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地域間人口構成の格差が広がる中国「未富先老」の現実化  韓 国 上半期に急増した日本からの直接投資  香 港 景気は減速
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/246.html
投稿者 MR 日時 2012 年 8 月 03 日 22:48:47: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=21545

アジア・マンスリー 2012年8月号
地域間人口構成の格差が広がる中国
2012年08月01日 大泉啓一郎

2010年11月に実施した中国の人口センサスの結果が公表された。人口増加が続くが、一部の省・市
で人口が減少に転じたこと、労働力の偏在、高齢化の進展などの地域間格差が拡大したことが判明した。

■人口センサスの結果が公表
2010年11月1日に実施された中国の人口センサス(国勢調査)の結果が明らかになった。中国では、人口センサスは10年に1度実施され、今回の調査は通算6回目になる。近年、中国では「一人っ子政策」による出生率の低下、農民工などの出稼ぎ労働者の増加、高齢化の進展などの人口動態が経済社会に及ぼす影響が注目されている。人口センサスは、その実態を確認する上で重要な資料である。

2010年の中国の人口は13億3,281万人と2000年の12億4,261万人から9,020万人増加した。増加数は大きいが、この10年間の年平均伸び率は0.7%と、世界平均の1.2%を大きく下回っている。これは「一人っ子政策」による低水準の出生率の影響を受けている。国連の人口推計(中位推計)によれば、中国の人口は2027年から減少に転じる見込みである。

右上図は、2010年の人口ピラミッドである。20〜45歳に大きな人口の塊がある一方、14歳以下の人口は極端に少ないことがわかる。2010年の合計特殊出生率(女性が生涯に出産する子どもの数)は公表されていないが、1.5を下回った可能性が高い。第12次5カ年計画では、経済社会構造の転換が強調されているが、その背景には若年労働力をテコにした経済成長が今後困難になるとの判断があると考えられ、人口動態と整合的な計画といえる。

他方、高齢化率(65歳以上の人口比率)は、2000年の7.1%から2010年には8.9%に上昇した。人口ピラミッドに示される人口の塊が65歳を超えると、高齢化は加速する。国連の人口推計では、高齢化率は、2020年に12.6%、2040年には23.3%に上昇する見込みである。

2012年7月1日に北京で開催された国内初の「人口高齢化に関する戦略会議」で、人的資源社会保障部の何平社会保障研究所所長は、高齢化の負担を軽減するために、2045年までに男女を問わず定年退職の年齢を65歳に引き上げるべきだと主張した(現行は、男性が60歳、女性が55歳)。

■人口動態の地域格差が顕著に
もっとも、広大な中国においては各地域で人口動態が異なる。

2000年と2010年のセンサスを比較すると、最も人口が増加したのは、広東省の1,910万人で、2010年の人口は1億432万人となった。第2位が浙江省で850万人(人口は5,443万人)、第3位が上海市で661万人(同2,302万人)、第4位が北京市で604万人(同1,961万人)となっている。これら人口増加数の多い省・市は概して所得水準が高く、主因は、他の地方からの人口移動である。たとえば、広東省では、他の市・省・自治区の戸籍を持つ住民は、2,149万人と同省人口の20%を占める。また、上海市、北京市、天津市の生産年齢人口比率(15〜64歳)は、それぞれ82.7%、81.7%、81.3%と高い。

他方、4つの省・市で人口が減少した。人口減少が最も著しいのは湖北省で、227万人減少した。そのほか、四川省、重慶市、貴州省でそれぞれ193万人、167万人、50万人の減少となった。湖北省の戸籍を持ち同省外に住む人口は589万人で、なかでも広東省が234万人と多い。湖北省から広東省への出稼ぎが多いことがわかる。わが国では、人口減少は経済成長を阻害する要因の一つとして捉えられており、中国国内にも成長力を阻害するような人口動態を持つ省・市が出現したことには注意したい。これらの4つの省・市の一人当たりGDPの水準はいずれも国平均を下回っており、生産年齢人口比率も湖北省(77.0%)を除いて、四川省(72.1%)、重慶市(71.3%)、貴州省(66.0%)は低い。人口移動による地域間で労働力偏在が生じている。

■「未富先老」の現実化
国内の人口移動は、地域ごとの高齢化の違いにも影響を及ぼしている。2000年時点では、高齢化率が最も高かったのは上海市で11.5%、第2位が浙江省8.9%、第3位が江蘇省で8.8%であった(右表)。以下、北京市、天津市、山東省と、所得水準の高い沿海地域が上位を占めていた。ところが、2010年では、第1位が重慶市で11.7%、これに四川省(11.0%)と江蘇省(10.9%)、さらに遼寧省(10.3%)、安徽省(10.2%)が続く。江蘇省を除き、いずれも所得水準の低い省・市である。つまり、この10年間で人口移動により所得水準の低い地域で高齢化が加速したといえる。他方、上海市の2010年の高齢化率は10.1%と第6位に位置するものの、2000年の11.5%から低下している。北京市や天津市も同様で、高齢化率はこの10年間で0.1〜0.2%ポイント増加したにすぎない。

また、省・市・自治区内で、都市と農村の高齢化率の格差が拡大している。2000年の都市の高齢化率は6.4%、農村は7.5%であり、その差異は1.1%ポイントであったが、2010年には都市が7.8%、農村が10.1%に上昇し、差異は2.3%ポイントに拡大した。この傾向は所得水準の低い省・市・自治区で顕著で、重慶市ではその差異はそれぞれ0.5%ポイントから5.2%ポイント、四川省では1.0%ポイントから3.3%ポイントに拡大した。重慶市と四川省の農村の高齢化率は14.5%、12.3%と高く、中国で懸念されている「未富先老(豊かになる前に高齢化が進む)」は、これらの農村ではすでに現実化している。

中国では、都市と農村を厳しく区分する戸籍制度を格差是正の観点から見直すべきだとの議論が高まっている。しかし、戸籍制度の見直しにより若年人口の移動が増加することは明らかである。その結果、地域間、都市・農村間の人口構成の格差が拡大し、かえって地域経済格差の拡大の原因になることに注意したい。一人っ子政策や戸籍制度などの人口政策に、どのような姿勢で臨むのか、秋に開催予定の党大会の行方が注目される。

 

http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/asia/pdf/6236.pdf

中国の「西高東低」をどう評価するか
中国中西部の省・市・自治区の成長率は高く、外資企業の関心も高い。しかし、成長を支えているの
はインフラ整備と資源開発である。外資や私営などの民間投資が今後の成長の持続性を左右する。
■定着した成長率の「西高東低」
2012年2月、世界銀行が国務院経済発展センターと共同で取りまとめた『China 2030』と題するリポートでは、中国が年平均6.6%の成長を実現すれば、2030年までに米中の経済規模は逆転するとしている。しかし、「中国」と一言でいっても、沿海と内陸では発展段階に大きな違いがある。最も豊かな上海市の1人当たりGDPは2010年時点で7万8,989元(1万2,222ドル)に達するが、最も貧しい貴州省は1万309元(1,595ドル)に過ぎない。前者はハンガリー(1万2,863ドル)、後者はガーナ(1,325ドル)に近い。ハンガリーはOECD(経済協力開発機構)加盟国であり、中国はまさしく先進国と開発途上国が同居している状況にある。
しかし、近年は経済成長率における「西高東低」が顕著である。2006〜2011年の世界182カ国と中国31省・市・自治区の年平均実質GDP成長率を高い順に並べ、上位35位の国・地域を抜きだすと、中国31の省・市・自治区の全てがランクインする(右上図)。しかも、北京市や上海市などの沿海中核都市より、中西部の省・市・自治区の成長率が高い。年平均の実質GDP成長率が7.2%であれば経済規模は10年で2倍、11.6%であれば3倍、14.9%であれば4倍に拡大する。経済規模と成長性という点で中西部は世界で最も魅力的なフロンティアといえる。
■高まる中部と南西の重要性
中国を平均値としてではなく、発展段階に応じた地域分けを通じて捉える必要性はかつてなく高まっている。在中華南米国商工会議所は、2012年の白書において、今後3年間の有望投資先として長江デルタと広東省を挙げる企業が大幅に低下し、東北三省や四川省との差が縮小したことを明らかにした。わが国進出企業の間でも中西部への関心が高まっている。2012年6月に中国日本商工会が発表した『中国経済と日本企業 2012年白書』では、繊維・アパレルや事務機器の分野で湖北や湖南省など中部の存在感が高まっているとされている。
次図では、中国の31省・市・自治区を@南東(江蘇、上海、浙江、福建、広東)、A環渤海(北京、天津、山東、河北)、B中部(山西、河南、安徽、湖北、湖南、江西)、C北西(内蒙古、寧夏、甘粛、陝西、青梅、チベット、新疆)D南西(四川、重慶、貴州、雲南、広西)、E北東(黒龍江、吉林、遼寧)に分類し、各地域が東アジア、あるいは、ロシア、ブラジルといった新興国のなかで、どのように位置づけられるかを、横軸に発展水準を示す1人当たりGDPを、縦軸に人口規模をとってプロットした。
縦軸と横軸が垂直に交わる線の内側の面積はそれぞれの経済規模を示す。南東のGDPは2.0兆ドルとブラジル(2.1兆ドル)に匹敵し、ロシア(1.5兆ドル)を大きく上回る。以下、中部

(1.2兆ドル)、環渤海(1.1兆ドル)、南西(0.7兆ドル)、北東(0.5兆ドル)、北西(0.5兆)ドルと続き、中部と環渤海の経済規模は韓国(1.0兆ドル)を上回る。南西はインドネシア(0.7兆ドル)、北西と東北はタイ(0.3兆ドル)とマレーシア(0.2兆ドル)を合わせた規模に相当する。経済発展の水準が低い半面、人口が多い中部と南西を「工場」あるいは「市場」としてどのように位置づけるかが対中投資戦略において重要な意味を持つ。 中国:南西中国:中部中国:南東中国:北東中国:北西中国:環渤海ベトナムタイフィリピンマレーシアラオス韓国インドネシアカンボジアバングラデシュロシアブラジル05010015020025030035040005,00010,00015,00020,00025,000(100万人)(1人当たりGDP、ドル)(注)現行価格(資料)IMF, World Economic Outlook April 2012,『中国統計年鑑』(2011)ほかより作成<中国各地域と主要新興国の1人当たりGDPと人口規模(2010年)>
■求められるソフト面の改革
中西部の高成長は何によってもたらされているのであろうか。GDPに占める供給項目の変化をみると、南西、中部、北西において、2000年頃から第一次産業の割合が低下する一方、第二次産業の割合が上昇するという産業構造の変化が見られる。経済センサスでは、第二次産業の2004〜2008年の販売額伸び率に対する鉱業、製造業、電気・ガス・水道業の寄与度が算出できる(下図)。
南東および環渤海とその他地域の伸び率の違いを最もよく説明するのは、鉱業と電気・ガス・水道業であり、インフラ整備と資源開発が中西部の経済成長を支えていることがわかる。中部については例外的に製造業の寄与度が高いものの、これは必ずしも南東から繊維製品・履物・帽子製造業といった労働集約的産業の移転が進んだことを意味しない。中部の製造業を支えているのは、化学原料・同製品製造業、交通運輸設備製造業、非金属鉱物製品製造業といった資本集約型産業であり、投資主体はあくまで国有およびその関連企業である。このため、投資効率や雇用創出効果は南東や環渤海に比べ低い。中西部の経済成長が投資主導であることはGDPに占める総固定資本形成の割合をみても確認できる。南東と環渤海は5割前後で安定的に推移しているが、北西は2001年から、北東、南西、中部は2005年前後から急速に上昇し、2010年には6〜7割に達した。 9.152.519.71.325.316.7135.9124.4132.3116.0173.5143.76.315.013.06.917.36.7050100150200250環渤海北西北東南東中部南西鉱業製造業電気・ガス・水道業(%)<鉱工業販売額の伸び率に対する寄与度(2004-2008年)>(注)名目ベース(資料)『第一次経済普査2004』、『第二次経済普査2008』より作成
中西部の経済基盤は脆弱であり、資源価格の下落や財政金融を取り巻く環境変化によって成長率が低下する可能性がある。政府は、現在5つの中核都市を8〜10程度に増やし、その多くを南東および環渤海以外に置くことで、中西部経済の底上げを図ろうとしているものの、インフラ整備などハード中心の地域振興戦略が中西部に投資主導の経済成長をもたらす一因となったように、行政区画の変更によって中西部の経済基盤が強化されるとは限らない。行政手続きの簡素化などソフト面の改革を進めることで投資環境の改善を図り、外資や私営などの民間企業が投資を牽引する経済に移行できるか否かが、経済成長の持続性を左右するポイントとなろう。


中 国 4〜6月期の実質GDP成長率は7.6%
■2009年1〜3月期以来となる低成長
7月13日、国家統計局は4〜6月期の実質GDP成長率を前年同期比7.6%と発表した(右上図)。これは、6四半期連続で前四半期の実績を下回るとともに、2009年1〜3月期以来(同6.6%)の低い伸びであった。
内外需ともに景気減速をもたらした要因と考えられる。輸出をみると、5月は前年同月比15.3%増と、伸び率が大きく上向いたものの、6月は同11.3%増と、増勢が再び鈍化している。国・地域別でも、EUが2カ月ぶりに前年割れとなるなど、総じて低調であった。
内需の減速感は一段と強まっている。1〜6月期の固定資産投資(除く農村家計)は前年同期比20.4%増と、1〜3月期に比べて0.5%ポイント下回った。ただし、5月以降、けん引力の強いプロジェクトの前倒し容認など、投資拡大に向けた措置が打ち出されており、足元では伸び率持ち直しの兆しもみられる。小売売上高の名目伸び率は、2012年入り後低下基調で推移しており、6月は前年同月比13.7%増と、前月を0.1%ポイント下回った。景気を押し上げるには消費は力不足と判断される。 <GDP成長率と投資>(前年同期比)024681012142010/1Q11/1Q12/1Q(年/期)05101520253035投資(名目、右目盛)GDP(%)(%)(注)投資は年初からの累計比、11年より基準変更(資料)国家統計局
■2カ月連続で基準金利を引き下げ
こうした状況を踏まえ、中国政府は金融政策を緩和させている。7月5日、中国人民銀行は基準金利の引き下げを発表した(翌6日より実施)。6月に続く利下げであるが、貸出金利の引き下げ幅(1年物の場合、6.31%→6.00%)を預金金利(1年物の場合、3.25%→3.00%)よりも大きくしたことが前回の利下げと異なる特徴である(右下図)。また、貸出に関しては、金利の下限を基準金利の0.8倍から0.7倍に変更した。下限調整も6月に続いての措置である。一連の金融緩和策からは、景気失速を回避したい政府の強い決意がうかがえる。
今後、政府目標として掲げた7.5%成長を確保する目的で、預金準備率や基準金利の再引き下げ等を行う可能性は高いと考えられる。6月の消費者物価指数が前年同月比+2.2%と、インフレは沈静化しており、もう一段の金融緩和を実施する余地は拡大したといえる。加えて、リーマンショック後に実施された4兆元規模の景気刺激策が成長率の急回復につながったことから、積極的な財政出動への期待も今後高まってこよう。温家宝首相は、7月上旬の地方視察の際、不動産投機抑制策の堅持を改めて表明した。景気浮揚策を適切に実行しつつ、その弊害あるいは副作用を未然に防止できるか。景気対策の拡充を求める意見が強まるほど、政府は調整に苦慮することになろう。 <基準金利(1年物)と預金準備率>0123456782008/109/110/111/112/1(年/月)(%)141516171819202122(%)貸出金利預金金利預金準備率(右目盛)(注)預金準備率は、大手銀行の数値(資料)中国人民銀行基準金利の引き下げ(12/7/6)
主任研究員 佐野 淳也

 


 


韓 国 上半期に急増した日本からの直接投資
■日本企業にとって魅力を増した韓国
最近、日本の韓国への直接投資額が増加している。韓国知識経済部の統計(申告ベース)では、2011年は前年比9.5%増にとどまったが、2012年上半期は前年同期比195.9%増となった。景気の悪化したEU(欧州連合)からの投資額が大幅に減少したため、上半期は日本が最大の投資国・地域となった(右上図)。 0246810121416200809101112(上期)日本米国EUその他(10億ドル)(資料)知識経済部(年)<韓国への外国直接投資(申告ベース)>
注目したいのは、製造業分野で投資が著しく増加していることである。この背景は二つある。
一つは、日本企業の納入先として韓国企業の存在が大きくなったことである。韓国企業は2000年代に入り、輸出や現地生産などを通じてグローバルな事業展開を加速させた。日本企業はサプライヤーとして、その生産に欠かせない基幹部品や高機能素材、製造装置を供給してきたが、供給の拡大に伴い現地生産しても採算がとれるようになったほか、現地生産により、@納入先からの情報入手および納入先とのコミュニケーションが容易になる、A共同開発を進めやすくなる、B為替変動リスクを回避できるなどの効果が得られる。現在、ウォンの対円レートはリーマン・ショック後の最安値に近いウォン安・円高水準となっている(右下図)。
もう一つは、韓国政府がFTA(自由貿易協定)の締結を積極的に進めてきたことである。EUとのFTA (2011年7月1日暫定発効)に続き、米国とのFTAが今年3月15日に発効した。これにより、韓国で生産し「韓国製」として輸出した方がEUや米国市場へのアクセスで有利となり、投資先としての魅力が高まった。 8009001,0001,1001,2001,3001,4001,5001,6002008/1709/1710/1711/1712/1<ウォンの対ドル・円レート(月中平均)>(1ドル、100円= )(資料)韓国銀行、Economic Statistics System(年/月)対円対ドル
日本と比較しての法人税率の低さや電気料金の安さ、ウォン安などがその魅力を高めている。
■期待されるいくつかの経済効果
日本の対韓投資の増加は中期的にみて次のような効果をもたらすと考えられる。第1は、韓国国内の産業リンケージの強化である。韓国では大企業の成長の成果が国内に十分に波及しておらず、産業リンケージの強化が課題となっている。部品・素材分野への日本企業の進出はリンケージの強化に寄与しよう。第2は、対日貿易赤字の縮小である。対日貿易赤字問題は日韓経済連携協定交渉(中断中)でも争点の一つとなったため、その縮小は政府間交渉再開に向けてプラスに作用しよう。第3は、日韓の生産分業ネットワークの緊密化である。日本企業の間で、コストパフォーマンスに優れた韓国製部品や鋼板を調達する動きが広がっており、日本企業の韓国進出はこうした動きを拡大させる可能性がある。
日韓経済を取り巻く環境が大きく変化しなければ、当面日本の対韓投資は高水準で推移するものと予想される。
上席主任研究員 向山 英彦


香 港 景気は減速、台頭するドルペッグ制の見直し論
■景気は減速
香港では2011年春以降、景気減速が続いている。外需の回復力は弱く、内需の増勢は鈍化しつつある。
外需についてみると、5月の輸出は欧州債務危機の影響を受けて、前年同月比5.2%増と低い伸びにとどまった(右図)。とりわけ、EU向けは同▲6.3%と減少幅が拡大した。他方、中国の内需に回復の兆しがみられたことを背景に、中国向けは同9.5%増とプラスに転じた。
内需についてみると、5月の実質小売売上高が前年同月比5.8%増と増勢が鈍化した。株価の下落を受けて、消費者マインドが悪化した。6月末の香港ハンセン指数は19,441ポイントと3月末から▲5.4%低下した。 <輸出と小売売上高>(前年同月比)▲ 30▲ 20▲ 10010203040200809101112(年/月)(%)輸出額実質小売売上高(資料)香港政府統計処
雇用情勢はこれまでの内需拡大を背景に、良好な状況を維持している。3〜5月の失業率は3.2%と2011年6〜8月以降低水準での推移が続いている。消費者物価上昇率は2011年7月の前年同月比7.9%をピークに、2012年5月には同4.3%まで低下した。食料品を中心に中国本土でのインフレ沈静化の動きが、香港に波及しつつある。
■台頭するドルペッグ制の見直し論
6月、香港金融管理局の前総裁である任志剛氏はドルペッグ制維持の妥当性を問う論文「香港金融制度の未来」を発表した。任氏は現時点での制度変更を主張してはいないものの、香港の公益を踏まえると、将来的には制度変更が必要になることを示唆した。
これに対し6月12日、曽俊華財政長官と陳徳霖香港金融管理局総裁、および、行政長官に内定している梁振英氏は、相次ぎドルペッグ制を変更する計画はないとの声明を発表した。現行制度はこれまで金融市場と経済の安定化に有効に機能し、香港に最適であることを強調した。
確かに、現時点でドルペッグ制を廃止し、香港ドルのフロート制や人民元ペッグ制を採用することは難しい。フロート制を採用すれば、香港ドルが投機の対象になり、急激な資本流出入が発生し、金融市場と経済発展の安定が損なわれるリスクがある。香港は対外依存度が高く、経済規模が小さいことを踏まえると、このリスクはあまりに大きい。
一方、人民元が国際化されていない現状では、人民元ペッグ制を採用するコストは高い。香港企業は様々な企業と貿易しており、欧米など非人民元圏との貿易額は貿易総額の5割にのぼる。人民元レートが中国政府の為替操作で変動すると考えている企業であれば、人民元およびそれとペッグした通貨で積極的に取引はしたがらないだろう。したがって、香港企業は貿易決済用に米ドルを保有する必要がある。こうしたなか、人民元ペッグ制を採用すると、香港企業は米ドルと香港ドルの為替変動リスクを負うことになる。
しかし、人民元の増価に伴い、香港の人々の中国本土に対する購買力は低下しつつあるだけに、将来的に人民元の国際化が進んでいけば、人民元ペッグ制を採用する可能性は十分に考えられる。
研究員 関 辰一


マレーシア 労働力不足への対処が課題
■景気は底堅く推移
2012年1〜3月期のマレーシアの実質GDP成長率は、先進国経済の低迷により純輸出が前年同期比▲20.8%と鈍化したものの、内需が同9.6%増と堅調に推移したことから、4.7%となった(右上図)。
民間消費は、良好な雇用環境と可処分所得の上昇などから同7.4%増と高い水準を維持した。また、固定資本形成も同16.2%増と高い伸びになった。民間投資が石油ガス部門を中心に同19.8%増、公共投資もクアラルンプールの高架鉄道拡張を含む大量高速輸送(MRT)システムの進展やペナン島の第2連絡橋の建設などにより同10.3%増になった。
4月の製造業生産指数をみても、輸出向けが前年同月比3.2%増にとどまったのに対し、国内向けは同11.3%増と高く、景気が内需主導であることが確認できる(右下図)。輸出の伸びは4月が同▲3.0%、5月が同3.6%増と低迷している上、今後欧州危機の影響が危惧されるものの、マレーシア中央銀行は、内需主導の景気拡大が続くとし、通年の成長率は4%台を維持できると見込んでいる。
■労働力不足と賃金上昇が政治課題に
このようななか労働力不足が顕在化してきた。4月の失業率は3.0%であるが、労働力不足が問題となる産業は、製造業から建設業、サービス部門、農業に拡大している。これまでマレーシアは労働力不足を外国人労働者によって補ってきた。外国人労働者は登録ベースで180万人と労働力人口の10%を超えている。たとえば、マレーシアの主要輸出品であるパームオイルの原料であるアブラヤシの農園では、50万人の労働力のうち70%が外国人労働者である。今後さらに50万人の労働力が必要との見方もあり、労働力不足が輸出にも影響を及ぼす可能性がある。ナジブ政権は、発足以来、不法労働者の取り締まりに加え、登録制の徹底や外国人雇用税の引き上げを通じて外国人労働者の就労を制限しようとしてきたが、現場からは規制緩和を求める声が強まっている。
このような労働力不足に加え、最低賃金制度の導入により賃金が上昇し、企業の経営を悪化させるとの懸念も広がっている。最低賃金の水準については、月900リンギ(約2万3,000円)にすることは決定済みであるが、企業側は諸手当を含めるべきと要請し、政府はその対応に追われている。同制度は7月1日付け官報で公示される予定であったが、7月中旬でもなお調整が続いている。また、マレーシアでは定年退職年齢は現在55歳であるが、これを60歳に引き上げるべきだとの主張も見られるようになった。東アジアでは比較的若い人口構成を持つマレーシアであるが、労働力を巡るさまざまな問題が浮上していることに注意したい。
上席主任研究員 大泉 啓一郎

ベトナム 年後半に回復が見込まれるも物価が懸念材料に
■4〜6月期のGDP成長率は4.7%
4〜6月期の実質GDP成長率は前年同期比4.7%となった。供給項目別寄与度をみると、農林水産業が1.0%ポイント、工業・建設業が1.2%ポイント、サービス業が2.5%ポイントであった。工業・建設業の内訳をみると、製造業が1.0%ポイント、非製造業が0.2%ポイントといずれも低調であった。なかでも、不動産価格の下落に伴う建設業の低迷が深刻で、2011年10〜12月期から3期連続で寄与度がマイナスとなった。
1〜3月期と合わせた1〜6月期の実質GDP成長率は前年同期比4.4%となった。需要項目別の統計はまだ発表されていないものの、投資と個人消費はいずれも低調に推移した模様である。1〜6月期の粗固定資本投資は名目ベースで前年同期比10.1%増にとどまった。これは1998年(前年比8.1%増)以来の低水準である。年初から6月20日までの外国直接投資(新規認可投資)は同24.3%減の48億ドルであった。一方、1〜6月期の消費財・サービスの売上高は名目ベースでは前年同期比19.5%増となったものの、物価上昇分を除いた実質ベースでは同6.5%増と低調である。自動車販売も不振で、ベトナム自動車工業会(VAMA)は2012年の新車販売予測を当初の13〜14万台から10万台に引き下げた。 ▲ 202468101Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q4Q1Q2Q2009201020112012農林水産業工業・建設(製造業)工業・建設(非製造業)サービス業GDP成長率(資料)CEICデータベースより作成(年/期)(%)<GDP成長率と供給項目別寄与度>
■年後半に回復へ
統計総局は、景気は回復に向かい、年後半の実質GDP成長率を前年同期比5.7%と見込んでいる。その理由として、同局は鉱工業生産指数が上向く一方で、在庫が減少しつつあること、また、昨年からの最大の懸案であった物価が漸く安定に向かい、金融緩和の余地が広がってきたことを挙げている。中央銀行は、6月の消費者物価上昇率が前年同月比6.9%まで低下したことを受け、政策金利を引き下げた。政府は予算の執行率を引き上げるとともに中小企業に対する法人税減税などにより、景気浮揚を後押しするとしている。 0510152025303540455020082009201020112012CPI食糧・食品(資料)CEICデータベースより作成(年)(%)<CPIおよび食糧・食品価格推移(前年同月比)>
1〜6月期の輸出は前年同期比23.4%増の531億ドル、輸入は同8.7%増の538億ドルであった。輸出の伸長を受け、貿易赤字は7億ドルと前年同期の約10分の1に縮小した。ただし、輸出を牽引しているのは携帯電話(前年同期比129.8%増の47億ドル)とエレクトロニクス・パソコン(同84.9%の34億ドル)といった品目に限られており、最大の輸出品である繊維製品は欧米経済の低迷により同8.7%増の68億ドルと伸び悩んでいる。グエン・タン・ズン首相は、7月初旬に開催された閣議で2012年の成長率目標を5.2〜5.7%に据え置くとしながらも、目標達成に対する強い執着は見せなかった。足元ではコメ価格が再び上昇し始めており、政府と中央銀行には物価に目配りをした慎重な経済政策が求められている。
主任研究員 三浦 有史

インド 求められる景気回復策
■早期の景気回復は困難
インドでは四半期成長率の低下傾向が続いているものの、インフレが高止まりしているため、準備銀行は政策金利を大幅に引き下げることができない。また、財政赤字が拡大しているため、政府が景気対策を実施することも難しい。基本的には高度成長の途上にあるものの、世界的な景気減速のなかで容易に景気浮揚策を実施できない状況にあり、成長率は抑制されよう。
当面、投資・生産活動は低調が続き、製造業は伸び悩むと思われる。鉱工業部門の伸び悩みが、景気の下支えとなっているサービス業部門に波及する可能性もある。一方、農業部門では平年並みの降雨量を背景に生産が順調に推移するとみられ、成長率は3%程度となろう。こうした状況下、早期の景気回復は望みにくく、2012年度の実質GDP成長率は6.5%程度にとどまろう。準備銀行は4月の段階で成長率を7.3%と見込んでいたが、7月の政策決定会合において引き下げる可能性がある。
景気減速の主因は投資の不調であり、その回復には時間がかかるものとみられる。その要因は、第1に、国内でインフレや高金利が続く一方、世界景気の先行き不透明感が高まり、輸出の伸びが急低下しているため、企業心理が著しく悪化していることである。これを反映し、新規の投資計画が激減している。また、電力や鉄鋼など、大規模投資が期待できる分野が伸び悩むなか、投資プロジェクトの平均規模が縮小している。この状況を変えるためには、企業心理の大幅な改善が不可欠である。第2に、財政赤字が拡大していることである。これにより、将来への不安が高まるとともに、民間投資が金利の高止まりを通じて抑制されていると考えられる。
■求められる景気回復策
インフレは景気減速に伴って短期的には低下する可能性があるものの、先行きは予断を許さない。食品価格の上昇は構造的な要因による部分が大きく、容易には改善しないであろう。また、インドは食品の多くを輸入に依存しており、ルピーの減価は輸入価格の上昇要因となる。この点は、燃料価格についても同様である。準備銀行は、所得水準の上昇に伴ってインフラやエネルギーなどに関するボトルネックが深刻化しており、インフレ圧力を高めることなく維持できるトレンド成長率が低下したとみており、その意味でも利下げ余地は少ない。6月には、大方の予想に反し、利下げが見送られた。投資の動向に金利水準が与えている影響は限られており、利下げは成長を促進する以上にインフレを助長しかねないというのが、準備銀行の見解である。
一方、政府は財政赤字の改善を図るとともに、投資を加速するための政策を講じることが必要である。投資プロジェクトの実施に際し、環境関連の認可に時間がかかることや土地買収が難しいことなどが障害となっており、これらを改善しなければならない。また、燃料や電力の不足が大きなボトルネックとなっている。IMFはビジネス・コストの高さが投資にマイナスの影響を与えていると指摘し、投資環境の改善を求めている。大手格付け会社のソブリン格付け見通しが引き下げられるなど、インドに対する見方は厳しくなっており、政策面の対応が急務といえよう。
主任研究員 清水 聡


 

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