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増税、社会保険料の負担増、公共料金の値上げ… 家計がパンクする前に、お金の使い方を見直そう!
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投稿者 MR 日時 2012 年 7 月 02 日 16:33:01: cT5Wxjlo3Xe3.
 

家計再生コンサルティング

【第1回】 2012年6月29日
横山光昭


増税、社会保険料の負担増、公共料金の値上げ…
家計がパンクする前に、お金の使い方を見直そう!
1

「貯金が大切」「節約が大切」とはよく耳にする言葉。でも、どうしてそんなに貯金や節約が大切なのか、考えたことはありますか? 今回はその根本的な理由を改めて明らかにし、私達が今置かれている状況を解説します。

健康保険料、住民税がアップ。今後は電気料金も…


あらゆる値上げに負けない家計を作りたい!
 今年の4月から健康保険料や介護保険料が値上がりし、6月からは子どもがいる多くの世帯の住民税もアップ。来年1月からは復興税の導入も予定されており、政府は私達国民からとことんお金をしぼり取る方針のようです。

 その上、電気料金も全国的に値上がりする見込み。製造の過程で電気を使うモノ、あるいはサービスも値上がりする可能性が高いですから、仮に月1万円の電気代を支払っている人なら毎月1000円程度の負担増も現実的です。

 ほかにも、ちょこちょこ値上がりしているものはあります。エネルギー関連ではガスや灯油も実は値上がりしていますし、食品も値上がりしているものが少なくありません。有名なところではウナギ。不漁で大幅に値上がりし、国産はもちろん、中国産も高額です。土用の丑の日も、今年はお金がかかってしまうかもしれません。また、私の住む北海道の札幌市では、保育所の保育料が10%も値上がりしました。共働きの家計にとっては、結構な打撃ですよね。

次のページ>> 年収500万円の家庭は年間でいくら負担増になる?

 こうして挙げ連ねていくと、私達を取り巻く環境は、日に日に厳しいものになっていることがわかります。そのうえ消費税が10%になれば、生活全般を見直さない限り、やりくりに行き詰まる家庭が激増することは間違いありません。

 たとえば、年収が500万円程度の夫婦と、子どもが2人いる4人家族世帯の場合。これからの復興税や地球温暖化対策税、厚生年金の保険料増、住民税の年少扶養控除の廃止、児童手当減少などを踏まえると、消費税を除いても、概算で年間16〜17万円程度は負担が増える見込みです。年収300万円程度の家庭でも、13万円前後は負担増になるでしょう。

 この上に、消費税の増税が加わります。単純に食費だけで考えても、月の食費が今4万円だとすれば、年間で48万円。そこに5%の増税分を含めると、年間でプラス2万4000円ですから、月2000円の負担増ということに。家族が多いほど、必然的に消費は多くなるため、消費税の負担も大きくなります。そう考えると、子だくさん家族は、残念ながら、今後ますますやりくりに悩まされることになるでしょう。

次のページ>> ボーナスがあれば大丈夫なのか?

ボーナスはもうあてにはできない時代になった

 その一方で、サラリーマンの平均年収は、もう長いこと下降傾向。私は個人のお客さんの家計再生のお手伝いをしていますが、これまで5000人以上の人にお会いしてきた現場の実感からして、全体の8割以上が「収入が下がっている」「まったく上がらない」という言葉を口にしています。中には「10年前の新入社員のときと同じ給料になった」「役職はつけられたが、反対に残業などの手当てがなくなり、仕事の負担だけが増した」などの声も。

 月の手取りはさほど下がらなくても、ボーナスで大きく影響を受ける場合も多いようです。この時期、ボーナスを支給されたばかりという人もたくさんいるでしょうが、やはり昨年度よりも良くなかったという声は多いようです。

 ある人は、ボーナスが以前の3分の1程度になったそう。住宅や自動車のローンでボーナス払いを組み入れていたため、それが支払い不可能になり、なけなしの貯金を切り崩したということでした。またある人は、ボーナスから年に一度の家族旅行分の金額が減ったので、「今年の年末は旅行にも行けません…」と、残念そうにポツリ。

 この先、いつまでボーナスが減り続けるかはわかりませんが、今はもうどんな大企業であろうと、給与やボーナスが減っても不思議はない時代と考えるべきです。ローンを組むときは、ボーナス払いは危険――それが、このご時世の常識といっていいでしょう。

次のページ>> 老後のためにいくら貯めておけばいい?

やりくりに行き詰まって生活に困っても、誰も助けてくれない

 このように、不況にもかかわらず税金や社会保険料が上がるのは、国の財政が悪化しているからです。となると、心配なのはやはり年金。現行の制度のまま行けば、厚生年金を受け取る場合、あとは自分で1600万円程度貯めておけば、過不足なく暮らしていけるというのが、私の見解です(※現役時代、一貫して一般的な年収で、住まいは持ち家、子どもは独立している人の場合)。

 しかし、今の日本の状態を考えると、「ねんきん定期便」で提示されている金額よりも、実際に受け取る年金が減らされることは、ほぼ間違いないと思います。やみくもに不安がることはないですが、"年金が減る可能性が高い"ということは念頭に置いて、今の生活を見つめ直し、1000円でも2000円でも余計に貯めていく意識は持っておきたいところ。

 私がお会いした人の中には、まったく貯金がないにもかかわらず「(将来困ったら)国が何とかしてくれる」と考えている人も少なからずいました。が、前述のように今の日本は財政がボロボロですから、困って甘えたところで助けてはくれません。生活保護というセーフティーネットはありますが、これは本来、自分の無計画のおかげで破綻した人のためのものではないので、あてにするのは間違いです。

次のページ>> 貯金ゼロの人はどうすればいい?

 何だかお先真っ暗な話ばかりになってしまいましたが、こうした現実を踏まえて私達が取るべき行動は、ただ一つ。自分で自分の家計を守ることです。税金が増えても、給料が減っても困らないようなお金の使い方をし、急に会社が潰れても、同時に自分まで潰れてしまわないような蓄えを持っておくことが、今何より求められていることなのです。

 これまで貯金したことがない人は、まずは黙って、月収の3カ月分の貯金を目指してください。今ゼロの人は、1カ月分からでもいいです。そういった手の届きやすいところに目標を置き、まずは達成してみましょう。できない言い訳をあれこれ思い浮かべる前に、とにかくやってください。達成できたら、そこに何か思うことがあるはずです。

 次回からは、不況で収入が下がり、税金などの負担が増えても貯められる家計の管理方法を、手取り足取り詳しくお話ししていきます。また、「お金が貯められるのはどんな人なのか?」という素朴な疑問にもお答えしたいと思います。

 実際に、私が家計再生のお手伝いをした中には、年間100万円以上貯められるようになった人もいます。そういう人達には、共通する性質や、共通してやっていることがあるので、その点も詳しくご紹介していく予定です。

 こんなご時世に打ち勝ち、自分で自分を守れる家計を、いっしょに作り上げていきましょう!

(構成/元山夏香 イラスト/斎藤ひろこ)

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第1回 増税、社会保険料の負担増、公共料金の値上げ… 家計がパンクする前に、お金の使い方を見直そう! (2012.06.29)

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コメント
 
01. 2012年7月02日 22:29:43 : npansWPdOA
いろいろ失費に悩むより、この際、自分の労働力に付加価値を付けた方が早い.初めは取れるライセンスから,取り、労働単価を徐々にあげていく。競争力のある商品を扱うなら、起業もあるが起業は別のポテンシャルが必要なので、誰でもが出来ない。金が取れる自分を見出せば、案外面白く、楽しいかも。

02. 2012年7月02日 23:03:34 : 3CNLte9sGM

「ソーシャル化」と「小商い」へ向かう人々の欲望 ──震災後の「消費マインド」がわかる3冊

2012年6月29日

あとで読む連載ウォッチ

■今回取り上げる3冊
『第四の消費 つながりを生み出す社会へ』三浦展/朝日新聞出版/903円

『スペンド・シフト―<希望>をもたらす消費―』ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ(著)、有賀裕子(訳)/プレジデント社/1890円

『小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』平川克美/ミシマ社/1680円


マーケティング以前の話をしよう
 この原稿の校正中に、消費税アップが決まった。

 消費税が上がれば、当然、消費行動は変わる。これまでと同じように商品やサービスが売れるか、増税を嫌って消費が落ち込むか。はたまた、これまで想像もしなかったような消費のかたちが出てくるのか。結果は誰にもわからない。

 では、そのカギとなる消費者の心理は今どうなっているのだろうか?

 振り返ってみれば、長期化する不況に、昨年の大震災と原発事故、今回の増税と、消費者の心は巨大な手でガシガシと揺さぶられ続けているようだ。

 デフレと節約志向を受け、弁当持参の人が増えたり、牛丼が十円単位の値下げ競争をやっているかと思えば、ソーシャルゲームに何万円も突っ込んでいる人もいる。はっきり言ってわけがわからない。

 消費行動を考えるとき、ビジネス書の一大ジャンルとして「マーケティング」があるが、近頃はその神通力も衰えた。売れたものの分析は多いのに、売ろうとして売れた、という話はまず聞かない。

 それでもエスキモーに氷を売る方法を考えるべきだろうか? コーラを1000円で売る方法を学べばいいのか?

 いや問題は、もっと深いところにある。
 今回は、マーケティング以前にある「消費マインド」を3冊から考えてみよう。

「物」はもういい、「人」が欲しい
 まず読んだのは、「下流社会」「ファスト風土化」などの社会分析で有名な三浦展氏の新刊『第四の消費 つながりを生み出す社会へ』だ。

 サブタイトルの「つながりを生み出す社会へ」からは、フェイスブックなどのSNS礼賛本ではないか、という印象を受けるが、そうではない。

 この本の内容をひとことで言えば、「消費の現代史」だ。戦前の消費社会の始まりから、東日本大震災後の今までの消費活動の変遷を1冊で振り返った上で、始まったばかりの「第四の消費社会」をリポートしている。

 著者は、高度成長が終わった1975年から2004年までの約30年、個人がクルマやファッションアイテムを買うことで自分の個性を表現し、幸福になれた社会を「第三の消費社会」と呼ぶ。

 それがじわじわ収束する一方、起こってきたのが、次の特色を持つ「第四の消費社会」だ。

●所有よりシェアを好む(カーシェアリング、シェアハウス)
●環境や社会のためになるかを重視する(エコ、日本文化、ソーシャル)
●物よりコミュニケーションで満足感を得る(SNS、職人の手仕事)
●ブランド不要、シンプル志向(無印良品、ユニクロ)
●都会より地方(ローカル、集中から分散へ)
●担い手は、団塊ジュニアとシングル化した全世代

 なぜ消費者(私たちのことだ)は、「もうクルマなんか要らない」「人や社会の役に立ちたい」などと言い出したのか?

 背景には発達しすぎた消費社会がある。

 もちろん、第四の消費社会は、私有や私生活を否定するのではない。しかし、私有や私生活ではむしろ満たされない願望があることに気がつき、その不満をシェア型の行動によって解消しようとする人々が増えてきた、ということであろう。(第四の消費/P.148 ※太字強調は引用者による。以下引用部でも同じ)
 さらに著者は、東日本大震災でクルマや家が津波に流されるのを見たことも「物を所有することのリスクや空しさを感じただろう」と指摘している。

 つまり、「つながり」や「シェア」といった志向は、昔からよく言われるような物質文明や大量消費社会に対する「アンチテーゼ」「反動」ではなく、それらへの「物足りなさ」と言った方がしっくりくる。

 こうしたシェア志向、あるいは利他志向の前提が、物質的な豊かさにあることは言うまでもない。ひとりひとりが、耐久消費財を一人一台かそれ以上持ち、衣料品や雑貨ならばありあまるほど持っている。そういう過剰な消費社会が前提にあるからこそ、自分が使わない物は必要な人に使ってもらおう、役立ててもらおうという行為が可能になる。(第四の消費/P.153)
 「物」が満たされたら、「人」が欲しくなった。

 欲望は、なくなったのではなく、変質したのだ。

ニワトリを飼い始めたアメリカ人

 こう考えてみれば、2冊目の『スペンド・シフト <希望>をもたらす消費』 で描かれるアメリカの消費社会は、より興味深い。

 同書は、リーマン・ショック後の大不況で変わったアメリカ人の消費活動(これをスペンド・シフトと呼ぶ)を先進的な事例から紹介する本。サブプライムローンで豪邸に住み、クレジットカードでバンバン買い物していたアメリカ人は、今、物を修理して使い、家庭菜園で野菜を自給し、環境や社会のためになるビジネスを模索している。

 といっても、入植者や移民、ヒッピーに先祖返りしたわけではなさそうだ。

スペンド・シフトの実践者とはどういった人たちだろうか。極端な倹約家でも、キリスト教の禁欲主義者でも、ニューエイジの過激な反物質主義者でもない。単に、危機に順応しようとするなか、よりバランスのとれた、より充実した人生を求めて、わずかに暮らしぶりを改めただけだ。
(スペンド・シフト/P.23)
 スペンド・シフトは、思想活動でも革命でもない。ただ、リーマンショックであまりにも国がガタガタになってしまったので、アメリカ人もさすがに懲りた、目が覚めた、ということのようだ。

 日本人には「戦後の焼け野原」というおなじみの言葉があるが、アメリカ人にとってそれに当たるのが、1929年の大恐慌だ。

 20代の若者が、大恐慌時代のレシピを引っ張り出して自炊したり、家やクルマをDIYで治したりしている。

「新車の購入を見送っても、自尊心が傷つくわけではないし、いまのクルマも問題なく走っている。こう気づいた人たちにとって大不況は、『あなたたちは逆境に強い』という意外なほど明るい知らせを届けてくれたわけです」。(スペンド・シフト/P.131)
 そう、移民の国であるアメリカは貧乏に強いのだ。

 不景気なのは日本と同じだけれど、彼らは明るい。落ちるところまで落ちたらかえってスッキリした、といった感じだ。

 卵を自給するために自宅に鶏舎を作り、今や飼育の講習会までひらいているダラスの女性は言う。

「こうすれば、世の中の動きに翻弄されずに暮らしていけますよね。このほうが楽しくて健康的だし、いいことではないかしら」(スペンド・シフト/P.101)
 長期化するアフガニスタン紛争に金融危機が続き、若い世代は、もう政治や経済といったシステムを信じていない。自分のことは自分でやる。

 そんな不信に満ちた社会で、求められるのは「真心」だ。

 代表的なビジネス事例としてとして、地域に根ざし、伝統の製法を守っている商品や、店主やスタッフの心意気が伝わるレストラン、それに消費者を「顧客」として、ていねいに応対する企業などが紹介されている。

 アメリカでも「物より人」なのである。

「小商い」という名の「つながり」

 「不信感」は、日本とアメリカで共通する問題であり、「つながり」や「真心」を求める背景でもある。

 3冊目の『小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』の前提にも不信感がある。疑問が呈されるのは、まず原子力発電所であり、原発が象徴する経済成長モデルや大量消費社会。つまり、三浦氏が指摘した「第四の消費」の背景。

 団塊の世代である著者は、もはや経済成長は不可能であり、人口減少に合わせて縮小しつつ持続可能な社会を作るべき、と説く。その上で、昭和30年代の個人商店や町工場があった風景を語る(「三丁目の夕日」みたいな話で、30代の筆者からすると、なんだかなあ、という気はする)。

 さて、かつて日本にあった「小商い」とは、何か。

 小商いとは、自分が売りたい商品を、売りたい人に届けたいという送り手と受け手を直接的につないでいけるビジネスという名の交通であり、この直接性とは無縁の株主や、巨大な流通システムの影響を最小化できるやり方です。
 当然のことながら、そこに大きな利潤が生まれることはありません。
 しかし、小商いであるがゆえに、それほど大きな利潤というものも必要とはしていない。
 何よりも、送り手と受け手の関係が長期にわたって継続してゆくことで、送り手は自分が行っていることが意味のあることであり、社会に必要とされているのだと実感することができることが重要なのです。(小商いのすすめ/P.212)
 これが三浦氏の言う「つながり」であり、「スペンド・シフト」に見られる「真心」のことであるのは明かだろう。

 さらに、著者は、大量消費社会から市場経済にも批判の目を向ける。

 わたしは、本来の価値、いやあるべき価値とは市場が決める価格の中にだけあるものではないし、生産者の思いの中にだけあるものでもないと考えています。
 それらは、まさに生産者と消費者が共同して作り上げていくものであり、両者の関係性そのものの別名であると言ってもよいのではないかと思っています。(小商いのすすめ/P.89)
 ここでも、「つながり」!

 一体、日本もアメリカも、若者も団塊の世代も魅了する「つながり」とは、具体的に何なのか? まさか、ツイッターとフェイスブックをやりなさい、ということではあるまい。

かわいくないアイドルが売れる理由

 生産者と消費者が「つながり」を持つために、SNSを活用するのはひとつの方法だ。しかし、使えばいいというものでもない。その効果は「中の人」次第であることをアメリカの事例は伝える。

「人々は企業が努力する姿を見たい」のだ。ここで肝心なのは、社内の理念を表す物語を発掘することだ。いまの時代、都合の悪い事実をまことしやかに取り繕っても株主や消費者の目はごまかせない。彼らは嘘偽りのない本物のストーリーを強く望んでいる。(スペンド・シフト/P.354)
 売れるのは「物」ではなく「物語」だ。

 だから、社員に自由にネットに書かせるとまずいので、PRや広報の専門スタッフが書く、というのではSNSの真価は発揮できない。それより、スタッフの誰に書かせてもいいような会社を作るべき、となる。

 これは一見、ハードルが高いようだが、そうとも限らない。消費者は「人間らしさ」を求めている。だから、製品に欠陥が見つかったり、ミスをしたときは正直に公表して謝ればいい。そのほうが、かえっていい顧客になってくれるだろうし、客は企業や店に投資し、自分の手で育てたような気がして、「つながり」を感じるだろう。

 また「つながり」は、上下関係ではない。消費者をバカにしてはいけないのはあたりまえだが、無闇に媚びを売るのも不信感を生む。提供者と消費者は、気持ちのいい人間関係と同じように、対等であるべきだからだ。

 こう考えれば、レコード会社の企画室で生まれた完璧なアイドルより、ドサ周りして握手する水商売のようなアイドルが売れる理由も、解き明かせそうだ。

 ビジネスで考えれば、これからは、広報チームによる戦略的なPR活動より、誠実な社員たちのツイッター、フェイスブックの方が効果を発揮するかもしれない。

「自分らしさ」から「人間らしさ」へ

 話を消費マインドに戻そう。

 「第三の消費社会」からつながり、ソーシャルがキーワードの「第四の消費社会」が生まれ、米国では、金融危機後の大不況から「スペンド・シフト」が起きた。「小商い」は、大量消費社会へのアンチテーゼだ。

 三冊は同じメッセージではないが、どれも「人」の復権を求めるという点では一致している。

 ではここで、ややアクロバティックだが、アメリカ人にとってのリーマンショックが、日本人にとっての震災と原発事故だった、と見立ててみるとどうだろうか?

 ともに、これ以上ないくらい信用していたものに、欺かれ、裏切られた事件だ。政治も経済もマスコミも、一部の行政や企業も、もう信じられなくなった。

 残ったのは、「信頼の焼け野原」である。

 本来、もっとも信頼できるものであるはずの宗教や家族、会社、地域社会は、とっくに機能不全に陥っている。

 だから、これからの消費は、ただものを買うだけでは味気ない。食べたり使ったり楽しんだりするだけでは、物足りない。

 誰が作って、どこでどう買ったかを話したり、ネットに書いたりして、誰かと共感したい。

 さらに言えば、自分が何か人の役に立っていて、社会の一員であるという実感がほしい。

 そんな時代に、企業は何を売ればいいのだろうか?

 第三の消費社会までの価値観は物に力点があり、第四の消費社会においては人に力点があるのだ。何を消費したのかではなく、誰といたか、誰と出会えたか、誰からどういうふうに買ったかということが重要なのである。
 むしろ企業としては、第四の消費社会、人口減少社会にふさわしい、人と人とのつながりを生み出すビジネスを考えるべきなのだ。(第四の消費/P.250)
 ブランド品やクルマ、家などを買うことで自分らしく生きられる。そんな消費社会は終わった。

 これから、人は消費活動に「自分らしさ」より「人間らしさ」を求める。

 古民家にアンティークの家具を置くのも、手作りのピクルスを買うのも、取次を通さない出版社の本を買うのも、作り手や売り手といった人の体温を感じたいからだ。

 そんなの、ウチみたいな大企業でできるわけない、と思うかもしれない。

 『スペンド・シフト』によると、アメリカで1980年から98年までに生まれた「新世紀世代」(9000万人もいる!)の意識を2008年に調査したところ、「この世代はきわめて楽観的」だったという。

全体の八〇%近くが「上の世代と比べて、自分たちはよりよい世の中を築くチャンスに恵まれている」と回答し、「前向きな変化へと社会を導かなくてはならないと感じる」としている。新世紀世代は、危機後の状況をさまざまな意味で真っ白なキャンバスのようにとらえている。(スペンド・シフト/P.195)
 消費者の意識がガラリと変わりつつあるこの社会、企業や経済システム、社会保障システムへの信用が地に落ちたこの状況が、大変なのは違いないだろう。

 ただ、それが「焼け野原」か「真っ白なキャンバス」か、自分で決められることを私たちは忘れてはならない。

■これだけは押さえておく3冊の要点

『第四の消費』
●第四の消費社会では欲望は「物」でなく「人」に向かう
●若者は我慢しているのではなく「所有すると邪魔になる」と思っている
●「つながり」を促すことで少子高齢化と孤立化に対応できる
【こんな人におすすめ】
→近年までの消費史をまとめた労作。絶対に読んで損はない

『スペンド・シフト』
●アメリカ人はリーマンショックでついに目が覚めた
●新世代は金持ちになるより世の中のためになりたい
●企業は、消費者とよりよい人間関係を築くために努力すべき
【こんな人におすすめ】
→近く日本に波及する米国「新世紀世代」の考え方を知りたい人に。地域振興のヒントも多い

『小商いのすすめ』
●今こそ「ヒューマンスケールの復興」を考えねばならない
●経済成長では、幸せも社会の安定も実現できない
●大量消費社会が、消費者と生産者の関係性を台無しにした
【こんな人におすすめ】
→魅惑的な「経済成長」の掛け声に踊らされないために読んでおこう

奥野 宣之(おくの・のぶゆき)
1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部を卒業後、新聞記者・ライターとして活躍。仕事や私生活での資料やメモの整理を独自に研究した結果をまとめた『情報は1冊のノートにまとめなさい』でデビュー。同書は31万部、読書を題材にした続編の『読書は1冊のノートにまとめなさい』が14万部、累計45万部のベストセラーとなる。情報の整理と活用、アウトプット技術などをテーマに「面白くて役に立つ本」をモットーとした著作活動を続けている。(発行部数は2010年1月現在のもの)
他に、『情報は「整理」しないで捨てなさい』(PHP研究所)、『だから、新書を読みなさい』(サンマーク出版)、『人生は1冊のノートにまとめなさい』(ダイヤモンド社)。最新刊『「処方せん」的読書術』(角川書店)も好評発売中。


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