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欧州中央銀行による債務国の国債購入に批判続出 ユーロ圏を
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投稿者 MR 日時 2012 年 8 月 10 日 10:18:25: cT5Wxjlo3Xe3.
 

欧州中央銀行による債務国の国債購入に批判続出

「フィンランド国民は自己管理を怠った国に対する緊急救済を歓迎できない」

2012年8月10日(金)  グローバル・プレス

 欧州中央銀行(ECB)は8月2日に理事会を開催し、マリオ・ドラギ総裁がスペインなどの債務国の国債を買い入れる意向を示した。スペインとイタリアの国債利回りが高止まりしており、金利調整などの伝統的な金融政策が一向に目立った効果を発揮しないことに業を煮やして市場介入を表明したものだ。ECBは2010年5月からの2年間に、債務国から2110億ユーロ相当の国債を買い上げている。しかし、利回り低下は一時的なものにとどまったため、今年5月以降、国債購入を凍結していた。

 ドラギ総裁は債務国の国債を購入する条件として、まずユーロ圏が欧州金融安定基金(EFSF)などを通じて債務国の国債を買い入れること、また対象国が厳格な条件と欧州銀行監督機構などの監督を受け入れることを挙げた。しかし買い入れ時期と規模は明言しなかった。このため市場では逆に失望感が広がった。ユーロは一時1.21ドル台まで下がり、スペイン国債利回りは7%を突破する結果になった。

 落胆したのは市場だけではない。欧州各国、そして米国からもECBの対応への辛辣な批評が相次いだ。

「ECBの措置は単なる時間稼ぎ」(米WSJ)

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「言葉だけでは不十分」という見出しで、ドラギ総裁が国債購入の具体策を示せなかったことに対する市場の落胆を報道した。同紙はブログで「ECBの国債買い入れはユーロ地域問題の恒久的な解決策ではない」と指摘した。さらに、同紙のアレン・ミッチ記者は次のように分析した。ECBによる国債購入は「欧州の政治家が単一通貨制度の維持に必要なヨーロッパの財政統合やユーロ共同債を確立するまでの2〜3年の時間稼ぎ」と。

 ECBの理事会では、6月下旬に開かれたEU首脳会議の時と同様、ドイツなどの債権国とスペインなどの債務国の間で意見の相違があった。当初、国債買い入れにドイツ、オランダ、フィンランド、ルクセンブルク、エストニアが反対した。議論の後にも、ドイツ連銀のイェンス・バイトマン総裁は、23人いる理事の中でただ1人、債務国の国債を買い入れることに異議を唱え続けた。

 ドイツ政府は公式コメントを発表していないものの、全国紙フランクフルター・アルゲマイネは、メルケル首相がECBによる国債購入を「拒否している」と伝えている。また、レスラー経済相は「ECBの役割はユーロ価値の安定を保証することであり、各国に融資することではない。また通貨政策は債務国の財政改革努力を代替することもできない」と発言、今回の措置が「インフレ同盟への道」となる可能性を示唆した。

「介入は不必要で、間違っている」(ドイツ紙)

 ドイツのメディアでは、批判的な論調が圧倒的に多い。ECBには債務国の国債を買い入れる権限がないこと、インフレ高進のリスクが高まることを指摘している。また各紙とも、国債買入により債務国が改革を続ける意志を損なう可能性があると懸念している。

 フランクフルター・アルゲマイネは、ECBによる介入を「不必要で、しかも間違っている」と結論づけた。ECBはスペインなどの国債利回りが上昇していることを介入の根拠としているが、「7%の利回りは実際にはそれほど高率ではない。ユーロ導入前、利回りがもっと高い国もあった。それでも国家は存続していた。それは歴史が証明済みだ。数年前には正常範囲内だった利回りを、今、各国は危険視している」(フランクフルー・アルゲマイネ)。

 長期化するユーロ危機に対処することをあきらめる論調も一部にある。「(ECBが介入することで)債務国の資金調達は楽になるだろう。それに味をしめ、改革をなおざりにするリスクが大きい。しかし、政治的解決が不可能な状況でどんな代案があるのか? 金融市場は(債務国の)財政改革の進行度など最初から無視している。このままいけばユーロ圏は共倒れになる。そうなればドイツも傷つく。だからECBによる介入は正当なのだ」(ツァイト・オンライン版)。

首相が率先して債務国を批判(フィンランド紙)

 ロイターが報じたように、ドイツとともに債務国の国債買い入れに反対していたフィンランドでは、今回のドラギ発言によって通貨同盟への不満が再び噴出した。フィンランドは、EFSFが財政支援することにも、ESM(欧州安定メカニズム)が融資することにも反対している。ECBによる国債購入にも長期的な効果はないとみなしている。フィンランド中銀は「ECBがスペインやイタリアの財政政策に協力しすぎている」と警告した。

 特にカタイネン首相は、ユーロ圏がイタリア国債を買い入れることに懐疑的だ。ECB理事会の直前に、モンティ首相がイタリア国債買い入れに賛同を求めるキャンペーンのためフィンランドを訪れた。カタイネン首相はこの時も反対の姿勢を貫いた。共同記者会見の場で、モンティ首相に対して面と向かって「EUが定める予算規定を遵守し、厳しい自己犠牲を払ってきたフィンランド国民は自己管理を怠った国に対する緊急救済を歓迎できない。私自身を含め、フィンランド国民はこの状況を不公平と受け止めている」と言い放った(全国紙「ヘルシンギンサノマット」)。

「ドラギ総裁が市場の信頼を裏切った」(仏ル・フィガロ)

 債権国からの批判が強まる中、ECBの権威そのものを問う論調も目立った。特にフランス語圏のメディアの中に、今回のドラギ発言を、ECBに対する市場の信頼を損なうものとする意見が多い。フランスの中道右派ル・フィガロ(オンライン版)は「“スーパーマリオ”は投資家をがっかりさせた」と断じた。ドラギ発言が、投資家の期待や落胆をいたずらにあおって投機的な動きを誘発し、市場が混乱したと指摘する。

 またベルギーの中道右派ル・ソワール(オンライン版)は、ドイツ連銀のバイトマン総裁が、国債買い入れに同意しなかったことが議論を長引かせた事実を挙げ、ECBの手綱を握っているのは実質的にはドイツ連邦銀行であると指摘した。

執筆

(グローバルプレス)
田中聖香(ドイツ)
片瀬ケイ(米国)
靴家さちこ(フィンランド)
栗田路子(ベルギー在住、仏語メディア担当)


グローバル・プレス

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ユーロ圏を悩ます2つの「トリレンマ」とは?

長期化する危機にユーロ安が処方箋に

2012年8月9日(木)  武田 紀久子

 ユーロ危機が常態化している。その間に、主要通貨に対するユーロ安がすっかり定着した。危機の端緒となった2009年のギリシャ総選挙以降、今年7月末までのユーロの下落率を見ると、対ドルで16.4%、対円で38.6%、そして対G10(主要10カ国)通貨平均では23.6%と、ユーロ大幅安が全面的に進行している。

  もっとも、こうしたユーロ安に意外感をもつ読者は少ないだろう。債務危機によるユーロに対する信認低下や景気減速、そして欧州中央銀行(ECB)による緩和強化と、通貨安要因は枚挙に暇がないからだ。筆者も含め、多くの市場参加者にとっても、ユーロの大幅下落は予想通りの結果といえる。


出所:ブルームバーグ、Factset
注:ユーロ導入前の為替相場は、Factset算出によるユーロ加盟国旧通貨の合成値
 ただし、筆者は、確かにユーロ安は危機の「結果」、言い換えれば「症状」である一方で、それが危機の衝撃を和らげる「緩衝材」、つまりは「処方箋」の1つにもなっていることに注目したい。危機打開が難航しているユーロ圏では通貨安が歓迎されやすく、目下の市場の織り込み以上に今後もユーロ安が長期化する可能性はありそうだ。

ユーロ圏の抱える2つのトリレンマ

 ユーロ安が長期化すると考える理由は、ユーロ圏が根源的に内包している経済と政治という「2つのトリレンマ」に起因する。トリレンマとは、3つの理想は同時に実現できないという概念だ。

 まず、ユーロ圏が抱える経済的なトリレンマとは、いわゆる「国際金融のトリレンマ」で説明できる。国際金融のトリレンマとは、(1)為替相場の安定、(2)独自の金融政策、(3)自由な資本移動の3つを同時に満たす制度は原理的に不可能で、同時に実現できるのは2つまで、という命題である。

 ユーロはそもそも、このトリレンマの制約を抱えた制度であり、(1)為替相場の安定と(3)自由な資本移動を選択する代償として、欧州各国は(2)金融政策(および通貨)の独自性を放棄して統一通貨ユーロを採用した。このことが、ユーロ危機の根底にある。

 GIIPS(ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン)と呼ばれるユーロ圏の重債務国にとって、独自の通貨・金融政策を放棄した代償は、当初に覚悟したよりもはるかに大きかったに違いない。重債務国の多くは、体質的に高インフレ、経常収支赤字の国々だ。しかし、1999年のユーロ導入以降(ギリシャは2001年)、ドイツの経済状態に合わせた低い政策金利と通貨高を余儀なくされ、それが資産バブルの生成と崩壊を引き起こす素地になった。実力以上の低金利と通貨高によって蔓延した過剰な資金調達と購買力を、トリレンマの制約で各国は独自の通貨金融政策で制御することができず、不均衡が拡大していったのである。

緊縮策が顕在化させた「政治的トリレンマ」

 そしてもう1つのトリレンマが政治にある。経済学者ロドリクの「政治的トリレンマ」仮説によれば、(1)経済統合、(2)国家主権、(3)民主主義(大衆政治システム)、の3つを同時には達成できない。これをユーロ危機に揺れる現在の南欧諸国に当てはめるとどうなるか。

 GIIPSなどの重債務国にとっての目下の課題は、債務削減のための構造改革だ。しかし、通貨と金融政策が固定されている状況下での是正策は限られる。そのため、結局は物価や賃金を切り下げる「内的減価」で競争力の回復を図るしか選択肢がない、という厳しい状況に置かれている。

 欧州連合(EU)当局がGIIPSに求める過酷な緊縮策に対しては、各国の有権者の不満が高まっている。2011年以降、GIIPS全ての国において政権が交代した。ギリシャをはじめ各地でデモが頻発し、政府は有権者の反発を恐れて構造改革は遅れがちとなっている。

 ここに、政治的トリレンマが潜んでいる。ユーロを安定化させるには、ユーロ加盟国は国家主権の一部を放棄して、大胆な財政移転などを可能にするユーロ域内の統合深化が不可欠とされる。だが現実は、国家主権が損なわれることへの国民の反発は根強く、政治家は大衆迎合的な政策を打ち出す傾向にあり、統合深化は思うように進まない。

 GIIPS諸国では、総選挙が今春までに概ね一巡している。しかし、欧州は今後、今年9月のオランダ、そして来年9月のオーストリアやドイツなど「北欧」での総選挙で、再び政治的トリレンマという難題に直面することになる。

トリレンマが生んだ危機を通貨安が緩和

 ユーロ危機が長期化、複雑化している背景は、この経済と政治の2つのトリレンマにある。ユーロ圏の経済・政治的な統合深化にはかなりの時間がかかると予想される中で、通貨安は支援受け入れ国側の南欧、支援金拠出国側の北欧、いずれにおいても比較的「心地よい」緩衝材として歓迎される可能性は高い。

 ユーロ安の緩衝作用については、域内の輸出振興とデフレ圧力緩和の2つの経路が考えられる。ユーロ圏全体の景気減速が今のところ若干のマイナスで持ち堪えているのは、ドイツの輸出が総じて底堅く推移し、同国のGDP(国内総生産)が今年第1四半期も辛うじてプラス成長(前期比+0.5%)を維持しているためだ。輸出の約6割がユーロ圏外向けであるドイツにとって、通貨安による輸出振興上のメリットは大きい。ユーロ圏のメインエンジンであるドイツ経済の底割れ回避のために、通貨安の長期化は渡りに船であろう。

 もう1つは、重債務国のデフレ圧力の緩和だ。ドイツと異なり域外輸出比率が低いスペイン(約44%)やイタリア(約56%)にとって大幅な競争力回復は望めないものの、通貨高よりは通貨安が「まだまし」であり、通貨安のリフレ効果で現在進行中のデフレ政策の痛みが多少なりとも緩和される可能性はある。

 ちなみに、先に触れた「独自の通貨を放棄した大きな代償」については、例えばイタリアのそれが強烈であり、ユーロ導入以降の10年間で、実質実効為替相場が約40%上昇。同国の対外輸出競争力が大きく削がれ、世界貿易(輸出)に占めるイタリアのシェアは4.5%から2.7%へと、大幅縮小を余儀なくされている。

インフレリスクを容認し始めたドイツ

 デフレ圧力の緩和は、インフレ圧力の高まりと表裏一体であり、伝統的にインフレ・タカ派であるドイツがこれを容認するか、気になるところだ。通貨安が長期化するとなれば、輸出振興のメリット以上に、その副作用であるインフレへの警戒が高まる可能性があるためだ。しかし、域内の構造調整推進のために、ドイツは国内のインフレ圧力をある程度許容する方向へ傾斜しつつある様子が、以下の要人発言から伺える。

 まずは、ドイツのショイブレ財務相が今年5月に「ユーロ圏内の不均衡是正のために、ドイツは高めの賃金上昇を容認する」と発言したことだ。実際にドイツ最大の金属労組IGメタルは4.3%で賃金交渉を妥結するなど、インフレファイターであるドイツの政治的なハードルは低くなっている。また、前後してドイツ連銀のウルプリッヒ経済局長も「ドイツは高めのインフレを許容する」とドイツ議会財政委員会でコメントした。

 ソブリン危機の最中にあっても、インフレファイターとしての毅然たる態度を貫いてきたドイツ連銀にも、画期的とも言えるスタンス変化が伺える。これらが、構造的に景気後退に陥っている重債務国に成長余地を作り出すために、ドイツがドイツなりに譲歩をし始めた証左だとすれば、経済合理的にも政治的にもユーロ安長期化が歓迎されやすい環境が整った、といえそうだ。

ユーロ円相場の下落は徐々に限界的に

 最後に対円でのユーロ安について、簡単に触れておきたい。

 日本にとっては、企業収益面から、現在の対ユーロの円高は非常に厳しいものになっている。だが、この先のユーロ円相場の下落ペースについては、対円では危機発生後4割近くとG10通貨中で最大の下落率を記録していることもあり、下げ幅は徐々に抑制気味になると予想している。

 添付図に示す通り、ユーロ円相場は、歴史的に有効と見られる取引価格バンド(5年移動平均からの上下25%の変動幅)のほぼ下限に抵触している。当面はこの下限ラインに絡んでの推移となるが、大底割れ定着は回避する可能性が高い、と考えている。


武田 紀久子(たけだ・きくこ)

三菱東京UFJ銀行欧州市場部シニアカレンシーエコノミスト
1989年慶応義塾大学法学部卒業、同年、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為替資金部シニアアナリストを経て、2007年より現職。


Money Globe ― from London

環境、会計など様々な分野で影響力を誇示する欧州の経済情勢を、現地の専門家がマクロ、為替、金融政策、M&A(合併・買収)など様々な観点から分析する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20120807/235388/?ST=print

 


 

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