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暗雲垂れ込める世界経済  米国は二番底 ユーロ危機は悪化 新興国経済イランの核開発見通しは
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投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 28 日 11:16:51: cT5Wxjlo3Xe3.
 


日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>Project syndicate

暗雲垂れ込める世界経済

2012年6月28日 木曜日 ノリエリ・ルービニ

ユーロ危機は悪化の一途をたどり、米国には二番底の危険が迫る。中国を含む新興国の経済も、イランの核開発を巡る緊張も見通しは暗い。各国政府が対策として使える手持ちのカードは尽きかけている。

 今後の世界の金融、経済の見通しは暗い。というのも、ユーロ圏、米国、中国を含め、あらゆる地域から黒く重い雲が流れ込んでいるように見えるからだ。世界経済は2013年、逃げ場の見いだせない極めて厳しい状況に至るかもしれない。

ユーロ圏、米国ともに状況は悪化

 まず、ユーロ圏の危機は悪化しつつある。ユーロは依然として高すぎる水準にあり、多くの加盟国が最優先する緊縮財政は景気後退をさらに悪化させている。ユーロ周辺国の信用収縮と原油価格の高騰で、回復への見通しはおぼつかない。ユーロ圏の銀行システムは、域内の銀行間における与信枠の縮小により分断寸前状態にある。

 そして、数カ月以内にギリシャが無秩序なユーロ離脱に向かうことになれば(その可能性は十分にある)、周辺国の銀行から資本が引き揚げられ、それらの国では全面的な取りつけ騒ぎに発展しかねない。

 しかも、スペインとイタリアの国債利回りが再び持続不可能な水準にまで上昇し、財政と政府債務にかかる負担はますます重くなっている。実際、ユーロ圏では、銀行に対する国際的な救済(最近スペインの銀行に対して行われた)だけでなく、国全体の救済も必要になる可能性さえある。ユーロ圏や国際機関が設けた防火壁は、スペインでもイタリアでも安全装置としての役割を十分に果たせていない。そのため、ユーロ圏が無秩序に崩壊する危険性はなお残っている。

 西に目を向けると、米国の経済も悪化に向かっている。2012年第1四半期の成長はわずか1.9%と、潜在成長率を大きく下回った。4月と5月の新規雇用の伸びも減速したことから、年内にも成長が止まるかもしれない。

 しかも、2013年に二番底が訪れる危険性が高まっている。目前に迫った「財政の崖*1」と呼ばれる状況の影響が仮に小さかったとしても、恐らく実施されるであろう一部の増税と社会保障費の削減は、可処分所得と消費の伸びを抑え込む。

*1=先送りしてきた減税の期限切れや強制的な予算削減が一気に訪れ、米景気の回復に悪影響を与えかねないこと

 さらには、11月の米大統領選挙でバラク・オバマ現大統領とミット・ロムニー候補のどちらが勝利しようとも、財政調整を巡る政治的な膠着状態は変わらず続く可能性が高い。そのため、債務上限が再び火種となり、政府機関の機能が停止する懸念が広がり、格付けが引き下げられるといったリスクが浮上。消費者や企業の信頼感を押し下げ、支出の抑制と安全資産への逃避を促し、株式市場の下落に拍車をかけることになるだろう。

中国など新興国も減速

 一方、東に位置する中国も成長モデルが行き詰まり、2013年には経済が苦境に陥る可能性がある。投資バブルの崩壊が進み、消費を促す改革は規模が小さすぎ、後手に回っている。

 2012年秋に発足する中国の新指導体制は、構造改革を加速して、国民貯蓄を減らし、GDP(国内総生産)における消費の比率を高めていかなければならない。しかし改革のペースを巡る指導部内の対立や、権力移行に伴うであろう混乱のために、改革は必要なペースでは進まないだろう。

 米国、ユーロ圏、中国の経済が減速するということは、これらの地域との貿易や金融的な結びつきに負うところの大きい新興市場の成長も、著しく損なわれるということだ(つまり、「デカップリング」は起こらなかったということだ)。

 また、新興市場で構造改革が実施されず、国家資本主義への傾斜が強まっていることも、成長を阻害し、将来の回復力を弱める要因となる。

 最後に、中東にくすぶる緊張がある。核開発問題を巡るイスラエル及び米国とイランとの間で高まりつつある緊張関係は、2013年中に一線を越える危険性がある。現在の交渉は不調に終わる公算が大きく、イランは、たとえ経済制裁を強化されても核兵器の開発を放棄しそうにはない。

 米国とイスラエルが、イランに核を持たせたうえで抑止力で抑え込むというやり方を拒否しているため、2013年に軍事的緊張が高まり、それが原油価格の急騰と世界的景気後退につながる可能性がある。

手持ちのカードが尽きかけている

 これら一連のリスク要因は既に経済の減速を加速させている。世界中の株式市場が下落し、消費と資本支出に逆資産効果を及ぼしている。多額の公的債務を抱える国の借り入れコストは上昇し、信用割り当てで中小企業は打撃を被り、コモディティー価格の下落で商品輸出国の収益は減少している。

 経済にかかわるすべての者がリスクを避けるようになり、様子見に走っていること自体が、景気そのものをさらに悪化させている。

 2008〜09年の景気後退局面では、政策立案者は政治的な対応を取る余地が十分にあったが、今回は、金融、財政両面でもはや撃つ弾が尽きかけている(皮肉な言い方をすれば、帽子からウサギを取り出す手品のようなネタはもはや存在しないということだ)。

 ほとんどゼロに近い金利と、度重なる量的緩和の実施により、金融政策は身動きが取れなくなっている。経済と市場が流動性の問題に直面することはもうないだろうが、逆に信用危機と破綻の危機は高まりつつある。

 一方、先進国の財政赤字と公的債務はこれ以上維持できない水準まできているため、さらなる景気刺激策を打つという選択肢はかなり限られる。

 経常赤字国では、公的部門及び民間部門が債務の圧縮に追われていることから内需が圧迫され、経常黒字国では構造的問題がやはり内需を抑え込んでしまっている。こうした状況では、為替介入で純輸出を膨らませようとしても、ゼロサムゲームになるだけだ。つまり、通貨を弱めて貿易収支を改善する国が出てくれば、必然的にその分、通貨が強くなり、貿易収支が悪化する国が出てくるということだ。

 国は、銀行及びそのほかの金融機関を支え、保護し、場合によっては救済する力を持つが、その力は政治的に制約を受けるし、破綻しかけている国はこれ以上、金融システムの損失を吸収することはできない。その結果、国のリスクが今や銀行部門のリスクに転じつつある。特にユーロ圏では実際、公的債務の大部分が銀行のバランスシート上の債務部分となりつつある。

ユーロの見通しは予断を許さない

 ユーロ圏が無秩序な崩壊に至るのを防ぐには、現在の財政緊縮策をもっと緩やかに進める必要がある。また、昨年末に合意された欧州連合(EU)の財政規律強化のための協定を補完する「成長協定」を策定し、債務の相互化(つまり、ユーロ共同債の発行)を含む財政同盟を創設することも必要だ。

 さらに、万全の機能を備えた銀行同盟の創設にも取り組むべきだ。最初はユーロ圏全体を網羅する規模の預金保険制度から始めるのがいいだろう。

 そのうえで、より政治統合を深化させる方向へと向かうことを検討しなければならない。たとえギリシャがユーロ圏を離脱しても、この方向は必要である。

 だが、残念ながら、ドイツはこれら重要な政策のすべてに抵抗している。ドイツは、ユーロ圏が経済、財政、金融の面で広範に統合された際に、自国の納税者がさらされる信用リスクにこだわっているのだ。その結果、ユーロ圏が崩壊する危険性が高まっている。

 ユーロ圏を覆う黒雲は、嵐を呼びそうな最も大きな雲ではあるが、世界経済を脅かす暗雲はこれだけではない。暴風雨の到来を前に、備えを固める必要がある。

国内独占掲載:Nouriel Roubini © Project Syndicate


Project syndicate

世界の新聞に論評を配信しているProject Syndicationの翻訳記事をお送りする。Project Syndicationは、ジョージ・ソロス、バリー・アイケングリーン、ノリエリ・ルービニ、ブラッドフォード・デロング、ロバート・スキデルスキーなど、著名な研究者、コラムニストによる論評を、加盟社に配信している。日経ビジネス編集部が、これらのコラムの中から価値あるものを厳選し、翻訳する。

Project Syndicationは90年代に、中欧・東欧圏のメディアを支援するプロジェクトとして始まった。これらの国々の民主化を支援する最上の方法の1つは、周辺の国々で進歩がどのように進んできたか、に関する情報を提供することだと考えた。そし て、鉄のカーテンの両側の国のメディアが互いに交流することが重要だと結論づけた。

Project Syndicationは最初に配信したコラムで、当時最もホットだった「ロシアと西欧の関係」を取り上げた。そして、ロシアとNATO加盟国が対話の場 を持つことを提案した。

その後、Project Syndicationは西欧、アフリカ、アジアに展開。現在、論評を配信するシンジケートとしては世界最大規模になっている。

先進国の加盟社からの財政援助により、途上国の加盟社には無料もしくは低い料金で論評を配信している。

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ノリエリ・ルービニ

ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授。経済分析を専門とするRGEモニターの会長も務める。米住宅バブルの崩壊や金融危機の到来を数年前から的確に予測したことで知られる。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120620/233577/?ST=print

#相変わらずのDrDoom  

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