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今回の日銀追加緩和策の徹底解説
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投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 20 日 13:56:41: cT5Wxjlo3Xe3.
 

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今回の日銀追加緩和策の徹底解説
2012/09/20 (木) 12:59


 昨日、日銀の金融政策決定会合で追加緩和策が決定されたのですが、私、この措置の意味をどれほどの人々が理解しているか疑問に思うのです。

 「そんなの簡単じゃん。日銀が、国債などを購入する基金の規模をこれまでの70兆円から80兆円に増やし、それによって今後短期国債と長期国債の購入額を5兆円ずつ、合計10兆円増やすことにしたのよ」

 流石ですね。そんなことが淀みなく言えるとは。

 「えへん!」

 では、そうして日銀が追加的に国債を購入することになれば、どういうメカニズムで景気を下支えすることが可能なのか?


 「そういう難しいことを言う前に、欧州でもアメリカでも中央銀行が長期国債を購入する措置を打ち出しているから、日本でも負けずにやらないとダメなのよ。だって、例えばアメリカが金融を緩和しているのに、日本が何もしないでは益々ドル安円高に拍車がかかって、日本の輸出企業が苦しい立場に追い込まれるでしょ?」

 では、お聞きしますが、どうしてアメリカがQE3を実施したら、ドル安円高になるのでしょうか?

 「それはね‥アメリカが金融を緩和するということは、それだけ米国の金利が下がるということだから、そして米国の金利が相対的に下がれば、ドルの魅力が落ちるので結果として円高になる」

 そういう理屈なのですよね‥でも

 「まだ文句があるの?」

 ですが、アメリカも日本も事実上のゼロ金利政策を採用していて、金利はこれ以上下がりようがないという意見もありますが?

 「短期金利はそうだけど、長期金利は違うのよ。そして、各国の中央銀行が長期国債を購入するようなことをすれば、それによって長期金利が下がり‥」
 
 では、お聞きしますが、米国ではQE3を決定後、長期金利の水準は下がっているのでしょうか?

 「しつこい人だね。当然下がったんでしょ?」

 それでは、米国の国債の利回りが最近、どのように推移しているかをお示しします。


<米国債の利回りの推移>

      3か月物   1年物   10年物
9月4日   0.10%   0.16%   1.59%
9月5日   0.11%   0.17%   1.60%
9月6日   0.11%   0.18%   1.68%
9月7日   0.11%   0.18%   1.67%
9月10日   0.10%   0.18%   1.68%
9月11日 0.10%   0.18%   1.70%
9月12日   0.10%   0.18%   1.77%
9月13日   0.10%   0.17%   1.75%
9月14日 0.11%   0.18%   1.88%
9月17日   0.11%   0.18%   1.85%
9月18日   0.10%   0.18%   1.82%
9月19日   0.11%   0.18%   1.79%

(資料:Department of Treasury)


 さあ、如何でしょう?

 ご覧のとおり、3か月物や1年物は、13日のQE3決定後、殆ど動きはないようですが、10年物国債については、むしろ利回りが一旦上昇しているのです。そして、9月19日現在でも、QE3決定以前より高いレベルにある訳です。

 もちろん、こうしたことが起きているからと言って、私は、金融緩和を行えば、自国の通貨の価値に下押しの圧力がかかるということを否定するものではないのですが、ただ少なくても今回米国においては、QE3を決定した後、金利はむしろ上昇してしまったという事実だけは指摘して起きたいと思うのです。というのも、この事実が取り上げられることは殆どないからです。

 「でも、そもそもQE3を実施したのに、何故長期金利が上がっているの?」

 それは、こうして連銀が大量の国債などを購入することによって将来インフレに繋がると見る向きが増え、そうして予想インフレ率が上がり出すと、長期金利も上がることになるからです。

 「でも、予想インフレ率が上がっているなんて、どうして分かるの?」

 米国の物価連動国債の利回りがQE3決定以降、低下しているからであるのです。もっと正確に言えば、通常の国債と物価連動国債の利回りの差が大きくなっているからなのです。

 では、上に示した通常の10年物国債の利回りと、同じく10年物の物価連動国債の利回りを比較してみましょう。

<米国債の利回りの推移>

      10年物国債利回り  10年物物価連動国債利回り    差(予想インフレ率)
9月4日   1.59%          −0.68%           2.27%        
9月5日   1.60%          −0.69%           2.29%
9月6日   1.68%          −0.63%           2.31%
9月7日   1.67%          −0.68%           2.35%
9月10日   1.68%          −0.68%           2.36%
9月11日 1.70%          −0.68%           2.38%
9月12日   1.77%          −0.61%           2.38%
9月13日   1.75%          −0.72%           2.47%
9月14日 1.88%          −0.76%           2.64%
9月17日   1.85%          −0.74%           2.59%
9月18日   1.82%          −0.73%           2.55%
9月19日   1.79%          −0.75%           2.54%

(資料:Department of Treasury)


 物価連動国債というのは、国債の償還時等において物価が変動していた場合、その変動分を調整して元利払いが行われる仕組みになっているために、たとえどんなにインフレになっても物価連動国債を保有している場合にはインフレによる価値の目減りが起こることはないのです。従って、通常の国債の利回りは、名目利回りを表しているのに対し、物価連動国債の利回りは実質利回りを表していると考えることができるのです。そして、名目利回り−実質利回り=インフレ率という関係にあるので、これらの二つの利回りを比較すれば、そこから予想インフレ率が導きされるのです。

 で、その結果何が分かるかと言えば、このようにQE3決定後に予想インフレ率が上昇したということが分かるのです。

 「なるほど。でも、予想インフレ率が上がると、どうして金利も上がることになるの?」

 それは、インフレが起きれば、それに応じて金利も上がってもらわないと、お金を貸しつける側に損失が発生するからです。反対に、住宅ローンなどを借りている側から言えば、固定金利のローンの場合には、インフレが起きるとその分得になるのです。インフレが起きると、お金を借りている側が有利になり、その反対にお金を貸している側は不利になる、と。だから、そうして不利にならないように、予想されるインフレ率に応じて金利を上げないとペイしないということになるのです。

 ということで、いずれにしても今回米国では、QE3というか追加の緩和策を行ったにも拘わらず、長期金利は上昇してしまっているのです。ただ、市場はセンチメントの作用する面が大きいということもあり、つまり、市場関係者の頭のなかに「金融緩和=ドル安」という構図が刷り込まれているために、QE3の決定にともなってドル安現象が起きたのだと思うのです。

 まあ、アメリカの事情についてはそれ位にして、また日本の方の話に戻りたいと思うのですが、では、どうして今回の日銀の緩和策が景気を下支えするのか?

 「だから、日本も金融を緩和すれば、円高が修正される訳だし、それに物価も上がるかもしれないし‥」

 では、どうして日銀が長期国債などを購入すると物価が上がると考えるのでしょうか?

 「だって、世の中に出回るお金の量が増えれば‥そして、その一方で生産されるモノやサービスの量が一定であれば、物価は上がるでしょ?」

 では、世の中に出回るお金の量とは、具体的には何を意味しているのでしょう?

 「だから、紙幣、つまり日本銀行券とコインの量‥」

 それだけですか? 経済学の教科書には、預金通貨が含まれると書いてあったでしょう?

 つまり、幾ら個人が現金を直接保有することはなくても、いつでも引き出しが可能な形で預金をしていれば、それも現金を保有しているのと同じことを意味するから、預金も通貨の量にカウントすべきだとなる訳です。従って、厳密に通貨の量を議論するなら預金通貨を考慮に入れる必要があるのですが‥まあ、そこまで言わなくても‥そもそもこうして日銀は最近国債の購入に力を入れてはいるのですが、果たして銀行券の発行残高が増えているかと言えば‥

 次をご覧ください。

<銀行券残高と長期国債保有量>
            銀行券        国債       うち長期国債
2005年度末    74兆9781億円  93兆2731億円   60兆4743億円
2006年度末    75兆8941億円  76兆4457億円   49兆2392億円
2007年度末    76兆4615億円  67兆3907億円   46兆8802億円
2008年度末    76兆8977億円  64兆2655億円   42兆6612億円
2009年度末    77兆3527億円  73兆0661億円   50兆2129億円
2010年度末    80兆9230億円  77兆2992億円   59兆1229億円
2011年度末    80兆8428億円  87兆2471億円   70兆6866億円

2012年8月10日現在 80兆7876億円  98兆7646億円   80兆9698億円

(資料:日本銀行)


 さあ、如何でしょう?

 例えば、この3年間ほどの間に、日銀が購入し保有する長期国債の量はなんと約30兆円も増えたのに、その一方で増えた日本銀行券の残高は数兆円程度に過ぎないのです。つまり、ここ最近日銀は、せっせと長期国債などの購入額の増額を図ってはいるのですが、果たしてどこまで銀行券の発行残高が増えるのかと言えば、何とも言えないというのが真実のところなのです。

 それに、そもそもその長期国債の購入も予定通り実現できるか不確かであるのです。

 「日銀が長期国債を購入することが難しいのは何故?」

 というのも、長期国債を保有する金融機関側が、それほど国債を手放したいとは思わないからなのです。その証拠に国債購入のオペを実施しても、札割れという応募額が入札予定額に満たない現象が頻繁に起きているでしょう?

 「どうして?」

 だって、市中金融機関が長期国債を保有している間は、それが利子を生むわけですが‥その国債を手放して現金に換えた途端に、その現金は利子を生むことがなくなってしまうからなのです。

 「でも、オペに応じて長期国債を手放す金融機関もあるのでしょ?」

 それは、例えば、そうして手にした現金を融資に回すようなことが見込まれるような場合だけなのです。彼らはそもそも融資案件が乏しいために国債で余資を運用している訳ですから、幾ら日銀が国債を購入してくれるといっても、それに応じる理由がそもそも乏しいのです。

 「じゃあ、何故日銀はそうまでして、長期国債を購入しようとするの?」

 だって、そうやって長期国債を購入して、市場に大量の資金を投入すべきだという声が、絶えず政治家などからかかっているからです。そして、こうしてアメリカや欧州でも長期国債の購入の動きが起こると、日本でも当然やるのだろうな、となる訳です。

 「でも、札割れがおきちゃうわけよね」

 問題はそこなのです。折角、日銀が追加の緩和策を実施すると決定し、そして国債購入のオペを実施しても応募が少ないとなれば、目標倒れに終わってしまい、そうなるとまた政治家から批判されてしまうのです。

 「どうするの?」

 だから、今回、次のような措置を決めたのです。

 長期国債を買い入れる場合の下限金利を撤廃する、と。

 「それどういうこと?」

 長期国債を保有している金融機関の側からすれば、長期国債を日銀に購入してもらうことは、手形を期限前に銀行に割り引いてもらうのと同じで、融資を受けるのと同じ効果があるのです。というのも、満期以前に国債の保有者は現金を手にすることが出来る訳ですから。そして、その際の割引率というのが下限金利に当たる訳で、その金利が低ければ低いほど、お金を借りる者にとっては有利になる訳ですから、長期国債の購入オペに応じる市中金融機関も多くなるのです。

 「でも、幾ら安い利息でお金が借りられるとはいっても、現金に換えると利子は生まないのでしょ?」

 だから、長期国債を日銀に売却した市中金融機関は、そのお金を日銀の当座預金勘定に預けておくのです。

 「でも、当座預金って、金利が付かないのでしょ?」

 それは昔の話。今の日銀は、超過準備預金については、米連銀のやっていることを真似して0.1%の金利を付けてやっているのです。そして、さっき言ったように、これまでの国債購入オペに適用される0.1%の下限金利が撤廃されることになったので、市中金融機関としては0.1%未満で日銀からお金を借り、そしてその金を0.1%の利回りで運用することが可能になるので、市中金融機関は何もしないで利鞘を稼ぐことができるようになるのです。

 でも、言っときますが、そうやって幾ら大量に長期国債の買い上げを日銀がやっても、その結果市中金融機関側に流れたお金が日銀当座預金残高に留まってしまえば、世の中に出回るお金は少しも増えることにはならないのです。

 まあ、それが今回日銀が決めた追加緩和策の本質であるのです。

以上
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http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2012/09/20/017101.php

捕捉するとFRBはMBS購入がメインのLSAPであり日銀は通常のQEだったから、額が10倍違うほどにはドル円での圧力は高まっていない
 

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コメント
 
01. 2012年9月20日 19:10:23 : cqRnZH2CUM

>幾ら大量に長期国債の買い上げを日銀がやっても、その結果市中金融機関側に流れたお金が日銀当座預金残高に留まってしまえば、世の中に出回るお金は少しも増えることにはならない

実質マイナス金利の世界では、金融政策だけで景気浮揚させようとしても無理だ

FRBではリスク資産の購入を強調し、資産効果による実体経済への波及を狙っているが、現実には、大したリスクは取れないから効果は限定され、時間もかかる

一方、資産インフレによる実質賃金下落効果はすぐにでるから、労働者の不満、共和党による攻撃も激しくなる

だから本来、雇用に中心的な責任があるのは日銀ではなく、政府が規制緩和やインフラ投資を増やす必要があるのだが、ただのバラマキでは長期的なリスクばかりが高まるので簡単ではない

似たような解説が多いが、理論の定量性と対象の網羅性が足りないせいか

どうも、今ひとつなものが多いな


02. 2012年9月20日 19:36:41 : VbWAbFllIA
日銀緩和で少なくとも1週間は持つと思っていたが
何と1日で行って来い。またまたのリスクオフ相場。
これはだめだ。
やはり習均平に尖閣攻撃をお願いするしかない。
地政学的理由で円が売られるのを待つのみ。


03. 2012年9月20日 20:41:45 : 7uPtGleutM
日本国債もそろそろ終わりかもしれんね。阿修羅にも何時も、日本は大丈夫という工作員が書き込んでるが戦後の御破算のように預金も全部盗られて大衆はルンペンにされるのが判らんのは悲しいね。政府に陰謀団が俳ってて崩壊を仕組んでるから防ぎようがないってか笑。

http://www.bllackz.com/2011/11/blog-post_30.html


04. 2012年9月20日 21:39:16 : VbWAbFllIA
>>03
戦後の日本と今の日本の状況は全く違う。
ブログの主はイカサマ氏か高額商品を買わせる詐欺師だろう。
第一戦後の日本は米軍にすべてを破壊されて生産力がゼロになってしまった。
また敗戦で日本の貨幣価値もゼロ。
全く比較にもならない。
仮にヘッジファンドが国債を売りに来れば大歓迎。
日本は円高に過剰生産力で困りはてている。
国債大暴落、大円安で日本経済は頂点を究めるであろう。

05. 2012年9月21日 00:44:23 : pwAFz85QEE
東京電力の社債を買い入れるんじゃないかと思っていた。
M1もっと出せよ。

06. 2012年9月21日 01:52:25 : cqRnZH2CUM

>>04 

小笠原誠治は、あまり商売気はないみたいだな

強いて言えば、投資に興味をもたせたいのかもしれないが

彼とか山崎みたいになると、好き勝手に喋っても、食っていけるから気楽なものだ


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