100としたときの、欧州の銀行の、預金額の
変化です。日本の内閣府(旧経済企画庁)がまとめた『世界経済の
潮流(2012年6月)』によります。この元データは、ユーロを発行
しているECB(欧州中央銀行)の公的な統計です(同上72ページ)。
http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh12-01/pdf/s1-12-2-1-3.pdf

08年1月 10年1月 12年3月
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イタリア 100 120 135
フランス 100 110 130
ドイツ 100 100 120
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ギリシア 100 115 85
スペイン 100 115 100
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【ギリシアの預金取りつけと、その結果】
ギリシアの銀行預金は、08年9月のリーマン・ショック後ではあっ
ても、2009年12月までは、120に増えていました。マネーストック
の最大のものである預金は、1年に3〜5%くらい増えるのが、マ
ネーを使う量が増える成長経済にとって平常なことです。経済成長
は、商品購買と投資の増加です。そのため、使うマネーの必要量が
増えるからです。

ギリシアでは政府の財政赤字と負債の擬装が発覚した2010年1月か
ら、「銀行が危ない」と感じた預金者の引き出しによって減り始め、
12年3月では85です。実態よりはいい数字を示す公的統計でも、す
でに12年3月で、35%の預金が減っています。

ギリシアの債務危機、つまりギリシア国債の売却が、ECBによる貸
し付けと国債購入で落ち着いたと金融市場が見ていた時期が12年3
月でした。ところがその後、12年4月、5月、6月と、「戦争が起こ
ったかのように(ギリシア国民の弁)」、預金取り付けが激しくな
っています。

誰も言いませんが、12年6月時点では、ギリシアの総預金の50%は
減っているでしょう。引き出せない人は、ローン負債がある人です。
物価が数十倍以上に上がるハイパー・インフレになった国以外では、
どの国も経験したことのない規模の、金融システムの崩壊が生じて
いるのがギリシアです。

●ギリシア政府では、すでに財政支出(公務員報酬、年金、医療費、
公共事業費等)において、支払いの遅れが生じています。このため
ECBは、秘密裏に、ギリシアの政府と銀行に、資金供与(1000億
ユーロ:10兆円)を行っています。

(注)ハイパー・インフレでは、通貨の購買力が無価値になるため、
預金の全額引き出しが伴います。引き出した現金で、人は争って商
品を買い、価格を上げます。翌日には数%価格が上がるからです。

以上は、欧州中央銀行(ECB:最後の貸し手)が、ギリシアの総預
金の減少を補う額である20〜40兆円くらいのユーロを、新規に、ギ
リシアの銀行に貸し付けねばならないことを示しています。

ユーロの実体で言えば、ドイツ中央銀行(ECB本部)が、ギリシア
の銀行に、20兆円の規模の追加貸し付けを迫られているということ
です。(注)ギリシア中央銀行は、ユーロ本店(フランクフルト)
の支店であり、ユーロの発行はできません。

●これは、もっとはっきり言えば、ドイツ国民が所有する金融資産
を、ギリシアに提供することです。提供と言うのは、貸しても返っ
てくることはないからです。

(注)ドイツ国民の金融の実質資産は、ギリシアに提供した分減り
ますが、中央銀行のECBには、無から作ったマネーを貸し付けた資
産(対ギリシア債権)が残ります。これによって、貸し付けたECB
が破産後のギリシア経済を支配します。

貸付けた銀行(欧州中央銀行:ECBフランクフルト本店)が、倒産
した企業の残余の資産を得る「屍肉に群がるハゲタカ金融」になる
ということと同じです。

ハゲタカ・ファンドの方法はLBO(相手資産を担保にした借入で買
収する)でした。ユーロを増発するECBの上にはBIS(国債決済銀
行)が居ます。

【マネー発行におけるシニョレッジの特権】
通貨が増刷されたとき、通貨の価値の低下で実質損を受ける国民と、
無から資産を得る中央銀行の利害は、反します。

国民の金融資産の損の分が、中央銀行の、通貨発行による資産の増
加という利益になると言っていいのです。コストゼロで発行した通
貨で国債を買えば、その国債(金融資産)は中央銀行のものになり
ます。

(注)徳川幕府は、金の含有量の多い小判を1両で回収し、銅や銀
を混ぜて2両に改鋳して再発行していました(通貨量は2倍に増加)。
これは国民から一両につき0.5両の税を徴収したことと等しい。1
両の価値は金の含有が半分に減って0.5両分になった。これが、物
価が2倍に上がることです。改鋳後の1両では、それ以前の商品の半
分しか買えなくなった。これが通貨増発による国民の金融資産の掠
奪です。ところが通貨の1両は1両のままです。見えない掠奪です。

ドイツ国民は、ユーロの印刷によって自分の金融資産から掠奪され
た価値に気がつかない。中央銀行が、無からマネーを印刷できると
いうのは嘘です。

中央銀行は、マネーを増発した分、広く浅く、国民の金融資産の価
値をかすめとることできます。これが通貨の増発です。ケインズは
「戦費調達はマネーの増加印刷」によるほうが、増税より容易と言
っていました(『戦費調達論』)。ユーロ危機は、政府が国民のマ
ネーを借りて使う戦争ではありませんが、通貨発行の面では、戦争
に似ています。

通貨発行は、シニョレッジ(seigniorage)の特権(領主の特権)
とも言います。通貨を増発した分、国民の金融資産(資産の源泉)
から、中央銀行が発行利益をかすめ取るのです。

(注)通貨の増発によって、それとは知られず国民の金融資産から
利益(価値)をかすめ取るシニョレッジの特権については、一般に
は知られていないので別の論考を書いて論証する必要があると思っ
ています。

●ECB(欧州中央銀行)の通貨増発は、ドイツ国民(世帯と企業)
の金融資産が、その分、希薄化することです。ECBが、通貨の増発
分、ドイツ国民の金融資産を希薄化し、それをPIIGSに貸し与えて
いるのです。希薄化とは、モルト(原酒)を水で割って、通貨の濃
度を薄めることです。中央銀行が行う通貨増発については、以上の
本質が語られません。

ECBがユーロを刷って貸さないと、どうなるか? ギリシアの政府、
銀行、企業、世帯は、債務の返済と利払いするお金がないので、デ
フォルト(ギリシア国債、企業債務、世帯債務の無価値化)が起こ
ります。

これは、貸しているフランス、ドイツ、英国の銀行、及びPIIGS債
のCDS(債務回収保証保険)を、100兆円も引き受けている米銀の純
損になります。こうした、銀行の純損を避けるために、ECBが、ド
イツ国民の金融資産を希薄化するユーロを刷って、銀行に貸し付け
るのです。

(注)ユーロの希薄化は、円とドルに対するユーロの価格低下で、
現れています。1ユーロ160円だったものが100円なれば、ユーロは
37%薄まったということです。

【米銀の損は、デリバティブ】
健全とされていた米銀JP・モルガンの、決済期限がきたCDS(債務
回収保証保険)による巨大損($500億)も発覚しています。

これを含み、米銀19行では、5兆円($600億)の自己資本不足が生
じています(ロイター)。

加えて、PIIGS債と、他の国債や債券も複合的に組みこんだCDO(債
務担保証券)の損失は、一体何が入っているのか複雑すぎ、誰もわ
かっていない。

CDOは、いろんな種類の債券(各国の国債、ローン債権、住宅・不
動産証券など)を混合して、それらの債券から生まれる毎月のキャ
ッシュフロー(償還金と金利)を、優先・劣後の構造で受けとるこ
とができるようにしたデリバティブ(金融派生商品)です。08年の
米国金融危機は、このCDSとCDOの高騰でした。保証料が上がったの
です。

優先債は、償還金を最初に受けとることができる証券ですから、金
利は低い。他方、劣後債(エクイティ債)は、最後に償還金を受け
とるので、金利は高い。

AIGの破産とリーマンッショクを生んだ、サブプライム・ローンの、
CDSやCDOと同じです。こうしたCDOやCDSを、PIIGS債に対して100兆
円かかえるのが米国の大手金融機関です。

CDOの他には、CDS(保証保険)を複合化した「シンセティックCD
S」もあります。21世紀金融は、債券のままの購入や売却ではない。
複合化され(ちゃんこなべのように混合され)、証券化されている
のです。

2011年12月末の、世界の銀行間でやりとりされているCDSの対象債
権の残高は、$28.6兆(2288兆円)と巨大です。そのCDSの価格
(売買される流通価格)は、$1.6兆(128兆円:対象債券の5.6
%)でした(BIS統計)。
http://www.bis.org/statistics/otcder/dt1920a.pdf

平均で言えば、1億円で買ったCDSは、[1億円÷5.6%≒18億円]
の、債券の償還と利払いを、その売り手が保証しなければなりませ
ん。

そして、その債券のデフォルトリスクが2倍の11.2%に高まると、
そのCDSの価値は、2倍の2億円に上がります。例えばギリシア債の
デフォルト(債務不履行)のリスクは30%(3.3年内にデフォルト
を示す)に上がっています。

【米欧によるグローバル金融は、デリバティブ】
21世紀に大きく進んだ世界金融の連鎖構造のため(これをグローバ
ル金融と言う)、PIIGS国債の下落危機(=金利の高騰)は、同時
に、100兆円のPIIGS債をCDSで保証している米銀の危機にもなりま
す。

対外貸し付けが多い英国の銀行も、同じでしょう。英国の金融部門
は、英国GDP(208兆円:08年)の2.2倍の債権・債務(460兆円)
もつからです。

2012年7月から華やかに開かれるロンドン・オリンピックの裏で、
英国がもつPIIGS国債(PIIGS債の発行総額は400兆円)をめぐり、
どろどろの損失が生じます。英国(ロンドンのシティ)は、海外か
らマネーを集め(借りて)、それを海外向けの貸す金融をしていま
す。

政府と銀行の、事実上のデフォルトはアイルランド、ポルトガル、
ギリシアに続き、スペインに波及し、すでに、PIIGS5ヵ国のうち、
4ヵ国に及びました。

「事実上の」という理由は、欧州中央銀行(ECB)とIMF(国際通貨
基金:世界の拠出金が資金)による資金貸付がないと、政府と銀行
の債務の利払いと返済ができなくなっているからです。

【日本の銀行と円】
ただし幸い、日本の銀行は、こうしたCDSやCDOをわずかしか、抱え
ていません。円国債が、ヘッジファンドの投機買い(の対象になっ
ています。2012年6月で海外ファンドがもつ円国債は68兆円(発行
残の8%)に増加したのです。

「政府負債は世界最大でも、円はまだ大丈夫だ。」という認識から、
ユーロ売り・ドル売りと、円買い(=円の高騰)が起こっています。
日本国債の長期金利は、この円債買いのため、0.8%付近の最低金
利に低下してます。

(注)ヘッジフ・ァンドは円債を長期で保有することはない。短期
の売買です。ヘッジ・ファンドが円債を売る時、円安とともに日本
の金利も上がります。

【米ドル】
米ドルは、ユーロから避難するドル買い(=ユーロの売り)、及び、
新興国からのドル買い、及びヘッジ・ファンドによる新興国からの
ドル引き揚げが続いているので、上がっています。

これは米国債の金利低下という意味でもあります(10年債の金利1.
64%:12年6月)。

●2011年以降、PIIGSの債務危機(=ユーロの通貨増発による悪化、
希薄化)から、ユーロが、価値が信用される国際通貨の位置を滑り
落ちたので、代わりに(皆が買う)米ドルへの避難が生じていると
いう、消極的なドル高です。

【預金取り付け】
ギリシアで、預金取り付けが現在進行形である理由は、ギリシアが
ユーロから離脱を迫られ、離脱する日になると、今はユーロの預金
が強制的に新ドラクマの預金に振り替わるからです。

1ユーロが1新ドラクマの公定レートで交換されたとします。こうし
た通貨の変更は、当日まで極秘で運ばれます。*月*日からとすれ
ば、その前に、銀行預金が全額引きだされるからです。

政府は、預金封鎖をせねばならなくなる。預金が、ごく一定額しか
引き出せない封鎖がされると、企業や世帯は払うお金がなくなるの
で、経済活動の停止が生じます。

債務が払えずデフォルトしたギリシアのドラクマは、為替市場で売
り浴びせに合いますから、すぐに、2ドラクマが1ユーロに下がるで
しょう(大方の予想)。

当方、1/3以下に下がると見ています。もっと下がるかも知れませ
ん。

他方で、ギリシアのユーロ建ての現在債務は、ユーロのままです。
ドラクマが1/3に下がれば、ドラクマから見て3倍の金額に増えた
ユーロ建ての債務を、ギリシアが払えるはずもない。

ユーロに属しているとき3000万円の価値(=商品購買力)があった
ギリシア国民と企業の預金が、1/3の1000万円に下がって、預金者
は大損をします。

(注)ギリシアの再選挙(6月17日)で、連立与党が過半数を占め
たから、ギリシアが債務の返済と利払いができるということではな
い。どの政党が、政府与党になっても、「払うお金がない」状況は
変わりません。

誰でも、自分が破産するような損をするのはいやですから、ユーロ
のうち引き出し、ユーロ札またはドイツやスイスの銀行への預金に
しておこうとします。預金者の資産防衛です。これが、ギリシアや
スペインにおける預金取り付けです。

●ギリシア政府と銀行は(スペインも同様)、ECB(欧州中央銀
行)からの緊急貸付がないと、すでに、破産しています。ただし、
ギリシア債の不良化の金額(想定40兆円)は、ユーロにとっては、
救済可能な額でしょう。

問題は、国債金利が6〜7%に上がって、デフォルトリスクが高まっ
ている債務大国のスペインです。

以降では、ギリシアの約5倍の、政府と民間の債務(400兆円)をも
つスペインを見ます。スペインは、政府債務はGDP(110兆円)の
65%と少ないのですが、世帯と企業の債務がGDPの3倍(300兆円)
もあります。

●ギリシアとスペインの銀行から抜けた富裕者の大口預金は、ドイ
ツ国債の買いと、スイスの銀行へのスイスフラン預金(=ユーロ売
り・スイスフラン買い)になっています。世界の預金(8000兆円)
の50%付近は、最上位数%の富裕者のものです。

このため、ドイツ国債の金利は下がり(長期債で、米国並みの1.
63%:12年6月)、スイスフランは上がる傾向です。(注)円の損
失回避も、スイスフランでしょうね。

【2012年の必然】
結論を言えば、数値で詰めると、スペインのデフォルト(債務不履
行)は、100%の可能性で、決定しています。このため、ECBのユー
ロ印刷も、必然になります。

加えて、CDSとデリバティブで損をしている米銀(JPモルガンの
CDSでの損が先駆けて発覚)の救済のために、米国FRBも、近々、ド
ル紙幣の印刷(QE3という量的緩和)を行うでしょう。

●ユーロの債務危機の金額は、08年9月のリーマンショックでの債
務危機の2倍の金額にはなるでしょう。スペインに続き、GDP比で
120%の政府債務(270兆円)のイタリアも含まれるからです。イタ
リア国債も売られていて、長期金利はスペイン並の7%に高騰して
います。ユーロは、全面崩壊への状況を呈しています。

国債の金利で7%は、(国債を増発すれば更に金利が上がるため)
新規国債が発行できず、もともとが赤字の政府予算の支払いができ
なくなって、ECBが貸さねばならないことを意味してます。

予想ではない。必ずそうなるという必然です。国の債務問題は、経
済が成長し、返済できる税収が増えないと解消しないからです。

通貨を増発するFRBも、ECBの上にあるBIS(国際決済銀行)と同じ
く民間銀行の資本です。以上で、若干長いプロローグを終わります。

以下の目次は、引き続き送る次稿のものです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<Vol. 276:ギリシアとスペインの債務問題は、
ユーロ崩壊への道程>
2012年6月25日

【目次】

1.回復が不可能なスペイン債務問題
2.ギリシアに続く、スペインの銀行預金の取り付け
3.スペインの債務は、ユーロにとって大きすぎる
4.外為売買が自由な時代の、通貨の増発の結果
5.スペインの債務問題の結論
6.ユーロ共同債の発行という方法はない
7.じゃ、どうなるか

【後記:ユーロ崩壊と中国と日本の輸出】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【後記】
昨年の8月に書いた拙著『国家破産』は、ユーロ危機が高まると、
売れる冊数が増えるという妙な動きをしています。

当方、不本意ですが、破産本に分類されているのでしょう。中身は、
2000年代に、対象資産が6京円(世界の金融資産の4倍)にまで巨大
化した、デリバティブを含む国際金融の仕組みとその行く末を書い
ています。PIIGS債への、ドイツ、フランス、英国、米国への投資
も、デフォルトリスクを保証するCDSがあったからこそ、巨大化し
ています。米国のサブプライムローン証券の購入と同じでした。

「他人が書いたものとして」改めて拾い読みしてみると、ほぼ1年
後の現在を予測しています。経験がある人はお分かりでしょうが、
1年も前に書いたものは、「自分が書いた」気がしないのです。
人々と意味を共有する言葉というものの不思議さです。

ユーロ現在の展開は、1年前から書いています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。
以下は、項目の目処です】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点、ご意見はありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ
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【有料版の最近号の目次】

<596号:ユーロ危機の、今後の展開>
2012年5月30日号
【目次】

1.ECBは、秘密資金1000億ユーロも、ギリシアに注いでいる
2.中央銀行の信用創造の効果は、定量的にどこまでか?
3.日銀は142兆円でGDPの30%の信用を供与
4.外人ファンドが買っているため異常に低すぎる日本国債の金利
が、
近い将来の、国債危機を招く
5.低金利の国債は、将来が危機
6.ユーロのECBの、信用創造額に、限界が近い
7.重要:国際金融での変化
8.スペイン救済は、ECBには無理である
9.ユーロからの離脱しか方法はない:最終結論
10.中央銀行による、マネー増発の元は何か?

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コメント
 
01. 2012年6月27日 12:36:31 : 3CNLte9sGM
2012年6月26日:Vol.277   

<Vol.277:特別号二弾:
ギリシアとスペインの債務問題は、
ユーロ崩壊への道程(2) >

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  著者:Systems Research Ltd. Consultant 吉田繁治
45,567部


おはようございます。昨朝に続き、<ギリシアとスペインの債務問
題はユーロ崩壊への道程(2)>をお届けします。本シリーズは、
3回で、それぞれA4 10ページくらいを送ります。最初、時局への論
説です。

■時局への論説:消費税の増税

日本では、今日(12年6月26日)、2014年に8%、2015年に10%への
消費税増税法案が、野党である自民・公明の賛成を得ていますから、
民主党内の造反があっても、衆院で可決されます。(まだ結果は見
ていませんが、そうなるでしょう)

自民・公明は消費税増税を10%に上げることを選挙の公約にしてい
ました。国民にとって意味がないあれやこれやの政局的な思惑(行
政権力への関与の争い)があっても、増税を公約していなかった民
主党が逆提案したとき、自民・公明は、反対はできなかったのです。

次の焦点は、民主の執行部への造反議員が、54名付近の離党や党内
野党になり、今通常国会内に(12年8月まで)、内閣不信任案が通
るかどうかです。野党勢力が多数になり、不信任案が通れば、野田
内閣は総辞職か、衆院の解散を行わねばならない。

●しかし、現在の議員(衆院485名)にとって、政党にかかわらず、
任期まで議員であり続けることが、政策をはるかに超えた最大の関
心時です。民主党は、3年前のブームで当選した100名くらい、自民
も50名くらいの議員は、選挙区での支援のメドがなく失職におのの
いているでしょう。情けないことです。(注)議員の報酬は、秘書
等の関連費や交通費の恩典を含むと1人が1億円です。

失職への恐怖の力学が、管内閣と野田内閣の政治を動かしているも
のです。前首相や現職の野田首相ですら、次回選挙では、当選がお
ぼつかない。政策の争いは、名目上の付け足りです。このため、任
期途中での解散は、何をどう誤魔化して、避けたいというものです。

民主党は、40兆円付近とされている特別会計の埋蔵金(=剰余金)
の一般会計への利用と、特別会計と一般会計の予算のムダを削減す
る「国民の生活第一」というビジョンを掲げ、消費税の増税は避け
ること、あるいは、先延ばしができるとしていました。

【一般会計の赤字】
2012年度の一般会計の支出は、90兆3339億円です。収入は所得税
13.5兆円、法人税8.8兆円、消費税10.4兆円の税金であり、総計
で42.3兆円(支出の47%)です。

足りない分が長短の国債44.2兆円の発行です。
おな東日本大震災と原発問題の復興で必要なものは、一般会計に加
わる補正予算です。
http://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/gakushu/kyozai02/pdf/05.pdf

【2012年度の国債発行予定】
2012年度(13年3月まで)の国債発行予定は、新規に44.2兆円(前
年も44.2兆円で同額)です。加えて、復興費が2.6兆円、特別会
計の財投債が15兆円、合計で61.8兆円です。これに、満期が来た
分の借り換え債(=返済の引き延ばし)が112兆円が必要です。総
計で、174.2兆円です。

財務省の引き受け予定見込みでは、金融機関による市中消化が154.
5兆円、個人向けが2.5兆円、そして、市場が引き受けきれないため
の日銀買い受けが16.7兆円もあります。
http://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201202f.pdf

【日銀引き受けが16.7兆円】
問題は、民間が引き受けきれず、日銀引き受けになる16.7兆円です。

日銀引き受けを減らすため、(闇雲に)消費税の5%増税(増加税
収10〜12兆円)が企図されたと見ていいでしょう。闇雲とは、「先
の経済は知らない。当面を凌(しの)ぐのが先決。」ということで
す。

08年9月のリーマン・ショックの、2倍の金額の、金融機関の不良債
権になることが想定できるユーロ危機から、世界不況が想定できる
2013年、2014年に向かい、経済(購買と投資)を縮小させる効果を
もつ増税を決定するのは、当方、「いかにもまずい」と見ています。

現在と、数年間の経済を見れば、橋本内閣が、3%の消費税を上げ
た後(3%→5%:1997年〜)より、ひどくなります。

【今後20年、1年に3兆円は増え続ける高齢化予算】
一般会計と特別会計の二重計算を引いた純計での、高齢化予算(医
療費33.6兆円、介護費・福祉20.5兆円、年金53.6兆円)の合計は
107.8兆円です(2011年度)。

この合計は、1年に3兆円(消費税では1.5%に該当)増えます。
消費税を5%上げても、3年分の増加を賄えるだけのものです。

65歳以下の労働人口の減少と、65歳以上の完全退職者の増加で、
GDPが減る傾向がはっきりする3年後、5年後のことは、「誰も考え
ていません」。その意味で、政府の政策は、闇雲です。3年はすぐ
来ます。もう21世紀になって12年も経ちました。

【財務省の危機意識はどこにあるか?】
財務省の危機意識は、日本国債の購入において、ユーロ危機の
2011年から急増した、海外ヘッジファンド(特に英国経由)です。

●国を超えた国際マネー・フロー(通貨と債券の売買によるお金の
流れ)を見ると、2012年の第一4半期(1〜3月)では、英国の金融
機関とヘッジファンドから、$8365億(67兆円)もの、日本への資
金流入があります。主なものは、満期3ヶ月内の、円短期国債の買
いです。これが円高の原因です。

PIIGSの債務危機が大きくなった2011年から顕著になった海外から
の日本国債買い(=ユーロから日本へのマネー避難)が、日本の国
債の金利(10年物の長期債で0.8%水準)の急低下、つまり、円国
債高騰と、円高の主因になっています。

短期債は、3か月以内で満期償還があります。3か月で67兆円の買い
を[海外ファンドの持ち分の純増]と見ることはできません。純増
分では、3カ月で10〜15兆円規模でしょう。

●1年に174.2兆円の円国債の引き受けに問題が起こるのは、2011年
から通貨ユーロと、PIIGS債を売って、円国債を買い越してきた英
国の金融機関とヘッジファンドが、日本国債の売りに転じたときで
す。

(注)ヘッジファンドの手法は、少額の資金で30倍以上のレバレッ
ジがかかる空売り、先物、オプション、及びCDSの売買です。

▼買われてバブル価格化した日本国債の、下落リスク

実際にこれが起こると、現在0.8%付近の円の長期金利は1%は上昇
し、10年もの国債は8.5%も価格が下がります。1兆円の長期債の市
場価格が9150億円に下がって、1兆円の長期債をもつ金融機関には
850億円の含み損失が生じることです。

いったん、超がつくくらい低い国債の金利が上昇を示すと、国債保
有者の金融機関には、含み損が増えるという不安から、先に売って
逃げようとする動きが出ます(必ずこれが起こります)。

こうなると、ほぼ3か月内で、金利は2%、3%と上がり、金利の上
昇は、国債価格の下落であるため、手持ちの国債売りに拍車がかか
ります。過去の経験的な事例では、下落不安からの国債金利の高騰
は、ほぼ6ヶ月内に起こっています。

こうした金利の上昇と価格下落が、「国債リスク」です。10年債で
も0.8%付近という超低金利のため、「あとは、金利が上がるしか
ない」とみなされつつあると思えます。実際に、自分が長期国債を
1億円持っていれば、この心理が了解できるはずです。

日本国債の価格は、2010年までは買わなかった海外から買われ、バ
ブル化しています。2011年、12年の50兆円規模の新規債の大量発行
にもかかわらず、国債金利が1.3%付近から低下している主因は、
このヘッジファンドからの買い増しです。

(注)国内での、新規債の引き受けの限界は、現在、1年30兆円水
準でしょう。ただし、経常収支の黒字の減少のため、この引き受け
限界は減る傾向です。

▼金融機関の想定損

長短を合わせると、政府部門の債務は、1050兆円を超えています。

海外ヘッジファンの買い越した円国債が売り超に転じ、市場の長期
金利が1%(ポイント)上がると、約8%の長期債の市場価格の下落
になり、50〜80兆円の含み損が金融機関に生じます。

そうなると、海外と日本の債券市場で売られる国債を、一手に日銀
のみが買い支えるという、追い込まれた「マネタイゼーション」、
つまり、円通貨の増発に向かいます。

(注)2011年〜12年のユーロのようになります。PIIGS債の問題は、
PIIGS5カ国が、国債の追加発行ができないため(2012年は4月から
市場の買い手が消えています)、ECB(欧州中央銀行)がPIIGS債を
買い、金融機関にマネーを注入するしか方法がなくなっています。

以上が、1年に174.2兆円の国債を発行できなければ、政府の支払い
に遅滞が起こる財務省の危機意識です。

【財務省による、野田教育】
野田首相は、財務省の勝次官から、以上を縷々(るる)聞かされ、
「ユーロ化を防ぐには、何が何でも、消費税の増税」となったはず
です。

国債の売り手(財務省)は、2011年からの安定した持ち手ではない
海外ヘッジファンドからの買い増しに、不安を感じています。

【円安も、日本国債のリスクになった】
現在のところ、円短期債を買った海外ヘッジファンドは、金利では
なく「円高」で利益を得ています。

しかし、もし$=85円の円安に向かうと、80円平均の円高の時期
(2011〜2012年)に買った円国債には、ドルベースでは1年0.8%の
受け取り金利をはるかに超える、6%の為替差損が出ます。

【円安という逃げ道が消えた日本経済の懸念】
海外が国債を買い越しているという事情のため、2012年からは「円
安」で輸出振興という選択肢はなくなっているのです。

財務省がドル債を買い、円安に向かうと見られれば、ヘッジファン
ドが買い越してきた円国債を、損を恐れ、売りに出すからです。

以上で、わが国の時局評論を終わります。次は、ギリシアとスペイ
ンの債務問題はユーロ崩壊への道程(2)>です、数年後の日本に
対比できるでしょう。

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<Vol. 276:ギリシアとスペインの債務問題は、
ユーロ崩壊への道程>
2012年6月26日

【今回の目次】・・・本稿は3まで

1.回復が不可能なスペイン債務問題
2.ギリシアに続く、スペインの銀行預金の取り付け
3.スペインの債務は、ユーロにとって大きすぎる

【次回の目次】
4.外為売買が自由な時代の、通貨の増発の結果
5.スペインの債務問題の結論
6.ユーロ共同債の発行という方法はない
7.じゃ、どうなるか

【後記:ユーロ崩壊と中国と日本の輸出】

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■1.回復が不可能なスペインの債務問題

▼スペインの債務

スペインは、GDP(110兆円:08年)の3.6倍の、官民の債務をかか
えている借金大国です。政府の債務が80兆円、金融機関の債務が
85兆円、民間企業の債務150兆円、世帯の債務82兆円で、合計397兆
円(約400兆円)の債務残があります。

2008年頃までのスペインは、債務が積み上がりながら、バブル景気
でした。投機的に買われた住宅と株の値上がりが大きく、家計も企
業も、バブリーな資産リッチになっていたのです。

1990年までの日本に似ていました。違う点は、日本は国内のマネー
でバブルが起こり、スペインは海外(独仏英米)からの借金と投資
からだったことです。

年収300万円(3万ユーロ)の世帯に、全平均で3.6倍の1080万円の
借金があると例えれば「利払いも返済も無理」ということは了解で
きるでしょう。スペインの金利は、最も低い国債でも約7%に上が
っています。政府より信用度が低い世帯や企業が借りれば、10%を
超えるでしょう。

上がった利払いだけでも、いずれ、[1080万円の借入金×10%=
108万円]になり、世帯の平均収入300万円(3万ユーロ)の30%に
もなります。企業も同じです。借りた借金の利払いと返済は、売上
が3倍にならないと不可能でしょう。

(注)実際は、借金のある世帯は、全世帯の50%程度です。そのた
め住宅ローン借金の平均額は上記の2倍の2160万円です。金利が10
%なら、300万円の年収で、216万円の利払いです。まるで不可能で
す。世帯が利払いができないローンは、銀行の不良債権になります。

企業も同じです。売上収入が、今の3倍にならないと利払いができ
ない。企業の売上が3倍になるということは、スペインの名目GDPが
3倍になるということです。

ところが2012年、13年のスペインのGDPは、当然に、数%のマイナ
ス予想です。世帯も企業も所得が減るため、借金の利払いができな
い。つまり、スペインの債務は、ほぼ全部がデフォルトします。

ユーロに属したため、生産性を超えて賃金が上がりすぎたことが主
因の失業率は24%と高く、ギリシアの22%を超えて世界で最高です。

4人に1名が失業し、25歳以下では、要求賃金を1/2くらいに下げな
いと半分の人が働く場所がない。これでGDP(≒世帯所得+企業所
得)が伸びるわけもない。逆に縮小です。

▼南欧の不動産バブルの、同時崩壊

スペインでは、ユーロ加盟のあと、2.5倍に上がっていた不動産バ
ブルの崩壊が生じています。ユーロ加盟前の2000年の住宅価格を
100とすると、2008年には、全国平均でも250(2.5倍)に上がって
いたのです。完全な不動産バブルで、このために、世帯と企業の借
金が増え続けました。

【住宅価格】
2000万円の普通の住宅が、平均でも5000万円に上がり、元々の資金
は海外から銀行に来たローンで、世帯が買ったということです。

250という価格は、全平均です。都市部やリゾートの、人気のある
地域では300〜400に上がった住宅も多かった。

(注)PIIGSで資産バブルがもっとも激しかったアイルランドの住
宅価格は、1995年の6倍にも上がり、2008年から暴落しました。

2012年現在で、スペインの住宅価格は(スペイン政府の公的な統計
で)180付近に、28%下げています。住宅価格は、近々、100に戻り
ます。もっと下げて1995年の価格(70以下)に下がる可能性が高い。

ギリシア、イタリア、ポルトガル、スペインという南欧全域の住宅
価格の下落は現在進行形です。新しく住宅を買える人は、スペイン
には極小です。このため、下げは大きくなります。

不動産価格の下落によって、企業と世帯の債務(合計で232兆円)
のうち、最小でも50%(116兆円)は、回収が不可能な不良債権に
なります。

スペインは、住宅と土地価格の下落という要因だけからでも、GDP
(110兆円)に匹敵する不良債権が生じます。これも、確実なこと
です。

政府統計の不良債権は、まだ貸付額の9%に過ぎませんが、これも
明らかな擬装です。(↓以下の36ページ)
http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh12-01/pdf/s1-12-
2-1-1.pdf

日本に例えて言えば、名目GDP(469兆円)の金額に匹敵する住宅
ローンや企業ローンでの不良債権が生じることに等しい。上がって
いた不動産が下がるとローンを抱える企業と世帯は、破産します。
この寸前にあるのが、スペインです。

銀行はローンの返済と利払いを猶予していますから、企業と世帯に
破産が生じていないだけのことです。このため、銀行が資金不足で
破産します。

スペイン債は、下落の予想が多いため、市場で売れません。
政府も国債を発行して、銀行に資金を入れる手段がない。

日本の債務問題は、GDPの2.2倍(1050兆円)の、政府部門の債務
です。世帯や企業の債務は、少ない。

スペインでは政府より、世帯と企業の債務が多い。このため、ECB
がスペイン国債を買う程度では、スペインは救われないのです。

▼対外債務はGDPの171%(188兆円)

政府の国債より民間企業の債務(150兆円)、世帯の住宅ローン債
務(82兆円)が多い。それに、統一通貨ユーロへの加盟以降に
(2000年から)、ドイツ、フランス、英国から借りた対外負債が多
い。

●スペインはGDPの171%(188兆円)がドイツ、フランス、英国、
オランダなどから借りた対外債務です(世銀統計)。GDPの1.7倍
の対外債務は、日本に例えて言えば、469兆円(GDP)×1.7倍=
800兆円の対外債務を抱えていることに等しい。

「利払いと絵返済は、とても無理だ」と誰にも分かる額です。

対外資産(582兆円)から対外債務(329兆円)を引いた対外純資産
が253兆円の日本とは、異なります(11年12月末)。こうした対外
純資産の構造をもつのは、日本、ドイツ、スイス、中国です。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/
2011.htm

■2.ギリシアに続く、スペインの銀行預金の取り付け

スペインの民間銀行の預金は、1兆6250億ユーロ(162兆円:12年4
月:ECB統計)です。この預金は、2011年央から、毎月ほぼ1%の
ペースで減少し、今までに約10%(1600億ユーロ:16兆円)減って
います。

ECBの統計では、2012年4月だけで、総預金の1.9%が流出したとし
ています(ロイター)。銀行預金の取り付けで、ギリシアを追って
いるのがスペインです。この預金減は、ECBの公的統計です。

財務大臣は、「スペインに預金とりつけは起こっていない」と否定
しています。預金が大きく減ったデータは出せません。逆に増えて
いるデータを出す。その中に、ECBからの借入増が含まれても、で
す。

●実態では、上記の公的統計をはるかに上回る預金取り付けが起こ
っていると見ます。推計で公的統計の3倍(30%:48兆円)の預金
の減少でしょう。

ギリシアが政府債務を擬装していたように、南欧政府にとっては、
こうした擬装は稀(まれ)ではない。

財政再建の政府計画も、信用に値しません。
数ヶ月後には、変更することを続けています。

■3.スペインの債務は、ユーロにとって大きすぎる

スペインの債務の規模は、ギリシアの5倍(約400兆円)です。

預金者は、ギリシアについで、スペインも、ユーロ離脱を迫られる
恐れを感じています。ペソに戻れば、ギリシアのドラクマと同じく、
預金者が大損をするからです。スペインでもギリシアのように、預
金取り付け(Bank Run)が進むことを防ぐ手だてはない。

政府による預金封鎖やペソ回帰の噂が立てば、預金者の取り付けは、
一層勢いを増します。自分が、スペインの銀行にユーロで預金して
いると想定すれば、簡単にわかるでしょう。

預金取り付けが進めば、スペインの債務(400兆円)のほとんどが、
不良化します。銀行の金庫は、ほぼ5%の預金減で枯渇します。

銀行が、預金者からの引き出しに応じるには、ECBがユーロを貸し
付けるしか方法はない。それがないと、銀行窓口の閉鎖です。

EU(欧州経済連合)では、スペインの銀行に対する数兆円の資本提
供が検討されていますが、足りるはずもない。

ユーロに属するままでも、ユーロから離脱しても、EU(欧州経済連
合)にとっての結果は、同じです。ECBがスペインの銀行に不足す
る資金を印刷し、貸し付けねばならない。

(注)ギリシアとスペインの富裕者の預金は、ドイツとスイスフラ
ンに逃げています。日本からも、もし買うならスイスフランがいい
でしょう。

▼貸しつけた、欧州の銀行の損失

スペインをデフォルトをさせ、スペインの対外債務188兆円を切り
捨てれば、債権をもつドイツ、フランス、英国の銀行、及び、CDS
での保証債務を抱える米銀には、ECBが資金供給をせねばならない。

両方とも、結果は同じであり、要は、ECB(欧州中央銀行)のユー
ロ印刷です。

ギリシアやスペインのユーロからの離脱で、事が解決するわけでは
ない。

ECBは、スペインの銀行に、これから不足する資金(推計200兆円)
を増加印刷し、貸し付けができるのか?

【LTRO枠は1兆ユーロ】
昨年12月と今年1月のLTRO(国債購入と3年物長期資金の供給オペ)
の金額枠は1兆ユーロ(100兆円)でした。ECBは、無条件で、即時
に資金が不足する銀行に貸し付けをすると表明したのです。

LTROとして100兆円というECBの発表によって、一時的には(12年2
月〜3月)、ユーロはPIIGSの債務危機を脱出したと見られたのです。
このため、世界の株価も上がりました(12年2月〜3月)。

しかしPIIGS債の下落対策に、1兆ユーロでは足りなかった。足りな
い資金しか準備しなかったのは、EUが、PIIGSの不良債権を、見積
もることができなかったからです。

加えて、その後の原因は、2つです。

(1)外為売買で、ユーロの銀行から、ドルと円に向かってユーロ
資金が脱出したこと。ユーロ売りによるユーロ安、円買いによる円
高です。
(2)ギリシアとスペインで預金取り付けが起こり、銀行の資金が
減ったこと。

つまり、ユーロの銀行に貸したECBのマネーは、ユーロ売りと預金
取り付けによって、抜けてしまったのです(12年4月〜)。

以上で、第二部を終わります。次稿は、また、すぐに配信します。


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02. 2012年6月27日 13:19:17 : 3CNLte9sGM
2012年06月26日
第18回 リスクは、定義できればリスクではない

マネックス証券が四半期ごとに実施している「MONEXグローバル投資家サーベイ」というものがある。マネックスグループの拠点がある日本、香港、米国の個人投資家にいくつかの質問をして、その回答をまとめるものだが、今回のサーベイでは興味深い結果が見られた。「投資判断にあたり最も関心のあるトピックは何か」との問いに、各地域の投資家とも「欧州債務問題」を1位に挙げた。さもありなん、という結果で特段驚くに当たらないが注目すべきはその回答比率だ。

全回答の中で「欧州債務問題」との答えが占めた比率は、日本と香港の投資家による回答については半数を越えたのに対して、米国の投資家の回答率はその半分の30%程度で、次点の「米経済」と大差がなかった。日本と香港の投資家にとっては「欧州債務問題」が群を抜いた大きなリスクとして意識されているのに対して、米国の投資家にとってはそこまで大きく関心を寄せる対象ではなく自国経済の状況と同程度の注目材料ということだ。

これ自体はいい。しかし、この結果を踏まえて、次の質問に対する回答結果を見ると首を捻ることになる。その次の質問とは「欧州債務問題は2008年のような深刻な金融危機に発展すると思うか?」というもの。これに「はい」と回答した比率は、米国の投資家が74%と断トツに高かったからである。「深刻な危機に発展する」と考えているのに、関心はあまり高くない。一見、矛盾するように思えたが、合点がいった。

こういうことなのだろう。米国の投資家にとって欧州債務問題は既に答えが出ている問題なのだ。「2008年のような深刻な金融危機に発展する」というのが彼らの見方だ。これが当たるか外れるかは問題ではない。そういう見解に至ってしまえばそれに則った相場観を作り、それを前提とした投資戦略を立てるだけだ。「リスクは、定義できればリスクではない」という言葉があるが、それが意味するところは「不確実なもの」こそがリスクであるということだ。欧州債務問題の帰趨が(自分たちのなかで)決まってしまえば、それは(少なくとも彼らにとって)もはやリスクではない。従って、関心度合いも高くないのだ。

これは「噂で買って事実で売る」ということと同じ感覚である。事実が明らかになってしまえば相場は一旦終わり。「不確実なもの」こそがリスクならば、「確実なもの」になったらもうリスクではない。すなわち、その時点ではリスクを取る代償として得られるリスクプレミアムは消失している。よって、もはやそのポジションを持つ意味はないのである。最近の米国のマーケットを見ていると、この「噂で買って事実で売る」という相場格言が活きている、と思う。スペインの金融支援が決まった時。ギリシャの再選挙で緊縮推進派の旧与党が勝利した時。いずれもポジティブなニュースだが相場は下げた。それまでに上がっていたから利益確定売りが出たのである。先週も、格付け会社ムーディーズによる金融機関の格下げ観測から大きな下げとなったが、実際に格下げが発表されたら金融株に買い戻しが入って相場が反発するということがあった。すべて「噂で買って(売って)事実で売る(買い戻す)」の動きである。こうしたところが相場の機微・醍醐味であり面白さだと思う。


(チーフ・ストラテジスト 広木隆)

前の記事:第17回 相場の景色を変えるには −2012年06月12日


03. 2012年6月27日 13:24:32 : 3CNLte9sGM
http://diamond.jp/mwimgs/9/3/600/img_932d7acef933711d5ef8ac1b35a8e22b7832.gif
経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
【第67回】 2012年6月27日高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]

“本質”は何も変わらない欧州債務問題 怖いのは経常収支不均衡だけでなく預金不均衡の拡大

――高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミスト

本質は統一通貨を
使うなかでの不均衡拡大
 6月17日のギリシャの再選挙で緊縮財政派が過半数を占め、組閣も行なわれたことで、足元、安堵感が漂っている。ただし、これで問題が収まったものではない。
 欧州問題の本質は、統一通貨ユーロを使用するなかで必然的に生じ得る各国の不均衡拡大にある。筆者が長らくストーリーラインとして議論してきた「ソブリン・ワールドカップ」は、基本的に経常収支の不均衡によるものだった。しかも、その不均衡を調整する為替機能が不在という、制度的欠陥が原因となっている。
 欧州域内の不均衡は、第一ステージとして経常収支の不均衡、すなわちドイツの黒字と南欧を中心とした諸国の赤字拡大の形で生じた。本論のテーマは、その不均衡が経常収支段階だけでなく、第二ステージとして金融面の不均衡に波及した点にある。
2つのステージの不均衡
 以下で、欧州の不均衡構造を概念図で考えることにしよう。そもそも、異なる経済の「実力」をもつ国々が存在するにもかかわらず、単一の通貨を使えば、競争力のある国は経常収支上でますます黒字になるが、競争力に劣る国は経常収支赤字が拡大する。これは、当たり前のことでもある。
 通常、こうした不均衡を調整させる機能を為替が担い、黒字国の通貨が上昇し、赤字国の通貨が下落することで均衡に向かう。すなわち、競争力に劣る国は為替を切り下げ、いわば、「自国製品を安売り」することで黒字を確保し、自動的に調節を実現する。
 しかし、単一通貨の場合、そうした調整機能は働かない。したがって、為替調整に頼らず競争力を改善させようとすれば、自国の物価水準自体を切り下げる必要が生じる。

次のページ>> 市場から不信の目で見られやすいフランス
 緊縮財政による内需縮小がそれにあたり、実際、ユーロ地域のなかではラトビアでは賃金切下げなどの対応を行なった。しかし、そうした対応は理屈上は正しいが、国民の痛みを伴うだけにその実現は容易ではない。
 同様に、単一通貨を用いた場合、健全な国の銀行に預金が集まるが、不安視された国の銀行の預金は流出する不均衡も生じ得る。共通通貨を使うがために、不均衡が一層拡大しやすくなりやすい。
 以上、第一ステージである経常収支不均衡に止まらず、第二ステージである預金の不均衡に波及が生じる。図表1は単一通貨を用いたなかでの不均衡を示す概念図である。

不均衡第一ステージ
「経常収支不均衡」
 最初に、第一ステージの不均衡である欧州地域の経常収支状況を以下の図表2で確認しよう。先の図表1の概念図からも示されるように、ユーロができた1999年以降、経常収支不均衡が拡大していることがわかる。その構図は、ドイツの黒字とPIIGSとされた南欧を中心とする国々の赤字の二極化構造である。
 それは、「ソブリン・ワールドカップ」と筆者が称したフレームワークでは、「勝ち組」として市場評価を高めた黒字国と「負け組」として市場で追い込まれた赤字国とを、さながら遠心分離機にかけるかのように市場で白黒つけさせる状況にある。その遠心分離機の機能を、国の信用力を売買するデリバティブ市場であるソブリンCDSが担うことになった。
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次のページ>> 本当に怖い不均衡の第二ステージは「預金」
市場から不信の目で見られやすい
イタリア、そしてフランス
 図表2でPIIGS諸国とはまさに、経常収支赤字が拡大傾向を続けた国々であり、「ソブリン・ワールドカップ」の最大の戦力が経常収支であったことがわかる。
 足もと、深刻な問題を抱えたギリシャ、ポルトガル、スペインの赤字幅は、縮小に向かっている。ただし、ここで注目すべきは、イタリアの赤字拡大が続くこと、現在PIIGS諸国の一員ではないが、大国であるフランスは、依然イタリアとほとんど同じペースで経常収支赤字が進んでいることにある。
 フランスの2011年の経常収支の対GDP比の数字、▲2.7%は1981年以来最大の水準にあり、すでに2012年6月に金融支援に追い込まれたスペインの水準ともさほど変わらないレベルにまで達している。
 PIIGS諸国のなかで、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインが金融支援を余儀なくされたなか、次はイタリアの動向に市場の注目が集まりやすい。さらに、経常収支赤字の観点からは、フランスにも市場の不信が飛び火するリスクもあるだろう。
不均衡第二ステージ
「預金不均衡」
 不均衡の第二ステージとして、欧州域内の預金の不均衡がある。以下の図表3は、ドイツとスペインをはじめ南欧諸国の預金動向を示す。本論での議論は、不均衡の次元が経常収支に留まらず、金融面、なかでも預金の不均衡として生じる新たな次元に波及したことにある。
 すなわち、域内で共通通貨を使用するなか、簡単に域内で預金移動が生じ、金融面の不均衡拡大が生じることである。国家間の生き残り競争が国債市場で生じたのが「ソブリン・ワールドカップ」で、その重要な尺度が経常収支であったが、銀行が生き残りをかける尺度は預金と言える。以下の表でギリシャは除かれているが、ギリシャの預金の流出はすでに危機的レベルに達している。
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次のページ>> 欧州債務危機における「経路依存症」の難しさ
不均衡への対応としての
財政同盟、銀行同盟
 実物経済における経常収支不均衡問題では、すでにいくつかのマクロバランス改善策が議論されてきた。ギリシャ再選挙でも論点になったマクロ不均衡是正策に、財政緊縮策があった。
 ただし、現実にはその不均衡改善が実現できないなか、さらに金融面で預金の不均衡が生じたことになる。これは、市場の信認を通じた不安が銀行にも波及したことを示す。
 経常収支不均衡に向けた対策として、ユーロ地域の財政同盟(fiscal union)の一環として共同発行債の議論がすでに行なわれている。同様に、最近議論され出した銀行同盟(banking union)の議論は、金融の不均衡拡大に対処する議論として生じたものである。しかし、どちらの「同盟」も議論の途についたばかりである。
欧州債務危機における
経路依存症(path dependency)の難しさ
 以上の不均衡は、基本的に単一通貨を用いたことによるもので、為替調整なき調整には黒字国から赤字国への支援が必要になる。しかし、そうした対応は容易ではないなか、欧州債務問題への対応は長期戦の覚悟が必要になる。
 欧州危機の構造は単純であり、以上の不均衡の存在に尽きる。しかし、一度、つくり上げた制度を前提に議論せざるを得ない、社会学で言う「経路依存症」(path dependency)の難しさが、今日の欧州債務危機の本質である。
 欧州の政策担当者は今、「『白地に絵を描けれ』ば、いかに簡単か」と思っているに違いない。
質問1 欧州危機は、近いうちに終息に向かうと思う?
思う3
思わない 93
どちらとも言えない 4
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04. 2012年6月27日 13:58:55 : 3CNLte9sGM
スペイン、財政赤字削減目指し増税を検討
2012年 06月 27日 09:58 JS

[マドリード 26日 ロイター] スペイン政府は26日、財政赤字削減を目指し、付加価値税(VAT)や、エネルギーおよび不動産関連の増税を検討していることを明らかにした。

スペイン財務省のデータによると、中央政府の1―5月の財政赤字は対国内総生産(GDP)比3.41%で、2012年の年間目標である3.5%に近い水準にある。

スペイン政府は、地方政府などを加えた全体の赤字を昨年の対GDP比8.9%から今年は5.3%に削減すると約束しているが、スペイン経済が過去3年で2度目のリセッション(景気後退)に陥る中、実現は依然として厳しい状態が続いている。

ラホイ首相は総額450億ユーロ規模の増税と支出削減策を発表しているが、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から求められているVAT引き上げには抵抗してきた。

しかし、スペイン政府はEU首脳会議を前に、予想外にも一部商品やサービスに対するVATの引き上げについて検討する考えを表明。

政府スポークスマンは「VATが軽減、あるいは特別に軽減されている一部の商品やサービスの再分類を検討している」と述べた。

スペインのVAT税率は現在18%で、欧州で最も低い国の一つであるばかりか、多くの商品は8%、あるいは4%に軽減された税率が適用されている。

スペイン政府はまた、住宅に関する税制優遇措置の縮小や、石油関連製品に対する「グリーン税」の導入も検討していると明らかにした。

© Thomson Reuters 2012 All rights reserved.

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