★阿修羅♪ > 経世済民77 > 855.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
「安倍首相」誘う円安の現実味 「日銀も負けるな」と緩和競争に突入する愚 IMF総会お粗末な主催国 消費税、再増税否定せず
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/855.html
投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 10 日 00:02:58: cT5Wxjlo3Xe3.
 

(回答先: 日銀の金融緩和手段、国債・株式など山のようにある=ADB総裁 投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 09 日 15:09:35)

「安倍首相」誘う円安の現実味

2012年10月9日(火)  松村 伸二

政権維持に早くも不透明感が広がる野田佳彦第3次改造内閣。市場が次の首相と見るのが、自民党を率いる安倍晋三総裁だ。安倍氏の政策姿勢が円安を誘うとの思惑が市場を揺さぶる。

 「48年ぶりに東京で開かれる国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会を本当に乗り切れるのか」――。

 野田佳彦第3次改造内閣の顔ぶれが固まった1日の東京市場で、市場参加者の多くは戸惑いの声を漏らした。財務相に起用された城島光力・前国会対策委員長の国際金融に関する政策手腕があまりにも未知数なためだ。城島氏自身、就任時に「想定していないポストだった」と吐露したほどだ。

 ほかの顔ぶれも、民主党代表選で野田首相を後押しした「論功行賞内閣」との揶揄が響く。内閣改造はむしろ政権交代の可能性を市場に意識させた。


海外投機筋は円売りのきっかけを待っている?
シカゴ・マーカンタイル取引所の投機筋の円持ち高と円相場の推移(出所:投機筋の円持ち高は米商品先物取引委員会)

“安倍首相”の思惑が促す円安シナリオ
主な政策に関する安倍晋三・自民党新総裁の発言
日銀にさらなる緩和圧力も

 次期衆院選で政権を奪回すると目されるのが自民党だ。同党総裁選の決選投票で56年ぶりに2位候補ながら逆転勝ちした安倍晋三氏を市場は「次の首相」として織り込み始めている。

 「安倍政権」が誕生した場合、影響を最も受けそうなのが日銀だ。安倍氏は思い切った金融緩和の必要性を強調し、日銀にプレッシャーを与えてきた。

 今回の内閣改造で、日銀の金融政策決定会合に参加できる経済財政相に、日銀に外債購入を迫ってきた前原誠司氏が起用されたが、「安倍政権」は日銀包囲網をさらに狭めそうだ。

 日銀が1日発表した企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感は3四半期ぶりに悪化。30日にまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」でも、「物価安定のメド」として当面目指す「1%」の物価上昇率の達成の難しさを露呈しかねない。

 こうした思惑はヘッジファンドなど海外投機筋が材料にすることが多い。投機筋は6月以降、円の買い越しを続けている。これらは先々、円売りのエネルギーとなり、「安倍首相」の実現で円安を加速させる可能性がある。

 円安は株式市場で輸出関連株を支える好材料との評価がある。だが、「安倍政権」がもたらす円安は日本売りを伴う「悪い円安」を印象づけそうだ。

 安倍氏はデフレから脱却しない段階での消費税増税には消極的。これは海外勢に財政再建の遅れを意識させ、日本国債の格下げ懸念を誘いかねない。

 尖閣諸島の国有化問題では、中国への強硬姿勢がうかがえる。関係悪化が深まれば、中国向け輸出の減少による円買い需要の減少や、地政学リスクを警戒した円売りを招く可能性もある。

 市場では「安倍氏は対中強硬策を『カード』として使いこなすような政策の巧妙さが問われる」(JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト)との声もある。安倍政権が実現しても、「日本売り」の連鎖が政権を追い詰める展開も十分にあり得る。


松村 伸二(まつむら・しんじ)

日経ビジネス記者。


時事深層

“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121004/237635/?ST=print

「日銀も負けるな」と緩和競争に突入する愚

民間銀行の商品開発競争とその後の破滅を思い出せ

2012年10月9日(火)  倉都 康行

 市場では、世界各国が金融政策の「緩和競争時代」に入った、と言われている。欧州中央銀行(ECB)による無制限の国債購入は、市場から資金を吸い上げるいわゆる「不胎化」なので、これを金融政策あるいは緩和政策と呼ぶのにはかなりためらいがあるが、米連邦準備理事会(FRB)の無期限MBS購入(いわゆるQE3)は明らかに通貨増刷競争を先導する緩和作戦であり、英中銀も景気動向次第ではまだ国債購入を拡大させる方針のようだ。ユーロ圏の厳しい景気後退の中で、ECBもいずれ量的緩和へと向かう可能性なしとしない、

 2001年に量的緩和政策を「開発」し、世界の金融政策の先端を走った日銀は、金融危機の惨劇から抜け出せない欧米の中銀によるアグレッシブな戦闘態勢の中で、いまや後塵を拝している印象は拭えない。政治家や実業界そして経済学者らから、欧米に対抗してさらに緩和を拡大せよ、との雄叫びが上がる。昨今では、資産買い入れ基金の拡充に加えて日銀による外債購入を求める声も強まっている。

 筆者は経済学が専門でもないし、金融政策立案のプロでもないので、日銀が海外の中銀と競争するのが良いかどうか、理論的な答えは持っていない。激化する量的緩和競争に対して抱いているのは、市場経験者としての直感的な拒絶反応と、あるデジャブ(既視感)である。前者はひとまず置くとして、後者について少し述べておこう。もっとも、前者と後者を明確に区分することは、正直言うと難しい。

不毛の商品開発競争と似ている「緩和競争」

 なぜデジャブなのか。それは、日銀に対して「欧米の中銀に負けるな」とけしかける声は、筆者が1980〜90年代に経営陣から「欧米の銀行に負けるな」と攻め立てられていた時期を髣髴させるからである。デリバティブズ全盛時代は、外資系の独擅場であった。日本勢も何とか食い下がったが、やはりこの市場では英米などの金融機関に一日の長がある。競争では満足できる実績が残せないままに、邦銀は国内の不良債権問題もあって海外市場から撤退し、「商品開発競争」から身を引くことになった。

 それから後のストーリーは周知の通りであろう。激化する金融商品開発競争はサブプライムローン問題を生み、リーマンショックを誘発して、金融市場は瓦解寸前となり、欧米の大手金融機関は政府支援によって救済された。あれから4年以上が経過した今でも、世界の金融危機はまだ収まった感じがしない。

 一方で日本の金融勢は、結果論ではあるが、無節操な金融商品開発から脱落したこともあって軽傷で終わった。評論家やメディアから「2〜3周回遅れの経営」と揶揄されていた邦銀が、今世界の各市場で存在感を増している。実務界の中では、盲目的な欧米金融追随が命取りになることを痛感した人も、少なくなかったはずである。健全な競争は生産性を上げるが、不健康な競争には破滅が待っている。

 ボルカー元FRB議長は「金融業界の商品開発で最も優れたものはATMであった」と述べて、そんな商品開発競争の虚しさを告発した。スワップやオプションに対しては、もう少し高い評価をもらってもおかしくないとは思うが、同氏の金融開発への批判的発言に多少の真理が含まれていることは否定できない。そしてその批判対象は、民間金融の商品開発に止まらないように思える。

 ここ数年の中銀による「緩和競争」も、民間金融の不毛の競争と似たようなものなのかもしれない。財政政策で身動きがとれない中で金融政策に圧力が高まる風潮は、自己資本比率に縛られた中ではオフバランス取引で収益を、とデリバティブズを使った収益増強策への突撃を命じられたわれわれが感じたものと、やはりよく似ているのである。

「ほとんど効果が無かった」米国の量的緩和

 ただ印象論だけで中銀を論評するのは不適切なので、もう少し議論を整理しておこう。米国では、金融危機以降FRBが3回のQE(Quantitative Easing=量的緩和)を行った。ただし、FRB自身は「QE」という言葉は使わず、バーナンキ議長はこれを信用緩和と呼んでいた。日銀が行った当座預金を増額するタイプの量的緩和とは違う、というメッセージがそこにある。

 FRBはまず2008年11月に、凍結状態に陥ったモーゲージ債市場などを対象として6,000億ドルの債券を購入、続いて2009年3月には8,500億ドルの追加購入と3,000億ドルの長期国債購入を決めた。

 この合計1.75兆ドルの「市場介入」は、確かに効果があった。市場機能が麻痺した際に中銀が「最後の貸し手」として出動することで、市場の底割れを防ぐことができたからだ。その後、雇用や生産が徐々に持ち直しを見せていく。この時期にFRBの緊急出動が果たした役割は、適正に評価されるべきだろう。

 だが2010年10月に行われたQE2、つまり2度目の量的緩和は、賛否両論を巻き起こした末に、少なくとも筆者が知る金利やクレジットの市場仲間の間では「ほとんど効果が無かった」との見方が定着しつつある。

 QE2は6,000億ドルの長期国債を購入する「マネー増刷」策であったが、効果があったとすれば米国経済がデフレに陥るのを防いだという点くらいだろう(もちろん、政治家やエコノミストらの評価はその立場によって異なり、QE2を高く評価する声もある)。

 ここ数年の筆者流の「市場ウォッチ」においては、バーナンキ議長が主張した「ポートフォリオ・リバランス」、例えば株高や不動産高で消費活動が活発になるといった効果や、ドル安で輸出が促進されるといった効果は、あまり観測されなかった。

 何よりも、雇用を回復させて米経済を3%台の成長路線に復帰させるという戦略が、ユーロ危機という要因があったにせよ、ものの見事に失敗したことは、QE2に対する酷評を増幅することになった。FRB内部でも、量的緩和に付随するデメリット(インフレなど)を議論する頻度が急速に増えていった。

米国と欧州の金融政策市場最大の「博打的実験」

 そんな中でも今年9月にFRBがあえて「無期限」のQE3を打ち出したのは、雇用が思うように増えないというフラストレーションが爆発した結果だと見ることができる。FRBは実質的に「物価安定」という使命を捨てて、「雇用増加」に舵を切ったと見て良いだろう。「無期限」にMBS債を購入するという政策は、ECBによる「無制限」の国債購入と並んで、恐怖に満ち満ちた金融政策史上最大の「博打的実験」であると言って良い。

 さらに、「MBS債を買って雇用が増える」というのは、「風が吹けば桶屋が儲かる」式の怪しげな説明である。結果的にそうなれば良い、と言うに等しいいわば「結果オーライ期待政策」であり、まともに聞いていられない、というのが筆者の第一印象であった。

 米国では、既に春頃から住宅市況の底入れが見えており、夏以降の種々の統計によって価格の底打ちや着工件数・販売件数の増加が確認されている。その状況下でMBS債を購入してモーゲージ金利を引き下げたところで、効果は知れている。

 普通に借り入れ可能な人は歴史的低水準の金利を使って既に購入している。現在買えない人は、何らかの問題で銀行借り入れができない人であり、FRBがMBS債を購入したところで状況は変わらないのだ。恐らく、米国債を購入すると「財政ファイナンス」との批判が出るので、MBS債を対象にしたのだろう。

 FRBが市場に送り込むマネーは、QEとQE2の合計2.35兆ドルに加えて、今回のQEでは恐らく1兆ドル以上の上乗せになるだろう。そのマネーが銀行を経由して企業融資に向かうと予想する人はほとんどいない。再び市場に滞留するか、国債市場に流入するか、商業用不動産に流れるか、株や商品に向かうか、といったシナリオが想定される。米銀が再び怪しげなリスク資産を積み上げる契機になるかもしれない。

 バーナンキ議長が望む「資産効果による景気浮揚」という結果に繋がる可能性もゼロではないが、それはやはり「結果オーライ」に過ぎないのである。そんな手法に日本が追随することは、果たして賢明だと言えるだろうか。

綱渡り状態が続くユーロ圏

 ユーロ圏でもドラギECB総裁の綱渡りが続いている。昨年の就任以来、同総裁は流動性を市場にふんだんに供与して「ユーロ圏の信用収縮は回避された」「ユーロ危機の山場を越えた」といった発言を繰り返してきたが、ユーロ危機は悪化する一方である。

 ドラギ総裁は、今年7月には「ECBは危機回避のためなら何でもやる」と述べて市場不安を鎮めようとしたが、その時点では具体的に何を行うかはECB内で全く決まっていなかったのだ、とロイターは報じている。一種の「ハッタリ」である。

 その後、ECB総裁とドイツ連銀のバイトマン総裁との間で激しい論争が起きたことは周知の通りである。ドラギ総裁は記者会見でバイトマン総裁が反対していることを明言するという失態を犯し、ドイツ勢を完全に怒らせてしまった。結果的にはその反対論を封じ込めて「無期限で国債を購入する(OMTと呼ばれる)」政策を打ち出すことになり、市場はこれでひとまず安堵しているが、この手法は大きな禍根を残すことになったように思える。

 そもそも市場では誰も、ユーロ危機がECBによる緊急手当で解消可能だとは思っていない。一時しのぎの小手先の細工は、スペインやイタリアにモラルハザードをもたらす、と警戒する向きもある。最も危険なのは、ドイツ国民の「反ユーロ」感情をいたく刺激してしまったことだろう。総裁は、「ドイツのユーロ離脱可能性」といういわばパンドラの箱を開けてしまったのである。

「ドラギ魔術」で飛べない通貨を飛ばしている

 欧州では、ユーロを「共有地の悲劇」の一つの例だと見る向きもある。1999年以前に一種の公共財であったドイツのマルクは、そのDNAをユーロに受け継ぐはずであったが、その狙いは外れてしまった。ドイツはその運命を受け容れるか、公共財を取り戻すかの選択を迫られている。これは実に厳しい問いだ。離脱は同国にとってコストが高過ぎると言われるが、そもそもユーロ問題は金融や経済の理論で解ける方程式ではなく、政治と民族が絡む一つの歴史問題なのだ。

 従ってドラギ総裁だけを責めるにも無理があろう。フランスが、しぶしぶ東西ドイツ統一を認めるに際して持ち出した共通通貨の提案に、経済的弱小国が「タダ乗り」しようとして、政治的妥協の下に成立したのがユーロである。それが10年以上も持ちこたえていたのは、銀行がリスクを無視したクロスボーダー融資取引(国境を超える貸借取引)を増幅させて、問題を見えなくしていただけのことである。

 ドラギ総裁は以前、ユーロを「力学的には飛べないが実際には飛んでいるマルハナバチ」に譬えたことがある。まさに、飛べない通貨を「ドラギ魔術」で飛び続けるようにするしかなかったのだ。それがECBによる無期限の国債購入の実体なのである。こうした状況は、幸いにも日本には無縁のものである。

ゼロ金利下の中銀ができること

 以上のように、「米国のQE3」も「ユーロ圏のOMT」も、実に際どい状況判断に基づいたものであり、「日銀も負けるな」と発破を掛けて追随すべきような代物ではない。両中銀の現行の政策も、いずれに曲がり角に直面することになるだろう。

 もっとも、マネー・フローがいびつで適正な場所におカネが流れないという問題がある限り、日銀に「何もしない」という選択肢が許されないことは言うまでもない。日本は日本固有の問題への対応として、手法を考えねばなるまい。

 ただし、経済効果の乏しい資産買い入れをさらに増加させるのが適切とは思えないし、既に大量に積み増して持て余している米国債をさらに購入しても将来に頭痛の種を増やすだけである。それよりも、先般このコラムで紹介した劇薬としての「マイナス金利」の方が、効果が得られるのではないか。円高対策としても恐らく効き目はあるだろう。

 実は昨年「WEDGE 12月号」に「マイナス金利を導入せよ」との小論を寄稿したところ、そんな策は政治的にも実務的にも実行不能だ、との声をたくさん頂いた。だが、現実に導入実績のある国が存在するのは事実なのだ。新時代には、新たな発想も必要である。

 熾烈な競争市場の中では、周囲に流されない独自の冷徹な状況判断が必要だ、というのが、筆者が職務上得た教訓であった。単純な欧米追随は、危険な思考停止の現象でもある。ゼロ金利下の中銀にできることは、歪んだマネー・フローを軌道修正することくらいだ、との割り切りも必要なのではないか。


倉都 康行(くらつ・やすゆき)

1955年生まれ。東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンで国際資本市場業務に携わった後、97年よりチュースマンハッタンのマネージングディレクターを務める。現在、RPテック代表取締役。日本金融学会会員。最新刊は『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』(日経BP社)。主な著書に『金融史がわかれば世界がわかる』『金融VS.国家』(ちくま新書)、『金融市場は謎だらけ』(日経BP社)、『予見された経済危機 ルービニ教授が「読む」世界史の転換』(日経BP社)など


倉都康行の世界金融時評

日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121004/237666/?ST=print


IMF総会、お粗末な主催国

こんな経済外交は展開してはならないという教訓を見せてくれた日本

2012年10月9日(火)  The Economist


野田佳彦首相は昨春、東日本大震災からの復興に取り組む姿をアピールしたいとして1964年以来、48年ぶりにIMF・世界銀行総会を日本で開催することを勝ち取ったはずだった。だが、その開催直前になって総会の最重要ポストであるはずの財務大臣を内閣改造で交代させた。国内政治及び民主党内の政治力学を優先させ、日本の存在感を世界に訴えるはずだった絶好のチャンスを自ら葬り去った野田首相――。本記事は英誌エコノミストが最新号に載せた日本の経済外交に対する痛烈な批判だ。原題は「Japan and the IMF:Poor host -Japan gives a lesson in how not to handle economic diplomacy」である。


 日本の野田佳彦首相は、本誌(エコノミスト誌)が昨年、米国も欧州も日本型の指導力欠如病に冒されていると論じた記事「Turning Japanese」に、いまだに苛立ちを感じているという。そんな日本のイメージを覆そうと、野田首相は議論の絶えなかった消費税増税法案を力づくで成立させた。しかし、10月1日に行った内閣改造は、ちょっとした政治的なご都合主義が、事態を台無しにしてしまうという教訓を残した。

この時期に未経験者を財務大臣に

 野田首相は、日本で国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会が開催されるまさにその1週間前になって、財務大臣を交代させたのだ。新財務相に任命された城島光力氏(65歳)は労組出身で、国会対策委員長を務めた人物だが、大臣の経験も財務関係の経験もない。この1年あまりで日本の財務大臣は3人目になる。

 アナリストによると、城島氏の財務相就任は、発足からわずか13カ月で3度目の改造を行った野田内閣の「年功序列人事」の一環にすぎない。野田首相が自ら「近いうちに」と約束した総選挙を前に、与党民主党への支持率は低く、首相は党内の団結を維持するために、党に忠実な者たちに閣僚ポストを用意する必要があったのだ。

 今後数カ月の間に日本は独自の「財政の崖」に直面する。これを回避するためには今年度予算の執行資金を調達する国債を発行しなければならない。その法案成立に向けて野党の協力を取りつけるのに、城島氏一流の交渉術が力を発揮してくれるとの読みもあったかもしれない。

 それでも外交上、今回の内閣改造は自らの評判を傷つける行為だった。

 財務省の中尾武彦財務官は、新しい上司に状況報告(ブリーフィング、「説明(エクスプレイン)」という表現は適切ではない)を行った後、間近に迫った多国間会議においても日本は一貫した不変の姿勢を示すと述べた。しかし、前財務相の安住淳氏の退任を惜しむ者も多いはずだ。安住氏は今年、ユーロ危機の拡大を抑えるためIMFの資金を4500億ドル(約35兆円)拡大する努力を主導した。安住氏も、就任まで財務関係の経験はなかったが、大胆な指導力を発揮し、日本の信用を高めた。

政治家はデフレ脱却を日銀に迫るが

 未知の財務大臣が待つ東京にやって来る世界の経済政策立案者たちは、少なくとも1人の顔馴染みを見つけて安堵することだろう。2008年から日本銀行総裁を務める白川方明氏だ。

 しかし、世界第3位の経済大国、日本の指導層がどこに向かおうとしているのかが決まらない中、日本の政治家たちが来年4月に任期切れを迎える白川総裁を再任する可能性があまりないことも明らかになりつつある。

 9月26日に野党、自由民主党の党首に選出された安倍晋三氏は、日本銀行に対し、デフレ脱却に向けてもっと積極性を高めるよう圧力を強める意向を示した。野田首相率いる民主党も同じ姿勢だ(もっとも、白川総裁の後任人事について両党が合意することはないかもしれない)。

 白川総裁は、日銀は「最大限の努力」をしていると述べた。日銀はインフレ目標を1%に設定している。この目標達成のため、日銀は国債だけでなく、リスクの高い上場投資信託(ETF)などの資産も購入している。また、成長を下支えするために、銀行から企業への貸付資金を低利で提供している。白川総裁によると、これらの施策により、銀行からの貸し出しは活性化し始めているという。

 しかし、政治家は白川総裁のメッセージに耳を傾けようとしない。恐らく白川総裁が、経済面の規制緩和(政治献金を行う大企業は規制緩和を忌み嫌っている)と、女性及び高齢者の労働参加率の拡大を求めているせいだろう。

 日本の政治家は、スケープゴート探しや年功序列人事などにとらわれている場合ではない。白川総裁のメッセージにこそ意識を集中するべきなのだ。

© 2012 The Economist Newspaper Limited.
Oct. 6, 2012 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


英国エコノミスト


1843年創刊の英国ロンドンから発行されている週刊誌。主に国際政治と経済を中心に扱い、科学、技術、本、芸術を毎号取り上げている。また隔週ごとに、経済のある分野に関して詳細な調査分析を載せている。


The Economist

Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121008/237768/?ST=print


 

消費税、再増税は否定しない

2012年10月9日(火)  田村 賢司

藤井裕久・民主党税制調査会長 インタビュー
社会保障と税の一体改革の最大の課題である消費税引き上げは決まった。ただし、実行の際、低所得者ほど負担が重くなる逆進性をどのように緩和するかという対策では、自民、公明両党と考えが異なる。

藤井:自公両党は、一部の商品・サービスなどの消費税率を低くする軽減税率を主張している。特に公明党は、2014年4月に消費税率を8%に引き上げる段階からの実施を唱え、翌2015年10月に10%に上げて以後という自民党よりも積極的だ。


(写真:清水 盟貴)
 これに対して民主党は、(低所得者の消費税負担分を所得税で還付・給付する)給付付き税額控除にすべきだと考えている。これについては、これから設置する社会保障制度改革国民会議で議論することになるが、やはり給付付き税額控除の方が優れていると言わざるを得ない。

 というのは、例えば軽減税率を導入する場合、対象品目に食料品がしばしば挙がる。しかし、食料品では高額の食品消費ができる高所得者の“恩恵”も大きく、逆進性の緩和にならない。さらにいえば、軽減税率は何を対象にするかが一種の利権のようになり、政業(政治と財界)の癒着につながりかねないという問題もある。

 何より、税率が複数になれば、企業が仕入れたモノそれぞれの税率を証明するためにインボイス(送り状)が必要になり、中小企業には大きな事務負担になる。よく言われるハンバーガーを店頭で買って持ち帰れば食品だから軽減税率だが、店内で食べれば普通税率になるといった問題もある。

 もう1つ重要な点では、消費税引き上げによる税収増分も、かなり減ることになるという問題もある。軽減の仕方によるが、消費税1%分(2兆7000億円)程度になる可能性もある。

金融・不動産所得など申告制に

しかし、給付付き税額控除も、個人の正確な所得捕捉が出来ない現状では、不正受給が激増する恐れがある。

藤井:それは否定しない。だが、その問題もあるから我々はマイナンバー(納税者番号)制の導入を検討してきた。法案は継続審議になったが、是非必要だと思っている。

 消費税率を10%に引き上げる2015年には間に合わないが、出来るだけ早い時期に導入し、それまでは低所得者への現金給付などで対応したい。もちろん、マイナンバー制を導入しても、個人の利子所得や不動産所得などは正確に把握しきれないという難点は残る。しかし、それらの所得は申告制にし、過少申告で税逃れをすれば摘発するなど対策はある。一罰百戒の効果も含めて、こうした金融・不動産所得の把握をきちんと出来れば、所得捕捉の正確性は上がり、不正受給はかなり減らせるのではないか。

消費税を10%に引き上げても、財政再建にはほど遠い。税収で国債の元利払い費以外の政策的経費を賄えるかどうかを見る「財政の基礎手的収支」(プライマリーバランス=PB)を、2020年度に黒字化するという国際公約は守れるのか。

藤井:これは必ず守る。今回の消費税引き上げは、このPBの赤字をGDP(国内総生産)比で3.2%と、2010年度から半減させるが、実際にはそこまで。消費税率が10%のままでは2020年度時点でもまだ赤字は残る(編集部注:内閣府の試算では2020年度時点でGDP比2.8%分の赤字が残り、黒字化には15兆4000億円必要となる)。

 消費税引き上げが経済に及ぼす影響を慎重に見極めながらだが、それを考えると、さらなる増税(の必要性)を否定は出来ないということになる。

五十嵐文彦・前財務副大臣 インタビュー
「相続税は改めて見直しを」

消費税以外の税制改革はどう進めるのか。低所得者への逆進性対策など負担緩和を重視するなら、所得税改革による再分配機能をどうするかも重要では。

五十嵐:消費税引き上げで社会保障の維持・充実を図るだけでなく、税制改革には社会的な公平感をどう保っていくかという重要な役割がある。そこで検討する必要があるのは、所得税の再分配効果の低下だろう。


(写真:松谷 祐増)
 政府としては、最高税率を5%上げよう(課税所得5000万円超を所得税率45%に)としていたが、自公両党との3党協議で先送りとなった。公明党は、課税所得3000万円超を45%、同5000万円超を50%に、と主張しており、これらの案を踏まえて協議することになるが、現在6段階ある税率の階段を増やしたり、対象所得幅を見直したりするなどやるべきことは多い。

 これまで我々は、子ども手当の財源として年少扶養控除を廃止するなど、自民党政権時代に、かなり厚くなっていた所得控除を縮小することやってきたが、給与所得控除や扶養控除なども議論の対象になるのだろう。

 ただし、消費増税をお願いしている今、時期的にいつがいいのか検討しながらやっていかざるをえない。

再分配効果を見直すなら相続税も改めて改革を検討する必要があるのでは。

五十嵐:相続税は自民党政権時代、控除を徐々に上げてきた結果、(資産)再分配効果は非常に弱くなっている。それを是正して資産の不均衡状態を直していきたい。

 3党協議では、「バブル崩壊後の地下の大幅下落に合わせて、基礎控除も下げるという政府案を踏まえつつ検討を進める」ことになった。我々の案がベースになるはずだ。

法人税はどうなる。今年度からの5%引き下げは東日本大震災からの復興のための増税で3年間は事実上、棚上げとなったが。

五十嵐:経済を良くして税収を上げることは必要だと考えている。法人税は長期的には下げていくべきだろう。今回の引き下げの路線は維持していく必要があると思っている。

 私個人としては、雇用を維持・拡大するための法人税制も必要と考えている。これまでのように弱体化してきた企業を助けて雇用を維持する税制ではなく、伸びる企業を支援する税制を整備していきたい。


田村 賢司(たむら・けんじ)

日経ビジネス編集委員。


ニッポン改造計画〜この人に迫る

日経ビジネス本誌10月1日号でお送りする特集「ニッポン改造計画100」で政策提言をいただいた識者へのロングインタビューシリーズ。誌面では語りきれなかった政策提言の深層を聞く。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121004/237644/?ST=print  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民77掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民77掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧