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ECBの短期債に焦点あてた追加国債買い入れ、リスク伴う 宗教学と経済学から見た欧州債務危機の深層
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/274.html
投稿者 MR 日時 2012 年 8 月 06 日 17:05:18: cT5Wxjlo3Xe3.
 

焦点:
ECBの短期債に焦点あてた追加国債買い入れ、リスク伴う
2012年 08月 6日 12:00 JST
[ロンドン 3日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、今後再開する可能性のある国債買い入れでは期間が短めの債券が対象になる、と発言したことから、イタリアとスペインは今後、長期債による資金調達で苦労するかもしれない。そうなれば、短期債増発を余儀なくされ、投資家のセンチメントに一段と左右されることになる。

ドラギ総裁は2日、ECBが市場に介入する場合には短期債に主眼を置くと発言した。これを受け、スペインやイタリアの10年物国債と2年物国債の利回り格差は拡大した。

スペインの2年債と10年債の利回りスプレッドはここ1日で1%ポイント近く拡大し、310ベーシスポイント(bp)となった。データストリームによると、これは少なくとも1990年以来の高水準。

イタリアの2年債と10年債の利回りスプレッドは0.25%ポイント拡大し289bpとなった。

借り入れコストの低下は短期的にはイタリアやスペインにとりプラスとなる。ただ、アナリストは、数年後に資金調達で厳しい状況に直面すると指摘する。

INGのストラテジスト、アレッサンドロ・ジャンサンティ氏は「ECBの目的はスペインとイタリアの資金調達コストを減らすことだが、スペインとイタリアに対して短期債発行の圧力が高まっている。短期債の増発は数年後の償還という厄介な状況を生み出す」と述べ「そのうえイタリアとスペインは、投資家需要の減退から長期債発行も難しくなる。投資家は償還状況に注意を払い、リスクプレミアムを求め始めるだろう」と指摘した。

ジャンサンティ氏はスペインの2年債と10年債の利回りスプレッドは今後2週間で350bpに拡大すると予想している。

<拡大するスペインの短期債発行>

ユーロ圏債務危機はギリシャからポルトガル、アイルランド、そして、ユーロ圏で3番目の経済国であるスペインへと波及した。

スペインではこのところ短期債の発行が増えている。スペイン財務省によると、6月時点でスペイン国債の平均償還年数は6.29年と2011年1月時点の6.59年から縮小した。単月データは2011年以降の物しかないが、年間ベースで比較した場合これは2004年以来の低水準となる。

投資家が、ECBによる将来の債券買い入れの対象にはならないと予想する長期債に大幅なプレミアムを求め始めた場合、短期債の発行はさらに拡大する。

インベステックの債券アナリスト、ブライアン・バリー氏は「資金調達コストが短期債の方が低いのであれば、またそれが投資家に需要が見込める年限であれば、今後数四半期は短期債の発行が増えるだろう」との見方を示した。

<持続可能かどうかがカギ>

ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、Ciaran O'Hagan氏は、スペインとイタリア国債の償還の状況は差し迫った問題ではないと指摘。「基本的に償還まで長期であるほうが好ましいが、投資家が警戒しているのは持続可能性であり、それは利回りが魅力的な水準かどうかに左右される」と語った。

スペインの2年債利回りは4.05%と、2日のピーク時から1%ポイント近く低下。7月25日につけたユーロ導入以来の高水準の7.18%からも低下した。

イタリアの2年債利回りも7月につけた5.3%から3.15%に低下した。

現在の利回りは借り入れ側からみればもっと魅力的だ。ただ、イタリアとスペインが短期債を増発した場合にリスク要因となる。

ロボバンクのエコノミスト、エルウィン・デゥ・グルート氏は「(スペインとイタリアの)短期債の利回りがこれまでよりも持続可能な水準になったことから、ECBは短期的な余裕をつくったといえる。ただ、これを受けスペインとイタリアが短期債の発行を拡大すれば、ECBからの贈り物を手離さなければならないだろう。イタリアやスペインは国債発行を今よりも頻繁に行い、その結果借り換えリスクやセンチメントに対してぜい弱になる」との見方を示した。

(Swaha Pattanaik記者;翻訳 伊藤恭子 編集 佐々木美和)
http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPTYE87501Q20120806

スペイン、イタリア、ポルトガル2年債上昇、スペイン利回り3.80%
  8月6日(ブルームバーグ):6日朝の欧州債市場でスペインの2年債が上昇。ロンドン時間午前8時12分現在、利回りは16ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の3.80%となっている。
イタリア2年債利回りは10bp低下し3.03%。ポルトガル2年債利回りは36bp低下の7.48%。
記事についての記者への問い合わせ先:London Lucy Meakin lmeakin1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Daniel Tilles dtilles@bloomberg.net
更新日時: 2012/08/06 16:20 JST


ECB、ギリシャ中銀の緊急流動性支援で担保受け入れ限度拡大を承認
  8月4日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)は2日の政策委員会で、ギリシャ銀行(中央銀行)の緊急流動性支援(ELA)の担保となる政府短期証券について、受け入れ限度額の引き上げを求めるギリシャ中銀の要請を承認した。独紙ウェルトが中央銀行の複数の当局者の発言として報じた。
同紙によれば、ギリシャ中銀は担保として受け入れる政府短期証券の限度額を従来の30億ユーロから70億ユーロに引き上げることを要請し、ECB政策委がこれを了承した。ELAの担保受け入れ限度額引き上げによって、ギリシャ政府は短期証券を銀行に売ることで財政上の義務を履行することが可能になる。
記事についての記者への問い合わせ先:Berlin Rainer Buergin rbuergin1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:内田良治 Ryoji Uchida ruchida2@bloomberg.net
更新日時: 2012/08/06 07:47 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M8B0NC6K50XV01.html

コラム:
宗教学と経済学から見た欧州債務危機の深層
=上野泰也氏
2012年 08月 6日 11:42 JST
上野泰也 みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト

[東京 6日 ロイター] 長期化するユーロ圏債務危機。これまでに欧州連合(EU)に対して金融支援を要請した通貨統合参加国は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、キプロスの5か国に上る。そして、市場が次に金融支援を要請する最有力候補と見ているのはスロベニアである。

スロベニアのクラニェツ中銀総裁やシュシュテルシッチ財務相は、銀行セクター救済のために同国が金融支援を将来要請する可能性を認めている。7月9日のユーロ圏財務相会合ではスロベニア問題も議論された。このほか、イタリアは国債利回りが市場で恒常的に高めになっており、モンティ首相は欧州安定メカニズム(ESM)による国債買入れ支援を要請する可能性に言及している。

そのイタリアでは来年の春に総選挙が行われる見通しだ。モンティ首相が退任の意向を表明する一方で、ベルルスコーニ前首相が再登板を目指す動きを見せており、政治が再び混乱しようものならば、イタリアが次の危機の火種になる恐れがある。

周縁国と呼ばれることもある欧州の「南」の国々が金融支援を要請し、ドイツやオランダ、フィンランドをはじめとする「北」の国々が主導する形で救済に厳しい条件が付けられるというのが、もはやパターン化された欧州債務危機の対立の構図と言えよう。

中央大学総合政策学部の保坂俊司教授は、ユーロ危機を引き起こした当事国が総じてカトリック国(あるいは非プロテスタント系)であることに着目し、欧州債務危機の根源に倫理観、特に経済倫理の違いがあるとの指摘を行っている(「週刊エコノミスト」2012年6月19日号掲載論文「宗教の歴史 カトリックとプロテスタント 欧州危機が示す倫理観の差」)。

日本の外務省ホームページで、冒頭で挙げた7カ国の宗教分布を調べてみると、カトリック教徒の比率は、イタリアで約97%、アイルランドで約87%、スペインで約75%(外務省は「と言われる」として限定的表現は避けている)、ポルトガルで「圧倒的多数」、スロベニアで57.8%だという(ギリシャとキプロスではギリシャ正教が優位)。保坂教授は、カトリック派の国々について、「倹約や勤勉が美徳とされる日常生活重視のプロテスタント派とはやや異なり、人間生活の意味を多元的にとらえる。言い換えれば、財政健全化のために身を削るような倹約をするよりも、他の道があるはずだと考える」(前出の論文より引用)と指摘している。

また、先日ある日銀関係者からご教示いただいたが、英ウォーリック大学のサッシャ・ベッカー教授も、カトリックとプロテスタントという宗派の違いが欧州の「南」と「北」の財政状況の差異につながっていると述べている(英紙「ガーディアン」2011年10月31日付記事「Protestant v Catholic: which countries are more successful」)。同教授の分析によれば、一般論として(欧州では)プロテスタントはカトリックよりも高いレベルの教育を受ける傾向が強く、それが経済的成功の一因であり、女性の社会進出が活発になった20世紀以降もそうした傾向は変わっていないという。

こうした指摘は、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で指摘した近代資本主義の原点を、今回の欧州債務危機における対立の構図に重ね合わせようとする考え方であり、一定の説得力は確かにあると言える。

<宗派にかかわらずバブルは発生する>

ただ、宗教学による欧州債務危機の原因分析でやや苦しいと思うのは、ドイツでは実際は南部のバイエルン州を中心に、若干とはいえ、カトリックの方が数において勝るという事実である(独連邦統計庁の2008年末のデータでは、カトリックは2518万人で、プロテスタントは2452万人)。

さらに、他の「北」の国々でも、たとえばオーストリアではカトリックが約74%で、プロテスタントは約5%にすぎない。オランダではカトリックが27%で、プロテスタントが16.6%である。

また、バイエルン州を地盤にしておりカトリック教会とのつながりが強い地域政党であるキリスト教社会同盟(CSU)は、ドイツの連立与党の一角を占めているが、最大与党であり姉妹政党であるキリスト教民主同盟(CDU)よりも、保守色がはるかに強い。ギリシャ問題ではCSU幹部が、ユーロ圏からのギリシャ離脱論をしばしば唱えている。

加えて、今回の欧州債務危機とは別の扱いになっているが、アイスランドの例がある。金融バブル崩壊によって2008年に国内3大銀行が経営破綻して国有化され、国際通貨基金(IMF)や北欧諸国の金融支援を受けた同国は、プロテスタントが圧倒的に優位の国である(人口の約8割が福音ルーテル派)。

結局、経済活動において人間心理に由来する振れはつきもので、宗派にかかわらず、バブルは発生する条件さえ整えば発生する。今回の危機に対する宗教学的な分析は重要だが、経済学的立場から言えば、「カトリック(およびギリシャ正教)vsプロテスタント」という構図だけで説明することはできない。

筆者が、欧州債務危機と宗派との関連でむしろ注目しているのは、同じ宗派が優位の国家同士に連帯意識が見られているという点である。6月下旬のEU首脳会議では、カトリックが優位の国であるフランス、イタリア、スペインが団結し、最終的にドイツの譲歩を引き出した(ちなみにメルケル独首相はルター派のプロテスタントの牧師の娘である)。

また、ギリシャ正教優位の国であるキプロスは、EUに加えて、経済および宗教面で関係が深いロシアに対しても金融支援を要請した。ロシアで復権が著しいロシア正教は、ギリシャ正教と源流が同じである。ちなみに、筆者は10年ほど前にモスクワから空路キプロス入りしたことがあるが、その当時からキプロスはロシア人にとって、風光明媚で同胞も数多い保養地として、さらには投資先として、特別な存在だったようである。

欧州債務危機は、最終的にどうなるのか。保坂教授は、2012年7月8日付東京新聞のインタビューで、「EUやユーロは経済的な損得だけではなく、キリスト教徒の互助的な仕組み」であるとして、「倫理観の違いは大きいが、最終的には必要な財政支援が行われ軟着陸するのではないか」と答えている。

筆者の場合、通貨統合から離脱する国を1つでも出してしまうと、統合そのものへの信認が決定的に失われてしまい、「火事」はもはや手がつけられなくなる恐れが大きいという点、すなわち通貨統合参加国は一種の「運命共同体」であるという点を重視している。ただ、長い時間をかけつつ危機は収拾されるだろうとの見立ては同じである。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPTYE87501A20120806



焦点:
独連銀総裁、ECB内の孤立回避へ対外折衝能力駆使の構え
2012年 08月 6日 15:05 JST
[フランクフルト 3日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)のユーロ圏債務危機への対応をめぐり、ドラギ総裁とドイツ連邦銀行のバイトマン総裁の対立は日増しに緊張感が高まるとともにお互いに負ければ失うものが大きいという、抜き差しならない状況に陥っている。

ドラギ総裁は7月下旬に、ユーロ防衛のためにあらゆる手段を講じると約束したことを踏まえて、8月2日のECB理事会後の会見で、スペインやイタリアの借り入れコスト軽減のために再び国債市場に介入する方針を示した。

しかし欧州最大の経済規模を誇るドイツの中央銀行であるドイツ連銀は、政府の財政ファイナンスにつながり、欧州連合(EU)の法令違反になるとの理由で猛反対している。

ドイツ連銀のウェーバー前総裁は、ECBによる初めての国債買い入れの際に抗議する形で辞任したが、バイトマン氏はドラギ総裁の動きを抑え、ECB内で孤立するのを防ごうとして、自身が過去に身に付けた対外折衝能力を活用しようとしている。

バイトマン氏は、ルワンダ中央銀行における勤務やフランスでの研究生活を経て、国際通貨基金(IMF)で働き、メルケル・ドイツ首相の経済顧問になった。こうした経験によって、ウェーバー氏とは異なる柔らかな物腰や折衝能力が備わり、バイトマン氏がウェーバー氏の轍を踏んで辞任する兆しは見当たらない。

ドラギ総裁が「あらゆる手段を講じる」と発言した後で、ECB当局者間の意見交換が活発化。そうした中で、元ドイツ財務次官のアスムセンECB理事が連絡役となってドラギ氏とバイトマン氏の溝を埋めようと努め、7月30日には両者が会談したが、それでも見解は一致しなかった。

そしてドラギ総裁は、8月2日の理事会後の会見で「国債買い入れ再開の指針に関する投票は、全会一致だったが1人だけ判断を留保した」と述べ、バイトマン氏が賛成しなかったことを明らかにした。

ただ2人の中銀関係筋によると、2日に正式な投票は行われておらず、このうちの1人はドラギ総裁がバイトマン氏の孤立化を狙っているとの見方を示した。

<堪忍袋の緒が切れる>

3日付のドイツ経済紙ハンデルスブラットは、一面に「どれだけ持つのか」との見出しを掲げて、バイトマン氏がECB理事会で孤立している状況にいつまで耐えられるか疑問を呈した。

もっともバイトマン氏は昨年5月にウェーバー氏の後任となって以来、ECB内ではたいてい少数派の立場に置かれている。それでもドラギ総裁はこれまでは、内部対立を見せないように配慮してきた。例えば3月の理事会後には「理事会ではだれも孤立していないし、特にドイツ連銀が孤立していることはない」と話している。

ECBの国債買い入れ再開について、他の何人かの理事会メンバーも判断を留保していたが、条件がついたことで彼らは反対を取り下げた。

結局のところドラギ総裁は、自身の国債買い入れ計画を但し書きや条件だらけにしたのだ。現時点でECBが出したのは、確固とした決定ではなくて「指針」だと強調し、欧州各国がユーロ圏救済基金の国債購入機能をまず立ち上げ、ECBが購入に動く場合でも短期債に限定することなどを挙げている。

一方でドイツ連銀の支持がなければ、ECBの国債購入は、過去に行われた証券市場プログラム(SMP)と同じように効果がないと市場にみなされるだろう。

ドラギ総裁のバイトマン氏に対する堪忍袋の緒は切れつつあるように見える。ドラギ総裁は就任後最初に臨んだ昨年11月3日の理事会後の会見で「わたしはドイツ連銀の伝統に大いなる敬意を抱いている」と話したが、彼が強調したのはその次の独自路線を宣言した「今後については自分に仕事を任せてもらうとして、わたしがドイツ連銀の伝統に沿うか逸脱するかは、定期的に点検されることになるだろう」というくだりだった。

ドラギ総裁は、ドイツ連銀の伝統だけでなく、前任のトリシェ氏のやり方とも違う道に踏み出している。トリシェ氏は忍耐を続けて、ECB理事会内でどれほど論争があろうとも表面上は組織の結束を演出していたのだ。

(Paul Carrel、Eva Kuehnen記者 )

http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPTYE87503V20120806

コラム:円高を誘発するドイツとEUの信用格差=熊野英生氏
2012年 08月 3日 18:31 JST
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

[東京 3日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会は2日、政策金利を0.75%で据え置いた。一方、ドラギ総裁は「数週間以内に非伝統的な追加緩和の枠組みを用意する」と南欧国債の購入に踏み切る方針を示唆している。

利下げに限界が見えたので、次なるECBの緩和は国債購入に踏み切るというのは、ごく一般的な読み筋である。では、ECBが南欧国債を大量に購入するようになった場合、日本経済にはプラスなのか、あるいはマイナスなのだろうか。

<マイナス金利でもドイツ国債に逃避する投資家>

まずは、今起こっている金融の異常事態に触れておきたい。ドイツの債券利回りは、3年以下の年限でマイナス金利になっている。これは、資金を預けた方が利息を支払うという倒錯した世界である。ドイツ政府にしてみれば、利息を受け取りながら資金を借りられるというのだから異常である。

では、なぜマイナス金利でもドイツ国債に投資をしたいという投資家がいるのか。理由は、金融機関の極端な安全志向による。

7月のECB理事会では、政策金利を1.00%から0.75%へ利下げするとともに、預金ファシリティーの適用金利を0.25%から0%に引き下げた。ECBが民間金融機関から受け入れる預金金利を0%にしたことは、民間金融機関からすれば、ECBに0%で貸し付けておくことが望ましいかどうかの踏み絵になったかたちだ。

欧州の民間金融機関は、ECBに0%で預けるよりも、ドイツ政府という「貸し金庫」に資金を入れておく方が、手数料を支払ってでも合理的選択だと考えた訳である。つまり、ドイツのマイナス金利の幅は、ECBのリスクプレミアムが意図せざるかたちで表面化したことになる。

もしも、ECBが南欧国債を大量に買うようになれば、ECBの信用は低下して、ドイツとの信用格差はますます広がることになる。ドイツのマイナス金利は、スペインなど南欧諸国の財政状況に反応して、さらに広がる可能性がある。

<際限なきユーロ安への道>

ドイツの債券利回りが低下することは、ユーロ安要因である。マイナス金利になっているドイツの2年物金利と、米2年物金利の間の金利差は、ユーロ安・ドル高の動きと連動性が高い。ドイツの2年物金利がマイナス幅を拡大させるほど、ユーロが減価するという反応だ。ECBの南欧国債の購入が進めば、ユーロ安が進行することが予想される。

このユーロ安の動きは、円高にも通じる。ドイツ国債への質への逃避は、ユーロ売りの反映であり、その時にはドル買い・円買いの流れが生じている。過去のパターンから言えば、安全志向でドルが買われる時には、同時に円も買われて、相対的に円買い圧力の方が大きくなるために、ドル円レートを円高に向かわせることが多い。

冒頭に記した、ECBが南欧国債を大量に購入した場合に、日本経済にはプラスかマイナスかという問いの答えは、「円高によって日本経済はダメージを受ける」というのが筆者の見解である。

<ユーロ共同債構想はプラスかマイナスか>

次に、ECBの南欧国債購入の先に、欧州連合(EU)がユーロ共同債を発行するようになった場合の日本経済への影響を考えてみたい。

ユーロ共同債の発行は、スペインやイタリアがEU全体で資金調達するようになれば、長期金利上昇に悩まされなくて済むという発想に基づいて期待されている。この政策対応は、イタリアとスペインにとっては都合が良いかもしれないが、ドイツ政府にとっては迷惑な話に思える。

ユーロ共同債の発行は、欧州域内の財政統合へとつながる話であり、ドイツ国民の税金と信用力を他国救済へと流用するものである。ドイツ政府にすれば、税金と信用力を流用されることは、相対的に金利上昇を促すものである。仮に、ドイツ政府が、EU全体の信用リスクを背負い込むと、現在のドイツのマイナス金利すら解消される可能性がある。これは、欧州域内で南欧諸国からドイツに還流していたマネーが、欧州域外に流出するという意味を持ち、ユーロ安要因になる。

そうすると、質への逃避の流れは、ドル買い・円買いへと向い、さらなる円高を誘発することになるだろう。ここにきて国際通貨基金(IMF)は、日本の為替介入に寛容な見方を示すようになっている。介入観測はすでに欧州発の円高圧力に拮抗する力として作用しているが、日本政府も1ドル=77円台へと急伸する円高に対しては口先介入で牽制する姿勢をとらざるを得ないのではないだろうか。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPTYE87204R20120803



基調判断を「足踏み」に、15カ月ぶり下方修正=6月景気動向指数
2012年 08月 6日 15:15 JST

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[東京 6日 ロイター] 内閣府が6日に発表した6月の景気動向指数速報によると、CI(コンポジット・インデックス)一致指数は前月比2.0ポイント低下し93.8となった。低下は3カ月連続。内閣府では、一致指数を踏まえた基調判断を「足踏みを示している」に下方修正した。

前月までは4カ月連続で「改善を示している」だった。基調判断の下方修正は2011年3月以来、15カ月ぶり。世界的な経済の減速で、これまで好調だった自動車の生産減が響いた。

景気の現状を示す一致指数は、判明した11系列のうち、プラスは「有効求人倍率」のみ。10系列がマイナスに寄与した。マイナスの寄与度が大きかったのは、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数、商業販売額(卸売業)、大口電力使用量、商業販売額(小売額)など。

また、景気の先行きを示す先行指数も前月比2.6ポイント低下の92.6と、3カ月連続で低下した。化学や鉄鋼業などの鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、日経商品指数などがマイナスに寄与。マインドの悪化がみられる中小企業売上見通しDIもマイナスに寄与した。

(ロイターニュース 吉川裕子;編集 田中志保)

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先行指数が4カ月ぶりプラス転換、11月景気動向指数 2012年1月11日
 

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コメント
 
01. 2012年8月06日 17:29:57 : cqRnZH2CUM

ユーロの働きアリであり財布でもあるドイツが、どこまで耐えられるかだが


>欧州の民間金融機関は、ECBに0%で預けるよりも、ドイツ政府という「貸し金庫」に資金を入れておく方が、手数料を支払ってでも合理的選択

もし、秘密裡にドイツがユーロ離脱し、マルクに復帰することを織り込んでの話だとしたら、さらに合理的だな


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